特許第5982003号(P5982003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982003
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】複合材粒子を含むトナー添加剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20160818BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20160818BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20160818BHJP
   G03G 9/107 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   G03G9/08 372
   G03G9/08 374
   G03G9/08 375
   G03G9/08 371
   G03G9/08 331
   G03G9/10 352
   G03G9/10 321
【請求項の数】16
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-539009(P2014-539009)
(86)(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公表番号】特表2015-502567(P2015-502567A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】US2012061957
(87)【国際公開番号】WO2013063291
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2014年6月24日
(31)【優先権主張番号】61/551,525
(32)【優先日】2011年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー フォミチェフ
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン エヌ.ステップ
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−188634(JP,A)
【文献】 特開昭64−009467(JP,A)
【文献】 特開2004−339508(JP,A)
【文献】 特開2009−263152(JP,A)
【文献】 特開2009−093178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属酸化物粒子とポリマーのマトリックスとを含む金属酸化物−ポリマー複合材粒子を含む粉末と混合されたトナー粒子を含んでなるトナー組成物であって、
該金属酸化物粒子は、第1の疎水化剤で変性されており、該第1の疎水化剤を介して該金属酸化物粒子は該ポリマーに共有結合的に結合されており、かつ、
該複数の金属酸化物粒子の一部は、該ポリマーのマトリックス内部に埋め込まれかつ外に突き出ている、トナー組成物。
【請求項2】
前記第1の疎水化剤が、式[R33-x(OR1)x]SiR2Qを有しており、式中、xは1、2または3であり、R1は、メチルまたはエチルであり、R2は、一般式Cn2nを有するアルキル結合基であり、式中nは1〜10であり、R3は、メチルまたはエチルであり、Qは置換もしくは非置換ビニル、アクリレートエステル、またはメタクリレートエステル基であり、但し、Qが置換もしくは非置換ビニルである場合には、nは2〜10である、請求項1記載のトナー組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子の表面が、第2の疎水化剤で変性されている、請求項1記載のトナー組成物。
【請求項4】
前記金属酸化物−ポリマー複合材粒子が、1〜約3の平均粗さP2/4πSを有し、式中、Pは、金属酸化物−ポリマー複合材粒子の断面の周長であり、かつSは、該粒子の断面積であり、かつPとSの両方は、透過型電子顕微鏡で測定される、請求項1記載のトナー組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが、スチレン、非置換もしくは置換アクリレートまたはメタクリレート、オレフィン、ビニルエステル、およびアクリロニトリルのポリマーならびにそれらの共重合体および混合物を含む、請求項1記載のトナー組成物。
【請求項6】
前記金属酸化物−ポリマー複合材粒子が、8〜12μmの粒子径を有するポリエステルケミカルトナー粒子と混合されて、4質量%の金属酸化物−ポリマー複合材粒子を有するトナーを形成し、該トナーが、シリコーン被覆された、60〜90μmの粒子径を有するCu−Znフェライト担体と混合されて、2質量%のトナーを有する混合物を形成し、かつ該混合物が、容器の体積の約6〜約8倍の体積以内の3次元混合機内で、約70%〜約90%の充填率で、容器中でリズミカルに、約50〜約70サイクル/分の振動数で、10分間撹拌した場合に、それらの直径は、25%未満増加する、請求項1記載のトナー組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物−ポリマー複合材粒子の水分含有量が、25℃で約1気圧で50%の相対湿度での平衡の後に測定した場合に、0質量%〜約10質量%である、請求項1記載のトナー組成物。
【請求項8】
前記ポリマーが、前記第1の疎水化剤のホモポリマーまたは共重合体を含んでいる、請求項1記載のトナー組成物。
【請求項9】
複数の金属酸化物粒子とポリマーのマトリックスとを含む金属酸化物−ポリマー複合材粒子の製造方法であって、
金属酸化物粒子と第1の疎水化剤とを含む水性分散液を調製すること、該第1の疎水化剤は、該金属酸化物粒子に化学的に結合される;
該水性分散液に、重合開始剤を加えて該第1の疎水化剤を重合し、金属酸化物粒子を表面に有する、金属酸化物−ポリマー複合材粒子を形成すること;および
該金属酸化物粒子の利用可能な表面を、第2の疎水化剤で処理すること、処理は、該金属酸化物−ポリマー複合材粒子の調製の前または形成の後に実施することができる、
を含んでなり、該第1の疎水化剤を介して該金属酸化物粒子は該ポリマーに共有結合的に結合されており、かつ、
該複数の金属酸化物粒子の一部は、該ポリマーのマトリックス内部に埋め込まれかつ外に突き出ている、方法。
【請求項10】
前記金属酸化物−ポリマー複合材粒子を乾燥することを更に含み、処理が、前記金属酸化物−ポリマー複合材粒子の形成の後に行われる場合には、乾燥は、処理の前または後に行うことができる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記開始剤が、油溶性開始剤である、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
複数の熱分解法金属酸化物粒子とポリマーのマトリックスとを含む金属酸化物−ポリマー複合材粒子の製造方法であって、
熱分解法金属酸化物粒子および第1の疎水化剤を含む水性分散液を調製すること、該第1の疎水化剤は、該金属酸化物粒子に化学的に結合される;および
重合開始剤を該水性分散液に加えて該第1の疎水化剤を重合し、表面に熱分解法金属酸化物粒子を有する、金属酸化物−ポリマー複合材粒子を形成すること、
を含んでなり、該第1の疎水化剤を介して該熱分解法金属酸化物粒子は該ポリマーに共有結合的に結合されており、かつ、
該複数の熱分解法金属酸化物粒子の一部は、該ポリマーのマトリックス内部に埋め込まれかつ外に突き出ている、方法。
【請求項13】
前記熱分解法金属酸化物粒子の利用可能な表面を、第2の疎水化剤で処理することを更に含み、処理は、該金属酸化物−ポリマー複合材粒子の調製の前または形成の後に行うことができる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記金属酸化物−ポリマー複合材粒子を乾燥して、粉末を形成することを更に含む、請求項9または12のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記第1の疎水化剤が、式[R33-x(OR1)x]SiR2Qを有しており、式中、xは1、2または3であり、R1は、メチルまたはエチルであり、R2は、一般式Cn2nを有するアルキル結合基であり、式中nは1〜10であり、R3は、メチルまたはエチルであり、Qは置換もしくは非置換ビニル、アクリレートエステル、またはメタクリレートエステル基であり、但し、Qが置換もしくは非置換ビニルである場合には、nは2〜10である、請求項9または12のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記分散液が、スチレン、置換もしくは非置換アクリレートまたはメタクリレートモノマー、オレフィンモノマー、ビニルエステル、あるいはアクリロニトリルの1種または2種以上を更に含む、請求項9または12のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真トナー用の外部添加剤としての金属酸化物−ポリマー複合材粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成は、光受容体ドラムもしくはベルトの表面を均一に帯電させること;光受容体表面の光への暴露および光受容体表面への電荷像、すなわち実像へと転写される情報の鏡映を作る潜像の形成;バインダー樹脂中に分散された着色剤を含む静電的に帯電されたトナー粒子で潜像を現像すること;現像されたトナーを、基材、例えば紙上に転写すること;基材上に画像を融着させること;および残存する静電電荷を消去し、そして残っているトナー粒子を取り除くことによって次のサイクルのために光受容体表面を準備すること、を含んでいる。
【0003】
電子写真および静電印刷に用いられるトナーは、バインダー樹脂および着色剤を含んでおり、そして更に電荷制御剤、オフセット防止剤、および他の添加剤を含むことができる。外部トナー添加剤、例えば金属酸化物粒子が、トナー粒子の、流動性、転写性、定着性、および洗浄性を含めた、選択された性質を向上させるために、しばしばトナー粒子に組み合わされる。種々の外部添加剤を単一のトナー組成物中で、そのトナーの別個の性質を向上させるために、用いることができる。例えば、帯電性、すなわち、摩擦帯電を向上させるように、いずれかの添加剤を選択することができる。洗浄性能または耐湿性を向上させるように他のものを選択することができる。勿論のこと、1つの機能のために最適化されたトナー添加剤が、種々の添加剤によって付与された機能に有害でないことが好ましい。
【0004】
トナー添加剤によって与えられる1つの機能は、間隔保持および流動性の維持である。もしもトナー粒子が互いに付着したら、それらは良好には流動せず、添加剤は、トナー粉末の凝集を低減するように作用する。添加剤粒子は、硬質である傾向にある。一方で、トナーは、軟質ポリマーから形成され、そして凝集性の粉末である。結果としてもたらされるトナー粒子の集塊は、電子写真装置の操作および印刷品質の両方に有害である。実際に、製造業者らは印刷されたページを作るのに必要なエネルギーを低減することを追求しているので、彼らは、トナーを基材に融着させるのに要する熱量を低減するために、より軟質のポリマー(すなわち、より低いTgのポリマー)に関心を向けてきた。しかしながら、硬質添加剤粒子は、軟質トナー粒子中に埋め込まれてしまって、添加剤の効果を低減させる可能性がある。添加剤粒子の大きさを増加させると、埋め込みは低減されるが、しかしながら、大きな粒子はまた、より重く、そしてトナー粒子からの落下(drop-off)のより高い比率を示す。勿論のこと、トナーから落ちた添加剤粒子は、トナー組成物の一部として、それらの機能を果たすことはできない。従って、そのトナーの摩擦帯電特性に悪影響なしに、トナー粒子中への限定された埋め込みと、限定された落下(drop-off)の両方を示し、トナー粒子間のスペーサーとしての役割をするトナー添加剤を有することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
