特許第5981777号(P5981777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981777
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】充電システムおよび充電方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20160818BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20160818BHJP
   H01M 10/46 20060101ALI20160818BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   H02J7/00 303C
   H02J7/00 P
   H01M10/44 Q
   H01M10/46
   B60L11/18 C
【請求項の数】18
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-132999(P2012-132999)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-258828(P2013-258828A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宣宏
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 修
(72)【発明者】
【氏名】内山 隆平
【審査官】 緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−034554(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0056600(US,A1)
【文献】 特開2007−267563(JP,A)
【文献】 特開平08−186940(JP,A)
【文献】 特開2005−176520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12,
B60L7/00−13/00,
B60L15/00−15/42,
H01M10/42−10/48,
H02J7/00−7/12,
H02J7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からの供給により給電装置の蓄電池に充電された電力を、前記給電装置の給電端子から受電装置の受電端子を経由して前記受電装置の蓄電池を充電する充電システムにおいて、
前記給電装置に、
充放電可能な容量が大きい高エネルギー密度蓄電素子で構成された第1蓄電モジュールと、
単位時間当たりの充放電可能な電流が大きい高出力密度蓄電素子または複数並列接続された前記高出力密度蓄電素子で構成された蓄電ユニットが複数直列接続されてなる蓄電体を有する第2蓄電モジュールと、
前記第1蓄電モジュールを外部電源に接続し第2蓄電モジュールから切り離した第1接続状態と、第1蓄電モジュールを第2蓄電モジュールに接続し前記外部電源とは切り離した第2接続状態と、の切替が可能な第1スイッチと、
前記第1スイッチの切替を含めた制御が可能な制御部と、を備え、
前記受電装置に、
単位時間当たりの充放電可能な電流が大きい高出力密度蓄電素子または複数並列接続された前記高出力密度蓄電素子で構成された蓄電ユニットが複数直列接続されてなる蓄電体を有する第3蓄電モジュールと、
充放電可能な容量が大きい高エネルギー密度蓄電素子で構成された第4蓄電モジュールと、
前記第4蓄電モジュールを負荷に接続し第3蓄電モジュールから切り離した第3接続状態と、前記第4蓄電モジュールを前記第3蓄電モジュールに接続し負荷から切り離した第4接続状態と、の切替が可能な第2スイッチと、
前記第2スイッチを含めた制御が可能な制御部と、を備え
さらに、前記給電装置に、前記第2蓄電モジュールと前記給電端子との間の給電経路に介挿され該給電経路をON/OFFする給電スイッチを備え、
前記制御部は、
前記第1スイッチが前記第2接続状態と、前記第2スイッチが前記第4接続状態と、のいずれかの時に前記給電スイッチをOFFし、
前記第1スイッチが前記第2接続状態と、前記第2スイッチが前記第4接続状態と、のいずれでもない時に前記給電スイッチをONすることを特徴とする充電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の充電システムにおいて、
前記第3蓄電モジュールは、
前記蓄電ユニット毎に並列接続されスイッチがONすることによりバイパス経路が導通されるバイパススイッチを含む複数のバイパス回路と、
前記蓄電ユニット毎の電圧値に基づいて前記バイパススイッチを制御するバイパス制御部と、を備えたことを特徴とする充電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の充電システムにおいて、
前記第3蓄電モジュールは、
前記蓄電体の入出力経路に直列に介挿され該入出力経路をON/OFFするスイッチ回路を備え、
前記バイパス制御部は、さらに、該スイッチ回路を制御する機能を有することを特徴とする充電システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の充電システムにおいて、
前記第1スイッチは、
前記第1接続状態と、前記第2接続状態と、に加えて、
前記第2蓄電モジュールを前記外部電源に接続し前記第1蓄電モジュールから切り離した第5接続状態と、
前記第1スイッチに係る接点の少なくともいずれか2点を導通させた状態と、を選択可能であり、
前記第2スイッチは、
前記第3接続状態と、前記第4接続状態と、に加えて、
前記第3蓄電モジュールを前記負荷と接続し前記第4蓄電モジュールとは切り離した第6接続状態と、
前記第2スイッチに係る接点の少なくともいずれか2点を導通させた状態と、を選択可能であることを特徴とする充電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の充電システムにおいて、
前記制御部は、
前記第2接続状態と、前記第5接続状態と、前記第4接続状態と、前記第6接続状態と、のいずれかの時に前記給電スイッチをOFFし、
前記第2接続状態と、前記第5接続状態と、前記第4接続状態と、前記第6接続状態と、のいずれでもない時に前記給電スイッチをONすることを特徴とする充電システム。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の充電システムにおいて、
前記外部電源は、太陽電池または交流電源を含むことを特徴とする充電システム。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の充電システムにおいて、
前記高出力密度蓄電素子は、
リチウムイオンキャパシタまたは電気二重層キャパシタにより構成されていることを特徴とする充電システム。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の充電システムにおいて、
前記受電装置は移動体に含まれて該移動体に駆動電力を供給することを特徴とする充電システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の充電システムにおいて、
前記第2蓄電モジュールに含まれる蓄電ユニットの満充電時の電力量の合計は、前記第3蓄電モジュールに含まれる蓄電ユニットの満充電時の電力量の合計より多いことを特徴とする充電システム。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の充電システムを用いる充電方法であって、
前記第2蓄電モジュールに蓄電された電力により、前記第3蓄電モジュールを充電する第1充電工程を含むことを特徴とする充電方法。
【請求項11】
請求項2からのいずれか一項に記載の充電システムを用いる充電方法であって、
前記第2蓄電モジュールに蓄電された電力により、前記第3蓄電モジュールを充電する第1充電工程には、
数の前記蓄電ユニットの少なくとも1つの電圧値が充電目標電圧以上になるまで、すべてのバイパススイッチをOFFして、前記蓄電体を充電する第1ステップと、
充電目標電圧に到達した蓄電ユニットに対応するバイパス回路のバイパススイッチをONして、該蓄電ユニットに流れていた電流を該バイパス回路に迂回させる第2ステップと、
前記第2ステップによって電流を前記迂回された蓄電ユニットの電圧値が、充電再開電圧以下になった時、該蓄電ユニットに対応するバイパススイッチをOFFして、前記迂回させていた電流を該蓄電ユニットに流す第3ステップと、を含むことを特徴とする充電方法。
【請求項12】
請求項11に記載の充電方法において、
少なくとも1つの蓄電ユニットの電圧値が充電目標電圧以上になった時から第1所定時間を経過した後、該蓄電体の入出力経路をOFFして充電を中断または完了する第4ステップを含むことを特徴とする充電方法。
【請求項13】
請求項1または1に記載の充電方法において、
前記第1充電工程は、
前記第2ステップと前記第3ステップとが繰り返し実行され、
該第2ステップでは、
充電目標電圧に到達してから第2所定時間が経過した蓄電ユニットに対応するバイパススイッチをONし、該蓄電ユニットに流れていた電流を該バイパス回路に迂回させることを特徴とする充電方法。
【請求項14】
請求項1から1のいずれか一項に記載の充電方法において、
前記給電端子と前記受電端子とが電気的に接続されていない状態で、前記第1蓄電モジュールに蓄電された電力により前記第2蓄電モジュールを充電する第2充電工程を含むことを特徴とする充電方法。
【請求項15】
請求項1から1のいずれか一項に記載の充電方法において、
前記給電端子と前記受電端子とが電気的に接続されていない状態で、前記第3蓄電モジュールに蓄電された電力により前記第4蓄電モジュールを充電する第3充電工程を含むことを特徴とする充電方法。
【請求項16】
請求項1から1のいずれか一項に記載の充電方法において、
前記外部電源の電力により前記第1蓄電モジュールを充電する第4充電工程を含むことを特徴とする充電方法。
【請求項17】
請求項1から1のいずれか一項に記載の充電方法において、
