特許第5981792号(P5981792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社技研製作所の特許一覧

<>
  • 特許5981792-圧入連続壁の造成方法 図000002
  • 特許5981792-圧入連続壁の造成方法 図000003
  • 特許5981792-圧入連続壁の造成方法 図000004
  • 特許5981792-圧入連続壁の造成方法 図000005
  • 特許5981792-圧入連続壁の造成方法 図000006
  • 特許5981792-圧入連続壁の造成方法 図000007
  • 特許5981792-圧入連続壁の造成方法 図000008
  • 特許5981792-圧入連続壁の造成方法 図000009
  • 特許5981792-圧入連続壁の造成方法 図000010
  • 特許5981792-圧入連続壁の造成方法 図000011
  • 特許5981792-圧入連続壁の造成方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981792
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】圧入連続壁の造成方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/20 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   E02D5/20 101
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-161143(P2012-161143)
(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公開番号】特開2014-20144(P2014-20144A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−032265(JP,A)
【文献】 特開平02−209518(JP,A)
【文献】 特開平02−157311(JP,A)
【文献】 特開昭64−075713(JP,A)
【文献】 実開昭59−047740(JP,U)
【文献】 特開2005−120745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/00〜 5/20
E02D 7/00〜 13/10
E02D 5/22〜 5/80
E21B 1/00〜 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋入された既設の鋼管杭の上端部を内側から拡径して把持する複数のクランプ装置を備えたサドルと、前記サドルに対して前後動自在なスライドベースと、前記スライドベース上で左右に旋回自在なリーダマストと、前記リーダマストの前面に昇降自在に取り付けられて鋼管杭を保持するチャック装置と、前記リーダマストに対して前記チャック装置を昇降駆動するメイン油圧シリンダと、を備え、地中に埋入された既設の鋼管杭列上を自走し、その鋼管杭列から反力を得ることで、鋼管杭を地中に圧入または回転圧入できる杭圧入装置を用いて、前記鋼管杭列に隣接する進行方向前方の位置に鋼管杭を圧入する工程と、
前記杭圧入装置が圧入する鋼管杭の杭頭部を把持する把持部を有するベース部と、前記ベース部に回転自在に取り付けられた台座と、前記台座に立設された筒状体と、前記筒状体に固設された昇降機構と、前記昇降機構に垂下されて前記筒状体及び前記鋼管杭の内部を上下に移動自在な掘削装置と、前記台座に備えられ、回転圧入される鋼管杭の回転に同期して、鋼管杭とは逆方向に前記筒状体を等速に回転させる回転駆動機構と、を備えた連続掘削排土装置を用いて、前記鋼管杭の圧入に合わせて、その鋼管杭内を掘削排土する工程と、
前記杭圧入装置を進行方向前方に前記鋼管杭列上を移動させる工程と、
前記杭圧入装置の進行方向後方における、前記クランプ装置が把持しておらず前記杭圧入装置が反力を得ていない鋼管杭内に、補強芯材の投入と硬化性材料の注入を行う工程と、
