特許第5981829号(P5981829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5981829鉄道車両の車体高さ調整装置、および、車体高さ調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981829
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】鉄道車両の車体高さ調整装置、および、車体高さ調整方法
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/10 20060101AFI20160818BHJP
   B60G 99/00 20100101ALN20160818BHJP
【FI】
   B61F5/10 D
   !B60G99/00
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-223213(P2012-223213)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-73797(P2014-73797A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】風戸 昭人
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−173354(JP,A)
【文献】 特開平03−186472(JP,A)
【文献】 米国特許第04693185(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 3/00
B61F 5/10
B61F 5/22 − 5/24
B60G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の長手方向の一側に設けられる第一台車と、
前記車体の長手方向の他側に設けられる第二台車と、
前記第一台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する一対の第一空気ばねと、
前記第二台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する一対の第二空気ばねと、
カントが漸次変化する軌道を自車両が走行する際に、前記第一台車と前記第二台車とのうち、進行方向前方側に配置される台車と前記車体との車幅方向への傾斜角度に応じて、前記第一空気ばねと前記第二空気ばねとのうち、進行方向後方側に配置される空気ばねの高さを、前記車体に作用する捩り方向の力を緩和する方向に調整する捩じり低減機構と、を備えることを特徴とする鉄道車両の車体高さ調整装置。
【請求項2】
前記第一空気ばねの高さが所定の高さを保つように、該第一空気ばねの高さを調整する第一調整機構と、
前記第二空気ばねの高さが所定の高さを保つように、該第二空気ばねの高さを調整する第二調整機構と、を備え、
前記捩じり低減機構は、カントが漸次変化する軌道を自車両が走行する際に、前記第一調整機構と前記第二調整機構とのうち、進行方向の前方側に配置される一方の調整機構と、前記第一空気ばねと前記第二空気ばねとのうち進行方向の後方側に配置される空気ばねとを接続する切換部を備える請求項1に記載の鉄道車両の車体高さ調整装置。
【請求項3】
車体の長手方向の一側に設けられる第一台車と、
前記車体の長手方向の他側に設けられる第二台車と、
前記第一台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する一対の第一空気ばねと、
前記第二台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する一対の第二空気ばねと、
前記第一台車と前記第二台車とのうち、進行方向前方側に配置される台車と前記車体との車幅方向への傾斜角度に応じて、前記第一空気ばねと前記第二空気ばねとのうち、進行方向後方側に配置される空気ばねの高さを調整する捩じり低減機構と、
前記第一空気ばねの高さが所定の高さを保つように、該第一空気ばねの高さを調整する第一調整機構と、
前記第二空気ばねの高さが所定の高さを保つように、該第二空気ばねの高さを調整する第二調整機構と、を備え、
前記捩じり低減機構は、カントが漸次変化する軌道を自車両が走行する際に、前記第一調整機構と前記第二調整機構とのうち、進行方向の前方側に配置される一方の調整機構と、前記第一空気ばねと前記第二空気ばねとのうち進行方向の後方側に配置される空気ばねとを接続する切換部を備える鉄道車両の車体高さ調整装置。
【請求項4】
車体の長手方向の一側に設けられる第一台車と、
前記車体の長手方向の他側に設けられる第二台車と、
前記第一台車と前記車体との間の車幅方向の両側に設けられ、前記車体を下方から支持する第一空気ばねと、
前記第二台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する第二空気ばねと、を備える鉄道車両の車体高さ調整方法において、
カントが漸次変化する軌道を自車両が走行する際に、前記第一台車と前記第二台車とのうち、進行方向の前方側に配置される台車に対する前記車体の車幅方向への傾斜角度に応じて、前記第一空気ばねと前記第二空気ばねとのうち進行方向の後方側に配置される空気ばねの高さを、前記車体に作用する捩り方向の力を緩和する方向に調整することを特徴とする鉄道車両の車体高さ調整方法。
【請求項5】
前記第一台車と前記第二台車とのうち進行方向の前方側に配置される台車に対して前記車体が初期位置から傾斜した場合に、前記車体を初期位置へ戻す方向と同一方向に前記車体が傾斜するように、前記第一台車と前記第二台車とのうち進行方向の後方側に配置される空気ばねの高さ調整を行う請求項に記載の鉄道車両の車体高さ調整方法。
