特許第5981943号(P5981943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5981943超高分子量ポリエチレンからの高強度テープ物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981943
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】超高分子量ポリエチレンからの高強度テープ物品
(51)【国際特許分類】
   B29D 7/01 20060101AFI20160818BHJP
   B29C 55/06 20060101ALI20160818BHJP
   B29B 15/08 20060101ALI20160818BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20160818BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20160818BHJP
【FI】
   B29D7/01
   B29C55/06
   B29B15/08
   B29K23:00
   B29L7:00
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-552648(P2013-552648)
(86)(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公表番号】特表2014-507314(P2014-507314A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】US2012023712
(87)【国際公開番号】WO2012106567
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】13/021,262
(32)【優先日】2011年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】タム,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ブーン,マーク・ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】コッレアーレ,スティーヴン・トーマス
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−526406(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0155511(US,A1)
【文献】 特表平06−502227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/06
B29B 15/08
B29D 7/01
B29K 23/00
B29L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも10:1の平均断面アスペクト比;及び
10℃/分の一定速度での30℃の温度から200℃の温度への温度上昇DSCスキャンによって測定して0.15未満の、曲線(120℃〜165℃)下の全面積に対する曲線(120℃〜Tm開始点)下の低温面積の比;
を有する、超高分子量ポリエチレンマルチフィラメントヤーンから製造されるテープ物品。
【請求項2】
テープ物品が、小角X線分析によって測定して450オングストローム(Å)未満の長周期を有しない、請求項に記載のテープ物品。
【請求項3】
10℃/分の一定速度での30℃の温度から200℃の温度への温度上昇DSCスキャンによって測定して、曲線(120℃〜165℃)下の全面積に対する曲線(120℃〜Tm開始点)下の低温面積の比が0.05未満である、請求項1に記載のテープ物品。
【請求項4】
10mmよりも大きい幅を有する、請求項1に記載のテープ物品。
【請求項5】
ボイドフリーである、請求項1に記載のテープ物品。
【請求項6】
複数の請求項1に記載のテープ物品から形成される布帛または積層体。
【請求項7】
25g/d(2.15GPa)〜100g/d(8.62GPa)のテナシティーを有する超高分子量ポリエチレンマルチフィラメントヤーンから製造されるテープ物品であって、
少なくとも10:1の平均断面アスペクト比;及び
10℃/分の一定速度での30℃の温度から200℃の温度への温度上昇DSCスキャンによって測定して0.15未満の、曲線(120℃〜165℃)下の全面積に対する曲線(120℃〜Tm開始点)下の低温面積の比;
を有する、テープ物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、現在係属中の2009年8月11日出願の米国特許出願12/539,185の一部継続出願である。
[0002]本発明は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)から製造されるテープ物品に関し、またかかるテープ物品から製造することができる布帛、積層体、及び耐衝撃性材料にも関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]耐衝撃性及び耐貫入性の材料は、スポーツ用品、安全服のような多くの用途における使用、及び最も重要には個人用防護具における使用が見出されている。
[0004]種々の繊維強化構造体が、ヘルメット、パネル、及びベストのような耐衝撃性、防弾性、及び耐貫入性の物品において用いることに関して知られている。これらの物品は、発射体又はナイフからの衝撃による貫入に対して種々の度合いの抵抗性を示し、種々の単位重量あたりの有効性を有する。
【0003】
