(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カソード電極と、第1導電型の半導体からなるカソード領域と、第1導電型の半導体からなるドリフト領域と、第2導電型の半導体からなるアノード領域と、金属からなるアノード電極を備えるダイオードであって、
前記ドリフト領域と前記アノード領域の間に形成された、前記ドリフト領域よりも濃度が高い第1導電型の半導体からなるバリア領域と、
前記バリア領域と前記アノード電極の間を伸びており、前記バリア領域に接触して形成された、第1導電型の半導体からなるピラー領域と、
前記ピラー領域と前記アノード電極の間に位置しており、前記ピラー領域と前記アノード電極に接触して形成された、バリアハイト調整領域と、を備えており、
前記バリアハイト調整領域は、前記アノード領域よりも濃度が低い第2導電型の半導体、前記ピラー領域よりも濃度が低い第1導電型の半導体、及びi型の半導体からなる群から選択される少なくとも1つを含んでおり、
前記バリアハイト調整領域と前記アノード電極がショットキー接合しており、
前記カソード領域と前記ドリフト領域と前記アノード領域と前記バリア領域と前記ピラー領域と前記バリアハイト調整領域が、シリコンの半導体基板に形成されていることを特徴とするダイオード。
前記カソード領域に部分的に形成された、第2導電型の半導体からなるカソードショート領域をさらに備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項のダイオード。
前記第2バリア領域と前記第2ドリフト領域の間に形成された、第2導電型の半導体からなる第2電界進展防止領域をさらに備えることを特徴とする請求項5の半導体装置。
ドレイン電極と、第1導電型の半導体からなるドレイン領域と、第1導電型の半導体からなるドリフト領域と、第2導電型の半導体からなるボディ領域と、第1導電型の半導体からなるソース領域と、金属からなるソース電極と、前記ソース領域と前記ドリフト領域の間の前記ボディ領域に対して絶縁膜を挟んで対向するゲート電極を備える半導体装置であって、
前記ドリフト領域と前記ボディ領域の間に形成された、前記ドリフト領域よりも濃度が高い第1導電型の半導体からなるバリア領域と、
前記バリア領域と前記ソース電極の間を伸びており、前記バリア領域に接触して形成された、第1導電型の半導体からなるピラー領域と、
前記ピラー領域と前記ソース電極の間に位置しており、前記ピラー領域と前記ソース電極に接触して形成された、バリアハイト調整領域と、を備えており、
前記バリアハイト調整領域は、前記ボディ領域よりも濃度が低い第2導電型の半導体、前記ピラー領域よりも濃度が低い第1導電型の半導体、及びi型の半導体からなる群から選択される少なくとも1つを含んでおり、
前記バリアハイト調整領域と前記ソース電極がショットキー接合しており、
前記ドレイン領域と前記ドリフト領域と前記ボディ領域と前記ソース領域と前記バリア領域と前記ピラー領域と前記バリアハイト調整領域が、シリコンの半導体基板に形成されていることを特徴とする半導体装置。
カソード電極と、第1導電型の半導体からなるカソード領域と、第1導電型の半導体からなるドリフト領域と、第2導電型の半導体からなるアノード領域と、アノード電極を備えるダイオードであって、
前記ドリフト領域と前記アノード領域の間に形成された、前記ドリフト領域よりも濃度が高い第1導電型の半導体からなるバリア領域と、
前記バリア領域と前記アノード電極の間を伸びており、前記アノード電極に接触して形成された、金属からなるピラー電極と、
前記バリア領域と前記ピラー電極の間に位置しており、前記バリア領域と前記ピラー電極に接触して形成された、バリアハイト調整領域と、を備えており、
前記バリアハイト調整領域は、前記アノード領域よりも濃度が低い第2導電型の半導体、前記バリア領域よりも濃度が低い第1導電型の半導体、及びi型の半導体からなる群から選択される少なくとも1つを含んでおり、
前記バリアハイト調整領域と前記ピラー電極がショットキー接合しており、
前記カソード領域と前記ドリフト領域と前記アノード領域と前記バリア領域と前記バリアハイト調整領域が、シリコンの半導体基板に形成されていることを特徴とするダイオード。
前記カソード領域に部分的に形成された、第2導電型の半導体からなるカソードショート領域をさらに備えていることを特徴とする請求項9から11の何れか一項のダイオード。
前記第2バリア領域と前記第2ドリフト領域の間に形成された、第2導電型の半導体からなる第2電界進展防止領域をさらに備えることを特徴とする請求項13の半導体装置。
ドレイン電極と、第1導電型の半導体からなるドレイン領域と、第1導電型の半導体からなるドリフト領域と、第2導電型の半導体からなるボディ領域と、第1導電型の半導体からなるソース領域と、ソース電極と、前記ソース領域と前記ドリフト領域の間の前記ボディ領域に対して絶縁膜を挟んで対向するゲート電極を備える半導体装置であって、
前記ドリフト領域と前記ボディ領域の間に形成された、前記ドリフト領域よりも濃度が高い第1導電型の半導体からなるバリア領域と、
前記バリア領域と前記ソース電極の間を伸びており、前記ソース電極に接触して形成された、金属からなるピラー電極と、
前記バリア領域と前記ピラー電極の間に位置しており、前記バリア領域と前記ピラー電極に接触して形成された、バリアハイト調整領域と、を備えており、
前記バリアハイト調整領域は、前記ボディ領域よりも濃度が低い第2導電型の半導体、前記バリア領域よりも濃度が低い第1導電型の半導体、及びi型の半導体からなる群から選択される少なくとも1つを含んでおり、
前記バリアハイト調整領域と前記ピラー電極がショットキー接合しており、
前記ドレイン領域と前記ドリフト領域と前記ボディ領域と前記ソース領域と前記バリア領域と前記バリアハイト調整領域が、シリコンの半導体基板に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(実施例1)
図1に示すように、本実施例のダイオード2は、シリコンの半導体基板4を用いて形成されている。半導体基板4には、高濃度n型半導体領域であるn
+カソード領域6と、n型半導体領域であるnバッファ領域8と、低濃度n型半導体領域であるn
−ドリフト領域10と、n型半導体領域であるnバリア領域12と、p型半導体領域であるpアノード領域14が順に積層されている。本実施例では、n型半導体領域には不純物として例えばリンが添加されており、p型半導体領域には不純物として例えばボロンが添加されている。本実施例では、n
+カソード領域6の不純物濃度は1×10
17〜5×10
20[cm
-3]程度であり、nバッファ領域8の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19[cm
-3]程度であり、n
−ドリフト領域10の不純物濃度は1×10
12〜1×10
15[cm
-3]程度であり、nバリア領域12の不純物濃度は1×10
15〜1×10
18[cm
-3]程度であり、pアノード領域14の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19[cm
-3]程度である。また、nバリア領域12の厚みは0.5〜3.0[μm]程度である。
【0048】
半導体基板4の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域16と低濃度p型半導体であるp
−バリアハイト調整領域17の組合せが、所定の間隔を隔てて複数形成されている。nピラー領域16の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19[cm
-3]程度である。p
−バリアハイト調整領域17の不純物濃度は、pアノード領域14よりも薄く調整されており、1×10
14〜1×10
17[cm
-3]程度である。また、p
−バリアハイト調整領域17の厚みは薄く形成されており、0.01〜0.5[μm]程度である。nピラー領域16とp
−バリアハイト調整領域17の組合せは、pアノード領域14を貫通して、nバリア領域12の上側表面まで達するように形成されている。nピラー領域16は、nバリア領域12とアノード電極22の間を伸びており、nバリア領域12に接触して形成されている。p
−バリアハイト調整領域17は、nピラー領域16とアノード電極22の間に位置しており、nピラー領域16とアノード電極22に接触して形成されている。なお、p
−バリアハイト領域17は、nピラー領域16の不純物濃度よりも薄いn型半導体領域であってもよく、i型半導体であってもよい。n型半導体領域の場合、バリアハイト調整領域の不純物濃度は1×10
14〜1×10
17[cm
-3]程度に調整されてもよい。i型半導体の場合、バリアハイト調整領域には不純物が添加されていないノンドープであってもよい。また、pアノード領域14の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるp
+コンタクト領域18が所定の間隔を隔てて複数形成されている。p
+コンタクト領域18の不純物濃度は1×10
17〜1×10
20[cm
-3]程度である。半導体基板4の上側表面には、pアノード領域14と、p
−バリアハイト調整領域17、p
+コンタクト領域18が露出している。
【0049】
半導体基板4の下側表面には、金属製のカソード電極20が形成されている。カソード電極20は、n
+カソード領域6とオーミック接合によって接合している。半導体基板4の上側表面には、金属製のアノード電極22が形成されている。アノード電極22は、pアノード領域14およびp
+コンタクト領域18とオーミック接合によって接合している。アノード電極22は、ショットキー界面24を介して、p
−バリアハイト調整領域17とショットキー接合している。
【0050】
図2Aに、p
−バリアハイト調整領域17とアノード電極22のショットキー界面24近傍のエネルギーバンド図を示す。
