(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る蓄電池収納箱を備える蓄電池システム(組電池)を示す図である。
蓄電池システム10は、風力発電や太陽光発電の発電システムに用いられる産業用の組電池であり、複数の蓄電池(単電池に相当)11を横並びで収納する複数の蓄電池収納箱22を備えている。これら蓄電池収納箱22は、多段に積み上げられ、上下段に隣接する前記蓄電池収納箱22の下段の上部のフレーム26と上段の下部のフレーム27との4隅が、ボルト及びナットからなる連結部材(不図示)で各々連結されている。
本実施形態では、蓄電池収納箱22を4段とし、各蓄電池収納箱22に5個の蓄電池11が収納されており、合計20個の蓄電池11を組込み直列に接続した組電池を構成している。但し、この構成に限らず、蓄電池収納箱22の段数や蓄電池11の収納数は適宜に変更可能である。なお、各蓄電池収納箱22は同じ構成である。
前記蓄電池システム10は、非常用電源や自家発電装置の起動等の災害時のバックアップ等にも好適であり、用途は限定されない。
【0012】
図2は、一段分(最上段)の蓄電池収納箱22を正面から見た図であり、
図3は
図2を上方から見た図である。
蓄電池収納箱22は、底板23と、底板23の上方に間隔を空けて配置される上板24と、底板23と上板24の左右端部間をつなぐ左右一対の側板25とを備え、前面が開口する前面開口収納部22A(
図2)を有する箱形状(背面は閉口)に形成されている。この蓄電池収納箱22を構成する各板23〜25は、鉄やステンレス鋼等の金属板で製作されている。
図1及び
図3に示すように、上板24の上面には、前後に間隔を空けて一対の金属製の上フレーム26が溶接接続され、底板23の下面にも、前後に間隔を空けて一対の金属製の下フレーム27が溶接接続されている。これら上下のフレーム26、27は、上板24及び底板23の左右に張り出し、この張り出した部分に、上下の蓄電池収納箱22を連結するための連結部材(不図示)を通す貫通孔が形成されている。
また、下段の蓄電池収納箱22の上フレーム26の上には、上段の蓄電池収納箱22の下フレーム27が載置される。このため、上下の蓄電池収納箱22の間には、空間部22Kが形成され、この空間部22Kは、上下の蓄電池収納箱22間を左右に連続するので、蓄電池収納箱22の外空間に連通する。
【0013】
蓄電池11は、制御弁式鉛蓄電池であり、
図2乃至
図4に示すように、直方体形状の電槽12と、この電槽12の前部を構成する電槽蓋13とを備えており、電槽蓋13に、正極端子15A、負極端子15B及び制御弁15Cが取り付けられている。なお、以下の説明において、正極端子15A,負極端子15Bを特に区別する必要が無い場合は端子15と表記する。
蓄電池11は、蓄電池収納箱22に装填されて、端子15等が取り付けられた電槽蓋13を、蓄電池収納箱22の前方に向け、且つ、蓄電池収納箱22よりも前方に出た状態とされる。このようにして蓄電池11を装填した後、蓄電池収納箱22の前部に押さえ板(止め金具とも称する)31が固定される。
【0014】
図2に示すように、各押さえ板31は、上下一対の締結部材32によって蓄電池収納箱22の底板23と上板24とに固定され、各蓄電池11を前方から押さえ、通常の使用時において蓄電池収納箱22から蓄電池11が抜け落ちないようにしている。この押さえ板31により、地震や転倒により蓄電池11が抜け落ちるのを防止することが可能になる。このようにして単一の蓄電池収納箱22に複数の蓄電池11を装填し、押さえ板31で固定したものを「ユニット型蓄電池」とも言う。
なお、押さえ板31は底板23と上板24とに固定する例を示したが、底板23(上板24)の左右に差し渡るように設けても良い。
【0015】
蓄電池システム10の使用時には、各蓄電池11の端子15同士が、導体である接続板33(
図1、
