特許第5981778号(P5981778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981778
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】排気ガス還流装置のフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/35 20160101AFI20160818BHJP
【FI】
   F02M26/35 B
   F02M26/35 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-134095(P2012-134095)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-256912(P2013-256912A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 健次
【審査官】 木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−324630(JP,A)
【文献】 特開2012−202265(JP,A)
【文献】 特開2012−237236(JP,A)
【文献】 特開平06−264719(JP,A)
【文献】 特開平5−187329(JP,A)
【文献】 特表2003−535264(JP,A)
【文献】 特開2011−032984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00−26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側が排気通路に連通すると共に下流側が吸気通路に連通されて前記排気通路内の排気ガスの一部を前記吸気通路に還流するEGR通路の中途に介装され底部に液溜部を有する容積室と、
前記EGR通路の上流側を前記容積室の底部と略同一の高さにて前記容積室に連通する第1の連通部と、
前記EGR通路の下流側を前記容積室に連通する第2の連通部と、
周部に濾過部を有する筒状のフィルタと、を備え、
前記フィルタは、前記容積室内の前記液溜部よりも上方にオフセットした位置にて、前記第2の連通部に連結されていることを特徴とする排気ガス還流装置のフィルタ装置。
【請求項2】
前記第2の連通部は、前記第1の連通部よりも上方にオフセットした位置に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス還流装置のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路から分岐させた排気ガスの一部を吸気通路に還流するEGR通路に介装される排気ガス還流装置のフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排気ガス還流装置(EGR装置)においては、コンプレッサよりも上流側の吸気通路に対し、触媒コンバータの下流側で排気通路から分岐させた排気ガスの一部をEGRガスとして還流する、低圧EGR装置(LP−EGR装置)が知られている。このような低圧EGR装置は、コンプレッサによって加圧される前の吸気に対してEGRガスを導入することにより、過給領域において多量のEGRを行うことが可能となる。
【0003】
その一方で、この種の低圧EGR装置においては、EGRガス中に混在するカーボンの凝固物等からなる異物がコンプレッサの上流に還流される虞があり、このような異物からコンプレッサを保護するための対策が必要となる。そこで、例えば、特許文献1に開示されているように、低圧EGR装置では、凝固物等を捕集するためのフィルタ装置がEGR通路に介装される。この場合、一般に、フィルタ装置の濾過部としては、金属細線を編み込んだメッシュ部材が用いられ、この濾過部は、EGR通路の中途において、管路の開口全域を横断するように介装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−187329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、排気通路やEGR通路内を流通する排気ガス(EGRガス)は、EGRクーラ及びインタークーラで冷却され凝縮することにより、排気凝縮水を発生させる場合がある。
【0006】
