(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981910
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】エンジン用シリンダ内圧センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 23/22 20060101AFI20160818BHJP
G01L 23/10 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
G01L23/22
G01L23/10
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-507195(P2013-507195)
(86)(22)【出願日】2012年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2012002182
(87)【国際公開番号】WO2012132450
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月5日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2011/001976
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和生
(72)【発明者】
【氏名】須藤 亜木
(72)【発明者】
【氏名】林 貴之
【審査官】
三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−144247(JP,U)
【文献】
特開昭59−211835(JP,A)
【文献】
特開昭63−235841(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0043898(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L 27/00−27/02
F02D 31/00−39/10
F02D 43/00−45/00
H01T 7/00−23/00
G01M 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼室に臨ませた機能部品の先端部外周面に装着することにより前記エンジンのシリンダの内圧を検出するリング形に構成したエンジン用シリンダ内圧センサにおいて、軸方向の中間部に軸方向の弾性を有する弾性部位を形成してなる外筒部及び内筒部からなるハウジングユニットと、前記弾性部位の前方に位置する前記外筒部と前記内筒部間に気密に固定し、かつ当該弾性部位を通して前記弾性部位より後方に臨ませるとともに、前面が受圧面となる受圧リングブロック部と、この受圧リングブロック部の後面に設けた一方の電極部に接し、かつ前記受圧リングブロック部から内圧が付与されるとともに、周方向の所定位置に配した少なくとも一つ以上の圧力検出素子と、前記外筒部と前記内筒部間に固定し、かつ前面が前記圧力検出素子を支持する支持面になるとともに、他方の電極を兼ねた支持リングブロック部とを備えることを特徴とするエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項2】
前記受圧リングブロック部の後面部位に接し、かつ前記圧力検出素子を除く部位には、周方向に沿った一又は二以上のスペーサを配置することを特徴とする請求項1記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項3】
前記圧力検出素子と前記スペーサは前記受圧リングブロック部の周方向に沿って交互に配置することを特徴とする請求項2記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項4】
前記スペーサの軸方向長さは、前記圧力検出素子の軸方向長さに対応させて選定することを特徴とする請求項2又は3記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項5】
前記弾性部位は、前記外筒部及び前記内筒部の中間部に、屈曲部又は湾曲部を形成することにより設けることを特徴とする請求項1〜4にいずれかに記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項6】
前記受圧リングブロック部は、前側に配した受圧リング本体部と、後側に配することにより当該受圧リング本体部に当接する絶縁ブロック部により構成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項7】
前記圧力検出素子は、単結晶材料を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項8】
前記圧力検出素子の前面,前記受圧リングブロック部の後面,前記圧力検出素子の後面,前記支持リングブロック部の前面には、密着強化層となる内層,拡散防止層となる中間層,拡散層となる外層による接合層をコーティングしてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項9】
前記受圧リングブロック部の後面,前記支持リングブロック部の前面,前記圧力検出素子の前面又は前記圧力検出素子の後面には、所定の厚さを有する溶融系接合層を用いた前記圧力検出素子に対するアライメント調整層を設けることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項10】