図2参照)によって電気的に接続した状態とされる。接続板33は、隣接する蓄電池11の端子15同士を接続することによって、必要個数の蓄電池11を直列或いは並列に接続し、必要電圧や必要容量を確保した「組電池」を構成する。
なお、本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、接続板33を銅板で形成し、蓄電池11を直列に接続した場合を示している。接続板33は、銅板に限らず、他の金属板や配線といった他の導体を用いることも可能である。
【0016】
図4は、蓄電池11の外観図である。
蓄電池11は、正極板と負極板とを微細ガラス繊維を主体としたマット状セパレータを介して交互に積層し、同極性同士の極板の耳部を溶接によって接続することにより極板群(不図示)を構成し、この極板群を電槽12に収納し、この電槽12に、開口部を有する電槽蓋13を溶着或いは接着剤で接着し、開口部から電解液を注液して電槽化成を行い、開口部に制御弁15Cを覆い被せて製造されている。
電槽12は、一端が開口する有底箱形状を有し、ABSやPP等の合成樹脂が用いられ、射出成型によって作製される。より具体的には、電槽12は、互いに対向する一対の短辺と一対の長辺とから構成される長方形断面に形成されており、短辺側の側面(以下、短辺側側面と言う)12Aが、極板群を挟んで互いに対向する一対の側面(側壁)に相当し、リブ12Rを備えるリブ付き側面(リブ付き側壁)に形成されている。また、長辺側の側面(以下、長辺側側面と言う)12Bは、リブを備えないリブ無し側面(リブ無し側壁)に形成されている。
【0017】
なお、
図4中、符号αで示す矢印方向が極板積層方向である。つまり、短辺側側面12Aが極板積層方向と直交する面であり、長辺側側面12Bが、極板積層方向と平行な面である。
極板を圧迫する力(以下、群圧)は、極板の積層方向と直交する面に作用するため、一対の短辺側側面12Aを各々外側に膨出させる力として作用する。
本構成では、一対の短辺側側面12Aにリブ12Rを形成しているため、リブ12Rを形成しない場合と較べて、短辺側側面12Aの強度が向上している。このため、群圧による短辺側側面12Aの変形を抑え、群圧による蓄電池11全体の変形を抑えることができる。なお、一対の短辺側側面12Aに設けられるリブ12Rの本数や間隔等の設け方は同じである。
【0018】
詳述すると、これらリブ12Rは、短辺側側面12Aの長手方向(
図4中、矢印βで示す方向)に沿って短辺側側面12Aの一端から他端に渡って連続する凸条の縦リブに形成されており、互いに間隔を空けて複数本(本構成では5本)形成されている。
このように、リブ12Rを短辺側側面12Aの長手方向に沿って延ばしたため、長手方向の曲げ強度を向上することができる。一般に長手方向は短手方向よりも曲がりやすいため、上記リブ12Rを設けたことによって、長手方向の曲がりを効果的に抑制し、群圧による短辺側側面12Aの変形を効果的に抑えることができる。
さらに、リブ12Rを複数本設けているため、これによっても、短辺側側面12Aを曲げにくくし、群圧による変形をより抑えることが可能である。
【0019】
なお、これらリブ12Rの本数や幅を増やすほど曲げ強度を高く(群圧による変形を抑制)することができるため、幅や本数を調整すれば、曲げ強度を容易に調整することが可能である。
このため、寿命要因の1つである正極活物質の軟化現象を抑制するために群圧を高く設計する場合、リブ12Rの本数や幅を増やせば良い。また、電槽12の材料に、PPのような安価ではあるが、比較的強度が弱い材料を用いた場合にも、リブ12Rの本数や幅を増やすことによって、適正な曲げ強度に容易に調整することができる。
なお、リブ12Rの本数や幅を増やすと、蓄電池11の重量増や材料増によるコスト増大を招いてしまうことがある。これを回避するためには、必要とされる強度に応じてリブ12Rの本数や幅等を適宜調整すれば良い。また、リブ12Rの高さ調整やリブ12Rの形状変更によっても強度が変わるので、これらを適宜に組み合わせて、必要とされる強度に調整すれば良い。
