特許第5981805号(P5981805)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981805
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】車両用歩行者保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/18 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   B60R19/18 H
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-178586(P2012-178586)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-34383(P2014-34383A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勝海
(72)【発明者】
【氏名】末棟 寛士
(72)【発明者】
【氏名】八崎 和倫
(72)【発明者】
【氏名】太田 一宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−297726(JP,A)
【文献】 特開2008−094265(JP,A)
【文献】 特開2012−218636(JP,A)
【文献】 特開2002−337634(JP,A)
【文献】 特開2006−088735(JP,A)
【文献】 特開2012−076536(JP,A)
【文献】 特開2004−203158(JP,A)
【文献】 特開2000−264143(JP,A)
【文献】 特開2012−051435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/18
B60R 19/48
B60R 19/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に、車幅方向に沿って配設されたバンパレインフォースメントと、
前記バンパレインフォースメントに後部を固設する支持ブラケットと、
前記支持ブラケットの前部に固設されているバンパフェイシャと
を有し、歩行者との衝突の際に前記バンパフェイシャが変形して衝突エネルギを吸収する車両用歩行者保護装置において、
前記支持ブラケットが前方へ略水平に延出する上部ブラケット部と前方斜め下方へ延出する下部ブラケット部とを有し、
前記バンパフェイシャが後部を開口する袋状に形成され、該バンパフェイシャの上面後端部が前記上部ブラケット部に固設され、底面後端部が前記下部ブラケット部に固設されて閉断面が形成されており、
前記下部ブラケットと前記バンパフェイシャの前記底面後端部との固設部に、エンジンルームの底面を覆うアンダカバーの前端部が固定されている
ことを特徴とする車両用歩行者保護装置。
【請求項2】
前記バンパフェイシャの前記上面後端部を支持する前記上部ブラケット部の先端部から後方斜め上方へ支持部が延出され、該支持部と前記上部ブラケットとが前記バンパレインフォースメントに固定されてトラス型の略ボックス構造が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項3】
前記支持部が前記バンパフェイシャの前記上面に連続されてエアダムの導風部を形成している
ことを特徴とする請求項記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項4】
前記下部ブラケット部に該下部ブラケット部の前端部よりも前方へ突出するフェイシャ支持アームが形成され、該フェイシャ支持アームの先端部が前記バンパフェイシャの内面に形成された係止部に掛止されている
ことを特徴とする請求項記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項5】
前記下部ブラケット部の後端部が前記バンパレインフォースメントの後部に支持されている
ことを特徴とする請求項記載の車両用歩行者保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントバンパ下部に設け、歩行者の脚部が衝突した際に、自己変形して歩行者の脚部を保護するようにした車両用歩行者保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両の前部に歩行者が衝突すると、多くの場合、先ず、最初に歩行者の脚部がフロントバンパ下部に接触する。そのため、フロントバンパ下部に衝撃吸収部材を配設し、歩行者の脚部に印加される衝突エネルギを緩和して、脚部を保護しようとする技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1(特開2005−297726号公報)には、車両の前部にであってバンパビームの前方に衝撃吸収部材を取付け、又、この衝撃吸収部材よりも下方に、車体前後方向断面が六角形の下部補強部材を取付け、車体前部が歩行者の脚部に衝突した場合、下部補強部材がラッパ形状に変形させると共に、この下部補強部材の潰れ残り先端部を衝撃吸収部材の潰れ残り先端部よりも車両前方に位置するようにした技術が開示されている。
