特許第5981773号(P5981773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981773
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】構造用接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/02 20060101AFI20160818BHJP
   C09J 109/02 20060101ALI20160818BHJP
   C09J 109/06 20060101ALI20160818BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   C09J163/02
   C09J109/02
   C09J109/06
   C09J163/00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-127889(P2012-127889)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-253131(P2013-253131A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100780
【氏名又は名称】アイシン化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】服部 和男
(72)【発明者】
【氏名】脇井 友之
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−287411(JP,A)
【文献】 特開平02−133421(JP,A)
【文献】 特開昭63−189488(JP,A)
【文献】 特開2011−236324(JP,A)
【文献】 特開2002−294207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールを原料として合成された20℃で液状の主エポキシ樹脂と、NBR及びSBRから選ばれる少なくとも一種からなり該主エポキシ樹脂と反応しない固形ゴム成分と、加熱により活性化されるエポキシ樹脂用潜在性硬化剤と、を含み、
JIS-K2220に基づき剪断速度が15.5sec-1の条件で測定される見掛け粘度において、20℃における見掛け粘度(V20)が200〜500Pa・sの範囲にあり、40℃における見掛け粘度(V40)に対する20℃における見掛け粘度(V20)の比(V20/V40)の値が2.0以上かつ3.0未満の範囲にあり、
前記固形ゴム成分は前記主エポキシ樹脂100質量部に対して2.0〜3.0質量部含まれ、マトリクス中に均一に分散されている構造用接着剤組成物。
【請求項2】
ビスフェノールを原料として合成された20℃で液状の主エポキシ樹脂と、NBR及びSBRから選ばれる少なくとも一種からなり該主エポキシ樹脂と反応しない固形ゴム成分と、加熱により活性化されるエポキシ樹脂用潜在性硬化剤と、を含み、
JIS-K2220に基づき剪断速度が15.5sec-1の条件で測定される見掛け粘度において、20℃における見掛け粘度(V20)が200〜500Pa・sの範囲にあり、40℃における見掛け粘度(V40)に対する20℃における見掛け粘度(V20)の比(V20/V40)の値が2.0以上かつ3.0未満の範囲にあり、
前記固形ゴム成分は前記固形ゴム成分を除いた全体の質量を100質量部としたときに1.0〜3.0質量部含まれ、マトリクス中に均一に分散されている構造用接着剤組成物。
【請求項3】
ビスフェノールを原料として合成された20℃で液状の主エポキシ樹脂と、NBR及びSBRから選ばれる少なくとも一種からなり該主エポキシ樹脂と反応しない固形ゴム成分と、加熱により活性化されるエポキシ樹脂用潜在性硬化剤と、を含み、
JIS-K2220に基づき剪断速度が15.5sec-1の条件で測定される見掛け粘度において、20℃における見掛け粘度(V20)が200〜500Pa・sの範囲にあり、40℃における見掛け粘度(V40)に対する20℃における見掛け粘度(V20)の比(V20/V40)の値が2.0以上かつ3.0未満の範囲にあり、
前記主エポキシ樹脂と相溶し前記主エポキシ樹脂より高粘度であって、ゴム、ダイマー酸又はウレタンの少なくとも一種で変性された変性エポキシ樹脂である高粘度樹脂をさらに含む構造用接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、産業用車両等の車体パネル等の構造接着に用いられるエポキシ樹脂系の構造用接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の剛性を向上させるために、構造部位の鋼板接合に構造用接着剤が用いられている。この構造用接着剤としては、エポキシ樹脂系の接着剤が広く用いられている。例えば特開2005−272647号公報には、熱膨張率の差によって生じる内部応力を分散させることが可能なエポキシ樹脂系の構造用接着剤組成物が記載されている。また特開2011−236324号公報には、硬化後の表面に電着塗装を施すことができるエポキシ樹脂系の構造用接着剤が記載されている。