疎水化された金属酸化物を含む、金属酸化物−ポリマー複合材の使用が、添加剤の落下(drop-off)性能を向上させることが見出された。
【0006】
1つの態様では、トナー組成物は、金属酸化物粒子およびポリマーを含む、金属酸化物−ポリマー複合材粒子を含む粉末と混合されたトナー粒子を含んでいる。金属酸化物粒子は、第1の疎水化剤で変性されており、それを介して金属酸化物粒子は、そのポリマーに共有結合的に結合されており、そして金属酸化物粒子の一部は、金属酸化物−ポリマー複合材粒子のポリマー部分内に、部分的にまたは完全に埋め込まれている。あるいは、または加えて、トナー組成物は、金属酸化物粒子およびポリマーを含む金属酸化物−ポリマー複合材粒子を含む粉末と混合されたトナー粒子を含んでおり、そして金属酸化物粒子は、第1の疎水化剤と第2の疎水化剤で変性されており、第1の疎水化剤を介して、金属酸化物粒子は、ポリマー共有結合的に結合されている。
【0007】
それらのトナー組成物のいずれかもしくは両方では、第1の疎水化剤は、式[R33-x(OR1)x]SiR2Qを有することができ、xは1、2または3であり、R1はメチルまたはエチルであり、R2は一般式Cn2nを有するアルキル結合基であり、nは1〜10であり、R3はメチルまたはエチルであり、そしてQは、置換されたもしくは非置換のビニル、アクリレートエステルまたはメタクリレートエステル基であり、但し、Qが置換もしくは非置換のビニルである場合には、nは2〜10である。例えば、第1の疎水化剤は、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランであることができる。
【0008】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、約20nm〜約450nmの体積平均直径を有することができる。それが既に変性されていない場合には、金属酸化物粒子の表面は、第2の疎水化剤で変性することができる。いずれの場合でも、第2の疎水化剤は、シラザン化合物、シロキサン化合物、シラン化合物および500以下の数平均分子量を有するシリコーン流体から選ぶことができる。第1の疎水化剤は、300未満の分子量を有することができる。
【0009】
それらのトナー組成物のいずれかにおいて、金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、0〜約1の平均相対トラフ面積(C−S)/Sを有することができ、Cは、粒子の境界をなしかつ取り囲む凸包内の面積であり、そしてSは、粒子の断面積である。金属酸化物粒子の一部は、金属酸化物−ポリマー複合材粒子のポリマー部分内に、部分的にまたは完全に埋め込まれていることができる。それらのトナー組成物のいずれかにおいては、金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、1〜約3の平均粗さP2/4πSを有することができ、Pは、金属酸化物−ポリマー複合材粒子の断面の周長であり、そしてSは、粒子の断面積であり、そしてPとSの両方は、透過型電子顕微鏡で測定される。
【0010】
それらのトナー組成物のいずれかにおいては、金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、第3の疎水化剤、例えばアルキルハロシランまたは、500超の数平均分子量を有するシリコーン流体で処理することができる。金属酸化物−ポリマー複合材粒子のポリマーは、スチレン、非置換もしくは置換アクリレートまたはメタクリレート、オレフィン、ビニルエステルおよびアクリロニトリルのポリマー、ならびにそれらの共重合体および混合物を含むことができる。金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、トナー粒子の表面上に分配されることができる。
【0011】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子が、8〜12μmの粒子径を有するポリエステルケミカルトナーと混合されて、4質量%の金属酸化物−ポリマー複合材粒子有するトナーを形成し、そしてこのトナーを60〜90μmの粒子径を有するシリコーン被覆Cu−Znフェライト担体と混合して2質量%のトナーを有する混合物を形成し、そしてこの混合物を、容器の体積の約6〜約8倍の体積以内の3次元混合機内で、約70%〜約90%の充填率で容器中でリズミカルに、約50〜約70サイクル/分の振動数で、10分間撹拌した場合に、それらの直径は、25%未満増加する。
【0012】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子の密度は、ヘリウムピクノメータで測定した場合に、金属酸化物の密度の約30%〜約90%であることができる。金属酸化物−ポリマー複合材粒子の水分含有量は、50%の相対湿度および25℃で約1気圧の圧力での平衡の後に測定した場合に、0質量%〜約10質量%であることができる。トナー組成物は、約0.5〜約7質量%の金属酸化物−ポリマー複合材粒子を含むことができる。
【0013】
このポリマーは、第1の疎水化剤のポリマーまたは共重合体を含むことができる。金属酸化物粒子は、沈降、ヒュームド、またはコロイド状金属酸化物粒子、例えばシリカ、チタニア、またはその両方を含むことができる。金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、約0.8〜約1.2のアスペクト比を有することができる。金属酸化物粒子の長さの約5%〜約95%が、金属酸化物−ポリマー複合材粒子の表面に露出されていることができる。
【0014】
他の態様では、複合材粒子の製造方法は、金属酸化物粒子および第1の疎水化剤を含む水性分散液を調製すること、第1の疎水化剤は、金属酸化物粒子に化学的に結合される;重合開始剤をこの水性分散液に加えて、その表面にシリカ粒子を有する金属酸化物−ポリマー複合材粒子を形成すること;ならびに第2の疎水化剤で、金属酸化物粒子の利用可能な表面を処理すること、処理は金億酸化物−ポリマー複合材粒子の調製の前もしくは形成の後に行うことができる;を含んでいる。
【0015】
この方法は、金属酸化物−ポリマー複合材粒子を乾燥することを更に含んでいることができ、処理が金属酸化物−ポリマー複合材粒子の形成の後に行われる場合には、乾燥は、処理の前もしくは後に行うことができる。開始剤は、油溶性の開始剤であることができる。第2の疎水化剤は、シラザン化合物、シロキサン化合物、シラン化合物、および500以下の数平均分子量を有するシリコーン流体から選ぶことができる。
【0016】
第1の疎水化剤は、式[R33-x(OR1)x]SiR2Qを有することができ、xは1、2または3であり、R1はメチルまたはエチルであり、R2は一般式Cn2nを有するアルキル結合基であり、nは1〜10であり、R3はメチルまたはエチルであり、そしてQは、置換されたもしくは非置換のビニル、アクリレートエステルまたはメタクリレートエステル基であり、但し、Qが置換もしくは非置換のビニルである場合には、nは2〜10である。この分散液は、スチレン、置換もしくは非置換のアクリレートまたはメタクリレートモノマー、オレフィンモノマー、ビニルエステル、あるいはアクリロニトリルの1種もしくは2種以上を更に含むことができる。この方法は、金属酸化物−ポリマー複合材粒子を乾燥して、粉末を形成することを更に含むことができ、この粉末は粉砕することができる。
【0017】
他の態様では、複合材粒子の製造方法は、ヒュームド金属酸化物粒子および第1の疎水化剤を含む水性分散液を調製すること、この第1の疎水化剤は、金属酸化物粒子に化学的に結合する;および重合開始剤をこの水性分散液に加えて、ヒュームド金属酸化物粒子をそれらの表面に有する金属酸化物−ポリマー複合材粒子を形成すること、を含んでいる。
【0018】
この方法は、ヒュームド金属酸化物粒子の利用可能な表面を、第2の疎水化剤で処理することを更に含むことができ、処理は、金属酸化物−ポリマー複合材粒子の調製の前もしくは形成の後に行うことができる。第2の疎水化剤は、シラザン化合物、シロキサン化合物、シラン化合物、および500以下の数平均分子量を有するシリコーン流体から選ぶことができる。この方法は、金属酸化物−ポリマー複合材粒子を乾燥して、粉末を形成することを更に含むことができ、この粉末は粉砕することができる。
【0019】
第1の疎水化剤は、式[R33-x(OR1)x]SiR2Qを有することができ、xは1、2または3であり、R1はメチルまたはエチルであり、R2は一般式Cn2nを有するアルキル結合基であり、nは1〜10であり、R3はメチルまたはエチルであり、そしてQは、置換もしくは非置換のビニル、アクリレートエステルまたはメタクリレートエステル基であり、但し、Qが置換もしくは非置換のビニルである場合には、nは2〜10である。この分散液は、スチレン、置換もしくは非置換のアクリレートまたはメタクリレートモノマー、オレフィンモノマー、ビニルエステル、あるいはアクリロニトリルの1種もしくは2種以上を更に含むことができる。
【0020】
他の態様、金属酸化物−ポリマー複合材粒子を製造する方法は、水性媒体中に第1の疎水化剤を含むミルを含むエマルジョンを調製すること、ここで金属酸化物粒子は、このミセルの少なくとも表面に分配されており、そして第1の疎水化剤は、式[R33-x(OR1)x]SiR2Qを有することができ、xは1、2または3であり、R1はメチルまたはエチルであり、R2は一般式Cn2nを有するアルキル結合基であり、nは1〜10であり、R3はメチルまたはエチルであり、そしてQは、置換もしくは非置換のビニル、アクリレートエステルまたはメタクリレートエステル基であり、但し、Qが置換もしくは非置換のビニルである場合には、nは2〜10である;所定の時間、この分散液を温置すること(incubating);油溶性のラジカル開示剤をこのエマルジョンに加えること;第1の疎水化剤の化学基が、ポリマーの一部になることを可能にすること、それによって金属酸化物−ポリマー複合材粒子を形成すること;ならびに金属酸化物−ポリマー複合材粒子を乾燥して、粉末を得ること、を含んでいる。
【0021】
この方法は、金属酸化物−ポリマー複合材粒子を第2の疎水化剤で処理することを更に含むことができ、処理は、金属酸化物−ポリマー複合材粒子の調製の前もしくは形成の後に行うことができる。第2の疎水化剤は、シラザン化合物、シロキサン化合物、シラン化合物、および500以下の数平均分子量を有するシリコーン流体から選ぶことができる。この方法は、金属酸化物−ポリマー複合材粒子を粉砕すること更に含むことができる。このエマルジョンは、スチレン、置換もしくは非置換のアクリレートまたはメタクリレートモノマー、オレフィンモノマー、ビニルエステル、あるいはアクリロニトリルの1種もしくは2種以上を更に含むことができる。
【0022】
前述の包括的な記載および以下の詳細な説明の両方ともに、例示および説明のためだけのものであり、そして特許請求した本発明の更なる説明を提供することを意図していることが理解されなければならない。
【0023】
本発明が、図面の幾つかの図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図2図2は、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【0025】
