特許第5981929号(P5981929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エアバスの特許一覧

特許5981929航空機のブラックボックスのデータを送受信する方法およびシステム
<>
  • 特許5981929-航空機のブラックボックスのデータを送受信する方法およびシステム 図000002
  • 特許5981929-航空機のブラックボックスのデータを送受信する方法およびシステム 図000003
  • 特許5981929-航空機のブラックボックスのデータを送受信する方法およびシステム 図000004
  • 特許5981929-航空機のブラックボックスのデータを送受信する方法およびシステム 図000005
  • 特許5981929-航空機のブラックボックスのデータを送受信する方法およびシステム 図000006
  • 特許5981929-航空機のブラックボックスのデータを送受信する方法およびシステム 図000007
  • 特許5981929-航空機のブラックボックスのデータを送受信する方法およびシステム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981929
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】航空機のブラックボックスのデータを送受信する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/15 20060101AFI20160818BHJP
   B64D 47/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   H04B7/15
   B64D47/00
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-538251(P2013-538251)
(86)(22)【出願日】2011年11月14日
(65)【公表番号】特表2013-546264(P2013-546264A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】FR2011000605
(87)【国際公開番号】WO2012062982
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年10月21日
(31)【優先権主張番号】1059336
(32)【優先日】2010年11月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503172666
【氏名又は名称】エアバス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】アモリ ルロワ
(72)【発明者】
【氏名】セブリーヌ ブルマンド
【審査官】 川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0225492(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0318138(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0130770(US,A1)
【文献】 特開2006−261956(JP,A)
【文献】 米国特許第06278913(US,B1)
【文献】 特開2000−209233(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0246492(US,A1)
【文献】 Ehssan Sakhaee et al.,Aeronautical Ad Hoc Networks,IEEE Wireless Communications and Networking Conference 2006 (WCNC 2006),2006年,Volume 1,p.246-251
【文献】 Advanced TEchnologies for Networking in Aeronautical Applications, Final Publishable Report,2007年,URL,http://www.transport-research.info/Upload/Documents/201210/20121015_135740_25037_123991271EN6.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/14 − 7/22
B64D 47/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1航空機(30)に収集されたデータを、理解不能にするために暗号化し、
前記データを、前記第1航空機(30)に搭載された少なくとも1つのブラックボックス(12、14)に保管し、
飛行中の前記第1航空機(30)の前記少なくとも1つのブラックボックス(12、14)からの前記暗号化されたデータを、飛行中の少なくとも1機の第2航空機(32)に送信し、
前記データ送信は、飛行中の航空機を含む通信モバイル・ノード(30、32、34、36)の集合として含む通信網(40)の中でなされ、
さらに、予め決められていない少なくとも1つの通信モバイル・ノードを飛行中に選択し(S2)、前記少なくとも1つの通信モバイル・ノードは、予め決められた少なくとも1つの選択基準に照らして前記通信網のモバイル・ノードの集合の中から選択し、
前記予め決めた少なくとも1つの選択基準は、信号対雑音比が所定の閾値よりも大きい前記第2航空機、飛行計画が似ているか同じ前記第2航空機、前記第1航空機から最も離れている前記第2航空機、および、下降中の前記第2航空機のうちの少なくとも1つである、
ことを特徴とするデータ送信方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのブラックボックスからのデータ送信は、少なくとも100キロビット/秒の通過帯域を必要とする、ことを特徴とする請求項1に記載のデータ送信方法。
【請求項3】
さらに、
複数の通信網の中から1つの通信網を選択することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のデータ送信方法。
【請求項4】
前記複数の通信網は、無線、衛星、または、他のあらゆる無線通信網を含むことを特徴とする、請求項3に記載のデータ送信方法。
【請求項5】
さらに、
データを送信する前に、前記選択された少なくとも1つの予め決められていない優れたノードとの接続の確立を要求する(S3)、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のデータ送信方法。
