(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱転写受像シートが有する染料受容層の形成材料となる水性分散液であって、融点が60〜80℃であるエステル系ワックス、及びガラス転移温度が70〜100℃であるポリエステル系樹脂を含有し、前記エステル系ワックスの含有量が、前記ポリエステル系樹脂100質量部に対して、1〜30質量部である染料受容層形成用水性分散液。
前記グラフトポリマーを構成するセグメント(A1)とセグメント(A2)との質量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]が、60/40〜90/10である、請求項2に記載の染料受容層形成用水性分散液。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔染料受容層形成用水性分散液〕
本発明の染料受容層形成用水性分散液は、熱転写受像シートが有する染料受容層の形成材料となる水性分散液であって、融点が60〜80℃であるエステル系ワックス、及びガラス転移温度が70〜100℃であるポリエステル系樹脂を含有する。
【0015】
本発明の染料受容層形成用水性分散液を用いて得られた熱転写受像シートが、染着性に優れ、印画物の保存性にも優れる理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明の染料受容層形成用水性分散液を用いて得られた染料受容層には、比較的高いガラス転移温度を有するポリエステル系樹脂を含有する。そのため、得られる印画物が高温に保存されたとしても、にじみ等の変質が起きにくいと考えられる。
更に該染料受容層には、特定の融点のエステル系ワックスを含有するが、印画物の保存時には、ワックスは結晶化しているため、印画物の保存性に影響を与えないと考えられる。一方、印画時には、サーマルヘッドの熱により、一時的に非常に高温の状態になり、該ワックスが速やかに融解し、更にワックスがエステル構造を有するため、周辺のポリエステル系樹脂を可塑化させることで、染料の浸透が高まり、高い染着性を有するものと考えられる。更に、印画後には印画物が冷却されることで、再度ワックスの結晶化が生じるため、上述のように印画物の保存性が良好になるものと考えられる。
【0016】
[エステル系ワックス]
本発明に用いられるエステル系ワックスの融点は、本発明の染料受容層形成用水性分散液を熱転写受像シートの染料受容層の形成材料に用いた場合の熱転写受像シートの染着性、印画物の保存性を向上させる観点から、融点が60〜80℃であり、好ましくは60〜77℃、より好ましくは60〜75℃、更に好ましくは65〜75℃である。当該融点が60℃未満であると、本発明の染料受容層形成用水性分散液を用いて得た熱転写受像シートの印画物を高温高湿下で保存すると、染料受容層に染着した染料が拡散し、にじみを生じやすくなり、印画物の保存性が劣る。一方、当該融点が80℃を超えると、熱転写受像シートとした場合の染着性が低下する。
なお、本発明において、エステル系ワックスの融点の値は、実施例に示された方法により測定した値である。
【0017】
本発明において、エステル系ワックスは、アルコールとカルボン酸の縮合物であり、少なくともいずれかが炭素数6〜34のアルキル基を有する化合物を意味する。該アルキル基は直鎖でも分岐でもよいが、直鎖アルキル基が好ましい。
エステル系ワックスとしては、二官能以上のアルコールとモノカルボン酸の縮合物、一官能のアルコールと二官能以上のカルボン酸の縮合物、一官能のアルコールとモノカルボン酸の縮合物が挙げられ、これらの中でも、ポリエステル系樹脂との相溶性の観点、ひいては染着性を向上させる観点から、一官能のアルコールとモノカルボン酸の縮合物が好ましい。
本発明で用いるエステル系ワックスとして好適な市販品としては、例えば、日油株式会社製ニッサンエレクトールWEP−2、ニッサンエレクトールWEP−3、ニッサンエレクトールWEP−4、ニッサンエレクトールWEP−6、ニッサンエレクトールWEP−7等が挙げられる。
また、エステル系ワックスの水性分散液として市販されているものも使用できる。このようなエステル系ワックスの水性分散液としては、例えば、中京油脂株式会社製Q−681等が挙げられる。
なお、これらのエステル系ワックスは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
染料受容層形成用水性分散液中のエステル系ワックスの含有量は、熱転写受像シートの染料受容層の形成材料に用いた場合の熱転写受像シートの印画物の保存性及び染着性を向上させる観点から、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2.5〜20質量部、更に好ましくは3.5〜15質量部、より更に好ましくは8〜12質量部である。
【0019】
[ポリエステル系樹脂]
本発明で用いられるポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、本発明の染料受容層形成用水性分散液を熱転写受像シートの染料受容層の形成材料に用いた場合の印画物の保存性及び染着性を向上させる観点から、70℃〜100℃であり、好ましくは70〜90℃であるが、より染着性を向上させる観点から、より好ましくは70〜85℃、更に好ましくは70〜80℃であり、より印字物の保存性を向上させる観点から、より好ましくは85〜100℃である。
当該ガラス転移温度が70℃未満であると、染料受容層形成用水性分散液を用いて得た熱転写受像シートの印画物を高温高湿下で保存した際ににじみ等の変質が起きやすく、印画物の保存性が劣る。一方、当該ガラス転移温度が100℃を超えると、熱転写受像シートとした場合の染着性が低下する。
なお、本発明において、樹脂のガラス転移温度の値は、実施例に示された方法により測定した値である。
【0020】
なお、本発明において染料受容層形成用水性分散液中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上述のポリエステル系樹脂以外の塩化ビニル系重合体等の他の樹脂を含んでもよいが、樹脂としては、ポリエステル系樹脂のみを含むことが好ましい。
染料受容層形成用水性分散液中のポリエステル系樹脂の含有量は、当該染料受容層形成用水性分散液に含まれる全樹脂成分に対して、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは95〜100質量%、更に好ましくは実質的に100質量%である。
【0021】
本発明で用いるポリエステル系樹脂は、ポリエステル構造のみからなる樹脂であってもよいが、熱転写受像シートとした場合の離型性の観点から、ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成されるグラフトポリマーであることが好ましい。また、このグラフトポリマーは、構成するセグメント(A1)及びセグメント(A2)のどちらが主鎖であってもよいが、セグメント(A1)が主鎖であり、セグメント(A2)が側鎖であるグラフトポリマーであることが好ましい。
【0022】
グラフトポリマーを構成するセグメント(A1)とセグメント(A2)との質量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]は、熱転写受像シートの染着性及び離型性向上の観点から、好ましくは60/40〜90/10、より好ましくは70/30〜87/13、更に好ましくは75/25〜85/15である。
セグメント(A1)がセグメント(A2)より多く存在することで、セグメント(A1)の分子構造に由来する染着性を十分に発揮させることができるものと考えられる。
【0023】
セグメント(A2)と、セグメント(A1)の原料モノマーのうち不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸及び不飽和脂肪族アルコールの合計量との質量比[セグメント(A2)/セグメント(A1)の不飽和基を有する前記成分の合計]は、熱転写受像シートの染着性及び離型性の観点から、好ましくは1/1〜15/1、より好ましくは2/1〜12/1が、更に好ましくは5/1〜10/1である。
【0024】
本発明で用いるポリエステル系樹脂における上記グラフトポリマーの含有量は、熱転写受像シートの染着性向上の観点から、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%以上、更に好ましくは実質100質量%である。
以下、ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成されるグラフトポリマーについて詳述する。
【0025】
(ポリエステルからなるセグメント(A1))
上記グラフトポリマーを構成するセグメント(A1)は、ポリエステルからなり、該グラフトポリマーにおける主鎖であることが好ましい。
セグメント(A1)はポリエステルからなるため、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得ることができる。以下、セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマー(以下、単に「セグメント(A1)の原料モノマー」ともいう)として用いられる、アルコール成分及びカルボン酸成分について詳述する。
【0026】
本発明において、セグメント(A1)の原料モノマーであるアルコール成分として、熱転写受像シートの保存性及び染着性の観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、具体的には下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0028】
一般式(I)において、R
1O、R
2Oはいずれもアルキレンオキシ基であり、好ましくはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレンオキシ基であり、より好ましくはエチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基、更に好ましくはプロピレンオキシ基である。
