(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981835
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】エンドレスベルトの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16G 3/10 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
F16G3/10 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-257794(P2012-257794)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-105746(P2014-105746A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】松平 信秀
【審査官】
稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−44362(JP,A)
【文献】
特開2000−344318(JP,A)
【文献】
特開平9−239845(JP,A)
【文献】
特開2001−301937(JP,A)
【文献】
実開平1−148328(JP,U)
【文献】
特開昭60−65936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00−67/08
69/00−69/02
73/00−73/34
B29D 1/00− 7/01
11/00−29/10
33/00
99/00
F16G 1/00−3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトの表面ゴムのベルト長手方向両端の間に形成され、接着用加工材が貼付けされた凹部を、一層以上の未加硫ゴムシートで被覆する未加硫ゴムシート被覆工程と、
前記未加硫ゴムシートを加硫して前記表面ゴムに接合させる加硫接合工程とを含む、エンドレスベルトの製造方法であり、
該未加硫ゴムシート及び該接着用加工材の境界面のベルト長手方向縁と、該凹部のベルト長手方向縁との間のベルト長手方向距離をAとし、該接着用加工材が貼付けされた領域のベルト長手方向縁と、該凹部のベルト長手方向縁との間のベルト長手方向距離をBとしたときに、A<Bであり、
前記未加硫ゴムシート被覆工程において、被覆した前記未加硫ゴムシートは、前記表面ゴムから離れるほどベルト長手方向長さが短いことを特徴とする、エンドレスベルトの製造方法。
【請求項2】
前記未加硫ゴムシート被覆工程の前に、前記表面ゴムのベルトの長手方向両端部に接着性向上加工を施す、接着性向上加工工程を含み、
該接着性向上加工を施した領域のベルト長手方向縁と、前記凹部のベルト長手方向縁との間のベルト長手方向距離をCとしたときに、A<B<Cである、請求項1に記載のエンドレスベルトの製造方法。
【請求項3】
10mm≦A≦20mm、かつ20mm<B≦40mm、かつ50mm<C≦70mmとする、請求項2に記載のエンドレスベルトの製造方法。
【請求項4】
前記接着用加工材が、ゴムセメント及び未加硫接着ゴム、または、未加硫粘着ゴムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンドレスベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンドレスベルトの製造方法及びエンドレスベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
加硫接合によるベルトのエンドレス加工が広く知られている。
一般的なエンドレス加工の工程は以下の通りである。まず、
図2(a)に示すように、ベルトの長手方向両端部200a及び200bの表面ゴム204の一部を切除した後、該両端部200a及び200bについて芯体帆布を階段状に剥離してステップ加工し、次に、
図2(b)に示すように、ステップ面201にゴムセメント及び未加硫接着ゴム等の接着用加工材202を貼付けし、該ベルトの表面ゴムのベルト長手方向両端の間に凹部203が形成されるように該両端部200a及び200bを重ね合わせる。その後、