【0004】
この文献に開示されている技術によれば、下部補強部材をラッパ状に上下に変形させることで、歩行者の脚部を広い面積で受け止め、負荷を分散させることができる。更に、下部補強部材の潰れ残り先端部を衝撃吸収部材の潰れ残り先端部よりも車両前方に位置させることで、衝突時の脚部をすくい上げて、歩行者をフロントフード上に乗り上げさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−297726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、衝突時、歩行者をフロントフード上に確実に乗り上げさせるには、脚部のなるべく下部側をすくい上げることが望ましく、下部補強部材にて脚部の下部側を受けるようにするためには、この下部補強部材の取付け位置を下げる必要がある。
【0007】
しかし、下部補強部材の取付け位置を下げると、アプローチアングルが小さくなり、悪路走破性が悪くなるばかりでなく、駐車用車止めブロック等に接触し易くなる不都合がある。
【0008】
又、SUV等のように最低地上高の高い車両では、フロントバンパが比較的高い位置に設置されているため、下部補強部材を低い位置に設定することは困難であり、汎用性に乏しい問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、アプローチアングルの大きな車両、或いは最低地上高の高い車両であっても、衝突時に歩行者の脚部の下部側に接触させてすくい上げることができて高い汎用性を得ることのできる車両用歩行者保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車体前部に、車幅方向に沿って配設されたバンパレインフォースメントと、前記バンパレインフォースメントに後部を固設する支持ブラケットと、前記支持ブラケットの前部に固設されているバンパフェイシャとを有し、歩行者との衝突の際に前記バンパフェイシャが変形して衝突エネルギを吸収する車両用歩行者保護装置において、前記支持ブラケットが前方へ略水平に延出する上部ブラケット部と前方斜め下方へ延出する下部ブラケット部とを有し、前記バンパフェイシャが後部を開口する袋状に形成され、該バンパフェイシャの上面後端部が前記上部ブラケット部に固設され、底面後端部が前記下部ブラケット部に固設されて閉断面が形成されており、前記下部ブラケットと前記バンパフェイシャの前記底面後端部との固設部に、エンジンルームの底面を覆うアンダカバーの前端部が固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、支持ブラケットの下部ブラケット部が前方斜め下方に延出され、この下部ブラケット部にバンパフェイシャの底面後端が固設されているので、歩行者の脚部がバンパフェイシャに衝突した場合、このバンパフェイシャを介して下部ブラケット部に下方へのモーメント荷重が印加され、この下部ブラケット部が下方へ撓み変形することで、バンパフェイシャの底面が車体下方へ変形されるため、アプローチアングルの大きな車両、或いは最低地上高の高い車両であっても、バンパフェイシャが歩行者の脚部の下部側に接触してすくい上げることができ高い汎用性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態による車体前部の概略断面側面図
図2】同、バンパフェイシャのエアダムと支持ブラケットとの接合状態を示す分解斜視図
図3】同、衝突時のバンパフェイシャのエアダム及び支持ブラケットの変形状態を示す断面側面図
図4】第2実施形態による車体前部の概略断面側面図
図5】同、支持ブラケットの部分斜視図
図6】第3実施形態による車体前部の概略断面側面図
図7】同、支持ブラケットの部分斜視図
図8】同、衝突時のバンパフェイシャのエアダム及び支持ブラケットの変形状態を示す断面側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1図3に本発明の第1実施形態を示す。図1は車体前部を示し、この車体前部の前端にフロントバンパ1が配設されている。このフロントバンパ1は、バンパフェイシャ2、バンパビーム3、衝撃吸収部材4等を備えている。
【0015】
バンパフェイシャ2はポリプロピレン等の合成樹脂を素材に形成されて、車体前端面の造形の一部として機能しており、その上部が、図示しないラジエータパネルを構成するアッパフレームに固設されている。更に、このバンパフェイシャ2の上部にフロントグリル5が取付けられている。
【0016】