【請求項6】
飛行中の第1航空機(30)に収集されたデータを、理解不能にするために暗号化し、
前記データを、飛行中の前記第1航空機に搭載された少なくとも1つのブラックボックス(12、14)に保管し、
前記第1航空機(30)の前記少なくとも1つのブラックボックス(12、14)に保管された前記暗号化されたデータを、飛行中の少なくとも1機の第2航空機(32)が受信し(S52)、
前記データ受信は、飛行中の航空機を含む通信モバイル・ノード(30、32、34、36)の集合として含む通信網(40)の中でなされ、
さらに、予め決められていない少なくとも1つの通信モバイル・ノードを飛行中に選択し(S2)、前記少なくとも1つの通信モバイル・ノードは、予め決められた少なくとも1つの選択基準に照らして前記通信網のモバイル・ノードの集合の中から選択し、
前記予め決めた少なくとも1つの選択基準は、信号対雑音比が所定の閾値よりも大きい前記第2航空機、飛行計画が似ているか同じ前記第2航空機、前記第1航空機から最も離れている前記第2航空機、および、下降中の前記第2航空機のうちの少なくとも1つである、
ことを特徴とするデータ受信方法。
【請求項7】
さらに、
受信すべきデータを保管するため、前記第2航空機(32)に搭載される保管スペースの利用可能性を確認する(S66)、ことを特徴とする請求項に記載のデータ受信方法。
【請求項8】
さらに、
受信したデータの保管を、利用可能な保管スペースの中で行なうか、或いは、確保された保管スペースの中で行なう(S92、S98、S96)、ことを特徴とする請求項または請求項に記載のデータ受信方法。
【請求項9】
飛行中の第1航空機(30)に搭載された少なくとも1つのブラックボックス(12、14)からの、理解不能にするために暗号化されたデータを、飛行中の少なくとも1機の第2航空機(32)に送信する送信機を備え、送信される暗号化されたデータが、前記第1航空機(30)に搭載された少なくとも1つのブラックボックス(12、14)に保管されたデータであり、
前記データ送信は、飛行中の航空機を含む通信モバイル・ノード(30、32、34、36)の集合として含む通信網(40)の中でなされ、
予め決められていない少なくとも1つの通信モバイル・ノードは、飛行中に選択され、前記少なくとも1つの通信モバイル・ノードは、予め決められた少なくとも1つの選択基準に照らして前記通信網のモバイル・ノードの集合の中から選択され、
前記予め決めた少なくとも1つの選択基準は、信号対雑音比が所定の閾値よりも大きい前記第2航空機、飛行計画が似ているか同じ前記第2航空機、前記第1航空機から最も離れている前記第2航空機、および、下降中の前記第2航空機のうちの少なくとも1つである、
とを特徴とするデータ送信システム(16)。
【請求項10】
飛行中の第1航空機(30)に搭載された少なくとも1つのブラックボックス(12、14)に保管された、理解不能にするために暗号化されたデータを受信する、飛行中の少なくとも1機の第2航空機(32)に搭載された受信機(52)を備えるデータ受信システムであって、前記データ受信システムが、第2航空機(32)に搭載され、
前記データ受信は、飛行中の航空機を含む通信モバイル・ノード(30、32、34、36)の集合として含む通信網(40)の中でなされ、
予め決められていない少なくとも1つの通信モバイル・ノードは、飛行中に選択され、前記少なくとも1つの通信モバイル・ノードは、予め決められた少なくとも1つの選択基準に照らして前記通信網のモバイル・ノードの集合の中から選択され、
前記予め決めた少なくとも1つの選択基準は、信号対雑音比が所定の閾値よりも大きい前記第2航空機、飛行計画が似ているか同じ前記第2航空機、前記第1航空機から最も離れている前記第2航空機、および、下降中の前記第2航空機のうちの少なくとも1つである、
ことを特徴とするデータ受信システム(50)。
【請求項11】
請求項に記載のデータ送信システム(16)、および/または、請求項10に記載のデータ受信システム(50)を備える、ことを特徴とする航空機(30;32)。
【請求項12】
前記暗号化されたデータは、前記第2航空機(32)に対して機密および理解不能である、ことを特徴とする請求項1に記載のデータ送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に搭載されたブラックボックスのデータを送受信する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラックボックスはレコーダとも呼ばれ、航空機に搭載されていて飛行中に様々な飛行データ(音声データと、場合によっては視覚データ)を収集する装置である。飛行データは、航空機に搭載されている様々なセンサーからやって来る。センサーは、様々な飛行データのほか、飛行パラメータを供給するコンピュータのデータを集める。
【0003】
ブラックボックスに収集されたデータには、コックピット内の活動(乗務員間の会話)に関する音声録音と、場合によってはビデオ記録も含まれている。
【0004】
このようなブラックボックスは一般にオレンジ色であり、例えば、航空機の惨事が起こったときにより容易に位置を特定できるようにするため、無線送信機が取り付けられている。
【0005】
しかし航空機の惨事が起こった後にブラックボックスを回収するのは、特に地表の大半が起伏に富んでいるという理由で非常に難しいことが分かる。
【0006】
確かに海洋の底や山脈のクレバスでブラックボックスを回収するのは非常に難しい。
【0007】
しかしブラックボックスに含まれているデータは、航空機の惨事の原因を知る上で、そして同種の惨事が起こらないようにするため原因の改善に努める上で、非常に重要であるどころか最重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、航空機に搭載された1つまたは複数のブラックボックスに飛行中に収集されたデータを通信することでこの欠点をなくすことを目的とする。その通信は、その航空機から外部に向かって、より詳細には、別の少なくとも1機の航空機に向かってなされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、第1航空機に収集されたデータを、理解不能にするために暗号化し、前記データを、前記第1航空機に搭載された少なくとも1つのブラックボックスに保管し、飛行中の前記第1航空機の前記少なくとも1つのブラックボックスからの前記暗号化されたデータを、飛行中の少なくとも1機の第2航空機に送信し、前記データ送信は、飛行中の航空機を含む通信モバイル・ノードの集合として含む通信網の中でなされ、さらに、予め決められていない少なくとも1つの通信モバイル・ノードを飛行中に選択し、前記少なくとも1つの通信モバイル・ノードは、予め決められた少なくとも1つの選択基準に照らして前記通信網のモバイル・ノードの集合の中から選択し、前記予め決めた少なくとも1つの選択基準は、信号対雑音比が所定の閾値よりも大きい前記第2航空機、飛行計画が似ているか同じ前記第2航空機、前記第1航空機から最も離れている前記第2航空機、および、下降中の前記第2航空機のうちの少なくとも1つであるデータ送信方法が提供される。
