特許第5981950号(P5981950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5981950-画像形成装置 図000002
  • 特許5981950-画像形成装置 図000003
  • 特許5981950-画像形成装置 図000004
  • 特許5981950-画像形成装置 図000005
  • 特許5981950-画像形成装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981950
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20160818BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   G03G21/00 538
   G03G15/20 510
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-36751(P2014-36751)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-161783(P2015-161783A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇伯
【審査官】 齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−053276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像をシート状の記録体に転写する転写部と、
上記転写部により上記記録体に転写されたトナー像を加熱して当該記録体に定着させる定着部と、
一端が上記定着部の近傍に位置するダクトと、
上記ダクト内の空気をその一端側から他端側に向かって流通させるための送風ファンと、
上記ダクト内に設けられ、互いに離接可能に構成された第1電極及び第2電極と、
上記第1及び第2電極の接触と離間とが交互に行われるように、該第1及び第2電極のうち少なくとも一方を駆動する駆動部と、を備えた画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
上記第1及び第2電極は複数設けられている、画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
上記定着部は、加熱ローラーと加圧ローラーとを有していて、該両ローラー間で上記記録体を加熱及び加圧することにより、該記録体にトナー像を定着させるように構成され、
上記駆動部は、上記加熱ローラーの回転運動を直線運動に変換して、上記第1及び第2電極を所定の周期で接触させるように構成されている、画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
上記ダクトには、空気中の揮発性有機化合物を吸着可能なフィルターが設けられている、画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シロキサンガスを含む揮発性有機化合物(VOC)を回収するための回収装置を備えた電子写真方式の画像形成装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。この回収装置は、排気ダクトとワイヤーとを有している。排気ダクトの一端は、画像形成装置内におけるシロキサンガスが発生し易い箇所である定着部近傍に位置している。ワイヤーは排気ダクト内に配置されており、該ワイヤーには高電圧が印加されている。定着部で発生したシロキサンガスは、排気ダクト内を通過する際に、高電圧が印加されたワイヤーの集塵効果により該ワイヤーの表面に付着して堆積する。これにより、定着部で発生したシロキサンガスが画像形成装置内の電子機器やスイッチ類に付着するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−53333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示す画像形成装置では、ワイヤーに高電圧を印加するべくそれ専用の電源装置が必要となる。このため、装置全体のコストが増加するという問題がある。また、この画像形成装置では、ワイヤーの一部にのみシロキサンが堆積している場合でもワイヤー全体を交換する必要があるため、メンテナンス性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低コスト化とメンテナンス性の確保とを実現しながら、定着部で発生するシロキサンガスを含む揮発性有機化合物を効率良く回収しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、トナー像をシート状の記録体に転写する転写部と、上記転写部により上記記録体に転写されたトナー像を加熱して当該記録体に定着させる定着部と、一端が上記定着部の近傍に位置するダクトと、上記ダクト内の空気をその一端側から他端側に向かって流通させるための送風ファンと、上記ダクト内に設けられ、互いに離接可能に構成された第1電極及び第2電極と、上記第1及び第2電極の接触と離間とが交互に行われるように、該第1及び第2電極のうち少なくとも一方を駆動する駆動部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低コスト化とメンテナンス性の確保とを実現しながら、定着部で発生するシロキサンガスを含む揮発性有機化合物を効率良く回収しようとすることにある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態における画像形成装置としてのレーザープリンターを示す概略図である。