【請求項6】
車体の長手方向の一側に設けられる第一台車と、
前記車体の長手方向の他側に設けられる第二台車と、
前記第一台車と前記車体との間の車幅方向の両側に設けられ、前記車体を下方から支持する第一空気ばねと、
前記第二台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する第二空気ばねと、を備える鉄道車両の車体高さ調整方法において、
前記第一台車と前記第二台車とのうち進行方向の前方側に配置される台車に対して前記車体が初期位置から傾斜した場合に、前記車体を初期位置へ戻す方向と同一方向に前記車体が傾斜するように、前記第一台車と前記第二台車とのうち進行方向の後方側に配置される空気ばねの高さ調整を行う鉄道車両の車体高さ調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両の車体高さ調整装置、および、車体高さ調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の曲線区間にあっては、カントが設けられることで外軌側のレール高さが内軌側のレール高さよりも相対的に高い場合がある。このようにカントが設けられている曲線区間は、一般に、カントが漸次増加していく入口側緩和曲線と、カントが一定とされる円曲線と、カントが漸次減少していく出口側緩和曲線とによって構成されている。
【0003】
ところで、鉄道車両が入口側緩和曲線および出口側緩和曲線を走行する場合、前側台車の位置と後側台車の位置とにおいてカントの大きさが異なるため、軌道面に対する車体の傾斜角度が必然的に車体前部と車体後部とで異なったものとなる。そのため、車体に捻じり方向の力が作用してしまい、台車の輪重変動が大きくなってしまう虞がある。
【0004】
図7は、鉄道車両の自動高さ調整機構300の概略構成を示す図である。この図7において、符号「322」は車体を示しており、この車体322の長手方向の一側と他側とには、それぞれ図示しない台車が設けられている。そして、台車と車体322との間には、車幅方向の両側にそれぞれ空気ばね321が設けられており、これら空気ばね321を介して車体322が台車上に弾性的に支持されている。また、各空気ばね321には、自動高さ調整弁LVを介して元空気溜め336が接続されている。元空気溜め336には、空気ばね321の作動流体として用いられる圧縮空気が貯留されており、自動高さ調整弁LVは、各空気ばね321が予め設定された所定高さを保つように、各空気ばね321の近傍における台車と車体322との距離に応じて、空気ばね321の給排気を行う。
【0005】
上述したように左右一対の空気ばね321の高さを揃えることで台車に対する車体の高さ位置を一定に保つ自動高さ調整機構を備えている場合、例えば、カントが徐々に変化する軌道を鉄道車両が走行する場合、前側台車の外軌側の空気ばねと、後側台車の内軌側の空気ばねとが互いに伸び方向に制御されて車体322に作用する捩じり方向の力が増大し、自動高さ調整機構を備えていない鉄道車両よりも台車の輪重変動が大きくなってしまう虞があった。
【0006】
そこで近年、左右の空気ばねの差圧が所定圧を超えた場合に、左右の空気ばねを連通させる差圧弁を設けて、前方台車の差圧弁の動作圧力に対して後方台車の差圧弁の動作圧力を高くして、前方台車の差圧弁を先に動作させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、前方台車と後方台車との対角位置の空気ばねの検出高さの和同士の偏差が閾値を超えた場合に空気ばねに対する給排気を停止することが提案されている(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−165435号公報
【特許文献2】特開2003−165436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した鉄道車両にあっては、車体に作用する捩じり方向の力を緩和して輪重変動を低減することができるものの、その輪重変動の低減の程度は、空気ばねの高さ調整を行わないものと同等に留まるという課題がある。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車体に作用する捩じり方向の力を緩和して輪重変動を十分に低減することができる鉄道車両の車体高さ調整装置および車体高さ調整方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明は以下の構成を採用する。
この発明に係る鉄道車両の車体高さ調整装置は、車体の長手方向の一側に設けられる第一台車と、前記車体の長手方向の他側に設けられる第二台車と、前記第一台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する一対の第一空気ばねと、前記第二台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する一対の第二空気ばねと、カントが漸次変化する軌道を自車両が走行する際に、前記第一台車と前記第二台車とのうち、進行方向前方側に配置される台車と前記車体との車幅方向への傾斜角度に応じて、前記第一空気ばねと前記第二空気ばねとのうち、進行方向後方側に配置される空気ばねの高さを、前記車体に作用する捩り方向の力を緩和する方向に調整する捩じり低減機構と、を備えることを特徴としている。
【0011】