図3A図3Aおよび3Bは、20%の出力(図1A)および30%の出力(図1B)での超音波処理の後の代用(proxy)トナー配合品上に残った、本発明の例示的な態様によって調製された添加剤の量を示している。
図3B図3Aおよび3Bは、20%の出力(図1A)および30%の出力(図1B)での超音波処理の後の代用(proxy)トナー配合品上に残った、本発明の例示的な態様によって調製された添加剤の量を示している。
【0026】
図4図4は、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図5図5は、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図6図6は、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【0027】
図7図7は、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の等温水分吸着曲線を示すグラフである。
【0028】
図8図8は、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【0029】
図9図9〜13は、本発明の種々の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図10図10は、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図11図11は、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図12図12は、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図13図13は、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【0030】
図14A図14AおよびBはそれぞれ、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型および走査型電子顕微鏡写真である。
図14B図14AおよびBはそれぞれ、本発明の態様によって製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子の透過型および走査型電子顕微鏡写真である。
【0031】
図15A図15AおよびBは、Cu−Zn担体と30分間振とうされた前(A)および後(B)の、例1の金属酸化物−ポリマー複合材粒子を用いて配合されたトナーの走査型電子顕微鏡写真である。
図15B図15AおよびBは、Cu−Zn担体と30分間振とうされた前(A)および後(B)の、例1の金属酸化物−ポリマー複合材粒子を用いて配合されたトナーの走査型電子顕微鏡写真である。
【0032】
図16A図16AおよびBは、Cu−Zn担体と30分間振とうされた前(A)および後(B)の、例2の金属酸化物−ポリマー複合材粒子を用いて配合されたトナーの走査型電子顕微鏡写真である。
図16B図16AおよびBは、Cu−Zn担体と30分間振とうされた前(A)および後(B)の、例2の金属酸化物−ポリマー複合材粒子を用いて配合されたトナーの走査型電子顕微鏡写真である。
【0033】
図17A図17AおよびBは、Cu−Zn担体と10分間振とうされた前(A)および後(B)の、従来技術の方法を用いて製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子で配合されたトナーの走査型電子顕微鏡写真である。
図17B図17AおよびBは、Cu−Zn担体と10分間振とうされた前(A)および後(B)の、従来技術の方法を用いて製造された金属酸化物−ポリマー複合材粒子で配合されたトナーの走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
1つの態様では、トナー組成物は、金属酸化物粒子とポリマーとを含む金属酸化物−ポリマー複合材粒子を含む粉末と混合されたトナー粒子を含んでいる。金属酸化物粒子の表面は、第1の疎水化剤で変性されており、第1の疎水化剤を介して、金属酸化物粒子は、ポリマーに共有結合的に結合されている。金属酸化物粒子の一部は、部分的にまたは完全に、金属酸化物−ポリマー複合材粒子のポリマー部分内に埋め込まれている。他の態様では、トナー組成物は、金属酸化物粒子とポリマーとを含む金属酸化物−ポリマー複合材粒子を含む粉末と混合されたトナー粒子を含んでおり、そして金属酸化物粒子は、第1の疎水化剤と第2の疎水化剤で変性されており、第1の疎水化剤を介して、金属酸化物粒子は、ポリマーに共有結合的に結合されている。
【0035】
本発明での使用に適当な金属酸化物粒子としては、シリカ、アルミナ、セリア、酸化モリブデン、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、磁鉄鉱(Fe34)および種々の形態のFe23を含む酸化鉄が挙げられるがそれらには限定されない酸化鉄、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化スズ、またはそれらのいずれかの2種もしくは3種以上の混合物または混合酸化物、が挙げられる。外部トナー添加剤としての使用では、金属酸化物粒子は、典型的にはシリカ、アルミナおよびチタニアの少なくとも1種を含んでいる。
【0036】
好適な粒子としては、沈降、コロイド状、および熱分解法金属酸化物粒子が挙げられるがそれらには限定されない。金属酸化物粒子は、当業者に知られた技術を用いて製造することができる。例示的な、商業的に入手可能なチタニア粒子としては、Sakai ChemicalのSTR100NおよびSTR100A二酸化チタンが挙げられる。
【0037】
沈降金属酸化物粒子は、慣用の技術を用いて製造することができ、そして高い塩濃度、酸または他の凝固剤の影響下での、水性媒体からの所望の粒子の凝固によってしばしば形成される。金属酸化物粒子は、ろ過され、洗浄され、乾燥され、そして当業者に知られた慣用の技術によって他の反応生成物の残渣から分離される。沈降粒子は、多くの一次粒子が互いに凝固して、ある程度球形の凝集した塊(cluster)を形成するという意味で、しばしば凝集している。商業的に入手可能な沈降金属酸化物の限定するものではない例としては、PPG Industries, Inc.のHi−Sil(商標)製品およびDegussa CorporationのSIPERNAT(商標)製品が挙げられる。
【0038】
代替の金属酸化物モルフォロジーが、米国特許第4,755,368号、第6551567号および第6,702,994号明細書、米国特許出願公開第20110244387号明細書、Muellerら、"Nanoparticle synthesis at high production rates by flame spray pyrolysis"、Chemical Engineering Science、58、1969 (2003)、およびNaitoら、"New Submicron Silica Produced by the Fumed Process"、published in NIP 28: International Conference on Digital Printing Technologies and Digital Fabrication 2012、2012、p.179-182、に記載されている方法を用いて得ることができ、これらの全ての内容を参照することによって本明細書の内容とする。これらの方法は、典型的には低構造および表面積を有する金属酸化物粒子をもたらす。これらの粒子の多くは熱分解型であり、すなわち、それらは火炎中で生成される。熱分解型粒子の他の製造方法が、例えば、KodasおよびHampden-Smith、Aerosol Processing of Materials、Wiley-VCH、1998中に開示されている。ここで提供される複合材粒子に用いられる好適な熱分解金属酸化物は、小さく、例えば100nm未満の体積平均直径を有している。
【0039】
コロイド状金属酸化物粒子は、しばしば凝集しておらず、個々に分離した(一次)粒子であり、典型的には球状またはほぼ球状の形状であり、しかしながら他の形状(例えば、概して楕円、四角または矩形の断面を備えた形状)を有することができる。コロイド状金属酸化物は、商業的に入手可能であるか、または種々の出発材料(例えば、湿式法型の金属酸化物)から既知の方法によって調製することができる。コロイド状金属酸化物粒子は、典型的には沈降金属酸化物粒子(すなわち、それらは水性媒体から凝固される)と同様の方法で製作することができるが、しかしながら液体媒体中に(しばしば水単独あるいは、共溶媒および/または安定化剤と共に)分散されたままである。金属酸化物粒子は、例えば、約9〜約11のpHを有するアルカリケイ酸塩溶液から誘導されたケイ酸から調製することができ、ケイ酸塩アニオンは、重合を経て、水性分散液の形態で、所望の平均粒子径を有する分離したシリカ粒子を生成する。典型的には、コロイド状金属酸化物の開始材料は、ゾルとして入手可能であり、これは好適な溶媒、最も多くの場合には単独あるいは共溶媒および/または安定剤を有する水の中のコロイド状金属酸化物の分散液である。例えば、Stoeberら、"Controlled Growth of Monodisperse Silica Spheres in the Micron Size Range"、Journal of Colloid and Interface Science、26、1968、p.62-69、Akitoshi Yoshida、Silica Nucleation、Polymerization, and Growth Preparation of Monodispersed Sols, in Colloidal Silica Fundamentals and Applications、p.47-56(H. E. Bergna & W. O. Roberts, eds.、CRC Press: Boca Raton, Florida, 2006)、およびHer, R.K.、The Chemistry of Silica、p.866 (John Wiley & Sons: New York, 1979)を参照。本発明における使用に好適な、商業的に入手可能なコロイド状金属酸化物の限定するものではない例としては、Nissan ChemicalのSNOWTEX(商標)製品、W.R. Grace & Co.から入手可能なLUDOX(商標)製品、Nyacol Nanotechnologies, Inc.から入手可能なNexSil(商標)およびNexSil A(商標)シリーズの製品、Fuso Chemicalから入手可能なQuartron(商標)製品、AkzoNobelから入手可能なLevasil(商標)製品、が挙げられる。
【0040】
コロイド状金属酸化物粒子は、約5〜約100nm、例えば、約5〜約10nm、約10〜約20nm、約20nm〜約30nm、約30〜約50nm、または約50〜約70nmの一次粒子径を有することができる。金属酸化物粒子は、球形または非球形であることができる。例えば、金属酸化物粒子のアスペクト比は、約1.5〜約3、例えば、約1.5〜約1.8、約1.8〜約2.1、約2.1〜約2.5、約2.5〜約2.8、または約2.8〜約3であることができる。粒子径は、動的光散乱法によって測定することができる。
【0041】