前記硬化性材料が硬化する前に前記杭圧入装置を用いて、その硬化性材料が注入された鋼管杭を前記リーダマストを反転させて前記チャック装置で掴んで引き抜いた後、前記リーダマストを旋回させて前記チャック装置を進行方向前方に向け、その引き抜いた鋼管杭を前記鋼管杭列に隣接する進行方向前方の位置に圧入する工程と、
前記硬化性材料が硬化してなる杭体間を跨ぐように前記鋼管杭より小径の削孔を施す工程と、
前記削孔した孔内に間詰部材を挿入する工程と、
を含むことを特徴とする圧入連続壁の造成方法。
【請求項2】
前記間詰部材は袋状弾性体であって、前記削孔した孔内に挿入した前記袋状弾性体内に充填材を充填する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の圧入連続壁の造成方法。
【請求項3】
前記補強芯材から反力を得て、前記削孔を施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧入連続壁の造成方法。
【請求項4】
前記硬化性材料からなる杭体の若材齢時に前記削孔を施すことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の圧入連続壁の造成方法。
【請求項5】
前記鋼管杭内に補強芯材の投入と硬化性材料の注入を行う前に、その鋼管杭内を観察する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の圧入連続壁の造成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧入連続壁の造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土留壁、ダムやドッグなどの遮水壁、ビルの地下室や地下街、共同溝などの外壁等に用いられる地中連続壁は、原位置土撹拌工法による混合ソイルセメント地中連続壁が主流となっている。しかしながら、この工法を硬質地盤へ適用する場合、先行削孔等の補助工法が必要となることも多く、工期や工費の増大をまねく虞がある。また、均等な壁厚の連続壁の造成が困難であることも懸念される。
【0003】
一方、鋼管やケーシングパイプを型枠として地中に打ち込み、管内をハンマーグラブやオーガで掘削した後、その掘削孔内に鉄筋籠や鋼材を建て込み、コンクリートを注入してから鋼管等を引き抜く方法、或いはコンクリートを注入しながら鋼管等を引き抜く方法、また掘削孔内にコンクリートを注入して鋼管等を引き抜いた後に鉄筋籠や鋼材を建て込む方法などにより、連続壁を造成する方法が知られている。
例えば、ケーシング掘削機でケーシングを地中に埋入して内部掘削を行い、そのケーシング内に継手を有する杭体を挿入し、さらにソイルセメントを充填しながらケーシングを引き抜いた後、隣接する杭体間の継手に連結部材を挿入して連結することで、止水性を高めた連続壁を造成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、間隔を空けてソイルパイルを先打ちし、先打ちしたソイルパイルが硬化した後、隣接するソイルパイル間に跨るように、先端に切削刃を配した鋼管を埋入しつつ、その鋼管内部にソイルパイル層形成用のグラウト注入することで、止水性を高めた連続壁を造成する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
これらの方法によれば、止水性を高めた連続壁を造成することができるとともに、連続壁の壁厚を均等にすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−188143号公報
【特許文献2】特開昭52−98308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の場合、継手を有する杭体や連結部材を予め必要数製作し、それら大型の資材を造成現場に搬入しなければならない作業が煩雑であるという問題や、隣接する杭体間の継手を連結部材で連結できるように、継手の位置合わせを行いつつケーシング内に杭体を挿入しなければならない作業が煩雑であるという問題があった。
