(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981762
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】ブラインドの昇降装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/322 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
E06B9/322
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-105922(P2012-105922)
(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公開番号】特開2013-234447(P2013-234447A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2014年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134958
【氏名又は名称】株式会社ニチベイ
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(74)【代理人】
【識別番号】100097250
【弁理士】
【氏名又は名称】石戸 久子
(72)【発明者】
【氏名】千坂 之則
【審査官】
佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開平4−62287(JP,A)
【文献】
実開平3−22118(JP,U)
【文献】
特開2002−266792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00
9/02
9/06− 9/18
9/24− 9/388
9/40− 9/50
9/56− 9/92
F16C 21/00− 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドボックス(10)内で回転可能に延びる回転軸(14)と、ヘッドボックス内に設けられるとともに回転軸の回転に連動して回転する巻取ドラム(16)と、巻取ドラムに巻取り及び巻解き可能に連結されるとともに、ヘッドボックスから垂下して遮蔽材(12)を昇降可能な昇降コード(24)と、を有するブラインドの昇降装置において、
巻取ドラムの少なくとも一端には回転軸(14)と非接触な軸受け(34)が設けられ、巻取ドラムはヘッドボックスに固定されるドラム台(30)に軸受け(34)を介して回転可能に支持されており、巻取ドラム(16)と軸受け(34)との間には弾性体(32)が介在され、
弾性体は非円形状部(32b)によって巻取ドラム及び軸受けとそれぞれ連結され、巻取ドラム及び軸受けと一体回転することを特徴とするブラインドの昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮蔽材を昇降可能なブラインドの昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブラインドの昇降装置としては、ヘッドボックス内に回転可能に支持される回転軸と、回転軸を回転駆動可能なモータと、回転軸と連動して回転する巻取ドラムと、巻取ドラムに巻取り及び巻解き可能に一端が連結され、遮蔽材を昇降可能な昇降コードと、を備えたものが知られている。モータの作動により回転軸が回転駆動して巻取ドラムが回転することにより昇降コードが巻取り又は巻解かれることによって遮蔽材が昇降動作等の動作を行うようになっている。
【0003】
このように、モータが作動して動作が行われるが、モータが作動することによって振動が発生するため、この振動がモータが固定されるヘッドボックスに直接的に伝達され、ヘッドボックス全体に振動が伝わって異音が発生する恐れがある。
【0004】
この異音の発生を回避するために、例えば、特許文献1に示されるもののように、合成ゴム等の弾性板の両面に取付座板を固着し、一方の取付座板にモータを、他方の取付座板をヘッドボックスにそれぞれ独立に取付けるようにした取付座をもってモータをヘッドボックスに取付けるようにし、ヘッドボックスに伝搬されるモータの振動を軽減するようにしたものもある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるものでも、モータの振動は、モータによって駆動される回転軸から巻取ドラムに伝搬され、巻取ドラムの振動が巻取ドラムをヘッドボックスに固定するドラム台を介してヘッドボックスに伝搬され得るため、モータとヘッドボックスとの間に弾性板を介在させるという処置だけでは、ヘッドボックスへの振動の伝搬を低減する効果は低いと言わざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭57−25994公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、遮蔽材の昇降動作時等に発生する振動がヘッドボックスに伝搬されることを防止することができるブラインドの昇降装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、