[0005]例えば、防弾効率の指標は標的の単位面密度あたりの発射体から除去されるエネルギーである。これは、「SEA」と略称される比エネルギー吸収として知られており、Kg/mあたりのジュール数又はJ−m/Kgの単位を有する。繊維構造体のSEAは、構成要素の繊維の強度、引張弾性率、及び破断エネルギーが増加すると一般に増加することが知られている。しかしながら、繊維強化材の形状のような他のファクターが関与する可能性がある。米国特許4,623,574においては、リボン形状の強化材とマルチフィラメントヤーンを用いるもの(いずれも超高分子量ポリエチレン(UHMWPE))とを用いて構成される複合体の防弾効率の間の比較が示されている。繊維はリボンよりも高いテナシティーを有していた(30g/デニール(g/d)(2.58GPa)に対して23.6g/d(2.03GPa))。しかしながら、リボンを用いて構成される複合体のSEAは、ヤーンを用いて構成される複合体のSEAよりも若干高かった。而して、米国特許4,623,574は、リボン形状の強化材を用いて構成される複合体は、防弾性複合体の製造においてマルチフィラメントヤーンよりも有効である可能性があることを示す。
【0004】
[0006]UHMWPEメルトブローンフィルムの製造の一例が、Takashi Nakaharaら, "Ultra High Molecular Weight Polyethylene Blown Film Process", ANTEC 2005, 178-181 (2005)によって与えられている。このプロセスによって製造されるフィルムを切断及び延伸して、高強度テープが製造された。延伸ブローンフィルムから製造されるテープのテナシティーは、20g/d(1.72GPa)未満であった。
【0005】
[0007]米国特許5,091,133;5,578,373;6,951,685;7,740,779においては、ポリエチレン粉末を昇温温度において圧縮して粒子を連続シート中に結合させ、これを次に更に圧縮及び延伸することが開示されている。米国特許5,091,133においては、この後者のプロセスによって製造される3.4GPaの引張り強さを有する繊維が記載されている。かくして製造されるポリエチレンテープは、BAE SystemsによってTENSYLONの商標で商業的に入手できる。TENSYLONのウエブサイトにおいて報告されている最も高いテナシティーは、19.5g/d(1.67GPaの引張り強さ)である。
【0006】
[0008]Spectra繊維から製造されるUHMWPE複合体の製造を記載している例は、Yachin Cohenら, "A Novel Composite Based on Ultra-High-Molecular-Weight Polyethylene", Composites Science and Technology, 57, 1149-1154 (1997)によって与えられている。プリプレグを形成しながら繊維表面を膨潤させて繊維間の接着を促進させるために、Spectra繊維を張力下で溶剤によって処理した。次に、ヤーンプリプレグをプレート上に巻回して一方向層を形成し、これを次に圧縮及び加熱して溶剤を除去して、先に溶解した繊維表面から形成される再結晶化UHMWPEマトリクス中にUHMWPE繊維を含む複合体シート材料を形成した。この研究者らは、UHMWPEの独特の特性によって、それはUHMWPE繊維と共に用いるマトリクス材料のために望ましい候補物質になると述べている。しかしながら、これは次の幾つかの理由のためにこれらの溶剤ベースのプロセスを用いる前は可能ではなかった。(1)配向UHMWPE繊維と非配向UHMWPEマトリクスの融点の差は過度に小さく;(2)UHMWPEの非常に高い溶融粘度によって、複合体材料を形成するための成形プロセスにおいてごく僅かな溶融流れしか得られず;(3)UHMWPEマトリクスに対する未処理のUHMWPE繊維の接着が比較的劣っている。
【0007】
[0009]米国特許5,135,804においては、圧縮の前に繊維の溶剤又は樹脂による処理を行わないで、一方向に整列しているゲル紡糸ポリエチレン繊維を加熱及び圧縮することによって製造される高強度プラークが記載されている。プラークの幾つかの例は、3インチ四方の金属プレートの周りに繊維を巻回し、次にこのアセンブリを加熱プレス内で数分間圧縮することによって形成された。加熱圧縮したUHMWPEプラークは、空隙を実質的に有さず、実質的に透明であった。
【0008】
[0010]米国特許5,628,946においては、熱可塑性ポリマー繊維を、まずポリマー繊維の一部を選択的に溶融するのに適した昇温温度において圧縮して互いに接触させ、次に昇温温度において第2のより高い圧力で圧縮して材料を更にコンソリデーションすることによって製造される均一なポリマーモノリスが記載されている。Spectra繊維から製造される3mm×55mm×55mmの寸法のモノリスシートの例が与えられており、これは、繊維の一方向に整列させた束を、成形型内で152℃において、最初の圧力において10分間、そしてより高い圧力において30秒間圧縮した。圧縮したシートのDSC追跡は、約35%の元々の繊維の溶融によって形成される「第2の相」を示したと述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許4,623,574号明細書
【特許文献2】米国特許5,091,133号明細書
【特許文献3】米国特許5,578,373号明細書
【特許文献4】米国特許6,951,685号明細書
【特許文献5】米国特許7,740,779号明細書
【特許文献6】米国特許5,135,804号明細書
【特許文献7】米国特許5,628,946号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Takashi Nakaharaら, "Ultra High Molecular Weight Polyethylene Blown Film Process", ANTEC 2005, 178-181 (2005)