前記一方の電極における前記圧力検出素子が存在しない部位にリードを接続するコネクタ部を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項11】
前記コネクタ部は、前記リードと前記一方の電極間に介在する圧縮したスプリングを備えることを特徴とする請求項10記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項12】
前記機能部品は、前記シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【請求項13】
前記機能部品は、前記シリンダ内の燃料に点火する点火プラグであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のエンジン用シリンダ内圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダの内圧を検出する際に用いて好適なリング形に構成したエンジン用シリンダ内圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンの燃焼室に臨ませることによりシリンダの内圧(燃焼圧)を検出するエンジン用シリンダ内圧センサは知られているが、この種のシリンダ内圧センサは、シリンダの所定位置に形成した貫通孔に高い気密性構造により独立して取付ける必要がある。このため、シリンダ内圧センサをリング形に構成し、エンジンに付設する他の機能部品である点火プラグの先端部外周面に一体に取付可能に構成して、当該点火プラグと一緒にシリンダに取付けできるようにしたシリンダ内圧センサも知られている。
【0003】
従来、このようなリング形に構成したシリンダ内圧センサとしては、特許文献1で開示される燃焼圧力センサ,特許文献2で開示される圧力センサ及び特許文献3で開示される圧力センサ内蔵スパークプラグが知られている。
【0004】
特許文献1の燃焼圧センサは、中心電極の周囲に形成された絶縁体と、側方電極と電気的に接続され、絶縁体の周囲に形成された座金部材と、を有する点火プラグに内蔵されたる燃焼圧力センサにおいて、絶縁体及び座金部材の間であり、かつ中心電極および側方電極の間の点火ギャップ近傍に設置されたニオブ酸リチウムからなる圧電素子と、を備えて構成されている。また、特許文献2の圧力センサは、スパークプラグのガスケットの替わりに装着孔に共締めされる圧力センサであって、この圧力センサは、ハウジングの取付け面がシリンダヘッドに圧接され、ハウジングには放熱フィンが固着された構成を備えている。さらに、特許文献3の圧力センサ内蔵スパークプラグは、内燃機関に取付けた際に、内燃機関に設けられたプラグ取付面と対向する座部と、この座部に内蔵されており、座部の内壁面の周方向に所定の間隔ごとに複数の圧電素子が保持された収容部材と、この収容部材に対応した平板形状に形成されているとともに、切り込みを入れた部分を上方へ折り曲げた端子が形成されており、その折り曲げにより形成された切り欠き部が圧電素子と重ならない状態で収容部材の上面に設けられた電極板と、この電極板に対応した平板形状に形成されているとともに、切り欠き部が形成されており、その切り欠き部から電極板の端子を上方へ突出させた状態で電極板の上面に設けられた絶縁板と、この絶縁板の切り欠き部から突出した端子に接続されており、圧電素子の出力を取り出す取出部材と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−34327号公報
【特許文献2】特開平11−94675号公報
【特許文献3】特開2000−277233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したリング形に構成した従来のエンジン用シリンダ内圧センサは、次のような問題点があった。
【0007】
即ち、この種のシリンダ内圧センサは、エンジンの燃焼圧を検出するため、使用する圧力検出素子には、高い耐熱性を有し、かつ高温環境下でも良好な圧電変換特性を有する単結晶材料が望ましい。反面、単結晶材料は脆性が大きいため、単結晶材料をカッティングして、上述した特許文献1及び2のようなリング形の圧力検出素子を切り出すには、高度の加工技術が要求されるなど、製造は容易でない。結局、歩留まりの低下及び量産性の低下を招くとともに、コストアップ要因としても無視できない。しかも、全体を細いリング形に形成する必要があることから、振動の大きいエンジンに付設した場合には割れ等の不具合を生じる虞れがあり、必ずしも信頼性の高い圧力検出素子とはいえない。
【0008】
一方、特許文献3は、圧力検出素子を直方体形のチップ体として形成するとともに、複数のチップ体をリング形に配列して構成するため、上述したリング形に一体形成する場合における製造(加工)上の問題は生じないが、反面、各チップ体における寸法や角度上のバラツキがシリンダ内圧センサの特性(性能)に直接影響し、これにより、検出精度の低下及び製品バラツキを生じやすい難点がある。
【0009】