図2図2は、排気ダクト内の構成を示す概略図である。
図3図3は、シロキサンガス回収装置の構成を示す概略図である。
図4図4は、シロキサンガス回収装置の効果確認のための試験装置を示す概略図である。
図5図5は、シロキサンの回収試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《実施形態1》
図1は、本実施形態における画像形成装置150としてのレーザープリンター1(以下、単にプリンターという)を示している。このプリンター1は、画像形成部20を有する装置本体60を有している。装置本体60内の下部には給紙部10が設けられ、装置本体60の上面には排紙部50が形成されている。給紙部10から排紙部50に至る用紙搬送経路には、用紙P(シート状の記録体)を挟持して搬送する複数の搬送ローラー対11〜13が配置されている。尚、以下の説明において、「左側」、「右側」はそれぞれ、図1の左側、右側を意味し、「前側」、「後側」は、図1の紙面に垂直な方向の手前側、奥側を意味する。
【0010】
上記給紙部10は、シート状の用紙Pが収容される給紙カセット10aと、該給紙カセット10a内の用紙Pを取り出して該カセット外に送り出すためのピックアップローラー10bとを有している。給紙カセット10aよりカセット外に送り出された用紙Pは、搬送ローラー対11を介して画像形成部20に供給される。
【0011】
画像形成部20は、感光体ドラム21、帯電器23、露光装置25、現像装置27、転写器29、及び定着器40を含んでいる。画像形成時には、先ず、帯電器23によって感光体ドラム21の周面が帯電され、その後、露光装置25によって感光体ドラム21の表面に原稿画像データ(例えば、外部端末より受信した原稿画像の画像データ)に基づくレーザー光が照射される。そうして、感光体ドラム21の表面には、上記画像データに対応する静電潜像が形成される。感光体ドラム21の表面に形成された静電潜像は、現像装置27によりトナー像として現像される。これにより、感光体ドラム21の表面にトナー像が形成(担持)される。このトナー像は転写器29によって、給紙部10から供給される用紙Pに対して転写される。トナー像が転写された後の用紙Pは、転写器29における転写ローラーの回転によって定着器40へ供給される。
【0012】
定着器40は、定着ローラー40aと加圧ローラー40bとを有している。定着ローラー40aの内部には加熱体が収容されている。定着ローラー40aの表面層は、例えばシリコンゴムにより構成されている。加圧ローラー40bは、不図示の付勢バネにより定着ローラー40aに押付けられている。加圧ローラー40bの表面層は、例えばシリコンゴムにより構成されている。そして、定着器40では、転写器29より供給される用紙Pを定着ローラー40a及び加圧ローラー40b間で加熱及び加圧することにより、当該用紙Pにトナー像を定着させる。そして、定着器40にてトナー像が定着された用紙Pは、両ローラー40a,40bにより用紙搬送方向の下流側へと送り出される。定着器40より送り出された用紙Pは、複数の搬送ローラー対12,13を介して上記排紙部50に排出される。
【0013】
ここで、定着ローラー40a及び加圧ローラー40bの表面は、用紙Pにトナー像を定着させる際に高温になる。このため、定着器40では、シロキサンガスを含む揮発性有機化合物(VOC)が多く発生する。発生したシロキサンガスは、温度が低くなると周辺の部材に付着する傾向があるので、電気回路やリレー接点に付着してプリンター1の作動不良を引き起こす一因となっている。本実施形態では、かかる問題を解決するべく、定着器40にて発生するシロキサンガスを回収するためのシロキサン回収装置100を設けるようにしている。
【0014】
図2に示すように、シロキサン回収装置100は、排気ダクト101、送風ファン102、一対の回収フィルター103a,103b、及び回収本体部105を有している。
【0015】
排気ダクト101の一端は、定着ローラー40aの近傍に位置している。排気ダクト101の他端は、装置本体60の右側壁部に形成された排気口60a(図1参照)に接続されている。
【0016】
