【実施例】
【0024】
実施例1
AZ31インプラント材料
本実施例は、かかるマグネシウム合金に対するこの血液動態環境中の腐食作用を検討するために、ヒツジ大動脈へのAZ31から製造されたフットプレートの移植について説明する。
【0025】
図3(a)〜(b)は、腐食されていない試験試料に対する15日間の外植片、ヒツジ大動脈(後腹膜到達法)の結果の写真を示す。
図3(a)は、それぞれのフットプレートの底部を示し、
図3(b)は、それぞれのフットプレートの上部を示し、腐食されていないフットプレート試験試料は、
図3(a)および
図3(b)のそれぞれの左手側にある。吸収に要する時間はおよそ150日になるものと推定される。
【0026】
次に示す実施例の目的は、生理血液動態環境中の合金溶解速度に対するAl含量の影響について特性評価することである。Mgの生体適合性は公知であるが、より迅速な生体吸収速度が、閉鎖デバイスインプラントの実施態様のための目的である。
【0027】
実施例2
本実施例は、特定のMg‐Al合金の腐食によって、生体吸収動力学を決定することを試みたインビボ試験について説明する。該試験を、ヒツジ大腿動脈(ヒト大腿部モデルと同様の血流条件、同様の血液化学物質、同様の内腔および動脈壁生理、ならびに同様の内皮生理を有する、ヒト大腿部モデルの類似物)においてインビボで行った。また、インプラントに対する病理組織の反応も、ヒトの反応と類似している。本研究に使用する動物(動物G3924(8時間で屠殺)、動物G3918(4時間で屠殺))は、2歳以上および200ポンド以上であった。
【0028】
簡潔には、0.74mmの径および5.1mmの長さの小さい円筒状Mg合金試料を、18ゲージアクセス針を使用して、ヒツジの大腿動脈に移植し(切開法)、単一の縫合によって血管壁に固定した。このようにして、該試料を、血管閉鎖デバイスの操作と一致する方法で、実際の血流および化学物質、血管拘縮、血管壁テクスチャー、ならびに内皮成長に関連する環境上の影響に暴露させた。
【0029】
異なる5つの合金について検討した。Mg合金試料には、市販の合金対照としてAZ31が含まれていた。残る合金は、Mg‐Al‐Feの三元組成を有していた。合金化学作用および表面処理を用いて、腐食速度を調節した。Al合金内容物を含む遷移金属は、下の表1に示すように、1重量%から8.25重量%まで及んだ。少量のFeを腐食活性化剤として合金に加えた。Feを含む遷移金属は、Mg腐食の強力な腐食活性化剤である。AlおよびZnの添加によって、機械的性質を変化させることができる。MgへのAlおよびZnの添加は、希釈塩化物溶液におけるMgの腐食速度に顕著な影響を与えない。Joseph R. Davis, Metals Handbookの
図1(3% NaCl溶液中への代替的浸漬によって決定されるマグネシウムの腐食速度に対する合金化および汚染金属の影響のグラフを示す)を参照されたい。
【0030】
【表1】
【0031】
その後、試料を、硫酸鉄改良硫酸または酢酸溶液のいずれかで化学処理した。試料を、たとえば、1gの98%硫酸H
2SO
4と10mL蒸留水中0.04gのFeSO
4の水溶液中で処理して、Feおよび遷移金属不純物を有する表面を富化した。この表面処理を行って、腐食をさらに刺激することを試みた。
【0032】
図9は、本発明の実施態様による、Mg‐Al‐Fe合金の研磨された断面を示す走査型電子顕微鏡(SEM)の像である。不純物元素およびFeおよびMnなどの遷移元素(不純物自体である場合がある)を、これらの粒子に濃縮する。この種の粒子は、Mg合金の腐食のための重要な開始部位であり、腐食のための活性化部位であると考えることができる。腐食開始部位の分散は、高い腐食速度の達成、および、腐食が構成要素の表面にわたって幾分均一を維持するのを保証することにとって重要である。示された遷移金属を多く含む金属間粒子は、試験合金によって、基本的に一貫性があり、均等で、均一な分散を有する。下の結果の節で論ずるように、この分散によって、基本的に均等な腐食速度、均一な腐食挙動が生じる。