例えば、カントが漸次増加する軌道を自車両が走行する際には、カントによって進行方向前方の台車の車幅方向一側が他側よりも相対的に押し上げられた状態となる。ここで、車体は剛体であり、進行方向前方側の台車と後方側の台車とにおけるカントが異なるため、進行方向前方側の空気ばねのうち、押し上げられた側の空気ばねが圧縮される。すると、車体が進行方向前方側の台車に対して車幅方向へ傾斜する。この際、捩じり低減機構によって、進行方向前方側の台車に対する車体の傾斜角度に応じて、例えば、進行方向前方側の台車のカントによる傾斜方向と同一方向に車体が傾くように進行方向後方側の空気ばねの高さ調整を行うことで、車体に作用する捩じり方向の力を緩和することができる。
【0012】
同様に、カントが漸次減少する軌道を自車両が走行する際には、カントによって進行方向前方の台車の車幅方向一側が他側よりも相対的に押し上げられた状態から、進行方向前方側の台車の車幅方向一側が、他側と同じ高さとなる方向に相対的に下降する。ここで、進行方向前方側の台車と後方側の台車とにおけるカントが異なる状態となるため、進行方向前方側の空気ばねのうち、相対的に下降する側の空気ばねが伸長される。すると、進行方向前方側の台車に対して車体が初期位置から車幅方向へ傾斜する。この際、捩じり低減機構によって、進行方向前方側の台車に対する車体の傾斜角度に応じて、例えば、カントによる傾斜方向とは反対方向に車体が傾くように進行方向後方側の空気ばねの高さ調整を行うことができるため、車体に作用する捩じり方向の力を緩和することができる。
【0013】
さらに、この発明に係る鉄道車両の車体高さ調整装置は、上記鉄道車両の車体高さ調整装置において、前記第一空気ばねの高さが所定の高さを保つように、該第一空気ばねの高さを調整する第一調整機構と、前記第二空気ばねの高さが所定の高さを保つように、該第二空気ばねの高さを調整する第二調整機構と、を備え、前記捩じり低減機構は、カントが漸次変化する緩和曲線を自車両が走行する際に、前記第一調整機構と前記第二調整機構とのうち、進行方向の前方側に配置される一方の調整機構と、前記第一空気ばねと前記第二空気ばねとのうち進行方向の後方側に配置される空気ばねとを接続する切換部を備えていてもよい。
このように構成することで、カントが変化しない軌道を自車両が走行している際には、例えば、台車に対して車体が所定の初期位置に保たれるように第一空気ばねを第一調整機構により調整することができるとともに、第二空気ばねを第二調整機構により調整することができる。また、カントが漸次変化する軌道を自車両が走行する場合には、自車両の進行方向に応じて第一調整機構によって第二空気ばねの高さ調整を行うか、又は、第二調整機構によって第一空気ばねの高さ調整を行うことで、進行方向前方側の台車に対する車体の傾斜角度の分だけ、進行方向後方側の台車に対して車体を傾斜させることができるため、車体に作用する捩じり方向の力を車体の傾斜角度に応じて適正に緩和することができる。
さらに、この発明に係る鉄道車両の車体高さ調整装置は、車体の長手方向の一側に設けられる第一台車と、前記車体の長手方向の他側に設けられる第二台車と、前記第一台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する一対の第一空気ばねと、前記第二台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する一対の第二空気ばねと、前記第一台車と前記第二台車とのうち、進行方向前方側に配置される台車と前記車体との車幅方向への傾斜角度に応じて、前記第一空気ばねと前記第二空気ばねとのうち、進行方向後方側に配置される空気ばねの高さを調整する捩じり低減機構と、前記第一空気ばねの高さが所定の高さを保つように、該第一空気ばねの高さを調整する第一調整機構と、前記第二空気ばねの高さが所定の高さを保つように、該第二空気ばねの高さを調整する第二調整機構と、を備え、前記捩じり低減機構は、カントが漸次変化する軌道を自車両が走行する際に、前記第一調整機構と前記第二調整機構とのうち、進行方向の前方側に配置される一方の調整機構と、前記第一空気ばねと前記第二空気ばねとのうち進行方向の後方側に配置される空気ばねとを接続する切換部を備える。
【0014】
この発明に係る鉄道車両の車体高さ調整方法は、車体の長手方向の一側に設けられる第一台車と、前記車体の長手方向の他側に設けられる第二台車と、前記第一台車と前記車体との間の車幅方向の両側に設けられ、前記車体を下方から支持する第一空気ばねと、前記第二台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する第二空気ばねと、を備える鉄道車両の車体高さ調整方法において、カントが漸次変化する軌道を自車両が走行する際に、前記第一台車と前記第二台車とのうち、進行方向の前方側に配置される台車に対する前記車体の車幅方向への傾斜角度に応じて、前記第一空気ばねと前記第二空気ばねとのうち進行方向の後方側に配置される空気ばねの高さを、前記車体に作用する捩り方向の力を緩和する方向に調整することを特徴としている。
このように構成することで、進行方向前方側の台車におけるカント変化に応じて進行方向後方側の空気ばねによって車体を傾斜させることができるため、例えば、進行方向後方に配置される空気ばねによって、カントが変化する方向に車体を傾斜させることで、車体に作用する捩じり方向の力を緩和することができる。
【0015】
さらに、この発明に係る鉄道車両の車体高さ調整方法は、上記鉄道車両の車体高さ調整方法において、前記第一台車と前記第二台車とのうち進行方向の前方側に配置される台車に対して前記車体が初期位置から傾斜した場合に、前記車体を初期位置へ戻す方向と同一方向に前記車体が傾斜するように、前記第一台車と前記第二台車とのうち進行方向の後方側に配置される空気ばねの高さ調整を行うようにしてもよい。
このように構成することで、進行方向後方に配置される空気ばねによって、カントが変化する方向に車体を傾斜させることができるため、進行方向後方に配置される空気ばねにより車体を傾斜させる分だけ、車体に作用する捩じり方向の力を緩和することができる。