【0020】
また、これらのリブ12Rは、同じ高さに設定されており、短辺側側面12Aの一方を下側にした横置き状態にした場合に(
図1、
図2参照)、下側の全てのリブ12Rが底板23に当接するように構成されている。これによって、複数のリブ12Rによって蓄電池11を安定して載置させることができる。
また、これらのリブ12Rは、短辺側側面12Aの長手方向一杯に延び、かつ、互いに間隔を空けて短辺側側面12Aの短手方向に渡って複数形成されるため、これによっても、蓄電池11を安定して載置させることが可能になる。
【0021】
一方、電槽12の長辺側側面12Bは、平坦面に形成されている。平坦面に形成される理由は、蓄電池収納箱22に設けられる仕切り板(仕切り部材)41(
図3参照)と面接触させ、接触面積を確保し易くするためであり、個々の蓄電池11の熱を仕切り板41に効率良く伝えて放熱させることができる。
なお、電槽蓋13は、電槽12と同様の材料を用いて製作され、つまり、ABSやPP等の合成樹脂を用いて射出成型によって作製されている。
【0022】
ここで、蓄電池11は、内部反応や導電部のジュール熱等により発熱し、この発熱が蓄電池11の電池特性や寿命特性に悪影響を及ぼすおそれがある。また、蓄電池温度のばらつきが生じると、特定の蓄電池11の負担が大きくなり、結果的に蓄電池システム10の特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
本実施形態では、上述したように、電槽12の長辺側側面12Bを平坦面とし、この長辺側側面12Bを仕切り板(仕切り部材)41に当接させることによって、蓄電池11と仕切り板41との接触面積を広く確保し、蓄電池11の熱を仕切り板41を介して効率良く放熱させるようにしている。
【0023】
次に、仕切り板41及びその周辺構造を説明する。
図5は、一段分の蓄電池収納箱22を示す図である。なお、
図5では、説明の便宜上、押さえ板31を外し、その他収納箱の詳細を省略した状態を示している。
仕切り板41は、蓄電池11の収納空間を左右に仕切って隣り合う蓄電池11間に配置され、上板24及び底板23に溶接接続されている。なお、
図5の例では、横並びに配置される蓄電池11が5個であるため、仕切り板41は4個設けられている。
【0024】
図6は、仕切り板41の斜視図である。仕切り板41は、熱伝導性が高い金属材料を用いて圧延等で製作された金属板が用いられ、左右一対の側板42と、これら側板42同士を所定距離だけ左右に離して連結する複数の連結体43とを備えている。
仕切り板41は、熱伝導性が高い材料を用いれば良く、蓄電池収納箱22と同じ金属板でも良いし、銅、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の様々な金属材やプラスチック、樹脂等を用いることが可能である。また、仕切り板41の作製方法は、溶接等で接続する接続方法でも良いし、押出成形法、ダイキャスト成形法、ブロー成形法等の成形方法を適用しても良い。
【0025】
連結体43は、左右の側板42間を、その間に上下に貫通する隙間Sを空けて連結する部材である。具体的には、連結体43は、左右の側板42の前縁間及び後縁間を架橋する平板状に形成され、左右の側板42間の上下に開口部KA,KBを形成する。
上記隙間S及び上下の開口部KA,KBによって、仕切り板41の側板42に沿うとともに上下に貫通する貫通孔である空洞部41Aが形成される。これによって、仕切り板41は上下に空気が流通自在に構成される。
この連結体43は、熱伝導性が高い材料で形成されるため、左右の側板42間に温度差がある場合は、高温側から低温側へと迅速に熱移動させる伝熱部材として機能する。これによって、左右の側板42に接する蓄電池11同士の温度のばらつきを抑制すること、つまり、均熱化を図ることができる。また、蓄電池11の熱は、左右の側板42及び連結体43に伝わるので、これらが上板24や底板23に熱を伝える架橋部、及び、仕切り板41内の空洞部41Aに向けて放熱する放熱部としても機能する。