金属酸化物粒子は、第1の疎水化剤で処理される。第1の疎水化剤は、二官能性であり、金属酸化物粒子と共有結合的に結合することができる第1の反応性基および、金属酸化物−ポリマー複合材粒子のポリマー中に組み込むことができる第2の反応性基を含んでいる。実施態様によっては、第1の疎水化剤は、300未満の分子量を有することができる。本明細書中で用いられる用語としての「疎水性」金属酸化物粒子は、様々な水準および程度の疎水性を包含している。金属酸化物粒子に与えられる疎水性の程度は、用いられる処理剤の種類および量に依存して変わる。本発明での使用のための疎水性の金属酸化物粒子は、例えば、利用可能な金属酸化物表面のヒドロキシル基の約15%〜約85%が反応されていることができ、例えば、利用可能な金属酸化物表面のヒドロキシル基の約25%〜約75%、または約40%〜約65%、あるいは、上記の端点のいずれか2つによって拘束されるいずれかの範囲のパーセント、が反応されていることができる。第2の疎水化剤が用いられる場合には、下記で議論されるように、これは金属酸化物の表面ヒドロキシル基の一部と反応することができる。
【0042】
第1の疎水化剤は、式[R33-x(OR1)x]SiR2Qを有することができ、xは1、2または3であり、R1はメチルまたはエチルであり、R2は一般式Cn2nを有するアルキル結合基であり、nは1〜10であり、R3はメチルまたはエチルであり、そしてQは、置換もしくは非置換のビニル、アクリレートエステルまたはメタクリレートエステル基であり、但し、Qが非置換もしくは置換のビニルである場合には、nは2〜10である。第1の疎水化剤としての使用のために好適な例示的な薬品としては、(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリルオキシオキシプロピル)トリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−ブテニルトリメトキシシラン、3−ブテニルトリエトキシシラン、4−ペンテニルトリエトキシシラン、4−ペンテニルトリメトキシシラン、5−ヘキセントリメトキシシラン、5−ヘキセンメチルジメトキシシラン、およびメタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、が挙げられるがそれらには限定されない。金属酸化物粒子がシリカでない場合には、二もしくは三官能性シランが用いられなければならない(すなわち、xは、2または3でなければならない)。
【0043】
金属酸化物粒子は、第1の疎水化剤で処理された前もしくは後、または金属酸化物−ポリマー複合材粒子の形成の後のいずれかに、第2の疎水化剤で更に処理されることができ、その場合には、金属酸化物粒子の暴露された表面だけが処理される。第2の疎水化剤としての使用のための好ましい薬品は、シラザン化合物、シロキサン化合物、およびシラン化合物、そして共溶媒あり、もしくはなしで水にいくらかの溶解性を有するシリコーン流体である。好ましくは、第2の疎水化剤としての使用のためのシリコーン流体は、500以下の数平均分子量を有している。シラン化合物の例としては、アルキルシランおよびアルコキシシランが挙げられる。アルコキシシランとしては、一般式R’xSi(OR”)4-xを有する化合物が挙げられ、R’は、C1〜C30の分岐および直鎖アルキル、アルケニル、C3〜C10のシクロアルキル、およびC6〜C10アリールからなる群から選ばれ、R”は、C1〜C10の分岐または直鎖アルキルであり、そしてxは、1〜3の整数である。金属酸化物粒子がシリカを含まない場合には、第2の疎水化剤は、二もしくは三官能シランまたはシロキサンあるいはシリコーン流体でなければならない。
【0044】
本明細書で教示される第2の疎水化剤として用いることができるシラン化合物の限定するものではない例としては、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシランなど、が挙げられる。有用なシロキサン化合物の限定するものではない例としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサンなどが挙げられる。有用なシラザン化合物の限定するものではない例としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザンなどが挙げられる。例えば、HMDZは、金属酸化物粒子の表面上の未反応のヒドロキシル基をキャップするために用いることができる。また、例示的な疎水性を与える薬品としては、ヘキサメチルジシラザン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよび環状シラザン、例えば米国特許第5989768号明細書に開示されているもの、が挙げられる。そのような環状シラザンは、下記の式で表される。
【0045】
【化1】
【0046】
式中、R7およびR8は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、およびアルコキシからなる群から独立して選ばれ;R9は、水素、(CH2)rCH3、ここでrは0〜3の範囲の整数である、C(O)(CH2)rCH3、ここでrは、0〜3の範囲の整数である、C(O)NH2、C(O)NH(CH2)rCH3、ここで、rは、0〜3の整数である、およびC(O)N{(CH2)rCH3}(CH2)sCH3、ここでrおよびsは、0〜3の整数である、からなる群から選ばれ;そしてR10は、式[(CH2)a(CHX)b(CYZ)c]で表され、ここでX、YおよびZは、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、およびアリールオキシからなる群から独立して選ばれ、そしてa、bおよびcは、1〜6の範囲の整数であり、(a+b+c)は2〜6の範囲の整数に等しいという条件を満足する。環状シラザンは、下記の式を有する5員または6員環であることができる。
【0047】
【化2】
【0048】
式中、R11は、式[(CH2)a(CHX)b(CYZ)c]で表され、ここで、X、YおよびZは、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、およびアリールオキシからなる群から独立して選ばれ、そしてa、bおよびcは、0〜6の整数であり、(a+b+c)は3〜4の範囲の整数に等しいという条件を満足する。
【0049】
第2の処理剤としての使用に好適なシリコーン流体としては、非官能化シリコーン流体および官能化シリコーン流体の両方が挙げられる。金属酸化物粒子の表面処理に用いられる条件、および用いられる具体的なシリコーン流体に応じて、シリコーン流体は、非共有結合的に結合したコーティングとして存在することができる、あるいは、金属酸化物粒子の表面に共有結合的に結合することができる。有用な非官能化シリコーン流体の限定するものではない例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン共重合体、フルオロアルキルシロキサン共重合体、ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、フェニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、フェニルメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体、メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、ポリアルキレンオキシド変性シリコーンなど、が挙げられる。官能化シリコーン流体は、例えば、ビニル、ヒドリド、シラノール、アミノ、およびエポキシからなる群から選ばれた官能基を含むことができる。これらの官能基は、シリコーンポリマーの主鎖に直接に結合することができ、あるいは、中間のアルキル、アルケニル、またはアリール基を介して結合することができる。
【0050】
あるいは、または加えて、米国特許出願公開第20110244382号明細書(その内容を参照することによって本明細書の内容とする)中に開示されたジメチルシロキサン共重合体を、金属酸化物粒子を処理するために用いることができる。例示的なジメチルシロキサン共重合体としては、下記の式の共重合体が挙げられる。
【0051】
【化3】
【0052】
式中、R1は、−H、−CH3であり、R2は、−H、−CH3であり、R3は、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、CH2Ar、−CH2CH2Ar、−Ar、−CH2CH2CF3、または−CH2CH2−Rfであり、ここでRfは、C1〜C8ペルフルオロアルキル基であり、R4は−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−CH2CH2CF3、または−CH2CH2−Rfであり、ここでRfはC1〜C8ペルフルオロアルキル基であり、R5は−CH3、−CH2CH3、−CH2Ar、−CH2CH2Ar、−Arであり、R6は−H、−OH、−OCH3、または−OCH2CH3であり、Arは、非置換のフェニルもしくは、メチル、ハロゲン、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、または−CH2CF3基の1つもしくは2つ以上で置換されたフェニル、n、mおよびkは、整数であり、n≧1、m≧0、およびk≧0、そしてこの共重合体は、208〜20000の分子量を有している。
【0053】
あるいは、または加えて、第2の疎水化剤は、電荷変性剤であることができる。米国特許出願公開第2010/0009280号明細書(その内容を参照することにより本明細書の内容とする)中に開示されたいずれかの電荷変性剤を、ここで用いることができる。例示的な電荷変性剤としては、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン(DNPS)、3,5−ジニトロベンズアミド−n−プロピルトリエトキシシラン、3−(トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド(TESPNBA)、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン(PFPTES)、および2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン(CSPES)が挙げられるがそれらには限定されない。ニトロ基を含む電荷変性剤は、ヒドリド基がニトロ基を減少させる可能性があるので、共重合体の後に、金属酸化物の後処理に用いなければならない。
【0054】
第2の疎水化剤に代えて、または加えて、金属酸化物粒子は、金属酸化物−ポリマー複合材の形成に続いて、第3の疎水化剤で処理することができる。第3の処理剤は、アルキルハロシランまたは、500超の数平均分子量を有するシリコーン流体であることができる。アルキルハロシランとしては、式R’xSiR”y4-x-yを有する化合物が挙げられ、ここでR’およびR”は上記で規定した通りであり、Zはハロゲン、好ましくは塩素であり、そしてyは1、2もしくは3である。
【0055】
第2の疎水化剤(金属酸化物−ポリマー粒子の形成後に用いられた場合)および/または第3の疎水化剤と、金属酸化物−ポリマー複合材粒子のポリマー成分との間の相互作用に応じて、それらの薬品はまた、金属酸化物−ポリマー複合材粒子の露出されたポリマー表面を表面処理することができる。