図2(c)に示すように、一層以上、ここでは二層の未加硫ゴムシート210a及び210bで、接着用加工材202が貼付けされた凹部203を被覆し、上層の未加硫ゴムシート210bの上面をローラ300で押圧して、未加硫ゴムシート210a、210bと接着用加工材202と凹部203を含む表面ゴム204とを圧着させる。それから、凹部203を含む、重ね合わせたベルト長手方向両端部を上面側及び下面側から押圧しながら加熱することで、未加硫ゴムシート210a、210bが加硫されて隣接するゴムと接合し、エンドレスベルトを製造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで一般に、接着用加工材202と、ベルトの加硫済みの表面ゴム204との間の貼付き性は高くないため、
図2(c)のように、上層の未加硫ゴムシート210bの上面をローラ300で押圧しても、加硫する前に未加硫ゴムシート210a、210b及び接着用加工材202が表面ゴム204から剥離し、加硫工程の施工性が著しく低下したり、また異物が混入したりする場合があった。
また、未加硫ゴムシート210a及び210bで凹部203を被覆した後に、
図3(a)のように、未加硫ゴムシート210a及び210bの表面ゴム204上に積層された部分を、表面ゴム204の表面とほぼ水平となるように切除してから加硫し、さらに外観を整えるために、
図3(b)のように、凹部の縁203eが視認できる程度まで未加硫ゴムシートのベルト長手方向両端部バフ掛けすることがある。この場合、接着用加工材202が凹部の縁203eで露出することで劣化し、該縁203eの部分でベルトに亀裂が生じる原因となったり、図に矢印で示す、未加硫ゴムシートの層境界面の表出した部分から、未加硫ゴムシート210a及び210bが完全に剥離したりしてしまうおそれがあった。
【0004】
この発明は、上述した課題を有効に解決するものであり、エンドレス加工の施工性を高め、また耐久性の高いエンドレスベルトを得ることのできるエンドレスベルトの製造方法、及び耐久性の高いエンドレスベルトを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のエンドレスベルトの製造方法は、未加硫ゴムシート及び接着用加工材の境界面のベルト長手方向縁と、凹部のベルト長手方向縁との間のベルト長手方向距離をAとし、接着用加工材が貼付けされた領域のベルト長手方向縁と、凹部のベルト長手方向縁との間のベルト長手方向距離をBとしたときに、A<Bであ
り、未加硫ゴムシート被覆工程において、被覆した前記未加硫ゴムシートは、前記表面ゴムから離れるほどベルト長手方向長さが短いことを特徴とする。
このエンドレスベルトの製造方法によれば、未加硫ゴムシートが配設される領域よりも広い領域に、接着用加工材を貼付けすることで、未加硫ゴムシート及び接着用加工材が、加硫前に表面ゴムから剥離することを防止し、エンドレス加工の施工性を高めることができる。その結果として加硫接合により耐久性の高いエンドレスベルトを得ることができる。
なお、この明細書において、「表面ゴム」とは、層状に配設されベルトの外表面を形成するゴムをいう。
また、未加硫ゴムシート及び接着用加工材のベルト境界面のベルト長手方向縁と、凹部のベルト長手方向縁との間のベルト長手方向距離A等の寸法は、未加硫ゴムシート等を加硫する前のものとする。また、接着用加工材を「貼付け」するとは、該領域に接着用加工材を塗布、散布等して配置することも含むものとする。
【0006】
また、この発明のエンドレスベルトの製造方法では、前記未加硫ゴムシート被覆工程の前に、前記表面ゴムのベルトの長手方向両端部に接着性向上加工を施す、接着性向上加工工程を含み、該接着性向上加工を施した領域のベルト長手方向縁と、前記凹部のベルト長手方向縁との間のベルト長手方向距離をCとしたときに、A<B<Cであることが好ましい。
この場合には、加硫接合の直前に、表面ゴムの接着性向上加工を施した領域が露出していることによって、加硫接合時に、ベルトの長手方向に流れたゴムを、該接着性向上加工を施した領域で表面ゴムと接合させて、加硫接合工程後の仕上げ作業を軽減させることができる。