第1の側面によれば、本発明は飛行中にデータを送信する方法を特に目的としており、この方法は、第1航空機と少なくとも1機の第2航空機の間でデータを送信するステップを含んでいて、送信されるデータが、第1航空機に搭載された少なくとも1つのブラックボックスに保管されたデータであることを特徴とする。
【0010】
そのため航空機の惨事が問題の航空機で発生し、ブラックボックスが見つからないか解読できない場合でも、ブラックボックスまたはレコーダのデータは飛行中にその航空機の外部に送信されるため、そのデータに確実にアクセスすることが可能になる(なぜならそのデータは別の航空機によって保護されるからである)。
【0011】
そのデータを受信する第2航空機は、着陸するとき、そのデータのコピーを地上で作成することができることが分かるであろう。
【0012】
一般に、2機の航空機間でのこのようなデータの送信は、可能な通信リンクが何であるかに応じ、常時行なうこと、または定期的な間隔または不定期な間隔で、自動的に行なうこと、または緊急時に乗務員が手動で開始することができる。
【0013】
第1航空機は、状況に応じてブラックボックスのデータを1機ではなく複数の航空機に送信することで、信頼性よく送信する確率を大きくし、したがってデータを保護できることが分かるであろう。
【0014】
データの送信相手である第2航空機は、予め分かってはいないことに注意する必要がある。第2航空機は、データを送信する判断(例えば、第1航空機の機上で下される判断)が下された後に、選択される。
【0015】
予め決められた航空機ではない第2航空機に向けてデータを送信するという事実から、データ送信の柔軟性が生まれ、(必要なときに第2航空機を選択することで)データを、いつでも、そして飛行ゾーンがどこであれ、確実に送信することが可能になる。
【0016】
確かに、飛行ゾーンが衛星によってカバーされていない場合でさえ、本発明によってブラックボックスのデータを保護することができる。さらに、例えば、現在の状況と想定する用途に合わせ、別のデータをブラックボックスのデータとともに送信することができる。
【0017】
可能な1つの特徴によれば、上記の少なくとも1つのブラックボックスからのデータを送信するのに少なくとも100キロビット/秒の通過帯域を必要とする。確かに、飛行データとコックピットの中で録音された音声データを送信するにはこのような通過帯域が必要とされる。
【0018】
ビデオデータを送信する場合には、少なくとも2メガビット/秒を超える通過帯域が好ましかろう。
【0019】
可能な1つの特徴によれば、本発明の方法は、送信するデータを、上記の少なくとも1つのブラックボックスとは異なる中間保管スペースに予め保管するステップを含んでいる。
【0020】
確かに、送信したいデータを上記の少なくとも1つのブラックボックスの設計を変更する必要なしにその少なくともブラックボックスとは異なる保管スペースに配置して、そのデータを処理できると便利である。
【0021】
可能な1つの特徴によれば、本発明の方法は、送信するデータの送信に必要な通過帯域を狭くするため、そのデータを予め処理するステップを含んでいる。
【0022】
このようにすると、通信網上で通過帯域を解放して、他の通信リンクを確立することや、より大きなデータを送信することが可能になる。
【0023】
可能な1つの特徴によれば、本発明の方法は、送信するデータを予め暗号化するステップを含んでいる。
【0024】
このステップは、2機の航空機の間で送信されることになるデータの機密性を保証することを目的としている。
【0025】
したがって適切な解読手段を取り扱う許可された機関だけが、送信されるデータを知ることができる。
【0026】
ある航空機から送信されるブラックボックスのデータを受信する別の航空機は、一般に、そのデータを読むことを許可された機関とは見なされないため、解読手段を持たない。したがって受信側の航空機は受信したデータを読むことはできない。
【0027】
可能な1つの特徴によれば、本発明の方法は、複数の通信手段の中から1つの通信手段を選択するステップを含んでいる。
【0028】
通信手段は、ある手段がまず優先的に利用されるように選択でき(例えば、無線リンクの選択)、その好ましい手段を利用できない場合、または、第1航空機と第2航空機の新たな飛行条件が予め決めた基準を満たさない場合には、別の手段が考えられることが分かるであろう。
【0029】
データ送信は、例えば、無線手段によって、または電線なしの別の通信手段(例えば、携帯電話網、WiMaxなど)によって、さらには衛星手段によってなされる。
【0030】
別の1つの側面によれば、データの送信は、飛行中の航空機を通信モバイル・ノードとして含む通信網の中でなされる。
【0031】
別の航空機に向けたこのようなデータの送信は、データのセキュリティ保全となっている。なぜならこの送信により、問題の航空機の外でそのデータをコピーすることが可能になるからである。
【0032】
可能な1つの特徴によれば、本発明の方法は、飛行中に、通信網の中で、第1航空機(送信側モバイル・ノード)が通信できる少なくとも1つの通信モバイル・ノードを予め探すステップを含んでいる。
【0033】
可能な1つの特徴によれば、本発明の方法は、送信ステップの前に、予め決められていない少なくとも1つの通信モバイル・ノードを飛行中に選択するステップを含んでいて、その少なくとも1つの通信モバイル・ノードは、予め決めた少なくとも1つの選択基準に照らし、通信網のモバイル・ノードの集合の中から選択する。
【0034】
一般に、この選択は、例えば、『最良のノードを決定すること、すなわち所定の瞬間に適用する選択基準にとって最適なノード』を決定することを目的としている。このようにすると、発信側ノード(第1航空機)の通信範囲内に(予め決まっていない)受信側ノードが常に存在することを保証できるため、いつでも、そして飛行ゾーンがどこであってもブラックボックスのデータを送信することができる。
【0035】
1つの特徴によれば、予め決めた少なくとも1つの選択基準は、信号対雑音比(信号の品質)が所定の閾値よりも大きい航空機、(受信側の航空機を利用できる期間を最大にするため)飛行計画が似ているか同じ航空機、同じ航空会社に属するか、複数の航空会社が加盟する同じアライアンスに属する航空機、製造者が同じ航空機、通信範囲内にある航空機、(送信側の航空機と受信者となる航空機の間の相対運動を減らすため)第1航空機から最も離れている航空機、下降中の航空機のうちの少なくとも1つである。