x及びyは、アルキレンオキサイドの付加モル数に相当し、それぞれ正の数である。さらに、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyとの和の平均値は、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5、更に好ましくは2〜3である。
また、x個のR
1O又はy個のR
2Oは、各々同一であっても異なっていてもよいが、熱転写受像シートの染着性及び熱転写受像シートにおける断熱層と染料受容層との密着性の観点から、同一であることが好ましく、プロピレンオキシ基であることがより好ましい。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
熱転写受像シートの保存性及び染着性の観点から、前記プロピレンオキシ基の含有量が、全アルキレンオキシ基中、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは60〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは85〜100モル%、より更に好ましくは実質的に100モル%である。
【0030】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、熱転写受像シートの染着性及び印画物の保存性を向上させる観点から、全アルコール成分に対して、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは45〜100モル%、更に好ましく65〜90モル%である。
なお、本発明において、アルキレンオキサイド付加物とは、ビスフェノールAにアルキレンオキシ基を付加した構造全体を意味するものである。
【0031】
セグメント(A1)の原料モノマーであるアルコール成分には、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物と共に、これ以外のアルコール成分を含有することもできる。
その他のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、飽和脂肪族アルコール、水添ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)、アリルアルコール等の不飽和脂肪族アルコール等が挙げられ、印画物の保存性を向上させる観点から、水添ビスフェノールAが好ましい。
なお、これらのアルコール成分は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及び水添ビスフェノールAを含有する場合、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及び水添ビスフェノールAの合計含有量は、熱転写受像シートの染着性及び印画物の保存性を向上させる観点から、全アルコール成分に対して、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%、より更に好ましくは実質的に100モル%である。
また、水添ビスフェノールA及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物との質量比〔水添ビスフェノールA/ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物〕は、熱転写受像シートの染着性及び印画物の保存性を共に向上させる観点から、好ましくは10/90〜70/30、より好ましくは15/85〜60/40、更に好ましくは20/80〜50/50、より更に好ましくは20/80〜30/70である。
【0033】
セグメント(A1)の原料モノマーであるカルボン酸成分としては、熱転写受像シートの染着性及び離型性向上の観点から、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸を含むことが好ましく、不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸を含むことがより好ましい。該炭素−炭素不飽和結合の部分は、グラフトポリマー中では、セグメント(A2)との結合部分となることが好ましく、その場合、該不飽和結合は、飽和結合となる。
【0034】
非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸(不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸)としては、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;テトラヒドロフタル酸等の不飽和脂環式カルボン酸等、及びこれら酸の無水物等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
【0035】
セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマーとして、不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸の含有量は、熱転写受像シートの染着性及び離型性向上の観点から、全カルボン酸成分に対して、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは7〜25モル%、更に好ましくは10〜20モル%である。
【0036】
上記以外のその他のカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、コハク酸、アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸類、デカリンジカルボン酸類等の脂環族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、熱転写受像シートの染着性及び印画物の保存性を向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸がより好ましく、イソフタル酸が更に好ましい。
【0037】
本発明において、セグメント(A1)に含有される酸基としては、カルボキシ基を含有することが好ましい。セグメント(A1)中に含まれるカルボキシ基の含有量は、セグメント(A1)中の酸基の総量に対して、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、更に好ましくは実質的に100モル%である。
また、セグメント(A1)に含有される酸基としてスルホン酸を含む場合、当該スルホン酸基の含有量は、セグメント(A1)中の酸基の総量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下、より更に好ましくは実質的に0モル%である。スルホン酸基を多く含むと、水溶性が高くなりすぎて、側鎖セグメント(A2)のモノマーとの反応性が乏しくなる。また、染料との相互作用が弱くなり、本発明の効果である染着性や保存性に劣るものとなる。
【0038】
セグメント(A1)を構成するポリエステルの酸価は、水性分散液の保存性の観点から、好ましくは10〜40mgKOH/g、より好ましくは12〜30mgKOH/g、更に好ましくは15〜27mgKOH/gである。
また、セグメント(A1)を構成するポリエステルの数平均分子量は、染料受容層に用いた場合の造膜性の観点から、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000、更に好ましくは2,500〜6,000、更に好ましくは3,000〜4,000である。
なお、本発明において、数平均分子量の値は、実施例に記載の方法により測定された値である(以下同じ)。
【0039】
なお、本発明において、セグメント(A1)は、前記範囲内において、実質的にその特性を損なわない程度に変性されていてもよい。
本発明において、セグメント(A1)中におけるポリエステル部分の含有量は、熱転写受像シートの保存性及び染着性の観点から、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは85〜100質量%、より更に好ましくは実質的に100質量%である。
【0040】
(付加重合系樹脂からなるセグメント(A2))
上記グラフトポリマーを構成するセグメント(A2)は、付加重合性モノマー(a2)(以下、「モノマー(a2)」ともいう)に由来する構成単位からなる付加重合系樹脂からなるセグメントであり、該グラフトポリマーにおける側鎖であることが好ましい。
【0041】
付加重合性モノマー(a2)としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類;(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、スチレン類及び(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、芳香族基を有する付加重合性モノマーがより好ましい。
芳香族基を有する付加重合性モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ベンジルメタクリレート及びベンジルアクリレートが好ましく、モノマーの原料価格、並びに、熱転写受像シートの離型性及び保存安定性の観点から、スチレンがより好ましい。
なお、本発明において、例えば、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸及びアクリル酸の双方を示すものである。
【0042】
芳香族基を有する付加重合性モノマーを由来とする構成単位の含有量は、熱転写受像シートの離型性、特に高画像濃度における離型性及び染着性の観点から、セグメント(A2)の全構成単位に対して、好ましくは85〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%、より更に好ましくは実質的に100質量%である。
【0043】
[グラフトポリマーの製造方法]
上述のグラフトポリマーの製造方法としては、上述のアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するポリエステル樹脂(a1)(以下、樹脂(a1)ともいう)を調製し、該ポリエステル樹脂(a1)の存在下、付加重合性モノマー(a2)を付加重合する方法が好ましい。
