(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981856
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】回転機の軸接地装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
H02K5/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-6424(P2013-6424)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-138505(P2014-138505A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 哲也
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−183868(JP,A)
【文献】
実開平03−045053(JP,U)
【文献】
特開昭62−273537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横軸型の回転機の、回転機本体の外方に位置する回転軸の軸部外周に、その径方向に延出するように一体的に取り付けられた接地板と、
内部に導電性の液体が収容され、この液体と前記接地板の一部とが接触するように設置された液体槽、及び前記液体内から外部へ導出される導体と接続する端子と、
を備えたことを特徴とする回転機の軸接地装置。
【請求項2】
前記接地板は、複数枚が、前記回転軸の軸方向に間隔を保って取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転機の軸接地装置。
【請求項3】
前記複数枚の接地板は、これら接地板毎に設けられた液体槽内にて導電性液体と個別に接触し、各液体槽内の液体相互間には外部電源を接続し、これら液体相互間の導通チェックを可能としたことを特徴とする請求項2に記載の回転機の軸接地装置。
【請求項4】
前記液体槽の外部に上下動可能に設けられ、前記液体槽の底部と管路を介して連通し、前記上下動に伴う前記液体槽内との圧力差により、前記液体槽内の液体の出し入れを可能とする補助槽を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の回転機の軸接地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転軸に溜まる電荷を接地させる回転機の軸接地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動機や発電機等の回転機には軸接地を必要とするものがある。例えば、インバータ駆動の電動機は、その駆動電源に高調波が含まれることから、固定子との間の静電容量に基づき電荷が溜まり易い。これ以外の、発電機や蒸気タービンのロータ軸にも電荷が溜まることが知られている。このように、回転機の回転軸に電荷が溜まると、軸受の電蝕等を引き起こすため、回転軸を接地して電荷を逃がす必要がある。
【0003】
このための軸接地方法としては、回転体である軸と非回転体である炭素ブラシとを接触させ、この炭素ブラシを介して接地することで軸の電荷を逃がすものが知られている。しかし、炭素ブラシによる軸接地方法は、炭素ブラシが回転体(スリップリング)に接触しているため、ブラシとスリップリング間の接触面に抵抗値が存在するので運転環境の影響を受け、十分な信頼性がない。また、ブラシの消耗に応じ取替えが必要であり、予備品を保有する必要があると共に、炭素の磨耗による粉塵が問題であった。さらに、この炭素ブラシの取替えのために、回転機を停止する必要があった。
【0004】
このため接地用のブラシ交換を容易にする構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この提案でも、回転体との接触により接地を行うことに代りはなく、回転体との接触(摩擦)に伴う上述した問題点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−254007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、これまでの軸接地方法は、回転体である軸と炭素ブラシとを接触させ、炭素ブラシを接地することで軸の電荷をにがしていた。このため、炭素ブラシの消耗に応じて取替えが必要であり、予備品を保有する必要性と炭素の磨耗による粉塵の問題等があった。
【0007】
従って、本発明は、回転軸を低抵抗で確実に接地し、摩擦により生じる粉塵の発生や摩擦に伴う消耗品の予備品をなくすことができ、しかも交換作業に伴う回転機の停止を必要としない回転機の軸接地装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態に係る回転機の軸接地装置は、
横軸型の回転機の
、回転機本体の外方に位置する回転軸の軸部外周に、その径方向に延出するように一体的に取り付けられた接地板と、 内部に導電性の液体が収容され、この液体と前記接地板
の一部とが接触するように設置された液体槽、及び前記液体内から外部へ導出される導体と接続する端子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体を介しての軸接地構成であるため、回転する軸が極めて低い抵抗値で接地される。また、消耗品がなくランニングコストが低減すると共に、接触時の磨耗による粉塵は発生しない。さらに、回転機の運転中でも液体を取替え可能であり、メンテナンスのために回転機を停止する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る回転機の軸接地装置の断面図である。
【
図2】本発明の第二の実施形態に係る回転機の軸接地装置の断面図である。
【
図3】本発明の第三の実施形態に係る回転機の軸接地装置の断面図である。
【
図4】本発明の第四の実施形態に係る回転機の軸接地装置の断面図である。
【
図5】本発明の第五の実施形態に係る回転機の軸接地装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
この発明の実施の形態は、電動機や発電機等の回転機の回転軸を接地するに際し、回転軸に設けた接地板の少なくとも一部を液体に浸し、液体を介して電荷を逃がす簡便な接地構成を採用している。
【0013】