【非特許文献2】Yachin Cohenら, "A Novel Composite Based on Ultra-High-Molecular-Weight Polyethylene", Composites Science and Technology, 57, 1149-1154 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0011]本発明は、概して、超高分子量ポリエチレンマルチフィラメントヤーンから製造されるテープ物品に関する。本発明のテープ物品は、ヤーンの高い強度がテープ物品において実質的に保持されるような方法で、高配向のUHMWPEマルチフィラメントヤーンから連続法で製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012]一形態においては、少なくとも約10:1の平均断面アスペクト比、及び10℃/分の一定速度での30℃の温度から200℃の温度への温度上昇DSCスキャンから計算して約0.15未満の、曲線(120℃〜165℃)下の全面積に対する曲線(120℃〜Tm開始点)下の低温面積の比を有する、超高分子量ポリエチレンマルチフィラメントヤーンから製造されるテープ物品が提供される。幾つかの例においては、このテープ物品はまた、ASTM−D882−09によって10インチ(25.4cm)のゲージ長さ及び100%/分の伸張速度において測定して少なくとも24g/d(2.07GPa)のテナシティーも有することができる。更に、このテープ物品は、小角X線分析によって測定して450オングストローム(Å)未満の長周期を有しないことができる。
【0013】
[0013]例示及び説明の目的のために具体例を選択し、明細書の一部を形成する添付の図面において示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】[0014]図1は、本発明のテープ物品から製造される3種類の試験試料に関するDSCデータを示し、X軸は温度(℃)であり、Y軸はDSC mWであり、計算された面積はmJ/mgで示す。
図2】[0015]図2は、商業的に入手できるテープ物品から製造される比較試験試料に関するDSCデータを示し、X軸は温度(℃)であり、Y軸はDSC mWであり、計算された面積はmJ/mgで示す。
図3】[0016]図3は、商業的に入手できるテープ物品から製造される比較試験試料に関する経線SAXS強度曲線を示す。
図4】[0017]図4は、本発明のテープ物品から製造される試験試料に関する経線SAXS強度曲線を示す。
図5】[0018]図5は、本発明のテープ物品の断面のSEM顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0019]テープ物品は、その幅よりも大きい長さを有し、好ましくは少なくともテープ物品を製造した時点においてその幅よりも実質的に大きい長さを有するが、テープ物品を種々の目的のために切断した際には長さは実質的に減少する、実質的に平坦な細長い物品として定義される。
【0016】
[0020]本発明のテープ物品は、それらの幅によって現在公知のテープと区別することができる。例えば、相当な長さの公知のテープは、幅が6mm以下であるとされている。これに対して、本発明のテープ物品は、約10mmより大きく、約100mmより大きく、又は約1000mmより大きい幅を有することができる。
【0017】
[0021]テープ物品の高さ又は厚さは、例えば約0.5mm未満、約0.25mm未満、約0.1mm未満、又は約0.05mm(2ミル)未満であってよい。高さは、テープ物品の断面の最も厚い領域において測定することができる。
【0018】
[0022]幾つかの例においては、テープ物品は少なくとも約10:1の平均断面アスペクト比を有することができる。平均断面アスペクト比は、断面の最も小さい寸法に対する最も大きい寸法の比であり、これは一般に、テープ物品の長さにわたって平均した高さに対する幅の比である。例えば、平均断面アスペクト比は、テープ物品の長さに沿った少なくとも3つの位置に関して求められる断面アスペクト比を平均することによって求めることができる。幾つかの例においては、テープ物品は、少なくとも約20:1、少なくとも約50:1、少なくとも約100:1、少なくとも約250:1、少なくとも約400:1、又は少なくとも約1000:1の平均断面アスペクト比を有することができる。幾つかの例においては、テープ物品はその長さに沿って一定の断面アスペクト比を有することができる。他の例においては、テープ物品は、その長さに沿ってランダムか又は選択された周波数で変化する変動断面アスペクト比を有することができる。
【0019】
[0023]テープ物品の断面は、長方形、楕円形、多角形、不規則形状、或いは上記に記載の幅、厚さ、及び断面アスペクト比の特性を満足する任意の他の形状など(しかしながらこれらに限定されない)の任意の好適な形状であってよい。一例においては、テープ物品は、長方形、又は本質的に若しくは実質的に長方形である断面を有していてよく、正確又は一貫した寸法を形成する方法の制約を考慮すると多少の不規則性が認められる。他の例においては、テープ物品は、その長さに沿ってランダムか又は選択された周波数で変化する変動断面形状を有していてよい。更に、テープ物品は、その長さに沿って変動するレベルの繊維のコンソリデーションを有していてよく、コンソリデーションはランダムか又は選択された周波数で変化する。繊維のコンソリデーションとは、UHMWPEの繊維又はフィラメントが融合する程度を指す。
【0020】
[0024]本発明のテープ物品はUHMWPE繊維又はフィラメントから形成することができ、好ましくはUHMWPEマルチフィラメントヤーンから形成される。テープ物品を形成するための供給材料として選択されるUHMWPEヤーンは、任意の好適な方法で製造することができる。例えば、選択されるUHMWPEヤーンは「ゲル紡糸」によって製造することができる。ゲル紡糸UHMWPEヤーンは、例えばHoneywell InternationalからSPECTRAの商品名で、DSM N.V.及びToyobo Co. Ltd.からDYNEEMAの商品名で、及び他から商業的に入手できる。他の例として、選択されるUHMWPEヤーンは溶融紡糸によって製造することができる。1つのかかる溶融紡糸法は、米国公開20100178503(その開示事項を全て参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0021】