しかも、いずれの場合も、エンジンの燃焼圧を検出するものであるため、圧力検出素子や電極等の内部構造を、厳しい温度環境や振動環境から、できるだけ保護する必要があるが、全体の検出構造において必ずしも十分とはいえず、シリンダ内圧センサの安定な装着及び安定な作動を確保する観点からは更なる改善の余地があった。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したエンジン用シリンダ内圧センサの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するため、エンジンの燃焼室Rbに臨ませた機能部品Ma,Mbの先端部外周面Mas,Mbsに装着することによりエンジンのシリンダEcの内圧Pcを検出するリング形に構成したエンジン用シリンダ内圧センサ1を構成するに際して、軸方向Fsの中間部Xmに軸方向Fsの弾性を有する弾性部位2es,2isを形成してなる外筒部2e及び内筒部2iからなるハウジングユニット2と、弾性部位2es,2isの前方に位置する外筒部2eと内筒部2i間に気密に固定し、かつ当該弾性部位2e,2iを通して弾性部位2e,2iの後方に臨ませるとともに、前面3fが受圧面となる受圧リングブロック部3と、この受圧リングブロック部3の後面3rに設けた一方の電極部4に接し、かつ受圧リングブロック部3から内圧Pcが付与されるとともに、周方向Ffの所定位置に配した少なくとも一つ以上の圧力検出素子5a,5b,5c…と、外筒部2eと内筒部2i間に固定し、かつ前面6fが圧力検出素子5a…を支持する支持面になるとともに、他方の電極7を兼ねた支持リングブロック部6とを備えることを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、受圧リングブロック部3の後面部位に接し、かつ圧力検出素子5a…を除く部位には、周方向Ffに沿った一又は二以上のスペーサ10a…,10as…,10atを配置することが望ましい。この際、より好ましくは、圧力検出素子5a…とスペーサ10a…,10as…,10atは受圧リングブロック部3の周方向Ffに沿って交互に配置するとともに、スペーサ10a…,10as…,10atの軸方向Fsの長さは、圧力検出素子5a…の軸方向Fsの長さに対応させて選定する。一方、弾性部位2es,2isは、外筒部2e及び内筒部2iの中間部Xmに屈曲部(又は湾曲部)11e,11iを形成して設けることができる。また、受圧リングブロック部3は、前側に配した受圧リング本体部12と、後側に配することにより当該受圧リング本体部12に当接する絶縁ブロック部13により構成することができるとともに、圧力検出素子5a…には、単結晶材料を用いることができる。
【0013】
他方、圧力検出素子5a…の前面5af…,受圧リングブロック部3の後面3r,圧力検出素子5a…の後面5ar…,支持リングブロック部6の前面6fには、密着強化層となる内層Ci,拡散防止層となる中間層Cm,拡散層となる外層Ceによる接合層Cをコーティングすることができる。また、受圧リングブロック部3の後面3r,支持リングブロック部6の前面6f,圧力検出素子5a…の前面5af…又は圧力検出素子5a…の後面5ar…には、所定の厚さLsを有する溶融系接合層を用いた圧力検出素子5a…に対するアライメント調整層14を設けることができる。さらに、一方の電極4における圧力検出素子5a…が存在しない部位にはリード15を接続するコネクタ部16を設けることができ、この際、コネクタ部16には、リード15と一方の電極4間に介在する圧縮したスプリング17を設けることができる。なお、機能部品(Ma,Mb)には、シリンダEc内に燃料を噴射するインジェクタMa,或いはシリンダEc内の燃料に点火する点火プラグMbを適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明に係るエンジン用シリンダ内圧センサ1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0015】
(1) 軸方向Fsの中間部Xmに軸方向Fsの弾性を有する弾性部位2es,2isを形成してなる外筒部2e及び内筒部2iからなるハウジングユニット2に対して、この外筒部2eと内筒部2i間に、前側から、受圧リングブロック部3,一方の電極4,少なくとも一つ以上の圧力検出素子5a…及び他方の電極7を兼ねる支持リングブロック部6を順次配して構成したため、受圧リングブロック部3で受けた圧力は、伸縮する弾性部位2es,2isにより、各圧力検出素子5a…に対して、安定(均等)かつ確実に伝達することができ、精度の高い圧力検出を行うことができる。
【0016】
(2) 前面3fが受圧面となる受圧リングブロック部3の後面3rに設けた一方の電極部4に接するとともに、周方向Ffに沿って等間隔に配した少なくとも一つ以上の圧力検出素子5a…を用いたため、圧力検出素子5a…として、脆性の大きい単結晶材料を使用し、かつエンジンの燃焼室Rbに臨ませた機能部品Ma,Mbの先端部外周面Mas,Mbsに装着するリング形のシリンダ内圧センサ1を構成する場合でも、圧力検出素子5a…の製造(加工)が容易となり、歩留まり及び量産性の向上、更にはコストダウンに寄与できるとともに、割れ等の不具合が発生しにくく、信頼性向上にも寄与できる。
【0017】
(3) 円筒形(リング形)のハウジングユニット2により、圧力検出素子5a…や電極4及び7等の検出構造の全体を覆うため、エンジンの燃焼圧を検出する際の厳しい温度環境や振動環境から検出構造の全体を有効に保護し、シリンダEcに対する安定な装着及び安定な作動を確保できるとともに、インジェクタMaや点火プラグMb等の各種機能部品に対して容易に装着可能となり、汎用性の高いシリンダ内圧センサ1を得ることができる。