図1で示す第一の実施形態では、この軸接地装置11は、接地板12、及び液体槽13を有する。接地板12は円板状を成し、図示しない回転機本体の回転軸14と一体的に連結する回転軸12aを有する。そして、この回転軸12aの外周から径方向に延出するように一体形成されている。したがって、接地板12は、回転機の回転軸14に、その径方向に延出するように一体的に取り付けられた構成と同義である。
【0014】
液体槽13は、内部に導電性の液体16が収容されており、この液体16に対して接地板12の少なくとも一部が接触するように構成されている。そして、この液体16が、液中の接地端子17に接続する導体18を介して接地されている。また、液体槽13の上部には液体16の注入用の開口21が、底部には排出用の開口22が設けられており、これらは、常時栓体により閉鎖されている。
【0015】
ここで、前述した接地板12は、少なくとも一部が常時液体16中に浸されているので、耐錆の高い金属体、例えばステンレスなどで形成する。また、液体16としては、導電性を有する液体であればなんでもよいが、水道水を用いれば簡便に入手できる。
【0016】
上記構成によれば、回転機の回転軸14に溜まった電荷は、この回転軸14と一体的に連結した接地板12を通して液体16に流れ、その液中の接地端子17及び導体18を通して大地に流れ、回転軸14上から逃がすことができる。このため、回転軸14上に溜まった電荷により軸受に電蝕が生じることを有効に防止できる。
【0017】
また、接地板12は、その板面が、回転軸14の径方向に延出するように一体的に取り付けられ、その少なくとも一部を液体16に浸す構成であるため、回転軸14の回転により液体16から受ける機械的抵抗力は少なく、液体16との接触による動力ロスを最小限とすることができる。
【0018】
また、この実施の形態による液体16を用いた軸接地装置11は、従来の炭素ブラシのように、回転軸側との接触により摩滅することはないので、炭素ブラシの摩滅に伴う粉塵の発生がない。また、摩滅に伴う部品交換を要しないので、交換部品の用意や、交換のための手間を省ける。
【0019】
勿論、液体16も長期間の使用により水質が変化するので、ある期間が経過すれば液体16の交換も必要になるが、その交換は、液体槽13からの液体16の排出及び注入だけであり、回転機の運転を停止させることなく容易に行うことができ、回転機の運転効率が低下することはない。
【0020】
次に、
図2で示す第二の実施の形態を説明する。この実施の形態では、接地板12を、回転軸14の軸方向に対して、複数枚、間隔を保って取り付けている。このように構成すると、円板状の接地板(金属体)12を何枚も液体16に浸すことになるので、液体16との接触断面積が大きくなり、電導率が向上するので低抵抗を実現し、信頼性を向上させることができる。
【0021】
次に、
図3で示す第三の実施の形態を説明する。この実施の形態も、接地板12を、回転軸14の軸方向に対して、複数枚(12A,12Bとする)、間隔を保って取り付けているが、これら複数枚の接地板12A,12Bは、これら接地板毎に設けられた液体槽13A,13B内にて導電性の液体16A,16Bと個別に接触している。そして、各液体槽13A,13B内の液体16A,16B相互間には接続端子23A,23Bを介して外部電源24を接続し、これら液体16A,16B相互間の導通チェックを可能とした。
【0022】
図示しない回転機本体は、図示の液体槽13A,13B間に位置しており、接地板の回転軸12Aa,12Baは、回転機本体の両端においてその回転軸14とそれぞれ一体的に連結している。このため、外部電源24から一方の液体槽13A内の液体16A、一方の接地板12A及びその軸12Aa、回転機本体の回転軸14、他方の接地板軸12Ba及び接地板12B、他方の液体槽13B内の液体16Bを経て外部電源24に到る閉回路が形成される。したがって、液体16A,16B相互間の導通チェックを行うことにより、接地板12A,12Bと対応する液体16A,16Bとの間の導通チェックが行われることとなり、回転軸14に溜まった電荷を、確実に接地していることを常に確認することができる。
【0023】
なお、
図3では、液体槽13A,13Bを別体の容器により構成していたが、
図4で示す第4の実施形態のように、共通の容器27内に仕切り28を設けて個別の液体槽13A,13Bを形成してもより、他の構成は
図3と同じであり、対応する部分には同じ符号を付している。
【0024】
このように構成しても、液体16A,16B相互間の導通チェックを行うことにより、接地板12A,12Bと対応する液体16A,16Bとの間の導通チェックが行われることとなり、回転軸14に溜まった電荷を、確実に接地していることを常に確認することができる。
【0025】
次に、
図5で示す第5の実施の形態を説明する。この実施の形態は、液体槽13に対する液体16の交換に関するもので、液体槽13の外部に補助槽30を上下動可能に設けている。この補助槽30の底部開口31は、液体槽13の底部開口22と管路31を介して連通している。そして、補助槽30の上下動に伴う、液体槽13内との圧力差により、液体槽13内の液体16の出し入れを可能としている。
【0026】
すなわち、液体槽13内の液体16を排出させる場合は、補助槽30を図示位置より下降させることによって、液体槽13内との圧力差により、その内部の液体16を補助槽30内に排出させることができる。また、液体槽13内に液体16を注入する場合は、補助槽30の底面を液体槽13の底面と同じ高さに位置させることにより、補助槽30内の液体を、その液面レベルと等しい液面レベルまで、液体槽13内に注入することができる。
【0027】
このように構成したことにより、軸接地装置11が、回転機の運転中、作業者が接近できない場所に設置されている場合であっても、補助槽30を操作することにより、液体槽13に接近することなく、その内部の液体16を交換することが可能となる。すなわち、運転中でも安全にメンテナンスを実施することできる。
【0028】
上述した各実施の形態では、接地板12を円板状の金属体としたが、これに限らず、例えば扇形の金属体を回転軸の外周に沿って取り付けたり、複数の短冊状の金属体を回転軸の外周に沿って放射状に配置してもよい。
【0029】
また、接地板12は、一体の軸12aを介して、回転機本体の回転軸14に一体的に連結していたが、軸12aを用いずに、回転軸14の外周に直接取り付けてもよい。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
11・・・軸接地装置
12・・・接地板
13・・・液体槽
14・・・回転軸
16・・・液体
17・・・接地端子
18・・・導体
24・・・外部電源
30・・・補助槽
31・・・管路