さらに、この発明に係る鉄道車両の車体高さ調整方法は、車体の長手方向の一側に設けられる第一台車と、前記車体の長手方向の他側に設けられる第二台車と、前記第一台車と前記車体との間の車幅方向の両側に設けられ、前記車体を下方から支持する第一空気ばねと、前記第二台車と前記車体との間の車幅方向両側に設けられ、前記車体を下方から支持する第二空気ばねと、を備える鉄道車両の車体高さ調整方法において、前記第一台車と前記第二台車とのうち進行方向の前方側に配置される台車に対して前記車体が初期位置から傾斜した場合に、前記車体を初期位置へ戻す方向と同一方向に前記車体が傾斜するように、前記第一台車と前記第二台車とのうち進行方向の後方側に配置される空気ばねの高さ調整を行う。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る鉄道車両の車体高さ調整装置、および、車体高さ調整方法によれば、カントが変化する軌道を走行する際に、車体に作用する捩じり方向の力を緩和して台車の輪重変動を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の実施形態における鉄道車両の概略構成図である。
図2】この発明の第一実施形態における車体に対する各空気ばねの配置および、車体高さ調整装置の概略構成を示す図である。
図3】上記鉄道車両が曲線区間を走行する際の輪重変動のシミュレーション結果を示すグラフである。
図4】上記シミュレーションにおける曲線区間のカントの変化を示すグラフである。
図5】この発明の第二実施形態における高さ調整装置の図2に相当する図である。
図6】この発明の第二実施形態における高さ調整装置の切換制御部の切換制御処理を示すフローチャートである。
図7】一般的な車体に対する各空気ばねの配置および、一般的な鉄道車両の車体高さ調整装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明の第一実施形態における鉄道車両の車体高さ調整装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、この実施形態の車体高さ調整装置が搭載される車両10を示している。この車両10の台車11は、軌道を構成するレールRの幅方向(以下、単に車幅方向と称する)に延びる車軸12に略円盤状の2枚の車輪13,13が圧入された一対の輪軸14(図1中、一方のみを示す)を備えており、これら一対の輪軸14が、互いの車軸12が前後平行となるように配置されている。ここで、車軸12は、その左右端部が軸受け(図示せず)により回動自在に支持され、これら軸受けを備えた支持部(図示せず)に、軸バネ15を介して台車枠16が支持されている。
【0019】
台車枠16には、その車幅方向の左右両側部の上面に、左右一対のダイヤフラム式の空気ばね21が立設されている。これら空気ばね21の上面には、上述した車体22が載置されており、車体22が下方から空気ばね21によって弾性的に支持されている。一両分の車体22には、その長手方向の一側および他側にそれぞれ台車(第一台車、第二台車)11が設けられており、すなわち一両分の車体22と2つの台車11との間には、合計4つの空気ばね21が設けられている。なお、以下の説明においては、4つの空気ばね21のうち、車両10の進行方向前方側に配置される空気ばね21をそれぞれ前側空気ばね(第一空気ばね)21a,21bと称し、車両10の進行方向後方側に配置される空気ばね21をそれぞれ後側空気ばね(第二空気ばね)21c,21dと称する。また、上記前側空気ばね21aと後側空気ばね21cとは車幅方向で同じ側に配置されるとともに、前側空気ばね21bと後側空気ばね21dとは車幅方向で同じ側に配置されているものとする。
【0020】
図2は、車体高さ調整装置100の概略構成を示す図であって、この図2に示す車両10の進行方向は、紙面左方向(図2中、矢印で示す)となっている。
車体高さ調整装置100は、コンプレッサ等により圧縮空気が逐次貯留される元空気溜め36を有している。元空気溜め36に貯留される圧縮空気は、後側空気ばね21c,21dの高さを伸縮させる作動流体として用いられ、元空気溜め36は、圧縮空気の流路を形成する分岐配管30を介して自動高さ調整弁LV1、LV2にそれぞれ接続されている。なお、前側空気ばね21a,21bは、内部に圧縮空気が封止されている。
【0021】
自動高さ調整弁LV1,LV2は、例えば、車体22の長手方向前方側の車幅方向両側にそれぞれ取り付けられている。
【0022】
自動高さ調整弁LV1は、給排気通路30aを介して後側空気ばね21cに接続されている。この自動高さ調整弁LV1は、前側空気ばね21aの取り付け位置近傍の台車枠16(図1参照)と車体22との相対的な距離、すなわち前側空気ばね21aの高さに応じて、後側空気ばね21cの高さを変位させるべく、当該後側空気ばね21cへの圧縮空気の給気と後側空気ばね21cからの圧縮空気の排気とを行う。
【0023】
より具体的には、自動高さ調整弁LV1は、例えば、前側空気ばね21aの高さが予め設定された所定の高さ範囲内である場合には給気ならびに排気を行わずに後側空気ばね21cの高さを保持する。ここで、空気ばね21における高さの保持とは、振動などによって極短時間に生じる高さの変化は含んでいない。一方で、自動高さ調整弁LV1は、前側空気ばね21aの高さが予め設定された所定の高さ範囲よりも低くなった場合には、元空気溜め36の圧縮空気を後側空気ばね21cに給気するように動作する。また、自動高さ調整弁LV1は、前側空気ばね21aの高さが予め設定された所定の高さ範囲よりも高くなった場合には、後側空気ばね21cの内部空間の圧縮空気を外部に排気するように動作する。
【0024】