図2Bに、p
−バリアハイト調整領域17が設けられていない例、すなわち、nピラー領域16とエミッタ電極22がショットキー接合した場合のショットキー界面近傍のエネルギーバンド図を示す。
図2A及び
図2Bに示されるように、p
−バリアハイト調整領域17が設けられていることにより、p
−バリアハイト調整領域17とアノード電極22のショットキー接合のバリア高さ(φ
B)が高く調整される。本実施例では、ショットキー接合のバリア高さは0.5〜0.9[eV]程度である。
【0051】
ダイオード2の動作について説明する。アノード電極22とカソード電極20の間に順バイアスが印加されると、アノード電極22とnバリア領域12が、p
−バリアハイト調整領域17とnピラー領域16を介して短絡する。このため、nバリア領域12とアノード電極22の電位差はショットキー界面24での電圧降下とほぼ等しくなる。ショットキー界面24での電圧降下は、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合のビルトイン電圧よりも十分に小さいので、p
+コンタクト領域18やpアノード領域14からn
−ドリフト領域10への正孔の注入が抑制される。アノード電極22とカソード電極20の間には、主にアノード電極22とp
−バリアハイト調整領域17の間のショットキー界面24、nピラー領域16、nバリア領域12、n
−ドリフト領域10、nバッファ領域8、n
+カソード領域6を経由する順電流が流れる。
【0052】
次いで、アノード電極22とカソード電極20の間の電圧が順バイアスから逆バイアスに切り替わると、アノード電極22とp
−バリアハイト調整領域17の間のショットキー界面24によって逆電流が制限される。特に、本実施例のダイオード2では、p
−バリアハイト調整領域17が設けられていることにより、p
−バリアハイト調整領域17とアノード電極22のショットキー接合のバリア高さが高く調整され、逆電流が良好に制限される。また、上述したように、本実施例のダイオード2では、順バイアスの印加時においてp
+コンタクト領域18およびpアノード領域14からn
−ドリフト領域10への正孔の注入が抑制されているから、逆回復電流が小さく、逆回復時間が短い。本実施例のダイオード2によれば、n
−ドリフト領域10のライフタイム制御を行うことなく、スイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0053】
また、本実施例のダイオード2では、アノード電極22とカソード電極20の間に逆バイアスが印加されると、p
−バリアハイト調整領域17とアノード電極22の間のショットキー界面24から伸びる空乏層だけでなく、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。これにより、p
−バリアハイト調整領域17とアノード電極22の間のショットキー界面24にかかる電界が軽減される。本実施例のダイオード2によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することが出来る。
【0054】
本実施例のダイオード2では、nピラー領域16における不純物濃度が、nバリア領域12における不純物濃度よりも高い。このような構成とすることによって、pアノード領域14の厚みを小さくすることなく、順バイアスの印加時におけるnバリア領域12とアノード電極22の間の電位差を小さくすることが出来る。例えば、p
−バリアハイト調整領域17が設けられていない例、すなわち、nピラー領域16とアノード電極22を接合させる場合、nピラー領域16とアノード電極22をショットキー接合させるためにnピラー領域16の不純物濃度をある程度低く抑えなければならない。一方、本実施例のダイオード2では、p
−バリアハイト調整領域17が設けられていることにより、nピラー領域16の不純物濃度を高くすることができる。本実施例のダイオード2によれば、逆バイアスに対するリーチスルーの発生を抑え、耐圧を低下させることなく、スイッチング損失を低減することが出来る。
【0055】
(実施例2)
図3に示すように、本実施例のダイオード32は、シリコンの半導体基板34を用いて形成されている。半導体基板34には、高濃度n型半導体領域であるn
+カソード領域6と、n型半導体領域であるnバッファ領域8と、低濃度n型半導体領域であるn
−ドリフト領域10と、p型半導体領域であるp電界進展防止領域36と、n型半導体領域であるnバリア領域12と、p型半導体領域であるpアノード領域14が順に積層されている。本実施例では、p電界進展防止領域36の不純物濃度は1×10
15〜1×10
19[cm
-3]程度である。また、p電界進展防止領域36の厚みは0.5〜3.0[μm]程度である。
【0056】
半導体基板34の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域16と低濃度p型半導体であるp
−バリアハイト調整領域17の組合せが、所定の間隔を隔てて複数形成されている。nピラー領域16とp
−バリアハイト調整領域17の組合せは、pアノード領域14を貫通して、nバリア領域12の上側表面まで達するように形成されている。nピラー領域16は、nバリア領域12とアノード電極22の間を伸びており、nバリア領域12に接触して形成されている。p
−バリアハイト調整領域17は、nピラー領域16とアノード電極22の間に位置しており、nピラー領域16とアノード電極22に接触して形成されている。なお、p
−バリアハイト領域17は、nピラー領域16の不純物濃度よりも薄いn型半導体領域であってもよく、i型半導体であってもよい。また、pアノード領域14の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるp
+コンタクト領域18が所定の間隔を隔てて複数形成されている。半導体基板34の上側表面には、pアノード領域14と、p
−バリアハイト調整領域17、p
+コンタクト領域18が露出している。
【0057】
半導体基板34の下側表面には、金属製のカソード電極20が形成されている。カソード電極20は、n
+カソード領域6とオーミック接合によって接合している。半導体基板34の上側表面には、金属製のアノード電極22が形成されている。アノード電極22は、pアノード領域14およびp
+コンタクト領域18とオーミック接合によって接合している。アノード電極22は、ショットキー界面24を介して、p
−バリアハイト調整領域17とショットキー接合している。
【0058】
ダイオード32の動作について説明する。アノード電極22とカソード電極20の間に順バイアスが印加されると、アノード電極22とnバリア領域12が、p
−バリアハイト調整領域17とnピラー領域16を介して短絡する。このため、nバリア領域12とアノード電極22の電位差はショットキー界面24での電圧降下とほぼ等しくなる。ショットキー界面24での電圧降下は、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合のビルトイン電圧よりも十分に小さいので、p
+コンタクト領域18やpアノード領域14からn
−ドリフト領域10への正孔の注入が抑制される。アノード電極22とカソード電極20の間には、主にアノード電極22とp
−バリアハイト調整領域17の間のショットキー界面24、nピラー領域16、nバリア領域12、p電界進展防止領域36、n
−ドリフト領域10、nバッファ領域8、n
+カソード領域6を経由する順電流が流れる。なお、nバリア領域12とp電界進展防止領域36の間にはpn接合が存在するが、p電界進展防止領域36のp型不純物濃度は低く、p電界進展防止領域36の厚みは薄いため、アノード電極22とカソード電極20の間の順電流に及ぼす影響は少ない。
【0059】
次いで、アノード電極22とカソード電極20の間の電圧が順バイアスから逆バイアスに切り替わると、アノード電極22とp
−バリアハイト調整領域17の間のショットキー界面24によって逆電流が制限される。特に、本実施例のダイオード32では、p
−バリアハイト調整領域17が設けられていることにより、p
−バリアハイト調整領域17とアノード電極22のショットキー接合のバリア高さが高く調整され、逆電流が良好に制限される。また、n
−ドリフト領域10とp電界進展防止領域36の間のpn接合によっても逆電流が制限される。上述したように、本実施例のダイオード32では、順バイアスの印加時においてp
+コンタクト領域18およびpアノード領域14からn
−ドリフト領域10への正孔の注入が抑制されているから、逆回復電流が小さく、逆回復時間が短い。本実施例のダイオード32によれば、n
−ドリフト領域10のライフタイム制御を行うことなく、スイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0060】
また、本実施例のダイオード32では、アノード電極22とカソード電極20の間に逆バイアスが印加されると、p
−バリアハイト調整領域17とアノード電極22の間のショットキー界面24から伸びる空乏層だけでなく、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面から伸びる空乏層と、n
−ドリフト領域10とp電界進展防止領域36の間のpn接合の界面でも電界が分担される。これにより、p
−バリアハイト調整領域17とアノード電極22の間のショットキー界面24にかかる電界と、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合にかかる電界が軽減される。本実施例のダイオード32によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することが出来る。
【0061】
(実施例3)