前記給電端子と前記受電端子とが電気的に接続されていない状態で、前記外部電源の電力により前記第2蓄電モジュールを充電する第5充電工程を含むことを特徴とする充電方法。
【請求項18】
請求項1に記載の充電方法において、
前記外部電源の電力により前記第1蓄電モジュールを充電する第4充電工程を、前記第充電工程と同時に行うことを特徴とする充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電装置からの電力供給によって受電装置を充電する充電システムおよび方法に関し、特に急速充電に適した充電システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商用交流電源に電源プラグを接続した状態で使用される据置き型の電子機器とは異なり、自動搬送車、および電動カートなどの移動体、並びに携帯電話機、およびノートパソコンなどのモバイル電子機器においては、電源装置として蓄電池が使用されている。具体的な蓄電池としては、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、およびリチウムイオン電池が候補とされている。特に、リチウムイオン電池は、鉛やカドミウムなどの有害金属を含まず、体積あたりの重量が軽く、かつ放電容量が大きいことから、その使用が増加している。
【0003】
近年、上述の移動体の一種である電気自動車の開発が盛んになっている。電気自動車は動力源として蓄電池のセルを複数個含む蓄電モジュール10を搭載している。使用により放電した各セルを再度使用できるように充電するためには、一般のガソリン自動車にガソリンを補給するガソリンスタンドと同様に、その蓄電モジュール10への充電が可能な給電装置を設置した充電スタンドが必要である。
【0004】
このような電気自動車用の給電装置は、例えば100Vまたは200Vの家庭用交流電流、または6000Vの高圧交流電流を、その蓄電モジュール10の電圧に変換して整流し、その整流出力を電流量を制御しながらその蓄電モジュール10に給電するものである。なお、蓄電モジュール10の電圧は、使用するセルの種類と、直列に接続されたセル数によって定まり、例えば50〜100V程度に設計される。
【0005】
ここで、電気自動車は、その走行用モーターに必要な数100kWの電力供給能力と、1回の充電で数100kmの走行距離を保障できる放電容量と、を備えた蓄電モジュール10を搭載する必要がある。この用途には、軽量かつ高容量のリチウムイオン電池を用いた蓄電モジュール10が、現時点においては最適であると考えられる。
この蓄電モジュールは、複数のセルが直列接続された蓄電体を含んでおり、直列接続された各セル電圧の合計電圧で放電することができる。また、この蓄電体に含まれる個々のセルを、単数、または並列接続された複数のセルで構成される蓄電ユニットに置き換えれば、さらに容量を大きくして長時間使用することも可能である。
【0006】
そして、蓄電池の充電方法としては、CCCV(constant current constant voltage)充電が知られている。このCCCV充電では、まず蓄電池を定電流Iで充電し、蓄電池の電圧が目標とする最大値Vに達したことを検知すると定電流充電を停止する。なお、蓄電池には、内部抵抗rがあることを考慮する必要がある。そのため、定電流充電を停止した時点で、蓄電池の電圧Eには、内部抵抗rによる電圧降下Ir(以下、「Ir電圧降下分」という)を含むため、実際のところ蓄電池内の電極に、E=V−Irの電圧でしか充電されていない。すなわち、電流Iが大きいほど、実際に充電された電圧Eと目標とする充電上限電圧Vとの乖離が大きいことになる。
【0007】
そこで、CCCV充電では、定電流充電を完了した後、電流をIから0に近いI´まで徐々に下げることによってIr電圧降下分を減少させながら定電圧Vで充電を行い、満充電に近い状態E´=V−I´rに到達させて定電圧充電を完了する。
上述したCCCV充電によれば、内部抵抗rの高い蓄電池であっても満充電に近い充電が可能であるが、充電に長時間を要する欠点がある。例えば、携帯電話機に使用される550mAhのリチウムイオン電池をCCCV充電する場合には、定電流充電に1時間と、定電圧充電に1時間との合計2時間を要する。さらに、電池容量が大きくなるにしたがって充電時間も増加する。
【0008】
同様に、電気自動車が、1回の充電で走行可能な距離を長くするには、搭載する蓄電池の容量を増加させることにより実現できるが、それに応じて充電に要する時間が長くなるという問題があった。このような、電池容量の大きさに応じて充電所要時間が長くなることの原因は、充電電流の最大値が、電気化学反応の速度による制限を受けるからである。
つまり、電気エネルギーを、電気化学反応によって、化学エネルギーに変換して蓄える蓄電池は、電気化学反応の速度で、充電電流の最大値が制限されるため、電池容量の大きさに比例した充電電流を加えられない。したがって、電池容量の大きさに応じて充電所要時間が長時間化することは、避けられないのである。
【0009】
これに対して、キャパシタは、電気エネルギーを、分極による静電エネルギーとして蓄えるので、電気化学反応を要さない。したがって、上述した電気化学反応の速度で決まる充電電流の上限のないキャパシタは、蓄電池の100倍程度の電流による急速充放電が可能である。したがって、受電装置側の蓄電モジュールにキャパシタを用いれば、蓄電池では達成できない急速充電が可能となる。
【0010】
このような背景技術において、移動体の受電装置に短時間で充電するための方法として、受電装置側の蓄電モジュールに、電気二重層キャパシタ、またはその電気二重層キャパシタに補助エネルギー源として蓄電池を並列接続した装置を使用する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、キャパシタと蓄電池とを並列接続した受電装置において、蓄電池の出力が低下した場合にキャパシタから充電する方法も提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
一方、100〜200Vの商用交流電源を使用する給電装置において、急速放電を可能とするためには、大容量の受電設備および大型の電源回路が必要となり設置が困難である。特に、充電所要時間を短縮するための急速充電には、その電力需要が数100kVA程度となるので、受電設備を大容量のものに増強する必要が生じる。つまり、低圧電力線のみが敷設されている任意の個所に充電所を設置することは不可能である。
【0012】
そこで、このような状況下で給電装置から急速放電するための方法として、小型の電源回路と、蓄電池のセルを必要数だけ並列接続した蓄電モジュールと、を用いた給電装置により、その蓄電モジュールを小電流で充電することと、大電流で放電させること、の両立を可能とし、受電装置側の蓄電池を急速充電する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0013】
そして、交流電源から蓄電池または大容量コンデンサを充電する低速充電部と、その蓄電池または大容量コンデンサの大電流放電により負荷の蓄電池またはコンデンサを急速に充電する急速充電部とからなる急速給電装置が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−163016号公報
【特許文献2】特開2008−137451号公報
【特許文献3】特開平6−253461号公報
【特許文献4】特開2011−36117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1,2に記載された充電システムおよび方法により、受電装置側は急速充電に対応可能と考えられる。しかしながら、急速充電に給電装置側を対応可能にするためには、短縮した充放電時間に半比例させるように、電源装置の容量を大きくして、単位時間当たりの電力供給能力を高める必要がある。
また、受電装置側に急速充放電可能なキャパシタを使用した場合、その受電装置の内部で並列接続された蓄電池よりも、キャパシタの自己放電による電圧低下が速い。そのため、充電後の電源装置を、電力消費しない不使用状態で長時間、例えば数十日を経過すると、キャパシタが自己放電して空に近くなる。その電源装置を搭載した移動体等が稼働するための電力需要に応じて再稼働する場合、空に近いキャパシタに、並列接続した蓄電池から過大な突入電流が流れることがある。
【0016】
一方、特許文献3,4に記載された充電システムおよび方法においては、給電装置側は急速放電に対応可能と考えられるが、受電装置側の蓄電池は急速充電性が劣ると考えられる。
そこで、本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、小規模で低容量の外部電源に依存する給電装置、あるいは低圧電力線のみが敷設されている任意の個所に設置された給電装置から、受電装置への急速充電が可能な充電システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1記載の発明は、外部電源からの供給により給電装置の蓄電池に充電された電力を、前記給電装置の給電端子から受電装置の受電端子を経由して前記受電装置の蓄電池を充電する充電システムにおいて、前記給電装置に、充放電可能な容量が大きい高エネルギー密度蓄電素子で構成された第1蓄電モジュールと、単位時間当たりの充放電可能な電流が大きい高出力密度蓄電素子、または複数並列接続された前記高出力密度蓄電素子で構成された蓄電ユニットが複数直列接続されてなる蓄電体を有する第2蓄電モジュールと、前記第1蓄電モジュールを外部電源に接続し第2蓄電モジュールから切り離した第1接続状態と、第1蓄電モジュールを第2蓄電モジュールに接続し前記外部電源とは切り離した第2接続状態と、の切替が可能な第1スイッチと、前記第1スイッチの切替を含めた制御が可能な制御部と、を備え、前記受電装置に、単位時間当たりの充放電可能な電流が大きい高出力密度蓄電素子、または複数並列接続された前記高出力密度蓄電素子で構成された蓄電ユニットが複数直列接続されてなる蓄電体を有する第3蓄電モジュールと、充放電可能な容量が大きい高エネルギー密度蓄電素子で構成された第4蓄電モジュールと、前記第4蓄電モジュールを負荷に接続し第3蓄電モジュールから切り離した第3接続状態と、前記第4蓄電モジュールを前記第3蓄電モジュールに接続し負荷から切り離した第4接続状態と、の切替が可能な第2スイッチと、前記第2スイッチを含めた制御が可能な制御部と、を備え、さらに、前記給電装置に、前記第2蓄電モジュールと前記給電端子との間の給電経路に介挿され該給電経路をON/OFFする給電スイッチを備え、前記制御部は、前記第1スイッチが前記第2接続状態と、前記第2スイッチが前記第4接続状態と、のいずれかの時に前記給電スイッチをOFFし、前記第1スイッチが前記第2接続状態と、前記第2スイッチが前記第4接続状態と、のいずれでもない時に前記給電スイッチをONすることを特徴とする。