【0036】
これらの基準は、異なるカテゴリーに分けられる。いくつかの基準は、航空機間の通信に関するもの(信号対雑音比、同じ方向に向かって飛行する航空機、通信範囲内にある航空機)であり、別の基準は、むしろ非技術的なものである(同じ会社の航空機、同じ会社が製造した航空機)。
【0037】
通信網の複数のノードの中の最適な1つまたは複数のノードは、例えば、複数のノードから送信されるデータの信号対雑音比をもとにして同定される。そのとき、例えば、信号対雑音比が最大のものが優先される。
【0038】
あるいは問題の航空機の方向に応じ、その航空機の視野内(通信範囲内)に最も長時間留まる航空機(同じ方向に向かう航空機)を優先することができる。
【0039】
そのため飛行中の複数の航空機のそれぞれが通信網の通信モバイル・ノードを構成し、ブラックボックスのデータは、この通信網の第1のモバイル・ノードと第2のモバイル・ノードの間で、常時、またはほぼ常時(例えば、所定の頻度で)送信される。
【0040】
他の選択基準を単独で適用すること、または他の選択基準を上記の基準のどれかと組み合わせて適用することができる。
【0041】
可能な1つの特徴によれば、本発明の方法は、データ送信の前に、選択されたノードとの接続の確立を要求するステップを含んでいる。
【0042】
ノードを探すステップ、最適なノードを選択するステップ、接続の確立を要求するステップは、一般に、送信側ノードによってなされることが分かるであろう。
【0043】
別の1つの側面によれば、本発明はデータ受信の方法を目的としており、この方法は、第1航空機から、その第1航空機に搭載された少なくとも1つのブラックボックスに保管されたデータを飛行中に受信するステップを含んでいて、その受信ステップは、第2航空機の中で実行される。
【0044】
1つの特徴によれば、データ受信の方法は、受信すべきデータを保管するため、保管スペースの利用可能性を予め確認するステップを含んでいる。
【0045】
無駄な送信を避けるため、もちろんデータを受信するためのスペースを利用できるかどうか確認することが好ましい。
【0046】
この確認は、第1航空機の要求により、第2航空機において、接続確立要求を受信した後になされる。
【0047】
1つの特徴によれば、本発明の方法は、受信したデータの保管を、データを受信する第2航空機で利用可能な保管スペースの中で行なうか、そのスペースを利用できない場合には、専用に確保された保管スペースの中で行なうステップを含んでいる。
【0048】
本発明はデータ送信システムを目的としており、このシステムは、飛行中に第1航空機と少なくとも1機の第2航空機の間でデータを送信する手段を備えていて、送信されるデータは、第1航空機に搭載された少なくとも1つのブラックボックスに保管されたデータであることを特徴とする。
【0049】
送信システムは、上記の方法の1つまたは複数の特徴、それどころかすべての特徴を、対応する手段の形態で備えているため、同じ利点を有する。
【0050】
本発明はさらに、航空機に搭載されるデータ受信システムを目的としており、このシステムは、第1航空機から、その第1航空機に搭載された少なくとも1つのブラックボックスに保管されたデータを飛行中に受信する手段を備えていて、このシステムは、第2航空機に搭載されていることを特徴とする。
【0051】
別の1つの特徴によれば、本発明は、上に簡単に説明した送信システムおよび/または受信システムを備える航空機を目的とする。
【0052】
他の特徴と利点は、単なる例示として与えてあって添付の図面を参照して行なう以下の説明に現われるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、発明の一実施態様による送信システムの模式的な全体図である。
図2図2は、通信網のモバイル・ノードを構成する複数の航空機を表わす模式図である。
図3図3は、2機の航空機の間で接続を確立するための一般的なアルゴリズムである。
図4図4は、本発明の一実施態様による受信システムを示す一般的な模式図である。
図5図5は、本発明によるデータ送信法のアルゴリズムである。
図6a図6aは、本発明による接続法とデータ受信法それぞれに関する2つのアルゴリズムである。
図6b図6bは、本発明による接続法とデータ受信法それぞれに関する2つのアルゴリズムである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
航空機に搭載される本発明のシステムは、全体を図1に提示して参照番号10で示してあり、2つのブラックボックスまたはレコーダ12と14を備えていて、一方には、その航空機に搭載された様々なコンピュータから来るデータ全体(例えば、飛行データ(飛行中のその航空機の挙動を反映するデータ))が収集され、他方には、コックピットで録音された音声データが収集される。
【0055】
本発明によれば、上記のデータを2つのブラックボックスの間で様々に分配できることと、別のタイプのデータ(例えば、コックピット内と航空機の環境内で記録されたビデオデータ)をこれらブラックボックスの一方および/または他方の中に収集できることが分かるであろう。さらに、別の一実施態様によれば、1つまたは複数の別のブラックボックスを追加して飛行データと音声データ、および/または別のタイプのデータ(例えば、上記のビデオデータ)を別のやり方で収集することができる。以下の説明では、ブラックボックス12と14の一方および/または他方に言及するとき、それは、異なる数のブラックボックスとあらゆるタイプのデータに適用できるものとする。
【0056】
システム10はさらに、データ送信システム16を備えている。
【0057】
システム16は、2つのブラックボックス12、14の一方または両方から来て航空機の外に送信すべきデータを暗号化する手段18を備えている。
【0058】
ブラックボックスの一方および/または他方に含まれるデータは、互いに同じでも異なっていてもよいことが分かるであろう。
【0059】
さらに、一実施態様では、一方および/または他方のブラックボックスから来るデータは、それぞれのブラックボックスに記録されたデータの全体、またはその中の選択されたデータに対応していてもよい。
【0060】
データの暗号化は、送信されることになるデータの機密保持が目的であることが分かるであろう。特に、そのデータは別の航空機に送信されることになるため、正式に許可された1つの機関または許可された一群の機関だけが読めるようになっていなければならない。そうするためには、暗号化が、データを理解不能にする効果を有する。