図4に示すように、本実施例のダイオード42は、実施例1のダイオード2と同様に、シリコンの半導体基板4を用いて形成されている。半導体基板4には、高濃度n型半導体領域であるn
+カソード領域6と、n型半導体領域であるnバッファ領域8と、低濃度n型半導体領域であるn
−ドリフト領域10と、n型半導体領域であるnバリア領域12と、p型半導体領域であるpアノード領域14が順に積層されている。半導体基板4の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域16と低濃度p型半導体であるp
−バリアハイト調整領域17の組合せが、所定の間隔を隔てて複数形成されている。nピラー領域16とp
−バリアハイト調整領域17の組合せは、pアノード領域14を貫通して、nバリア領域12の上側表面まで達するように形成されている。nピラー領域16は、nバリア領域12とアノード電極22の間を伸びており、nバリア領域12に接触して形成されている。p
−バリアハイト調整領域17は、nピラー領域16とアノード電極22の間に位置しており、nピラー領域16とアノード電極22に接触して形成されている。なお、p
−バリアハイト領域17は、nピラー領域16の不純物濃度よりも薄いn型半導体領域であってもよく、i型半導体であってもよい。また、半導体基板4の上側には、複数のトレンチ44が所定の間隔で形成されている。それぞれのトレンチ44は、pアノード領域14の上側表面からnバリア領域12を貫通してn
−ドリフト領域10の内部まで達している。トレンチ44の内部には、絶縁膜46によって被覆されたトレンチ電極48が充填されている。また、pアノード領域14の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるp
+コンタクト領域18が所定の間隔を隔てて複数形成されている。
【0062】
半導体基板4の下側表面には、金属製のカソード電極20が形成されている。カソード電極20は、n
+カソード領域6とオーミック接合によって接合している。半導体基板4の上側表面には、金属製のアノード電極22が形成されている。アノード電極22は、pアノード領域14およびp
+コンタクト領域18とオーミック接合によって接合している。アノード電極22は、ショットキー界面24を介して、p
−バリアハイト調整領域17とショットキー接合している。
【0063】
本実施例のダイオード42の動作は、実施例1のダイオード2の動作とほぼ同じである。本実施例のダイオード42では、アノード電極22とカソード電極20の間に逆バイアスが印加される際に、トレンチ電極48に印加される電圧を調整することで、耐圧を向上することができる。例えば、逆バイアスの印加時にトレンチ電極48とアノード電極22がほぼ同電位となるようにトレンチ電極48に印加される電圧を調整すると、n
−ドリフト領域10の内部におけるトレンチ電極48の先端近傍の箇所に電界集中が生じ、これによって、p
−バリアハイト調整領域17とアノード電極22の間のショットキー界面24や、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面にかかる電界が軽減される。なお、トレンチ電極48の電位は必ずしもアノード電極22と同電位にする必要はない。逆バイアスの印加時に、トレンチ電極48の電位を、カソード電極20の電位より低くなるようにすることで、トレンチ電極48の先端近傍の箇所に電界集中が生じ、p
−バリアハイト調整領域17とアノード電極22の間のショットキー界面24や、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面にかかる電界を軽減することができる。本実施例のダイオード42によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0064】
(実施例4)
図5に示すように、本実施例のダイオード52は、実施例2のダイオード32と同様に、シリコンの半導体基板34を用いて形成されている。半導体基板34には、高濃度n型半導体領域であるn
+カソード領域6と、n型半導体領域であるnバッファ領域8と、低濃度n型半導体領域であるn
−ドリフト領域10と、p型半導体領域であるp電界進展防止領域36と、n型半導体領域であるnバリア領域12と、p型半導体領域であるpアノード領域14が順に積層されている。半導体基板34の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域16と低濃度p型半導体であるp
−バリアハイト調整領域17の組合せが、所定の間隔を隔てて複数形成されている。nピラー領域16とp
−バリアハイト調整領域17の組合せは、pアノード領域14を貫通して、nバリア領域12の上側表面まで達するように形成されている。nピラー領域16は、nバリア領域12とアノード電極22の間を伸びており、nバリア領域12に接触して形成されている。p
−バリアハイト調整領域17は、nピラー領域16とアノード電極22の間に位置しており、nピラー領域16とアノード電極22に接触して形成されている。なお、p
−バリアハイト領域17は、nピラー領域16の不純物濃度よりも薄いn型半導体領域であってもよく、i型半導体であってもよい。また、半導体基板34の上側には、複数のトレンチ44が所定の間隔で形成されている。それぞれのトレンチ44は、pアノード領域14の上側表面からnバリア領域12とp電界進展防止領域36を貫通してn
−ドリフト領域10の内部まで達している。トレンチ44の内部には、絶縁膜46によって被覆されたトレンチ電極48が充填されている。また、pアノード領域14の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるp
+コンタクト領域18が所定の間隔を隔てて複数形成されている。
【0065】
半導体基板34の下側表面には、金属製のカソード電極20が形成されている。カソード電極20は、n
+カソード領域6とオーミック接合によって接合している。半導体基板34の上側表面には、金属製のアノード電極22が形成されている。アノード電極22は、pアノード領域14およびp
+コンタクト領域18とオーミック接合によって接合している。アノード電極22は、ショットキー界面24を介して、p
−バリアハイト調整領域17とショットキー接合によって接合している。
【0066】
本実施例のダイオード52の動作は、実施例2のダイオード32の動作とほぼ同じである。本実施例のダイオード52では、実施例3のダイオード42と同様に、アノード電極22とカソード電極20の間に逆バイアスが印加される際に、トレンチ電極48に印加される電圧を調整することで、耐圧を向上することができる。例えば、逆バイアスの印加時にトレンチ電極48とアノード電極22がほぼ同電位となるようにトレンチ電極48に印加される電圧を調整すると、n
−ドリフト領域10の内部におけるトレンチ電極48の先端近傍の箇所に電界集中が生じ、これによって、p
−バリアハイト調整領域17とアノード電極22の間のショットキー界面24や、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面や、n
−ドリフト領域10とp電界進展防止領域36の間のpn接合の界面にかかる電界が軽減される。本実施例のダイオード52によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0067】
なお、本実施例のダイオード52の各構成要素は、
図6に示すように、3次元的に配置することもできる。
図6では、各構成要素の配置を明瞭にするために、カソード電極20およびアノード電極22を図示していない。
【0068】
(実施例5)
図7に示すように、本実施例のダイオード62は、実施例4のダイオード52とほぼ同様の構成を備えている。本実施例のダイオード62では、n
+カソード領域6に、高濃度p型半導体領域であるp
+カソードショート領域64が、所定の間隔を隔てて複数形成されている点で、実施例4のダイオード52と異なる。本実施例では、p
+カソードショート領域64の不純物濃度は1×10
17〜5×10
20[cm
-3]程度である。
【0069】
本実施例のダイオード62の動作は、実施例4のダイオード52とほぼ同じである。本実施例のダイオード62では、アノード電極22とカソード電極20の間に順バイアスが印加される際に、p
+カソードショート領域64が形成されていることで、n
+カソード領域6からn
−ドリフト領域10への電子の注入が抑制される。本実施例のダイオード62によれば、順バイアスの印加時において、p
+コンタクト領域18およびpアノード領域14からn
−ドリフト領域10への正孔の注入が抑制されているだけでなく、n
+カソード領域6からn
−ドリフト領域10への電子の注入も抑制されているので、逆回復電流をさらに小さくし、逆回復時間をさらに短くすることができる。本実施例のダイオード62によれば、さらにスイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0070】
なお、上記のようにp
+カソードショート領域64を設けることによる逆回復特性の改善は、他の形態のダイオードにおいても効果的である。すなわち、
図8に示すダイオード66のように、実施例1のダイオード2において、n
+カソード領域6にp
+カソードショート領域64を設けた構成とすることもできるし、
図9に示すダイオード68のように、実施例2のダイオード32において、n
+カソード領域6にp
+カソードショート領域64を設けた構成とすることもできるし、
図10に示すダイオード70のように、実施例3のダイオード42において、n
+カソード領域6にp
+カソードショート領域64を設けた構成とすることもできる。
【0071】
(実施例6)