【0056】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子に用いられるポリマーは、第1の疎水化剤のポリマーと同じでも、異なっていてもよい。すなわち、第1の疎水化剤が重合性基を含んでいる場合には、同じ材料をこのポリマーを形成するのに単純に用いることができる。態様によっては、第1の疎水化剤のポリマーは、ポリエーテルではない。あるいは、または加えて、第1の疎水化剤のポリマーは、アクリレートまたはメタクリレートポリマーである。あるいは、または加えて、第1の疎水化剤の末端基と共重合可能な、別のモノマーまたは架橋剤を用いることができる。金属酸化物−ポリマー複合材粒子を生成するのに用いることができる好適なモノマーとしては、置換および非置換のビニルおよびアクリレート(メタクリレートを含めて)モノマー、ならびにラジカル重合によって重合する他のモノマーが挙げられる。例示的なモノマーとしては、スチレン、アクリレートおよびメタクリレート、オレフィン、ビニルエステル、ならびにアクリロニトリルが挙げられ、当業者には、例えばSigma-Aldrich(Milwaukee、ウィスコンシン州)から容易に入手可能である。そのようなモノマーは、それ自体で、共重合体を形成するように混合物で、または架橋剤とともに、用いることができる。例示的な架橋剤としては、ジビニル末端型の第1の疎水化剤(例えば、ビニル基で置換されたシランを備えた)または他のよく知られたビニル架橋剤、例えば、ジビニルベンゼンおよびエチレングリコールジメチルアクリレートが挙げられる。あるいは、または加えて、共モノマーまたは架橋剤は、シランと反応することができる。例えば、シラノール末端のシロキサンポリマーまたは上記の式(1)の共重合体を、第1の疎水化剤とともに用いることができる。共モノマーまたは架橋剤は、第1の疎水化剤と同時に、または異なる時間に加えることができる。架橋剤の量は、最終的なポリマー中の架橋度を制御するように調整することができる。
【0057】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、第1の疎水化剤および随意選択的なモノマーを含む有機相ならびに水性相のエマルジョンを生成することによって作られ、その中で、金属酸化物粒子は、2つの流体相の間の界面に主に配置される。有機相中の重合性種の重合は、複合材粒子をもたらす。1つの例示的な手順としては、エマルジョンは、第1の疎水化剤および随意選択的な共モノマーおよび架橋剤および金属酸化物粒子で、水性媒体、例えば、随意選択的な共溶媒、例えばアルコール、例えばイソプロピルアルコールを含む水中で、約1.5〜8.0の質量比(重合性種:金属酸化物)で調製される。エマルジョン中の金属酸化物粒子および重合性種の合計量は、約5質量%〜約25質量%、例えば5質量%〜約15質量%、約15質量%〜約22質量%、約18質量%〜約25質量%であることができる。pHは、随意選択的に約8.0〜10とされ、そして分散液は、温度を25〜60℃に維持しながら、エマルジョンを形成するために撹拌される(典型的には1〜3時間)。撹拌に続いて、開始剤が、エタノール、アセトンまたは他の水と混和性の溶媒中の溶液として、モノマーに対して約1〜約4質量%の水準で、導入される。好適な開始剤としては、油溶性のアゾまたは過酸化物の熱開始剤、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)、過酸化ベンゾイル、ターシャリ−ブチルペルアセテート、およびシクロヘキサノンペルオキシドが挙げられるが、それらには限定されない。種々の好適な開始剤が、和光純薬株式会社(大阪、日本)から入手可能である。開始剤は、金属酸化物の導入の前に、モノマー中に溶解させてもよい。結果として得た溶液は、撹拌しながら、4〜6時間に亘って、65〜95℃で温置される。結果として得たスラリーを、100〜130℃で一晩乾燥し、そして残っている固体を粉砕して、粉末を生成させる。金属酸化物−ポリマー複合材の形成の後に第2の疎水化剤が加えられる場合には、それは乾燥工程の前に導入することができる。例えば、第2の疎水化剤が加えられ、そしてスラリーが、60〜75℃で更に2〜4時間に亘って温置で撹拌される。
【0058】
当業者は、金属酸化物−ポリマー複合材の表面に露出される金属酸化物の量は、開始剤が活性化される前に、金属酸化物粒子が第1の疎水化剤に曝露される時間の長さに依存して変わることを理解するであろう。エマルジョン中の金属酸化物粒子は、第1の疎水化剤を含む、ミルまたは液滴の表面に分配されている。いずれかの特定の理論によって拘束はされないが、第1の疎水化剤は、金属酸化物表面に吸着され、そして結合され、金属酸化物粒子は、より疎水性となり、そして徐々にその表面のより高い比率を第1の疎水化剤の液滴の内部に露出する、すなわち、その液滴中に沈み込むことによって、エマルジョンの水性の連続相により少ない表面を暴露する。重合が一旦終了すると、金属酸化物粒子は位置が固定される。第2の疎水化剤が用いられる場合には、処理の度合いは、金属酸化物−ポリマー複合材の表面における金属酸化物粒子の露出の制御のための、更なる機会を提供する。当業者は、変量、例えばエマルジョンの水性相のpH、および温置の温度が、複合材粒子のモルフォロジーに影響を与えることを理解するであろう。態様によっては、複合材粒子は、複合材粒子の内部、すなわち、ポリマー相の完全に内部に配置された、ならびに表面から突き出している、金属酸化物粒子を有している。それらの態様では、金属酸化物粒子は、複合材粒子の機械的な補強に貢献し、それらの圧縮強度を向上させる。
【0059】
金属酸化物の第1の疎水化剤での表面処理の程度は、最初の溶液のpHおよび温度を調整することによって制御することができる。また、第1の疎水化剤の金属酸化物粒子上への吸着(この吸着に次いでその表面とその薬品との間のシロキサン結合の形成が起こる)の速度は、シラン上の脱離基の選択によって制御することができ、例えば、エトキシは、メトキシよりもより遅く加水分解する傾向にある。
【0060】
また、表面処理の程度も、金属酸化物−ポリマー複合材粒子の表面に露出された金属酸化物粒子の表面の量に影響を与える。第1の疎水化剤および水溶液の混合物がエマルジョンを形成し、このエマルジョンは、金属酸化物粒子の第1の疎水化剤の液滴の表面への移動によって安定化される。シランが加水分解し、そして金属酸化物表面上に吸着されると、もともとは親水性の表面が、より疎水性になり、そして従って有機相とより親和性になり、有機/水性界面の水性の側から、有機の側に徐々に移動する。従って、重合の前に金属酸化物の表面処理の程度を制御することもまた、結果として得られる金属酸化物−ポリマー複合材粒子の表面における金属酸化物の量を制御する。
【0061】
この複合材粒子中の金属酸化物粒子の少なくとも一部は、この複合材粒子のポリマー部分内に完全に埋め込まれていることができる。あるいは、または加えて、金属酸化物粒子の少なくとも一部は、この複合材粒子のポリマー部分の中に部分的に埋め込まれていることができ、すなわち金属酸化物粒子の一部が、ポリマーマトリック内に、および外に突き出ている。特定の態様では、本複合材の表面に露出された金属酸化物粒子は、少なくとも200個の金属酸化物−ポリマー複合材粒子の電子顕微鏡写真によって観察することができる金属酸化物粒子を測定して、それらの長さの約0%〜約95%、例えば約5%〜約90%、約10%〜約20%、約20%〜約30%、約30%〜約40%、約40%〜約50%、約50%〜約60%、約60%〜約70%、約70%〜約80%、または約80%〜約90%が、金属酸化物−ポリマー複合材粒子の表面から突き出していることができる。
【0062】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、典型的には球形である。粒子は、球状である必要はなく、むしろ、金属酸化物粒子が複合材粒子の表面に露出している程度に応じて、典型的には「でこぼこのある(bumpy)」表面を有していることが理解されるであろう。金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、約0.8〜約1.2、例えば約0.85〜約0.90、約0.90〜約0.95、約0.95〜約1.0、約1.0〜約1.05、約1.05〜約1.1、または約1.1〜約1.15のアスペクト比を有することができる。
【0063】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子の「でこぼこ(bumpiness)」または粗さの程度は、TEM(透過型電子顕微鏡)評価によって測定することができる。慣用の画像解析粗ストウエアが、粒子の断面の外周Pを画定するのに用いられる。同じソフトウエアが、粒子の断面積Sを計算するのに用いられる。それらの測定は、多数のTEM画像上の多数の粒子について行われる。粒子の粗さは、P2/4πSに等しい(John C. Russ、The Image Processing Handbook、CRC Press、第4版、2002)。理想的な球状粒子の粗さは、1.0である。典型的な非凝集コロイド状シリカの粗さは、約1.3である。金属酸化物−ポリマー複合材粒子の平均粗さは、1〜約3、例えば1〜約1.5、約1.5〜約2、約2〜約2.5、または約2.5〜約3、例えば約1.1〜約1.5、または約1.2〜約1.4であることができる。平均粗さは、少なくとも200個の粒子、好ましくは少なくとも500個の粒子を用いて測定される。
【0064】
あるいは、または加えて、同じ画像解析ソフトウエアが、粒子の画像について凸包(convex hull)を構築し、そして、「外殻面積」と称される、外殻(hull)内部の面積Cを測定するのに用いることができ、凸包(convex hull)は、粒子全体を取り囲む、湾曲した凸上の境界表面である。それは、一対の平行線を、それらが粒子画像の外面にまさに接触するまで動かすことによって作り出される。平行線の角度が、次いで変えられ、そしてこの操作が、凸包の全ての軌道が画定されるまで繰り返される。相対トラフ面積(RTA)は、(C−S)/Sで規定され、ここでSは、粗さと関連して記載された粒子の断面積である。RTAの値は、表面からの突出が増加するとともに増加する。完全な球のRTAは0である。典型的な非凝集のコロイド状シリカのRTAは、約0.01である。金属酸化物−ポリマー複合材粒子の平均RTAは、0〜約1、例えば約0〜約0.1、例えば約0.01〜約0.02、約0.02〜約0.03、約0.03〜約0.04、約0.04〜約0.05、約0.05〜約0.06、0.06〜約0.07、約0.07〜約0.08、約0.08〜約0.09、または約0.09〜約0.1であることができる。平均RTAは、少なくとも200個の粒子の画像を用いて測定される。勿論のこと、より多くの粒子画像を用いることは、より大きな感度を与え、そして異なる粒子モルフォロジーの識別を促進する。
【0065】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、約20nm〜約500nmの平均直径(体積平均)を有することができる。アスペクト比が1でない場合には、直径は、粒子の最大の直径を表す。例えば、金属酸化物−ポリマー複合材粒子の体積平均直径は、約20nm〜約50nm、50nm〜約100nm、約100nm〜約150nm、約150nm〜約200nm、約200nm〜約250nm、約250nm〜約300nm、約300nm〜約350nm、約350nm〜約400nm、約400nm〜約450nm、または約450nm〜約500nmであることができる。
【0066】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、好ましくは、金属酸化物自体の比重(例えば、シリカは、2.2g/cm3の比重を有しており、二酸化チタンは、3.6g/cm3の密度を有している)よりも小さい密度を有している。例えば、複合材粒子の比重は、その中に含まれる金属酸化物の比重の、約30%〜約35%、約35%〜約40%、40%〜約45%、約45%〜約50%、約50%〜約55%、約55%〜約60%、約60%〜約63%、約63%〜約67%、約67%〜約70%、約70%〜約73%、約73%〜約76%、約76%〜約79%、約79%〜約82%、約82%〜約85%、または約85%〜約90%であることができる。密度は、ヘリウムピクノメータで測定することができる。