【0003】
ところで近年、接着剤とスポット溶接を併用したウェルドボンド工法が注目されている。ウェルドボンド工法においては、車体組立工程で接着剤が塗布され、次いでスポット溶接された後に、電着塗装が行われる。塗布された接着剤は、スポット溶接後には未硬化状態である。スポット溶接後に加熱して接着剤を硬化させることもできるが、工数の低減のためには、電着塗装工程を経た塗装乾燥炉における焼付時に接着剤が硬化することが望ましい。
【0004】
ところが既存の構造用接着剤は、塗布作業性を重視しているために、粘度が低く設定されているのが現状である。このような接着剤を用いると、鋼板からはみ出した接着剤が電着塗装工程あるいはその後の洗浄工程において粘度の低下により飛散・流出し、車体パネルの表面に付着したり電着液を汚染するという問題があった。
【0005】
この問題を解決するには、接着剤の塗布時に加温して粘度を増加させる方法、あるいは特開2011−514394号公報に記載されているように、電着塗装前にプレヒートして接着剤をある程度硬化させる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−272647号公報
【特許文献2】特開2011−236324号公報
【特許文献3】特開2011−514394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが接着剤の塗布時に加温して粘度を増加させる方法では、加温設備を設ける必要がありコストアップとなる。また接着剤が硬化しないようにするためには加温の温度を高くすることができず、塗布時の粘度を高くするにも限界があった。電着塗装前にプレヒートして接着剤をある程度硬化させる方法では、電着塗装工程の前段にプレヒートのための炉を新設する必要があり、製造ラインの仕様を大きく変更しなければならない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、接着剤の塗布時には作業性に優れるとともに、電着塗装工程あるいはその後の洗浄工程においては高粘度となって飛散・流出を防止でき、しかも加温設備やプレヒート設備を不要とし既存の設備で施工可能な、構造用接着剤組成物を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の構造用接着剤組成物の特徴は、ビスフェノールを原料として合成された20℃で液状の主エポキシ樹脂と、NBR及びSBRから選ばれる少なくとも一種からなり主エポキシ樹脂と反応しない固形ゴム成分と、加熱により活性化されるエポキシ樹脂用潜在性硬化剤と、を含み、
JIS-K2220に基づき剪断速度が15.5sec-1の条件で測定される見掛け粘度において、20℃における見掛け粘度(V20)が200〜500Pa・sの範囲にあり、40℃における見掛け粘度(V40)に対する20℃における見掛け粘度(V20)の比(V20/V40)の値が2.0以上かつ3.0未満の範囲にあることにある。
【発明の効果】
【0010】
従来のエポキシ系の構造用接着剤は、40℃における見掛け粘度(V40)に対する20℃における見掛け粘度(V20)の比(V20/V40)の値が3.0以上と大きく、粘度の感温性が高い。そのため飛散・流出を防止すべく電着塗装工程及びその後の洗浄工程(約40℃)における粘度を高く設計すると、接着剤の塗布時(約20℃)における粘度が極めて高くなり、塗布作業性が悪化してしまう。
【0011】
しかし本発明の構造用接着剤組成物によれば、40℃における見掛け粘度(V40)に対する20℃における見掛け粘度(V20)の比(V20/V40)の値が2.0以上かつ3.0未満の範囲と小さく、粘度の感温性が低い。したがって電着塗装工程及びその後の洗浄工程における粘度を十分に高くして飛散・流出を防止しても、20℃における見掛け粘度(V20)を200〜500Pa・sと小さくすることができ、塗布作業性の悪化を防止することができる。
【0012】
すなわち本発明の構造用接着剤組成物によれば、塗布時には作業性に優れるとともに、電着塗装工程及びその後の洗浄工程においては高粘度となって飛散・流出を防止でき、しかも加温設備やプレヒート設備を不要として既存の設備で施工可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】接着剤組成物の温度と見掛け粘度との関係を示すグラフである。