図11に示すように、本実施例の半導体装置72は、実施例3のダイオード42とほぼ同様の構成を備えている。半導体装置72では、pアノード領域14の上側表面において、トレンチ44に隣接する箇所に、高濃度n型半導体領域であるn
+エミッタ領域74が形成されている。本実施例では、n
+エミッタ領域74の不純物濃度は1×10
17〜5×10
20[cm
-3]程度である。n
+エミッタ領域74は、アノード電極22とオーミック接合によって接合している。
【0072】
本実施例の半導体装置72は、ドレイン電極に相当するカソード電極20と、ドレイン領域に相当するn
+カソード領域6と、nバッファ領域8と、n
−ドリフト領域10と、ボディ領域に相当するpアノード領域14と、ソース領域に相当するn
+エミッタ領域74と、ソース電極に相当するアノード電極22と、n
+エミッタ領域74とn
−ドリフト領域10の間のpアノード領域14に対して絶縁膜46を挟んで対向する、ゲート電極に相当するトレンチ電極48を備える縦型のMOSFETの構造を有している。
【0073】
実施例3のダイオード42と同様に、本実施例の半導体装置72によれば、MOSFETの寄生ダイオードの逆回復特性を改善して、スイッチング損失を低減することができる。また、実施例3のダイオード42と同様に、本実施例の半導体装置72によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0074】
(実施例7)
図12に示すように、本実施例の半導体装置82は、実施例4のダイオード52とほぼ同様の構成を備えている。半導体装置82では、pアノード領域14の上側表面において、トレンチ44に隣接する箇所に、n
+エミッタ領域74が形成されている。n
+エミッタ領域74は、アノード電極22とオーミック接合によって接合している。
【0075】
本実施例の半導体装置82は、ドレイン電極に相当するカソード電極20と、ドレイン領域に相当するn
+カソード領域6と、nバッファ領域8と、n
−ドリフト領域10と、ボディ領域に相当するpアノード領域14と、ソース領域に相当するn
+エミッタ領域74と、ソース電極に相当するアノード電極22と、n
+エミッタ領域74とn
−ドリフト領域10の間のpアノード領域14に対して絶縁膜46を挟んで対向する、ゲート電極に相当するトレンチ電極48を備える縦型のMOSFETの構造を有している。
【0076】
実施例4のダイオード52と同様に、本実施例の半導体装置82によれば、MOSFETの寄生ダイオードの逆回復特性を改善して、スイッチング損失を低減することができる。また、実施例4のダイオード52と同様に、本実施例の半導体装置82によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上し、逆バイアス時のリーク電流を抑制することができる。
【0077】
(実施例8)
図13に示すように、本実施例の半導体装置102は、シリコンの半導体基板104を用いて形成されている。半導体装置102は、IGBT領域106と、ダイオード領域108を備えている。IGBT領域106において、半導体基板104は、高濃度p型半導体領域であるp
+コレクタ領域110と、n型半導体領域であるnバッファ領域112と、低濃度n型半導体領域であるn
−ドリフト領域114と、n型半導体領域であるnバリア領域116と、p型半導体領域であるpボディ領域118が順に積層されている。本実施例では、p
+コレクタ領域110の不純物濃度は1×10
17〜5×10
20[cm
-3]程度であり、nバッファ領域112の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19[cm
-3]程度であり、n
−ドリフト領域114の不純物濃度は1×10
12〜1×10
15[cm
-3]程度であり、nバリア領域116の不純物濃度は1×10
15〜1×10
18[cm
-3]程度であり、pボディ領域118の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19[cm
-3]程度である。また、nバリア領域116の厚みは0.5〜3.0[μm]程度である。ダイオード領域108において、半導体基板104は、高濃度n型半導体領域であるn
+カソード領域120と、nバッファ領域112と、n
−ドリフト領域114と、nバリア領域122と、p型半導体領域であるpアノード領域124が順に積層されている。本実施例では、n
+カソード領域120の不純物濃度は1×10
17〜5×10
20[cm
-3]程度であり、nバリア領域122の不純物濃度は1×10
15〜1×10
18[cm
-3]程度であり、pアノード領域124の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19[cm
-3]程度である。また、nバリア領域122の厚みは0.5〜3.0[μm]程度である。半導体基板4の上側には、複数のトレンチ126が所定の間隔で形成されている。
【0078】
IGBT領域106において、トレンチ126は、pボディ領域118の上側表面からnバリア領域116を貫通して、n
−ドリフト領域114の内部まで達している。トレンチ126の内部には、絶縁膜128で被覆されたゲート電極130が充填されている。pボディ領域118の上側表面において、トレンチ126に隣接する箇所には、高濃度n型半導体領域であるn
+エミッタ領域132が形成されている。n
+エミッタ領域132の不純物濃度は1×10
17〜5×10
20[cm
-3]程度である。また、pボディ領域118の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域134と低濃度p型半導体であるp
−バリアハイト調整領域137の組合せが形成されている。nピラー領域134の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19[cm
-3]程度である。p
−バリアハイト調整領域137の不純物濃度は、pボディ領域118よりも薄く調整されており、1×10
14〜1×10
17[cm
-3]程度である。また、p
−バリアハイト調整領域137の厚みは薄く形成されており、0.01〜0.5[μm]程度である。nピラー領域134とp
−バリアハイト調整領域137の組合せは、pボディ領域118を貫通して、nバリア領域116の上側表面まで達するように形成されている。nピラー領域134は、nバリア領域116とエミッタ電極148の間を伸びており、nバリア領域116に接触して形成されている。p
−バリアハイト調整領域137は、nピラー領域134とエミッタ電極148の間に位置しており、nピラー領域134とエミッタ電極148に接触して形成されている。なお、p
−バリアハイト領域137は、nピラー領域134の不純物濃度よりも薄いn型半導体領域であってもよく、i型半導体であってもよい。さらに、pボディ領域118の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるp
+コンタクト領域136が形成されている。p
+コンタクト領域136の不純物濃度は1×10
17〜1×10
20[cm
-3]程度である。
【0079】
ダイオード領域108において、トレンチ126は、pアノード領域124の上側表面からnバリア領域122を貫通して、n
−ドリフト領域114の内部まで達している。トレンチ126の内部には、絶縁膜138で被覆されたゲート電極140が充填されている。pアノード領域124の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域142と低濃度p型半導体であるp
−バリアハイト調整領域147の組合せが形成されている。nピラー領域142の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19[cm
-3]程度である。p
−バリアハイト調整領域147の不純物濃度は、pアノード領域124よりも薄く調整されており、1×10
14〜1×10
17[cm
-3]程度である。た、p
−バリアハイト調整領域147の厚みは薄く形成されており、0.01〜0.5[μm]程度である。nピラー領域142とp
−バリアハイト調整領域147の組合せは、pアノード領域124を貫通して、nバリア領域122の上側表面まで達するように形成されている。nピラー領域142は、nバリア領域122とアノード電極148の間を伸びており、nバリア領域122に接触して形成されている。p
−バリアハイト調整領域147は、nピラー領域142とアノード電極148の間に位置しており、nピラー領域142とアノード電極148に接触して形成されている。なお、p
−バリアハイト領域147は、nピラー領域142の不純物濃度よりも薄いn型半導体領域であってもよく、i型半導体であってもよい。また、pアノード領域124の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるp
+コンタクト領域144が形成されている。p
+コンタクト領域144の不純物濃度は1×10
17〜1×10
20[cm
-3]程度である。
【0080】
半導体基板104の下側表面には、金属製のコレクタ/カソード電極146が形成されている。コレクタ/カソード電極146は、p
+コレクタ領域110およびn
+カソード領域120とオーミック接合によって接合している。コレクタ/カソード電極146は、IGBT領域106においてはコレクタ電極として機能し、ダイオード領域108においてはカソード電極として機能する。
【0081】
半導体基板104の上側表面には、金属製のエミッタ/アノード電極148が形成されている。エミッタ/アノード電極148は、ショットキー界面150を介してp
−バリアハイト調整領域137とショットキー接合しており、ショットキー界面152を介してp