[0025]本発明のテープ物品を製造するための供給材料として選択されるUHMWPEヤーンは、ASTM−D1601−99によってデカリン中135℃において測定して約7dL/g〜約40dL/g、約10dL/g〜約40dL/g、約12dL/g〜約40dL/g、又は約14dL/g〜35dL/gの固有粘度を有していてよい。
【0022】
[0026]テープ物品のための供給材料として選択されるUHMWPEヤーンは、高度に配向していてよい。高配向UHMWPEヤーンは、少なくとも約0.96、好ましくは少なくとも約0.97、より好ましくは少なくとも約0.98、最も好ましくは少なくとも約0.99のc軸配向関数を有するものとして定義される。c軸配向関数(f)は、ポリエチレンに対して適用されるCorreale, S.T.及びMurthy, Journal of Applied Polymer Science, vol.101, 447-454 (2006)に記載の広角X線回折法によって測定することができる。本明細書に開示するように、c軸配向関数は、分子鎖の方向が繊維の方向と整列している程度を示すものであり、等式:
【0023】
【化1】
【0024】
(式中、θはポリエチレン結晶のc軸(分子鎖の方向)と繊維方向との間の角度であり、べき乗数はこれらの間の量の平均を示す)
から算出される。
【0025】
[0027]「c」結晶軸と繊維方向との間の角度の平均コサインは、周知のX線回折法によって測定することができる。分子鎖の方向が繊維軸と完全に整列しているポリエチレン繊維はf=1を有する。
【0026】
[0028]テープ物品のための供給材料として選択されるUHMWPEヤーンは、約15g/d(1.29GPa)〜約100g/d(8.62GPa)、約25g/d(2.15GPa)〜約100g/d(8.62GPa)、約30g/d(2.59GPa)〜約100g/d(8.62GPa)、約35g/d(3.02GPa)〜約100g/d(8.62GPa)、約40g/d(3.45GPa)〜約100g/d(8.62GPa)、又は約45g/d(3.88GPa)〜約100g/d(8.62GPa)のテナシティーを有していてよい。
【0027】
[0029]テープ物品のための供給材料として選択されるUHMWPEヤーンは、非撚糸であっても撚糸していてもよい。好ましくは、選択されるUHMWPEヤーンは、長さ1インチあたり約3回未満の撚りを有する。
【0028】
[0030]選択されるUHMWPEヤーンは、更に、米国特許4,819,458(本発明と矛盾しない範囲で参照として本明細書中に包含する)に記載されている方法によってヒートセットすることができる。
【0029】
[0031]選択されるUHMWPEヤーンは非結合フィラメントから構成することができ、或いはフィラメントは融着又は接着によって少なくとも部分的に結合させることができる。UHMWPEヤーンフィラメントの融着は、例えば熱及び緊張の使用、又は米国特許5,540,990;5,749,214;及び6,148,597(これらは本発明と矛盾しない範囲で本明細書中に包含する)に記載されているように熱及び緊張に曝す前に溶剤又は可塑化材料を施すなどの任意の好適な方法で行うことができる。
【0030】
[0032]本発明のテープ物品は、種々の特性によって示されるように現在公知のテープ物品を凌ぐ向上した特性を有する。例えば、10℃/分の一定の速度での30℃の温度から200℃の温度への温度上昇DSCスキャンから算出して、テープ物品は、好ましくは、約0.15未満、より好ましくは約0.05未満の曲線(120℃〜165℃)下の全面積に対する曲線(120℃〜Tm開始点)下の低温面積の比を有する。Tm開始点は、ASTM−F2625−10にしたがって、溶融吸熱曲線に対して接線方向のピーク温度及びそれと作図されたベースラインとの交点から引かれる線から求めることができる。更に、テープ物品は、好ましくは、小角X線分析によって測定して450オングストローム(Å)未満の長周期を有しない。これらの特性を測定するのに用いることができる方法を下記に与える。これらの特性は、単独か又は組み合わせて、高強度マルチフィラメントヤーンから製造されるテープ物品が望ましく低い量の再結晶化ポリエチレン含量を有することの指標として用いることができる。再結晶化ポリエチレン含量は、一般にテープ物品の製造中におけるポリエチレン繊維の表面溶融及びそれに続く再結晶化からもたらされる可能性がある。本発明のテープ物品に関して好ましいような、かかる少量の再結晶化ポリエチレン含量を有するUHMWPEテープ物品、特に十分にコンソリデーションされて空隙を有しないか又は空隙を実質的に有しないUHMWPEテープ物品を形成することができることは予測されない。空隙はテープ物品内の孔としてテープ物品内に存在し、一般にテープを製造するのに用いるフィラメント又は繊維の間の空間から生起する可能性がある。空隙を有しないか又は実質的に空隙を有しないテープ物品は半透明又は透明の光学的外観を有することができ、これに対して相当な空隙含量を有するテープは、光を散乱して、それによって不透明の光学的外観を生成させる傾向がある。幾つかの例においては、本発明のテープ物品は半透明であってよく、光がそれを通して拡散しながら通過することができる。本発明の幾つかのテープ物品は更に透明で、光学的に明澄な外観を与えることができる。図5は、本発明のテープの断面のSEM顕微鏡写真を示す。元のヤーンフィラメントは高度にコンソリデーションされていて、それらの間に観察できる空間は存在しない。フィラメントはそれらの元の断面形状から変形されていて、空隙を有さずに一緒に密に充填されている。従来技術とは異なり、フィラメント間の空隙を充填するため、或いはフィラメントを一緒に結合するために樹脂又は添加剤は必要なく、フィラメントは互いと密に接触しているので、フィラメントを一緒に結合して適当な機械的完全性を有するテープ物品を形成するためには非常に小さい再結晶化ポリエチレン含量が求められる。いかなる特定の理論にも縛られないが、再結晶化ポリエチレン含量が減少することによって、高強度マルチフィラメントヤーンから形成されるテープ物品における向上した強度保持率が得られると考えられる。これに対して、現在公知のマルチフィラメントヤーンから製造されるテープ物品は、テープ物品の製造において用いる熱又は溶剤処理の結果として相当量の再結晶化ポリエチレン含量を有する。