なお、この明細書において、表面ゴムに施される「接着性向上加工」とは、例えば表面ゴムの外表面をバフ掛けしたり表面ゴムを切削したりすることで、該表面ゴムに接合される未加硫ゴムシートや接着用加工材との接着性を向上させる加工をいうものとする。
【0007】
さらに、この発明のエンドレスベルトの製造方法では、10mm≦A≦20mm、かつ20mm<B≦40mm、かつ50mm<C≦70mmとすることが好ましい。
この場合には、エンドレス加工の施工性を一層高めることができる。また、エンドレスベルトの耐久性を一層向上させることができるとともに、加硫接合工程後の仕上げ作業を一層軽減することができる。
【0008】
そして、この発明のエンドレスベルトの製造方法では、前記接着用加工材が、ゴムセメント及び未加硫接着ゴム、または未加硫粘着ゴムであることが好ましい。
この場合には、加硫前の、部材同士の接着性を向上させることができ、また加硫によってベルトの長手方向両端部同士を強固に接合することができる。
【0009】
また、この発明に係るエンドレスベルトの製造方法によって製造されたエンドレスベルトによれば、エンドレスベルトの耐久性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るエンドレスベルトの製造方法によれば、エンドレス加工の施工性を高め、耐久性の高いエンドレスベルトを得ることができる。また、この発明に係るエンドレスベルトによれば、エンドレスベルトの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明のエンドレスベルトの製造方法の一実施形態を示す斜視透視図である。
【
図2】従来のエンドレスベルトの製造方法を示す斜視透視図である。
【
図3】従来のエンドレスベルトの製造方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係るエンドレスベルトの製造方法の実施の形態を例示説明する。
本実施形態では、複数層の帆布120を表面ゴム104で被覆した両端のあるベルト100を製造し、ベルト100の長手方向両端部100a及び100bの表面ゴム104の一部を切除した後、
図1(a)に示すように、ステップ加工工程として、該両端部100a及び100bをについて芯体帆布を階段状に剥離してステップ加工してステップ面101を形成する。なお、本実施形態では1本のベルトの両端部について接合し、エンドレスベルトを製造するが、複数本のベルトの端部同士を接合することにより最終的にエンドレスベルトを製造する場合にも適用可能である。
【0013】
そして、ステップ加工工程の前または後に、接着性向上加工工程として、表面ベルト104の領域105に対して接着性向上加工を施す。本実施形態では、接着性向上加工として、グラインダー等で表面ゴムの外表面をバフ掛けすることでゴム表面を粗面化させている。これにより、ゴム表面の清掃効果、及び表面粗しによる投錨効果が得られるほか、ゴム分子の活性化を図ることができる。
【0014】
次に、接着用加工材貼付け工程として、
図1(b)に示すように、ステップ面101及び表面ゴム104のベルト長手方向両端部に接着用加工材102を貼付けする。該接着用加工材102を貼付けする領域のベルト長手方向縁102eと、後述する凹部のベルト長手方向縁103eとの間のベルト長手方向距離(以下、接着材貼付け領域の長さともいう)をBとする。この発明では、この接着材貼付け領域の長さBが、後述する、未加硫ゴムシート110a及び接着用加工材102の境界面のベルト長手方向縁110eと、凹部のベルト長手方向縁103eとの間の長手方向距離(以下、未加硫ゴムシートの長さともいう)Aよりも大きくなるように、接着用加工材102を貼付けする。なお、接着用加工材は、重ね合わせられるステップ面101同士のうち、一方のみに貼付けしてもよい。
【0015】