【0044】
(ポリエステル樹脂(a1))
樹脂(a1)は、前記アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するポリエステル樹脂であり、前記ポリエステル樹脂からなるセグメント(A1)を構成するのに好ましいものである。
なお、「非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合」は、原料モノマーとして用いる、前述の不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸及び不飽和脂肪族アルコールから選ばれる1種以上に由来するものである。これらのなかで、反応性の観点から、不飽和脂肪族カルボン酸及び不飽和脂環式カルボン酸が好ましく、不飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。
【0045】
樹脂(a1)の原料成分であるアルコール成分として、前記アルコール成分を使用することができ、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。
また、樹脂(a1)は、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するものであり、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコールを用いることができる。非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコールとしては、アリルアルコール等の不飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。
その他のアルコールとしては、前記セグメント(A1)の場合と同様である。
これらのアルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、これらのアルコール成分の好適な構造、及び含有量は、前述のセグメント(A1)と同様である。
【0046】
樹脂(a1)は、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するものであり、ポリエステルの原料成分としてのカルボン酸成分として、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸を用いることが好ましい。
非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸としては、前記セグメント(A1)の場合と同様であり、好適な構造及び好適な含有量も同じであり、フマル酸がより好ましい。
カルボン酸成分中、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸の含有量は、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは7〜25モル%、更に好ましくは10〜20モル%である。
その他のカルボン酸としては、前記セグメント(A1)の場合と同様であり、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましく、イソフタル酸がより好ましい。カルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、これらのカルボン酸成分の好適な構造、及び含有量は、前述のセグメント(A1)と同様である。
【0047】
ポリエステル樹脂(a1)は、例えば、前記アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。当該製造において、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を加えて、不活性ガス雰囲気中にて、上記温度まで加熱した後、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸及びラジカル重合禁止剤を加えて、反応させることが、目的の構造のグラフトポリマーを得る観点から好ましい。
熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリエステルはシャープな分子量分布を有することが好ましく、エステル化触媒を用いて縮重合をすることが好ましい。
エステル化触媒としては、例えば、スズ触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、二酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルの合成におけるエステル化反応の反応効率の観点から、スズ触媒が好ましい。
スズ触媒としては、酸化ジブチルスズ、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ等が好ましい。
また、本発明においては、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸を用いるため、ラジカル重合禁止剤を用いることが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、4−t−ブチルカテコール等が好ましい。
【0048】
樹脂(a1)の軟化点は、熱転写受像シートの染着性及び印画物の保存性を向上させる観点から、好ましくは80〜165℃、より好ましくは95〜135℃、更に好ましくは100〜125℃である。
なお、本発明において、樹脂の軟化点は、実施例に記載の方法により測定された値である。
【0049】
樹脂(a1)のガラス転移温度は、熱転写受像シートの離型性及び染着性、並びに印画物の保存性を向上させる観点から、好ましくは55〜100℃、より好ましくは60〜90℃、更に好ましくは63〜85℃、より更に好ましくは65〜78℃である。
【0050】
樹脂(a1)の酸価は、熱転写受像シートの染着性の観点から、好ましくは10〜40mgKOH/g、より好ましくは12〜30mgKOH/g、更に好ましくは15〜27mgKOH/gである。
【0051】
なお、軟化点、ガラス転移温度、及び酸価はいずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより、所望のものとなるように調整することができる。
【0052】
樹脂(a1)の数平均分子量は、染料受容層に用いた場合の造膜性の観点から、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000、更に好ましくは2,500〜6,000、より更に好ましくは3,000〜4,000である。
【0053】
なお、本発明において、樹脂(a1)は、前記範囲内において、実質的にその特性を損なわない程度に変性されていてもよい。
本発明において、樹脂(a1)におけるポリエステル部分の含有量は、熱転写受像シートの染着性及び離型性の観点から、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは85〜100質量%、より更に好ましくは実質的に100質量%である。
【0054】
(付加重合性モノマー(a2))
本発明に用いられる付加重合性モノマー(a2)は、前記の付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)の原料モノマーとして記載したものと同じであり、芳香族基を有する付加重合性モノマーを用いることが好ましい。
芳香族基を有する付加重合性モノマーとしては、スチレン、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレートが好ましく、モノマーの原料価格、並びに、熱転写受像シートの離型性及び保存安定性の観点から、スチレンがより好ましい。
芳香族基を有する付加重合性モノマーの含有量としては、熱転写受像シートの離型性、特に高画像濃度における離型性及び染着性の観点から、全付加重合性モノマー(a2)の総量に対して、好ましくは85〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%、より更に好ましくは実質的に100質量%である。
【0055】
(グラフトポリマーの製造)
上述のグラフトポリマーは、上記樹脂(a1)の存在下、上記付加重合性モノマー(a2)を重合する方法によって得ることができる。その重合方法に制限はなく、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを直接混合して重合する方法、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを有機溶媒に溶解して重合する方法等が挙げられる。
これらの中でも、本発明で用いるグラフトポリマーであるポリエステル系樹脂は、下記工程(1)及び(2)を有する方法によって得ることが好ましい。
工程(1):非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合して、グラフトポリマーであるポリエステル系樹脂の水性分散液を得る工程
【0056】
<工程(1)>
工程(1)は、ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程である。
ポリエステル樹脂(a1)を分散させる水性媒体とは、水を主成分とするもの、すなわち、水の含有量が50質量%以上の媒体である。水性媒体中の水の含有量は、環境安全性の観点から、全水性媒体の総量に対して、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは実質的に100質量%である。
水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の、水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
【0057】