【0026】
より具体的には、この仕切り板41の前後長(=側板42の前後長)LA(
図6参照)は、蓄電池収納箱22の奥行き(前後長)L1(
図3参照)と略同じ長さに形成されている。また、仕切り板41の高さ(=側板42の高さ)HA(
図6参照)は、蓄電池収納箱22の底板23と上板24との離間距離H1(
図2参照)と略同じ長さに形成されている。これによって、仕切り板41は蓄電池収納箱22の底板23と上板24とに当接した状態で立設し、両隣の蓄電池11から仕切り板41に伝わった熱を底板23や上板24に効率良く伝えることができる。
これら仕切り板41は、この仕切り板41の左右の側板42が、隣り合う蓄電池11の長辺側側面12Bと各々密着する間隔で配置されている。これにより、個々の蓄電池11と仕切り板41とを面接触させることができ、蓄電池11と仕切り板41との接触面積を広く確保することできる。
【0027】
ここで、
図7は、比較例を説明する図である。この比較例は、蓄電池11の長辺側側面12Bにリブ12Xを設け、このリブ12Xを仕切り板41に当接させたものである。
この
図7に示すように、長辺側側面12Bとリブ12Xと仕切り板41との間には、熱伝導率が低い空気層(空間)RAが形成されてしまう。このため、蓄電池11からの熱が仕切り板41へ伝わりにくく、放熱量が制限されてしまう。しかも、リブ12Xと仕切り板41との接触面積は小さいため、両隣の蓄電池11に温度差があっても高温側から低温側へと迅速に熱移動せず、個々の蓄電池11の温度ばらつきを抑制することも難しくなる。
【0028】
これに対し、本構成では、蓄電池11の極板積層方向に平行な面(長辺側側面12B)には、リブが形成されず、仕切り板41と面接触可能な平坦面に形成されているので、蓄電池11と仕切り板41との接触面積を広く確保でき、個々の蓄電池11の熱を仕切り板41を介して蓄電池収納箱22に効率良く伝えることができ、また、高温側から低温側への熱移動も促進させることができる。
従って、全ての蓄電池11の温度上昇を効率良く抑制し、個々の蓄電池11の均熱化を図ることが可能になる。
しかも、この仕切り板41は、上板24と底板23との間を架橋するので、蓄電池収納箱22を補強する補強部材としても機能する。さらに、仕切り板41は、蓄電池収納箱22の左右一対の側板25間の蓄電池11の間に介挿されるので、地震等で外部から大きな力が加わった場合に蓄電池11のずれを抑えるずれ抑制部材としても機能する。
また、本構成では、仕切り板41を上板24及び底板23に溶接接続する場合を説明したが、これに限らず、ボルト等の接続等でも良い。要は、仕切り板41を上板24や底板23に接触させ、蓄電池11からの熱を上板24や底板23に伝えやすくしておけば良い。
なお、仕切り板41に空洞部41Aを有するものであれば、仕切り板41は必ずしも上板24及び底板23と溶接等により接続されていなくても良い。
【0029】
また、本構成では、蓄電池収納箱22の上板24及び底板23に複数のスリット(孔)51(
図3、
図5参照)を設けている。これらスリット51は、蓄電池収納箱22に横並びに設けられる仕切り板41と同数設けられており、上板24及び底板23を上下に貫通することで、各仕切り板41の隙間S及び上下の開口部KA,KB(
図6参照)からなる上下貫通の空洞部41Aに各々連通する。
より具体的には、スリット51は、同
図3に示すように、前後方向に長い長方形の孔形状であって、その幅(左右長)WSが、仕切り板41の上下の開口部KA,KBの幅WAよりも狭く、かつ、その前後長LSが、仕切り板41の前後長LAよりも短い形状に形成されている。このため、仕切り板41の位置が左右や前後に多少ずれたとしても、各スリット51を、仕切り板41の上下に貫通する空洞部41Aに連通させることができる。また、仕切り板41の位置が左右や前後に多少ずれたとしても、仕切り板41が上板24及び底板23に接触するので、上板24及び底板23に熱を伝えやすくすることができる。