図2】実施例における耐流水圧性の試験方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の構造用接着剤組成物は、ビスフェノールを原料として合成された20℃で液状の主エポキシ樹脂と、固形ゴム成分と、潜在性硬化剤とを含んでいる。ビスフェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールPなどがあり、これらから選ばれる少なくとも一種を原料として合成されたエポキシ樹脂を主エポキシ樹脂として用いることができる。中でも高粘度のビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0015】
固形ゴム成分は、NBR及びSBRから選ばれる少なくとも一種からなるものであり、主エポキシ樹脂とは反応しないものである。前述の特許文献3には、エポキシ樹脂に液状NBRを混合することが記載されているが、液状NBRでは比(V20/V40)の値を2.0以上かつ3.0未満とすることは困難である。
【0016】
固形ゴム成分は、主エポキシ樹脂100質量部に対して2.0〜3.0質量部含まれていることが望ましい。固形ゴム成分が2.0質量部未満では比(V20/V40)の値を2.0以上かつ3.0未満とすることが困難となり、3.0質量部を超えるとエポキシ樹脂の架橋反応が阻害され、接着性能が低下する場合がある。
【0017】
固形ゴム成分の含有によって粘度の感温性が小さくなる理由は明らかではないが、未硬化状態におけるエポキシ樹脂の分子運動が抑制されるためと考えられている。この現象をさらに促進するには、固形ゴム成分はマトリクス中に均一に分散されていることが望ましい。しかし従来用いられているプラネタリーミキサー等による混合では、固形ゴム成分が凝集してしまいエポキシ樹脂中に均一に分散させることは困難である。
【0018】
そこで固形ゴム成分を高濃度で主エポキシ樹脂などと混合し、加圧ニーダーなどによって高圧分散した半製品を製造し、それに残りの成分を加えて製品とすることが望ましい。このような工法で製造することで、固形ゴム成分をマトリクス中に均一に高分散させることができる。
【0019】
固形ゴム成分としてNBRを用いることが好ましい。SBRを用いた場合より接着強度が向上するからである。またNBRの中でも、メタクリル酸を導入したXNBR、ブタジエンの一部をイソプレンに置換したNBIRなど、多官能性モノマーで架橋したタイプを用いれば、マトリクスへの分散性が向上するため好ましい。
【0020】
加熱により活性化されるエポキシ樹脂用潜在性硬化剤としては、グアナミン類、グアニジン類、アミノグアニジン類、ウレア類、イミダゾール類、変性ポリアミン及びこれらの誘導体、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素アミン錯体、有機酸ヒドラジッド、メラミンなどの群から選択して用いることができる。中でも広く用いられているジシアンジアミドが好ましい。なお潜在性硬化剤の添加量は、マトリクスのエポキシ当量に応じて決定される。
【0021】
主エポキシ樹脂と固形ゴム成分と潜在性硬化剤のみでは、40℃における見掛け粘度(V40)が十分高くない場合がある。そのような場合には、主エポキシ樹脂より高粘度の高粘度樹脂をさらに含み、20℃における見掛け粘度(V20)が200〜500Pa・sの範囲となり、比(V20/V40)の値が2.0以上かつ3.0未満となるようにすることが望ましい。こうすることで電着塗装工程及びその後の洗浄工程における飛散・流出を効果的に防止することができる。
【0022】
なお見掛け粘度(V20)を200〜500Pa・sの範囲とするのは、塗布時の粘度が200Pa・Sより低いとタレが生じやすく見掛け粘度(V40)も流水に耐え得る粘度(耐流水圧粘度)より低くなるときがあるからであり、また見掛け粘度(V20)が500Pa・sを超えると塗布時に吐出不良が発生しやすくなるためである。
【0023】
この高粘度樹脂としては、架橋反応に寄与するエポキシ基を有する樹脂が好ましい。主エポキシ樹脂より高分子量で常温で固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることもできるが、接着強度の向上を図るためにゴム、ダイナー酸又はウレタンで変性された変性エポキシ樹脂を用いることが好ましい。高粘度樹脂の添加量は、目的とする粘度に応じて決定される。
【0024】
ゴム変性エポキシ樹脂とは、エポキシ基を二個以上有し、骨格がゴムであるエポキシ樹脂をいう。骨格のゴムとしては、ポリブタジエン、NBRなどが例示される。またウレタン変性エポキシ樹脂とは、分子中にウレタン結合と2個以上のエポキシ基を有するものをいう。例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリヒドロキシ化合物と、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物とを反応させて得られる樹脂を用いることができる。