水性媒体中にポリエステル樹脂(a1)を分散させる方法としては、前記ポリエステル樹脂(a1)をケトン系溶媒に溶解させ、後述する中和剤を加えてポリエステル樹脂(a1)のカルボキシル基をイオン化し、次いで水を加えて水相に転相する方法、好ましくは水を加えた後にケトン系溶媒を留去して水相に転相する方法が挙げられる。
より具体的には、例えば、まず、撹拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた反応器を準備し、有機溶媒に溶解したポリエステル樹脂(a1)に、中和剤等を加え、カルボキシ基をイオン化する。ただし、すでにイオン化されている場合は不要である。次いで、水を加えて水相に転相するが、水を加えた後に有機溶媒を留去して水相に転相することが好ましい。
ポリエステル樹脂(a1)の有機溶媒への溶解操作、及びその後の中和剤の添加は、使用する有機溶媒の沸点以下の温度で行うことが好ましい。また、使用する水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
【0058】
有機溶媒としては、ケトン系溶媒等の前述のものを用いることができるが、ポリエステル樹脂(a1)の溶解性及び溶媒の留去の容易性の観点から、ケトン系溶媒が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
【0059】
また、中和剤としては、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、アリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、n−プロパノールアミン、ブタノールアミン、5−アミノ−4−オクタノール、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、ジグリコールアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等のアミン類等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、熱転写受像シートの吸湿性を抑制できるとの観点から、アンモニア水が好ましい。
中和剤の使用量は、少なくともポリエステル樹脂(a1)の酸価を中和できる量であればよい。
【0060】
以上のようにして得られたポリエステル樹脂(a1)の水性分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径(D
50)は、樹脂粒子の分散安定性の観点から、好ましくは50〜500nm、より好ましくは70〜200nm、更に好ましくは80〜140nm、より更に好ましくは90〜120nmである。
なお、本発明において「体積中位粒径(D
50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。その測定方法は実施例に記載の通りである。
【0061】
また、ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液の固形分濃度は、樹脂粒子の分散安定性及び生産性の観点から、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは25〜50質量%、更に好ましくは30〜45質量%である。
【0062】
ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液の25℃におけるpHは、水性分散液の保存安定性の観点から、好ましくは5.0〜9.0、より好ましくは5.5〜8.0、更に好ましくは6.0〜7.0である。
【0063】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で得られたポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合して、グラフトポリマーであるポリエステル系樹脂の水性分散液(以下、「水性分散液(A)」ともいう)を得る工程である。
【0064】
まず、付加重合性モノマー(a2)をポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に添加する。ポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)との質量比[ポリエステル樹脂(a1)/付加重合性モノマー(a2)]は、熱転写受像シートの染着性及び離型性向上の観点から、好ましくは60/40〜90/10、より好ましくは70/30〜87/13、更に好ましくは75/25〜85/15である。
なお、ポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)との混合の際、撹拌の効率の点から、水等を更に加えてもよい。
【0065】
次に、ポリエステル樹脂(a1)の存在下、付加重合性モノマー(a2)を重合する。
重合には、任意のラジカル重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて添加することが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、過硫酸塩を用いることがより好ましい。
ポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)とを含有する混合液を加熱することで重合反応を進行させることができる。重合温度は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、例えば、過硫酸ナトリウムを用いる場合には、重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。
【0066】
以上のようにして得られた水性分散液(A)中のグラフトポリマーのガラス転移温度は、上述のとおり、熱転写受像シートに用いた場合の印画物の保存性及び染着性の観点から、70〜100℃、好ましくは70〜90℃であるが、より染着性を向上させる観点から、より好ましくは70〜85℃、更に好ましくは70〜80℃であり、より印字物の保存性を向上させる観点から、より好ましくは85〜100℃である。
【0067】
水性分散液(A)の固形分濃度は、樹脂粒子の分散安定性及び生産性の観点から、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは25〜45質量%、更に好ましくは30〜40質量%である。
また、水性分散液(A)の25℃におけるpHは、水性分散液(A)の保存安定性の観点から、好ましくは5〜10、より好ましくは5.5〜9、更に好ましくは6.0〜8である。
【0068】
水性分散液(A)中の樹脂粒子の体積中位粒径(D
50)は、水性分散液(A)の分散安定性及び熱転写受像シートを得る際の造膜性の観点から、好ましくは50〜500nm、より好ましくは70〜200nm、更に好ましくは80〜140nm、より更に好ましくは90〜120nmである。
【0069】
[染料受容層形成用水性分散液の製造方法]
本発明の染料受容層形成用水性分散液の製造方法は、下記工程(3)を有することが好ましく、更に上述の工程(1)及び(2)を有することがより好ましい。
工程(3):ガラス転移温度が70〜100℃であるポリエステル系樹脂の水性分散液に、融点が60〜80℃であるエステル系ワックスの水性分散液を添加して染料受容層形成用水性分散液を調製する工程
【0070】
(ポリエステル系樹脂の水性分散液)
本工程に用いられるポリエステル系樹脂の水性分散液は、前記ポリエステル系樹脂を水性媒体に分散したものであれば、制限はないが、なかでも前記グラフトポリマーを水性媒体に分散したものが好ましく、前記グラフトポリマーの製造の工程(1)及び(2)によって得られた水性分散液(A)がより好ましい。
【0071】
(エステル系ワックスの水性分散液)
本工程に用いられるエステル系ワックスの水性分散液は、前記エステル系ワックスを水性媒体に分散したものであれば、制限はないが、凝集を防ぐ観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤が好ましい。
界面活性剤を使用する場合の界面活性剤の含有量は、エステル系ワックスの水性分散液の分散安定性の観点から、ワックス成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0072】
エステル系ワックスの水性分散液は、エステル系ワックスと水性媒体とを、界面活性剤の存在下、エステル系ワックスの融点以上の温度で、分散機を用いて分散することによって得ることが好ましい。用いる分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機等が好ましい。本工程で用いる水性媒体は、前記グラフトポリマーの製造で用いられるものが好ましく用いられる。
【0073】
エステル系ワックスの水性分散液中のエステル系ワックスの体積中位粒径(D
50)は、形成する染料受容層中においてエステル系ワックスを均一に分散させる観点から、好ましくは100〜1000nm、より好ましくは120〜700nm、更に好ましくは140〜500nm、より更に好ましくは160〜300nmである。
エステル系ワックス水性分散液の固形分濃度は、エステル系ワックスの水性分散液の分散安定性の観点から、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは25〜45質量%、更に好ましくは30〜40質量%である。
【0074】
エステル系ワックスの水性分散液は、市販の水性分散液を用いてもよい。市販の好ましいエステル系ワックスの水性分散液としては、Q−681(中京油脂社製、エステル系、融点73.3℃)が挙げられる。なお、市販の水性分散液に、脱イオン水を添加して、所望の固形分濃度となるように調製してもよい。
【0075】
また、本発明の染料受容層形成用水性分散液には、熱転写受像シートの離型性を向上させる観点から、離型剤を含有することが好ましい。
離形剤としては、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