自動高さ調整弁LV2は、給排気通路30bを介して後側空気ばね21dに接続されている。この自動高さ調整弁LV2も、上記自動高さ調整弁LV1と同様に、前側空気ばね21bの取り付け位置近傍の台車枠16と車体22との相対的な距離、すなわち前側空気ばね21bの高さに応じて、後側空気ばね21dの高さを変位させるべく、当該後側空気ばね21dへの圧縮空気の給気と後側空気ばね21dからの圧縮空気の排気とを行う。
【0025】
より具体的には、自動高さ調整弁LV2は、例えば、前側空気ばね21bの高さが予め設定された所定の高さ範囲内である場合には給気ならびに排気を行わずに後側空気ばね21dの高さを保持する。一方で、自動高さ調整弁LV2は、前側空気ばね21bの高さが予め設定された所定の高さ範囲よりも低くなった場合には、元空気溜め36の圧縮空気を後側空気ばね21dに給気するように動作する。また、自動高さ調整弁LV2は、前側空気ばね21bの高さが予め設定された所定の高さ範囲よりも高くなった場合には、後側空気ばね21dの内部空間の圧縮空気を外部に排気するように動作する。なお、上述した自動高さ調整弁LV1,LV2、分岐配管30、および、給排気通路30a,30bによって、この発明の捩じり低減機構が構成されている。
【0026】
上述した自動高さ調整弁LV1,LV2としては、例えば、車体22に固定されたケーシング(図示せず)によって、車体22と台車枠16との距離に応じた角度で揺動するアーム部材(図示せず)を支持し、ケーシングに設けられた給気弁、および排気弁を、アーム部材を介して開閉操作する機構などが適用可能である。
【0027】
この実施形態における車体高さ調整装置100は、上述した構成を有しており、次に、この車体高さ調整装置100による動作(車体高さ調整方法)について説明する。この動作の説明においては、カントが漸次変化する軌道として、曲線区間を構成する入口側緩和曲線ならびに出口側緩和曲線を一例にして説明する。また、車両10が曲線区間を走行する際に、前側空気ばね21aおよび後側空気ばね21cが外軌側に配置され、前側空気ばね21bおよび後側空気ばね21dが内軌側に配置される場合を一例にして説明する。なお、図4は、縦軸をカントの角度、横軸を位置としたグラフであって、この図4に示すように、上記曲線区間は、カントが漸次増加する入口側緩和曲線と、カントが一定な円曲線と、カントが漸次減少する出口側緩和曲線とによって構成されている。
【0028】
まず、車両10が軌道上を進行方向に走行しているときに、進行方向前方側の台車11(以下、単に前側台車11と称す)が先に入口側緩和曲線に進入する。すると、当該前側台車11が水平状態から内軌側に向かって徐々に傾斜する。これは、入口側緩和曲線のカントにより内軌側のレールRよりも外軌側のレールRの方が相対的に高い位置に漸次変位されるからである。前側台車11が傾斜することによって、前側空気ばね21a,21bに支持されている車体22も水平状態(初期位置)から内軌側に向かって徐々に傾斜する。
【0029】
このとき、進行方向後側の台車11(以下、単に後側台車11と称す)は、入口側緩和曲線に進入していない。そのため、後側台車11は傾斜していない状態を保とうとする。つまり、車体22の前部と後部とで、傾斜角度が異なった状態になろうとする。例えば、外軌側のレールRが上昇する場合には、車体22の後部の外軌側よりも車体22の前部の外軌側の方が持ち上げられることで、車体22の前部が内軌側に傾動しようとする。
【0030】
また、このとき外軌側の前側空気ばね21aは、前側台車11の外軌側が持ち上げられることで圧縮方向に変位しようとし、内軌側の前側空気ばね21bは、前側台車11の外軌側がカントによって相対的に持ち上げられることで、伸長方向に変位しようとする。また、外軌側の後側空気ばね21cは、車体22前部が内軌側に傾動しようとすることで伸長方向に変位しようとし、内軌側の後側空気ばね21dは、圧縮方向に変位しようとする。
【0031】
上記前側空気ばね21aの変位によって、前側空気ばね21aの高さが予め設定された所定の高さ範囲よりも低くなり、自動高さ調整弁LV1が動作する。すると、後側空気ばね21cに対して、前側空気ばね21aの高さが予め設定された所定の高さ範囲に戻るまで圧縮空気の供給が継続され、後側空気ばね21cが伸びる方向に変位する。
【0032】
同様に、上記前側空気ばね21bの変位によって、前側空気ばね21bの高さが予め設定された所定の高さ範囲よりも高くなり、自動高さ調整弁LV2が動作する。すると、後側空気ばね21dから、前側空気ばね21bの高さが予め設定された所定の高さ範囲に戻るまで、圧縮空気が排気されて、後側空気ばね21dが縮まる方向に変位する。
【0033】
つまり、後側空気ばね21c,21dによって、前側台車11に対する車体22の傾斜角度分だけ、後側台車11に対して車体22が内軌側に傾動されることとなる。ここで、車両10が入口側緩和曲線から円曲線に進入する際には、前側台車11と後側台車11とのカントによる傾斜角度の差分が減少する方向に変化するが、後側台車11に対して車体22が傾斜した状態であるため、上述した入口側緩和曲線に進入する際の車体22の捩じり方向とは逆方向に車体22を捩じる方向の力が作用する。そのため、自動高さ調整弁LV1,LV2によって、後側空気ばね21cが排気されるとともに後側空気ばね21dに給気がなされて、後側空気ばね21c,21dが入口側緩和曲線に進入する以前の高さまで戻される。なお、車両10が入口側緩和曲線を脱出すると、前側台車11と後側台車11とのカントによる傾斜角度が同等になるため自動高さ調整弁LV1,LV2による給排気は停止される。
【0034】