【0033】
6つのインプラントを1つの大腿動脈ごとに1cm間隔で加えた(それぞれの4つのMg‐Al‐Feのうちの1つと、対照としての2つのAZ31)。
【0034】
図4は、本発明の実施態様による、ヒツジ大腿動脈への移植前のインプラント試験試料のうちの1つの写真を示す。
【0035】
図5は、本発明の実施態様による、ヒツジ大腿動脈への移植後の前方暴露の写真を示す。
【0036】
図6(a)〜(d)は、(a)移植4時間後の左大腿動脈、(b)移植8時間後の左大腿動脈、(c)移植4時間後の右大腿動脈、および(d)移植8時間後の右大腿動脈のエクスビボの全体組織構造を示す。
【0037】
図7(a)〜(d)は、本発明の実施態様による、炎症反応をほとんど示さない、ヒツジ(動物G3918)の大腿動脈の一部の病理組織を示す。
【0038】
下の表2および3は、表1に示す合金から製造されたヒツジインプラントの腐食減量分析を示す。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
結果は、試験Mg‐Al合金がすべて5日以内の暴露で完全に溶解したことを示し、このことは、短期間の暴露でほとんど腐食しなかったMg合金AZ31よりも劇的に速い腐食速度であることを指し示している。腐食速度は、Al含量の増加に伴って、増加することが分かった。これは、SBFおよびMEMにおけるMg‐Al合金について報告された腐食速度データのうちの一部と一致しない傾向であった。Wenらによって行われた研究において、AZ91は、約0.01mg/cm2‐hrの速度で腐食することが分かった(Z. Wen, C. Wu, C. Dai, F. Yang, J. Alloys and Compounds, 488, 392−399 (2009)参照)。一方、Kirklandらは、Mg‐9A1で0.004mg/cm2‐hrの腐食速度を見出した(N.T. Kirkland, J. Lespagnol, N. Birbilis, M.P. Staiger, Corrosion Sci., 52, 287−291 (2010)参照)。
【0042】
図8は、インビボで暴露した表面処理Mg‐8.25A1の腐食速度が、0.6mg/cm2‐hrから1.3mg/cm2‐hrに及ぶ速度で腐食することを示し、これは、静止シミュレートインビトロ環境よりも約2桁速い。結果は、Al含量への腐食速度の強い依存、および、閉鎖デバイス用途に適した腐食速度を示す。
【0043】
図10(a)〜(b)は、一部の参照された既存の文献で論じられたものと、本発明の実施態様による血液動態暴露における、生体環境刺激物での腐食速度の比較を示す。
【0044】
腐食形態の点では、観察された腐食は、本質的に、本来均一である(均一の局所的腐食)。試験Mg‐Al‐Fe合金の腐食は、AZ31に対して速かった。
図11は、腐食の範囲を示す、外植されたMg合金試料の光学顕微鏡写真である。8時間暴露後のAZ31を上に示し、4時間暴露後のMg‐8.25Alを真ん中に示し、また、8時間暴露後のMg‐8.25Alを下に示す。
【0045】
MgとAlの水酸化物が混合したものと推測される、黒ずんだ腐食物は、外植された動脈部分の組織検査で明らかである。負の免疫反応の徴候はない。別の長期研究であっても、何十日も不変である。実際、閉鎖デバイスインプラントとその構成要素に関する別の研究は、Mg合金構成要素の内皮化、ならびに十分な創傷閉鎖および治癒を示す。
【0046】