染料受容層形成用水性分散液中の離型剤の含有量は、熱転写受像シートの離型性の向上、及びにじみの抑制の観点から、染料受容層形成用水性分散液中に含まれるポリエステル系樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜16質量部、より好ましくは2.5〜14質量部、更に好ましくは5〜12質量部である。
【0076】
また、本発明の染料受容層形成用水性分散液には、造膜剤を含有してもよい。造膜剤としては、ブチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、ゼラチン等が挙げられ、染料受容層の強度及び離型性の観点から、ゼラチンが好ましい。
造膜剤を含有する場合、染料受容層形成用水性分散液中の造膜剤の含有量は、染料受容層形成用水性分散液中に含まれるポリエステル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜8質量部、更に好ましくは1〜6質量部である。
【0077】
本発明の染料受容層形成用水性分散液は、染料受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン等の顔料や充填剤を含有することができ、更に必要に応じて、例えば、触媒、硬化剤等の他の添加剤を含有することもできる。
また、本発明の染料受容層形成用水性分散液には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエステル系樹脂以外の塩化ビニル系重合体等の他の樹脂を含むことができるが、樹脂としては、ポリエステル系樹脂のみを含むことが好ましい。なお、他の樹脂を含む場合、樹脂の製造過程で、ポリエステル系樹脂と共に有機溶媒に溶解させることにより染料受容層形成用水性分散液に含有させてもよい。
【0078】
〔熱転写受像シート〕
本発明の熱転写受像シートは、基材上に、融点が60〜80であるエステル系ワックス、及びガラス転移温度が70〜100℃であるポリエステル系樹脂を含有する染料受容層を有する。なお、本発明の熱転写受像シートは、基材上に上記染料受容層を有するものであり、当該基材と染料受容層との間に、別の層を有していてもよい。
本発明の熱転写シートは、染着性向上の観点から、上記基材と上記染料受容層との間に断熱層を有することが好ましい。
また、上記染料受容層は、上述の本発明の染料受容層形成用水性分散液より形成されたものであることが好ましい。
【0079】
染料受容層に含有するエステル系ワックス、及びポリエステル系樹脂は上述の通りである。
染料受容層中の上述のポリエステル系樹脂の含有量は、当該染料受容層に含まれる全樹脂成分に対して、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは95〜100質量%、更に好ましくは実質的に100質量%である
また、染料受容層には、上述の離形剤を含有することが好ましく、上述の造膜剤、顔料、充填剤、触媒、硬化剤、ポリエステル系以外の樹脂等を含有していてもよい。
染料受容層の厚さは、特に制限はないが、画質及び生産性向上の観点から、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜15μmである。
また、乾燥後の染料受容層1m
2当たりの固形分量としては、上記と同様の観点から、好ましくは1〜10g/m
2、より好ましくは2〜5g/m
2である。
【0080】
[基材]
基材としては、例えば、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート等の各種の樹脂のフィルム又はシート等が使用でき、また、これらの樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルムあるいは発泡させた発泡シート等も使用できる。
なお、これらの基材は、単独で又は上述の基材を組み合わせた積層体としても使用できる。
【0081】
基材の厚みは、特に制限はないが、好ましくは10〜300μmである。
また、これらの基材の表面には、染料受容層や断熱層との密着力を向上させる観点から、プライマー処理やコロナ放電処理を施すことが好ましい。
【0082】
[断熱層]
本発明の熱転写シートは、クッション性及び断熱性を向上させて、染着性を向上させる観点から、上記基材と上記染料受容層との間に断熱層を有することが好ましい。
断熱層の厚みは、クッション性、断熱性の観点から、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜50μmである。
また、乾燥後の断熱層1m
2当たりの固形分量としては、上記と同様の観点から、好ましくは7〜70g/m
2、より好ましくは10〜50g/m
2ある。
断熱層には、水溶性高分子及び中空粒子を含有することが好ましい。
【0083】
<水溶性高分子>
水溶性高分子は、中空粒子を固定するバインダーとして用いられるものであり、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、10〜40℃の室温付近に水溶液のゲル化温度を有するという熱特性の観点から、ゼラチンが好ましい。
水溶性高分子の粘度としては、受像シートの離型性及び造膜性の観点から、JIS K6503−2001で測定した粘度(60℃)が、好ましくは2.5〜6.0mPa・s、より好ましくは3.0〜5.5mPa・sである。
断熱層における水溶性高分子の含有量は、当該断熱層全体の質量に対して、好ましくは1〜75質量%、より好ましくは1〜50質量%である。
【0084】
<中空粒子>
断熱層に含有される中空粒子としては、少なくとも一部に空孔を有するポリマー粒子であれば、特に制限はない。
中空粒子を構成する材料としては、特に制限はないが、熱転写受像シートの染着性、及び熱転写受像シートにおける断熱層と染料受容層との密着性の観点から、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体が好ましく、スチレン−アクリル共重合体がより好ましい。
【0085】
中空粒子の形状としては、特に限定されず、球状はもちろん球状以外のいかなる形状のものであってもよいが、熱転写受像シートにおける断熱層と染料受容層との密着性の観点から、実質球状のものが好ましい。
なお、本発明において「球状」とは、粒子投影像における粒子の長径と短径の比〔長径/短径〕が1.0〜1.5のものを意味し、1.0〜1.2であるものが好ましい。
【0086】
また、中空粒子の体積中位粒径(D
50)は、熱転写受像シートにおける断熱層と染料受容層との密着性の観点から、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.3〜3μm、更に好ましくは0.35〜1μmである。
なお、本発明において、中空粒子の体積中位粒径(D
50)の値は、電界放射型走査電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、商品名:S−4800型)により測定した値である。
【0087】
中空粒子の固形分濃度としては、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%である。
また、中空粒子の中空率は、好ましくは40〜60%、より好ましくは45〜55%である。
【0088】
中空粒子のメチルエチルケトン不溶分は、熱転写受像シートの染着性、及び受像シートにおける中間層と染料受容層との密着性の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは10〜70質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。
本発明において、「中空粒子のメチルエチルケトン不溶分」とは、25℃のメチルエチルケトン95質量部に対して、中空粒子2.0質量部を溶解させた場合の中空粒子が有する不溶な中空粒子成分の質量割合で定義されるものである。
【0089】
本発明において、中空粒子は、水性媒体中の分散液として使用することが好ましく、好ましく使用できる市販の中空粒子として、例えば、日本ゼオン株式会社製の「Nipol MH8101」、ロームアンドハースジャパン株式会社製「HP−1055」、JSR株式会社製の「SX8782(D)」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0090】
断熱層における中空粒子と水溶性高分子との質量比〔中空粒子/水溶性高分子〕は、熱転写受像シートの染着性、及び熱転写受像シートにおける断熱層と染料受容層との密着性の観点から、好ましくは30/70〜90/10、より好ましくは40/60〜80/20、更に好ましくは50/50〜75/25である。
【0091】
なお、断熱層には、断熱層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤を含有することができる。
これらの顔料や充填剤を含有する場合の含有量は、熱転写受像シートの白色度を向上させる観点から、断熱層中の水溶性高分子100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。
また、断熱層には、更に必要に応じて、グリコールエーテル類等の造膜助剤、離型剤、硬化剤、触媒等の添加剤を含有することもできる。
【0092】
[熱転写受像シートの製造方法]
本発明の熱転写受像シートは、上述の工程(3)により得られた染料受容層形成用水性分散液を用いて、染料受容層を形成することによって得られる。
本発明の熱転写受像シートの製造方法としては、下記の工程(4)及び(5)を有することが好ましい。
工程(4):融点が60〜80℃であるエステル系ワックス、及びガラス転移温度が70〜100℃であるポリエステル系樹脂を含有する染料受容層形成用水性分散液を用いて基材上に塗布膜を形成する工程
工程(5):工程(4)で形成した塗布膜を40〜110℃で1〜10分間乾燥し、染料受容層を形成する工程
【0093】
<工程(4)>
工程(4)は、融点が60〜80℃であるエステル系ワックス、及びガラス転移温度が70〜100℃であるポリエステル系樹脂を含有する染料受容層形成用水性分散液を用いて基材上に塗布膜を形成する工程である。
本工程で用いる染料受容層形成用水性分散液としては、上述の工程(3)で得られた水性分散液を用いることが好ましい。
【0094】