次いで、前側台車11は円曲線から出口側緩和曲線に進入する。この出口側緩和曲線に進入する場合は、上述した入口側緩和曲線に進入する場合と反対に、当該前側台車11がカントによって内軌側に傾斜した状態から、水平状態となる側に徐々に戻るように変位する。これは、出口側緩和曲線において、相対的に高い位置にある外軌側のレールRと、相対的に低い位置にある内軌側レールRとが、同じ高さ位置となるようにカントが漸次変位されるからである。このように前側台車11が水平状態に徐々に戻ることによって、前側空気ばね21a,21bに支持されている車体22も内軌側への傾斜状態から水平状態に徐々に戻る方向に傾動しようとする。
【0035】
このとき、後側台車11は、出口側緩和曲線に進入していない。そのため、後側台車11は円曲線のカントによって内軌側に傾斜された状態を維持しており、車体22の前部と後部とにおいてそれぞれ傾斜角度が異なった状態となる。換言すれば、車体22の後部の外軌側よりも車体22の前部の外軌側の方が引き下げられることで車体22の前部が外軌側に傾動する。
【0036】
また、このとき外軌側の前側空気ばね21aは、前側台車11の外軌側が引き下げられることで伸長方向に変位しようとし、内軌側の前側空気ばね21bは、前側台車11の外軌側が相対的に引き下げられることで、荷重が集中して圧縮方向に変位しようとする。また、外軌側の後側空気ばね21cは、車体22の前部が外軌側に傾動されることで圧縮方向に変位しようとし、内軌側の後側空気ばね21dは、伸長方向に変位しようとする。
【0037】
上記前側空気ばね21aの変位によって、前側空気ばね21aの高さが予め設定された所定の高さ範囲よりも高くなり、自動高さ調整弁LV1が動作する。すると、後側空気ばね21cから、前側空気ばね21aの高さが予め設定された所定の高さ範囲に戻るまで圧縮空気が排気され、後側空気ばね21cが縮む方向に変位する。
【0038】
同様に、上記前側空気ばね21bの変位によって、前側空気ばね21bの高さが予め設定された所定の高さ範囲よりも低くなり、自動高さ調整弁LV2が動作する。すると、後側空気ばね21dに対して、前側空気ばね21bの高さが予め設定された所定の高さ範囲に戻るまで、圧縮空気が供給されて、後側空気ばね21dが伸び方向に変位する。
【0039】
つまり、後側空気ばね21c,21dによって、前側台車11に対する車体22の傾斜角度分だけ、後側台車11に対して車体22が外軌側に傾動されることとなる。ここで、車両10が出口側緩和曲線から脱出する際には、前側台車11のみが水平状態となり、前側台車11と後側台車11とのカントによる傾斜角度の差分が徐々に減少する方向に変化するが、後側台車11に対して車体22が傾斜した状態であるため、上述した出口側緩和曲線に進入する際の車体22の捩じり方向とは逆方向に車体22を捩じる方向の力が作用する。そのため、自動高さ調整弁LV1,LV2によって、後側空気ばね21cが排気されるとともに後側空気ばね21dに給気がなされて、後側空気ばね21c,21dが出口側緩和曲線に進入する以前の高さまで戻される。なお、車両10が出口側緩和曲線を脱出すると、前側台車11と後側台車11とは共に水平状態に戻るため自動高さ調整弁LV1,LV2による給排気は停止された状態となる。
【0040】
図3は、縦軸を輪重、横軸を車両10が走行する位置とした前側台車11の外軌側の輪重変動のシミュレーション結果を示すグラフである。ここで、図3中、破線はこの実施形態における車体高さ調整装置100を適用した場合の輪重変動を示している。また、一点鎖線および実線は比較例を示しており、一点鎖線は、給排気を行わない空気ばねを採用した車両における輪重変動を示し、実線は、全ての空気ばねの高さを予め設定された所定範囲内に保つように動作する一般的な自動高さ調整機構を採用した車両における輪重変動を示している。
【0041】
ここで、比較例である一般的な自動高さ調整機構を採用した場合の動作は、入口側緩和曲線および出口側緩和曲線において、車体に作用する捩じり方向への力を増加させる方向に作用してしまう。そのため、入口側緩和曲線および出口側緩和曲線において最も輪重変動が大きくなっている。また、比較例である空気ばねに対して給排気を行わない場合は、空気ばねの弾性によって捩じり方向の力をある程度吸収するため、全ての空気ばねの高さを所定範囲内に保つ一般的な自動高さ調整機構を採用した場合よりは輪重変動が小さくなる。
【0042】
一方で、この実施形態における自動高さ調整装置100を用いた場合は、輪重が増加する側および減少する側の何れにおいても輪重変動が最も小さくなっている。とりわけ出口側緩和曲線において、前側台車11の外軌側の輪重が減少するいわゆる輪重抜けが大幅に低減されている。なお、図示は省略するが、前側台車11の内軌側の輪重変動ならびに後側台車11の内軌・外軌側の各輪重変動も上述した前側台車11の外軌側の輪重変動と同様に低減される。
【0043】
したがって、上述した第一実施形態の車体高さ調整装置100によれば、カントが漸次増加する軌道を自車両が走行する際には、自動高さ調整弁LV1,LV2によって、前側台車11に対する車体22の傾斜角度に応じて、カントによる傾斜方向と同一方向に車体22が傾くように後側空気ばね21c,21dの高さ調整を行うことで、車体22に作用する捩じり方向の力を緩和することが可能となる。
【0044】
さらに、カントが漸次減少する軌道を車両10が走行する際には、自動高さ調整弁LV1,LV2によって、前側台車11に対する車体22の傾斜角度に応じて、カントによる傾斜方向とは反対方向に車体22が傾くように後側空気ばね21c,21dの高さ調整を行うことができるため、車体22に作用する捩じり方向の力を緩和することができる。
したがって、車体22に作用する捩じり方向の力を緩和して台車11の輪重変動を低減することが可能になる。
【0045】
次に、この発明の第二実施形態における鉄道車両の車体高さ調整装置について図面を参照しながら説明する。なお、上述した第一実施形態の車体高さ調整装置は、通常走行時には進行方向が車体22の長手方向の一方向で変化しない車両10に好適な構成であったが、この第二実施形態の車体高さ調整装置は、車体22の長手方向の両方向に進行可能な車両に適用可能な構成となっている。よって、第一実施形態の図1を援用すると共に、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明し、重複説明を省略する。