【0061】
暗号化は、例えば、公開鍵と私有鍵からなるシステムによって実現され、解読には、関係機関(データを知ることを許可された送信者と受信者)のそれぞれが保持する公開鍵を使用する必要がある。
【0062】
データの機密性をより高めるため、閾値法も利用できることが分かるであろう。閾値法の原理は、データの解読を許可された複数の機関が解読鍵を分ち持つというものである。その場合にそれらの機関は、解読に進むのに全員が合意する必要がある。
【0063】
システム16は、オプションとして、ブラックボックス12、14の一方または両方から来るデータを予め処理する手段を備えている。
【0064】
データ選択手段を、例えば、手段18の一部にすることができる。
【0065】
オプションの処理手段は、例えば、データ量を最適化して、その送信に利用する通過帯域を狭くすることが分かるであろう。
【0066】
例えば、2機の航空機の間の(衛星によらない)有効な一方向性通過帯域は5Mb/秒である。
【0067】
システム16は、保管用の物理的媒体20(例えば、磁気媒体)も備えている。それは、ハードディスク上のバッファ記憶領域または保管スペースが可能である。
【0068】
ブラックボックスの一方または両方から来るデータは、予め暗号化され、独立した中間保管スペース20に保管される。
【0069】
システム16は、保管スペース20から来るデータを処理する手段22(例えば、マイクロプロセッサ、専用電子回路、FPGAタイプのプログラム可能な素子)も備えている。
【0070】
この処理は、複数の機能を実現することができる。
【0071】
最初に、この処理により、データをフレームの形に整形することができる。
【0072】
この整形は、例えば、データを、1つまたは複数のヘッダと、有用なデータが含まれた信号本体とを含む信号の形に構造化することからなる。この処理には、第2の暗号化も含めることができる。ここではその第2の暗号化により、手段18によって予め暗号化されてこれから送信されることになるデータの完全性を保証することができる。
【0073】
この第2の暗号化は、例えば、予め暗号化されたデータから署名を計算することからなる。このような署名は、暗号化されたデータに適用される数学公式から計算によって得ることができる。暗号化されたデータはその後、このようにして計算された署名とともに送信されることになる。
【0074】
システム16は、データを送信する手段24も備えている。この手段は、利用する通信手段に合わせて選択したプロトコルと結びついた通信手続きを送信側の航空機と受信側の航空機の間で利用する。これら2機の航空機間に確立されるこの手続きにより、エラー(宛先に到着しないパケット、パケットの完全性の喪失など)の検出が可能である場合には、送信される信号をよりロバストにすることができる。そのためエラーが検出された場合には、パケットを再送信することができる。
【0075】
システム16はさらに、システム10を備える航空機と1機または複数機の航空機の間に1つまたは複数の接続を確立することのできる手段26を備えている。
【0076】
飛行中の航空機は、通信網のモバイル・ノードを構成する。
【0077】
図2は、このような通信網40の複数のモバイル・ノード30、32、34、36の模式図である。
【0078】
この図では、モバイル・ノード30で示した航空機が、図1のシステム10を備える航空機に対応する。
【0079】
データ送信に利用する通信プロトコルは、接続される接続モードをサポートしている。
【0080】
通信管理手段26は、関係する航空機が一部を構成している通信網のトポロジーを発見する段階を予め実行することが分かるであろう。この発見段階において、手段26は、信号を送り、そして場合によっては応答信号を受信することにより、通信モバイル・ノードが無線の通信範囲内にあるかどうかを調べる。
【0081】
送信は、例えば、無線周波数による双方向性の通信リンクによってなされる。
【0082】
無線周波数タイプの通信の利点は、通過帯域が広いことと利用が無料であること、またはコストが一括料金に含まれていて、利用量に依存した追加コストがないことにある。
【0083】
応答が受信されない場合には、手段16は、オプションとして、衛星リンクに信号を送ることができる。それは、信号が返ってくることで、この通信リンクに従って接続モードになる通信のペアを構成できる1つまたは複数の通信モバイル・ノードを同定できるようにするため、または地上の設備にその信号を送るためである。
【0084】
衛星による通信の利点は、衛星がカバーする地理的範囲と、衛星が大気条件に依存しないことにある。
【0085】
手段26は、特に複数の下位手段、すなわち
− 通信網の中で少なくとも1つの通信モバイル・ノードを探す下位手段(例えば、図2を参照すると、探索は、通信網40のノード32、34、36の中からなされる);
− 探したノードの中から、予め決めた1つまたは複数の基準を満たす1つの通信モバイル・ノードを選択する下位手段(図2のノード32、34、36の中から特定の1つのノードを選択する操作は、例えば、予め決めた基準(これらノードから供給される最良の信号対雑音比)に従って実行される;ノードを選択する別の基準として、通信網の中で最も長く通信範囲内に留まるノードを選択することが可能である);
− 選択したノードとの接続を確立する下位手段を備えている。選択したノードとの接続が確立すると、送信システム16は、選択したノードに向けて(上に示したようにして処理した)データの送信を行なう。
【0086】
選択されたノードは予め決められてはいなかったことが分かるであろう。ノード30にデータ受信のために選択されたノードの存在が知らされるのは、上に説明したばかりの選択プロセスが終わってからである。
【0087】
図3は、図2の航空機30と航空機32、34、36のうちの1機の間で接続を確立するメカニズムを示している。
【0088】
図3に示してあるように、このアルゴリズムは、通信網40の中で1つまたは複数の通信モバイル・ノードを探す第1のステップS1を含んでいる。
【0089】
上述のように、この探索ステップでは、送信に用いられることになる通信網のタイプ、すなわち無線通信網、または光学的通信網、またはコードなしの別のタイプの通信網、または衛星通信網が選択される。
【0090】
利用するそれぞれの物理層(無線、衛星、光など)について、最良のノードの探索がなされる。例えば、図3に示したアルゴリズムを含むソフトウエアの中で最良の物理層の選択がなされる。好ましい物理層の順番は、例えば、決められている。例えば、無線周波数の通信が利用できる(すなわち1つの通信のために複数のノードが通信範囲内にあってそれらのノードを利用できる)限り、この媒体が選択され、そうでなければ4G網が選択されるか、衛星網が選択される。