本工程において、染料受容層形成用水性分散液を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により基材上に塗布することで塗布膜を形成することができる。
【0095】
なお、基材と染料受容層との間に断熱層を有する熱転写受像シートとする場合は、基材の一方の面上に断熱層用塗工液を塗布し乾燥させて断熱層を形成させた後、染料受容層形成用水性分散液を、基材上の断熱層の面上に塗布することが好ましい。
【0096】
断熱層を形成するための断熱層用塗工液は、上述の水溶性高分子及び中空粒子を含有することが好ましく、必要に応じて上述の各種添加剤を含有してもよく、これらの添加剤を有機溶媒や水に分散あるいは溶解して調製することができる。
そして、調製した上記断熱層用塗工液を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により、基材上に塗布し乾燥して断熱層を形成することができる。この際の乾燥条件としては、20〜50℃で1〜10分乾燥させることが好ましい。
【0097】
<工程(5)>
工程(5)は、工程(4)で形成した塗布膜を40〜110℃で1〜10分間乾燥し、染料受容層を形成する工程である。
乾燥する温度は、造膜性を向上させ、ひび割れのない表面を有する染料受容層を形成する観点から、好ましくは40〜110℃、より好ましくは42〜80℃、更に好ましくは45〜60℃である。
また、乾燥する時間は、上記と同様の観点から、好ましくは1〜10分間、より好ましくは1.5〜7.5分間、更に好ましくは1.8〜5分間である。
【0098】
[転写シート]
本発明の熱転写受像シートを使用して熱転写を行う際に使用する転写シート(インクリボン)は、通常、紙やポリエステルフイルム上に昇華性染料を含む染料層、及び染料を受像して得られた画像上に転写される保護層等からなるラミネート層を設けたものであり、任意の転写シートをいずれも使用することができる。
本発明の熱転写受像シートに好適な昇華性染料としては、例えば、イエロー染料では、ピリドンアゾ系、ジシアノスチリル系、キノフタロン系、メロシアニン系染料等;マゼンタ染料では、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾメチン系、イソチアゾール系、ピラゾロトリアゾール系染料等;シアン染料では、アントラキノン系、シアノメチレン系、インドフェノール系、インドナフトール系染料等が挙げられる。
【0099】
熱転写時の熱エネルギーの付与手段としては、任意の付与手段がいずれも使用でき、例えば、サーマルプリンター等の記録装置によって、記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm
2程度の熱エネルギーを付与することによって行うことができる。
【0100】
上述した実施形態に関し、本発明は、下記[1]に記載の染料受容層形成用水性分散液を開示する。
[1]熱転写受像シートが有する染料受容層の形成材料となる水性分散液であって、融点が60〜80℃、好ましくは60〜77℃、より好ましくは60〜75℃、更に好ましくは65〜75℃であるエステル系ワックス、及びガラス転移温度が70〜100℃、好ましくは70〜90℃であるポリエステル系樹脂を含有する、染料受容層形成用水性分散液。
【0101】
本発明は、さらに下記〔2〕〜〔17〕に記載の染料受容層形成用水性分散液であることが好ましい。
〔2〕前記エステル系ワックスの含有量が、前記ポリエステル系樹脂100質量部に対して、1〜30質量部、好ましくは2.5〜20質量部、より好ましくは3.5〜15質量部、更に好ましくは8〜12質量部である、上記〔1〕に記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔3〕前記エステル系ワックスが、アルコールとカルボン酸の縮合物である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔4〕前記エステル系ワックスを構成する前記アルコール及び前記カルボン酸の少なくともいずれかが炭素数6〜34のアルキル基を有する化合物である、上記〔3〕に記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔5〕前記エステル系ワックスが、一官能のアルコールとモノカルボン酸の縮合物である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
【0102】
〔6〕前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が、70〜85℃、好ましくは70〜80℃である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔7〕前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が、85〜100℃である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔8〕前記染料受容層形成用水性分散液中のポリエステル系樹脂の含有量が、当該染料受容層形成用水性分散液に含まれる全樹脂成分に対して、90〜100質量%、好ましくは95〜100質量%、より好ましくは実質的に100質量%である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
【0103】
〔9〕前記ポリエステル系樹脂が、ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成されるグラフトポリマーを含む、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔10〕前記グラフトポリマーを構成するセグメント(A1)とセグメント(A2)との質量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]が、60/40〜90/10、好ましくは70/30〜87/13、より好ましくは75/25〜85/15である、上記〔9〕に記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔11〕前記グラフトポリマーが、セグメント(A1)が主鎖であり、セグメント(A2)が側鎖であるグラフトポリマーである、上記〔9〕又は〔10〕に記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔12〕前記セグメント(A2)と、前記のセグメント(A1)の原料モノマーである不飽和脂肪族カルボン酸、及び不飽和脂環式カルボン酸の合計量の質量比[セグメント(A2)/セグメント(A1)の不飽和基を有する前記成分の合計]が、1/1〜15/1、好ましくは2/1〜12/1、より好ましくは5/1〜10/1である、上記〔9〕〜〔11〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔13〕セグメント(A1)が、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を30〜100モル%、好ましくは45〜100モル%、より好ましくは65〜100モル%含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルからなる、上記〔9〕〜〔12〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔14〕セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマーであるアルコール成分が、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及び水添ビスフェノールAを含有し、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及び水添ビスフェノールAの合計含有量が、全アルコール成分に対して、70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、更に好ましくは実質的に100モル%である、上記〔9〕〜〔13〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔15〕セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマーであるアルコール成分が、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及び水添ビスフェノールAを含有し、水添ビスフェノールA及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物との質量比〔水添ビスフェノールA/ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物〕が、10/90〜70/30、好ましくは15/85〜60/40、より好ましくは20/80〜50/50、更に好ましくは20/80〜30/70である、上記〔9〕〜〔14〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔16〕セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマーであるカルボン酸成分が、不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸を含有し、当該不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸の含有量が、全カルボン酸成分に対して、5〜30モル%、好ましくは7〜25モル%、より好ましくは10〜20モル%である、上記〔9〕〜〔15〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
〔17〕前記セグメント(A2)が、芳香族基を有する付加重合性モノマー、好ましくはスチレンを由来とする構成単位を含み、当該芳香族基を有する付加重合性モノマーを由来とする構成単位の含有量が、セグメント(A2)の全構成単位に対して、85〜100質量%、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは95〜100質量%、更に好ましくは実質的に100質量%である、上記[1]〜[16]のいずれかに記載の熱転写受像シート用樹脂。
