(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981907
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】建設機械のエンジンサポート
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
E02F9/00 N
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-266234(P2013-266234)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-121056(P2015-121056A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】恒吉 剛
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−142499(JP,A)
【文献】
特開2013−087462(JP,A)
【文献】
特開2003−268802(JP,A)
【文献】
特開2012−162911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームに設置された、エンジンを支持する複数個のエンジンサポートの一個または複数個が、
機体フレームの側面に前後方向に間隔を置いて、下端部を接合し立設された一対の縦板と、
この一対の縦板の間に断面L形を成して前後方向に延び、前後方向両端部が該一対の縦板のそれぞれに接合された補強L形板を有し、
一方の縦板が、その上端部に、他方の縦板側に向けて水平に延び他方の縦板の上端に接合された、エンジンを載置支持するボルト穴を有した天板部を備え、
他方の縦板が、その上端部に、一方の縦板の天板部に沿って延び天板部に当接接合された連結部を備え、
上記補強L形板は、L形の稜線部が該機体フレームの側面から離れた側に位置付けられ、該機体フレームの側面の側に位置するL形の一辺および他辺が一対の縦板に対して上下方向に位置付けられ、かつ該天板部との間に、該稜線部の側から、ボルト穴を通したボルトに取付けるナットのアクセス空間を備えている、
ことを特徴とする建設機械のエンジンサポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の機体フレームに備えるエンジンサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例である油圧ショベルの機体フレームである旋回フレーム(例えば、特許文献1参照)について
図8(同文献の
図5の符号を説明用に変えたもの)を参照して説明する。旋回フレーム50は、間隔を置いて前後方向に並んで延びる一対の主フレームである、右主フレーム52および左主フレーム54を備え、搭載するエンジンの脚部を支持するための矩形に配置した4個のエンジンサポート58を備えている。
【0003】
4個のエンジンサポート58は、エンジンの大きさ、配置等に合わせて位置決めされ、主フレーム52、54それぞれの側面もしくは主フレーム52、54を結ぶ前後の横フレーム56、57それぞれの側面に実質的に同一のものが、この例においては右主フレーム52の外側面、左主フレーム54の内側面にそれぞれ2個ずつ配置されている。
【0004】
これらのエンジンサポート58は、エンジンの重量、振動等を強固に支持するために、上下に延びる四角筒の一側面を開放したボックス構造に形成され、上端部にエンジンの脚部を、弾性マウントを介してボルトにより取付ける、ボルト穴を有した支持板を備え、側面の開口部の二辺が主フレーム52、54の側面もしくは横フレーム56、57の側面に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−142499号公報(
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来のエンジンサポートには、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0007】
エンジンはその4個の脚部が4個のエンジンサポート58それぞれの上に、弾性マウントを介して位置付けられ、弾性マウントの上方から通したボルトが、サポート58の支持板のボルト穴を通され、サポート内に位置付けたナットに締め付けられ載置される。
【0008】
このサポート58の中にナットをボルトに合わせて位置付け、ボルトを締付ける際、例えば右主フレーム52の外側面に設置するエンジンサポート58(Xで示す)においては、上下に延びるボックス構造の四角筒の外方が補強板で閉じられ、内方の開放した側はエンジン本体の下になるため、作業者にとってエンジンサポート58内へのアクセスが困難で面倒な問題がある。外側を開放するために、補強板を内側の右主フレーム52側にはもっていくことは構造上できない。
【0009】
弾性マウント、ボルト、ナット等については本発明の実施形態において詳述する。
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、建設機械の機体フレームの側面に立設される複数個のエンジンサポートにおける、エンジンを載置するためにサポート内に通すボルトにナットを位置付け、ボルトの締付け作業を行なう際に、作業者が手指により容易にサポート内にアクセスできるようにするととともに、サポートの剛性バランスや強度を向上させた、建設機械のエンジンサポートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば上記技術的課題を解決する建設機械のエンジンサポートとして、機体フレームに設置された、エンジンを支持する複数個のエンジンサポートの一個または複数個が、機体フレームの側面に