【0067】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、慣用のトナーおよびケミカルトナーの両方に、外部添加剤として用いることができる。慣用のトナーは、慣用の溶融押出装置および関連する装置で、多くの既知の方法、例えば樹脂、顔料粒子、随意選択的な帯電促進添加剤および他の添加剤を混合し、そして加熱すること、によって調製することができる。粉末の乾式混合のための慣用の装置を、カーボンブラック粒子を樹脂と混合する(mixing)、または混合する(blending)ために用いることができる。他の方法としては、スプレー乾燥などが挙げられる。顔料および他の成分の樹脂との配合には、通常は、機械的な摩砕および分級が続いて行われて、所望の粒子径および粒子径分布を有するトナー粒子を与える。また、化学的に調製されるトナーとして知られているケミカルトナーは、液相で生成され、樹脂粒子は、通常は着色剤の存在の下で形成される。例えば、ポリマーラテックスが水性顔料分散液と組み合わされ、そして凝固剤を用いて塊状にしてポリマー粒子が形成されるプロセスが開発されている。他のプロセスとしては、少なくとも1種のモノマー中での顔料の分散液の水性懸濁重合が挙げられる。また、顔料/ポリエステル樹脂分散体が調製され、そして水と混合され、次いで溶媒の蒸発がなされる。
【0068】
慣用のトナーおよび化学的に調製されたトナーの両方で、金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、慣用の添加剤、例えばヒュームド金属酸化物またはコロイド状金属酸化物と同様の方法で、トナー粒子と混合することができる。例えば、トナー組成物は、ブレンダ―中で、好適な量の金属酸化物−ポリマー複合材粒子をトナー粒子と混合することによって配合することができ、そのトナー粒子は、外部添加剤を含まないことができ、そして好適な平均直径(例えば、約9μm)を有することができる。特定の態様では、金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、トナー組成物の約0.5質量%〜約7質量%、例えば、トナー組成物の約0.5質量%〜約1質量%、約1質量%〜約1.5質量%、約1.5質量%〜約2質量%、約2質量%〜約2.5質量%、約2.5質量%〜約3質量%、約3質量%〜約3.5質量%、約3.5質量%〜約4質量%、約4質量%〜約4.5質量%、約4.5質量%〜約5質量%、約5質量%〜約5.5質量%、約5.5質量%〜約6質量%、約6質量%〜約6.5質量%、または約6.5%〜約7%を構成する。金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、トナー粒子の表面上に分配されている。好ましくは、金属酸化物−ポリマー複合材粒子による表面被覆率は、トナー表面の約10%〜約90%である。
【0069】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、好ましくは低い落下(drop-off)の水準を示す。複合材粒子のトナー粒子上への保持は、トナーの組成に部分的に依存するけれども、代用試験を、金属酸化物−ポリマー複合材粒子および匹敵する大きさと形状の金属酸化物粒子の性能を比較するために用いることができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0064310号、第2010/0009282号および第2006/0240350号明細書に記載された試験と同様の試験を用いることができる。具体的には、ケミカルトナー試料が、テーブルAに特定された1〜6質量%の添加剤試料および、80gの試料を作るのに十分な黒色ポリエステルケミカルトナーで配合された。以下の例では、トナーは、Sinonar Inc.のEUPSA6K-P100トナー(粒子径8〜12μm)である。トナーおよび添加剤は、例えば、IKA M20 Universal Mill(IKA Works, Inc.、Wilmington、ノースカロライナ州)中で、45秒間混合された。この混合機は、パルスモード(例えば、15秒間の混合機オンおよび15秒間の混合機オフの、3回のサイクル)で操作されて、トナーがそのガラス転移温度よりも加熱されることを回避される。落下試験(drop-off test)を行うために、結果として得たトナーをガラスジャー中に置き、そしてロールミルで、約265rpmで60分間回転される。5.0gのトナーを含む3種類の試料が、次いで100gの水中の1.0gのTriton X-100分散剤の溶液と混合される。更なる水(20〜30mL以下)を、ビーカーの側面からトナーを洗い落とすために時折加える。撹拌の後に、これらの分散液の1つを別にして、そして他の2つを、Misonix XL 2020超音波処理器(出力550W、出力振動数20kHz)中で、20%〜30%のエネルギー出力で、1分間超音波処理する。全ての3種の分散液を、次いでろ過して、遊離の金属酸化物を除去する。ろ過したケーキを、水中に再分散し、そして再度ろ過し、それに次いで、このろ過ケーキを、100mLの水で洗浄して、分散剤の除去を確実にする。全ての3つの試料を、次いで40℃で、一晩乾燥し、そして次いで更に1時間70℃で乾燥する。トナー上に残っている添加剤の量を、熱質量分析(TGA)を用いて測定する。これらの試料の灰分の、未処理の(bare)トナーのTGAから得られた灰分との比較によって、有機成分の焼却の後に残留する金属酸化物の計算を可能とする。
【0070】
【表1】
【0071】
図3中でシリカについて見られるように、金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、同じ大きさの金属酸化物粒子よりもより少ない落下(drop off)を示す。更には、落下性能における向上は、粒子径と共に増大する。
【0072】
金属酸化物−ポリマー粒子は、好ましくは同様の大きさを有する金属酸化物粒子の摩擦帯電の水準に匹敵する摩擦帯電の水準を示す。例えば、金属酸化物ポリマー複合材粒子は、同じ直径を有する金属酸化物の摩擦帯電の水準の25%内の摩擦帯電の水準を有することができる。例えば、金属酸化物ポリマー複合材粒子は、同じ直径を有する金属酸化物の摩擦帯電の約20%内、約15%内、約10%内、または約5%内の摩擦帯電を有することができる。摩擦帯電の測定は、当技術分野で知られている好適な技術および装置(例えば、Vertex T-150 tribocharger)を用いて行うことができる。
【0073】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、当業者によって、典型的に用いられる方法によって、ヘンシェルミキサーまたは他の流動化混合機もしくはブレンダの使用を通して、トナー粒子と混合されるのに、十分な機械的強度を有していなけばならない。好ましくは、金属酸化物複合材粒子は、電子写真プロセスの現像サイクルの間のトナー粒子(表面上に分布した金属酸化物−ポリマー複合材粒子を有している)との間の衝突に耐えるのに十分な強度を有している。これらの粒子の機械的強度は、例えば、テーブルAとの関係で上記で説明した方法によって、ケミカルトナーを、この複合材粒子と配合することによって評価することができる。トナー/粒子配合物は、次いで担体、例えば、シリコーン被覆されたCu−Znフェライト担体(60〜90μmの粒子径)と混合されて、2%(w/w)のトナーとの混合物を形成する。この混合物は、次いで約70%〜約90%の充填率の混合容器中に容れて、そしてリズミカルに、三次元動作で混合容器を動かすことができ、三次元混合機と称される撹拌機中で、回転させる。この混合容器は、この容器の約6〜約8倍の体積内で、約50〜約70サイクル/分の振動数で動かされる。例示的な攪拌機としては、Willy A. Bachoven AGから入手可能なTurbula混合機、Bioengineering AGから入手可能なInversina混合機、およびGlen MillsのdynaMix三次元混合機が挙げられる。所定の時間の後に、試料をSEMで解析した。下記の例においては、40gの担体(シリコーン被覆のCu−Znフェライト担体(60〜90μmの粒子径、Powdertech Co., Ltd.)を、50mLのガラスジャー中で、0.8gのトナー/添加剤配合物と混合した。このジャーを、TURBULA(商標)T2F混合機(2Lの容量)(Willy A. Bachofen AG(スイス国)が製造)中に掛けた。この混合機中で、混合容器を、回転、並進および反転に基づいて三次元動作で回転させ、そして内容物を、絶え間なく変わる、リズミカルなパルス動作(60サイクル/分)に付した。トナー/担体混合物の少量の試料を、62サイクル/分での約10、30、および60分間後に採取し、そしてSEMで解析した。複合材粒子が十分な機械的強度を有している場合には、それらは、混合の間に、平坦になったり、または変形されたりしない。いずれの平坦化または変形も、SEM中で粒子径の変化として現れる。好ましい態様では、10分間の混合の後の金属酸化物−ポリマー複合材粒子の直径の変化は、25%未満、好ましくは20%未満、例えば、10%未満である。いずれかの特定の理論に拘束されはしないが、粒子の生成の間の油溶性開始剤の使用は、より効果的な重合をもたらすことが信じられる。このことは、更には、高度の架橋密度および高い強度の粒子を生成することが予測される。
【0074】
あるいは、または更には、金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、洗浄助剤として用いることができる。洗浄助剤の機能および使用方法は、米国特許第6311037号明細書中に記載されており、この内容を参照することによって本明細書の内容とする。簡単には、弾力のある羽根は、画像が印刷された後に、光受容体から過剰のトナーを取り除く。研磨粒子が、さもなければ次のコピーに移動し、「シャドー」効果を引き起こす可能性がある、過剰なトナーのより完全な除去を促進することができ、シャドー効果は、前のコピーのかすかな画像が、1枚もしくは2枚以上の後続のコピーに現れるものである。通常は、2種の異なる種類の粒子が、現在は、洗浄助剤として用いられている。粉砕された、または沈降型の無機粒子(例えば、金属酸化物、窒化物、炭化物)は、研磨洗浄用途に適当な硬度および形状を有している。しかしながら、それらは、幅広い粒子径分布を有している。大きな粒子は、光受容体の表面に引掻き傷をつける可能性があり、そして小さな粒子は、洗浄羽根と光受容体との間の間隔よりも小さい可能性がある。コロイド状シリカは、均一な粒子径を有しているが、しかしながらその平滑な表面のために、限定された洗浄能力を有している。金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、それらの粒子の両方の利点を組み合わせており、それらは、硬質の、研磨金属酸化物粒子によって分断された不規則な表面を有しているが、しかしながら狭い粒子分布をも有している。洗浄助剤としての使用のための金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、トナー配合物中に混合することができ、あるいは別の貯槽中に容れておくことができ、そこから、それらを洗浄羽根の近傍で、光受容体のドラムへと供給される。
【0075】
金属酸化物−ポリマー複合材粒子は、好ましくは粉末の形態である。好ましくは、それらは、約1気圧の圧力で、50%の相対湿度および25℃での平衡の後に、低い水分含有量、例えば、約10質量%未満の水分、例えば約0質量%〜約3質量%、約1質量%〜約4質量%、約3質量%〜約5質量%、約5質量%〜約7質量%、または約7質量%〜約10質量の水分を示す。水分含有量は、ガラス瓶中の100mgの試料を、125℃のオーブン中で30分間乾燥し、それらを排出することによって(例えば、Haug One-Point-Ionizer(Haug North America、Williamsville、ニューヨーク州)の下で、一時的に保持することによって)、そして次いで、この試料を、0〜90%の範囲の、選択された相対湿度値での、20分間に亘る温置の後に、この試料の質量を測定する機器に争点することによって、測定することができる。