これらの結果は、特別に設計されたMg‐Al合金が、血液動態環境において、用途に適切な時間枠(好ましくは、およそ1〜2日、最大5日以内)で閉鎖デバイスインプラントの実施態様のMg系成分の生体吸収が生じる、腐食速度を実証することを示す。また、結果は、Mg‐Al‐Fe合金のAl合金含量の調整によって、インビボの腐食速度を顕著に調整する性能も示唆する。この調整は、必要に応じて行うことができる。
【0047】
実施例3
腐食速度を調整するためのマグネシウムおよびマグネシウム合金の表面前処理
本実施例は、一時的にまたは恒久的にインビボ環境での溶解速度を増加させるマグネシウムおよびマグネシウム合金の表面の改質について説明する。
【0048】
簡潔には、処理は、浸漬、噴霧またはブラシ研摩をし、その後、清浄な水で洗浄し、乾燥させることによって、特別に調製した水溶液と合金とを接触させることを含む。溶液組成は、適切な酸を添加して、合金を活性化し、溶液のpHを改善すること、および、腐食の増加を達成するために具体的に選択される促進剤を添加することによって定義される。この処理を通じて、合金の表面組成を、(1)Mg構成要素が選択的に腐食するので、合金に既に含まれていた不純物を濃縮し、(2)酸および促進剤の添加に関係する溶液から生成物を堆積させることによって、改良する。
【0049】
適切な無機酸には、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、およびホスホン酸が含まれる。酸の濃度は、溶液1リットル当たり1mg〜10gの範囲であり得る。適切な有機酸には、クエン酸、酒石酸、酢酸、およびシュウ酸が含まれる。適切な促進剤は、一般に、可溶性遷移金属塩であるが、通常、もっぱら、鉄、マンガンおよびコバルトではない。促進剤の濃度は通常、酸の濃度よりもはるかに少なく、溶液1リットル当たり0.01mg〜1gの範囲である。
【0050】
溶液と処理表面の間の接触時間を、さらに腐食速度を調整するために変更してもよい。接触時間は、前処理溶液の化学作用および所望の腐食速度に基づいて、5秒〜10分の範囲であり得る。前処理後、表面を蒸留水または脱イオン水で十分に洗浄して、前処理溶液と合金の間の相互作用を停止させる。使用前の表面処理はこれ以上必要ではない。次に示すものは処理の例である。
【0051】
Mg合金試料を、1gの98%硫酸H
2SO
4と10mL蒸留水中0.04gの硫酸鉄FeSO
4の水溶液中で浸漬することによって、前処理した。試料を、最低90秒間および120秒未満、合金型によって25のバッチで処理した。前処理溶液中における浸漬後に、試料を洗浄し、風乾させた。試料バッチを前処理前後に秤量した。次の表4に示すように、腐食減量を計算し、試料ごとの腐食減量を評価した。
【0052】
【表4】
【0053】
結果は、試料ごとに0.14mgから0.46mgまで、Mg‐3Al、Mg‐6Al、およびMg‐8Al試料の腐食減量が規則的に増加することを示す。この反応は、Mg‐Al合金の溶解速度が、Al含量の増加に伴って増加するという予想と一致している。AZ31およびMg‐1Al試料の腐食減量は、試料ごとに0.24mgおよび0.28mgであり、他の試料によって示された傾向を外れて現われる。試料のこれらの2つのバッチは、非常に小さい試料の除去および洗浄の困難さにより、90秒よりも長い時間、前処理溶液に接触させた。Mg‐3Al、Mg‐6Al、およびMg‐8Al試料の前処理プロトコールを改良し、これらの浸漬時間は、90秒の標的に非常に近かった。AZ31B試料以外の試料はすべて、前処理後に鮮明な光沢のある表面を示した。AZ31B試料はわずかに黒くなった。
【0054】
本発明が種々の変更および代替の形態を許容する一方で、その具体例を、図面に示し、本明細書に詳述した。しかしながら、本発明は、開示された特定の形態または方法に限定されず、反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲にある変更、同等物、および変形例のすべてを網羅するものと理解される。