又、バンパビーム3はバンパフェイシャ2に設けられているメインバンパ部2aの後方に対峙された状態で、車幅方向へ水平に延在され、その両端側が一対のフロントサイドフレーム(図示せず)の前端に固設されている。更に、このメインバンパ部2aとバンパビーム3との間に衝撃吸収部材4が介装されている。この衝撃吸収部材4はポリウレタン発泡体やポリプロピレン発泡体等の発泡体を素材として形成されており、その発泡率は比較的高く設定されている。衝撃吸収部材4の発泡率を高く設定することで、バンパフェイシャ2の前面が歩行者の脚部に衝突した際に、衝撃吸収部材4が塑性変形し、歩行者の脚部に与える衝撃が吸収される。
【0017】
又、このバンパフェイシャ2のメインバンパ部2aの下部に下部外気導入口2bが開口され、更に、その下部に、走行時におけるフロント下部の空気の流れを整流するエアダム2cが形成されている。メインバンパ部2aとエアダム2cとは、平面視において、前方へほぼ同じ量だけ突出されていると共に、車幅方向へは中央から左右斜め後方へ弓状に湾曲形成されている。更に、このバンパフェイシャ2の下端が、後述する支持ブラケット6に固設される。
【0018】
尚、図示しないが、フロントバンパ1の後方にエンジンルームが形成されており、このエンジンルームの前方に、ラジエータパネルに固定されているラジエータが配設され、フロントバンパ1が、このラジエータの前方に配設されている。更に、このラジエータにエアコン装置のコンデンサが併設されており、このコンデンサに、下部外気導入口2bから導入される外気が導入されて冷却される。
【0019】
上述したエアダム2cはバンパフェイシャ2の一部をなし、断面側面視において後方に開口された袋状に形成されており、下部外気導入口2bの下面を形成する上面2dと、前面2eと底面2fとが一体に連続形成されている。更に、図2に示すように、この上面2dの後端部に、後述する支持ブラケット6に係合される突片部2gが車幅方向に所定間隔を開けて突出形成されている。
【0020】
一方、図1の符号10は上述したラジエータパネルのロアフレームであり、本発明のバンパレインフォースメントに相当する部材である。このロアフレーム10に支持ブラケット6が固設されている。この支持ブラケット6は、ポリプロピレン等を素材とする合成樹脂製であり、エアダム2cの開口部に連結される、断面側面視において台形状のブラケット本体部11と、下部外気導入口2bの底面2fに連続して、後方斜め上方へ延出する支持部としての導風部12とを有している。
【0021】
ブラケット本体部11は台形の下底に相当する部位が開口された状態で前方へ延出されており、後部に相当する当接面11aがロアフレーム10の前面に当接され、この当接面11aの下部から後方へ延出するフランジ部11bがロアフレーム10の底面に当接され、ボルト・ナット13にて締結されている。更に、台形の右脚に相当する下部ブラケット部11cが当接面11aの下端から前方斜め下方に延出されている。一方、台形の左脚に相当する上部ブラケット部11dが当接面11aの上端から前方へほぼ水平に延出されている。
【0022】
下部ブラケット部11cの前端にフランジ部11eが形成され、このフランジ部11eとエアダム2cの底面2fの後端部とが、アンダカバー14の前端部を挟んで当接され、クリップ7にて固定されている。このアンダカバー14はエンジンルームの底面を覆っており、後端部がフロントサスペンションを支持するサスペンションクロスメンバ(図示せず)等に固定されている。又、このアンダカバー14は合成樹脂製であり前後方向への押圧荷重を受けて撓み変形する。
【0023】
一方、上部ブラケット部11dの前端部と導風部12の前端部とが銜え部15を介して連続的に一体形成されている。図2に示すように、この銜え部15は、断面側面視において後方へ凹状に形成されており、その底部に、エアダム2cの上面2dの後端に形成されている突片部2gを係入する孔部15aが、この突片部2gに対応する位置に穿設されている。この銜え部15の高さは、上面2dの後端の板厚と同じか、それよりもやや広く形成されており、突片部2gを孔部15aに係入させて取付けた際に、上面2dの後端を、ガタを発生させることなく銜え込むように設定されている。この上面2dの後端部を支持ブラケット6に銜えさせることで固定するようにしたので、バンパフェイシャ2は、支持ブラケット6をロアフレーム10に取付けた後に、前方から取付けることが可能となり、取付け作業の効率化を図ることができる。
【0024】
更に、この導風部12の後端に当てフランジ部12aが曲げ形成されており、この当てフランジ部12aがロアフレーム10の上部に形成されている受けフランジ部10aに、ボルト・ナット13にて締結されている。支持ブラケット6がロアフレーム10に取付けられた状態では、上部ブラケット部11dと導風部12とロアフレーム10とによりトラス型の略ボックス構造が形成されるため、正面からの衝突荷重Fに対してある程度の耐性が得られる。
【0025】