【0076】
本発明は、以下の例によって更に明らかにされるが、これらの例は、本来、例示のためだけを意図している。
【実施例】
【0077】
例1:Ludox AS-40シリカ、MMPS/Msilica=2.2、pH調節なし、を用いた複合材粒子の合成
オーバーヘッド撹拌モーター、凝縮器、および熱電対を装備された、250mLの四首丸底フラスコに、18.7gのLudox AS-40コロイド状シリカ分散液(W.R. Grace & Co.)(20〜30nmの粒子径、BET表面積126m2/g、pH9.1、シリカ濃度40質量%)、125mLのDI水、および16.5g(0.066モル)のメタクリルオキシプロピル−トリメトキシシラン(Gelest, Inc.、更に、MPSと略記する、CAS# 2530-85-0、Mw=248.3)を投入した。この例では、質量比MMPS/Msilicaは、2.2であった。温度を、65℃に上昇させ、そしてこの混合物を120rpmで撹拌した。窒素ガスを、この混合物を通して、30分間泡立たせた。3時間の後に、10mLのエタノールに溶解させた、0.16g(MPSの約1質量%)の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(更に、AIBNと略記される、CAS# 78-67-1、Mw=164.2)ラジカル開始剤を加え、そして温度を75℃に上昇させた。ラジカル重合を5時間進行させ、その後に、3mLの1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(hexamethylsisilazane)(HMDZ)を、この混合物に加えた。反応を、更に3時間に亘って進行させた。最終的な混合物を、170メッシュの篩を通してろ過して、凝固物を取り除き、そして分散液をパイレックス皿中で、120℃で一晩乾燥させた。翌日に、白色の粉末状の固体を収集し、そしてIKA M20ユニバーサル圧延機を用いて粉砕した。この材料の透過型電子顕微鏡写真(TEM顕微鏡写真)を、図1に示した。
【0078】
例2および3:Ludox AS-40シリカを用いた複合材粒子の合成
7.5g(例2)および4.7g(例3)のLudox AS-40シリカを用いた以外は、複合材粒子を、例1の手順に従って調製して、それぞれ5.0および7.5のMMPS/Msilica比を得た。例2の材料の透過型電子顕微鏡写真(TEM顕微鏡写真)を、図2に示した。
【0079】
例4:複合材粒子の特性決定
THF中に分散された例1〜3の複合材粒子の粒子径分布を、Nanotrac(商標)252粒子径分析計を用いて、動的光散乱法によって測定した。結果を、下記のテーブル1にまとめた。これらのデータは、平均粒子径は、MMPS/Msilica比の増加とともに、増加することを示している。
【0080】
【表2】
【0081】
例1〜3の複合材粒子中のシリカ含有量は、TGAによって測定した。結果を、下記のテーブル2にまとめた。これらのデータは、複合材粒子中のシリカ含有量は、MMPS/Msilica比の増加とともに、着実に減少することを示している。
【0082】
【表3】
【0083】
例5:落下(Drop-off)試験
上記の落下試験を、例1〜3で生成した複合材粒子について、SinonarのEUPSA6K-P100ポリエステルトナーを用いて、テーブルAに関して上記で記載した方法に従って実施した。これらの結果を、HMDZで処理された115nmと300nmの球形のコロイド状シリカおよび200nmの、これもHMDZで処理された200nmの非球形のコロイド状シリカについて、同じ方法で行った落下試験の結果と比較した。HMDZでのコロイド状シリカの処理は、米国特許第7,811,540号明細書中に記載されている手順に従って実施した。簡単に、疎水性シリカ粒子の試料A、BおよびCは、テーブル3中に示した、商業的に入手可能な疎水性コロイド状シリカ分散液から調製した。イソプロパノール共溶媒およびヘキサメチルジシラザン(HMDZ)を、テーブル4中に示されたように、オーバーヘッド攪拌機、熱電対および凝縮器を備えた1Lフラスコ中で、それぞれのコロイド状シリカ分散液に加えた。これらの混合物を、分散液の渦が、少なくとも撹拌羽根の上端にまで伸びるような速度で、急速に撹拌した。この速度での拡販を、反応時間の間、継続させた。それぞれの分散液を5〜6時間、65〜70℃で反応させた後に、それぞれの分散液を、パイレックスの皿中に注ぎ、そして120℃の強制空気オーブン中で一晩乾燥させた。最終的な生成物を、IKA M20ユニバーサル粉砕機で粉砕して、そして炭素含有量を試験した。
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
落下試験の結果を、図3Aおよび3B中にまとめた。これらの結果は、20〜30%出力での超音波処理の後に、複合材粒子(丸)は、HMDZで処理された同様の大きさのコロイド状シリカ(四角)よりも少なくしか落下しないことを示している。落下は、粒子径の115nmから300nmへの、そして超音波エネルギーの20から30%への出力の増加とともに、増加する。
【0087】
例6:摩擦帯電測定
例1〜3の複合材粒子および例5に記載した115nmおよび200nmのコロイド状シリカ試料と配合した標準トナーの摩擦帯電挙動を、以下の手順で測定した:現像剤は、2質量%の配合されたトナー(すなわち、上記のように粉砕された、EUPSA6K-P100 polyesterおよび添加剤)をシリコーン樹脂で被覆されたCu−Znフェライト担体(60〜90μmの粒子径、Powdertech Co., Ltd.から購入した)と混合することによって調製した。現像剤を、15%RH/18℃(LL条件)または80%RH/30℃(HH条件)に温度および湿度を制御された室内で、一晩状態調節した。
【0088】
状態調節の後に、この現像剤を、ガラス瓶中に容れ、そしてロールミル上で、185rpmで30分間回転させることによって帯電させた。摩擦静電荷測定は、Vertex Image Products, Inc.(Yukon、ペンシルバニア州)によって製造されたVertex T-150摩擦帯電試験機を用いて行った。試料を、ファラデー箱内に置き、そして高圧空気のジェットを、担体からトナーを吹き飛ばすのに用いた。この担体は、トナー粒子とは反対の電荷を保持していた。結果を、下記のテーブル5にまとめた。
【0089】
【表6】
【0090】
この表中のデータは、ナノ複合材粒子は、HMDZで処理されたコロイド状シリカ粒子の摩擦静電荷と同様の摩擦静電を有していることを示している。
【0091】
例7:ST-O40シリカ、MMPS/Msilica=2.2、pH8.5を用いた複合材粒子の合成
複合材粒子は、例1に記載した手順に従って調製した。オーバーヘッド撹拌モータ、凝縮器および熱電対を装備した250mLの四つ口丸底フラスコに、18.7gの、コロイド状シリカのST-O40分散液(日産化学、20〜30nm粒子径、BET表面積128m2/g、pH2〜3、シリカ濃度40質量%)、125mLのDI水を充填した。この分散液のpHを、数滴の1.0NのNH4OH溶液を加えることによって8.5に調整し、次いで16.5g(0.066モル)のMPSを加えた。この例では、質量比MMPS/Msilicaは、2.2であった。温度を、65℃に上げ、そして混合液を120rpmの速度で撹拌した。3時間後に、温度を75℃に上げ、そしてこの混合液に窒素ガスを通して30分間泡立たせた。10mLのエタノールに溶解させた、0.1g(MPSの質量の約1質量)のAIBNラジカル開始剤を、この混合液に加えた。ラジカル重合を、5時間進行させて、その後に、この混合物を、170メッシュの篩を通してろ過して、凝固物を取り除いた。この分散液を、パイレックス皿中で、120℃で一晩乾燥させた。翌日に、白色の乾燥した粉末状の固体を収集し、そしてIKA M20ユニバーサル粉砕機を用いて粉砕した。この材料のTEM顕微鏡写真を、図4に示した。
【0092】
例8:ST-O40シリカ、MMPS/Msilica=5、pH8.5を用いた複合材粒子の合成
この例では、比MMPS/Msilicaは、5であった。合成手順は、8.3gのST-O40コロイド状シリカ分散液を用いた以外は、例7の手順と同じであった。この材料のTEM顕微鏡写真を、図5に示した。
【0093】
例9:二酸化チタンを用いた複合材粒子の合成
オーバーヘッド撹拌モータ、凝縮器および熱電対を装備した250mLの丸底フラスコに、30gの酸化チタン(IV)ナノ粉末(比表面積200m2/g、粒子径<25nm、Sigma-Aldrichから入手可能)および150mLのDI水を充填する。この分散液のpHを、数滴の濃縮水酸化アンモニウム水溶液を加えることによって、8.5に調整する。この分散液を、酸化チタンの完全な分散を確実にするために、30%の超音波処理器出力で10分間超音波処理する。20g(0.08モル)のメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(更にMPSと略記される、CAS# 2530-85-0、Mw=248.3)を加える;温度を65℃に上げ、そしてこの混合物を、約100rpmの速度で撹拌する。窒素ガスをこの混合物を通して30分間泡立たせる。3時間の後に、10mLのエタノールに溶解させた、0.2gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、CAS# 78-67-1、Mw=164.2)ラジカル開始剤を加え、そして温度を75℃に増加する。ラジカル重合を5時間進行させる。最終的な混合物を、170メッシュの篩を通してろ過して凝固物を除去し、そして次いでこの分散液をパイレックス皿中で、120℃で一晩乾燥させる。翌日に、白色の粉末状固体を収集し、そしてIKA M20ユニバーサル粉砕機を用いて粉砕する。
【0094】
例9a:コロイド状シリカおよびチタニアを用いた複合材粒子の合成
オーバーヘッドモータ、凝縮器および熱電対を装備した500mLの四つ口丸底フラスコに、20.0gのSnowtex-O40コロイド状シリカ分散液(Nissan Chemical Inc.の製品、20〜30nmの粒子径、BET表面積128m2/g、pH2〜3、シリカ濃度40質量%)および250mLのDI水を充填した。この混合物のpHを、濃縮水酸化アンモニウム水溶液を用いて9.0に調整した。32.0g(0.129モル)のMPS(CAS# 2530-85-0、Mw=248.3)を加え、そして温度を65℃に上げた。この混合物を、120rpmの速度で2時間撹拌させた。別のピーカー中で、25.0gのCristal ACTiV(商標)S5-300BのTiO2水溶液(Millennium Inorganic Chemicalsが製造、TiO2濃度17.5質量%、粒子径30〜50nm)を50mLのDI水で希釈し、そして反応混合物に滴下で加えた。反応を65℃で更に30分間継続し、その後に、約20mLのエタノールに溶解させた、0.64gのAIBN(CAS# 78-67-1、Mw=164.2)ラジカル開始剤を加え、そして温度を75℃に上げた。ラジカル重合を2時間進行させ、その後に、2g(0.012モル)の1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDZ、CAS# 999-97-3、Mw=161.4)および2g(0.007モル)のオクチルトリエトキシシラン(OTES、CAS# 2943-75-1、Mw=276.5)を加えた。反応を更に3時間継続させた。最終的な混合物を、170メッシュの篩を通してろ過して凝固物を除去し、そしてこの分散液を、パイレックス皿中で、120℃で一晩乾燥させた。翌日に、白色粉末状の固体を収集し、そしてIKA M20ユニバーサル粉砕機を用いて粉砕した。調製された粒子の画像を、図8に示した。粉砕された固体の粒子径分布を、Nanotrac(商標)252装置を用いて、動的光散乱法によって測定した。試料を、2−ブタノン中の分散液(1〜3質量%)、d10=98nm、d50=166nm、d90=262nm、として調製した。