−バリアハイト調整領域147とショットキー接合している。本実施例では、ショットキー界面150およびショットキー界面152のバリア高さは、何れも0.5〜0.9[eV]程度である。また、エミッタ/アノード電極148は、IGBT領域106のn
+エミッタ領域132およびp
+コンタクト領域136、およびダイオード領域108のp
+コンタクト領域144とオーミック接合によって接合している。エミッタ/アノード電極148は、IGBT領域106においてはエミッタ電極として機能し、ダイオード領域108においてはアノード電極として機能する。
【0082】
IGBT領域106のゲート電極130は図示しない第1ゲート電極端子に導通している。ダイオード領域108のゲート電極140は、図示しない第2ゲート電極端子に導通している。
【0083】
以上のように、半導体装置102は、トレンチ型のIGBTとして機能するIGBT領域106とフリーホイーリングダイオードとして機能するダイオード領域108が逆並列に接続された構造を有している。
【0084】
半導体装置102の動作について説明する。ゲート電極130に電圧が印加されておらず、従ってIGBT領域106が駆動していない場合には、IGBT領域106は寄生ダイオードとして機能する。この状態で、エミッタ/アノード電極148とコレクタ/カソード電極146の間に順バイアスが印加されると、ダイオード領域108では、エミッタ/アノード電極148とnバリア領域122がp
−バリアハイト調整領域147とnピラー領域142を介して短絡する。このため、nバリア領域122とエミッタ/アノード電極148の電位差はショットキー界面152での電圧降下とほぼ等しくなる。ショットキー界面152での電圧降下は、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合のビルトイン電圧よりも十分に小さいので、p
+コンタクト領域144やpアノード領域124からn
−ドリフト領域114への正孔の注入が抑制される。IGBT領域106では、エミッタ/アノード電極148とnバリア領域116がp
−バリアハイト調整領域137とnピラー領域134を介して短絡する。このため、nバリア領域116とエミッタ/アノード電極148の電位差はショットキー界面150での電圧降下とほぼ等しくなる。ショットキー界面150での電圧降下は、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合のビルトイン電圧よりも十分に小さいので、p
+コンタクト領域136やpボディ領域118からn
−ドリフト領域114への正孔の注入が抑制される。エミッタ/アノード電極148とコレクタ/カソード電極146の間には、主にダイオード領域108のショットキー界面152、nピラー領域142、nバリア領域122、n
−ドリフト領域114、nバッファ領域112、n
+カソード領域120を経由する順電流と、IGBT領域106のショットキー界面150、nピラー領域134、nバリア領域116、n
−ドリフト領域114、nバッファ領域112、n
+カソード領域120を経由する順電流が流れる。
【0085】
次いで、エミッタ/アノード電極148とコレクタ/カソード電極146の間の電圧が順バイアスから逆バイアスに切り替わると、ダイオード領域108ではショットキー界面152によって、IGBT領域106ではショットキー界面150によって、逆電流が制限される。特に、本実施例の半導体装置102では、p
−バリアハイト調整領域137,147が設けられていることにより、ショットキー界面150,152のバリア高さが高く調整され、逆電流が良好に制限される。上述したように、ダイオード領域108では、順バイアスの印加時においてp
+コンタクト領域144およびpアノード領域124からn
−ドリフト領域114への正孔の注入が抑制されており、IGBT領域106では、順バイアスの印加時においてp
+コンタクト領域136およびpボディ領域118からn
−ドリフト領域114への正孔の注入が抑制されている。従って、半導体装置102は、逆回復電流が小さく、逆回復時間が短い。本実施例の半導体装置102によれば、n
−ドリフト領域114のライフタイム制御を行うことなく、スイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0086】
また、本実施例の半導体装置102では、エミッタ/アノード電極148とコレクタ/カソード電極146の間に逆バイアスが印加されると、IGBT領域106では、ショットキー界面150から伸びる空乏層だけでなく、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。さらに、n
−ドリフト領域114のトレンチ126の先端部近傍に電界が集中することで、ショットキー界面150にかかる電界と、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合にかかる電界が軽減される。同様に、ダイオード領域108では、ショットキー界面152から伸びる空乏層だけでなく、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。さらに、n
−ドリフト領域114のトレンチ126の先端部近傍に電界が集中することで、ショットキー界面152にかかる電界と、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合にかかる電界が軽減される。本実施例の半導体装置102によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0087】
なお、
図40に示すように、本実施例の半導体装置102において、IGBT領域106にはnバリア領域116、nピラー領域134、p
−バリアハイト調整領域137を形成するものの、ダイオード領域108にはnバリア領域122、nピラー領域142、p
−バリアハイト調整領域147を形成しない構成とすることもできる。このような構成とした場合でも、IGBT領域106におけるスイッチング損失を低減し、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。また、これとは逆に、本実施例の半導体装置102において、ダイオード領域108にはnバリア領域122、nピラー領域142、p
−バリアハイト調整領域147を形成するものの、IGBT領域106にはnバリア領域116、nピラー領域134、p
−バリアハイト調整領域137を形成しない構成とすることもできる。このような構成とした場合でも、ダイオード領域108における逆回復電流を低減し、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0088】
(実施例9)
図14に示すように、本実施例の半導体装置162は、実施例8の半導体装置102とほぼ同様の構成を備えている。半導体装置162は、シリコンの半導体基板164を用いて形成されている。半導体基板164は、実施例8の半導体基板104とほぼ同様の構成を備えている。半導体基板164では、IGBT領域106において、n
−ドリフト領域114とnバリア領域116の間に、p型半導体領域であるp電界進展防止領域166が形成されており、ダイオード領域108において、n
−ドリフト領域114とnバリア領域122の間に、p型半導体領域であるp電界進展防止領域168が形成されている。p電界進展防止領域166およびp電界進展防止領域168の不純物濃度は1×10
15〜1×10
19[cm
-3]程度である。また、p電界進展防止領域166およびp電界進展防止領域168の厚みは0.5〜3.0[μm]程度である。IGBT領域106において、トレンチ126は、pボディ領域118の上側表面からnバリア領域116およびp電界進展防止領域166を貫通して、n
−ドリフト領域114の内部まで達している。ダイオード領域108において、トレンチ126は、pアノード領域124の上側表面からnバリア領域122およびp電界進展防止領域168を貫通して、n
−ドリフト領域114の内部まで達している。
【0089】
本実施例の半導体装置162によれば、実施例8の半導体装置102と同様に、エミッタ/アノード電極148とコレクタ/カソード電極146の間に順バイアスが印加される際に、ダイオード領域108では、p
+コンタクト領域144およびpアノード領域124からn
−ドリフト領域114への正孔の注入が抑制されており、IGBT領域106では、p
+コンタクト領域136およびpボディ領域118からn
−ドリフト領域114への正孔の注入が抑制されている。従って、順バイアスから逆バイアスへ切り換わる際の、逆回復電流を小さくし、逆回復時間を短くすることができる。従って、スイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0090】
また、本実施例の半導体装置162によれば、エミッタ/アノード電極148とコレクタ/カソード電極146の間に逆バイアスが印加されると、IGBT領域106では、ショットキー界面150から伸びる空乏層と、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合の界面から伸びる空乏層だけでなく、n
−ドリフト領域114とp電界進展防止領域166の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。さらに、n
−ドリフト領域114のトレンチ126の先端部近傍に電界が集中することで、ショットキー界面150にかかる電界と、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合にかかる電界と、n
−ドリフト領域114とp電界進展防止領域166の間のpn接合にかかる電界が軽減される。同様に、ダイオード領域108では、ショットキー界面152から伸びる空乏層と、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合の界面から伸びる空乏層だけでなく、n