【0018】
(4) 好適な態様により、受圧リングブロック部3の後面部位に接し、かつ圧力検出素子5a…を除く部位に、周方向Ffに沿った一又は二以上のスペーサ10a…,10as…,10atを配置するようにすれば、圧力検出素子5a…間の空間をスペーサ10a…,10as…,10atにより埋めることができるため、組立時における圧力検出素子5a…のアライメント調整を補助し、アライメント調整を正確かつ容易に行うことができるとともに、確実かつ安定に行うことができる。加えて、機械的強度の向上を図れるとともに、圧力検出素子5a…の数量削減に伴うコスト低減にも寄与することができる。
【0019】
(5) 好適な態様により、圧力検出素子5a…とスペーサ10a…,10as…,10atを受圧リングブロック部3の周方向Ffに沿って交互に配置するようにすれば、アライメント調整を補助する際における応力バランスを図り、かつ調整作用の安定化を図る観点から最も望ましい形態により実施できる。
【0020】
(6) 好適な態様により、スペーサ10a…,10as…,10atの軸方向Fsの長さを、圧力検出素子5a…の軸方向Fsの長さに対応させて選定すれば、スペーサ10a…,10as…,10atを配置することによる作用(機能)を最も効果的に発揮させることができる。
【0021】
(7) 好適な態様により、弾性部位2es,2isを、外筒部2e及び内筒部2iの中間部Xmに屈曲部(又は湾曲部)11e,11iを形成して設ければ、外筒部2e及び内筒部2iの一部により一体形成できるため、製造上、容易かつ最適な形態により実施できる。
【0022】
(8) 好適な態様により、圧力検出素子5a…の前面5af…,受圧リングブロック部3の後面3r,圧力検出素子5a…の後面5ar…,支持リングブロック部6の前面6fに、密着強化層となる内層Ci,拡散防止層となる中間層Cm,拡散層となる外層Ceによる接合層Cをコーティングすれば、材質の異なる三つの部品、即ち、受圧リングブロック部3,圧力検出素子5a…及び支持リングブロック部6を、接合層C…の介在により確実に接合することができる。
【0023】
(9) 好適な態様により、受圧リングブロック部3の後面3r,支持リングブロック部6の前面6f,圧力検出素子5a…の前面5af…又は圧力検出素子5a…の後面5ar…に、所定の厚さLsを有する溶融系接合層を用いた圧力検出素子5a…に対するアライメント調整層14を設ければ、受圧リングブロック部3の後面3r及び支持リングブロック部6の前面6f、更にはアライメント調整層14を利用して、各圧力検出素子5a…に対する的確なアライメント調整を容易に行うことができる。したがって、少なくとも一つ以上の圧力検出素子5a…を用いる場合であっても、寸法や角度上のバラツキを吸収して検出精度をより高めることができる。
【0024】
(10) 好適な態様により、一方の電極4における圧力検出素子5a…が存在しない部位に当該電極4とリード15を接続するコネクタ部16を設けるとともに、この際、コネクタ部16に、リード15と電極4間に介在する圧縮したスプリング17を設ければ、電極4に対するリード15の接続を確実に行うことができるとともに、信頼性の高い接続を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の最良実施形態に係るシリンダ内圧センサをインジェクタに適用する場合の断面側面図、
【
図3】
図1における圧力検出素子を含む部分の抽出拡大図、
【
図4】
図1におけるコネクタ部を含む部分の抽出拡大図、
【
図7】同シリンダ内圧センサにおける接合層を明示する模式的断面図、
【
図8】同シリンダ内圧センサにおける圧力検出素子のアライメント調整を行う際の説明図、
【
図9】本発明の変更実施形態に係るシリンダ内圧センサにおける
図1中のA−A線断面平面図、
【
図10】本発明の他の変更実施形態に係るシリンダ内圧センサを点火プラグに適用する場合の断面側面図、
【
図11】本発明の他の変更実施形態に係るシリンダ内圧センサにおける
図1中のA−A線位置に対応する断面平面図、
【
図13】
図11におけるシリンダ内圧センサにおける圧力検出素子のアライメント調整を行う際の説明図、
【
図14】本発明の他の変更実施形態に係るシリンダ内圧センサにおける
図1中のA−A線位置に対応する断面平面図、
【符号の説明】
【0026】
1:エンジン用シリンダ内圧センサ,2:ハウジングユニット,2e:外筒部,2i:内筒部,2es:弾性部位,2is:弾性部位,3:受圧リングブロック部,3f:受圧リングブロック部の前面,3r:受圧リングブロック部の後面,4:一方の電極部,5a,5b,5c…:圧力検出素子,5af…:圧力検出素子の前面,5ar…:圧力検出素子の後面,6:支持リングブロック部,6f:支持リングブロック部の前面,7:他方の電極,10a…:スペーサ,10as…:スペーサ,10at:スペーサ,11e:屈曲部(又は湾曲部),11i:屈曲部(又は湾曲部),12:受圧リング本体部,13:絶縁ブロック部,14:アライメント調整層,15:リード,16:コネクタ部,17:スプリング,Ec:エンジンのシリンダ,Ma:機能部品(インジェクタ),Mb:機能部品(点火プラグ),Mas:機能部品の先端部外周面,Mbs:機能部品の先端部外周面,Pc:内圧,Fs:軸方向,Ff:周方向,Xm:中間部,Ci:内層,Cm:中間層,Ce:外層,Ls:所定の厚さ,エンジンの燃焼室Rb