また、上記特許文献2の場合、隣接するソイルパイルの間に、ソイルパイルと同じ径の鋼管を埋設するため、コストがかかるといった問題があった。
さらに、これらの造成方法では、大型の杭打機を用いるための用地確保と、杭打機を稼働させるための不陸整地や作業構台築造など事前作業が不可欠であり、周辺への影響が大きいばかりか工期の遅延や工費の増大をまねく虞がある。
【0006】
本発明の目的は、連続壁を効率よく安価に構築できる圧入連続壁の造成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、圧入連続壁の造成方法であって、
地中に埋入された既設の鋼管杭の上端部を内側から拡径して把持する複数のクランプ装置を備えたサドルと、前記サドルに対して前後動自在なスライドベースと、前記スライドベース上で左右に旋回自在なリーダマストと、前記リーダマストの前面に昇降自在に取り付けられて鋼管杭を保持するチャック装置と、前記リーダマストに対して前記チャック装置を昇降駆動するメイン油圧シリンダと、を備え、地中に埋入された既設の鋼管杭列上を自走し、その鋼管杭列から反力を得ることで、鋼管杭を地中に圧入または回転圧入できる杭圧入装置を用いて、前記鋼管杭列に隣接する進行方向前方の位置に鋼管杭を圧入する工程と、
前記杭圧入装置が圧入する鋼管杭の杭頭部を把持する把持部を有するベース部と、前記ベース部に回転自在に取り付けられた台座と、前記台座に立設された筒状体と、前記筒状体に固設された昇降機構と、前記昇降機構に垂下されて前記筒状体及び前記鋼管杭の内部を上下に移動自在な掘削装置と、前記台座に備えられ、回転圧入される鋼管杭の回転に同期して、鋼管杭とは逆方向に前記筒状体を等速に回転させる回転駆動機構と、を備えた連続掘削排土装置を用いて、前記鋼管杭の圧入に合わせて、その鋼管杭内を掘削排土する工程と、
前記杭圧入装置を進行方向前方に前記鋼管杭列上を移動させる工程と、
前記杭圧入装置の進行方向後方における、前記クランプ装置が把持しておらず前記杭圧入装置が反力を得ていない鋼管杭内に、補強芯材の投入と硬化性材料の注入を行う工程と、
前記硬化性材料が硬化する前に前記杭圧入装置を用いて、その硬化性材料が注入された鋼管杭を前記リーダマストを反転させて前記チャック装置で掴んで引き抜いた後、前記リーダマストを旋回させて前記チャック装置を進行方向前方に向け、その引き抜いた鋼管杭を前記鋼管杭列に隣接する進行方向前方の位置に圧入する工程と、
前記硬化性材料が硬化してなる杭体間を跨ぐように前記鋼管杭より小径の削孔を施す工程と、
前記削孔した孔内に間詰部材を挿入する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の圧入連続壁の造成方法において、
前記間詰部材は袋状弾性体であって、前記削孔した孔内に挿入した前記袋状弾性体内に充填材を充填する工程を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の圧入連続壁の造成方法において、
前記補強芯材から反力を得て、前記削孔を施すことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の圧入連続壁の造成方法において、
前記硬化性材料からなる杭体の若材齢時に前記削孔を施すことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の圧入連続壁の造成方法において、
前記鋼管杭内に補強芯材の投入と硬化性材料の注入を行う前に、その鋼管杭内を観察する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連続壁を効率よく安価に構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】杭圧入装置を用いた圧入連続壁の造成方法に関し、施工工程を示す説明図である。
図2】杭圧入装置を用いた圧入連続壁の造成方法に関し、施工工程を示す説明図である。
図3】杭圧入装置を用いた圧入連続壁の造成方法に関し、施工工程を示す説明図である。