次に、このような構成による本実施形態の作用について説明する。歩行者の脚部に対して車体前部が衝突すると、この脚部は、先ず、フロントバンパ1のバンパフェイシャ2に設けられているメインバンパ部2aとエアダム2cとに接触する。すると、メインバンパ部2aの後部に配設されている衝撃吸収部材4が塑性変形し、歩行者の脚部にかかる衝撃が吸収される。
【0026】
一方、メインバンパ部2aよりも下方に位置するエアダム2cに脚部の下部が接触すると、そのときの衝突荷重Fを受けて上下方向へ撓みながら、後方へ圧縮されるように潰れ、衝撃を緩衝する。その際、エアダム2cの上面2dの後端は、トラス型略ボックス構造を有する支持ブラケット6の上部に銜えられており、一方、底面2fはロアフレーム10側から延出する下部ブラケット部11cの先端に連結されている。従って、図3に示すように、エアダム2cの上面2dを支持する導風部12及び上部ブラケット部11dは大きく変形せず、一方、下部ブラケット部11cには比較的大きなモーメント荷重が作用して、車体下方へ撓み変形される。
【0027】
その結果、エアダム2cは下側へ大きく変形し、その分、歩行者の脚部の下部側に接触する面積が広くなり、脚部に対して衝撃荷重が集中せず等分布となるため、EA量(衝撃エネルギ吸収量)を増大させることができ、脚部を損傷から保護することができる。
【0028】
又、この底面2fの後端部には下部ブラケット部11cと共にアンダカバー14の先端部が挟持されているため、このアンダカバー14も撓み変形するので、このアンダカバー14と下部ブラケット部11cとの撓み変形による反発が反力として脚部の下部側に印加される。その結果、この反力により脚部の下部側を良好にすくい上げることができる。
【0029】
更に、本実施形態では、衝突時にエアダム2cを下方へ大きく撓ませるようにしたので、最低地上高の高い車両、或いはアプローチアングルの大きな車両であっても、歩行者の脚部の下部側に接触させてすくい上げることができる。そのため、異なる車種に広く適用することができ、高い汎用性を得ることができる。
【0030】
[第2実施形態]
図4図5に本発明の第2実施形態を示す。本実施形態は、上述した第1実施形態の変形例であり、エアダム2cからエンジンルーム内に冷却風を取り入れるようにしたものである。尚、第1実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付して説明を簡略化する。
【0031】
上述したように、エアダム2cとブラケット本体部11とで形成された閉断面は空洞であるため、エアダム2cの前面2eから取り入れる空気を、この閉断面内を通してエンジンルーム側へ、比較的容易に導くことができる。
【0032】
そのため、本実施形態では、エアダム2cの前面2eに導風口2hを形成し、又、支持ブラケット6の下部ブラケット部11cに、導風口2hを覆う逆溝状の導風ダクト部11fを前方へ突出させた状態で形成している。
【0033】
このような構成では、車両が走行すると、外気がエアダム2cの導風口2hから導入され、導風ダクト部11fにガイドされて、下部ブラケット部11cの背面に流出される。エアダム2cの底面2fの後端にはアンダカバー14の前端部が連設されているため、下部ブラケット部11cの背面から流出された外気は、このアンダカバー14に沿ってエンジンルーム側へ導かれる。
【0034】
その結果、この外気によりエンジンルームに配置されているエンジンの下部部品(オイルパン、ターボ過給機等)を効率よく冷却することができる。尚、衝突時の作用は上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0035】
[第3実施形態]
図6図8に本発明の第3実施形態を示す。アプローチアングルが比較的大きく、或いは車高が比較的高いSUV(Sport Utility Vehicle)、RV(recreational vehicle) を代表とする多目的車では、地上高の低い位置にバンパを設けることができないため、衝突時には、第1実施例に示すメインバンパ部2aに相当する高さでのみ歩行者の脚部(大腿部付近)を受けることになる。そのため、衝突時には脚部の下部側が車両側に潜り込みやすくなる。
【0036】
本実施形態では、歩行者の脚部がバンパフェイシャに衝突した場合、このバンパフェイシャを下側へ大きく変形させて、脚部の下部側を保護できるようにしたものである。尚、第1実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付して説明を簡略化する。
【0037】
図6に示すように、本実施形態によるフロントバンパ1’は、バンパレインフォースメントとしてのバンパビーム27、このバンパビーム27に固定される支持ブラケット26と、この支持ブラケット26に固定されるバンパフェイシャ28を有している。バンパビーム27は、第1実施形態のバンパビーム3と同様、その両端側が一対のフロントサイドフレーム(図示せず)の前端に固設されている。
【0038】