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明に係る最良実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0028】
まず、本実施形態に係るシリンダ内圧センサ1の構成について、
図1〜
図8を参照して説明する。
【0029】
図1は、シリンダ内圧センサ1の要部の構成を示す。2はハウジングユニットであり、径の大きい外筒部2eと径の小さい内筒部2iを備える。外筒部2e及び内筒部2iは、それぞれ耐熱性に優れた合金素材等により一体形成し、軸方向Fsの中間部Xmには軸方向Fsの弾性を有する弾性部位2es及び2isをそれぞれ設ける。中間部Xmは、
図1に示すように、ハウジングユニット2の前寄り位置、望ましくはハウジングユニット2の前端から数〔mm〕程度後方の位置を選定する。なお、
図1は下方が前方となる。また、弾性部位2es,2isは、
図3に示すように、それぞれ屈曲部11e,11iにより形成する。即ち、外筒部2eの弾性部位2esは、中間部Xmの外周面を中心方向に膨出させた屈曲部11eにより形成し、外周面に、断面が台形(矩形)状となる凹溝を周方向Ffに沿ってリング状に設けるとともに、内筒部2iの弾性部位2isは、中間部Xmの内周面を放射方向に膨出させた屈曲部11iにより形成し、内周面に、断面が台形(矩形)状となる凹溝を周方向Ffに沿ってリング状に設ける。この場合、外筒部2e及び内筒部2iは、中間部Xmから前端までを薄肉形成し、少なくとも中間部Xmには軸方向Fsの弾性(バネ性)を持たせる。これにより、ハウジングユニット2の中間部Xmに、括れ状(ベローズ状)の弾性部位2es,2isが設けられる。このように、弾性部位2es,2isを、外筒部2e及び内筒部2iの中間部Xmに屈曲部11e,11iを形成して設ければ、外筒部2e及び内筒部2iの一部により一体形成できるため、製造上、容易かつ最適な形態により実施できる利点がある。
【0030】
一方、弾性部位2es,2isの前方に位置する外筒部2eと内筒部2i間に気密に固定し、かつ当該弾性部位2e,2iを通して弾性部位2e,2iの後方に至らせる受圧リングブロック部3を設ける。受圧リングブロック部3は、前側に配した受圧リング本体部12と、後側に配することにより当該受圧リング本体部12に当接する絶縁ブロック部13により構成する。これにより、受圧リング本体部12の前面は、受圧リングブロック部3の前面3fとなり、この前面3fが内圧Pcを受ける受圧面となる。
【0031】
受圧リング本体部12は、全体を耐熱性に優れた合金素材等によりリング状に一体形成するとともに、断面を、
図3に示すように、広幅部分と狭幅部分によりT形に形成する。そして、受圧リング本体部12における広幅部分は、ハウジングユニット2の中間部Xmよりも前方に位置する外筒部2eと内筒部2i間を埋めるように収容し、外筒部2eの内周面及び内筒部2iの外周面にレーザ溶接等を用いた溶接部21,22により気密に固定し、燃焼室Rb内の燃焼ガスがシリンダ内圧センサ1の内部に入り込まないようにする。この際、受圧リング本体部12における狭幅部分は、弾性部位2eと2i間を通して当該弾性部位2e,2iの後方に至らせる。
【0032】
また、絶縁ブロック部13は、剛性を有する絶縁素材によりリング状に一体形成し、断面は矩形となる。したがって、絶縁ブロック部13の後面は、受圧リングブロック部3の後面3rとなる。さらに、受圧リングブロック部3の後面3rには、一方の電極部4を設ける。この場合、受圧リングブロック部3の後面3r、即ち、絶縁ブロック部13の後面には、
図7に示すように、密着強化層となるTi(チタン)を用いた内層Ci,拡散防止層となるPt(白金)を用いた中間層Cm,拡散層となるAu(金)を用いた外層Ceによる接合層Cをコーティングするとともに、この接合層Cの上には、Au−Sn(金−錫)を用いた所定の厚さLsを有する溶融系接合層となるアライメント調整層14をコーティングにより設ける。このアライメント調整層14は、後述する三つの圧力検出素子5a…の寸法及び角度等のバラツキを吸収するアライメント調整機能を備えるとともに、圧力検出素子5a…の一方の電極部4を兼用する。したがって、アライメント調整層14の厚さLsは、三つ(少なくとも一つ以上)の圧力検出素子5a…の寸法及び角度等のバラツキを吸収できる寸法を選定する。
【0033】
なお、密着強化層となる内層Ciには、その他、Ni,Cr,Zr,In,Bi,Y等を、拡散防止層となる中間層Cmには、その他、Cu,Sn,Ni,Fe,Cr,V,Ti等を、拡散層となる外層Ceには、その他、Ag,Pd,Sn,Ge,Cu等を、それぞれ選択して用いることができる。この場合、各層Ci,Cm,Ceは、単一元素で構成してもよいし、単一元素を含む合金により構成してもよい。また、溶融系接合層となるアライメント調整層14には、その他、Ag−Cu−Sn,Au−Ge,Au−Pd,Ag−Pd,Ag−Sn,Cu−Sb等の共晶現象を有する金属(合金)を用いることができる。これらの各層は、ハンダとして用いてもよいし、ろう材として用いてもよい。したがって、溶融系接合層となるアライメント調整層14と拡散層となる外層Ceは、組合わせが必要であり、例えば、アライメント調整層14にAu−Snを用いた場合には、外層CeにAu又はSnを用いる必要があり、アライメント調整層14にAg−Pdを用いた場合には、外層CeにAg又はPdを用いる必要があるなど、拡散層(外層Ce)の材料は、アライメント調整層14を構成する材料のうちの単一材料又は複合材料に選定する必要がある。