図4】杭圧入装置を用いた圧入連続壁の造成方法に関し、施工工程を示す説明図である。
図5】杭圧入装置を用いた圧入連続壁の造成方法に関し、施工工程を示す説明図である。
図6】杭圧入装置を用いた圧入連続壁の造成方法に関し、施工工程を示す説明図である。
図7図6のVII−VII線における連続壁及び鋼管杭の断面図である。
図8】連続壁における止水体部分の拡大図であり、円筒形の止水体(a)と、外周面に突起を有する止水体(b)を示している。
図9】連続壁の変形例であり、ポーラスコンクリートからなる止水体を用いたもの(a)と、砕石からなる止水体を用いたもの(b)を示している。
図10】連続掘削排土装置の構成を示す概略図である。
図11】施工補助装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る圧入連続壁の造成方法の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
まず、連続壁の造成に用いる杭圧入装置について説明する。杭圧入装置は、所定の杭(例えば、鋼管杭など)を地中に圧入または回転圧入(以下、単に「圧入」)したり、杭を引き抜いたりする装置である。
杭圧入装置10は、図1に示すように、地中に埋入された既設の鋼管杭P(鋼管杭列)の上端部を内側から拡径して把持する複数(例えば、2つ)のクランプ装置11・・・を備えたサドル12と、サドル12に対して前後動自在なスライドベース13と、スライドベース13上で左右に旋回自在なリーダマスト14と、リーダマスト14の前面に昇降自在に取り付けられて鋼管杭Pを保持するチャック装置15と、リーダマスト14に対してチャック装置15を昇降駆動するメイン油圧シリンダ16と、を備えている。
この杭圧入装置10は、クランプ装置11が把持する鋼管杭列から反力を得て、鋼管杭Pを保持したチャック装置15を下降させることと、鋼管杭Pを離してチャック装置15を上昇させることを繰り返すことによって、1ストローク分ずつ鋼管杭Pを地中に圧入することを繰り返して、鋼管杭Pを地中に埋入するようになっている。
また、スライドベース13が前方に移動することにより、サドル12を移動することなくチャック装置15を水平に前側に移動させて、先頭のクランプ装置11が把持している既設の鋼管杭Pの先に二本の鋼管杭Pを並べて圧入可能となっている。
そして、杭圧入装置10は、既設の鋼管杭Pの先に新たな鋼管杭Pをチャック装置15で圧入する動作と、クランプ装置11による既設の鋼管杭Pの上端部の把持と解除の動作を組み合わせることで、既設の鋼管杭Pからなる鋼管杭列上を自走することができる。
なお、杭圧入装置10の構成や動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0016】
次に、杭圧入装置10を用いた連続壁の造成方法について説明する。
【0017】
図1に示すように、予め幾つかの鋼管杭Pを地中に埋入しておき、その既設の鋼管杭P(鋼管杭列)上に杭圧入装置10を載置する。なお、予め地中に埋入した鋼管杭Pは、図示しない作業台上に載置した杭圧入装置10によって圧入したものでもよく、他の杭打ち機によって圧入したものでもよい。これら既設の鋼管杭P内は掘削排土されて空洞になっているものとする。
そして、鋼管杭Pをクレーンなどによってチャック装置15に建て込み、鋼管杭列に隣接する位置に新たな鋼管杭Pを圧入する。鋼管杭Pを圧入または回転圧入することで、鋼管杭外周の土砂や切削ズリは地山に押し付けられて圧密するため、孔壁および周辺地盤を緩めることはない。したがって、先掘りすることなく、崩壊性地盤や硬質地盤でも、また深度が大きくても、周辺地盤へ及ぼす影響を最小にして鋼管杭Pを好適に圧入することができる。
また、チャック装置15に建て込んだ新たな鋼管杭Pの上端の杭頭部には、連続掘削排土装置1を設置している。
なお、回転圧入に際しては、鋼管杭Pの下端の先端部には切削刃を取り付けておくことが好ましい。
【0018】
次いで、杭圧入装置10による鋼管杭Pの圧入に合わせて、その鋼管杭P内を連続掘削排土装置1で掘削排土する。