【0018】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の充電システムにおいて、前記第3蓄電モジュールは、前記蓄電ユニット毎に並列接続されスイッチがONすることによりバイパス経路が導通されるバイパススイッチを含む複数のバイパス回路と、前記蓄電ユニット毎の電圧値に基づいて前記バイパススイッチを制御するバイパス制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の充電システムにおいて、前記第3蓄電モジュールは、前記蓄電体の入出力経路に直列に介挿され該入出力経路をON/OFFするスイッチ回路を備え、前記バイパス制御部は、さらに、該スイッチ回路を制御する機能を有することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の充電システムにおいて、前記第1スイッチは、前記第1接続状態と、前記第2接続状態と、に加えて、前記第2蓄電モジュールを前記外部電源に接続し前記第1蓄電モジュールから切り離した第5接続状態と、前記第1スイッチに係る接点の少なくともいずれか2点を導通させた状態と、を選択可能であり、前記第2スイッチは、前記第3接続状態と、前記第4接続状態と、に加えて、前記第3蓄電モジュールを前記負荷と接続し前記第4蓄電モジュールとは切り離した第6接続状態と、前記第2スイッチに係る接点の少なくともいずれか2点を導通させた状態と、を選択可能であることを特徴とする。
【0021】
請求項に係る発明は、請求項4に記載の充電システムにおいて、
前記制御部は、前記第2接続状態と、前記第5接続状態と、前記第4接続状態と、前記第6接続状態と、のいずれかの時に前記給電スイッチをOFFし、前記第2接続状態と、前記第5接続状態と、前記第4接続状態と、前記第6接続状態と、のいずれでもない時に前記給電スイッチをONすることを特徴とする。
【0022】
請求項に係る発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の充電システムにおいて、外部電源は、太陽電池または交流電源を含むことを特徴とする。
請求項に係る発明は、請求項1からのいずれかに記載の充電システムにおいて、前記高出力密度蓄電素子は、リチウムイオンキャパシタまたは電気二重層キャパシタにより構成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項に係る発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の充電システムにおいて、前記受電装置は移動体に含まれて該移動体に駆動電力を供給することを特徴とする。
請求項に係る発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の充電システムにおいて、前記第2蓄電モジュールに含まれる蓄電ユニットの満充電時の電力量の合計は、前記第3蓄電モジュールに含まれる蓄電ユニットの満充電時の電力量の合計より多いことを特徴とする。
【0024】
請求項1に係る発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の充電システムを用いる充電方法であって、前記第2蓄電モジュールに蓄電された電力により、前記第3蓄電モジュールを充電する第1充電工程を含むことを特徴とする。
請求項1に係る発明は、請求項2からのいずれか一項に記載の充電システムを用いる充電方法であって、前記第2蓄電モジュールに蓄電された電力により、前記第3蓄電モジュールを充電する第1充電工程には、数の前記蓄電ユニットの少なくとも1つの電圧値が充電目標電圧以上になるまで、すべてのバイパススイッチをOFFして、前記蓄電体を充電する第1ステップと、充電目標電圧に到達した蓄電ユニットに対応するバイパス回路のバイパススイッチをONして、該蓄電ユニットに流れていた電流を該バイパス回路に迂回させる第2ステップと、前記第2ステップによって電流を前記迂回された蓄電ユニットの電圧値が、充電再開電圧以下になった時、該蓄電ユニットに対応するバイパススイッチをOFFして、前記迂回させていた電流を該蓄電ユニットに流す第3ステップと、を含むことを特徴とする。
【0025】
請求項1に係る発明は、請求項11に記載の充電方法において、少なくとも1つの蓄電ユニットの電圧値が充電目標電圧以上になった時から第1所定時間を経過した後、該蓄電体の入出力経路をOFFして充電を中断または完了する第4ステップを含むことを特徴とする。
請求項1に係る発明は、請求項1または1に記載の充電方法において、前記第1充電工程は、前記第2ステップと前記第3ステップとが繰り返し実行され、該第2ステップでは、充電目標電圧に到達してから第2所定時間が経過した蓄電ユニットに対応するバイパススイッチをONし、該蓄電ユニットに流れていた電流を該バイパス回路に迂回させることを特徴とする。
【0026】
請求項1に係る発明は、請求項1から1のいずれか一項に記載の充電方法において、前記給電端子と前記受電端子とが電気的に接続されていない状態で、前記第1蓄電モジュールに蓄電された電力により前記第2蓄電モジュールを充電する第2充電工程を含むことを特徴とする。
請求項1に係る発明は、請求項1から1のいずれか一項に記載の充電方法において、前記給電端子と前記受電端子とが電気的に接続されていない状態で、前記第3蓄電モジュールに蓄電された電力により前記第4蓄電モジュールを充電する第3充電工程を含むことを特徴とする。
【0027】
請求項1に係る発明は、請求項1から1のいずれか一項に記載の充電方法において、前記外部電源の電力により前記第1蓄電モジュールを充電する第4充電工程を含むことを特徴とする
【0028】
請求項1に係る発明は、請求項1から1のいずれか一項に記載の充電方法において、前記給電端子と前記受電端子とが電気的に接続されていない状態で、前記外部電源の電力により前記第2蓄電モジュールを充電する第5充電工程を含むことを特徴とする。
請求項18に係る発明は、請求項17に記載の充電方法において、前記外部電源の電力により前記第1蓄電モジュールを充電する第4充電工程を、前記第5充電工程と同時に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、低容量で小規模な外部電源に依存する給電装置、あるいは低圧電力線のみが敷設されている任意の個所に設置された給電装置から、反復利用される受電装置への急速充電が可能な充電システムおよび方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係る充電システムの基本形を示す概略回路図である。
図2】本発明の実施形態に係る充電システムの発展形を示す概略回路図である。
図3】本発明の実施形態に係る充電システムの第1,2スイッチの接続状態を示す概略回路図であり、(a)第1接続状態、(b)第2接続状態、(c)第3接続状態、(d)第4接続状態、(e)第5接続状態、(f)第6接続状態、である。
図4】本発明の実施形態に係る充電システムの各充電状態を示す概略回路図であり、(a)第1充電工程、(b)第2充電工程、(c)第3充電工程、(d)第4充電工程、(e)第1充電工程と第4充電工程との同時実行、(f)第5充電工程、である。
図5】本発明の充電システムに使用される蓄電モジュールの一例を示す概略回路図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る充電方法を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係る充電方法を示すフローチャートである。
図8】本発明の第2実施形態に係る充電方法(図7)による蓄電ユニットの電圧と時間との関係を示した図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る充電方法を示すフローチャートである。
図10】本発明の第3実施形態に係る充電方法(図9)による蓄電ユニットの電圧と時間との関係を示した図である。
図11】本発明の第4実施形態に係る充電方法を示すフローチャートである。
図12】本発明の第4実施形態に係る充電方法(図11)による蓄電ユニットの電圧と時間との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(充電システム)
図1は本発明の実施形態に係る充電システムの基本形を示す概略回路図である。図1に示す充電システム100は、商用電源などの外部電源Sと、外部電源Sから電力の供給を受けて、受電装置60に対する電力の供給能力を有する給電装置50と、給電装置50に電気接続して適宜充電サービスを受ける受電装置60と、を備えて構成されている。なお、図1,2に示す第1〜5充電工程は、図4に沿って後ほど詳細に説明する。
【0032】
また、給電装置50に配置された給電端子A1,A1´(以下、単に給電端子A1ともいう)と、受電装置60に配置された受電端子A2,A2´(以下、単に給電端子A2ともいう)と、を電気接続した状態で、受電装置60は、給電装置50から充電サービスを受ける。そして、受電装置60が、満充電、または実用可能な充電状態に至れば、給電端子A1と受電端子A2とを切り離すことにより、受電装置60は、給電装置50から離れて本来の運搬機能などを実働させることが可能となる。
【0033】
(給電装置)