そして、例えば、排気凝縮水がEGR通路内において発生し、フィルタ装置の濾過部に付着すると、濾過部の有効面積が縮小し、EGR通路内の圧力損失を増加させる虞がある。さらに、排気凝縮水がEGR通路内において多量に発生した場合、濾過部の一部が排気凝縮水に浸漬される虞がある。ここで、排気凝縮水は酸性度が高く、このような排気凝縮水に、金属細線で構成された濾過部が繰り返し浸漬されると、腐食等による早期の劣化を招く虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、EGR通路内の圧力損失を増加させることなくEGRガス中に含まれる異物を除去するとともに、排気凝縮水による劣化から濾過部を保護することができる排気ガス還流装置のフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による排気ガス還流装置のフィルタ装置は、上流側が排気通路に連通すると共に下流側が吸気通路に連通されて前記排気通路内の排気ガスの一部を前記吸気通路に還流するEGR通路の中途に介装され底部に液溜部を有する容積室と、前記EGR通路の上流側を前記容積室の底部と略同一の高さにて前記容積室に連通する第1の連通部と、
前記EGR通路の下流側を前記容積室に連通する第2の連通部と、周部に濾過部を有する筒状のフィルタと、を備え、前記フィルタは、前記容積室内の前記液溜部よりも上方にオフセットした位置にて、前記第2の連通部に連結されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排気ガス還流装置のフィルタ装置によれば、EGR通路内の圧力損失を増加させることなくEGRガス中に含まれる異物を除去するとともに、排気凝縮水による劣化から濾過部を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エンジンの概略構成図
図2】排気通路及びEGR通路の配管の要部を示す側面図
図3】フィルタ装置内に配設されるフィルタの分解斜視図
図4】フィルタ装置の縦断面図
図5図4のV−V線に沿う横断面図
図6】フィルタ装置の変形例を示す縦断面図
図7図6のVII−VII線に沿う横断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1はエンジンの概略構成図、図2は排気通路及びEGR通路の配管の要部を示す側面図、図3はフィルタ装置内に配設されるフィルタの分解斜視図、図4はフィルタ装置の縦断面図、図5図4のV−V線に沿う横断面図である。
【0012】
図1に示すエンジン1は、例えば、自動車等の車両に搭載される過給機付きのディーゼルエンジンであり、本実施形態では、水平対向型4気筒エンジンが示されている。このエンジン1のシリンダブロック2の左右両バンクにはシリンダヘッド3が冠設され、各シリンダヘッド3には、気筒毎に吸気ポート3aと排気ポート3bとが形成されている。
【0013】
各吸気ポート3aは、吸気マニホルド5を介してエアチャンバ6に集合されている。また、エアチャンバ6の上流側には、例えば、電子制御式のスロットル弁7aを内蔵するスロットルボディ7を介して吸気通路8が接続されている。吸気通路8には、インタークーラ9が介装され、このインタークーラ9の上流側にターボ過給機10のコンプレッサ10aが介装されている。さらに、吸気通路8には、エアクリーナ11が接続されている。
【0014】
一方、各排気ポート3bは、排気マニホルド15を介して下流側で集合され、排気通路16に接続されている。排気通路16には、ターボ過給機10のタービン10bが介装され、このタービン10bの下流側にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)17が介装されている。さらに、排気通路16には、DPF17の下流側にマフラ18が介装されている。ここで、DPF17は、周知のように、排気中のPM(パティキュレートマター:粒子状物質=主に黒煙(煤:SOOT)、SOFと称される燃え残った燃料や潤滑油の成分、サルフェートと称される軽油燃料中の硫黄分から生成される成分を含む)を捕集することで、これらの大気中への排出を抑制する。
【0015】
このようなエンジン1の吸排気系には、各気筒から排気通路16に排出された排気ガスの一部を、コンプレッサ10aよりも下流側に還流する高圧式の排気ガス還流装置(高圧EGR装置)20と、コンプレッサ10aよりも上流側に還流する低圧式の排気ガス還流装置(低圧EGR装置)25とが設けられている。
【0016】