−ドリフト領域114とp電界進展防止領域168の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。さらに、n
−ドリフト領域114のトレンチ126の先端部近傍に電界が集中することで、ショットキー界面152にかかる電界と、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合にかかる電界と、n
−ドリフト領域114とp電界進展防止領域168の間のpn接合にかかる電界が軽減される。本実施例の半導体装置162によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0091】
また、本実施例の半導体装置162によれば、エミッタ/アノード電極148とコレクタ/カソード電極146の間に逆バイアスが印加される際に、ダイオード領域108ではp電界進展防止領域168とnドリフト領域114の間のpn接合によって逆電流が制限されるので、ショットキー界面152を通過するリーク電流が低減し、IGBT領域106では、p電界進展防止領域166とnドリフト領域114の間のpn接合によって逆電流が制限されるので、ショットキー界面150を通過するリーク電流が低減する。本実施例の半導体装置162によれば、逆バイアス印加時のリーク電流を低減することができる。
【0092】
さらに、本実施例の半導体装置162では、IGBT領域106のゲート電極130に電圧を印加してIGBT領域106を駆動する場合に、IGBT領域106においてコレクタ/カソード電極146からエミッタ/アノード電極148へ流れる電流がp電界進展防止領域166によって抑制されるため、IGBT領域106の飽和電流を低減することが出来る。
【0093】
なお、本実施例の半導体装置162の各構成要素は、
図15や
図44に示すように、3次元的に配置することもできる。
図15および
図44では、各構成要素の配置を明瞭にするために、コレクタ/カソード電極146およびエミッタ/アノード電極148を図示していない。
【0094】
また、本実施例の半導体装置162の各構成要素は、
図45、
図46あるいは
図47に示すように、3次元的に配置することもできる。
図45,
図46および
図47では、各構成要素の配置を明瞭にするために、コレクタ/カソード電極146およびエミッタ/アノード電極148を図示していない。
図45,
図46および
図47に示す配置では、半導体装置162を上面から平面視したときに、ゲート電極130やゲート電極140が縦横に交差しており、ゲート電極130,140の内側コーナー部に対して、pボディ領域118やpアノード領域124が絶縁膜128,138を挟んで対向するように配置されている。このような構成とすると、IGBT領域106やダイオード領域108にオン電流が流れる際に、ゲート電極130,140の内側コーナー部近傍のn
−ドリフト領域114の正孔濃度が増加するため、伝導度変調効果を増大させることができる。IGBT領域106やダイオード領域108のオン抵抗を低減することができる。
【0095】
なお、
図41に示すように、本実施例の半導体装置162において、IGBT領域106にはp電界進展防止領域166、nバリア領域116、nピラー領域134、p
−バリアハイト調整領域137を形成するものの、ダイオード領域108にはp電界進展防止領域168、nバリア領域122、nピラー領域142、p
−バリアハイト調整領域147を形成しない構成とすることもできる。このような構成とした場合でも、IGBT領域106におけるスイッチング損失を低減し、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。また、IGBT領域106における逆バイアス印加時のリーク電流を低減し、飽和電流を低減することが出来る。また、これとは逆に、本実施例の半導体装置162において、ダイオード領域108にはp電界進展防止領域168、nバリア領域122、nピラー領域142、p
−バリアハイト調整領域147を形成するものの、IGBT領域106にはp電界進展防止領域166、nバリア領域116、nピラー領域134、p
−バリアハイト調整領域137を形成しない構成とすることもできる。このような構成とした場合でも、ダイオード領域108における逆回復電流を低減し、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0096】
(実施例10)
図16に示すように、本実施例の半導体装置172は、実施例8の半導体装置102とほぼ同様の構成を備えている。本実施例の半導体装置172では、ダイオード領域108のn
+カソード領域120に、高濃度p型半導体領域であるp
+カソードショート領域174が、所定の間隔を隔てて複数形成されている点で、実施例8の半導体装置102と異なる。本実施例では、p
+カソードショート領域174の不純物濃度は1×10
17〜5×10
20[cm
-3]程度である。本実施例の半導体装置172によれば、順バイアスの印加時において、n
+カソード領域120からn
−ドリフト領域114への電子の注入が抑制されているので、実施例8の半導体装置102に比べて、逆回復電流をさらに小さくし、逆回復時間をさらに短くすることができる。本実施例の半導体装置172によれば、さらにスイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0097】
(実施例11)
図17に示すように、本実施例の半導体装置182は、実施例9の半導体装置162とほぼ同様の構成を備えている。本実施例の半導体装置182では、ダイオード領域108のn
+カソード領域120に、p
+カソードショート領域174が、所定の間隔を隔てて複数形成されている点で、実施例9の半導体装置162と異なる。本実施例の半導体装置182によれば、順バイアスの印加時において、n
+カソード領域120からn
−ドリフト領域114への電子の注入が抑制されているので、実施例9の半導体装置162に比べて、逆回復電流をさらに小さくし、逆回復時間をさらに短くすることができる。本実施例の半導体装置182によれば、さらにスイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0098】
(実施例12)
図18に示すように、本実施例の半導体装置202は、シリコンの半導体基板204を用いて形成されている。半導体基板204は、高濃度n型半導体領域であるn
+カソード領域206と、n型半導体領域であるnバッファ領域208と、低濃度n型半導体領域であるn
−ドリフト領域210が順に積層されている。本実施例では、n
+カソード領域206の不純物濃度は1×10
17〜5×10
20[cm
-3]程度であり、nバッファ領域208の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19[cm
-3]程度であり、n
−ドリフト領域210の不純物濃度は1×10
12〜1×10
15[cm
-3]程度である。
【0099】
n
−ドリフト領域210の上側表面には、n型半導体領域であるnバリア領域212が、所定の間隔を隔てて複数形成されている。nバリア領域212の上型表面には、p型半導体領域であるpアノード領域214が部分的に形成されている。pアノード領域214の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域216と低濃度p型半導体であるp
−バリアハイト調整領域217の組合せが形成されている。nピラー領域216とp
−バリアハイト調整領域217の組合せは、pアノード領域214を貫通して、nバリア領域212の上側表面まで達するように形成されている。nピラー領域216は、nバリア領域212とアノード電極224の間を伸びており、nバリア領域212に接触して形成されている。p
−バリアハイト調整領域217は、nピラー領域216とアノード電極224の間に位置しており、nピラー領域216とアノード電極224に接触して形成されている。なお、p
−バリアハイト領域217は、nピラー領域216の不純物濃度よりも薄いn型半導体領域であってもよく、i型半導体であってもよい。また、pアノード領域214の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるp
+コンタクト領域218と、高濃度n型半導体領域であるn
+エミッタ領域220がそれぞれ形成されている。本実施例では、nバリア領域212の不純物濃度は1×10
15〜1×10
18[cm
-3]程度であり、pアノード領域214の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19[cm
-3]程度であり、nピラー領域216の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19[cm
-3]程度であり、p
−バリアハイト調整領域217の不純物濃度は、pアノード領域214よりも薄く調整されており、1×10
14〜1×10
17[cm
-3]程度であり、p
+コンタクト領域218の不純物濃度は1×10
17〜1×10
20[cm
-3]程度であり、n
+エミッタ領域220の不純物濃度は1×10
17〜1×10
20[cm
-3]程度である。また、nバリア領域212の厚さは0.5〜3.0[μm]程度であり、p
−バリアハイト調整領域217の厚さは0.01〜0.5[μm]程度である。なお、p
−バリアハイト調整領域217をn型半導体領域で構成した場合、バリアハイト調整領域の不純物濃度は1×10
14〜1×10
17[cm
-3]程度に調整されてもよい。p
−バリアハイト調整領域217をi型半導体の場合、バリアハイト調整領域には不純物が添加されていないノンドープであってもよい。