給電装置50は、外部電源Sから電力の供給を受けることにより、受電装置60をできるだけ短時間で満充電、または実用可能な充電状態にする電力供給体制を整えて待機する装置である。また、充電サービスを受ける受電装置60は、電気自動車、構内搬送車、電動カートなど、充電式の移動体が想定されている。その充電式の移動体に、適切な充電サービスを行うための給電装置50は、従来のガソリン車用のガソリンスタンドに代わる充電スタンド、あるいは充電ステーションを想定したものである。
【0034】
また、給電装置50は、第1に多数の受電装置60をできるだけ短時間で満充電にできること、第2に給電装置50を、小規模な外部電源Sであっても、そこから電力の供給を受けて稼働できること、の2点に対する要望が強い。これらの要望を満足することにより充電システム100,101に関わる設備など利便性および稼働率の向上につながる。
給電装置50は、第1蓄電モジュールB1と、第2蓄電モジュールC1と、第1スイッチD1と、給電スイッチD3と、制御部1と、給電端子A,A´と、を備えている。第1蓄電モジュールB1は、充放電可能な容量が大きい高エネルギー密度蓄電素子で構成されている。第2蓄電モジュールC1は、単位時間当たりに充放電可能な電流が大きい高出力密度蓄電素子で構成されている。
【0035】
第1スイッチD1は、第1蓄電モジュールB1を外部電源Sに接続し第2蓄電モジュールC1から切り離した第1接続状態と、第1蓄電モジュールB1を第2蓄電モジュールC1に接続し外部電源Sとは切り離した第2接続状態と、の切替が可能なスイッチである。 給電スイッチD3は、第2蓄電モジュールC1と給電端子A1との間の給電経路に介挿され、その給電経路をON−OFFするスイッチである。
【0036】
制御部1は、受電装置60側に配置された制御部2との通信により決定される制御パタンに基づいて、第1スイッチD1を含めた統合制御が可能であり、不図示のコンピュータと、それに実行させるプログラムを格納した記憶媒体等および通信手段を備えている。給電端子A,A´が、受電装置60側に配置された受電端子B,B´に電気的接続された際、制御部1は、受電装置60側に配置された制御部2と充電に関する情報通信を適宜実行する。また、制御部1は、必要に応じて、第1蓄電モジュールB1の出力電圧を昇圧させる手段、例えばDC−DCコンバータを有してもよい。
【0037】
(受電装置)
受電装置60は、第3蓄電モジュールC2と、第4蓄電モジュールB2と、第2スイッチD2と、制御部2と、受電端子A2,A2´と、を備えている。第3蓄電モジュールC2は、高出力密度蓄電素子で構成されている。第4蓄電モジュールB2は、高エネルギー密度蓄電素子で構成されている。第2スイッチD2は、第4蓄電モジュールB2を負荷Lに接続し第3蓄電モジュールC2から切り離した第3接続状態と、第4蓄電モジュールB2を第3蓄電モジュールC2に接続し負荷Lから切り離した第4接続状態と、の切替が可能なスイッチである。
【0038】
制御部2は、給電装置50に配置された制御部1との通信により決定される制御パタンに基づいて、第2スイッチD2を含めて総合制御が可能であり、不図示のコンピュータと、それに実行させるプログラムを格納した記憶媒体等および通信手段を備えている。受電端子A2,A2´が、給電装置50側に配置された給電端子A1,A1´に電気的接続された際、制御部2は、給電装置50側に配置された制御部1と充電に関する情報通信を適宜実行する。また、制御部2は、必要に応じて、第3蓄電モジュールC2の出力電圧を昇圧させる手段、例えばDC−DCコンバータを有してもよい。
【0039】
図2は、本発明の実施形態に係る充電システムの発展形を示す概略回路図である。図2に示す充電システム101と、図1に示した充電システム100との相違点は、第1スイッチD1、第2スイッチD2、制御部1および制御部2(以下、両方をまとめて制御部1ともいう)が、それぞれ、第1スイッチD10、第2スイッチD20、制御部21および制御部22(以下、両方をまとめて制御部21ともいう)に置き換えられた点である。
【0040】
第1スイッチD10は、上述した第1接続状態と、第2接続状態と、に加えて、第2蓄電モジュールC1を外部電源Sに接続し第1蓄電モジュールB1から切り離した第5接続状態と、第1スイッチD1に係る接点の少なくともいずれか2点を導通させた状態と、を選択可能である。第2スイッチD20は、第3接続状態と、第4接続状態と、に加えて、第3蓄電モジュールC2を負荷Lと接続し第4蓄電モジュールB2とは切り離した第6接続状態と、第2スイッチD20に係る接点の少なくともいずれか2点を導通させた状態と、を選択可能である。
【0041】
図3は、本発明の実施形態に係る充電システムの第1,2スイッチの接続状態を示す概略回路図であり、(a)第1接続状態、(b)第2接続状態、(c)第3接続状態、(d)第4接続状態、(e)第5接続状態、及び(f)第6接続状態である。
図3(a)に示す第1接続状態は、第1スイッチD1が、第1蓄電モジュールB1を外部電源Sに接続し、第2蓄電モジュールC1から切り離した状態である。
図3(b)に示す第2接続状態は、第1スイッチD1が、第1蓄電モジュールB1を第2蓄電モジュールC1に接続し、外部電源Sとは切り離した状態である。このとき給電スイッチD3はOFFしている。
図3(c)に示す第3接続状態は、第2スイッチD2が、第4蓄電モジュールB2を負荷Lに接続し、第3蓄電モジュールC2から切り離した状態である。
【0042】
図3(d)に示す第4接続状態は、第2スイッチD2が、第4蓄電モジュールB2を第3蓄電モジュールCに接続し、負荷Lから切り離した状態である。このとき給電スイッチD3はOFFしている。なお、過大な突入電流を防止するために、第3蓄電モジュールの電圧が所定の値より小さく、かつ第4蓄電モジュールの電圧が所定の値より大きい場合には、第4接続状態にならないように制御することが好ましい。
図3(e)に示す第5接続状態は、第1スイッチD10が、第2蓄電モジュールC1を外部電源Sに接続し、第1蓄電モジュールB1から切り離した状態である。このとき給電スイッチD3はOFFしている。
図3(f)に示す第6接続状態は、第2スイッチD20が、第3蓄電モジュールC2を負荷Lと接続し、第4蓄電モジュールB2から切り離した状態である。このとき給電スイッチD3はOFFしている。
【0043】
なお、制御部1,21は、受電装置60,61側に配置された制御部2,22との通信により決定される制御パタンに基づいて、第1,2スイッチD1,D10,D2,D20および、給電スイッチD3を含めた統合制御が可能である。制御パタンに基づいた統合制御は、不図示の記憶媒体に格納されたプログラムを、コンピュータが実行することにより実現する。制御部1,2は、第1,2スイッチD1,D2が、第2接続状態と、第4接続状態と、のいずれかの時に給電スイッチD3をOFFする。そして、この第1スイッチD1が、第2接続状態と、第4接続状態と、のいずれでもない時に、給電スイッチD3をONする。また、制御部21、22は、第1,2スイッチD10,D20が、第2接続状態と、第5接続状態と、第4接続状態と、第6接続状態と、のいずれかの時に給電スイッチD3をOFFする。そして、制御部21,22は、第1,2スイッチD10,D20が、第2接続状態と、第5接続状態と、第4接続状態と、第6接続状態と、のいずれでもない時に給電スイッチをONする。
【0044】
図4は、本発明の実施形態に係る充電システムの各充電状態を示す概略回路図であり、(a)第1充電工程、(b)第2充電工程、(c)第3充電工程、(d)第4充電工程、(e)第充電工程と第充電工程との同時実行、(f)第5充電工程、である。これら第1〜5充電工程について、図1,2にも簡略に示したとおりである。なお、以下の説明において、大容量の第1、第4蓄電モジュールB1,B2の容量は、高速充電可能な第2、第3蓄電モジュールC1,C2の容量に対し、一例として約5〜10倍であるものとする。ただし、この倍数は、本発明を限定するものではない。
【0045】
(高速蓄電素子)
蓄電池やキャパシタの充電速度を表現する指標として、Cレートが用いられている。Cレートとは、蓄電池の有する全容量を1時間で充電する時の電流値を1Cとする単位である。
単位時間当たりの充放電可能な電流が大きい高出力密度蓄電素子とは、使用可能電圧の最小値まで放電した状態から100Cの電流による充電後の容量が、前記放電した状態から1Cの電流による充電後の容量に対して、50%以上となる性能の蓄電素子と定義する。なお、以下では、高出力密度蓄電素子のことを高速蓄電素子ともいう。具体的には、リチウムイオンキャパシタ(以下「LIC」ともいう)や電気二重層キャパシタ(以下「EDLC」ともいう)やレドックスキャパシタが該当する。
【0046】
充放電可能な容量が大きい高エネルギー密度蓄電素子とは二次電池をいい、具体的には、リチウムイオン電池(以下、「LIB」ともいう)、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、及び鉛蓄電池があげられる。
一般的なLIBの最大の充電速度は1C程度であり、容量を犠牲にして充放電速度が向上するように最適化されたものであっても20C程度である。この理由は、蓄電池の正極および負極における電気化学反応速度に由来するものであるので、それ以上の充電速度の高速化は原理的に困難である。これに対して、LICやEDLCなどの高速蓄電素子は、数百Cで充電を行うことが可能である。
【0047】
(定格電圧)
なお、蓄電池では、安全性、および寿命などを考慮して充電電圧の最大値(以下、最大定格電圧または上限電圧ともいう)や放電電圧の最小値(以下、最小定格電圧または下限電圧ともいう)が定められている場合がある。放電電圧の最小値と充電電圧の最大電圧との間の電圧が、蓄電池の使用可能電圧となる。また、蓄電池では、最大定格電圧を超えた電圧まで充電することを過充電、最小定格電圧を超えた電圧まで放電することを過放電という。
【0048】
図4(a)に示す第1充電工程において、高速充電可能な第2蓄電モジュールC1に蓄電された電力を、高速充電可能な第3蓄電モジュールC2に、急速充電して緊急事態、例えば、完全放電状態に陥った移動体等を再び稼働させることができる。このとき、第1スイッチD1は第1接続状態であり、第2スイッチD2は第3接続状態である。なお、給電スイッチD3はONしている。
図4(b)に示す第2充電工程において、大容量の第1蓄電モジュールB1に蓄電された電力を、高速充電可能な第2蓄電モジュールC1に、急速充電して待機することができる。このとき、第1スイッチD1は第2接続状態であり、給電スイッチD3はOFF状態である。