【0091】
実施例の3つのステップのそれぞれにおいて、最良のノードの探索がなされる。
【0092】
図2の実施例におけるのと同様、無線周波数タイプの通信網が選択されると、ノード30との間のデータ交換を確実かつ最適にするのに最適なノードを選択する必要がある。次の選択ステップS2では、予め決めた1つまたは複数の基準を満たす1つまたは複数のノードが選択される。
【0093】
予め決めた基準の1つは、例えば、1つのノードから来るデータの信号対雑音比の最大化である。
【0094】
別の基準として、例えば、ノードを利用できる期間を最大にするため、航空機30と飛行計画が似た航空機であることが可能である。
【0095】
基準の例として、航空機30と同じ航空会社に属する航空機を探すという基準を用いることもできる。
【0096】
これら基準のうちの1つだけを利用すること、またはこれらの基準を複数組み合わせて利用することができる。
【0097】
探索ステップと選択ステップは、定期的に実行されること、または、例えば、航空機との接続が失われた後に要求に応じて実行されることが分かるであろう。
【0098】
図3のアルゴリズムは、以前に選択した1つまたは複数のノードとの接続を要求するステップS3を含んでいる。
【0099】
接続確立のこの要求は、将来の受信側ノードに対し、重要な情報を送信したいという送信側ノードの望みを伝えることを目的とする。
【0100】
この接続要求を受けた受信側ノードが、自らにとって適切な条件(ノードが、例えば、その航空機または別の航空機とすでに生きた接続になっているわけではない、1つまたは複数の保管スペースを受信側ノードの中で利用できる、など)でそれを受け入れるときには、接続が確立される。すると、例えば、接続を受け入れる航空機32に向けて航空機30のデータを送信するステップ(ステップS4)が実行される。
【0101】
アルゴリズムは、接続を終わらせるステップS5で終了する。
【0102】
最良の受信側ノードを選択するとき、2つの選択肢が考えられることに注意する必要がある。
− 第1の選択肢は、航空機30との間でまだ生きている最も悪い接続のうちの1つを、同定されたばかりの新しい接続で置き換えることからなる;
− 第2の選択肢は、この新たなより優れたノードを救援ノードとして保持し、そのノードとの接続は、現在のノードとの間に存在している通信が失われた後にしかなされないようにすることからなる。
【0103】
図4は、航空機に搭載されるデータ受信システム50の模式図である。対象となる航空機は、利用される選択基準(例えば、地理的な近さ)を考慮して、航空機30のレコーダまたはブラックボックスのデータを回収する第1候補である、例えば、上記の航空機32である。
【0104】
システム50は、航空機30が送信するデータの受信手段52を備えている。それは、例えば、利用される通信の物理的リンクに応じた無線、光、衛星などによる受信手段である。
【0105】
システム50は、保護用の保管スペース54と、そのスペース54を利用できない場合のために確保されている保管スペース56も備えている。したがって受信したデータは、適切なスペースに保管される。
【0106】
航空機32は、図1と同じ手段を備えていることが分かるであろう。そうすることで、通信のタイプが許すのであれば(双方向通信)、航空機32は自らのデータを航空機30に送信することが可能になる。
【0107】
航空機32が地上にいるときに航空機30のデータは回収され、所定の期間にわたって保管され、場合によっては解読後に利用するため、必要に応じて航空会社、地方、空港によって一カ所にまとめられる。
【0108】
図5は、本発明によるデータ送信法のアルゴリズムを示している。
【0109】
このアルゴリズムは、ブラックボックスまたはレコーダの中に存在するデータを送信することになる航空機に搭載されて実行される。
【0110】
このアルゴリズムは、ブラックボックスまたはレコーダ12と14から来るデータを回収した後に、例えば、図1のシステム16によって実行される。
【0111】
このアルゴリズムは複数のステップを含んでおり、そのうちでS10と表記する第1のステップは、アルゴリズムの開始ステップである。このアルゴリズムの次のステップS12は、航空機が危機モードにあるかないかを確認するテストである。
【0112】
危機モードは、航空機が重大な1つまたは複数の問題に直面していることを特徴とする。これは、この航空機を送信元とする通信が、このモードではない別の送信に優先されるモードである。
【0113】
このモードは、手動または自動で発生させることができ、近くにいる1機の航空機または航空機群(例えば、図2の航空機32、34、36)にブラックボックスのデータ(または選択されたいくつかのデータ)を送信して、この領域内のそれら航空機のうちの1機または複数機にそのデータを強制的に記録させることを目的としている。
【0114】
保護を目的としたこれらデータの送信は、予め決めた基準(例えば、利用可能性や、好ましい手段(例えば、無線)であるという理由)に従って選択された通信手段によって実現されることが分かるであろう。
【0115】
しかし何らかの理由(例えば、この手段が利用不能であるとか、例えば、一時的に通信網が失われたなど)でこの手段を利用できない場合には、データを送信するのに別の通信手段に頼ることが考えられる。
【0116】
好ましい第2の手段として、例えば、別の通信手段(例えば、衛星)を自動的に選択することができる。
【0117】
受信側の航空機(ノード)によるデータ受信手続きに関してあとで述べることだが、危機モードの情報を検出した何機かの航空機は、そのデータと、困難な状況にある航空機の地理的位置を、保護用の保管スペースに保護する義務がある。
【0118】
通信プロトコルは、困難な状況にある航空機からの情報を回収するようにされている。
【0119】
さらに、危機モードでは、問題の航空機(例えば、図2の航空機30)のデータ送信システムは、衛星リンクを通じてブラックボックスのデータを地上局まで送信し、できるだけ早い救援と調査チームの編成を求めることが可能であることに注意する必要がある。
【0120】
危機モードが検出されたとき、複数の選択肢が考えられる。
【0121】
最初に、困難な状況の航空機が存在する地理的領域にいる航空機の飛行計画を変更し、後者の航空機ができるだけ長く前者の航空機を追跡してその飛行情報と位置を回収できるようにすることが可能である。図5のステップS14におけるように、危機モードでは、危機モードにある1機または複数機の航空機からのすでに確立している接続を除き、それ以外の航空機との間に存在している接続を中断または放棄することも考えられる。このようにすると、困難な状況の航空機にできるだけ多くの通過帯域を提供し、その航空機からのデータの回収を最適化することができる。