又、支持ブラケット26はポリプロピレン等の合成樹脂製であり、断面側面視において前方が開講する略コの字状に形成されている。この支持ブラケット26の後部に、バンパビーム27の受け面27aに当接する当接面26aが形成され、ボルト・ナット13にて固定されている。更に、この支持ブラケット26の当接面26aの下端から、所定距離Lだけ後退した位置に掛止面26bが形成され、この掛止面26bがバンパビーム27に形成されている支持面27bに掛止されている。
【0039】
又、この支持ブラケット26の掛止面26bの下端から前方斜め下方に下部ブラケット部26cが延在され、この下部ブラケット部26cの先端にフランジ部26eが形成されている。更に、図7に示すように、この下部ブラケット部26cからフランジ部26eにかけて逆溝状のフェイシャ支持アーム26fが車幅方向へ所定間隔ごとに形成されている。この各フェイシャ支持アーム26fの先端部はフランジ部26eよりも前方に突出されて、後述するバンパフェイシャ28の係止部としての掛止フランジ28dに係合される。
【0040】
更に、支持ブラケット26の当接面26aの上端から前方へ上部ブラケット部26dがほぼ水平に延在されており、その先端に、後述するバンパフェイシャ28の突片部28bを銜える銜え部15が形成されている。尚、この銜え部15はフロントグリル5の下部に形成されて、このフロントグリル5と一体の造形をなしている。
【0041】
一方、バンパフェイシャ28は、第1実施形態と同様、ポリプロピレン等の合成樹脂材を素材に形成されており、前面28aがバンパビーム27のほぼ前方に対峙されている。更に、この前面28aに連続する上面側に、支持ブラケット26に形成されている銜え部15に係合する突片部28bが形成されている。尚、この突片部28bは、バンパフェイシャ28の上端部に、第1実施形態の突片部2gと同様、所定間隔ごとに形成されている。
【0042】
又、このバンパフェイシャ28の底面28cは予め設定されているアプローチアングルにほぼ沿った状態で後方斜め下方に延在され、その後端と支持ブラケット26のフランジ部26eとがアンダカバー14の先端を間に挟んだ状態でクリップ7により固定されている。従って、支持ブラケット26とバンパフェイシャ28とで閉断面が形成されている。
【0043】
このバンパフェイシャ28の内面には掛止フランジ28dが後方へ突出形成されており、この掛止フランジ28dが、支持ブラケット26に形成されているフェイシャ支持アーム26fの先端に乗り上げた状態で掛止されている。
【0044】
このように、支持ブラケット26は、下部ブラケット部26cの後端が、当接面26aよりも所定距離Lだけ後退した掛止面26bから延出されており、しかも、フランジ部26eよりも前方に突出されているフェイシャ支持アーム26fの先端が、バンパフェイシャ28の内面に突設されている掛止フランジ28dに掛止されている。そのため、下部ブラケット部26cの基端からフェイシャ支持アーム26fの先端までの距離を比較的長く確保することができる。
【0045】
このような構成では、図6に示すように、バンパフェイシャ28の前面28aに歩行者の脚部が衝突すると、そのときの衝突荷重Fにより、支持ブラケット26の上部ブラケット部26dが後方へ押圧されて撓み変形される。一方、下部ブラケット部26cにから前方へ延出するフェイシャ支持アーム26fの先端に、バンパフェイシャ28の掛止フランジ28dから、下方へのモーメント荷重が印加されて、この下部ブラケット部26cが下方へ撓み変形されると共にアンダカバー14が撓み変形される。
【0046】
すると、バンパフェイシャ28は全体が後退する。同時に、下部ブラケット部26cの基端からフェイシャ支持アーム26fの先端までの距離が比較的長いため、図8に示すように、底面28c側が、フェイシャ支持アーム26fに支持された状態で下方へ大きく変形される。
【0047】
その結果、バンパフェイシャ28は歩行者の脚部の下部側に接触する面積が広くなり、脚部の上側に対して衝撃荷重が集中せず等分布となり、その分、EA量を増大させることができる。又、バンパフェイシャ28が下方へ大きく変形されるため、多目的車のようにプローチアングルが比較的大きく、或いは車高が比較高い車両であっても、下部ブラケット部26cとアンダカバー14とに作用する反力で歩行者の脚部の下部側を良好にすくい上げることができる。
【符号の説明】
【0048】
1…フロントバンパ、
2,28…バンパフェイシャ、
2c…エアダム、
2d…上面、
2e,28a…前面、
2f,28c…底面、
3,27…バンパビーム、
6,26…支持ブラケット、
10…ロアフレーム、
11…ブラケット本体部、
11a,26a…当接面、
11c,26c…下部ブラケット部、
11d,26d…上部ブラケット部、
12…導風部、
14…アンダカバー、
15…銜え部、
26f…フェイシャ支持アーム、
27a…受け面、
27b…支持面、
F…衝突荷重、
L…所定距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8