前後方向に間隔を置いて、下端部を接合し立設された一対の縦板と、この一対の縦板の間に断面L形を成して
前後方向に延び、
前後方向両端部が
該一対の縦板のそれぞれに接合された補強L形板を有し、一方の縦板が、その上端部に、他方の縦板側に向けて水平に延び他方の縦板の上端に接合された、エンジンを載置支持するボルト穴を有した天板部を備え、他方の縦板が、その上端部に、一方の縦板の天板部に沿って延び天板部に当接接合された連結部を備え、上記補強L形板は、L形の稜線部が該
機体フレームの側面から離れた側に位置付けられ、
該機体フレームの側面の側に位置するL形の一辺および他辺が一対の縦板に対して上下方向に位置付けられ、かつ該天板部との間に、該稜線部の側から、ボルト穴を通したボルトに取付けるナットのアクセス空間を備えている、ことを特徴とする建設機械のエンジンサポートが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従って構成された建設機械のエンジンサポートは、機体フレームの側面に立設された一対の縦板と、この縦板の間に接合された断面L形の補強L形板を有し、一方の縦板が、他方の縦板の上端に接合された、エンジンを載置支持する天板部を備え、他方の縦板が、一方の縦板の天板部に当接接合された連結部を備え、補強L形板は、L形の稜線部が該
機体フレームの側面から離れた側に位置付けられ、L形の一辺および他辺が上下方向に位置付けられ、天板部との間に、該稜線部の側から、ボルト穴を通したボルトに取付けるナットのアクセス空間を備えている。
【0013】
したがって、一対の縦板の間に、補強L形板を有し、補強L形板が、L形の稜線部を
機体フレームの側面から離れた側に位置付け、L形の一辺および他辺が一対の縦板に対して上下方向に位置付けられ、天板部との間にボルト穴を通したボルトに取付けるナットのアクセス空間を備えているので、作業者が手指により容易にサポート内にアクセスできるととともに、サポートの剛性バランスや強度を向上させた、建設機械のエンジンサポートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従って構成されたエンジンサポートを備える建設機械の機体フレームである旋回フレームの斜視図。
【
図2】エンジンサポートを
図1の矢印Y1で示す斜め上方から見た斜視図。
【
図3】
図2に示すエンジンサポートを、天板部を含む一方の縦板を除いた状態で示した斜視図。
【
図4】
図2に示すエンジンサポートを、裏側から見た斜視図。
【
図5】エンジンサポートに弾性マウントを介してエンジン脚部を取付けた状態の断面図。
【
図7】建設機械の代表例である油圧ショベルの側面図。
【
図8】従来のエンジンサポートを備えた建設機械の機体フレームである旋回フレームの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成された建設機械のエンジンサポートについて、代表的な建設機械である油圧ショベルにおける好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0016】
図7を参照して油圧ショベルについて説明する。油圧ショベル2は、下部走行体4と、下部走行体4上に旋回自在に取付けられた上部旋回体6を備え、上部旋回体6には、機体フレームである旋回フレーム8の上に、運転室10、その前方に作業腕装置12、後方にエンジン室14、後端部にカウンタウエイト16を備えている。
【0017】
旋回フレーム8について
図1を参照して説明する。
図1において、
図8と実質上同一の部分は同一の符号で示されている。
【0018】
旋回フレーム8は、間隔を置いて前後方向に並んで延びる一対の主フレームである、右主フレーム52および左主フレーム54を備え、それぞれに接合連結され横方向に延びた後端部の横フレーム57および前側の横フレーム56を備えている。搭載するエンジンの脚部を支持するための平面視で矩形に配置した4個のエンジンサポートとして、右主フレーム52に本発明に係るエンジンサポート18、18を、左主フレーム54に従来と実質同一のエンジンサポート58、58を備えている。
【0019】
4個のエンジンサポートは、エンジンの大きさ、配置等に合わせて位置決めされ、エンジンサポート18,18は右主フレーム52の外側面に、エンジンサポート58,58は左主フレーム54の内側面ならびに横フレーム56あるいは横フレーム57の側面に位置している。
【0020】
従来の構成を備えたエンジンサポート58は、上下に延びる四角筒の一側面を開放したボックス構造に形成され、上端部にエンジンの脚部を、弾性マウントを介してボルトにより取付けるボルト穴を有した支持板を備え、側面の開口部の二辺が左主フレーム54の側面ならびに横フレーム56あるいは横フレーム57の側面に接合されている。エンジンサポート58においては、
図1から理解されるように、左主フレーム54の側面に接合された部分の開口を通して、外方からサポート内にアクセスすることができる。
【0021】
図2〜
図4を参照して、エンジンサポート18について説明する。エンジンサポート18は、右主フレーム52の側面Fに
前後方向に間隔を置いて、下端部を接合し立設された一対の縦板20、22と、縦板20、22の間に断面L形を成して
前後方向に延び、
前後方向両端部が
縦板20、22のそれぞれに接合された補強L形板24を有している。
【0022】