【0046】
図5は、第二実施形態における車体高さ調整装置200の概略構成を示す図であって、この図5に示す車両210の進行方向は切換可能であり、紙面左右方向(図5中、矢印で示す)となっている。
この実施形態の車体高さ調整装置200は、上述した第一実施形態の車体高さ調整装置100と同様に、コンプレッサ等により圧縮空気が逐次貯留される元空気溜め36を有している。元空気溜め36に貯留される圧縮空気は、前側空気ばね21a,21b、および、後側空気ばね21c,21dの高さを伸縮させる作動流体として用いられる。元空気溜め36は、圧縮空気の流路を形成する分岐配管230を介して自動高さ調整弁LV1、LV2(第一調整機構)に接続されるとともに、圧縮空気の流路を形成する分岐配管231を介して自動高さ調整弁LV3,LV4(第二調整機構)に接続されている。
【0047】
自動高さ調整弁LV1〜LV4は、図7に示す一般的な自動高さ調整機構を構成する自動高さ調整弁LVと同様な構成とされ、車体22の長手方向両側で、車幅方向両側にそれぞれ一つずつ取り付けられている。なお、自動高さ調整弁LV1〜LV4の動作については、図7に示す一般的な自動高さ調整弁LVと同様の動作であるため、ここでの詳細説明は省略する。
【0048】
自動高さ調整弁LV1は、配管232aを介して空気ばね21a(第一空気ばね)に接続されており、自動高さ調整弁LV2は、配管232bを介して空気ばね21b(第一空気ばね)に接続されている。同様に、自動高さ調整弁LV3は、配管232cを介して空気ばね21c(第二空気ばね)に接続されており、自動高さ調整弁LV4は、配管232dを介して空気ばね21d(第二空気ばね)に接続されている。
【0049】
さらに、配管232aの途中には、三方弁233aが設けられ、配管232bの途中には、三方弁233bが設けられている。また、配管232cの途中には、三方弁233cが設けられ、配管232dの途中には、三方弁233dが設けられている。そして、車幅方向で同じ側に配置される三方弁233a,233c同士が配管234を介して接続され、三方弁233b,233d同士が配管235を介して接続されている。三方弁233a〜233dによって、それぞれ配管232a〜232dにおける圧縮空気の流路を切り換えることが可能になっている。なお、上述した自動高さ調整弁LV1〜LV4、分岐配管230,231、および、配管234,235によって、この発明の捩じり低減機構が構成されている。
【0050】
三方弁233aは、配管232aを介して自動高さ調整弁LV1と空気ばね21aとを連通させる第一流路と、配管232aを介して自動高さ調整弁LV1を配管234に連通させる第二流路と、配管232aを介して空気ばね21aを配管234に連通させる第三流路とにそれぞれ択一的に切り換えることが可能となっている。同様に、三方弁233bは、配管232bを介して自動高さ調整弁LV2と空気ばね21bとを連通させる第一流路と、配管232bを介して自動高さ調整弁LV2を配管235に連通させる第二流路と、配管232bを介して空気ばね21bを配管235に連通させる第三流路とにそれぞれ択一的に切り換えることが可能となっている。
【0051】
三方弁233cは、配管232cを介して自動高さ調整弁LV3と空気ばね21cとを連通させる第一流路と、配管232cを介して自動高さ調整弁LV3を配管234に連通させる第二流路と、配管232cを介して空気ばね21cを配管234に連通させる第三流路とにそれぞれ択一的に切り換えることが可能となっている。同様に、三方弁233dは、自動高さ調整弁LV4と空気ばね21dとを配管232dを介して連通させる第一流路と、配管232dを介して自動高さ調整弁LV4を配管235に連通させる第二流路と、配管232dを介して空気ばね21dを配管235に連通させる第三流路とにそれぞれ択一的に切り換えることが可能となっている。
【0052】
上述した三方弁233a〜233dは、これら三方弁233a〜233dにおける流路切換制御を行う切換制御部40に接続されている。三方弁233a〜233dは、切換制御部40からの制御指令に従って、それぞれ第一流路〜第三流路を切り換える。なお、切換制御部40と、三方弁233a〜233dとによって、この発明の切換部が構成されている。
【0053】
切換制御部40は、GPS(Global Positioning System)信号やATS信号(Automatic Train Stop)などの外部からの信号に基づいて自車の位置情報を検出して、自車の位置情報と、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体に予め記憶された軌道情報とに基づき、例えば、自車が走行する軌道が、カントが漸次変化する軌道か否かを判定する。さらに、切換制御部40は、速度発電機の出力などに基づき自車の進行方向を検出する。そして、切換制御部40は、カントが漸次変化する軌道か否かの判定結果と自車の進行方向とに基づいて、各三方弁233a〜233dに向けて流路を切り換える制御指令を出力する。
【0054】
この実施形態における車体高さ調整装置200は、上述した構成を備えており、次に、車体高さ調整装置200の動作として、特に切換制御部40による制御処理(車体高さ調整方法)について図6を参照しながら説明する。
【0055】
切換制御部40は、まず自車の進行方向と自車位置とを検出するとともに(ステップS01,S02)、自車位置に基づいて軌道情報を検索する(ステップS03)。