詳しくは、排気ダクト101は、空気導入部101aと、空気排出部101cと、両者の間に位置する中間部101bとを有している。空気導入部101aは、空気流通方向の上流側から下流側に向かって断面積が減少するように形成されている。定着ローラー40aの一部(全部でもよい)は、該空気導入部101a内に位置している。中間部101bは、上下方向に延びていて、その下端部が空気導入部101aに接続され、上端部が空気排出部101cに接続されている。中間部101b内には、上記送風ファン101が収容されている。この送風ファン101が作動することにより、排気ダクト101内にはその一端側から他端側へと向かう空気流が形成されるようになっている(図2の白抜き矢印を参照)。空気排出部104は、左右方向に延びていて、その右側端部が排気口60aに接続され、左側端部が中間部101bに接続されている。空気排出部104の左側端部(上流側端部)及び右側端部(下流側端部)にはそれぞれ、上記回収フィルター103a及び回収フィルター103bが取付けられている。そして、この左右の回収フィルター103a,103bの間に上記回収本体部105が設けられている。
【0017】
回収フィルター103a,103bは、空気中に存在するシロキサンガスを含む揮発性有機化合物(VOC)を吸着可能なフィルターである。回収フィルター103a,103bは、例えば難燃性オゾンVOC除去フィルターからなる。難燃性オゾンVOC除去フィルターには、例えば炭酸カリウムを添着した活性炭粒子が担持されている。各フィルター103a,103bの目開きが小さ過ぎると、排気ダクト101を通過する空気の流通性が悪くなりプリンター1内の温度が過度に上昇してしまう。本実施形態では、このようなプリンター1内の温度上昇を防止するべく、フィルター103a,103bの目開きを十分に大きくとっている。
【0018】
回収本体部105は、第1電極106、第2電極107、固定板108、及び可動板109を有している。固定板108及び可動板109は、左右方向において対向する鉛直板からなる。第1電極106及び第2電極107は複数設けられている。第1電極106及び第2電極107は、左右方向に延びる棒状電極である。第1電極106の基端部は、固定板108に固定されている。第1電極106は、電源130(図3参照)に接続されている。電源130は、定着ローラー40aの駆動用モーター125の電源としても使用されている。第2電極107の基端部は、可動板109に固定されている。第2電極107は、可動板109を介して接地されている。
【0019】
上記固定板108は排気ダクト101の壁面に固定されている。上記可動板109は、排気ダクト101内において左右方向に移動可能に構成されている。そして、可動板109は、後述するカム機構120によって、定着ローラー40aの回転に同期して左右に往復駆動される。可動板108及び固定板109には、排気ダクト101内の空気の流通を妨げないように複数の貫通孔そ形成しておくことが好ましい。
【0020】
図3に示すように、カム機構120は、回転カム部121と、該回転カム部121に固定されたカム軸部122と、可動板109の右側面から突出する突出棒126と、動力伝達ベルト123と、を有している。可動板109は、突出棒126の先端部が回転カム部121の外周面(カム面)に接触するように付勢バネ110により右側に付勢されている。動力伝達ベルト123は、カム軸部122と定着ローラー40aの軸部124とに掛け回されている。そうして、定着ローラー40aの回転が動力伝達ベルト123を介して回転カム部121に伝達されるようになっている。回転カム部121は、最小径部と最大径部とを有する偏心カムである。そして、回転カム部121が回転することにより可動板109が左右に往復移動して、所定の周期(回転カム部121のカム形状によって決まる周期)で各第2電極107の先端が各第1電極106の先端に接触する。第2電極107が第1電極106に接触すると、回路が一時的に短絡して両電極106,107の接触部に大電流が流れて大きなジュール熱が発生する。この結果、空気中のシロキサンガスが酸化分解されて両電極106,107の接触部に付着する。これにより、定着器40で発生するシロキサンガスを効率良く回収することができる。また、シロキサンガスの回収効率が低下してきた場合でも、電極106,107を交換するだけでシロキサンガスの回収効率を回復させることができるので、メンテナンス性にも優れている。
【0021】
さらに、第1電極106及び第2電極107は複数設けられているので、仮に一組の電極106,107の接触部がシロキサンの付着により絶縁化しても、絶縁化していない電極106,107によりシロキサンガスを酸化分解して回収することができる。
【0022】
また、両電極106,107の先端は共に剣山状に形成されているので、両電極106,107の接触時に発生するジュール熱を可及的に高めることができる。延いては、シロキサンガスの回収効率を高めることができる。
【0023】
また、本実施形態では、第1電極106及び第2電極107を接触させることによりジュール熱を発生させるようにしているので、両電極を非接触の状態で放電させる場合に比べて、電源電圧を低く抑えることができる。このため、回収装置100専用の高圧電源を別途用意しなくても、他のアクチュエータ(例えば定着ローラー40aの駆動用モーター125)と共通の電源130を使用することができる。延いては、装置全体を低コスト化することができる。