【0025】
本発明の構造用接着剤組成物は、上記した成分に加えて、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルクなどの体質顔料(充填材)、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄などの着色顔料を添加することができる。またケッチェンブラック、シリカ、微粒炭酸カルシウム、セピオライト等のチキソ材を添加してもよい。さらに剥離強度など接着性を改良する接着性改良剤として、アクリル樹脂を添加することもできる。
【0026】
またn-ブタノールグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエステル等の一官能型反応性希釈剤、あるいは1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどの多官能型の反応性希釈剤を添加することもできる。
【0027】
本発明の構造用接着剤組成物は、JIS-K2220に基づき剪断速度が15.5sec-1の条件で測定される見掛け粘度において、40℃における見掛け粘度(V40)に対する20℃における見掛け粘度(V20)の比(V20/V40)の値が2.0以上かつ3.0未満の範囲となるように、上記した各成分を混合することで調製される。この見掛け粘度はSOD粘度計、例えば株式会社明峰社製作所製の圧力式見掛粘度計、株式会社離合社製の見かけ粘度試験器(空気浴タイプ)などを用いて測定することができる。
【0028】
以下、参考例、実施例及び比較例により本発明の実施態様を具体的に説明する。
【0029】
[参考例]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「EP4100」アデカ株式会社製)40質量部と、ベール状NBR(「DN-214」日本ゼオン株式会社製)1質量部と、重質炭酸カルシウム(竹原化学株式会社製)35質量部とを、この質量比で加圧ニーダー装置に投入し、加圧混練して、エポキシ樹脂マトリクスにNBRと炭酸カルシウムとが高分散された半製品を調製した。
【0030】
表1にも示したように、この半製品76質量部に対し、反応性希釈剤(「ED-503」アデカ株式会社製)10質量部と、チキソ材としてのケッチェンブラック(「カーボンECP」ライオン株式会社製)2質量部と、接着性改良剤としてのアクリル樹脂(「F-351」日本ゼオン株式会社製)8質量部と、潜在性硬化剤としてのジシアンジアミド5質量部と、をさらに加えて撹拌混合し、本参考例の構造用接着剤組成物を調製した。
【実施例1】
【0031】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「EP4100」アデカ株式会社製)30質量部と、ウレタン変性エポキシ樹脂(「EPU-78-11」アデカ株式会社製)10質量部と、ベール状NBR(「DN-214」日本ゼオン株式会社製)1質量部と、重質炭酸カルシウム(竹原化学株式会社製)35質量部とを、この質量比で加圧ニーダー装置に投入し、加圧混練して、エポキシ樹脂マトリクスにNBRと炭酸カルシウムとが高分散された半製品を調製した。
【0032】
表1にも示したように、この半製品76質量部に対し、反応性希釈剤(「ED-503」アデカ株式会社製)10質量部と、チキソ材としてのケッチェンブラック(「カーボンECP」ライオン株式会社製)2質量部と、接着性改良剤としてのアクリル樹脂(「F-351」日本ゼオン株式会社製)8質量部と、潜在性硬化剤としてのジシアンジアミド5質量部をさらに加えて撹拌混合し、本実施例の構造用接着剤組成物を調製した。
【実施例2】
【0033】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「EP4100」アデカ株式会社製)30質量部と、ウレタン変性エポキシ樹脂(「EPU-78-11」アデカ株式会社製)10質量部と、ベール状NBR(「DN-214」日本ゼオン株式会社製)3質量部と、重質炭酸カルシウム(竹原化学株式会社製)35質量部とを、この質量比で加圧ニーダー装置に投入し、加圧混練して、エポキシ樹脂マトリクスにNBRと炭酸カルシウムとが高分散された半製品を調製した。
【0034】
表1にも示したように、この半製品78質量部に対し、反応性希釈剤(「ED-503」アデカ株式会社製)10質量部と、チキソ材としてのケッチェンブラック(「カーボンECP」ライオン株式会社製)2質量部と、接着性改良剤としてのアクリル樹脂(「F-351」日本ゼオン株式会社製)8質量部と、潜在性硬化剤としてのジシアンジアミド5質量部をさらに加えて撹拌混合し、本実施例の構造用接着剤組成物を調製した。
【実施例3】