図4(c)に示す第3充電工程において、高速充電可能な第3蓄電モジュールC2に蓄電された電力を、大容量の第4蓄電モジュールB2に、急速充電して待機することができる。このとき、第2スイッチD2は第4接続状態であり、給電スイッチD3はOFF状態である。
【0049】
図4(d)に示す第4充電工程において、外部電源Sの電力を、大容量の第1蓄電モジュールB1に、小電流で長時間充電する。このとき、第1スイッチD1は第1接続状態である。
図4(e)に示す第充電工程と第充電工程とを同時に実行する状態において、外部電源Sの電力を、大容量の第1蓄電モジュールB1に小電流で長時間充電しながら、高速充電可能な第2蓄電モジュールC1に、急速充電して待機することができる。このとき、第1スイッチD10に係る3つの接点を全て接続する第7接続状態である。なお、給電スイッチD3はOFFしている。
図4(f)に示す第5充電工程において、外部電源Sの電力を、高速充電可能な第2蓄電モジュールC1に、急速充電して待機することができる。このとき、第1スイッチD10は第8接続状態である。なお、給電スイッチD3はOFFしている。
【0050】
図1〜4に沿って示した本発明の実施形態に係る充電システム100,101によれば、繁忙時に、給電装置50,51の蓄電池は、充電装置60,61への頻回の充電により、放電してしまい、給電能力を回復するための時間を要するところを、高速充電素子を用いた急速充電により、迅速に対応することが可能である。すなわち第1蓄電モジュールB1が放電状態となる頻度が高い場合、必要に応じて、外部電源から直接第2蓄電モジュールC1を充電することが可能なシステムとできる。そして、第2蓄電モジュールC1から第3蓄電モジュールC2へと急速充電することにより、1台の受電装置(移動体)が給電装置(ステーション)を占有する時間を短くすることが可能となる。また、第4蓄電モジュールB2が放電状態である場合、必要に応じて、直接第3蓄電モジュールC2からの放電で負荷を駆動することにより、第4蓄電モジュールB2への充電不足分を補うことが可能である。そのためには、第1スイッチD1,D10、第2スイッチD2,D20と、給電スイッチD3と、を適切に切替制御する。そうすることにより、急速充放電可能なキャパシタを蓄電素子とする第3蓄電モジュールC2に対して、短時間に充電可能な第2蓄電モジュールC1を、給電端子A1と、受電端子A2と、を介して接続する。その結果、給電装置に電力供給する外部電源は小規模で足りる。そして、受電装置が放電状態のために電力供給不能となる不稼働の時間を短縮することができる。以下、充電システム101の説明には、充電システム100も含まれているものとする。
【0051】
(蓄電モジュール10)
受電装置60は、瞬間的な大電流での充放電を必要とする用途においては、図5に沿って高速蓄電素子の複数が直列に接続された蓄電体を含む蓄電モジュール10を使用することが考えられる。図5は、本発明の充電システムに使用される蓄電モジュールの一例を示す概略回路図である。図5に示す蓄電モジュール10は、図1,2に示した第3蓄電モジュールC2に適用した一例である。
【0052】
図1,2に示した第3蓄電モジュールC2は、図5に示す蓄電モジュール10で構成されている。この蓄電モジュール10は、蓄電体Kと、スイッチ回路14と、バイパス回路Xi(i=1〜N)と、バイパス制御部Gと、第1〜3タイミング制御部71〜73と、を備えて構成されている。蓄電体Kは、複数の蓄電ユニットEi(i=1〜N)で構成される。このことを蓄電ユニットEiとも示す。スイッチ回路14は、蓄電体Kに直列に接続されている。蓄電ユニットEi(i=1〜N)にはそれぞれバイパス回路Xi(i=1〜N)が、並列に接続されている。バイパス回路Xi(i=1〜N)には、それぞれバイパススイッチFi(i=1〜N)と抵抗Ri(i=1〜N)とが、直列に介挿されている。バイパス制御部Gは、電圧検出器13aを有し、蓄電ユニットEiそれぞれの電圧を検出する。バイパス制御部Gは、電圧検出器13aが検出した検出値に基づいてバイパススイッチFiを、ON−OFF制御する。蓄電ユニットEi毎に並列接続されたスイッチFiがONすることによりバイパス経路が導通される。また、バイパス制御部Gは、充電スイッチJのON/OFF制御も行う。
【0053】
図5に示す蓄電ユニットE1,E2は、それぞれ高速蓄電素子C21,C22と、で構成されている。なお、蓄電ユニットEiは、高速蓄電素子を各1個ずつ含むものに限定されず、複数の並列接続された高速蓄電素子を含むものであってもよい。さらに、給電装置51側の第2蓄電モジュールC1に含まれる蓄電ユニットEiの満充電時の電力量の合計は、受電装置61側の第3蓄電モジュールC2に含まれる蓄電ユニットの満充電時の電力量の合計より多いことが、高速充電には都合がよい。ここで、満充電時とは最大定格電圧まで充電した状態をいう。
【0054】
図5に示した蓄電モジュール10は、蓄電体Kから出力される電流を外部に出力する時、図3(f)に示した第2スイッチD20の第6接続状態によって、端子15a,15bに負荷Lが接続される。一方、充電時には、端子15a,15bに、充電電圧が印加されるように、図1,2に示した給電スイッチD3がONされる。そして、充電時には、蓄電モジュール10の内部で、充電スイッチJが、バイパス制御部GによってONされることにより、端子15a,15b間に充電電圧が印加されて蓄電体Kは充電される。また、充電スイッチJがバイパス制御部GによってOFFされると、蓄電体Kへの充電が停止する。このバイパス制御部Gは、蓄電ユニットEiそれぞれの電圧を電圧検出器13aが検出した検出値に基づいてバイパススイッチFiを、ON−OFF制御されるように構成されている。
【0055】
充電スイッチJと並列に接続されているダイオード141は、蓄電体Kの使用時、すなわち端子15a,15b間に負荷Lが接続された状態で、充電スイッチJのON、OFFに関わらず、ダイオード141に順方向電流が流れることにより、蓄電体Kは放電することができる。充電スイッチJは、MOSFET、サイリスタ、トライアックなどが好適であり、蓄電モジュール10の使用条件となる電圧値や電流値に応じて選択することができる。
【0056】
特に、多くの蓄電ユニットEiを直列接続し、蓄電モジュール10の電圧を高電圧にする場合、充電スイッチJとして、IGBT素子(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やGTO素子(ゲートターンオフサイリスタ)など、耐電圧性の高いスイッチ素子を使用することが好ましい。
好ましい態様の一例としては、充電スイッチJには、MOSFET(三洋半導体株式会社製BBS3002)を用いることができる。また、バイパススイッチFiには、MOSFET素子(インフィニオンテクノロジーズ株式会社製BSC016N03MSG)を用いて、抵抗Riの値=800mΩに設定することができる。
【0057】
図5に示す第1タイミング制御部71は、電圧検出器13aが蓄電ユニットEi(i=1〜N)の電圧を検出し、そのうちの少なくとも1つの蓄電ユニットEjが、充電目標電圧V1以上となったことを検出してから、第1所定時間T1を経過した時に、充電スイッチJをONからOFFにするように、タイミングを設定する(図9のS908および図10参照)。
第2タイミング制御部72は、電圧検出器13aが蓄電ユニットEi(i=1〜N)の電圧を検出し、そのうちの蓄電ユニットEjが、充電目標電圧V1以上となったことを検出してから、第2所定時間T2を経過した時に、バイパススイッチFjを、OFFからONにするタイミングを設定する(図11のS940および図12参照)。
【0058】
また、第3タイミング制御部73は、後述する第3所定時間T3(ダイムチャート不図示)を経過したタイミングを設定する。なお、タイミング制御部71,72,73としては、例えば、タイマICに抵抗とキャパシタとで時定数を設定した回路を使用することができる。ここで、これらの回路の少なくとも1つの抵抗として可変抵抗器を使用すると、設定時間を任意に可変できる。
【0059】
(バランシング)
蓄電モジュール10を繰り返し充放電して使用するためには、バランシングを行うことが必須であると考えられる。以下、バランシングについて説明する。バランシングとは、複数の蓄電ユニットが直列接続された蓄電体を含む蓄電モジュール10の充電方法において、上述のCCCV充電時に蓄電ユニット間の電圧のばらつきがないように調整する制御を意味する。また、蓄電ユニット間の電圧にばらつきがある状態を、アンバランスともいう。蓄電モジュール10では、その充放電時に、蓄電モジュール10内の蓄電池間でアンバランスが発生する。このような電圧のアンバランスは、各蓄電池の製造ばらつきによる容量の違いや蓄電モジュール10内における配置による環境温度の違いなどによって発生する。
【0060】
一般的に、リチウムイオン電池は、過充電および過放電を防止する機能も備えて蓄電モジュール10を構成する。このため、複数の蓄電ユニットを用いた蓄電モジュール10において電圧のアンバランスが発生すると、蓄電モジュール10内の1つの蓄電池の電圧が上限電圧に達したことによって他の蓄電池は充電可能であってもそれ以上充電できなくなる。
【0061】
また、1つの蓄電池の電圧が放電電圧の最小値に達すると他の蓄電池は放電可能であってもそれ以上放電できなくなる。このような蓄電モジュール10の構成は、蓄電モジュール10を構成する各蓄電池の性能を十分に引き出すことができず、蓄電モジュール10の全体の容量を低下させることになる。上述した電圧のアンバランスを解消するために、様々な電圧のバランシング方法が開発されてきた。従来の一般的なバランシング方法としては、抵抗とスイッチ素子とを直列接続したバイパス回路を各蓄電ユニットに並列接続する方法がある。
【0062】
(バイパス回路)
図5に示すように、第3蓄電モジュールC2を構成する蓄電モジュール10は、蓄電ユニットE1に並列に接続されたバイパス回路X1、蓄電ユニットE2に並列に接続されたバイパス回路X2と、これらのバイパス回路Xiを制御するバイパス制御部Gと、第1〜3タイミング制御部71〜73と、を備えている。また、バイパス制御部Gは、蓄電ユニットEiの電圧値を、個別に検出する電圧検出器13aを備えている。第1〜3タイミング制御部71〜73は、後述する発熱対策のために、第1〜3所定時間T1〜T3を設定する。