本発明は、ヘッドボックス内で回転可能に延びる回転軸と、ヘッドボックス内に設けられるとともに回転軸の回転に連動して回転する巻取ドラムと、巻取ドラムに巻取り及び巻解き可能に連結されるとともに、ヘッドボックスから垂下して遮蔽材を昇降可能な昇降コードと、を有するブラインドの昇降装置において、
巻取ドラムの少なくとも一端には回転軸と非接触な軸受けが設けられ、巻取ドラムはヘッドボックスに固定されるドラム台に軸受けを介して回転可能に支持されており、巻取ドラムと軸受けとの間には弾性体が介在されることを特徴とする。
【0009】
また、弾性体は非円形状部によって巻取ドラム及び軸受けとそれぞれ連結され、巻取ドラム及び軸受けと一体回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、巻取ドラムと軸受けとの間に弾性体を介在させることにより、回転軸を介して巻取ドラムに伝達される振動が弾性体によって吸収されて軸受けに伝達されず、さらに伝達経路としてその先にあるドラム台にも伝達されないため、ヘッドボックスへの振動の伝搬を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るブラインドの昇降装置を適用したブラインドの正面図である。
【
図3】(a)は巻取ドラム、弾性体、及び軸受けの分解斜視図であり、(b)は(a)を組み立てた状態を示す斜視図である。
【
図4】回転軸、巻取ドラム、弾性体、及び軸受けがドラム台に組み付けられた状態を示し、(a)は断面図であり、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1ないし
図4に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
本発明の実施形態に係るブラインドの昇降装置は、ヘッドボックス10内に回転可能に支持される回転軸14と、ヘッドボックス10内に設けられるとともに回転軸14の回転に連動して回転する巻取ドラム16と、巻取ドラム16に巻取り及び巻解き可能に連結されるとともに、ヘッドボックス10から垂下するスラット12を昇降可能な昇降コード24と、ヘッドボックス10内に配設され、回転軸14を回転させるためのモータ20と、モータ20の駆動を制御する制御ユニット26と、モータに電力を供給する電源ユニット28と、電源トランス29と、をそれぞれ有する。モータ20は、適宜免振構造でヘッドボックス10に取り付けられる。
【0014】
回転軸14は、ヘッドボックス10内に回転可能に長手方向に延びており、ヘッドボックス10の適宜位置に軸支された巻取ドラム16を挿通して、巻取ドラム16との間で双方向に回転を伝達可能となっている。
【0015】
巻取ドラム16には、遮蔽材としての多数のスラット12列の下端に配置されるボトムレール22に下端が固着される昇降コード24の上端が巻取り及び巻解き可能に固着される。よって、回転軸14を回転させることにより巻取ドラム16を回転させて、昇降コード24を巻取り及び巻解くことにより、スラット12列を昇降させることができる。
【0016】
また、巻取ドラム16は、スラット12の昇降動作に限らず、回転動作もさせることが可能である。即ち、多数のスラット12列を支持するラダーコード18の一対の垂直コードの上端を巻取ドラム16に所定角度の回転のみ一体的に回転可能に連結し、回転軸14を回転させることにより該巻取ドラム16を回転させて、ラダーコード18を傾動させ、スラット12を回転させることができる。
【0017】
巻取ドラム16はヘッドボックス10の長手方向複数個所にドラム台30を介してそれぞれ配設されており、
図4に示すように、巻取ドラム16の軸方向両端部が弾性体32及び軸受け34をそれぞれ介してドラム台30に回転可能に支持される。これらの具体的な構成を以下に詳述する。
【0018】
巻取ドラム16、弾性体32及び軸受け34は、それぞれ
図3(a)に示すような形状を有しており、巻取ドラム16は、昇降コード24が巻き付けられる本体と、その両側にある巻取ドラム鍔部16aと、巻取ドラム鍔部16aの回転中心位置における外側面からそれぞれ軸方向に突出する係合凸部16bとを有し、両係合凸部16bの外周面の形状はそれぞれ非円形状である。巻取ドラム鍔部16a及び両係合凸部16bの回転中心には回転軸14が挿通する方形の貫通孔16cが貫通している。
【0019】
弾性体32は弾性材料から成るものであり、中空形状で、巻取ドラム鍔部16aの側面に面接触する円盤状部32aを有している。円盤状部32aの外周部の径方向寸法は軸受け34の外周部の径方向寸法よりも大きく設定されており、円盤状部32aからは軸受け34の外周部の径方向寸法よりも小径の突出軸32bが軸方向に突出している。中空の突出軸32bの内周面32cの形状は係合凸部16bの外周面の形状に対応した非円形状であり、突出軸32bの外周面の形状も非円形状である。
【0020】
軸受け34も中空形状であり、それぞれの外周面が円形状の大径部34aと小径部34bとが軸方向に連接された形状を有している。そして、大径部34aの内周面34a−1は弾性体32の突出軸32bの外周面の非円形状に対応した形状とされており、小径部34bの内周面34b−1は回転軸14よりも大径ではあるが、弾性体32の突出軸32bよりも小径の円形状をなしている。