【0035】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「EP4100」アデカ株式会社製)30質量部と、ウレタン変性エポキシ樹脂(「EPU-78-11」アデカ株式会社製)10質量部と、ベール状SBR(「Nipol NS522」日本ゼオン株式会社製)1質量部と、重質炭酸カルシウム(竹原化学株式会社製)35質量部とを、この質量比で加圧ニーダー装置に投入し、加圧混練して、エポキシ樹脂マトリクスにNBRと炭酸カルシウムとが高分散された半製品を調製した。
【0036】
表1にも示したように、この半製品76質量部に対し、反応性希釈剤(「ED-503」アデカ株式会社製)10質量部と、チキソ材としてのケッチェンブラック(「カーボンECP」ライオン株式会社製)2質量部と、接着性改良剤としてのアクリル樹脂(「F-351」日本ゼオン株式会社製)8質量部と、潜在性硬化剤としてのジシアンジアミド5質量部をさらに加えて撹拌混合し、本実施例の構造用接着剤組成物を調製した。
【実施例4】
【0037】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「EP4100」アデカ株式会社製)20質量部と、ウレタン変性エポキシ樹脂(「EPU-78-11」アデカ株式会社製)20質量部と、ベール状NBR(「DN-214」日本ゼオン株式会社製)1質量部と、重質炭酸カルシウム(竹原化学株式会社製)35質量部とを、この質量比で加圧ニーダー装置に投入し、加圧混練して、エポキシ樹脂マトリクスにNBRと炭酸カルシウムとが高分散された半製品を調製した。
【0038】
表1にも示したように、この半製品76質量部に対し、反応性希釈剤(「ED-503」アデカ株式会社製)10質量部と、チキソ材としてのケッチェンブラック(「カーボンECP」ライオン株式会社製)2質量部と、接着性改良剤としてのアクリル樹脂(「F-351」日本ゼオン株式会社製)8質量部と、潜在性硬化剤としてのジシアンジアミド5質量部をさらに加えて撹拌混合し、本実施例の構造用接着剤組成物を調製した。
【0039】
[比較例1]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「EP4100」アデカ株式会社製)30質量部と、ウレタン変性エポキシ樹脂(「EPU-78-11」アデカ株式会社製)10質量部と、重質炭酸カルシウム(竹原化学株式会社製)35質量部と、液状NBR(「Nipol 1312」日本ゼオン株式会社製)1質量部と、反応性希釈剤(「ED-503」アデカ株式会社製)10質量部と、チキソ材としてのケッチェンブラック(「カーボンECP」ライオン株式会社製)2質量部と、接着性改良剤としてのアクリル樹脂(「F-351」日本ゼオン株式会社製)8質量部と、潜在性硬化剤としてのジシアンジアミド5質量部をプラネタリーミキサーを用いて撹拌混合し、本比較例の構造用接着剤組成物を調製した。
【0040】
[比較例2]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「EP4100」アデカ株式会社製)40質量部と、ウレタン変性エポキシ樹脂(「EPU-78-11」アデカ株式会社製)10質量部と、重質炭酸カルシウム(竹原化学株式会社製)30質量部と、液状NBR(「Nipol 1312」日本ゼオン株式会社製)1質量部と、反応性希釈剤(「ED-503」アデカ株式会社製)5質量部と、チキソ材としてのケッチェンブラック(「カーボンECP」ライオン株式会社製)2質量部と、接着性改良剤としてのアクリル樹脂(「F-351」日本ゼオン株式会社製)8質量部と、潜在性硬化剤としてのジシアンジアミド5質量部をプラネタリーミキサーを用いて撹拌混合し、本比較例の構造用接着剤組成物を調製した。
【0041】
[比較例3]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「EP4100」アデカ株式会社製)30質量部と、ウレタン変性エポキシ樹脂(「EPU-78-11」アデカ株式会社製)10質量部と、重質炭酸カルシウム(竹原化学株式会社製)35質量部と、液状NBR(「Nipol 1312」日本ゼオン株式会社製)1質量部と、反応性希釈剤(「ED-503」アデカ株式会社製)10質量部と、チキソ材としてのケッチェンブラック(「カーボンECP」ライオン株式会社製)2質量部と、接着性改良剤としてのアクリル樹脂(「F-351」日本ゼオン株式会社製)8質量部と、潜在性硬化剤としてのジシアンジアミド5質量部をプラネタリーミキサーを用いて撹拌混合し、本比較例の構造用接着剤組成物を調製した。
【0042】
<粘度の測定>