【0024】
また、本実施形態では、カム機構120により定着ローラー40aの回転を可動板109の直線運動に変換するようにしているので、可動板109の駆動源と、定着ローラー40aの駆動源とを共通化することができる。これにより、装置全体を低コスト化することができる。
【0025】
また、本実施形態では、排気ダクト101には、空気中に存在するシロキサンガスを含む揮発性有機化合物を吸着可能な回収フィルター103a,103bが取付けられている。したがって、両電極106,107の接触部において酸化しきれないシロキサンガスを含む揮発性有機化合物を両フィルター103a,103bによって回収することができる。よって、シロキサンガスの回収効率を可及的に高めることができる。
【0026】
−実施例−
次にシロキサンガスの回収効果を確認するために実施した試験について説明する。図4は、この試験に使用した試験装置200である。試験装置200は、SUS製のチャンバー201を有している。チャンバー201の容積は5mである。チャンバー201の側壁部にはTENAX管202が接続されている。TENAX管202は、活性炭系の吸着剤(TENAX)を入れた吸着管である。チャンバー201は、TENAX管202を介して吸引ポンプ203に接続されている。チャンバー201内には、試験対象となる画像形成装置150を設置した。試験では、この画像形成装置150として京セラ社製の複合機KM−C3232を使用した。そして、吸引ポンプ203によりチャンバー201内を15m/hの割合で換気し、換気開始から1時間経過後に、画像形成装置150により10分間の連続印刷を実行した。その間、画像形成装置150内から発生するシロキサンガスを含む揮発性物質をTENAX管202により100ml/minの割合でサンプリングした。その後、印刷を停止した後も約20分間は連続してサンプリングを行った。そして、サンプリング後のTENAX管202を加熱装置で脱着し、ガスクロマトグラフィーによりシロキサンガスの発生量を測定した。
【0027】
図5は、シロキサンガスの測定結果をまとめた表である。実施例1における画像形成装置150は、上記実施形態と同様に、回収本体部105と一対の回収フィルター103a,103bとを有している。実施例2における画像形成装置150は、回収本体部105と下流側(右側)の回収フィルター103bとを有しているものの、上流側の回収フィルター103aを有していない点で実施例1とは異なる。比較例における画像形成装置150は、回収本体部105及び回収フィルター103a,103bの双方を有していない。
【0028】
図5の試験結果より、比較例、実施例2、実施例1の順でシロキサン発生量が減少していることがわかる。これにより、第1及び第2電極106,107によるシロキサンガスの回収効果と、回収フィルター103a,103bによるシロキサンガスの回収効果とが実証された。
【0029】
《他の実施形態》
本発明は、以下のような構成としてもよい。すなわち、上記実施形態では、第1電極106及び第2電極107を複数設けるようにしているが、これに限ったものではなく、第1電極106及び第2電極107を一つだけ設けるようにしてもよい。
【0030】
上記実施形態では、第1電極106を固定電極として第2電極107を可動電極としているが、これに限ったものではなく、例えば第1電極106を可動電極として第2電極107を固定電極としてもよいし、両電極106,107を共に可動電極としてもよい。すなわち、第1及び第2電極106,107の接触と離間とが交互に行われるように、該第1及び第2電極106,107のうち少なくとも一方を駆動する構成であればよい。
【0031】
上記実施形態では、両電極106,107の先端部を剣山状に形成するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば球面状や平坦状に形成するようにしてもよい。
【0032】
上記実施形態では、画像形成装置150の一例としてレーザープリンター1について説明したが、これに限ったものではない。すなわち、画像形成装置150は、例えば複合機(MFP)等であってもよい。
【0033】
上記実施形態では、用紙Pをシート状の記録体として説明しているが、これに限ったものではない。すなわち、シート状の記録体として例えばOHPシート等を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように、本発明は、画像形成装置について有用であり、特に定着装置を備えた電子写真方式の画像形成装置に有用である。
【符号の説明】
【0035】
P 用紙(シート状の記録体)
1 プリンター(画像形成装置)
29 転写器(転写部)
40 定着器(定着部)
40a 定着ローラー(加熱ローラー)
40b 加圧ローラー
100 回収装置
101 排気ダクト(ダクト)
102 送風ファン
103 回収フィルター(フィルター)
105 回収本体部
106 第1電極
107 第2電極
120 カム機構(駆動部)
図1
図2
図3
図4
図5