【0104】
また、本発明は、さらに下記〔18〕に記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法を開示する。
〔18〕熱転写受像シートが有する染料受容層の形成材料となる水性分散液の製造方法であって、下記工程(3)を有する、染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
工程(3):ガラス転移温度が70〜100℃、好ましくは70〜90℃であるポリエステル系樹脂の水性分散液に、融点が60〜80℃、好ましくは60〜77℃、より好ましくは60〜75℃、更に好ましくは65〜75℃であるエステル系ワックスの水性分散液を添加して染料受容層形成用水性分散液を調製する工程
【0105】
本発明は、さらに下記〔19〕〜〔27〕に記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法であることが好ましい。
〔19〕前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が、70〜85℃、好ましくは70〜80℃である、上記〔18〕に記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
〔20〕前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が、85〜100℃である、上記〔18〕に記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
〔21〕前記エステル系ワックスの水性分散液が、更にアニオン性界面活性剤を含有する、上記〔18〕〜〔20〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
【0106】
〔22〕下記工程(1)及び(2)を有する、上記〔18〕〜〔21〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
工程(1):非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合して、グラフトポリマーである前記ポリエステル系樹脂の水性分散液を得る工程
〔23〕ポリエステル樹脂(a1)を、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を加えて、不活性ガス雰囲気中にて、180〜250℃まで加熱した後、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸及びラジカル重合禁止剤を加えて、反応させて得る、上記〔22〕に記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
〔24〕ポリエステル樹脂(a1)の軟化点が、80〜165℃、好ましくは95〜135℃、より好ましくは100〜125℃である、上記〔22〕又は〔23〕に記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
〔25〕ポリエステル樹脂(a1)のガラス転移温度が、55〜100℃、好ましくは60〜90℃、より好ましくは63〜85℃、更に好ましくは65〜78℃である、上記〔22〕〜〔24〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
〔26〕ポリエステル樹脂(a1)の酸価が、10〜40mgKOH/g、好ましくは12〜30mgKOH/g、より好ましくは15〜27mgKOH/gである、上記〔22〕〜〔25〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
〔27〕ポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)との質量比[ポリエステル樹脂(a1)/付加重合性モノマー(a2)]が、60/40〜90/10、好ましくは70/30〜87/13、より好ましくは75/25〜85/15である、上記〔22〕〜〔26〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
【0107】
また、本発明は、さらに下記〔28〕に記載の熱転写受像シートを開示する。
〔28〕基材上に、融点が60〜80℃、好ましくは60〜77℃、より好ましくは60〜75℃、更に好ましくは65〜75℃であるエステル系ワックス、及びガラス転移温度が70〜100℃、好ましくは70〜90℃であるポリエステル系樹脂を含有する染料受容層を有する、熱転写受像シート。
【0108】
本発明は、さらに下記〔29〕〜〔31〕に記載の熱転写受像シートであることが好ましい。
〔29〕前記基材と前記染料受容層との間に断熱層を有する、上記〔28〕に記載の熱転写受像シート。
〔30〕前記断熱層が、水溶性高分子及び中空粒子を含有する、上記〔29〕に記載の熱転写受像シート。
〔31〕前記染料受容層が、上記〔1〕〜〔17〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液より形成されたものである、上記〔28〕〜〔30〕のいずれかに記載の熱転写受像シート。
【0109】
また、本発明は、さらに下記〔32〕に記載の熱転写受像シートの製造方法を開示する。
〔32〕下記工程(4)及び(5)を有する、熱転写受像シートの製造方法。
工程(4):融点が60〜80℃、好ましくは60〜77℃、より好ましくは60〜75℃、更に好ましくは65〜75℃であるエステル系ワックス、及びガラス転移温度が70〜100℃、好ましくは70〜90℃であるポリエステル系樹脂を含有する染料受容層形成用水性分散液を用いて基材上に塗布膜を形性する工程
工程(5):工程(4)で形成した塗布膜を40〜110℃、好ましくは42〜80℃、より好ましくは45〜60℃で1〜10分間、好ましくは1.5〜7.5分間、より好ましくは1.8〜5分間乾燥し、染料受容層を形成する工程
【0110】
本発明は、さらに下記〔33〕〜〔34〕に記載の熱転写受像シートの製造方法であることが好ましい。
〔33〕前記染料受容層形成用水性分散液が、上記〔18〕〜〔27〕のいずれかに記載の製造方法により製造されたものである、上記〔32〕又は〔33〕に記載の熱転写受像シートの製造方法。
〔34〕前記染料受容層形成用水性分散液が、上記〔1〕〜〔17〕のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液である、上記〔32〕又は〔33〕に記載の熱転写受像シートの製造方法。
【実施例】
【0111】
以下に示す各物性の測定方法は、下記のとおりである。
[樹脂の軟化点]
フローテスター(株式会社島津製作所製、商品名:CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0112】
[樹脂のガラス転移温度]
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製、商品名:Pyris 6 DSC)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点とした。
【0113】
[樹脂の酸価]
測定溶媒を、エタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更したこと以外は、JIS K0070に従って測定した。
【0114】
[樹脂の数平均分子量]
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、樹脂をクロロホルムに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター(住友電気工業株式会社製、商品名:FP−200)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
溶解液としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。試料の数平均分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。検量線は、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン;2.63×10
3、2.06×10
4、1.02×10
5(重量平均分子量)、ジーエルサイエンス株式会社製の単分散ポリスチレン;2.10×10
3、7.00×10
3、5.04×10
4(重量平均分子量))を標準試料として用いて作成した。
測定装置:CO−8010(商品名、東ソー株式会社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(いずれも商品名、東ソー株式会社製)
【0115】
[水性分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径(D
50)]
レーザー回折型粒径測定機(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−920)を用いて、測定用セルに各樹脂の水性分散液及び蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で、体積中位粒径(D
50)を測定した。
【0116】
[水性分散液の固形分濃度]
赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製、商品名:FD−230)を用いて、水性分散液5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、水性分散液の水分(質量%)を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−M
M:水性分散液の水分(質量%)=[(W−W
0)/W]×100
W:測定前の試料質量(初期試料質量)
W