連続掘削排土装置1は、図10に示すように、鋼管杭Pの杭頭部を把持する把持部21を有するベース部2と、ベース部2に回転自在に取り付けられた台座3と、台座3に立設された筒状体4と、筒状体4に固設された昇降機構6と、昇降機構6に垂下されて筒状体4及び鋼管杭Pの内部を上下に移動自在な掘削装置7等を備えている。
掘削装置7はスクリューオーガ71を備え、そのスクリューオーガ71により掘削された排土を排出するための開口部41が筒状体4に形成されている。
また、台座3には、回転圧入される鋼管杭Pの回転に同期して、鋼管杭Pとは逆方向に筒状体4を等速に回転させる回転駆動機構5が備えられている。
なお、連続掘削排土装置1の構成や動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
本実施形態では、連続掘削排土装置1を用いて、鋼管杭P内を掘削し、掘削した排土を排出するとしたが、オーガやハンマーグラブなど他の装置を用いた掘削排土を行うようにしてもよい。
【0019】
そして、鋼管杭Pが所定の深度に達し、鋼管杭P内が掘削排土されて空洞になり、その鋼管杭Pの圧入が完了した後、図2に示すように、新たな鋼管杭Pをチャック装置15に建て込み、圧入後の鋼管杭Pから取り外した連続掘削排土装置1を鋼管杭Pの杭頭部に設置して、杭の圧入作業を継続する。
この後、圧入および掘削排土を終えた鋼管杭P内に、補強芯材の投入と硬化性材料の注入が行われるが、その前に鋼管杭P内を観察して、連続壁の構築の妨げになるような異物の有無や連続壁支持地盤の様子を確認することが好ましい。
【0020】
空洞になった鋼管杭P内を観察する場合、例えば図11に示すような、施工補助装置100を用いることができる。施工補助装置100は、図示しないクレーンなどで吊り下げられた状態で、鋼管杭Pの内側に配置されて使用される。
施工補助装置100は、上部に設けられた押圧部101と、押圧部101の下側に設けられた隔壁部102と、空気の給気及び排気を行う給排気部103と、鋼管杭Pの内側を観察するための観察部104等を備えている。
押圧部101は、シリンダの駆動によって進退し、鋼管杭Pの対面に当接して施工補助装置100の姿勢を安定させる当接部101aを備えている。
隔壁部102は、空気圧により鋼管杭Pの径方向に膨張して鋼管杭Pの内面に接触可能な環状弾性体(チューブ)102aを備えている。
給排気部103は、隔壁部102の上板に設けられた給気口103aと、隔壁部102の下板に設けられた排気口103bを備えており、図示しないコンプレッサーによって、給気口103aから吸引した空気を排気口103bから送気する。例えば、環状弾性体102aを膨らませて鋼管杭Pの内面に密着させた状態で、施工補助装置100の下方の鋼管杭P内に圧縮空気を供給することで、鋼管杭P内に存する地下水を押し下げて、地下水の水位を低下させることができる。
観察部104は、照明104aと、カメラ104bと、洗浄ノズル104cを備えている。この観察部104を遠隔操作することによって、鋼管杭P内を照明104aで照らしカメラ104bで撮像した映像を地上のモニターで観察することを可能にしている。洗浄ノズル104cは洗浄液を噴射して、照明104aやカメラ104bを洗浄する。
なお、施工補助装置100の構成や動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0021】
次いで、鋼管杭P内に異常がなければ、図3に示すように、その観察を終えた鋼管杭P内に、補強芯材の投入と硬化性材料Gの注入を行う。ここで、補強芯材の投入と硬化性材料Gの注入が行われる鋼管杭Pは、杭圧入装置10の進行方向後方における、杭圧入装置10が反力を得ていない鋼管杭Pである。なお、補強芯材を投入した後に硬化性材料Gを注入してもよく、硬化性材料Gを注入した後に補強芯材を投入してもよい。
補強芯材としては、鉄筋籠や鋼材を用いることができる。この補強芯材は、鋼管杭Pとほぼ同じ長さを有しており、その補強芯材の上端を作業の足場として使用することが可能になっている。
硬化性材料Gとしては、コンクリートやモルタルなどを用いることができる。なお、分離低減剤を併用することで地下水の混入を抑えるなどして、硬化性材料Gが硬化してなる杭体(Gp)の品質を安定させることができる。