【0030】
このようにして本構成の蓄電池システム10では、各蓄電池収納箱22を左右に仕切る仕切り板41とスリット51とによって、横並びの蓄電池11間を上下に延びて底板23及び上板24を貫通する通風路55(
図5参照)を形成している。
この通風路55は、上下に延びるとともに上下に貫通するので、蓄電池11の発熱による熱が仕切り板41を介して通風路55内の空気に伝わり、煙突効果により底板23のスリット51から冷気が吸い上げられ、通風路55内で温められた空気を上板24のスリット51から放出させることができる。これによって、熱による上昇気流を生じさせ、対流による通気を促すことができる。
【0031】
以上説明したように、本構成では、左右に並ぶ蓄電池11の熱を、蓄電池11間に設けた仕切り板41を介して上板24及び底板23に伝えて放熱させ、かつ、仕切り板41内を上下に延びる通風路55内の通気によっても、放熱させることができる。これらにより、左右に並ぶ蓄電池11の温度上昇を抑えて均熱化を図ることができる。
【0032】
図8は、蓄電池収納箱22を二段重ねした図である。
二段重ねの場合でも、各蓄電池収納箱22の仕切り板41とスリット51とによって、横並びの蓄電池11間を上下に延びるとともに上下に貫通する通風路55が形成される。このため、最下段の底板23のスリット51から冷気が吸い上げられ、通風路55内で温められた空気が最上段の上板24のスリット51から円滑に排出される。
周知のように、煙突効果(上昇気流の原理で排気を上方に導く効果)は、煙突が長いほど効果が高まるので、蓄電池システム10として実際に使用できる態様(
図1参照)に組み上げた場合の方が一層効率的な放熱が期待できる。
【0033】
多段に重ねた場合には、上下の蓄電池収納箱22の間に左右に連続して外気に連通する空間部22Kが形成されるので、通風路55内の通気によって、空間部22Kからも冷気が吸い上げられる(
図8参照)。これによって、上下の蓄電池収納箱22間の熱を通風路55を経由して効率良く排出することが可能になり、上下の蓄電池11についても均熱化を図ることができる。
【0034】
なお、仕切り板41は、上下に貫通する空洞部(貫通孔)41Aを有する構成に限らず、前後に貫通する貫通孔である空洞部を有する構成でも良く、また、
図9に示すように、上下及び前後に貫通する貫通孔である空洞部41Aを有する構成でも良い。
仕切り板41に、上下、及び/又は、前後に貫通する空洞部41Aを設けた場合には、
図10に例示するように、蓄電池収納箱22に、空洞部41Aと連通する上下、及び/又は、前後に連通する孔であるスリットを設けることが好ましい。
図10の例では、押さえ板31に、前方開口スリット31Aを設け、不図示の背面板に空洞部41Aと連通するスリット(不図示)を設けた場合を示している。前後に空気を通気させることによっても、個々の蓄電池11の温度上昇を効率良く抑え、個々の蓄電池11の温度のばらつきを抑えることが可能になる。
【0035】
上述したスリット51,31A等のスリットや空洞部41Aの幅は、5mm〜50mmの範囲が望ましく、更には、10mm〜30mmが望ましい。スリットや空洞部41Aの幅を大きくすれば、空気を対流させるための空間が大きくなり効果的であるが、その効果は幅の大きさに対して飽和していくこととなる。
また、仕切り板41の厚さを大きくすれば、蓄電池システム10として占有する体積が大きくなるため、スペースファクターとしては不利になる。従って、効果とスペースファクターとの兼ね合いで、10mm〜60mmが望ましく、更には、10mm〜30mmがより望ましい。
また、仕切り板41の空洞部41Aの幅は、全て同じでも良いし、一部の仕切り板41のみ空洞部41Aの幅を変えても良い。なお、スリット51、31A等のスリットの幅や空洞部41Aの幅は仕切り板41の厚さより狭く形成したほうが放熱の観点から好ましい。