【0063】
バイパス回路X1は、直列接続された抵抗R1と、バイパススイッチF1とを備えている。それと同様に、バイパス回路X2は、直列接続された抵抗R2と、バイパススイッチF2とを備えている。充電時に、バイパス制御部Gが、バイパススイッチF1をONにすると、蓄電ユニットE1への充電がバイパスされるので、充電されずに、このバイパス回路の抵抗R1により蓄電ユニットE1の電力が発熱消費される。また、バイパス制御部Gが、バイパススイッチF1をOFFすると、蓄電ユニットE1への充電が行われる。逆に、蓄電モジュール10の使用時には、バイパススイッチF1がOFFされて、蓄電ユニットE1から無駄なく放電される。
【0064】
なお、図5に示すように、バイパス回路X1とバイパス回路X2とは、同様の構成であるため、バイパス回路X2は、バイパス制御部Gの制御により、上述したバイパス回路X1と同様の動作をする。ただし、バイパス制御部Gは、電圧検出部13aにより蓄電ユニットEi(i=1〜N)の電圧を個別に検出し、検出された電圧値に基づいて、バイパス回路Xi(i=1〜N)を導通させるバイパススイッチFi(i=1〜N)を、個別にON/OFF制御する。また、バイパス制御部Gは、充電状況に応じた制御パタンに基づいて、充電の開始時に充電スイッチJをONし、充電の終了時、または中断時に充電スイッチJをOFFするように制御する。
【0065】
蓄電モジュール10の蓄電ユニットEi(i=1〜N)を構成する高速充電素子は、LIC、EDLC、レドックスキャパシタの順に好適である。特に、内部抵抗が小さく、最大充電電流を100C以上にできるLICまたはEDLCが好適である。さらに、LICの方がEDLCよりも自己放電が少なく、より高エネルギー密度であるため、現時点では最適である。なお、以上の説明において、図5には説明を簡単にするため蓄電ユニットを2つ直列接続した例を示したが、蓄電ユニットの数は2つに限定されるものでなく、求める電圧に応じて適宜に数量を設定すれば良い。
【0066】
(第1実施形態:急速充電)
以下、図1,2,6を用いて本発明の第1実施形態を説明する。第1実施形態は、急速充電を目的としている。図6は、本発明の第1実施形態に係る充電方法を示すフローチャートである。図1,2,6に示すように、給電端子A1と、受電端子A2とを電気的接続する(ステップS600)。つぎに、図1に示す制御部1に含まれる不図示の検出・演算手段により、第2蓄電モジュールC1の電圧を検出し、その放電可能容量を算出する(ステップS601)。そして、図1,2に示す制御部1,21に含まれる不図示の検出・演算手段により、第3蓄電モジュールC2の電圧を検出し、その充電可能容量を算出する(ステップS602)。つぎに、制御部1,21により充電時間を算出するとともに、充電することが可能か否かを判断する(ステップS603)。充電不可能(ステップS603:No)なら待機する(ステップS604)。ステップS605で待機時間が経過したら、ステップS601へ戻る。
【0067】
一方、充電可能(ステップS603:Yes)ならば、給電スイッチD3をONする(ステップS605)。つぎに、第2蓄電モジュールC1の電圧が下限電圧以下であるか否かを、制御部1により判断する(ステップS606)。第2蓄電モジュールC1の電圧が下限電圧以下であれば(ステップS606:Yes)、給電スイッチD3をOFFする(ステップS609)。そして、給電端子A1と、受電端子A2との電気的接続を解除する(ステップS610)。
【0068】
一方、第2蓄電モジュールC1の電圧が下限電圧以下でなければ(ステップS606:No)、第2蓄電モジュールC1の電圧が上限電圧以上であるか否かを、制御部1により判断する(ステップS607)。第2蓄電モジュールC1の電圧が上限電圧以上であれば(ステップS607:No)、給電スイッチD3をOFFする(ステップS609)。そして、給電端子A1と、受電端子A2との電気的接続を解除する(ステップS610)。
【0069】
一方、第2蓄電モジュールC1の電圧が上限電圧以上でなければ(ステップS608:No)、給電スイッチD3のON時間が上限以上であるか否かを、制御部1に含まれる不図示の時間計測手段により判断する(ステップS608)。給電スイッチD3のON時間が上限以上であれば(ステップS608:Yes)、給電スイッチD3をOFFする(ステップS609)。そして、給電端子A1と、受電端子A2との電気的接続を解除する(ステップS610)。一方、給電スイッチD3のON時間が上限以上でなければ(ステップS608:No)、ステップS606へ戻って、上述した工程を繰り返す。なお、上述した上限電圧と下限電圧とは、使用可能電圧として規定された値であり、既に説明したとおりである。また、制御部1が、給電スイッチD3のON時間を、ステップS608で適正範囲内に管理することは、蓄電池にとって安全な充電方法である。
【0070】
なお、本実施形態に係る「ステップS605〜S609」は、本発明に係る「第1ステップ」に該当する。
このように、第1実施形態で示した充電方法によれば、繁忙時における給電装置51の第1蓄電モジュールB1が、放電状態となる頻度が高い場合、第1スイッチD1と、第2スイッチD2と、を適切に切替制御することにより、急速充放電可能なキャパシタを蓄電素子とする第3蓄電モジュールC2に対して、上述したスイッチ操作で短時間に充電可能な第2蓄電モジュールC1を、給電端子A1と、受電端子A2と、を介して接続して急速充電することにより、第4蓄電モジュールB2の充電不足分を補うことが可能である。その結果、給電装置に電力供給する外部電源は小規模で足りる。そして、受電装置が放電状態のために電力供給不能となる不稼働の時間を短縮することができる。
【0071】
(第2実施形態:急速充電+バランシング)
以下、主に図5,7,8を用いて本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、急速充電およびバランシングを目的としている。図7は、本発明の第2実施形態に係る充電方法を示すフローチャートである。このフローチャートは、図5に示した蓄電モジュール10の蓄電ユニットEiを、すべてのEiの電圧が所定の範囲内に入るようにバランシングさせて充電した例を示している。図8は、本発明の第2実施形態に係る充電方法(図7)による蓄電ユニットの電圧と時間との関係を示した図である。
【0072】
蓄電ユニットEiは、上述したCCCV充電を行いつつ、高速蓄電素子C21,C22間のバランシングを行う。まず、充電時には、受電端子A2,A2´に、給電端子A1,A1´が接続される。それから、蓄電ユニットEiは、端子15a,15b間の電圧が充電指標と定めた電圧値(以下、充電指標ともいう)V20になるまで、定電流で充電される。その後、蓄電ユニットEiは、受電端子15a,15b間の充電目標電圧V20を維持するように、定電圧充電される。なお、図5で示した端子15a,15bは、図1,2で示した受電端子A2,A2´に常時接続されているため、実質同一であるが、図に沿った説明の都合により表記を適宜使い分ける。
【0073】
また、定電流充電により、端子15a,15b間の電圧が充電目標電圧V20になった時点では、蓄電ユニットEiの内部抵抗によるIr電圧降下分だけ満充電状態には電圧不足であり未到達である。このIr電圧降下分を充足するため、その原因となるIr電圧降下を少なくするように、電流を徐々に小さくしながら時間をかけて定電圧充電することにより、ほぼ満充電近くまで充電することができる。
【0074】
蓄電モジュール10の充電目標電圧V20は、各蓄電ユニットEiの充電目標とする最大電圧値、すなわち充電目標電圧V1と蓄電ユニットEiの直列接続数Nから決定される。すなわち、充電目標電圧V20は、下式(1)で決定される。
V20 =V1×N …式(1)
蓄電ユニットEiにおいて、充電目標電圧V1は、高速蓄電素子C21,C22の充電上限電圧と、放電下限電圧と、の間に設定される。詳しくは、充電上限電圧と、放電下限電圧と、の中間値よりも、いくらか充電上限電圧に近寄せた値に設定される。
【0075】
また、蓄電ユニットEiの電圧が、充電目標電圧V1に到達したことに基づいて、バイパス制御部Gが、充電電流を充電スイッチJにより一度OFFしたにもかかわらず、その直後、蓄電ユニットEiの電圧が、Ir電圧降下分だけ低めに検出されることによって、バイパス制御部Gが、再度ONすることを繰り返すといった不安定な動作をすることがある。この不安定な動作を避けるため、蓄電ユニットEiの検出電圧と、充電電流のON/OFF制御と、の関係には、ヒステリシスを持つように設定される。
【0076】
つまり、一度OFFするとOFFを継続しやすく、逆に一度ONするとONを継続しやすくなるように、充電電流をON/OFF制御するための閾値に幅を持たせてある。そのため、充電目標電圧V1に対して所定幅だけ低く設定された充電再開電圧V2は、下式(2)に設定される。
V2=V1−(Ir電圧降下分+α) …式(2)
したがって、内部抵抗13mΩのLICを、充電電流I=30A、充電目標電圧V1=4.0Vで充電する場合、充電再開電圧V2=V1−Ir=3.61V未満、例えば3.5Vに設定される。
【0077】
図7に示すように、充電開始前、バイパス制御部Gは、充電スイッチJをON、バイパススイッチFiはOFFにする(ステップS700)。そして、電圧検出器13aは、定電流充電中に、蓄電ユニットEiの電圧を検出する(ステップS701)。つぎに、バイパス制御部Gは、検出された蓄電ユニットEiの電圧が、充電目標電圧V1以上であるかどうかを判定(ステップS702)する。その結果、充電目標電圧V1以上でない場合(ステップS702:No)、電圧検出器13aは、再び蓄電ユニットEiの電圧検出を継続し、充電目標電圧V1に達するまで待機する。なお、図7,9では、多数のE1,E2,…,Ei,…,Enに対応するバイパス回路X1,X2,…,Xi,…,Xn、バイパススイッチF1,F2,…,Fi,…,Fnおよび抵抗R1,R2,…,Ri,…,Rn、を想定して記載している。
【0078】