【0022】
次いで、図4に示すように、杭圧入装置10のリーダマスト14を反転させて、硬化性材料Gが注入された鋼管杭Pをチャック装置15で掴み、硬化性材料Gが硬化する前に、その硬化性材料Gが注入された鋼管杭Pを引き抜く。
ここで、硬化性材料Gが硬化する前とは、硬化性材料Gが流動性を有している状態をいう。
また、鋼管杭Pを回転させながら引き抜くようにすると、補強芯材の芯出しが矯正されるとともに硬化性材料Gの流動を促進でき、補強芯材の被りと地山への密着が確保されるので好ましい。さらに硬化性材料Gが地盤に密着するとともに、圧入によって圧密された孔壁のリバウンドにより密実な、よって高品質な杭体(Gp)を構築できる。
なお、図3に基づいた上記説明では、鋼管杭P内に補強芯材と硬化性材料Gを入れた後に鋼管杭Pを引き抜くとしたが、これに限らない。例えば、補強芯材が投入されている鋼管杭Pを引き抜きながら、硬化性材料Gを注入し充填するようにしてもよい。また、硬化性材料Gが注入されている鋼管杭Pを引き抜いた後に、補強芯材を投入するようにしてもよい。また、鋼管杭Pを引き抜きながら硬化性材料Gを注入し、硬化性材料Gが充填された杭穴に補強芯材を投入するようにしてもよい。
【0023】
次いで、図5に示すように、杭圧入装置10で引き抜いた鋼管杭Pは、鋼管杭列の前方に圧入するようにして繰り返し使用する。
そして、杭圧入装置10は杭列上を自走し、杭の圧入作業を繰り返す。
また、杭圧入装置10の進行方向後方の鋼管杭P内の異常の有無を観察確認した後に、その鋼管杭P内に補強芯材の投入と硬化性材料Gの注入を行う作業を繰り返す。
こうした作業を繰り返す過程で、杭穴に充填した硬化性材料Gは硬化して杭体Gpとなる。
【0024】
次いで、杭穴に充填した硬化性材料Gが硬化してなる杭体Gpが複数形成された後、それら杭体Gp間を跨ぐように削孔を施す。削孔する孔の深さは、地盤の透水性から求まる所要深さである。
なお、硬化性材料Gが硬化する強度発現を待って杭体Gp間を跨ぐ削孔を施す際、硬化性材料Gからなる杭体Gpの若材齢時に削孔を施すことが好ましい。若材齢時であれば削孔を施しやすく、硬化した杭体Gp間で夫々の杭体Gpの一部を好適に削り取ることができる。
また、杭体Gpの頭部に突出あるいは露出した補強芯材に掴まり、その補強芯材から反力を得ながら削孔を施すようにすれば、削孔作業用の足場を別途組む必要がなく、好適に作業を進めることができる。
そして、その削孔した孔内に間詰部材である袋状弾性体(S1)を挿入し、その袋状弾性体内に充填材(S2)を充填して、図6図8に示すように、杭体Gp間に止水体Sを形成する。止水体Sは削孔した孔の深さを有する。
袋状弾性体S1は、例えば、ゴムやウレタン等の弾性材料からなる長尺な中空部材であり、削孔した孔と略同じ長さを有している。充填材S2には、例えば、モルタル等の硬化性材料や高分子樹脂材料などを用いることができる。
具体的には、図8(a)に示すように、削孔した孔内に挿入した円筒状の袋状弾性体S1内に充填材S2を加圧充填し、弾性的に袋状弾性体S1を拡径変形させて、加圧保持しながら充填材S2を硬化させることで、杭体Gp間に密接させた止水体Sを形成することができ、高い止水性を確保できる。
また、図8(b)に示すように、外周面に複数の突起が形成された袋状弾性体S1を用いれば、その袋状弾性体S1内に充填材S2が加圧充填された際に、無数の突起が杭体Gpや地盤に押し付けられ接触面積が増大するので、止水体Sによる杭体Gp間の止水性をさらに向上させることができる。
なお、ここでも杭体Gpの頭部に突出あるいは露出した補強芯材に掴まり、その補強芯材から反力を得ながら止水体Sを形成することで、別途に作業用の足場を組む必要がない。
【0025】
こうして、所望する範囲に複数の杭体Gpを形成するとともに、杭体Gp間に止水体Sを形成することによって、杭体Gpと止水体Sとが交互に連なる連続壁を構築することができる。
【0026】
このように、杭圧入装置10を用いて複数の杭体Gpを形成した後、隣り合う杭体Gp間を跨ぐように削孔した孔内に袋状弾性体S1を挿入し、さらに袋状弾性体S1内に充填材S2を加圧充填して、両側の杭体Gpに密着する止水体Sを形成することによって連続壁を構築することができる。