【0031】
[0033]本発明のテープ物品はまた、それらの寸法、特にそれらの長さによって現在公知のテープ物品と区別することもできる。例えば、多くの公知のテープは、繊維を金属プレートの周りに巻回し、それらを加熱プレス内に配置して特定の寸法のコンソリデーションしたシート、プラーク、又はパネルを形成するような個別生産型又はバッチプロセスにおいて形成されるものとして説明されている。これに対して、本発明のテープ物品は連続プロセスにおいて形成することができ、これによって相当な長さを有するテープ物品が可能である。例えば、本発明のテープ物品は、約1mより大きく、約5mより大きく、又は約10mmより大きい長さを有することができる。幾つかの例においては、本発明のテープ物品は長さを100m以下又はそれよりも大きくすることができ、貯蔵のためにスプール上に巻回することができる。
【0032】
[0034]本発明のテープ物品は、使用する際において、複合体産業において通常的に用いられている所謂「プリプレグ」材料と比較することができる。プリプレグは、しばしば、連続長の高強度繊維を樹脂で被覆して、巻き取って将来の使用のために貯蔵することができる予備含侵テープ物品を形成することによって製造される。用いる樹脂の量は、一般にテープ物品の約10重量%以上である。次に、プリプレグを引き出し、フィラメント巻付プロセス、テープレイイングプロセス、又は他のプロセスによって成形物品に成形することがでる。本発明のテープ物品は、長い長さを将来の使用のために貯蔵することができ、公知の複合体製造プロセスを用いて簡単又は複雑な形状に成形することができるので、同じようにして用いることができる。プリプレグと同様に、本発明のテープ物品は不織構造体に成形することもできる。
【0033】
[0035]UHMWPE繊維を樹脂で被覆することによってプリプレグを形成することができるが、UHMWPEは殆どの樹脂と低い結合強度を示し、その結果として樹脂内容物はかかるプリプレグを用いて製造される複合体構造の強度を減少させる可能性があるので、これはテープ物品を形成する最も望ましい方法ではない可能性がある。本発明のテープ物品を用いることによって、かかる樹脂が必要ないので、結合樹脂の使用に起因する強度の損失を回避することができる。本発明のテープ物品は、好ましくは結合樹脂を含まないか、或いは相当量の結合樹脂を含まず、また相当量の他の添加剤も含まない。したがって、本発明のテープ物品は、テープ物品の約100重量%に近いか又はそれ以下のUHMWPE含量を有していてよい。幾つかの例においては、本発明のテープ物品は、テープ物品の約95重量%より大きく、又はテープ物品の約98重量%より大きいUHMWPE含量を有していてよい。幾つかの例においては、それから本発明のテープ物品を形成することができる繊維を形成する際にUHMWPEとのコポリマーを用いることができる。かかる例においては、本発明のテープ物品は、テープ物品の約95重量%より大きく、又はテープ物品の約98重量%より大きい繊維含量を有していてよく、好ましくはテープ物品の約90重量%より大きいUHMWPE含量を有する。
【0034】
[0036]本発明のテープ物品の強度は、ASTM−D882−09を用い、10インチ(25.4cm)のゲージ長さ及び100%/分の伸張速度においてテープ物品のテナシティーを測定することによって求めることができる。幾つかの例においては、本発明のテープ物品は、約24g/d(2.07GPa)未満、約24g/d(2.07GPa)、又は好ましくは少なくとも約24g/d(2.07GPa)、例えば少なくとも約30g/d(2.58GPa)、又は少なくとも約40g/d(3.45GPa)(しかしながらこれらに限定されない)のテナシティーを有することができる。
【0035】
[0037]本発明のテープ物品は任意の好適な方法によって製造することができる。一般に、本発明のテープ物品を製造する方法は、少なくとも1種類のポリエチレンマルチフィラメントヤーンを選択することによって開始することができる。ポリエチレンマルチフィラメントヤーンは、ASTM−D2256−02によって10インチ(25.4cm)のゲージ長さ及び100%/分の伸張速度において測定して約15g/d(1.29GPa)〜約100(8.62GPa)のテナシティーを有していてよい。好ましくは、ポリエチレンマルチフィラメントヤーンはまた、ASTM−D1601−99によってデカリン中135℃において測定して約7dL/g〜40dL/gの固有粘度(IV)、及び/又は少なくとも0.96のc軸配向関数も有していてよい。この方法には、ヤーンを、約100℃〜約160℃の温度の1以上の加熱区域に張力下で通し、加熱されたヤーンを少なくとも1回延伸してヤーンの強度を維持又は増加させることを含ませることができる。この方法には、次に加熱され延伸されたヤーンを縦方向の引張力下に配置し、ヤーンを少なくとも1回の横圧縮工程にかけて、ヤーンを、約100℃〜約160℃の温度において平坦化し、コンソリデーションし、及び圧縮し、それによって少なくとも約10:1の平均断面アスペクト比を有するテープ物品を形成することを含ませることができる。幾つかの例においては、最初の形成の後、テープ物品を、場合によっては、約130℃〜約160℃の温度において少なくとも1回延伸することができ、これによってテープ物品の強度を増加させることができる。次に、テープ物品を縦方向の引張力下で約70℃未満の温度に冷却することができる。最後に、最終テープ物品を、貯蔵のためにスプールのようなパッケージ上に巻回するか、或いは成形物品を形成する他のプロセスに送ることができる。
【0036】
測定方法:
小角X線散乱(SAXS):