高圧EGR装置20は、例えば、タービン10bよりも上流側の排気通路16とスロットル弁7aの下流側とを連通する高圧EGR通路21を有する。この高圧EGR通路21には、当該高圧EGR通路21を通じてEGRガスとして還流する排気ガス(EGRガス)の流量を制御する高圧EGR制御弁22と、EGRガスを冷却するEGRクーラ23とが介装されている。
【0017】
低圧EGR装置25は、例えば、DPF17よりも下流側の排気通路16とコンプレッサ10aよりも上流側の吸気通路8とを連通する低圧EGR通路26を有する。この低圧EGR通路26には、当該低圧EGR通路26を通じてEGRガスとして還流する排気ガス(EGRガス)の流量を制御する低圧EGR制御弁27と、EGRガスを冷却するEGRクーラ28とが介装されている。さらに、低圧EGR通路26上において、EGRクーラ28の上流側には、フィルタ装置30が介装されている。
【0018】
図2,4,5に示すように、フィルタ装置30は、低圧EGR通路26の中途に介装された容積室31を有する。本実施形態において、容積室31は、例えば、耐食性の高いステンレス合金等によって構成されるものであり、EGRガスの流通方向に対して上流側に位置する第1のケース半体32と、下流側に位置する第2のケース半体33とで分割形成されている。
【0019】
図2に示すように、第1のケース半体32の上流端部には第1の連通部としての第1のコネクタ部35が設けられ、この第1のコネクタ部35には、低圧EGR通路26の上流側の配管26aが連結されている。一方、第2のケース半体33の下流端部には第2の連通部としての第2のコネクタ部36が設けられ、この第2のコネクタ部36には、低圧EGR通路26の下流側の配管26bが連結されている。
【0020】
そして、これら第1,第2のケース半体32,33は、例えば、第1のケース半体32の下流端に形成された開口端部と、第2のケース半体33の上流端に形成された開口端部とが互いに嵌合されて溶着されることにより、EGR通路26の中途に連通する中空の容積室31を構成する。
【0021】
ここで、例えば、図4に示すように、容積室31の底部は液溜部34として設定されており、この液溜部34は、排気凝縮水がEGRガスとともに容積室31内に流入した際に、当該排気凝縮水を貯留することが可能となっている。
【0022】
また、第1のコネクタ部35は、第1のケース半体32の上流端部において、下方に偏倚した位置に配置されている。これにより、EGR通路26の上流側の配管26aは、その底部が容積室31の底部と略同一の高さにて連通され、液溜部34に貯留された排気凝縮水を車両走行時の加速によって排気通路16側へと容易に排出することが可能となっている。
【0023】
一方、第2のコネクタ部36は、第1のコネクタ部35よりも上方にオフセットした位置(例えば、第1のコネクタ部35よりも20〜25mm程度上方にオフセットした位置)に配置されている。これにより、EGR通路26の下流側の配管26bは液溜部34よりも上方にオフセットした位置にて連通され、排気凝縮水の下流側(EGRクーラ28側)への流入が禁止される。
【0024】
容積室31内には、EGRガス中に混在するカーボンの凝固物等からなる異物を捕集するためのフィルタ40が設けられている。例えば、図3乃至図5に示すように、このフィルタ40は、筒状をなすフィルタ本体41と、このフィルタ本体41の外周部に巻装される濾材42と、フィルタ本体41の先端部を閉塞する蓋体43とを有して構成されている。
【0025】
具体的に説明すると、フィルタ本体41は、例えば、耐食性の高いステンレス合金等からなる円筒状の板金部材で構成され、このフィルタ本体41の周部には、複数の通気孔41aがパンチング加工等によって開口されている。この場合において、例えば、フィルタ本体41の長さをEGR通路26の配管26bの管径に対して十分な長さに設定することにより、各通気孔41aによるトータルの開口面積は、配管26bの開口面積に比して十分に大きくなるよう設定されている。
【0026】
また、濾材42は、例えば、線径が0.1mm程度の耐食性の高いステンレス合金等からなる金属糸を編み込んだメッシュ状の部材によって構成されている。そして、この濾材42は、フィルタ本体41の外周面に巻装されて通気孔41aを覆うことにより、フィルタ本体41の周部に濾過部40aを形成する。
【0027】
また、蓋体43は、例えば、耐食性の高いステンレス合金等からなる円板状の部材で構成されている。そして、この蓋体43は、フィルタ本体41の先端部内周に嵌合されて溶着されることにより、フィルタ本体41の先端部を閉塞する。
【0028】