【0100】
半導体基板204の下側表面には、金属製のカソード電極222が形成されている。カソード電極222は、n
+カソード領域206とオーミック接合によって接合している。半導体基板204の上側表面には、金属製のアノード電極224と、金属製のゲート電極226が形成されている。アノード電極224は、ショットキー界面228を介して、p
−バリアハイト調整領域217とショットキー接合している。本実施例では、ショットキー接合のバリア高さは0.5〜0.9[eV]程度である。また、アノード電極224は、pアノード領域214、p
+コンタクト領域218およびn
+エミッタ領域220の一部とオーミック接合によって接合している。ゲート電極226は、絶縁膜230を介してn
−ドリフト領域210、nバリア領域212、pアノード領域214およびn
+エミッタ領域220の一部と対向するように配置されている。ゲート電極226は、図示しないゲート電極端子に導通している。
【0101】
本実施例の半導体装置202は、ドレイン電極に相当するカソード電極222と、ドレイン領域に相当するn
+カソード領域206と、nバッファ領域208と、n
−ドリフト領域210と、ボディ領域に相当するpアノード領域214と、ソース領域に相当するn
+エミッタ領域220と、ソース電極に相当するアノード電極224と、n
+エミッタ領域220とn
−ドリフト領域210の間のpアノード領域214に対して絶縁膜230を挟んで対向するゲート電極226を備える縦型のMOSFETの構造を有している。
【0102】
本実施例の半導体装置202では、n
−ドリフト領域210とpアノード領域214の間にnバリア領域212が形成されており、アノード電極224とショットキー界面228を介してショットキー接合するp
−バリアハイト調整領域217を介してnバリア領域212がアノード電極224と導通している。このような構成とすることによって、アノード電極224とカソード電極222の間の寄生ダイオードについて、逆回復特性を改善して、スイッチング損失を低減することができる。また、アノード電極224とカソード電極222の間の逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0103】
(実施例13)
図19に示すように、本実施例の半導体装置232は、実施例12の半導体装置202とほぼ同様の構成を備えている。本実施例の半導体装置232も、実施例12の半導体装置202と同様に、縦型のMOSFETの構造を有している。本実施例の半導体装置232では、n
−ドリフト領域210とnバリア領域212の間に、p型半導体領域であるp電界進展防止領域234が形成されている。p電界進展防止領域234の不純物濃度は1×10
15〜1×10
19[cm
-3]程度である。また、p電界進展防止領域234厚さは0.5〜3.0[μm]程度である。
【0104】
本実施例の半導体装置232によれば、実施例12の半導体装置202と同様に、アノード電極224とカソード電極222の間の寄生ダイオードについて、逆回復特性を改善して、スイッチング損失を低減することができる。
【0105】
また、本実施例の半導体装置232では、n
−ドリフト領域210とnバリア領域212の間にp電界進展防止領域234が形成されているので、実施例12の半導体装置202に比べて、アノード電極224とカソード電極222の間の逆バイアスに対する耐圧を向上し、逆バイアス時のリーク電流を低減することができる。
【0106】
(実施例14)
図20に示すように、本実施例の半導体装置242は、実施例12の半導体装置202とほぼ同様の構成を備えている。本実施例の半導体装置242では、n
+カソード領域206において、高濃度p型半導体領域であるp
+コレクタ領域244が部分的に形成されている。本実施例では、p
+コレクタ領域244の不純物濃度は1×10
17〜5×10
20[cm
-3]程度である。
【0107】
半導体装置242は、プレーナ型のIGBTとフリーホイーリングダイオードが逆並列に接続された構造を有している。すなわち、コレクタ電極に相当するカソード電極222と、p
+コレクタ領域244と、nバッファ領域208と、n
−ドリフト領域210と、pアノード領域214と、n
+エミッタ領域220と、エミッタ電極に相当するアノード電極224と、絶縁膜230と、ゲート電極226によって、プレーナ型のIGBTを構成しており、カソード電極222と、n
+カソード領域206と、nバッファ領域208と、n
−ドリフト領域210と、pアノード領域214と、p
+コンタクト領域218と、アノード電極224によって、フリーホイーリングダイオードを構成している。本実施例の半導体装置242は、上記のようなIGBTとダイオードのそれぞれについて、n
−ドリフト領域210とpアノード領域214の間に形成されたnバリア領域212と、nバリア領域212とアノード電極224を接続するように形成されており、アノード電極224とショットキー接合するp
−バリアハイト調整領域217が付加された構成を有している。
【0108】
本実施例の半導体装置242では、アノード電極224とカソード電極222の間に順バイアスが印加される際に、pアノード領域214およびp
+コンタクト領域218からn
−ドリフト領域210への正孔の注入が抑制される。従って、逆回復特性を向上し、スイッチング損失を低減することができる。
【0109】
また、本実施例の半導体装置242では、アノード電極224とカソード電極222の間に逆バイアスが印加されると、ショットキー界面228から伸びる空乏層だけでなく、pアノード領域214とnバリア領域212の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。従って、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0110】
(実施例15)
図21に示すように、本実施例の半導体装置252は、実施例14の半導体装置242とほぼ同様の構成を備えている。本実施例の半導体装置252では、n
−ドリフト領域210とnバリア領域212の間に、p型半導体領域であるp電界進展防止領域234が形成されている。p電界進展防止領域234の不純物濃度は1×10
15〜1×10
19[cm
-3]程度である。また、p電界進展防止領域234厚さは0.5〜3.0[μm]程度である。半導体装置252は、プレーナ型のIGBTとフリーホイーリングダイオードが逆並列に接続された構造を有している。
【0111】
本実施例の半導体装置252によれば、アノード電極224とカソード電極222の間に順バイアスが印加される際に、pアノード領域214およびp
+コンタクト領域218からn
−ドリフト領域210への正孔の注入が抑制される。従って、逆回復特性を向上し、スイッチング損失を低減することができる。
【0112】
また、本実施例の半導体装置252では、アノード電極224とカソード電極222の間に逆バイアスが印加されると、ショットキー界面228から伸びる空乏層と、pアノード領域214とnバリア領域212の間のpn接合の界面から伸びる空乏層だけでなく、p電界進展防止領域234とn
−ドリフト領域210の間のpn接合から伸びる空乏層によっても電界が分担される。従って、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0113】
また、本実施例の半導体装置252では、p電界進展防止領域234とn
−ドリフト領域210の間のpn接合によって、逆電流が制限される。従って、ショットキー界面228を通過するリーク電流が低減される。
【0114】
さらに、本実施例の半導体装置252では、ゲート電極226に電圧を印加してIGBTを駆動する場合に、コレクタ電極に相当するカソード電極222からエミッタ電極に相当するアノード電極224へ流れる電流がp電界進展防止領域234によって抑制されるため、IGBTの飽和電流を低減することができる。
【0115】
(実施例16)
図22に示すように、本実施例のダイオード302は、実施例1のダイオード2とほぼ同様の構成を備えている。本実施例のダイオード302は、nピラー領域16とp
−バリアハイト調整領域17の組合せの代わりに、金属製のピラー電極16aと低濃度p型半導体のp
−バリアハイト調整領域17aの組合せを備えている。ピラー電極16aは、nバリア領域12とアノード電極22の間を伸びており、アノード電極22に接触して形成されている。p
−バリアハイト調整領域17aは、ピラー電極16aとnバリア領域12の間に位置しており、ピラー電極16aとnバリア領域12に接触して形成されている。なお、p
−バリアハイト領域17aは、nバリア領域12の不純物濃度よりも薄いn型半導体領域であってもよく、i型半導体であってもよい。ピラー電極16aとp
−バリアハイト調整領域17aの組合せは、半導体基板4の上側表面にpアノード領域14を貫通してnバリア領域12まで達するトレンチを形成し、そのトレンチ内に露出するnバリア領域12の表面にイオン注入法を利用してp
−バリアハイト調整領域17aを形成した後に、そのトレンチに金属を充填することで形成される。ピラー電極16aはアノード電極22と導通している。ピラー電極16aは、p
−バリアハイト調整領域17aとショットキー界面24aを介してショットキー接合している。
【0116】
本実施例のダイオード302では、アノード電極22とカソード電極20の間に順バイアスが印加されると、ピラー電極16aとnバリア領域12が短絡する。このとき、nバリア領域12とアノード電極22の電位差はショットキー界面24aでの電圧降下とほぼ等しくなる。ショットキー界面24aでの電圧降下は、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合のビルトイン電圧よりも十分に小さいので、p
+コンタクト領域18やpアノード領域14からn