【0036】
蓄電池収納箱22を上下に複数段、積み重ねて構成する場合に、全ての段で、空洞部41Aを有する仕切り板41、及び、空洞部41Aに連結するスリットを有する蓄電池収納箱22を用いても良い。また、上段のみ、空洞部41Aを有する仕切り板41、及び、空洞部41Aに連通するスリットを有する蓄電池収納箱22を用いて、下段は、空洞部41Aの無い仕切り板41、及び、スリットが無い蓄電池収納箱22を用いても良い。
複数段の蓄電池収納箱22の上下段ともに、仕切り板41の一部を空洞部41A有り、残りを空洞部41A無しとする揚合には、蓄電池収納箱22は、該空洞部41Aに連通する上下面、及び/又は、前後面のみにスリットを設けても良いし、空洞部41Aの有無に関わらず、仕切り板41に当接する位置の上下面、及び/又は、前後面の全てにスリットを設けても良い。
【0037】
蓄電池収納箱22の中、及び、蓄電池収納箱22の上下段において、仕切り板41の空洞部41Aの有無、及び、蓄電池収納箱22のスリットの有無は、どの様な組み合わせで適用しても良い。全ての蓄電池温度の上昇を抑制する目的の場合には、全ての蓄電池11間に一様に空洞部41Aを適用することで、高い温度上昇の抑制効果が得られる。蓄電池温度を均熱化する目的の場合に、全ての蓄電池11間に一様に空洞部41Aを適用すれば、一定の蓄電池温度の均熱化効果が得られる。さらに、電池温度均熱化を目的とする場合には、蓄電池温度の上昇が特に大きい蓄電池11間のみに空洞部41Aを適用することで、高い蓄電池温度の均熱化効果が得られる。
仕切り板41は、単体の部品として用意して、蓄電池11を組込む作業の際に個々の蓄電池11間に配置しても良いし、予め、蓄電池収納箱22と一体となる様に組み合わせた製品としても良い。また、最初から蓄電池11を仕切ることが可能な板を備えた構造とした蓄電池収納箱22を用いても良い。
【0038】
また、蓄電池収納箱22のスリットや仕切り板41の空洞部41Aは、矩形に限らず、正方形、円形、楕円、正三角、正多角形等の任意の形状で良く、また、その数は、1を含む複数の穴として構成しても良い。但し、蓄電池11と仕切り板41との接触面積を広く確保し効率よく放熱させるためには、電槽12の長辺側側面12Bと当接する仕切り板41とは穴等を形成せず平面とすることが好ましい。
また、蓄電池11、仕切り板41及び蓄電池収納箱22のいずれも工業製品であることから、表面の凹凸や歪み、蓄電池11の質量に伴う撓みなどがあるため、蓄電池11と仕切り板41との間には、僅かながら隙間が生じることがある。更に、蓄電池11の電槽12には、成形用の抜きテーパーが付いている場合がある。従って、蓄電池11と仕切り板41とは当接していることが好ましいが、実用上、蓄電池11と仕切り板41との間には数mmの隙間があっても良い。隙間の幅としては、0mm〜5mmの範囲が望ましく、更には、0mm〜2mmがより望ましい。前記範囲とすることで、個々の蓄電池11の熱を仕切り板41に効率良く伝えて放熱させることができる。
【0039】
次に、本発明の実施例を比較例とともに説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
<比較例1>
図11は、比較例1の制御弁式鉛蓄電池11Xの外観図であり、
図12は、比較例1の制御弁式鉛蓄電池11Xを収納した蓄電池収納箱22Xの外観図である。なお、
図11及び
図12には、上述した構成と同様のものは同一の符号を付して示している。
図11に示すように、この制御弁式鉛蓄電池11X(以下、蓄電池11Xと言う)は、電槽12の全ての側面(短辺側側面12A、長辺側側面12B)にリブ12Rが形成されている。それ以外は、上述した蓄電池11と同様である。
図12に示すように、蓄電池収納箱22Xは、仕切り板41に空洞部41A(
図6参照)が形成されず、かつ、上板24及び底板23にスリット51(