また、この発明では、接着用加工材102として、従来より広く用いられている、粘着力の強い、例えば未加硫接着ゴムを有機溶剤で溶かしたゴムセメント及び未加硫接着ゴム(ゴムセメントと併用しないと充分な粘着力が得られないゴム)のほか、単体で(ゴムセメントを併用しなくても)充分な粘着力を有する未加硫粘着ゴムを使用することができる。より簡便なのは未加硫粘着ゴムを使用することであり、この場合には、ゴムセメントを使用せずに、あるいは使用量を抑えて、環境負荷を小さくすることができる。未加硫接着ゴム又は未加硫粘着ゴムは、1層のみ又は2層以上を積層して使用(貼付け)することができる。2層以上を積層した場合、未加硫ゴムシートが特に剥離し易い凹部の底面からベルト長手方向縁103eにかけての傾斜面のクッション性を高めることができる。未加硫粘着ゴムの接着力は、1.0N/mm以上であればよく、1.5N/mm以上であることが好ましい。なお、接着力の測定は、JIS K 6322に準じて行う。
なお、接着用加工材102として、ゴムセメント及び未加硫接着ゴム、または未加硫粘着ゴムを用いることで、加硫前の、部材同士の接着性を向上させることができ、また加硫によってベルトの長手方向両端部同士を強固に接合することができる。
【0016】
上述した接着用加工材貼付け工程の後に、重ね合わせ工程として、
図1(c)に示すように、表面ゴム104のベルト長手方向両端の間に凹部103が形成されるように、ベルトの長手方向両端部100aと100bとを重ね合わせる。
なお、この実施形態では、ベルトの長手方向両端部が重ね合わされて凹部を形成する時点で、凹部には接着用加工材が貼付けされているが、例えば、ベルト表面側がステップ面101となっているベルト長手方向端部100aのみに接着用加工材102を貼付けてから、重ね合わせ工程により凹部103を形成した後に、ベルト長手方向端部100bの表面ゴム104に接着用加工材102を貼付ける等、凹部を形成した後に接着用加工材を貼付けすることもできる。
【0017】
そして、未加硫ゴムシート被覆工程として、
図1(d)に示すように、一層以上、この実施形態では二層の未加硫ゴムシート110a及び110bで、接着用加工材102が貼付けされたベルトの長手方向両端間の凹部103を被覆する。
一般に、接着用加工材は耐候性が低いため、ベルトの外表面に露出していると劣化しやすい。接着用加工材が特に凹部の縁103eで露出していると、その部分で亀裂が生じやすくなり、ひいては未加硫ゴムシートが完全に剥離してしまう原因となるおそれがある。そのため、未加硫ゴムシート110a及び110bが、凹部の縁103eを完全に覆うように、未加硫ゴムシート110a及び110bを配設させる。
それから、未加硫ゴムシート110a及び110bをカットして、未加硫ゴムシートの幅Aが、接着材貼付け領域の長さBよりも小さくなるようにする。
ここで、
図1(d)に示すように、上層の未加硫ゴムシート110bのベルト長手方向の長さを、下層の未加硫ゴムシート110aの同長さよりも短くすることが好ましい。このように、表面ゴムから離れるほど未加硫ゴムシートの長さが短くなるようにすることで、未加硫ゴムシートのカットが容易となり、また後述するように、加硫接合工程時にゴムシートが、ベルトの長手方向に適度に流れ、加硫後のベルトの表面をより平坦化させることができる。なお
図1(e)に示すように、未加硫ゴムシート110a、110bを積層した後にカッター等で斜めに切断して台形状とすることもできる。
【0018】
その後、上層の未加硫ゴムシート110bの上面をローラ300で押圧して、未加硫ゴムシート110a、110b、接着用加工材102、及び凹部103を含む表面ゴム104を圧着させる。
ここで、接着用加工材102は、特にはそれが未加硫ゴムを含む場合に、未加硫ゴムシート110a、110bとは強固に貼付きやすいが、当該接着用加工材102と加硫済みの表面ゴム104とは貼付きにくいため、従来の技術では、上記のようなローラ掛けの際等に、接着用加工材102が表面ゴム104よりも未加硫ゴムシート110aの方に貼付いて、未加硫ゴムシート110a、110b及び接着用加工材102が表面ゴム104から剥離する場合があった。
そこで、この発明では、接着材貼付け領域の長さBを、未加硫ゴムシートの長さAよりも大きくして、接着用加工材102を未加硫ゴムシート110a、110bからはみ出させ、少なくともその領域では、接着用加工材102と表面ゴム104とが強固に貼付くようにしている。従って、ローラ300で上層の未加硫ゴムシート110bの上面を押圧した際等に、未加硫ゴムシート110a、110b及び接着用加工材102が表面ゴム104から剥離することを有効に防止することができる。
【0019】