このように構成されたフィルタ40は、例えば、フィルタ本体41の基端部が第2のコネクタ部36に連結されることにより、容積室31内に保持される。その際、上述のように、第2のコネクタ部36が、容積室31の底面に対して所定高さ上方に隔てた位置に設定されることにより、フィルタ40は、液溜部34よりも上方にオフセットした位置にて容積室31内に配設される。
【0029】
このような構成において、EGR通路26の上流側の配管26aから容積室31内にEGRガスが流入されると、このEGRガスは、フィルタ40の周部に設けられた濾過部40aを介して下流側の配管26bへと導かれる。その際、EGRガス中に混在するカーボンの凝固物等の異物が濾過部40aにおいて捕集される。
【0030】
また、EGRガス中に排気凝縮水が含有されている場合にも、当該排気凝縮水の大部分は、EGRガスが濾過部40aを通過する前に滴下されて液溜部34に貯留される。すなわち、フィルタ40は、第1のコネクタ部35に対向する先端部が蓋体43によって閉塞され、筒状の周部のみに濾過部40aが設定された構成であるため、EGRガスはフィルタ40の周部に回り込みながら濾過部40aに流入されることとなり、その過程における気流の乱れ等により、EGRガス中に含有された排気凝縮水の多くが効率良く気液分離されて液溜部34に滴下される。
【0031】
また、仮に、滴下されずに残留した排気凝縮水が濾過部40aにおいて液滴されたとしても、濾過部40a(通気孔41a)のトータルの開口面積は、配管26bの開口面積に比して十分に大きくなるよう設定されているため、濾過部40aにおける圧力損失が抑制される。
【0032】
さらに、液溜部34に対してフィルタ40が上方にオフセットされているため、液溜部34に貯留された排気凝縮水にフィルタ40が浸漬されることがなく、排気凝縮水による濾過部40aの大幅な有効面積の減少や、濾過部40aの早期の劣化等が抑制される。
【0033】
このような実施形態によれば、低圧EGR通路26の中途に介装され底部に液溜部34を有する容積室31と、低圧EGR通路26の上流側を容積室31に連通する第1のコネクタ部35と、低圧EGR通路26の下流側を容積室31に連通する第2のコネクタ部36と、周部に濾過部40aを有する筒状のフィルタ40と、を備え、フィルタ40を容積室31内の液溜部34よりも上方にオフセットした位置にて第2のコネクタ部36に連結することにより、EGR通路26内の圧力損失を増加させることなくEGRガス中に含まれる異物を除去するとともに、排気凝縮水による劣化から濾過部40aを保護することができる。
【0034】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。例えば、上述の実施形態においてはEGRガスの流通方向に対して前後に2分割した第1,第2のケース半体32,33を用いて容積室31を構成した一例に付いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図6,7に示すように、EGRガスの流通方向に沿って2分割した第1,第2のケース半体50,51をフランジ接合して容積室31を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 … エンジン
2 … シリンダブロック
3 … シリンダヘッド
3a … 吸気ポート
3b … 排気ポート
5 … 吸気マニホルド
6 … エアチャンバ
7 … スロットルボディ
7a … スロットル弁
8 … 吸気通路
9 … インタークーラ
10 … ターボ過給機
10a … コンプレッサ
10b … タービン
11 … エアクリーナ
15 … 排気マニホルド
16 … 排気通路
17 … ディーゼルパティキュレートフィルタ
18 … マフラ
20 … 高圧排気ガス還流装置
21 … 高圧EGR通路
22 … 高圧EGR制御弁
23 … EGRクーラ
25 … 低圧排気ガス還流装置
26 … 低圧EGR通路
26a … 配管
26b … 配管
27 … 低圧EGR制御弁
28 … EGRクーラ
30 … フィルタ装置
31 … 容積室
32 … 第1のケース半体
33 … 第2のケース半体
34 … 液溜部
35 … 第1のコネクタ部(第1の連通部)
36 … 第2のコネクタ部(第2の連通部)
40 … フィルタ
40a … 濾過部
41 … フィルタ本体
41a … 通気孔
42 … 濾材
43 … 蓋体
50 … 第1のケース半体
51 … 第2のケース半体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7