0:測定後の試料質量(絶対乾燥質量)
【0117】
[水性分散液のpH]
pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、商品名:HM−20P)により、25℃で測定した。
【0118】
[ワックスの融点]
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:Q−20)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とした。
【0119】
製造例1〜4
(ポリエステル樹脂(a1)−a〜dの製造)
表1に示すフマル酸を除くポリエステル樹脂(a1)の原料モノマー及びジ(2−エチルヘキサン酸)スズを、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気下、235℃で5時間反応させ、更に減圧し、8.3kPaの圧力下で1時間反応した。次いで、210℃でフマル酸及び4−t−ブチルカテコールを加え、5時間反応させた後、減圧し、20kPaの圧力下にて、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が表1に示す温度に達するまで反応させて、ポリエステル樹脂(a1)−a〜dを得た。
得られたポリエステル樹脂(a1)−a〜dのそれぞれの物性について、測定した結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
製造例5〜8
(ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液(i)〜(iv)の製造:工程(1))
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、表2に示す種類及び配合量のポリエステル樹脂(a1)−a〜dを入れ、25℃でメチルエチルケトンに溶解させた。
次いで、25質量%アンモニア水を添加して、撹拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下60℃でメチルエチルケトンを留去した。室温(25℃)まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液(i)〜(iv)を得た。
得られたポリエステル樹脂(a1)の水性分散液(i)〜(iv)のそれぞれの物性について、測定した結果を表2に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
製造例9〜12
(ポリエステル系樹脂の水性分散液(I)〜(IV)の製造:工程(2))
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、撹拌器及び熱電対を装備した内容積2リットルの四つ口フラスコに、表3に示す種類及び配合量のポリエステル樹脂(a1)の水性分散液(i)〜(iv)、脱イオン水、付加重合性モノマー(a2)としてスチレンを仕込み、30分間撹拌を行った。次に、窒素気流下、過硫酸ナトリウムを加え、80℃で6時間反応させた。その後、室温(25℃)まで冷却し、200メッシュの金網で濾過し、グラフトポリマーからなるポリエステル系樹脂の水性分散液(I)〜(IV)を得た。
なお、各材料の配合量は、得られる水性分散液中のポリエステル系樹脂であるグラフトポリマーにおけるポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)と付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)との質量比が表3に示すようになるようにして決定された。
得られたポリエステル系樹脂の水性分散液(I)〜(IV)のそれぞれの物性について、測定した結果を表3に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
製造例13〜15
(エステル系ワックスの水性分散液(1)〜(3)の製造)
表4に示す配合量の脱イオン水と、アニオン性界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(商品名:ネオペレックスG−15(花王株式会社製)、有効成分濃度15質量%)を1リットル容のビーカー内で混合させた後、表4に示した種類及び配合量のワックスを分散させ、分散液を調製した。この分散液を98℃の温度を保持しながら、超音波分散機「Ultrasonic Homogenizer 600W(商品名、日本精機社製)」で30分間分散処理を行った。その後、室温(25℃)まで10℃/分で冷却後、200メッシュ(目開き:105μm)の金網で濾過し、エステル系ワックスの水性分散液(1)〜(3)を得た。
なお、エステル系ワックスの水性分散液の調製には、ワックスとして以下の市販のエステル系ワックスを用いた。
ニッサンエレクトールWEP−2(商品名、日油社製、融点61.0℃)
ニッサンエレクトールWEP−3(商品名、日油社製、融点71.3℃)
ニッサンエレクトールWEP−5(商品名、日油社製、融点83.6℃)。
得られたエステル系ワックスの水性分散液(1)〜(3)のそれぞれの物性について、測定した結果を表4に示す。
【0126】
また、以下の実施例及び比較例において用いる、下記の市販のワックスの水性分散液に脱イオン水を添加して、表4に示す固形分濃度としたワックスの水性分散液(4)〜(7)を調製した。
LB−550(商品名、サンノプコ社製、エステル系ワックス、融点58.6℃)
Q−681(商品名、中京油脂社製、エステル系ワックス、融点73.3℃)
Q−683(中京油脂社製、パラフィンワックス、融点81.6℃)。
Q−802(商品名、中京油脂社製、カルナバワックス、融点82.9℃)
調製したワックスの水性分散液(4)〜(7)のそれぞれの物性について、測定した結果を表4に示す。
【0127】
【表4】
【0128】
実施例1〜6、及び比較例1〜6
(染料受容層形成用水性分散液の製造:工程(3))
表5に示した種類及び配合量のポリエステル系樹脂の水性分散液、ワックスの水性分散液、及び離形剤を混合し、染料受容層形成用水性分散液A〜Jを調製した。離型剤として以下のポリエーテル変性シリコーンを用いた。
ポリエーテル変性シリコーン(東レダウコーニング株式会社製、商品名:SF8410)
なお、染料受容層形成用水性分散液の作製に用いたポリエステル系樹脂の水性分散液は、固形分濃度を30質量%に調整し、25質量%アンモニア水溶液でpHを9.0に調整した。また、表5中のワックスの含有量は、ポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分100質量部に対する、ワックスの有効成分比(固形分比)を示している。
【0129】
実施例7〜12、及び比較例7〜12
(熱転写受像シートの製造)
まず、表5に示す配合量の水溶性高分子と脱イオン水を25℃で30分間撹拌した後、50℃で加熱混合し均一に溶解させた。その後、表5に示した配合量の中空粒子を50℃で混合し、断熱層用塗工液を作製した。この塗工液をレジンコート紙(スイーコ・インタナショナル社製、RC原紙坪量:226g/m
2、RC原紙厚み:218μm、表ポリエチレン層:16g/m
2、裏ポリエチレン層:26g/m
2、表面下引き層:ゼラチン)にワイヤーバーにより乾燥後に20.0g/m
2になるように塗布し、25℃で5分間、風乾させて、断熱層を形成した断熱層塗工シートを得た。
なお、断熱層の調製には、中空粒子として以下のスチレン−アクリル共重合体、水溶性高分子として以下のゼラチンを用いた。
スチレン−アクリル共重合体(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nipol MH8101、体積中位粒径(D
50):420nm、メチルエチルケトン不溶分:50質量%、中空率=50%、固形分濃度=26質量%)
ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製、商品名:G0886K、粘度4.4mPa・s(JIS K6503−2001で測定した粘度(60℃)))
【0130】
次に、実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた染料受容層形成用水性分散液を上記の断熱層塗工シート上に、ワイヤーバーにより乾燥後に3.5g/m
2になるように塗布し、50℃で2分間乾燥させて、染料受容層を有する熱転写受像シートを得た。
【0131】
<熱転写受像シートの評価>
得られた熱転写受像シートについて、以下の方法により評価を行った。結果を表5に示す。
【0132】
(染着性)
作製した熱転写受像シートに、市販の昇華型プリンタ(アルテック株式会社製、商品名:MEGAPIXEL III)を用いて黒(K)の階調パターンを印画し、高画像濃度印画(18階調目(L=0:最高濃度))での転写色濃度をグレタグ濃度計(GRETAG−MACBETH社製)で画像濃度の値を測定し、染着性を評価した。当該画像濃度の値が大きいほど、染着性が優れる。
【0133】
(印画物の保存性−にじみ)
作製した熱転写受像シートに、前記昇華型プリンタを用いて、幅1mm、長さ5cmの細線を印画し、60℃、85%RH(相対湿度)に設定した恒温恒湿器(エスペック株式会社製、商品名:PR−1KT)内で168時間放置した後、顕微鏡を用いて目視にて、細線の太さを10ヶ所測定し、画像のにじみを評価した。
A:にじみがない。
B:にじみがわずかにあり、幅1mmの細線の太さが1.0倍を超えて1.2倍未満である。
C:にじみがあり、幅1mmの細線が1.2倍以上1.5倍未満である。
D:にじみがあり、幅1mmの細線が1.5倍以上である。
【0134】
(離型性)
階調パターン印字時のインクリボンと熱転写受像シートの剥離音から、下記の基準に基づき、離型性(熱融着性)を評価した。
A:異音はなく、剥離できる。
B:異音はあるが、剥離できる。
C:熱融着しており、剥離が困難もしくは剥離ができない。
【0135】
【表5】
【0136】
表5から明らかなように、比較例の熱転写受像シートに比べて、実施例の染料受容層形成用水性分散液を用いて得た熱転写受像シートはいずれも、高濃度印画時の最高濃度が高く染着性に優れ、保存後にもにじみのない印画物が得られることがわかる。