その後の加硫接合工程では、凹部103を含む重ね合わせたベルトの長手方向両端部を上面側及び下面側から押圧しながら加熱することで、未加硫ゴムシート110a、110bを加硫する。上述したように、部材間が強固に接着しているため、加硫によってベルトの長手方向端部100a及び100bは強固に接合され、耐久性の高いエンドレスベルトを得ることができる。
【0020】
また加硫接合工程では、押圧され加熱されたゴムシートがベルトの長手方向に流れる。このことで、加硫前に存在していた未加硫ゴムシート110a、110bと表面ゴム104との高低差(凹凸)が平坦化される。ここで、
図1(d)に示すように、表面ゴムから離れるほど未加硫ゴムシートのベルト長手方向長さが小さくなるようにすることで、加硫接合工程でゴムシートがベルトの長手方向に流れやすくなる。
【0021】
そして加硫接合工程で、ゴムがバフ掛け等の接着性向上加工が施されていない領域まで流れると、該領域では、流れたゴムが、表面ゴム上で膜状になって剥離する場合がある。この場合には外観が悪化するとともに、搬送物に剥離したゴム等が混入するおそれがあるため加硫接合工程後に仕上げ作業として、ベルト表面をバフ掛けして剥離したゴム等を除去する必要があった。
ここで、接着性向上加工を施した領域105のベルト長手方向縁105eと、凹部のベルト長手方向縁103eとの間のベルト長手方向距離(以下、接着性向上加工領域の長さともいう)をCとすると、A<B<Cとすることで、加硫接合の直前に、表面ゴム104の接着性向上加工領域105を露出させることができる。これにより、加硫接合時に、ベルトの長手方向に流れたゴムを、該接着性向上加工領域105で表面ゴム104と接合させて、加硫接合工程後の仕上げ作業を軽減することができる。
【0022】
なお、10mm≦A≦20mm、かつ20mm<B≦40mm、かつ50mm<C≦70mmとすることで、上述したエンドレスベルトの耐久性を向上させる効果を一層高め、また上述した仕上げ作業を軽減する効果を一層高めることができる。
【0023】
ところで加硫接合工程時には、未加硫ゴムシートの積層時等に未加硫ゴム内に残留した空気が、ベルト表面から抜けようとする。この際に、ベルトの表面にエアだまりが形成されて表面性状が悪化することを防止するために、未加硫ゴムシートの表面上、この実施形態では上層の未加硫ゴムシート110bの表面上を、布等で覆って空気を逃がすことができる。好ましくは、未加硫ゴムシートの表面上にガス透過性耐熱フィルムを貼付けした状態で加硫する。これにより、未加硫ゴムシートの表面上を布で覆った場合よりも加硫後の表面形状を良好にすることができ、また万が一シワが寄ってしまった場合にでもベルト加硫後に表面に形成されるシワを小さなものとすることができる。
なお、ガス透過性耐熱フィルムには、例えば最大200℃の高熱に耐えうる素材として、例えばフッ素樹脂系やポリオレフィン等の樹脂を使用することができる。透過性耐熱フィルムの厚みは20μm〜100μmとすることが好ましく、特に30〜50μmとすることが好ましい。厚みが薄すぎると、加硫後のベルト表面にシワが形成されやすく、また厚みが厚すぎると、加硫時に表面ゴムや接着用加工材が流れてフィルム貼付け範囲の外にはみ出した場合、フィルムが貼付けされた範囲で未加硫ゴムと加硫済みゴムとの間に段差が生じ易くなる。加えて、マット加工したり平滑化したガス透過性耐熱フィルムを使用したりすることで、加硫後のベルト表面が不自然な光沢を持つことを防止して、ベルトの外観性を一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0024】
100:ベルト、 100a、100b:ベルトの長手方向端部、 101:ステップ面、 102:接着用加工材、 102e:接着用加工材の長手方向縁、 103:凹部、 103e:凹部のベルト長手方向縁、 104:表面ゴム、 105:接着性向上加工を施した領域、 105e:接着性向上加工を施した領域のベルト長手方向縁、 110a、110b:未加硫ゴムシート、 110e:未加硫ゴムシート及び接着用加工材の境界面のベルト長手方向縁、 200a、200b:ベルトの長手方向端部、 201:ステップ面、 202:接着用加工材、 203:凹部、 204:表面ゴム、 210a、210b:未加硫ゴムシート、 300:ローラ