一方の縦板20は、下端部が下端に向けて徐々に細くなった三角状に形成され、上端部には、他方の縦板22側に向けて曲げて水平に延び縦板22の上端に接合された、エンジンを載置支持するボルト穴20aを有した天板部20bを備えている。下端部と上端部の間には右主フレーム52の上面板52aをまたぐ凹部20cが形成されている。
【0023】
他方の縦板22は、一方の縦板20と同様に、下端部が下端に向けて徐々に細くなった三角状に形成され、上端部に、曲げて一方の縦板20の天板部20bの下面に沿って縦板20まで延び、下面および縦板20に接合された連結部22aを備えている。一方の縦板20と同様に、下端部と上端部の間には右主フレーム52の上面板52aをまたぐ凹部22bが形成されている。連結部22aは、下端が上面板52aの上に接合されている。
【0024】
補強L形板24は、板を曲げて形成され、L形曲げの稜線部Rが側面Fから離れた外側に位置付けられ、側面Fの側に位置する曲げの一辺24aおよび他辺24bは縦板20、22に対して上下方向に対称に位置付けられ、かつ天板部20bとの間に、稜線部Rの側から、ボルト穴20aを通したボルトに取付けるナットのアクセス空間Sを備えている(ボルト、ナットについては後に述べる)。L形は製造性も考慮して角度90°で曲げ形成されている。
【0025】
補強L形板24の一方の縦板22側の一辺24aは、他辺24bよりもアクセス空間Sを十分に大きく用意するために、短く形成されている。
【0026】
図5を参照して、エンジンの脚部をエンジンサポート18に載置する弾性マウントの典型例について説明する。弾性マウント26は、エンジン支持ブラケット28の鉛直に開口した穴部に上下から挿入された一対の環状の、下方がエンジンサポート18の天板部20b上に載置されたゴムブッシュ30、30と、ゴムブッシュ30、30それぞれの中心穴に挿通された円筒状のスリーブ32、32と、上方のブッシュ30の上面に位置付けたワッシャプレート34と、上方からワッシャプレート34、スリーブ32、32、天板部20bのボルト穴20aを通したボルト36を備え、ワッシャプレート34の側からエンジンサポート18内に挿通したボルト36の先端にワッシャ38を介してナット40が取付けられる。
【0027】
ナット40について
図6を参照して説明する。ナット40は、ナット40aに半径方向に延びる矩形の回り止め板40bを接合したものである。作業者は、回り止め板40bを手指で掴みエンジンサポート18内のアクセス空間Sに外方から挿入し(
図2に矢印Zで示す)ナット40の位置付けを行う。この回り止め板40bは、ボルト36をその頭部を回して締めるときに、あるいは緩めるときに、エンジンサポート18の内壁に当接し、ナット40の回り止め機能を有し回り止めのための工具を不要にしている。
【0028】
上述したとおりの建設機械のエンジンサポート18の作用について、主として
図2を参照して説明する。
【0029】
建設機械のエンジンサポート18は、機体フレーム8(52)の側面Fに立設された一対の縦板20,22と、この縦板20,22の間に接合された断面L形の補強L形板24を有し、一方の縦板20が、他方の縦板22の上端に接合された、エンジンを載置支持する天板部20bを備え、他方の縦板22が、一方の縦板20の天板部20bに当接接合された連結部22a(
図3)を備え、補強L形板24は、曲げの稜線部Rが側面Fから離れた側に位置付けられ、曲げの一辺および他辺が上下方向に位置付けられ、天板部20bとの間にボルト穴20aを通したボルトに取付けるナットのアクセス空間Sを備えている。
【0030】
したがって、一対の縦板20,22の間に、補強L形板24を有し、補強L形板24が、曲げの稜線部Rを側面Fから離れた側に位置付け、曲げの一辺および他辺が縦板20,22に対して上下方向に位置付けられ、天板部20bとの間にボルト穴20aを通したボルトに取付けるナットのアクセス空間Sを備えているので、作業者が手指により容易にサポート18内にアクセスできるようにするととともに、サポート18の剛性バランスや強度を向上させた、建設機械のエンジンサポートを提供することができる。
【0031】
特に断面L形の補強L形板24の一辺および他辺を斜めに配置することで、垂直方向にも水平方向にも断面係数変化が少なく、高応力の発生が少なく、強度的にも有利に剛性を維持することができる。
【0032】
また、建設機械のエンジンが設置されるスペース(エンジン室)には、多くの機器が設置され、エンジン本体の下からエンジンを支持するサポートの部分へのアクセスが困難であるが、エンジンサポート18によれば容易にサポート18内にアクセスすることができる。
【0033】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0034】
本発明の実施例においては、エンジンサポート18は、4個のエンジンサポートの内のアクセスが困難な2個に適用されているが、他の部分にも適用してもよい。
【0035】
本発明の実施例においては、補強L形板24は、板を曲げて形成されているが、平板を溶接接合して断面L形に形成してもよい。
【0036】
また、本発明の実施例においては、機体フレームは建設機械である油圧ショベルの旋回フレームであるが、他の建設機械の機体フレームに適用できるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0037】
2:油圧ショベル(建設機械)
8:旋回フレーム(機体フレーム)
18:エンジンサポート
20:縦板
20a:ボルト穴
20b:天板部
22:縦板
22a:連結部
24:補強L形板
F:側面
R:稜線部
S:アクセス空間