[0038]小角X線分析を行って、テープ物品が450(Å)未満の長周期を有しないことを求める1つの方法を下記に示す。小角X線散乱を行うにあたっては、任意の好適な装置を用いることができる。好適な装置は450Å以下の散乱ピークを解像することができなければならない。
【0037】
[0039]2つの試験試料を準備した。1つの試験試料は、Tensylonの商品名で販売されている公知のテープ物品から製造された比較試料であった。他の試料は本発明のテープ物品から製造した。2つの0.15°のピンホールを用いるピンホール視準構造の光学ベンチとしてRigakuの小角散乱ゴニオメーターを用いて、小角X線散乱をそれぞれの試験試料に関して行った。ゴニオメーターは、45kV及び30mAで運転する銅(Cu)高精度焦点X線管を備えたRigaku DXR3000発生器上に取り付けた。銅(Cu)放射線を、ニッケル(Ni)箔フィルターを用いて単色化した。それぞれの試験試料から約330mmの距離に取り付けたMBraun GmbHによって製造されたOED-50-M位置(直線)敏感型比例計数管を用いてデータを採取した。それぞれの試験試料に関して、試料と検出器との間に長さ300mmの真空パスを配置して空気によるX線の散乱を最小にし、これは可能な限り計数管に近接して配置した。真空パスの末端に、可能な限り計数管に近接して、幅1.5mmのビームストップを配置した。
【0038】
[0040]それぞれの試験試料は、機械方向又はテープ方向に平行に切断し、試料ホルダーの周りに平行に複数層の厚さに巻き付けた長い片から構成されていた。片の長さ及びホルダー開口の直径は、それらが試料において直径1.5mm未満である平行ビームよりも大きい限りにおいて、ピンホール視準を用いる本方法に関しては重要ではない。しかしながら、ここで記載する測定において用いた片の長さは約2.5cmであり、試料ホルダー開口の幅は5mmであったことが留意される。それぞれの試験試料を、機械方向(経線方向とも呼ばれる)がOED-50-M計数管内の検出器ワイヤーに対して平行になるように小角ゴニオメーター上に取り付けた。データは1〜4時間採取した。試料を用いないで同じ条件下に設定した参照データを採取し、試料の吸収効果に関して補正した後にそれぞれの試験試料に関するデータから参照データを減じることによって、ビームストップの周りの寄生散乱をデータから取り除いた。試験試料を用いる場合及び用いない場合のステアリン酸鉛の5.0ηm回折ピークの減衰を測定することによって、X線における試料の量による吸収効果を測定した。
【0039】
[0041]長周期は、ポリエチレンの薄層のような結晶質構造体の周期間隔による散乱ピークとして測定することができる。分析を行って、寄生散乱を取り除いた後にJandel Scientific's PeakFitソフトウエアを用いてデータを概形フィッティングすることによって、それぞれの試験試料に関する小角X線散乱データからかかる散乱ピークを解像した。長周期ピークは、散乱角に対してプロットした強度データにおける最大値として、或いは散乱角が増加するにつれて減少する滑らかに且つ連続的に変動する強度より高い強度データにおける増加として確認することができ、これは強度データにおける統計ノイズよりも大きい高さ及び幅を有するピークとして解像することができる。散乱ピークは、指数形状のバックグラウンド上のLorentzピーク形状を用いてフィッティングした。
【0040】
[0042]結晶質薄層の間隔の長周期は、Bragg則:
【0041】
【化2】
【0042】
(式中、dは長周期の間隔であり、nは反射の次数であり、λはCuKα1,2輝線の波長であり、θは散乱角である)
を用いて散乱ピーク最大値の角度から求めた。
【0043】
[0043]図3は、Tensylonテープの比較試料に関する経線SAXS強度曲線を示し、これから約380Åの平均長周期を示すピークを解像することができる。図4は、本発明のテープ物品の試験試料に関する経線SAXS強度曲線を示し、これからはピークを解像することができず、したがって450(Å)未満の長周期は示されない。
【0044】
テープの示差走査熱量測定(DSC):
[0044]曲線(120℃〜165℃)下の全面積に対する曲線(120℃〜Tm開始点)下の低温面積の比を求める1つの方法は、10℃/分の一定速度での30℃の温度から200℃の温度への温度上昇DSCスキャンから比を計算することである。これを下記に記載する。
【0045】
[0045]本発明のテープ物品から3つの試験試料を製造し、試験した。3つの試験試料全てに関するDSCデータを図1に示し、X軸は温度(℃)であり、Y軸はDSC mWである。商品名Tensylonで販売されているテープ物品から比較試験試料を製造し、これも試験した。比較試験試料に関するDSCデータを図2に示す。
【0046】
[0046]それぞれの試験試料は、テープ物品から複数の試験片を切断し、試験片をアルミニウム試料皿の底の上に平らに敷き、試験片の端部がアルミニウム試料皿の壁に触れないようにすることによって形成した。それぞれの試験片は全ての寸法が5mm未満であり、具体的には全ての寸法が約3mm〜約5mmであった。与えられたテープ物品の複数の試験片を、試験片の全重量が約5mgになるまで皿内に積層し、積層された試験片を対応する試験試料として用いた。約5mgの所望の試験試料重量を得るために、試験試料を形成するために積層する試験片の数を変化させた。試料皿用の平坦なアルミニウムカバーを試験試料の頂部上に配置し、カバー及び試験試料を適所に保持するために、皿の直径方向の反対側の2つの側の上の壁の端部を精密ピンセットを用いて折り曲げて2つの小さいピンチポイントを形成した。試験試料上に圧力が生じるか、又はそれを加熱している間に試験試料が拘束されるようには、カバーは配置せず、アルミニウム試料皿はクリンプ又は封止しなかった。カバーを有する同じ空のアルミニウム試料皿を参照として調製した。Seiko Instruments Inc.によって製造されたRDC220DSCを用いて、温度上昇DSCスキャンを採取した。DSCデータの採取は30℃の温度において開始し、窒素ガス流雰囲気中で温度を10℃/分の一定速度で200℃に上昇させながら継続した。
【0047】