【0021】
図3(b)に、組み付けられた巻取ドラム16、弾性体32及び軸受け34を示す。これらの組み付けるには、まず、巻取ドラム16の両係合凸部16bにそれぞれ弾性体32の内周面32cを嵌め合わせ、弾性体32の円盤状部32aの一方の側面と巻取ドラム16の巻取ドラム鍔部16aの側面とを面接触させる。つぎに、両弾性体32の突出軸32bに軸受け34の大径部34aの内周面34a−1をそれぞれ嵌め合わせ、大径部34aの端部と弾性体32の円盤状部32aの他方の側面とを面接触させる。これにより、弾性体32の円盤状部32aが巻取ドラム鍔部16aと軸受け34とで挟み付けられた状態となり、巻取ドラム16は軸受け34とは直接接触せず、弾性体32を介して軸受け34と接続される。
【0022】
このように組み付けられたものを、
図4に示すように、ドラム台30内に挿入し、軸受け34の小径部34bをドラム台30の両端部に形成された支持穴30aにそれぞれ挿入し、回転可能に支持させる。次いで、回転軸14を軸受け34及び弾性体32の内部空間、及び巻取ドラム16の貫通孔16cに挿通させる。回転軸14は、軸受け34及び弾性体32とは非接触にこれらの内部空間を挿通するが、巻取ドラム16の貫通孔16cとは嵌り合い巻取ドラム16と一体に回転するように組み付けられる。これにより、回転軸14の回転が直接伝達されるのは巻取ドラム16のみとなり、巻取ドラム16に伝達された回転が弾性体32を介して軸受け34に伝達されることになり、ドラム台30に対して軸受け34、弾性体32及び巻取ドラム16が回転する。
【0023】
一方の軸受け34の大径部34aの外周にはクラッチバネ36が嵌め合わされており、このクラッチバネ36に前述のようにラダーコード18の一対の垂直コードの上端が連結される。
【0024】
次に本実施の形態の作用について説明する。
【0025】
使用者が図示しない操作部を操作すると、操作部からの指令信号が無線または有線によって制御ユニット26へと送られる。例えば、操作部からの上昇または下降指令信号により、制御ユニット26がモータ20を上昇または下降に対応する回転方向に駆動すると、モータの回転が回転軸14に伝達し、回転軸14と一体に巻取ドラム16が回転する。巻取ドラム16は弾性体32を介して軸受け34と一体に回転し、軸受け34の小径部34bがドラム台30の支持穴30aに支持されて回転するため、巻取ドラム16は安定して回転する。これにより、昇降コード24を巻取りまたは巻解き、ラダーコード18の垂直コードを所定量だけ巻取りまたは巻解き、スラット12列が昇降あるいは回転する。
【0026】
このように、モータ20が駆動すると巻取ドラム16に回転が伝達されるが、回転以外のモータ20の振動も回転軸14を介して巻取ドラム16に伝搬される。これにより、巻取ドラム16は振動することになるが、巻取ドラム16に伝搬された振動は、これの係合凸部16bに嵌り合っている弾性体32により吸収され、弾性体32の突出軸32bに嵌り合っている軸受け34には伝達されない。このため、巻取ドラム16の振動がドラム台30に伝達されることはないので、ドラム台30が固定されているヘッドボックス10に振動が伝搬されることがなく、異音の発生が防止される。
【0027】
また、弾性体32と巻取ドラム16及び軸受け34とが非円形状部をもって一体回転するように連結されているため、巻取ドラム16と軸受け34とを安定的に一体化させることができ、軸ブレが防止される。
【0028】
また、仮に軸ブレが発生したとしても、弾性体32が緩衝して部品の破損を防ぐことができる。
【0029】
さらに、弾性体32は巻取ドラム16と軸受け34との間に設けられるので、小型の部材でよく、経済的である。
【0030】
なお、上記実施の形態では、2つの軸受け34で巻取ドラム16を支持していたが、1つの軸受け34のみで片持ちで1つの巻取ドラム16を支持する構成としてもよい。複数の巻取ドラム16で回転軸14を支持することができるからである。
【0031】
また、上記実施の形態では、遮蔽材としてスラットを用いた横型ブラインドを例にとって説明したが、これに限定されず、プリーツスクリーンなどの他の遮蔽材を用いたブラインドとしてもよい。
【0032】
また、上記実施の形態では、モータを用いてスラットを昇降させる電動ブラインドを例にとって説明したが、これに限定するものではなく、例えば、ヘッドボックスの一端に外部から手動で操作されることにより回転軸14に回転を伝達するプーリを設け、このプーリの回転を回転軸14を介して巻取ドラム16に伝達することによりスラット等の遮蔽材を昇降させるような手動のブラインドとしてもよい。この場合であっても、例えば、手動による操作によって発生する回転軸14の振動を弾性体32によって緩和することができる。
【0033】
また、遮蔽材を自重により降下させるタイプのブラインドの場合、自重により降下させる際の遮蔽材側から巻取ドラム16へ回転が伝達されるときの振動及び衝撃も弾性体32によって緩和することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 ヘッドボックス
12 スラット(遮蔽材)
14 回転軸
16 巻取ドラム
24 昇降コード
30 ドラム台
32 弾性体
32b 突出軸(非円形状部)
34 軸受け