−ドリフト領域10への正孔の注入が抑制される。
【0117】
次いで、アノード電極22とカソード電極20の間の電圧が順バイアスから逆バイアスに切り替わると、ピラー電極16aとp
−バリアハイト調整領域17aの間のショットキー界面24aによって逆電流が制限される。特に、本実施例のダイオード302では、p
−バリアハイト調整領域17aが設けられていることにより、ショットキー界面24aのバリア高さが高く調整され、逆電流が良好に制限される。本実施例のダイオード302では、順バイアスの印加時においてp
+コンタクト領域18およびpアノード領域14からn
−ドリフト領域10への正孔の注入が抑制されているから、逆回復電流が小さく、逆回復時間が短い。本実施例のダイオード302によれば、n
−ドリフト領域10のライフタイム制御を行うことなく、スイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0118】
また、本実施例のダイオード302では、アノード電極22とカソード電極20の間に逆バイアスが印加されると、p
−バリアハイト調整領域17aとピラー電極16aの間のショットキー界面24aから伸びる空乏層だけでなく、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。これにより、p
−バリアハイト調整領域17aとピラー電極16aの間のショットキー界面24aにかかる電界が軽減される。本実施例のダイオード302によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することが出来る。
【0119】
また、本実施例のダイオード302では、順バイアスの印加時におけるnバリア領域12とアノード電極22の間の電位差を、実施例1のダイオード2に比べて、より小さくすることができる。p
+コンタクト領域18やpアノード領域14からn
−ドリフト領域10への正孔の注入をさらに抑制し、スイッチング損失をさらに低減することができる。
【0120】
(実施例17)
図23に示すように、本実施例のダイオード304は、実施例2のダイオード32とほぼ同様の構成を備えている。本実施例のダイオード304は、nピラー領域16とp
−バリアハイト調整領域17の組合せの代わりに、金属製のピラー電極16aと低濃度p型半導体のp
−バリアハイト調整領域17aの組合せを備えている。ピラー電極16aは、nバリア領域12とアノード電極22の間を伸びており、アノード電極22に接触して形成されている。p
−バリアハイト調整領域17aは、ピラー電極16aとnバリア領域12の間に位置しており、ピラー電極16aとnバリア領域12に接触して形成されている。なお、p
−バリアハイト領域17aは、バリア領域12の不純物濃度よりも薄いn型半導体領域であってもよく、i型半導体であってもよい。ピラー電極16aとp
−バリアハイト調整領域17aの組合せは、半導体基板4の上側表面にpアノード領域14を貫通してnバリア領域12まで達するトレンチを形成し、そのトレンチ内に露出するnバリア領域12の表面にイオン注入法を利用してバリアハイト調整領域17aを形成した後に、そのトレンチに金属を充填することで形成される。ピラー電極16aはアノード電極22と導通している。ピラー電極16aは、p
−バリアハイト調整領域17aとショットキー界面24aを介してショットキー接合している。
【0121】
ダイオード304の動作について説明する。アノード電極22とカソード電極20の間に順バイアスが印加されると、ピラー電極16aとnバリア領域12が短絡する。このとき、nバリア領域12とアノード電極22の電位差はショットキー界面24aでの電圧降下とほぼ等しくなる。ショットキー界面24aでの電圧降下は、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合のビルトイン電圧よりも十分に小さいので、p
+コンタクト領域18やpアノード領域14からn
−ドリフト領域10への正孔の注入が抑制される。なお、nバリア領域12とp電界進展防止領域36の間にはpn接合が存在するが、p電界進展防止領域36のp型不純物濃度は低く、p電界進展防止領域36の厚みは薄いため、アノード電極22とカソード電極20の間の順電流に及ぼす影響は少ない。
【0122】
次いで、アノード電極22とカソード電極20の間の電圧が順バイアスから逆バイアスに切り替わると、ピラー電極16aとp
−バリアハイト調整領域17aの間のショットキー界面24aによって逆電流が制限される。また、n
−ドリフト領域10とp電界進展防止領域36の間のpn接合によっても逆電流が制限される。上述したように、本実施例のダイオード304では、順バイアスの印加時においてp
+コンタクト領域18およびpアノード領域14からn
−ドリフト領域10への正孔の注入が抑制されているから、逆回復電流が小さく、逆回復時間が短い。本実施例のダイオード304によれば、n
−ドリフト領域10のライフタイム制御を行うことなく、スイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0123】
また、本実施例のダイオード304では、アノード電極22とカソード電極20の間に逆バイアスが印加されると、p
−バリアハイト調整領域17aとピラー電極16aの間のショットキー界面24aから伸びる空乏層と、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面から伸びる空乏層だけでなく、n
−ドリフト領域10とp電界進展防止領域36の間のpn接合の界面でも電界が分担される。これにより、p
−バリアハイト調整領域17aとピラー電極16aの間のショットキー界面24aにかかる電界と、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合にかかる電界が軽減される。本実施例のダイオード304によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することが出来る。
【0124】
また、本実施例のダイオード304では、順バイアスの印加時におけるnバリア領域12とアノード電極22の間の電位差を、実施例2のダイオード32に比べて、より小さくすることができる。p
+コンタクト領域18やpアノード領域14からn
−ドリフト領域10への正孔の注入をさらに抑制し、スイッチング損失をさらに低減することができる。
【0125】
(その他の実施例)
図4に示すダイオード42、
図5に示すダイオード52、
図7に示すダイオード62、
図8に示すダイオード66、
図9に示すダイオード68、
図10に示すダイオード70のそれぞれにおいて、nピラー領域16を上述のピラー電極16aで置き換えることによって、
図24に示すダイオード306、
図25に示すダイオード308、
図26に示すダイオード310、
図27に示すダイオード312、
図28に示すダイオード314、
図29に示すダイオード316のように構成することもできる。
【0126】
また、
図11に示す半導体装置72、
図12に示す半導体装置82のそれぞれにおいて、nピラー領域16とp
−バリアハイト調整領域17の組合せを上述のピラー電極16aとp
−バリアハイト調整領域17aの組合せで置き換えることによって、
図30に示す半導体装置318、
図31に示す半導体装置320のように構成することもできる。
【0127】
また、
図13および
図40に示す半導体装置102、
図14および
図41に示す半導体装置162、
図16に示す半導体装置172、
図17に示す半導体装置182のそれぞれにおいて、nピラー領域134、142とp
−バリアハイト調整領域137、147の組合せを金属製のピラー電極134a、142aと低濃度p型半導体のp
−バリアハイト調整領域137a、147aの組合せで置き換えることによって、
図32および
図42に示す半導体装置322、
図33および
図43に示す半導体装置324、
図34に示す半導体装置326、
図35に示す半導体装置328のように構成することもできる。ここで、ピラー電極134aは、エミッタ/アノード電極148と導通しており、pボディ領域118を貫通している。p
−バリアハイト調整領域137aは、nバリア領域116とショットキー界面150aを介してショットキー接合している。ピラー電極142aは、エミッタ/アノード電極148と導通しており、pアノード領域124を貫通している。p
−バリアハイト調整領域147aは、nバリア領域122とショットキー界面152aを介してショットキー接合している。
【0128】
また、
図18に示す半導体装置202、
図19に示す半導体装置232、
図20に示す半導体装置242、
図21に示す半導体装置252のそれぞれにおいて、nピラー領域216とバリアハイト調整領域217の組合せを金属製のピラー電極216aと低濃度p型半導体のp
−バリアハイト調整領域217aの組合せで置き換えることによって、
図36に示す半導体装置330、
図37に示す半導体装置332、
図38に示す半導体装置334、
図39に示す半導体装置336のように構成することもできる。ここで、ピラー電極216aは、アノード電極224と導通しており、pアノード領域214を貫通している。p
−バリアハイト調整領域217aは、nバリア領域212とショットキー界面228aを介してショットキー接合している。
【0129】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0130】
例えば、上記の実施例では、半導体材料としてシリコンを用いる場合について説明したが、本発明は、炭化シリコン、窒化ガリウム、ヒ化ガリウムなどの半導体材料を用いる場合についても、同様に適用することができる。
【0131】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。