【0122】
また、困難な状況にある航空機からのデータ回収時間を最適化するため、そのデータを1機だけではなくて複数の航空機に分散することや、異なる複数の物理層(無線、光、衛星など)を利用してそのデータを分散することが考えられることも分かるであろう。
【0123】
航空機の外にブラックボックスのデータを送信する判断がなされると、そのデータは、手段22によって保管スペース20の中に回収される。
【0124】
次のステップS16では、送信するデータを断片化してデータ・パケットにする。それぞれのデータ・パケットは、ヘッダと、有用なデータを含む本体からなる。
【0125】
この断片化は、物理層と、利用する通信プロトコルに合わせて実行される。
【0126】
このようにしてすべてのパケットが同じ宛先に送信される。
【0127】
データを複数の航空機に分散する場合、同じパケットは、例えば、並列してこれらの航空機群に送信されることが分かるであろう。次のステップS18は、送信すべきデータの断片が残っているかどうかを判断することのできるテストである。送信を待っている断片がまったく残っていない場合には、アルゴリズムはステップS20で終了する。
【0128】
送信を待っている断片が残っている場合には、ステップS18の後に、ヘッダを作成して送信すべきデータの信号(パケット)に付加するステップS22が続く。
【0129】
このようにして作成されたヘッダは、データ管理に役立つ。
【0130】
例えば、そのヘッダは、特別な情報(例えば、航空機を同定することのできる情報(コード)など)の存在を示すフラグまたはマーカーを有する。
【0131】
アルゴリズムは、送信するデータの完全性を保証するため、送信すべき信号に情報を付加する次のステップS24を含んでいる。
【0132】
データの完全性を保証するためになされる処理は、図1を参照してすでに説明した処理であり、手段22によって実現される。
【0133】
次のステップS26では、送信する信号の中に、送信するデータが危機モードにある航空機からのものであることを示す印を付ける。この印は、例えば、ステップS22で作成されたヘッダに付加される。
【0134】
次のステップS30では、図3のアルゴリズムの実行後、すでに上に説明したようにパケットになったデータが(無線リンク、衛星リンク、光リンク、4Gリンクなどによって)物理的リンクに送信される。
【0135】
図3を参照して説明したトポロジー発見機構は、モバイル・ノードの無線周波数網と衛星網に適しているため、通過帯域と局所的リソースの消費が多くなりすぎないよう、性能の側面を考慮せねばならない。
【0136】
この点に関し、接続の確立を望む航空機が、定期的または準定期的に機能するタイマーに従って接続要求を送ることが考えられよう。
【0137】
さらに、接続の確立は、例えば、プロトコル層のうちの1つの中で少なくともなされることが分かるであろう。
【0138】
ここでの実施態様では、接続は、単一の層の中で確立することが好ましい。なぜなら異なるプロトコル層に対して複数の接続がなされると送信システムが複雑になって性能が低下するからである。
【0139】
世界中の航空機群の無線周波数網のように非常に密な無線周波数網は、機能を変化させることなく非常に大きな負荷に耐えることができねばならない。
【0140】
そうするため、そしてブロックされる可能性(例えば、周波数帯域の飽和)を避けるため、航空機ごとの接続の数を制限する。
【0141】
例えば、Nが出ていく接続の数、N’が入ってくる接続の数、Mが接続数の合計、Kが保護の場所の数を表わす場合に、出願人は、以下の関係を確立した:
N’=N
M=2×N
K=M+1。数字の1は、危機モードにある航空機のデータを保管するために常時確保されている保護の場所を表わしている。
【0142】
ここでの実施態様では、出ていく2つの接続と入ってくる2つの接続を利用する。
【0143】
データ送信に利用される通信手段の1つは、モバイル・ノード間のデータの送受信に双方向性無線通信網を利用している。
【0144】
このような通信網は、必ずしも本発明の実施専用ではなく、航空機の別の1つまたは複数の機能を保証するのにも使用できる。使用されるシステムは、例えば、本発明の実施に必要な通過帯域と通信範囲(通信が物理的に可能な最大距離)のほか、特性(例えば、必要なレベルの確実性の提供やサービス品質の管理が可能な技術でなければならない)を提供するWifiシステムまたはWimaxシステムである。
【0145】
送信すべきデータの断片が残っているかどうかを確認するため、送信ステップS30の後に、すでに上に説明したステップS18が続くことが分かるであろう。
【0146】
すでに上に説明したテストするステップS12に戻ると、危機モードが確認されないとき、次のステップS31において、必要な場合には送信するデータの断片化を実行する。
【0147】
このステップは、すでに上に説明したステップS16と同じである。
【0148】
ステップS31の後に、送信すべきデータの断片が残っているかどうかを判断できるテストを行なうステップS32が続く。
【0149】
残っていない場合には、このステップの後に、送信アルゴリズムを終了させるステップS20が続く。
【0150】
残っている場合には、ステップS32の後に、1つまたは複数のヘッダを作成して送信すべきデータの信号に付加するステップS34が続く。
【0151】
このステップは、すでに上に説明したステップS22と同じである。
【0152】
データの完全性を保証するため情報を付加する次のステップ(S36)は、すでに上に説明したステップS24と同じである。
【0153】
次のステップS40では、前のステップにおいて構成したデータが、ステップS30において前にすでに説明したような物理的リンクに送信される。
【0154】
したがってデータは、通信網の中で送信に最適な受信側ノードとして予め選択された航空機に送信される。
【0155】
有効な複数の航空機が検出された場合には、すなわち予め決めた1つまたは複数の基準を満たすとして複数の航空機が選択された場合には、それら航空機の中の最適な航空機と第1の接続がなされる。
【0156】
その航空機に向けて送信されるブラックボックスの優先的なデータは、調査の場合に最も重要なデータ、すなわち最新のデータである。
【0157】
可能な場合には、データは、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで、すなわちデータがブラックボックスによって取得されていくのに合わせて送信される。
【0158】
第2の接続は、例えば、より古いデータ(例えば、数分(例えば、t−15分)前のデータ)を送信するために選択された別の航空機との間でなされる。