【0034】
他方、5a,5b,5cは、三つの圧力検出素子(圧電素子)を示す。各圧力検出素子5a…は、耐熱性に優れ、広い温度範囲においても安定した圧電変換特性が得られるキュリー点の無い自発分極を有する単結晶材料、具体的には、LTG(La
3Ta
0.5Ga
5.5O
14),LTGA(La
3Ta
0.5Ga
4.8Al
0.2O
14),LGS(La
3Ga
5SiO
14)の単結晶材料をはじめ、LNG,LGSA,LNGA,CAAS,CTGS等の単結晶材料を用いて製作する。また、各圧力検出素子5a…は、前述した絶縁ブロック部13と後述する支持リングブロック部6間にサンドイッチ状に挟まれ、かつ前面及び後面を、絶縁ブロック部13の後面(アライメント調整層14)及び支持リングブロック部6の前面にそれぞれ接合するため、各圧力検出素子5a…の前面5af…及び後面5ar…には、
図7に示すように、上述した内層Ci,中間層Cm,外層Ceからなる接合層Cをそれぞれコーティングする。
【0035】
そして、圧力検出素子5a,5b,5cの組付けを行う際には、
図8(a)に示すように、加熱処理前の絶縁ブロック部13の後面3rに設けたアライメント調整層14を、上向きとなるようにセットし、このアライメント調整層14の上に、三つの圧力検出素子5a,5b,5cを、
図2に示すように等間隔で載置する。次いで、各圧力検出素子5a…の後面5ar(上面)に、支持リングブロック部6の前面6fを当て、上から各圧力検出素子5a…に対して均一の力が付加されるように加圧するとともに、所定の温度環境に設定したリフロー連続炉で加熱を行う。これにより、
図8(b)に示すように、適度に溶融したアライメント調整層14に、各圧力検出素子5a…の前面5af…(下面)が入り込み、各圧力検出素子5a…の後面5ar…(上面)はそれぞれ支持リングブロック部6の前面6fに面接触する。即ち、各圧力検出素子5a,5b,5cの寸法及び角度等のバラツキがアライメント調整層14により吸収されるアライメント調整が行われる。また、この際、同時に、各圧力検出素子5a…の前面5af…に設けた接合層C…がアライメント調整層14に溶着するとともに、各圧力検出素子5a…の後面5ar…に設けた接合層C…が支持リングブロック部6の前面6fに設けた接合層Cに溶着する。
【0036】
したがって、アライメント調整層14及び接合層C…が固化した後は、絶縁ブロック部13,各圧力検出素子5a…及び支持リングブロック部6が一体に接合される。即ち、アライメント調整工程と組付工程が一緒(同時)に行われる。この際、支持リングブロック部6の前端部は、外筒部2eと内筒部2iの後端部間に収容し、外筒部2eの内周面及び内筒部2iの外周面に溶接部23,24により固定する。以上の組付工程により、支持リングブロック部6は、
図1に示すように、外筒部2eと内筒部2i間の後端を閉塞するとともに、ハウジングユニット2の後端に固定された支持リングブロック部6の前面6fは各圧力検出素子5a,5b,5cを支持する支持面となる。また、支持リングブロック部6は、各圧力検出素子5a,5b,5cの他方の電極7(グランド)を兼ねている。
【0037】
このように、圧力検出素子5a…の前面5af…,受圧リングブロック部3の後面3r,圧力検出素子5a…の後面5ar…,支持リングブロック部6の前面6fに、内層Ci,中間層Cm,外層Ceからなる接合層Cをコーティングすれば、材質の異なる三つの部品、即ち、受圧リングブロック部3,圧力検出素子5a…及び支持リングブロック部6を、接合層C…の介在により確実に接合できる。また、受圧リングブロック部3の後面3rに、所定の厚さLsを有するAu−Sn等の溶融系接合層を用いた圧力検出素子5a…に対するアライメント調整層14を設ければ、受圧リングブロック部3の後面3r及び支持リングブロック部6の前面6f、更にはアライメント調整層14を利用して、各圧力検出素子5a…に対する的確なアライメント調整を容易に行うことができる。したがって、三つ(少なくとも一つ以上)の圧力検出素子5a…を用いる場合であっても、寸法や角度上のバラツキを吸収して検出精度をより高めることができる。
【0038】
一方、アライメント調整層14は、受圧リングブロック部3の後面3rに設けた一方の電極部4としても機能する。したがって、固化したアライメント調整層14(電極4)に対して外部に導出するリード(シールドケーブル)14を接続する。この場合、電極4とリード14はコネクタ部16を介して接続する。
図4は、リード15と電極4の接続構造を拡大して示す。外部から導入したリード15は、支持リングブロック部6を貫通させ、先端を電極4に臨ませる。この際、支持リングブロック部6を貫通するリード15は、
図4に示すように、カシメ用パイプ25と絶縁パイプ26により保持される。また、絶縁パイプ26の先端には、リード15の先端を接続したコネクタ部16のスプリング保持端子27を取付ける。このスプリング保持端子27は、
図2に示すように、圧力検出素子5a…が存在しない支持リングブロック部6と絶縁ブロック部13間の空間に配し、電極4に臨ませる。そして、圧縮状態にしたスプリング17の一端をスプリング保持端子27に装着し、かつスプリング17の他端を電極4の上面に圧接させる。したがって、このようなコネクタ部16を設ければ、電極4に対するリード15の接続を確実に行うことができるとともに、信頼性の高い接続を行うことができる。
【0039】