参考例、実施例及び比較例の構造用接着剤組成物について、SOD粘度計(見かけ粘度試験器「Cat.No.860R-01M」株式会社離合社製)を用い、JIS-K2220の規定に基づき剪断速度が15.5sec-1の条件にて、20℃における見掛け粘度(V20)と、30℃における見掛け粘度(V30)と、40℃における見掛け粘度(V40)をそれぞれ測定した。結果を図1に示す。また40℃における見掛け粘度(V40)に対する20℃における見掛け粘度(V20)の比(V20/V40)の値をそれぞれ算出し、結果を表1に示す。
【0043】
図1から、参考例及び各実施例の構造用接着剤組成物は、各比較例の構造用接着剤組成物に比べてグラフの傾斜が緩やかであり、粘度の感温性が鈍くなっていることがわかる。そして比(V20/V40)の値は、参考例及び実施例の構造用接着剤組成物は全て2.0以上かつ3.0未満の範囲にあるのに対し、比較例の構造用接着剤組成物は全て3.0以上である。
【0044】
<耐流水圧性試験>
電着塗装工程における洗浄過程を模擬し、図2に示す装置を用いて耐流水圧性を試験した。先ず、室温(20℃)において、参考例、実施例及び比較例で調製された構造用接着剤組成物1を、亜鉛溶融めっき鋼板2の表面にφ5mmの断面半円形のビード状に塗布した。このテストパネルを、ビード状の構造用接着剤組成物1が水平面に対し平行を保つように、水平面に対して45°傾斜させた状態(半円ビード状の構造用接着剤組成物1が水平方向に延びた状態)に保持し、塗布された構造用接着剤組成物1から水平距離でL=50mm離れたテストパネル上の上方の位置に、この位置からH=250mmの高さから40℃の水を落下させ、その水流落下位置から水流が亜鉛溶融めっき鋼板2の表面に沿って流下し、半円ビード状の構造用接着剤組成物1の長手方向中央に衝突するようにした。水流は、φ12mmのホース3から流量15L/minで5秒間流下させた。
【0045】
その後、半円ビード状の構造用接着剤組成物1の状態を目視で判定し、結果を表1に示す。ビード形状に異常が認められないものを○、ビード形状が大きく変化したものを×、○と×の中間程度にビード形状が変化したものを△、と評価した。
【0046】
表1から、実施例1〜3の構造用接着剤組成物は比較例1〜3に比べて耐流水圧性が高いことが明らかであり、これはNBR又はSBRを含んだことによる効果であることが明らかである。
【0047】
また参考例の構造用接着剤組成物は耐流水圧性が低いが、実施例1と比較すると、参考例の構造用接着剤組成物におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂の一部をウレタン変性エポキシ樹脂に置換することで耐流水圧性が良好となることがわかる。すなわち参考例の構造用接着剤組成物の耐流水圧性が低いのは、20℃における見掛け粘度が低く、V40時の耐流水圧粘度が不足していることに起因しているのであり、20℃における見掛け粘度(V20)が200〜500Pa・sの範囲となるように高粘度樹脂を添加すれば、耐流水圧粘度が上昇し耐流水圧性を満足させることができる。
【0048】
一方、比較例の構造用接着剤組成物においては常温で固形のNBR又はSBRを含まないのであるから、高粘度樹脂や反応性希釈剤などの量を加減するのみでは、比(V20/V40)の値を2.0以上かつ3.0未満の範囲とすることが困難であり、見掛け粘度(V40)を流水に耐え得る粘度まで上昇させると見掛け粘度(V20)が塗布作業に適する粘度を超えるため、塗布作業性と耐流水圧性の両立は困難である。
【0049】
<剪断強度・剥離強度>
参考例、実施例及び比較例の構造用接着剤組成物について、JIS K6850に準じて剪断強度を測定した。各構造用接着剤組成物を180℃×30分の条件で熱風オーブン中で硬化させ、10mm×100mm×1.6mmの板を作製し雰囲気温度20℃で測定した。またJIS K6850に準じて、20℃におけるT字剥離強度を測定した。テストピースは亜鉛溶融めっき鋼板(25mm×200mm×0.8mm)を用いて作製した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1からわかるように、ウレタン変性エポキシ樹脂を含まない参考例が最も剥離強度が低いものの、実施例1のようにウレタン変性エポキシ樹脂を混合することで十分な特性を発現させることができる。また剪断強度には有意差が認められず、NBR又はSBRを含んでも接着剤としての機械的特性には影響が無いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の構造用接着剤組成物は、現状の設備を変更することなく電着塗装工程の乾燥過程で硬化させることができるとともに、構造用接着剤組成物による電着液の汚染やパネル表面への付着などの不具合を防止することができる。したがって自動車や産業車両の車体製造ラインに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1:構造用接着剤組成物 2:亜鉛溶融めっき鋼板 3:ホース
図1
図2