【0159】
第2の接続は、例えば、通信網の中でモバイル・ノードを探しているときに見つかった第2の『優れた』ペアとの間に確立される。
【0160】
優先的に送信されるのは、リアルタイムで得られたデータであることが分かるであろう。
【0161】
例えば、物理的リンクが失われたり、最良のリンクが検出されたりするとすぐに、リアルタイムでのデータ送信を再確立するため送信アルゴリズムが実行される。
【0162】
これは、そのために別の生きている送信を終わらせる必要がある場合でさえ実行される。
【0163】
ステップS40の後、すでに上に説明したテストのステップS32が続く。図1の送信システム16で用いられる物的プラットフォームは、例えば、暗号通信部品の利用によって信頼レベルが改善されたPCタイプの開放プラットフォームである。その部品は、例えば、『信頼されるコンピューティング・グループ』の名称で知られるTCGと呼ばれる組織が規定したTPM(信頼されるプラットフォーム・モジュール)というモジュールである。
【0164】
図6aは、本発明によるデータ受信法の一部のアルゴリズムを示している。このアルゴリズムは、例えば、図2に示したモバイル網の中の航空機(例えば、最良の通信ペアであるとして航空機30によって選択された航空機32)によって実施される。
【0165】
このアルゴリズムは、アルゴリズムを開始させるステップS50から始まる。
【0166】
このアルゴリズムは、航空機30からの接続要求を受信するステップS52を含んでいて、その後にテストするステップS54が続く。
【0167】
このステップでは、接続命令を出す航空機30との接続がすでに生きた状態であるかどうかを確認する。
【0168】
生きている場合には、このステップの後に接続拒否のステップS56が続き、ステップS58によってアルゴリズムが終了する。
【0169】
逆に航空機30とのいかなる接続ももはや生きていない場合には、ステップS54の後にステップS60が続く。
【0170】
このステップでは、航空機30が危機モードにあるかないかを判断するテストが行なわれる。
【0171】
危機モードにある場合には、このステップの後に、接続要求を受け入れることを目的としたステップS62と、現在進行中の他の通信を終わらせる(選択された航空機32と他の航空機の間に存在している他の接続を放棄または阻止する)ことを目的としたステップS64が続く。
【0172】
危機モードは、例えば、予め決めたいくつかの事象の検出をもとにして、接続要求を出す航空機の中で決定されることが分かるであろう。そのような事象は、致命的な故障の検出、および/または飛行パラメータの憂慮すべき測定結果(例えば、所定の閾値を超過)と結びついている可能性がある。
【0173】
したがって危機モードを選択する目的は、データ受信が可能な地理的領域の中に位置するあらゆるモバイル・ノードから発信されたブラックボックスのデータの受信を優先することにある。
【0174】
ステップS64の後、アルゴリズムを終了させるステップS58が続く。
【0175】
ステップS60に戻ると、実施されたテストの結果から航空機が危機モードにないことが分かったときには、テストする次のステップS66が実行される。このステップでは、航空機で保管スペース(保護の場所)を利用できるかどうかが判断される。
【0176】
利用できない場合には、接続が拒否される(ステップS56)。
【0177】
逆に、保管スペースを利用できる場合には、接続が受け入れられる(ステップS68)。
【0178】
接続要求を出す航空機が危機モードにないとき、保管スペースが利用できないのであれば、この航空機からのデータの受信と保管は優先されないことが分かるであろう。
【0179】
以下に図6bを参照して説明するように、危機モードが検出されるときには、それとは異なる。
【0180】
図6bのアルゴリズムは、選択された受信側の航空機に受信されたブラックボックスのデータを保護する方法をより詳しく示している。
【0181】
このアルゴリズムは開始ステップS80から始まり、その後に受信すべきデータの断片(パケット)の存在を確認するテストのステップS82が続く。
【0182】
存在していない場合には、このステップの後にアルゴリズムを終わらせるステップS84が続く。
【0183】
逆に受信すべきデータの断片が残っている場合には、このステップの後に、受信したデータの完全性を確認するステップS86が続く。
【0184】
データの完全性を調べるために設けられる手段は当業者には公知である(例えば、MD5またはRSAというアルゴリズムで署名を用いる)。受信データが送信データと同じでない場合には、発信側の航空機に警告し、したがってデータを再度送信できるようにする処理がなされる。
【0185】
ステップS86の後、受信データの信号のヘッダに含まれる情報を確認することを目的としたステップS88が続く。
【0186】
このステップでは、特に、送信側ノードが困難な状況にある航空機であることを受信側ノードに知らせるマーカーまたはフラグを必要に応じて同定する。
【0187】
この確認ステップにより、例えば、他の情報(発信者、受信者、パケットの順番を示す番号など)を同定することができる。これらの情報は、必要な場合にデータをあとから組織化または再現するのに役立つ。
【0188】
ステップS88の後、テストするステップS90が続く。
【0189】
このステップでは、ステップS88の結果に応じ、ブラックボックスのデータの出所である航空機が危機モードにあるかないかを判断する。
【0190】
危機モードにない場合には、このステップの後に、利用できる保管スペース(保護の場所)に受信データを保管するステップS92が続く。
【0191】
逆に、ステップS90で実施したテストの結果から、データが危機モードにある航空機からのものであることが分かった場合には、このステップの後にテストするステップS94が続く。
【0192】
このステップでは、航空機で保管スペースを利用できるかどうかが確認される。特に、確保されているゾーンが『満杯になる』ことを避けるため、従来の保管スペースを優先的に利用できるかどうかが確認される。
【0193】
従来の保管スペースを利用できる場合には、ステップS94の後に、このスペースに受け入れたブラックボックスのデータを保管するステップS96が続く。
【0194】
逆に、従来のいかなる保管スペースも利用できない場合には、ステップS94の後に、確保されている保管スペース(専用スペース)の中にブラックボックスのデータを保護するステップS98が続く。
【0195】
このようにして利用可能な特別の保管スペースの存在が保証されるため、危機モードにある航空機からのデータを常に受信することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b