このように、本実施形態に係るシリンダ内圧センサ1は、前面3fが受圧面となる受圧リングブロック部3の後面3rに設けた一方の電極部4に接するとともに、周方向Ffに沿って等間隔に配した三つ(少なくとも一つ以上)の圧力検出素子5a…を用いた基本構造を有するため、圧力検出素子5a…として、脆性の大きい単結晶材料を使用し、かつ後述するようにシリンダEcに付設されるインジュクタMaの先端部外周面Masに装着するリング形のシリンダ内圧センサ1を構成する場合であっても、圧力検出素子5a…の製造(加工)が容易となり、歩留まり及び量産性の向上、更にはコストダウンに寄与できるとともに、割れ等の不具合が発生しにくく、信頼性向上にも寄与できる。
【0040】
次に、本実施形態に係るシリンダ内圧センサ1の使用方法及び動作(機能)について、
図1〜
図8を参照して説明する。
【0041】
まず、シリンダ内圧センサ1は、
図6に示すように、全体が円筒形(リング形)のハウジングユニット2等により覆われるため、エンジンの燃焼圧を検出する際の厳しい温度環境や振動環境から、圧力検出素子5a…や電極4及び7等の検出構造の全体が有効に保護されるとともに、シリンダEcに対する安定な装着及び安定な作動が確保される。したがって、
図1に仮想線で示すように、自動車等のエンジンの燃焼室Rbに臨み、かつシリンダEcの内部に燃料を噴射するインジェクタMaの先端部外周面Masに容易に装着可能となる。即ち、インジェクタMaをシリンダEcに組付ける際に、いわばインジェクタMaの一部として、シリンダ内圧センサ1も一緒にインジェクタMaに組付けることができる。即ち、シリンダEcの所定位置に別途の貫通孔を形成し、この貫通孔に高い気密性構造により独立して取付けることは不要となる。
【0042】
一方、シリンダEcにおける内圧Pcの検出時には、内圧Pcが、受圧リングブロック部3の受圧面(前面3f)に付加されるため、この内圧Pcは、受圧リング本体部12及び絶縁ブロック部13を介して各圧力検出素子5a,5b,5cに作用する。この際、受圧リングブロック部3を構成する受圧リング本体部12は、軸方向Fsの弾性を有する伸縮性の弾性部位2es,2isにより支持されるため、内圧Pcによる受圧リング本体部12の変位(圧力)は、伸縮する弾性部位2es,2isにより、各圧力検出素子5a…に、安定(均等)かつ確実に伝達され、精度の高い圧力検出が行われる。加えて、各圧力検出素子5a,5b,5cは、アライメント調整層14によりアライメント調整されているため、例示のように、三つの圧力検出素子5a…を用いる場合であっても、寸法や角度上のバラツキを吸収して検出精度がより高められる。
【0043】
次に、本発明の変更実施形態に係るシリンダ内圧センサ1について、
図9〜
図14を参照して説明する。
【0044】
図9に示す変更実施形態は、使用する圧力検出素子5a…の数量を変更したものである。前述した
図2に示した実施形態は三つの圧力検出素子5a…を用いた場合を例示したが、
図9に示す変更実施形態は、六つの圧力検出素子5a,5b,5c,5d,5e,5fを用いることにより、周方向Ffに沿って等間隔に配したものである。このように、本発明に係るシリンダ内圧センサ1では、少なくとも一つ以上の任意の数量による圧力検出素子5a…を使用することができる。なお、偶数の場合、二つの圧力検出素子5a…を使用し、残りの圧力検出素子を大きさを一致させたダミーとして構成することも可能であるが、このようなダミーも圧力検出素子5a…の数量に含まれる。
【0045】
図10に示す変更実施形態は、シリンダ内圧センサ1の用途、即ち、シリンダ内圧センサ1を付設する機能部品を変更したものである。
図1に示した実施形態は、シリンダEc内に燃料を噴射するインジェクタMaに装着した場合を例示したが、
図10に示す変更実施形態は、シリンダEc内の燃料に点火する点火プラグMbの先端部外周面Mbsに装着する場合を示す。なお、点火プラグMbの先端部外周面Mbsに対するシリンダ内圧センサ1の形状が異なる場合には、ハウジングユニット2の内筒部2iの形状を変更し、装着対象となる点火プラグMbの形状にマッチングさせればよい。このように、シリンダ内圧センサ1は、インジェクタMaや点火プラグMb等の各種機能部品に対して容易に装着可能となり、汎用性の高いシリンダ内圧センサ1を得ることができる。
【0046】
図11〜
図13に示す変更実施形態は、圧力検出素子5a…の取付形態を変更したものであり、
図12に示すように、受圧リングブロック部3の後面3r、即ち、絶縁ブロック部13の後面部位(アライメント調整層14を含む)に接し、かつ圧力検出素子5a…を除く部位に、周方向Ffに沿ったスペーサ10a…を配置したものである。このようなスペーサ10a…を配置すれば、
図13に示すように、圧力検出素子5a…間の空間をスペーサ10a…,10as…,10atにより埋めることができるため、組立時の圧力検出素子5a…のアライメント調整を補助し、アライメント調整を正確かつ容易に行うことができるとともに、確実かつ安定に行うことができる。
【0047】