次いで、切換制御部40は、自車が走行する軌道が、カントが漸次変化する軌道か否かを判定する(ステップS04)。この判定の結果、カントが漸次変化する軌道ではないと判定された場合には(ステップS04でNo)、図7に示す一般的な自動高さ調整機構と同様に、各自動高さ調整弁LV1〜LV4と、これら自動高さ調整弁LV1〜LV4の近傍に配置された各空気ばね21a〜21dとが連通するように、各三方弁233a〜233dを全て第一流路に切り換えて、上述した一連の制御処理を一旦終了する。
【0056】
一方で、車両210が走行する軌道が、カントが漸次変化する軌道であると判定された場合には(ステップS04でYes)、車両210の進行方向が空気ばね21a側(図5において紙面左側)か否かを判定する(ステップS05)。この判定の結果、車両210の進行方向が空気ばね21a側であると判定された場合には(ステップS05でYes)、第一実施形態の図2に示す流路構成と同様な流路構成とするべく、三方弁233a,233bを第二流路に切り換え(ステップS07)、三方弁233c,233dを第三流路に切り換えて(ステップS08)、上述した一連の制御処理を一旦終了する。
【0057】
これにより、進行方向の前側に配置される自動高さ調整弁LV1と、進行方向後側に配置される空気ばね21cが連通され、進行方向の前側に配置される自動高さ調整弁LV2と、進行方向後側に配置される空気ばね21dが連通された状態となる。
【0058】
一方で、上記判定の結果、車両210の進行方向が空気ばね21a側ではないと判定された場合(ステップS05でNo)、つまり車両210の進行方向が空気ばね21c側(図5において紙面右側)であると判定された場合には、上述した図2に示す流路構成とは左右対称の流路構成となるように、三方弁233a,233bを第三流路に切り換え(ステップS09)、三方弁233c,233dを第二流路に切り換えて(ステップS10)、上述した一連の制御処理を一旦終了する。
【0059】
これにより、進行方向の前側に配置される自動高さ調整弁LV3と、進行方向後側に配置される空気ばね21aが連通され、進行方向の前側に配置される自動高さ調整弁LV4と、進行方向後側に配置される空気ばね21bが連通された状態となる。
【0060】
したがって、上述した第二実施形態の車体高さ調整装置200によれば、カントが変化しない軌道を車両210が走行している際には、車体22の水平が保たれるように空気ばね21aを自動高さ調整弁LV1により調整し、空気ばね21bを自動高さ調整弁LV2により調整し、空気ばね21cを自動高さ調整弁LV3により調整し、空気ばね21dを自動高さ調整弁LV4により調整することができる。
【0061】
また、カントが漸次変化する軌道を車両210が走行する場合には、車両210の進行方向に応じて自動高さ調整弁LV1によって空気ばね21cの高さを調整し、且つ、自動高さ調整弁LV2によって空気ばね21dの高さを調整する状態と、自動高さ調整弁LV3によって空気ばね21aの高さを調整し、且つ、自動高さ調整弁LV4によって空気ばね21bの高さを調整する状態とを切り換えることができるため、第一の実施形態と同様に、進行方向前側の台車11に対する車体22の傾斜角度の分だけ、進行方向後側の台車11に対して車体22を傾斜させることができる。したがって、進行方向が切り換る車両においても、車体22に作用する捩じり方向の力を車体22の傾斜角度に応じて適正に緩和することができるため、台車11の輪重変動を十分に低減することができる。
【0062】
また、一般的な自動高さ調整機構を備える車両に対して、切換制御部40と、三方弁233a〜233dと、配管234,235とを追加するだけで良いため、既存の車両に容易に搭載することができ、また簡単な構成で車体22に作用する捩じり方向への力を緩和して輪重変動を低減することができる。
【0063】
なお、この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した第二実施形態においては、三方弁233a〜233dを用いる場合について説明したが、圧縮空気の流路を切換可能であればよく、例えば、各配管232a〜232d,234,235に電磁弁などの制御弁を個別に設けるようにしても良い。
さらに、上述した第二実施形態においては、自車の走行する軌道が、カントが漸次変化する軌道か否かを判定するために、自車の位置情報と予め記憶された軌道情報とを用いる場合を一例に説明したが、この構成に限られるものではない。例えば、台車11や車体22に慣性センサーを取り付けて、この慣性センサーの検出結果に基づいてカントが漸次変化する軌道か否かを判定するようにしても良い。
【0064】
また、上述した各実施形態においては、圧縮空気を給排気することで空気ばね21の高さを調整する場合について説明したが、高さ調整可能な液圧式のサスペンションを各空気ばね21と並列に配置して、当該サスペンションをアクチュエータとして各空気ばね21の高さ調整を行うようにしても良い。
さらに、上述した実施形態の曲線区間のカントは、外軌側のレールRの高さが上昇するものに限られず、内軌側のレールRの高さが下降するものや、これら外軌側のレールRの高さが上昇しつつ内軌側のレールRの高さが下降するものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10,210 車両(鉄道車両)
11 台車(第一台車、第二台車)
21 空気ばね(第一空気ばね、第二空気ばね)
22 車体
30,230,231 分岐配管(捩じり低減機構)
30a,30b 給排気通路(捩じり低減機構)
40 切換制御部(切換部)
233a〜233d 三方弁(切換部)
234,235 配管(捩じり低減機構)
LV1〜LV4 自動高さ調整弁(捩じり低減機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7