図5参照)が形成されていない点を除いて、上述した蓄電池収納箱22と同様である。なお、前記仕切り板41の厚さは2.5mmとした。また、前記電槽12と前記仕切り板41の側面とは面接触している。
【0041】
この蓄電池11Xは、10時間率定格容量が500Ahであり、5個の蓄電池11Xを蓄電池収納箱22に組み込んで直列接続し、0.1CA(50A)の放電電流で5時間放電を行い、0.1CA(50A)の充電電流で2.45V/セルの定電圧充電を12時間実施した。
その際、個々の蓄電池11Xの負極端子15Bに熱電対を取り付け、個々の電池温度の推移を観察した。
<実施例1>
【0042】
長辺側側面12Bにリブが形成されていない電槽11を用いた以外は、比較例1と同様に評価を行った。
<実施例2>
【0043】
厚さ2.5mmの仕切り板41に幅2mmの貫通孔となる空洞部41Aを形成した以外は、実施例1と同様の電槽11を用いて、比較例1と同様に評価を行った。
<実施例3>
【0044】
厚さ2.5mmの仕切り板41を用い、また、上板24及び底板23に前記仕切り板41と同位置にスリット51(
図5参照)を形成した以外は、実施例1と同様の電槽11を用いて、比較例1と同様に評価を行った。
<実施例4>
【0045】
厚さ7mmの仕切り板41に幅2mmの貫通孔となる空洞部41Aを形成し、上板24及び底板23に幅2mmの空洞部41Aと連通するスリット51(
図5参照)を形成した以外は、実施例1と同様の電槽11を用いて、比較例1と同様に評価を行った。
<実施例5>
【0046】
厚さ10mmの仕切り板41に幅5mmの貫通孔となる空洞部41Aを形成し、上板24及び底板23に幅5mmの空洞部41Aと連通するスリット51(
図5参照)を形成した以外は、実施例1の電槽11を用いて、比較例1と同様に評価を行った。
<実施例6>
【0047】
厚さ30mmの仕切り板41に幅25mmの貫通孔となる空洞部41Aを形成し、上板24及び底板23に幅25mmの空洞部41Aと連通するスリット51(
図5参照)を形成した以外は、実施例1の電槽11を用いて、比較例1と同様に評価を行った。
<実施例7>
【0048】
厚さ30mmの仕切り板41に幅20mmの貫通孔となる空洞部41Aを形成し、上板24及び底板23に幅20mmの空洞部41Aと連通するスリット51(
図5参照)を形成した以外は、実施例1の電槽11を用いて、比較例1と同様に評価を行った。
<実施例8>
【0049】
厚さ30mmの仕切り板41に幅15mmの貫通孔となる空洞部41Aを形成し、上板24及び底板23に幅15mmの空洞部41Aと連通するスリット51(
図5参照)を形成した以外は、実施例1の電槽11を用いて、比較例1と同様に評価を行った。
<実施例9>
【0050】
厚さ60mmの仕切り板41に幅55mmの貫通孔となる空洞部41Aを形成し、上板24及び底板23に幅55mmの空洞部41Aと連通するスリット51(
図5参照)を形成した以外は、実施例1の電槽11を用いて、比較例1と同様に評価を行った。
【0051】
これら評価により得た最大上昇電池温度と最大電池間温度差を表1に示す。
なお、「電槽リブの有無」については、電槽12の全ての側面(短辺側側面12A、長辺側側面12B)にリブ12Rが形成されているものを「有」、電槽12の長辺側側面12Bにリブが形成されていないものを「無」とした。
また、最大上昇電池温度は、評価中の最高電池温度と評価前の電池温度との差である。また、最大電池間温度差は、蓄電池11、11Xが最高温度に到達した際の電池65個中の最高電池温度と最低電池温度との差である。
【0053】
表1に示すように、実施例1乃至9は、比較例1と比べると最大上昇電池温度が抑制されており、かつ、最大電池間温度差も抑制されていることが分かる。実施例1乃至8は、仕切り板41に当接する電槽側面にリブが形成されていないため、個々の蓄電池11からの熱が仕切り板41に伝わりやすく、電池収納箱上板24、底板23から放熱が促進され、温度上昇を抑制し、かつ、温度ばらつきも低減できることを確認することができた。