また、バイパス制御部Gは、充電目標電圧V1以上に到達した蓄電ユニットEjがあれば(ステップS702:Yes)、蓄電ユニットEjと並列に接続されているバイパス回路XiのバイパススイッチFjをONにする。バイパススイッチFjがONになれば、ONされたバイパス回路Xjの抵抗Rjに充電電流が迂回する(ステップS703)。このように、バイパス回路がONされた方のバイパススイッチをFj、それに対応する抵抗をRj、蓄電ユニットをEjと表記する。
【0079】
この時、抵抗Rjと並列接続されている蓄電ユニットEjからも若干の電流が、抵抗Rjへ流れるため、蓄電ユニットEjの電圧値が低下する。この電圧低下速度は、抵抗Rjの抵抗値が小さいほど大きくなる。この現象は、図8の鋸歯状の区間において、電圧V1からV2へと下がる勾配により示すとおりである。ここで、電圧検出器13aは、ONされた方のバイパススイッチFjに対応する蓄電ユニットEjの電圧検出を継続し、充電目標電圧V1に達するまで待機する(ステップS704)。
【0080】
つぎに、バイパス制御部Gは、バイパス回路がONされた蓄電ユニットEjの電圧値が、充電再開電圧V2以下であるか否か判断する(ステップS705)。蓄電ユニットEjの電圧値が、充電再開電圧V2以上である場合、バイパススイッチFjをONのまま維持し、ステップS704へ戻る(ステップS705:No)。一方、電圧値がV2以下の蓄電ユニットがある場合(ステップS705:Yes)、この蓄電ユニットEjに並列接続されているバイパススイッチFjをOFFすることにより、充電再開電圧V2以下になった蓄電ユニットEjへ充電電流を流す(ステップS706)。さらに、電圧検出器13aは、すべての蓄電ユニットEiの電圧検出を継続(ステップS707)する。
【0081】
また、バイパス制御部Gは、すべての蓄電ユニットEiの電圧値が、充電目標電圧V1以下で充電再開電圧V2以上の範囲であるか否かを判断する(ステップS707)。電圧値が、V1〜V2の範囲内の蓄電ユニットEjは(ステップS707:Yes)、充電・電圧均等化を完了する(ステップS708)。一方、電圧値が、V1〜V2の範囲外の蓄電ユニットEiは(ステップS707:No)、ステップS701に戻って、蓄電ユニットEiの電圧を検出することを繰り返す。以下、蓄電モジュール10では、上述した動作が繰り返される。
【0082】
充電の開始と終了は、端子15a,15bが、受電端子A2,A2´として接続された給電装置50の制御部1によって制御される。給電装置50で予め設定されている充電終了条件に到達すると、この給電装置50は充電を終了する。この時、バイパス制御部Gは、図7に示したステップS701からステップS708のいずれかの状態で停止する。給電装置50で予め設定されている充電終了条件には、以下の条件が該当し、このうちの少なくともいずれか1つが成立すると、給電装置50が充電電流を停止する。給電装置50では、制御部1に備えられた不図示のプログラムおよびそれを実行するコンピュータが、以下の条件のいずれかに該当したことを認識すれば、給電スイッチD3をOFFすることにより、充電を停止する。
【0083】
・充電開始から所定の時間T10が経過した場合(図8)。
・CCCV充電において、CC充電からCV充電に切り替わってから所定の時間が経過した場合。
・CCCV充電において、CV充電中に流れる電流量が所定の値より小さくなった場合。
・CCCV充電において、CV充電中に流れる電流量の時間変化が所定の値より小さくなった場合。
【0084】
図8は、横軸に時間、縦軸に蓄電ユニットの充電電圧を示している。この図8に示すとおり、図7に示した第2実施形態に係る充電方法によれば、蓄電モジュール10の1つの蓄電ユニットの電圧値をV2からV1の範囲に収めることができる。
しかし、図8に示した蓄電モジュール10の充電を上述したように制御した場合、以下のような問題が発生する。すなわち、例えば、給電装置に設定された充電終了の条件が充電時間T10の経過であるとすると、蓄電モジュール10がバイパス動作を開始してから時間T10が経過して充電が終了するまでの間、蓄電体に投入される電流のかなりの部分が抵抗Riに流れるため、熱として消費されてしまう。この熱によって蓄電モジュール10内の温度が上昇し、強制冷却しないと動作不能な温度まで到達する場合がある。
以上説明した第2実施形態に係る充電方法では、充電終了後の充電スイッチJはOFFになっている。充電スイッチJがOFFからONになるタイミングは、以下のいずれかの方法によって検出される。
【0085】
・バイパススイッチFiがそれぞれON、OFF制御される信号を用い、バイパススイッチFiが全てOFFであることを検知した時に充電スイッチJをONにする。
・蓄電ユニットEiの電圧が充電再開電圧V2以下である時に充電スイッチJをONにする。
・蓄電モジュール10を使用する(放電する)時に、スイッチ回路14のダイオード141に流れる電流を検知し、検知された電流が所定の電流値以上になった場合に充電スイッチJをONにする。
【0086】
なお、本実施形態に係る「ステップS700」は、本発明に係る「第1ステップ」に該当する。また、本実施形態に係る「ステップS701〜S703」は、本発明に係る「第2ステップ」に該当する。本実施形態に係る「ステップS704〜S706」は、本発明に係る「第3ステップ」に該当する。
また、蓄電ユニットの電圧は充電目標電圧V1以上になる場合があるが、充電電圧の最大値、または図示しない過充電保護電圧を超えない範囲内で図8に示す時間T10を設定することができる。時間T10を設定する方法の他にも、充電目標電圧V1の値を本来所望とする電圧値よりも若干小さく設定することで、蓄電ユニットの電圧が充電上限電圧、または図示しない過充電保護電圧に到達しないように制御することができる。
【0087】
以上説明した抵抗に電流をバイパスさせる動作は、蓄電体に含まれる蓄電ユニット間の電圧バランシングを目的として行われる。しかし、上記のようにバイパスさせる回数を減少させ、一定時間経過後に充電電流を遮断させることは、蓄電ユニット間の電圧バランシングという目的達成を困難にする可能性がある。
しかしながら、第2実施形態の充電方法は、1度目の充電直後で多少電圧のアンバランスが残っていたとしても、充電終了後に負荷を接続して放電し、再度充電する作業を複数回繰り返すことによって、累積的に増加することはなく、よりバランスがとれた状態に近づく。つまり、蓄電モジュール10を実際に移動機器や電子機器に搭載して使用する場合には、蓄電体の高速蓄電素子や蓄電ユニットを、電圧のばらつき無く動作させることができる。
【0088】
(発熱問題)
バイパス回路によるバランシングでは発熱する欠点がある。すなわち、蓄電モジュール10において、バイパス回路Xi側に流れた電流は抵抗Riによって熱に変わる。この時に発生する熱量は電流の2乗に比例する。そして、蓄電池を高エネルギー密度蓄電素子から高出力密度蓄電素子に代えたことにより、高速充電するための大きな充電電流を流すと大量の熱が発生し、蓄電モジュール10内の温度を大幅に上昇させ、蓄電モジュール10内の高速蓄電素子C21,C22の寿命を短くしてしまう虞がある。
蓄電モジュール10内の温度上昇は、電流によって発生した熱を放熱させるための放熱フィンや放熱ファンなどを設けることによって回避することができる。しかし、このような部材を設けることは、蓄電モジュール10全体のサイズを大型化させてしまう。
【0089】
(発熱対策)
発熱対策として、蓄電モジュール10は、充電スイッチJをONからOFFにするタイミングを、電圧検出器13aによって蓄電ユニットEiのいずれかの電圧値が、充電目標電圧V1以上になったことが検出されてから、第1所定時間T1を経過したタイミングとする第1タイミング制御部(例えば図5に示した第1タイミング制御部71)を備えている。詳しくは、後ほど図9,10に沿って説明する。
【0090】
また、発熱対策として、蓄電モジュール10は、第2バイパススイッチFiそれぞれを、OFFからONにするタイミングを、その第2バイパススイッチFiが接続された蓄電ユニットEiの電圧値が、電圧検出器13aによって充電目標電圧V1以上となったことが検出されてから、第2所定時間T2を経過したタイミングとする第2タイミング制御部(例えば図5に示した第2タイミング制御部72)を備えている。詳しくは、後ほど図11,12に沿って説明する。
【0091】
さらなる発熱対策として、蓄電モジュール10は、第2バイパススイッチFiを、ONからOFFにするタイミングを、その第2バイパススイッチFiが接続された蓄電ユニット蓄電ユニットEiの電圧値が、電圧検出器13aによって充電再開電圧V2以下となったことが検出されてから、第3所定時間T3(タイムチャート不図示)を経過したタイミングとする、第3タイミング制御部(例えば図5に示した第3タイミング制御部73)を備えている。
【0092】
(第3実施形態:急速充電+急速セルバランス+発熱抑制)
以下、図5,9,10を用いて本発明の第3実施形態を説明する。この第3実施形態は、急速充電、急速セルバランスおよび、発熱抑制を目的としている。図9は本発明の第3実施形態に係る充電方法を示すフローチャートである。図10は、本発明の第3実施形態に係る充電方法(図9)による蓄電ユニットの電圧と時間との関係を示した図である。図10の横軸は時間を、縦軸は蓄電ユニットEiの充電電圧を示している。横軸に示した時間T10は、給電装置50に設定される充電時間である。また、図9のフローチャートのうち、ステップS902〜907までの処理は図7に示したフローチャートのステップS701〜S706までの処理と同様に行われる。
【0093】
図9に示すように、充電開始時、バイパス制御部Gは、充電スイッチJをOFF、かつ、バイパススイッチFiもOFFである(ステップS900)。そして、充電スイッチJをONにすることにより、蓄電ユニットEiに充電電流を流す(ステップS901)。そして、充電開始時、バイパス制御部Gの電圧検出器13aは、定電流充電しながら蓄電ユニットEiの電圧を検出する(ステップS902)。バイパス制御部Gは、蓄電ユニットEiの電圧検出値が、充電目標電圧V1以上でない場合(ステップS903:No)、再び蓄電ユニットEiの電圧検出を継続しながら充電目標電圧V1に達するまで待機する。
【0094】