例示はセラミックス素材により形成した三つのスペーサ10a,10b,10cを用いた場合を示す。また、各スペーサ10a…の幅は受圧リングブロック部3の幅にほぼ一致させるとともに、軸方向Fsの長さは、圧力検出素子5a…の軸方向Fsの長さに対応させて選定した。この場合、軸方向Fsの長さは、圧力検出素子5a…の軸方向Fsの長さに一致させることが望ましいが、必ずしも一致させることを要せず、アライメント調整層14の厚さやスペーサ10a…の素材により変更可能である。例示するスペーサ10a…の素材には、剛性体(セラミックス素材)を用いたため、スペーサ10a…の厚さは、圧力検出素子5a…の厚さ(0.9〔mm〕)に対して僅かに薄い厚さ(0.89〔mm〕)を選定した。なお、スペーサ10a…の素材は、剛性体に限定されるものではなく、ある程度の弾性を有する素材を利用してもよい。したがって、スペーサ10a…の厚さは、必要により圧力検出素子5a…の厚さよりも厚くなってもよい。このように、スペーサ10a…の軸方向Fsの長さを、圧力検出素子5a…の軸方向Fsの長さに対応させて選定すれば、スペーサ10a…を配置することによる作用(機能)を最も効果的に発揮させることができる。その他、
図11において、符号10bhは、スプリング保持端子27及びスプリング17を挿通させるための挿通孔を示す。
【0048】
さらに、圧力検出素子5a…とスペーサ10a…は受圧リングブロック部3の周方向Ffに沿って交互に配置する。このように配置することにより、アライメント調整を補助する際における応力バランスを図り、かつ調整作用の安定化を図る観点から最も望ましい形態により実施できる。なお、圧力検出素子5a…とスペーサ10a…は交互に配置することが望ましいが、必ずしも交互に配置することを要せず、必要に応じて圧力検出素子5a…の相互間にスペーサ10a…が存在しない形態であってもよい。
【0049】
図14(a),(b)に示す変更実施形態は、
図11に示したスペーサ10a…と同様のスペーサ10as…,10atを用いるも、圧力検出素子5a…の数量を変更したものである。
図14(a)は、六つの圧力検出素子5a,5b,5c,5d,5e,5fを使用し、周方向Ffに沿って等間隔に配するとともに、六つのスペーサ10as,10bs,10cs,10ds,10es,10fsを、
図11と同様に各圧力検出素子5a…の相互間に配置した。したがって、各スペーサ10as…は、周方向Ffにおける長さが異なる点を除いてスペーサ10a…と同様に製作できる。一方、
図14(b)は、単一の圧力検出素子5aを使用し、周方向Ffの所定位置に配した場合を示す。この場合であっても、全体の形状をC形に形成した単一のスペーサ10atを使用すれば、
図11と同様に実施できる。このように、スペーサ10atを使用すれば、一つの圧力検出素子5aであっても実施可能となる。よって、このような
図11〜
図14に示すスペーサ10a…,10as…,10atを使用すれば、前述した効果に加え、圧力検出素子5a…を組付けた際の機械的強度の向上を図れるとともに、圧力検出素子5a…の数量削減に伴うコスト低減にも寄与できる。その他、
図9〜
図14において、
図1〜
図8と同一の部分には同一符号を付し、その構成を明確にするとともに、詳細な説明は省略する。
【0050】
以上、最良実施形態及び変更実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の精神を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0051】
例えば、弾性部位2es,2isは、屈曲部11e,11iを形成して設けた場合を示したが、半円形等の湾曲部により形成してもよいし、或いは蛇腹形のように、複数の屈曲部(又は湾曲部)11e…,11i…の組合わせにより構成してもよい。また、機能部品として、インジェクタMaと点火プラグMbを適用した場合を示したが、その他、温度センサ等の他のセンサ(機能部品)と組合わせることも可能である。一方、受圧リングブロック部3は、受圧リング本体部12と絶縁ブロック部13の組合わせにより構成した場合を示したが一体タイプであってもよい。さらに、圧力検出素子5a…は、単結晶材料を用いることが望ましいが、ピエゾ素子等の検出原理の異なる他の圧力検出素子の使用を排除するものではない。他方、受圧リングブロック部3の後面3rに、各圧力検出素子5a…に対するアライメント調整を行うアライメント調整層14を設けた場合を例示したが、このアライメント調整層14は、受圧リングブロック部3の後面3rの代わりに支持リングブロック部6の前面6fに設けてもよい。また、アライメント調整層14は、接合層Cの上面に設けた場合を示したが、接合層Cを設けない場合には、受圧リングブロック部3の後面3r又は支持リングブロック部6の前面6fに直接設けてもよい。さらに、アライメント調整層14は、受圧リングブロック部3の後面3r又は支持リングブロック部6の前面6fに設けるのが望ましいが、圧力検出素子5a…の前面5af…又は圧力検出素子5a…の後面5ar…に設ける場合を排除するものではない。なお、このアライメント調整層14は、加工精度の向上により寸法及び角度等に対するバラツキが無視できる圧力検出素子5a…を用いる場合には必ずしも設けることを要しない。他方、一方の電極4とリード15を接続する構造は、スプリング17を用いた例示の構成に限定されるものではなく、電極4とリード15を接続することができるものであれば、他の接続構造を排除するものではない。また、点火プラグMbには、スパークプラグ及びグロープラグ等の各種点火プラグが含まれるとともに、エンジンの燃焼室Rbに臨ませた機能部品Ma,Mbとは、例示のように、シリンダEcに付設する場合の他、ピストンに付設する場合も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係るシリンダ内圧センサは、自動車のエンジンで代表される内燃機関をはじめ、他の各種用途における内燃機関を構成するシリンダの内圧を検出する際に利用することができる。