また、電槽12の極板積層方向と直交する面(短辺側側面12A)にリブ12Rが形成された実施例1乃至9は、電槽12の全ての側面にリブ12Rを設けた比較例1と同様に電槽12の変形を抑制することが可能であることを確認することができた。
なお、実施例1乃至3と実施例4乃至9を比べると、スリット51および空洞部41Aを有する実施例4乃至9の方が、最大上昇電池温度が更に抑制されていることが分かる。このことから、スリット51及び空洞部41Aが温度上昇の抑制に寄与していることを確認することができた。また、最大上昇電池温度を抑制することで最大電池間温度差を抑制することが可能であり、個々の蓄電池11の温度ばらつきもより低減できることを確認することができた。
【0054】
また、実施例6と9を比較すると、最大上昇電池温度、最大電池間温度差ともに同じ結果となった。スリット51や空洞部41Aの幅を大きくすれば、空気を対流させるための空間が大きくなり効果的であるが、スリット51や空洞部41Aの幅の大きさに対して温度上昇の抑制や、温度ばらつきの低減の効果は飽和していくことを確認することができた。
また、実施例6乃至8をみると、仕切り板41の厚さは同じでもスリット幅および空洞部幅が小さい実施例7乃至8は、実施例6と比較して最大上昇電池温度および最大電池間温度差がわずかながら上昇している。これは空気を対流させるための空間が小さくなったためであると考えられる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態では、蓄電池収納箱22に複数個の蓄電池11を組込み接続し、個々の蓄電池11の間に仕切り板41を配置した構成において、電槽12の極板積層方向と直交する面(短辺側側面12A)にはリブ12Rが形成され、平行方向の面(長辺側側面12B)にはリブが形成されず、電槽12と仕切り板41の側板42とを面接触可能となるように配置したので、極板積層方向と直交する面に作用する群圧による蓄電池11の変形を抑えることができ、かつ、個々の蓄電池11の熱を仕切り板41に効率良く伝えて蓄電池収納箱22から放熱させることができる。これによって、群圧による蓄電池11の変形防止と蓄電池11の均熱化とを両立することができる。
【0056】
しかも、仕切り板41が空気の対流を可能とする貫通孔となる空洞部41Aを備えるようにしたので、仕切り板41に伝わった熱を、空気の対流によっても排出させることができ、蓄電池11の温度上昇をより抑えて均熱化を図ることができる。
また、空洞部41Aが仕切り板41の側板42に沿って設けられるので、蓄電池11から側板42に伝わった熱で空気の対流を促進させやすく、効率良く排熱することができる。
また、空洞部41Aが連通する孔であるスリット51、31Aが蓄電池収納箱22に設けられるので、空洞部41Aとスリットとにより空気を通気させることができ、この通気により、より効率良く排熱することができる。
【0057】
また、電槽12の極板積層方向と直交する面であるとともに互いに対向する一対の短辺側側面12Aの各々にリブ12Rが形成されるので、群圧による一対の短辺側側面12Aの変形を適切に抑えることができる。
また、電槽12の極板積層方向と平行な面であるとともに、互いに対向する一対の長辺側側面12Bは、平坦面に形成されるので、作製し易い。また、一対の短辺側側面12A間を最短距離で架橋するので、短辺側側面12A同士の連結強度を確保し易くなる。
また、リブ12Rは、極板積層方向と直交する面である短辺側側面12Aの長手方向に沿って延出するので、群圧による短辺側側面12Aの変形をリブ12Rによって効率良く抑えることができる。
【0058】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、仕切り板41と蓄電池11とを交互に配置する場合を説明したが、これに限らない。また、蓄電池11が制御弁式鉛蓄電池の場合を説明したが、制御弁式鉛蓄電池以外の蓄電池の場合に本発明を適用しても良い。