また、バイパス制御部Gは、電圧検出器13aによって蓄電ユニットEiの電圧を検出し、充電目標電圧V1以上であるか否かを判断する(ステップS903)。蓄電ユニットEiのうち、充電目標電圧V1以上の蓄電ユニットEjがあれば(ステップS903:Yes)、充電目標電圧V1以上になっている蓄電ユニットEjと並列に接続されているバイパス回路XjのバイパススイッチFjをONにし、充電電流を抵抗Rjに迂回させる(ステップS904)。そして、充電目標電圧V1以上に到達している蓄電ユニットEjの電圧検出を電圧検出器13aによって継続する(ステップS905)。
【0095】
上述した第1〜3実施形態の充電目標電圧V1は、蓄電ユニットに組み込まれる高速蓄電素子の充電上限電圧と放電下限電圧の間に設定される。一般的には、充電上限電圧と放電下限電圧の中間の値から、充電上限電圧の間に設定される。また、充電時の目標電圧の最小電圧値(充電再開電圧V2)は目標電圧の最大の出圧値V1の0.9倍から1.0倍の間の値に設定される。より好ましくは0.95倍から1.0倍の間の値に設定され、さらに好ましくは0.97倍から1.0倍の間の値に設定される。充電再開電圧V2の設定は、充電再開電圧V2を、チャタリングを起こさせないようにV2=V1−(Ir+α)と設定する従来技術とは大きく異なり、高速蓄電素子を大電流で短時間の間にバランスさせることを可能としている。
【0096】
図9に示すステップS904において、バイパススイッチFjがONとなり、蓄電ユニットEjと、それに並列接続された抵抗Rjと、のバイパス回路X1に流れて新たに電流が増加する。その増加した電流と、蓄電ユニットEjの内部抵抗rと、の積による電圧降下の影響が生じる。その電圧降下によって、蓄電ユニットEiそれぞれの電圧が、充電再開電圧V2以下にならないように、抵抗Riの値が決定される。具体的には、抵抗Riの抵抗値を蓄電ユニットEiの内部抵抗値rで除した値を、9.0から93.6の範囲内に設定すれば良い。好ましくは、その値を、18.5から93.6の範囲内に設定すれば良い。さらに好ましくは、その値を32.7から93.6の範囲内に設定すれば良い。
【0097】
ステップS904で、バイパススイッチFjがONとなった後、電圧検出器13aは、ONされたバイパススイッチFjに対応する蓄電ユニットEjの電圧検出を継続する(ステップS905)。つぎに、バイパス制御部Gは、バイパス回路がONされた蓄電ユニットEjの電圧値が、充電再開電圧V2以下であるか否か判断する(ステップS906)。蓄電ユニットEjの電圧値が、充電再開電圧V2以上である場合、バイパススイッチFjをONのまま維持し、ステップS905へ戻る(ステップS906:No)。一方、電圧値がV2以下の蓄電ユニットがある場合(ステップS906:Yes)、この蓄電ユニットEjに並列接続されているバイパススイッチFjをOFFすることにより、充電再開電圧V2以下になった蓄電ユニットEjへ充電電流を流す(ステップS907)。
【0098】
そして、図10に示すように、バイパススイッチFjをOFFしてから、第1所定時間T1以上が経過したか否か判断する(ステップS908)。時間T1以上経過している場合(ステップS908:Yes)は、充電スイッチJをOFFし(ステップS909)、充電電流を遮断して充電を終了させる(ステップS910)。なお、時間T1の計時開始T0は、バイパススイッチFiのうちの少なくとも1つ、すなわちバイパススイッチFjが最初に動作を開始する時間とする。一方、時間T1が経過していない場合(ステップS908:No)、ステップS902へ戻り、上述したとおり、定電流充電を継続中の全ての蓄電ユニットEiの電圧を、電圧検出器13aが、検出しながら待機する。
【0099】
なお、本実施形態に係る「ステップS900〜S901」は、本発明に係る「第1ステップ」に該当する。また、本実施形態に係る「ステップS902〜S904」は、本発明に係る「第2ステップ」に該当する。そして、本実施形態に係る「ステップS905〜S907」は、本発明に係る「第3ステップ」に該当する。また、本実施形態に係る「ステップS908〜S910」は、本発明に係る「第4ステップ」に該当する。
【0100】
また、図10に示すように、充電前には正確な充電開始の時間T0を把握することはできないので、時間T10は想定されるT0に対して余裕を持って長めに設定する必要がある。第3実施形態の充電方法によると、時間T0+T1にて充電電流がOFFされるため、時間T10が経過するのを待たずに充電が終了する。
以上のことから、第3実施形態の電流方法によれば、抵抗Riに電流が流れている時間を短くすることができるから、抵抗Riにおける発熱を抑制できる。また、第3実施形態において、図10に点線で示す時間T0+T1から時間T10の間の期間は、充電が行われない。この第3実施形態によれば、蓄電ユニットEiの特性と上述した充電再開電圧V2の設定によりアンバランスに関する問題は生じない。
【0101】
(第4実施形態:急速充電+急速セルバランス+発熱抑制)
図11,12を用いて第4実施形態の説明をする。この第4実施形態は、急速充電、急速セルバランスおよび発熱抑制を目的としている。図11は、本発明の第4実施形態の充電方法を説明するためのフローチャートである。図12は、本発明の第4実施形態に係る充電方法による蓄電ユニットの電圧と時間との関係を示した図である。図11に示すステップS900〜S910のうち、ステップS940以外の処理は図9に示した第3実施形態ステップS900〜S903およびステップS905〜S910の処理と同様に行われる。したがって、同一処理は同一ステップ番号で示し、説明を省略するとともに、相違点である、ステップS940を説明する。
【0102】
図11に示したステップS903がYesの場合であっても、時間T2が経過するまで待機する。すなわち、充電目標電圧V1以上に到達した蓄電ユニットEjが検出されても、図12に示す時間T2が経過するまで待機する。そして、時間T2が経過した後、バイパス制御部Gは、蓄電ユニットEjと並列に接続されているバイパス回路XjのバイパススイッチFjをONにし、充電電流を抵抗Rjへ迂回させる(ステップS940)。
【0103】
バイパス制御部Gでは、図12の横軸に示した時間T0において蓄電ユニットの電圧が充電目標電圧V1以上であることを電圧検出器13aが検出する。そして、第2所定時間T2が経過してからバイパススイッチFiをONとする。このため、時間T0から充電が終了するまでの間に抵抗Riに電流が流れる時間が減少するので、抵抗Riにおける発熱を抑制できる。時間T10は、給電装置50にて設定される充電の時間を表している。時間T0+T1から時間T10の間の期間は蓄電ユニットEiに充電は行われない。
【0104】
図12に示す時間T2は、蓄電ユニットの有する静電容量の値を充電電流値で除した値に、係数βを掛けた値で設定される。この時時間T2の単位は秒とする。係数βは、0.005から1.5の範囲であって、より好ましくは0.01から0.5の範囲であって、さらに好ましくは0.02から0.3の範囲に設定される。
ステップS940で、バイパススイッチFjがONとなった後、電圧検出器13aは、ONされたバイパススイッチFjに対応する蓄電ユニットEjの電圧検出を継続する(ステップS905)。そして、ステップS905〜S910は、図9に沿って説明したとおりである。
【0105】
なお、本実施形態に係る「ステップS900〜S901」は、本発明に係る「第1ステップ」に該当する。また、本実施形態に係る「ステップS902〜S940」は、本発明に係る「第2ステップ」に該当する。そして、本実施形態に係る「ステップS905〜S907」は、本発明に係る「第3ステップ」に該当する。また、本実施形態に係る「ステップS908〜S910」は、本発明に係る「第4ステップ」に該当する。これらのうち、第2ステップと第3ステップとが繰返し実行される。
【0106】
この第2ステップでは、蓄電ユニットEjに対し、電圧値が充電目標電圧V1以上になってから第2所定時間T2が経過した後、当該蓄電ユニットEjに対応するバイパス回路XjのバイパススイッチFjをONに切り替えて(ステップS940)、蓄電ユニットEjに流れる電流をバイパス回路Xjに迂回させる。
以上、説明した第4実施形態に係る充電システムおよび充電方法によれば、高速蓄電素子C21,C22が直列接続されて構成されている蓄電体Kにおいて、充電時のバランシングによる発熱量を抑制し、しかもバランシング状態も良好に保つことが可能である。
【0107】
また、図示していないが、第2〜4実施形態では、過充電保護回路や過放電保護回路を蓄電モジュール10とは別に設置しても良い。過放電保護回路の設定電圧は、高速蓄電素子の下限電圧によって決定される。また過充電保護回路の設定電圧は、高速蓄電素子の上限電圧、すなわち最大定格電圧と充電目標電圧V1との間に設けることが好ましい。
また、過充電保護回路における充電電流を遮断するスイッチ素子を、給電スイッチD3,充電スイッチJで兼用して用いても良い。その場合は、バイパス制御部Gで過充電保護回路のスイッチ素子をON/OFF制御することにより実現できる。以上、本実施形態に係る充電システムおよび充電方法について説明した。本実施形態に係る充電システムおよび充電方法によれば、小規模で低容量の外部電源に依存する給電装置、あるいは低圧電力線のみが敷設されている任意の個所に設置された給電装置から、受電装置への急速充電が可能な充電システムおよび方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0108】
1,2 制御部
10 蓄電モジュール
13 バイパス制御部
13a 電圧検出器
A1,A1´ 給電端子(15a,15b 端子)
A2,A2´ 受電端子
B1,B2 第1,4蓄電モジュール(高エネルギー密度蓄電素子で構成)
C1,C2 第2,3蓄電モジュール(高出力密度蓄電素子で構成)
C21,C22 蓄電素子(高出力密度蓄電素子)
D1,D2 第1,2スイッチ
D3 給電スイッチ
E1,E2,Ei 蓄電ユニット(並列接続された複数の蓄電素子)
F1,F2,Fi バイパス回路
J 充電スイッチ
K 蓄電体
R1,R2,Ri 抵抗
S700,S900〜S901 第1ステップ
S701〜S703,S902〜S904,S902〜S940 第2ステップ
S704〜S706,S905〜S907 第3ステップ
S908〜S910 第4ステップ
T1 第1所定時間
T2 第2所定時間
X1,X2,Xi バイパス回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12