そして、杭体Gpと止水体Sが密着した構造の連続壁は、杭体Gpと止水体Sの間から水が漏れ難くなっており、高い止水性を有している。
【0027】
以上のように、本発明に係る圧入連続壁の造成方法によれば、止水性の高い連続壁を、従来よりも効率よく安価に構築できる。
特に、本発明によれば、崩壊性地盤や硬質地盤、また狭隘な場所でも、地盤に圧入した鋼管杭列を転用しながら地盤に密着した止水性の高い高品質な連続壁を短期にかつ安価に構築できるので、上述した造成方法によって構築した連続壁を、土留壁、ダムやドッグなどの遮水壁、地下鉄やビルの地下室、地下街、共同溝などの外壁等、広い範囲の用途に適用できる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
本発明は、地すべり抑止壁や防波堤・防潮堤として利用する連続壁の造成にも適用可能である。
地すべり抑止壁では、壁背面に作用する水圧の軽減機能が要求され、また防波堤・防潮堤では消波機能が要求されるが、これらの場合、例えば、図9(a)に示すように、隣り合う杭体Gp間を跨ぐように削孔した孔内に、ポーラスコンクリートからなる柱状(あるいは杭状)の間詰部材を挿入して止水体Sを設けるようにしてもよい。
また、図9(b)に示すように、隣り合う杭体Gp間を跨ぐように削孔した孔内に、間詰部材としての外枠部材S3(例えば、円筒状の籠部材や袋部材)を挿入した後、その外枠部材S3の内側に砕石S4を充填して止水体Sを設けるようにしてもよい。なお、外枠部材S3を使用せずに袋詰めした砕石S4を間詰部材として用い、その砕石S4を削孔した孔内に投入するようにして止水体Sを設けるようにしてもよい。
このようなポーラスコンクリートからなる止水体Sや、砕石S4や砂利を盛り立ててなる止水体Sは透水性を有しており、ゴムやウレタン等の弾性材料を用いた止水体Sが完全な止水性を有する強止水体に対し、ここでは弱止水体(半止水体)として区別する。
このような弱止水体Sと杭体Gpとが交互に並んだ連続壁(図9参照)は、完全な止水性を要求されない用途や、水がある程度染み出ることが望まれる用途に好ましく用いられる。そして、地すべり抑止壁や防波堤・防潮堤として好ましく利用される。
特に、ポーラスコンクリートからなる止水体Sや、砕石S4や砂利を盛り立ててなる止水体Sは比較的安価であり、そのような弱止水体Sであれば杭体Gpに密着させる施工精度は要求されないので、比較的簡便に構築することができる。
つまり、弱止水体Sと杭体Gpとが交互に並んだ連続壁であれば、従来よりも簡便に低コストで構築できるメリットがある。
【0029】
以上のように、連続壁の用途に応じて間詰部材を適宜選択することで、高い止水性を有することが望まれる土留壁、ダムやドッグなどの遮水壁、地下鉄やビルの地下室、地下街、共同溝などの外壁等を構築すること、あるいは高い止水性が要求されない地すべり抑止壁や防波堤・防潮堤などを構築することができる。
従って、本発明に係る圧入連続壁の造成方法によれば、様々な用途に利用できる連続壁を、従来よりも効率よく安価に構築できる。
【0030】
なお、以上の実施の形態においては、鋼管杭列上に1台の杭圧入装置10を載置して、連続壁を造成する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、杭圧入用と杭引抜用の2台の杭圧入装置10を用いて、連続壁を構築するようにしてもよい。
また、鋼管杭Pを吊るためのクレーン装置が、鋼管杭列上や杭体Gpの頭部に突出あるいは露出した補強芯材上を自走可能に展開すれば、さらに好適な施工を行うことが可能になる。
【0031】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 連続掘削排土装置
10 杭圧入装置
100 施工補助装置
P 鋼管杭
G 硬化性材料
Gp 杭体
S 止水体
S1 袋状弾性体(間詰部材)
S2 充填材
S3 外枠部材(間詰部材)
S4 砕石(間詰部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11