[0047]それぞれの試料に関して、熱フラックスDSCに特有の1つ又は複数の吸熱溶融ピークの方向が下向きを示す増加するミリワット(mW)対上昇する温度としてDSCデータをプロットした。最も大きい吸熱ピークの温度を、任意の他のピークの温度と共に記録した。ベースラインは120℃〜165℃に引き、ベースラインと1つ又は複数のピークとの間の面積を測定した。一次導関数曲線における最大値から求められるその最も大きな傾斜の温度における最も大きなピークの低温側からの外挿直線と、70℃におけるベースラインからフィッティングした外挿線との交点によって、最も大きなピークの開始点、即ちTm開始点を求めた。この面積は、1つのみのピークしか存在しない場合においても、溶融温度の開始点を用いてピークの部分面積を測定することによって更に分割した。低温面積は120℃とTm開始点との間で計算し、全面積は120℃から165℃で計算した。次に、全面積に対する低温面積の比を計算した。本発明の試験試料に関する結果を下表1に示す。ここで、「面積(低)」は低温面積であり、「面積(全)」は全面積である。
【0048】
【表1】
【0049】
[0048]本発明のテープ物品は、好ましくは、低温ピーク下の小さい面積によって示される低い再結晶化ポリエチレン含量を有する。この特性は、上表1において、特にそれぞれ0.05未満の全面積に対する低温面積の比を有する試料1及び2に関して見られる。商業的に入手できるUHMWPEテープは全面積に対する低温面積の非常により高い比を有し、例えば図2に示す比較試験試料は約0.267の比を有する。
【実施例】
【0050】
[0049]本発明のより完全な理解を与えるために以下の実施例を示す。本発明の原理を示すために示す具体的な技術、条件、材料、割合、及び報告されているデータは例示であり、本発明の範囲を限定するように解釈すべきではない。
【0051】
[0050]下記において議論する実施例3〜8の試料は以下の方法によって製造した。Spectraヤーンをパッケージから解舒し、ヤーンを約1〜15m/分の速度で送る抑制ロールの表面上に通した。抑制ロールから排出されるヤーンを熱風オーブン内で加熱及び延伸した。オーブン温度は100℃〜160℃の間であり、延伸比は1.01:1〜10:1の間であり、選択された延伸比はテープ物品に圧縮する前に所望のヤーン強度を得るのに適当なものであった。次に、圧縮の開始時及び終了時の両方において縦方向の引張力下で、加熱し延伸したヤーンを横方向に圧縮した。圧縮工程の開始時におけるヤーンに対する縦方向の引張力の大きさは、圧縮工程の終了時におけるテープ物品に対する縦方向の引張力の大きさと実質的に同等であった。圧縮工程において与えた横方向の圧力は約50〜500ポンド/平方インチであり、選択された圧力はヤーンフィラメントをそれらが実質的に空隙を有しないテープ物品に密に充填されるように変形させるのに適当なものであった。圧縮工程は130℃〜160℃の温度で行い、選択された温度はヤーン又はテープ物品の破断を引き起こすことなくヤーンの所望のレベルの融着を得るのに適当なものであった。圧縮工程の後、形成されたテープ物品を130℃〜160℃の温度に保持し、選択された延伸比で延伸した。選択された延伸比は、所望のテープ物品の強度を得るのに適当なものであった。テープ物品の延伸工程の後、テープ物品を張力下で冷却し、次にテープ物品を約2〜75m/分の速度で送るプルロールの表面上に通した。プルロールと抑制ロールとの間の表面速度の差によって、延伸工程及び圧縮工程中に2つのロールの組の間に発生する繊維及びテープにおける縦方向の張力が与えられることを留意すべきである。プルロールから排出された後、テープ物品を張力下でチューブパッケージ上に巻き取る。
【0052】
[0051]本発明の実施例の幾つかはヤーンの単一の端部を用いて製造し、他のものはヤーンの複数の端部を組み合わせることによって製造した。表2は、ヤーンの端部の数及びテープデニールを、対応する最終テープ断面寸法と合わせて含む。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例1(比較例):
[0052]Takashi Nakaharaら, "Ultra High Molecular Weight Polyethylene Blown Film Process", ANTEC 2005, 178-181 (2005)に記載されている方法にしたがうメルトブローンフィルムから製造した、60.5:1の断面アスペクト比、13.1g/d(1.13GPa)のテナシティー、0.210のDSC低温面積比、及びX線分析によって331オングストロームの長周期を有するUHMWPEテープを、切断及び延伸した。
【0055】
実施例2(比較例):
[0053]圧力下においてフィルムにコンソリデーションしたUHMWPE粉末から製造した、40.5:1の断面アスペクト比、19.3g/d(1.66GPa)のテナシティー、0.290のDSC低温面積比、及びX線分析によって380オングストロームの長周期を有するTensylonテープを、切断及び延伸した。
【0056】
実施例3:
[0054]240のフィラメントを有するSpectraマルチフィラメントヤーンから、80:1:1の断面アスペクト比、33.0g/d(2.84GPa)のテナシティー、0.048のDSC低温面積比を有し、X線分析によって長周期を有しないUHMWPEテープを製造した。
【0057】
実施例4:
[0055]合計で1440のフィラメントを有するSpectraマルチフィラメントヤーンから、157:1の断面アスペクト比、31.5g/d(2.71GPa)のテナシティー、及び0.037のDSC低温面積比を有するUHMWPEテープを製造した。
【0058】
実施例5:
[0056]240のフィラメントを有するSpectraマルチフィラメントヤーンから、167:1の断面アスペクト比、40.9g/d(3.52GPa)のテナシティーを有し、0.035未満のDSC低温面積比を有すると予測されるUHMWPEテープを製造した。
【0059】
実施例6:
[0057]合計で960のフィラメントを有するSpectraマルチフィラメントヤーンから、125:1の断面アスペクト比、28.0g/d(2.41GPa)のテナシティー、及び0.120のDSC低温面積比を有するUHMWPEテープを製造した。
【0060】
実施例7:
[0058]合計で5760のフィラメントを有するSpectraマルチフィラメントヤーンから、77:1の断面アスペクト比、30.0g/d(2.59GPa)のテナシティー、及び0.094のDSC低温面積比を有するUHMWPEテープを製造した。
【0061】
実施例8:
[0059]合計で240のフィラメントを有するSpectraマルチフィラメントヤーンから、100:1の断面アスペクト比、50.0g/d(4.31GPa)のテナシティー、0.030未満のDSC低温面積比を有し、X線分析によって長周期を有しないUHMWPEテープを製造した。
【0062】
実施例9:
[0060]高度にコンソリデーションした実質的に空隙を有しない長さ1インチのテープ部分、及びより少なくコンソリデーションした多孔質の長さ1インチのテープ部分の繰り返しパターンが存在するように、その長さに沿って変動する繊維コンソリデーションを有する本発明のテープ物品を製造した。
【0063】
実施例10:
[0061]実施例5において記載した本発明のテープ物品を、バスケット織り布帛に織成した。
【0064】
実施例11:
[0062]隣接する層におけるテープの方向が互いから約15〜90°回転しているテープ物品の2以上の一方向層を含む本発明のテープ物品を用いて、積層体を形成することができる。1つのかかる例においては、実施例5において記載した本発明のテープ物品を複数のパッケージ内に巻き取り、パッケージをクリール上に配置した。クリールから解舒し、横方向に接触させて平行に整列させたテープ物品の複数の端部を、厚さ0.00035cmの高密度ポリエチレン(HDPE)フィルムから構成されるキャリアウエブ上に配置した。キャリアウエブ及びテープ物品を、加圧下で加熱したニップロールに通して、テープ物品をキャリアウエブに接着させた。キャリアウエブ及び接着した平行なテープ物品を、2つのロールに巻き取った。2つのロールを、米国特許5,173,138に記載されているクロスプライ装置中に供給して、テープ物品を含むウエブをクロスプライし、熱及び圧力を用いてコンソリデーションした。これによって4層積層体が形成され、層は積層体を通る連続の順番でHDPE−テープ物品−テープ物品−HDPEであり、隣接する層におけるテープの方向は互いに対して直角であった。次に積層体を巻き取った。
【0065】
実施例12:
[0063]実施例10において記載したバスケット織り布帛を積層し、緩く結合させて、1.5Kg/mの面密度を有する本発明のアセンブリを形成した。このアセンブリは、MIL.-STD. 662Fによって測定して、9×19mmのFMJパラベラム弾に対して少なくとも約500J・m/Kgの比エネルギー吸収を有していると予測される。
【0066】
実施例13:
[0064]実施例11において記載した積層体を積層し、コンソリデーションして、1.5Kg/mの面密度を有する耐衝撃性及び耐貫入性の複合体物品を形成した。この複合体物品は、MIL.-STD. 662Fによって測定して、9×19mmのFMJパラベラム弾に対して少なくとも約500J・m/Kgの比エネルギー吸収を有していると予測される。
【0067】
実施例14:
[0065]実施例11において記載した積層体、及び実施例10において記載したバスケット織り布帛を積層し、コンソリデーションして、1.5Kg/mの面密度を有する耐衝撃性及び耐貫入性の複合体物品を形成した。この複合体物品は、MIL.-STD. 662Fによって測定して、9×19mmのFMJパラベラム弾に対して少なくとも約500J・m/Kgの比エネルギー吸収を有していると予測される。
【0068】
[0066]上記から、本明細書において例示の目的で具体的な例を記載したが、本開示の精神又は範囲から逸脱することなく種々の修正を行うことができることが認識されるであろう。したがって、上記の詳細な説明は限定ではなく例示とみなされ、特許請求する主題を特に指摘し明確に主張することを意図するものは、特許請求の範囲(全ての均等物を包含する)であると理解されると意図される。

以下に本発明の態様を記載する。
(1)少なくとも約10:1の平均断面アスペクト比;及び
10℃/分の一定速度での30℃の温度から200℃の温度への温度上昇DSCスキャンによって測定して約0.15未満の、曲線(120℃〜165℃)下の全面積に対する曲線(120℃〜Tm開始点)下の低温面積の比;
を有する、超高分子量ポリエチレンマルチフィラメントヤーンから製造されるテープ物品。
(2)テープ物品のテナシティーが、ASTM−D882−09によって10インチ(25.4cm)のゲージ長さ及び100%/分の伸張速度において測定して少なくとも約24g/d(2.07GPa)である、(1)に記載のテープ物品。
(3)テープ物品が、小角X線分析によって測定して450オングストローム(Å)未満の長周期を有しない、(2)に記載のテープ物品。
(4)テープ物品が、小角X線分析によって測定して450オングストローム(Å)未満の長周期を有しない、(1)に記載のテープ物品。
(5)テープ物品のテナシティーが少なくとも約30g/d(2.59GPa)である、(1)に記載のテープ物品。
(6)テープ物品のテナシティーが少なくとも約40g/d(3.45GPa)である、(1)に記載のテープ物品。
(7)10℃/分の一定速度での30℃の温度から200℃の温度への温度上昇DSCスキャンによって測定して、曲線(120℃〜165℃)下の全面積に対する曲線(120℃〜Tm開始点)下の低温面積の比が約0.05未満である、(1)に記載のテープ物品。
(8)テープ物品が半透明である、(1)に記載のテープ物品。
(9)テープ物品が重量基準で95%より大きい超高分子量ポリエチレン含量を有する、(1)に記載のテープ物品。
(10)テープ物品が重量基準で98%より大きい超高分子量ポリエチレン含量を有する、(1)に記載のテープ物品。
図1
図2
図3
図4
図5