【0095】
例10:コロイド状シリカ、MPSおよびコモノマーとしてのスチレンを用いた複合材粒子の合成
オーバーヘッドモータ、凝縮器および熱電対を装備した500mLno三口丸底フラスコに、12.6gのLudox AS-40コロイド状シリカ分散液および200mLのDI水を充填した。MPS、14.3g(0.058モル)を4.3g(0.041モル)のスチレンと混合し、そしてLudox分散液を滴下で加えた。この混合物を、25℃で22時間撹拌した。温度を75℃に上げ、そして窒素ガスを、この混合液を通して30分間泡立たせた。次いで、10mLnoイソパノール中に溶解したAIBN、700mg(0.004モル)をこの反応混合物に加えた。ラジカル重合を6時間進行させ、その後に、150mLのイソプロパノールおよび、2mLのIPAに溶解させた1.1g(0.0067モル)のHMDZを、この混合液に加えた。反応を更に5時間進行させた。最終的な分散液をパイレックス皿中で、110℃で一晩乾燥させた。翌日に、白色の粉末状固体を収集し、そしてIKA M20ユニバーサル粉砕機を用いて粉砕した。この材料のTEM画像を図6に示した。Sinonar, Inc.のEUHP25Kポリエステルトナーを用いてトナーを配合した以外は、例6中に記載したように、摩擦静電荷を測定し、HHとLL条件での摩擦静電荷の比率は、0.57であった。
【0096】
例11:シリカ−ポリマー複合材粒子の水吸着等温線
例2、7、8および10に従って生成された複合材粒子の水吸着等温線を、Surface Measurement Systems, Inc.の動的水蒸気吸着天秤(balance)を用いて25℃で測定した。分析の前に、100mgの試料を、ガラス瓶中で、125℃のオーブン中で30分間乾燥させた。乾燥された試料を、Haug One-Point-Ionizer(Haug North America、Williamsville、ニューヨーク州)の下で一時的に保持した後に、直ちに装置中に充填した。0〜95%の範囲の選択された相対湿度での、20分間の温置の後に、データを収集した。結果を図7に示した(四角−例2;△−例7;ダイヤモンド−例8;x=例10)。これらの結果は、比較的に良好な吸着性能を示している−全ての試料は、50%の相対湿度で、3質量%未満の水蒸気吸着を示した。
【0097】
例12および13:コロイド状シリカ、MPSおよびコモノマーとしてのメチルメタクリレートを用いた複合材粒子の調製
オーバーヘッドモータ、凝縮器および熱電対が装備された250mLの四つ口丸底フラスコに、4gのLudox AS40コロイド状シリカおよび125mLのDI水を充填し、次いで2.5gのMPSおよび1gのメチルメタクリレート(MMA)(Aldrich)を加えた。この例では、質量比Mmonomer/Msilicaは2.2であり、MMAはモノマーの29質量%であった。反応物(モノマー+シリカ)は、分散液の3.9質量%を構成する。温尾を60℃に上げ、そして混合物を250rpmの速度で撹拌した。2時間後、温度を75℃に上げ、そして窒素ガスを、混合物を通して30分間泡立たせた。10mLのエタノールに溶解させた、0,06g(モノマーの約1.8質量%)のAIBNラジカル開始剤を混合物に加えた。ラジカル重合を3時間進行させ、その後に、混合物をグラスウールを通してろ過して、凝固物を取り除いた。分散液を、120℃で一晩乾燥させた。結果として得た白色の乾燥粉末状固体を、IKA M20ユニバーサル粉砕機を用いて粉砕した。この材料おTEM顕微鏡写真を図9に示した。この手順を、6.2gのLudox AS40コロイド状シリカ分散液、2gのMMA、5gのMPS、および0.09gのAIBN(Mmonomer/Msilica=2.2、反応物=7.2質量%)で繰り返した。この材料おTEM顕微鏡写真を図10に示した。
【0098】
例14および15:コロイド状シリカ、MPS、およびコモノマーとしてのヒドロキシプロピルメタクリレートを用いた複合材粒子の調製
MMAの代わりに、コモノマーとしてヒドロキシプロピルメタクリレート(Aldrich)を用いて、例12および13の方法に従って、粒子を生成した。これらの材料のTEM顕微鏡写真を図11(反応物=3.9質量%)および12(反応物=7.2質量%)に示した。
【0099】
例16:コロイド状シリカ、MPS、およびコモノマーとしてのトリフルオロエチルメタクリレートを用いた複合材粒子の調製
11.5gのLudox AS40分散液、7.2gのMPS、MMAの代わりに2.9gのトリフルオロエチルメタクリレート(Aldrich)、および0.18gのAIBNを用いて、例12の方法に従って、粒子を生成した。ラジカル重合を3.5時間進行させた。これらの材料のTEM顕微鏡写真を、図13に示した。
【0100】
例17:コロイド状シリカおよびPMS(MPS/ シリカ=1.5)を用いた複合材粒子の調製
オーバーヘッド撹拌モータ、凝縮器および熱電対を装備された250mLの四つ口丸底フラスコに、6.2gのLudox AS40コロイド状シリカおよび50mLのDI水を充填し、次いで3.7gのMPSを加えた。温度を60℃に上げ、そして混合物を250rpmの速度で撹拌した。2.6時間の後に、温度を75℃に上げ、そして窒素ガスを混合物を通して30分間泡立たせた。3mLのエタノールに溶解された、0.07g(モノマーの約2質量%)のAIBNラジカル開始剤を、この混合物に加えた。ラジカル重合を一晩進行させ、その後に、混合物をグラスウールを通してろ過して凝固物を取り除いた。分散液を、120℃で一晩乾燥させた。結果として得た白色の乾燥した粉末状固体を、IKA M20ユニバーサル粉砕機を用いて粉砕した。この材料のTEMおよびSEM顕微鏡写真を図14に示した。
【0101】
例18:複合材粒子の機械的安定性
例1および2の方法に従って調製した複合材粒子を、テーブルAと関連して上記したトナーと配合した。40gのCu−Znフェライト担体(60〜90μmの粒子径、Powdertech Co., Ltd.から購入)を、50mLのガラス瓶中で0.8gのトナー/粒子配合物と混合した。この瓶を、Willy A. Bachofen AG(スイス国)が製造したTURBULA(商標)T 2 F混合機中に置き、そして101回/分で30分間に亘って三次元動作で撹拌した。振とう前後のトナーのSEM顕微鏡写真が、図15および16である。手動の粒子径分析によって以下の結果を得た。
【0102】
【表7】
【0103】
これらの結果は、粒子の粉砕の結果のいずれかの直径の増加は、統計的に有意ではないことを示している。
【0104】
例19:MPS、スチレン、シラノール末端シロキサンポリマー、およびコロイド状シリカを用いた複合材粒子の調製
オーバーヘッドモータ、凝縮器および熱電対を装備された四つ口丸底フラスコに、50gのLudox AS-40コロイド状シリカ分散液、800mLのDI水、100mLのイソプロピルアルコール、57gのMPS、11.5gのスチレン、および11.5gのシラノール末端ポリジメチルシロキサン(Gelest, Inc.のS12、分子量400〜700、粘度16〜32cSt)を充填した。この例では、質量比Mmonomer/Msilicaは4であった。温度を35℃に上げ、混合物を3.5時間撹拌した。窒素ガスを、混合物を通して、最後の30分間泡立たせた。5mLのアセトンに溶解させた1.2gのAIBNを加え、そして温度を65〜70℃に上げた。ラジカル重合を、窒素雰囲気で3時間進行させた。重合の間に、複合材粒子が凝集した。粒子の残渣を、紙のろ紙を備えたブフナー漏斗上で分離し、そしてパイレックス皿中で、70℃の真空オーブン中で、一晩乾燥させた。結果として得た粉末を、メチルエチルケトン中に分散させ、そしてNanotrac(商標)252粒子径分析計を用いて分析した;平均粒子径は、160nmであった。
【0105】
例20〜22:複合材粒子の粗さおよび疎水性
金属酸化物−ポリマー複合材粒子の3つの試料を以下のように調製した。オーバーヘッド撹拌モータ、凝縮器および熱電対が装備された500mLの四つ口丸底フラスコに、40.0gのSnowtex-O40コロイド状シリカ分散液(Nissan Chemical Inc.の製品、20〜30nmの粒子径、BET表面積128m2/g、pH2〜3、シリカ濃度40質量%)、および320mLのDI水を充填した。混合物のpHを、濃縮水酸化アンモニウム水溶液(テーブル1)を用いて8.5(例20)、9.0(例21)、または9.5(例22)に調整し、そして次いで温度を50℃に上げた。35.2g(0.142モル)のMPS(CAS# 2530-85-0、Mw=248.3)を混合物に加えた。この例に記載した全ての実験では、質量比MMPS/Msilicaは、2.2であった。混合物を120rpmで撹拌し、そして一定の時間の経過(pH=8.5および9.5では1.5時間、pH=9.0では2時間)の後に、15mLのエタノールに溶解された0.53gのAIBN(CAS# 78- 67-1、Mw=164.2)ラジカル開始剤を加え、そして温度を75℃に上げた。ラジカル重合を1時間進行させ、その後に、5.3g(0.033モル)の1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)を混合物に加えた。反応を、更に3時間進行させた。最終的な混合物を、170メッシュの篩を通してろ過して、凝固物を取り除き、そして分散液をパリレックス皿中で、120℃で一晩乾燥させた。翌日に、白色の粉末状固体を収集し、そしてIKA M20ユニバーサル粉砕機を用いて粉砕した。
【0106】
3つの試料全てについて複数のTEM画像を収集し、そしてMedia Cybernetics, Inc.のImageProソフトウエアパッケージを用いて解析した。粒子の粗さおよび相対トラフ面積を、上記のように計算し、そしてテーブル7中に列挙した。
【0107】
【表8】
【0108】
比較例A:コロイド状シリカおよびポリスチレンを用いた複合材粒子の調製
複合材粒子は、Schmidら、Macromolecules, 2009、42、p.3721-3728の方法を用いて調製した。具体的には、磁気攪拌棒を容れた丸底フラスコに、20gのBindzil CC40コロイド状シリカ分散液(Eka Chemicals、40質量%のシリカ)および376gの水を充填し、次いで50gのスチレン(Aldrich)を加えた。混合物を5サイクルの排気および窒素パージによって脱気し、そして次いで60℃に加熱した。溶液を40gの水中の0.5gの2,2’−アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩(AIBA)開始剤で調製し、そして次いで反応溶液に加えた。重合を24時間進行させた。結果として得た分実器を、遠心分離および再分散(5000〜7000rpmで30分間)の繰り返しのサイクルによって精製した。上澄みを、それぞれのサイクルの後に、デカントし、そしてDI水で置換した。これを、TEMで、過剰のシリカゾルがないことを確認されるまで、繰り返した。最終的な混合物をろ過して、凝固物を取り除き、そして分散液をパイレックス皿で、110℃一晩乾燥した。翌日に、白色の粉末状固体を、収集し、そしてIKA M20ユニバーサル粉砕機を用いて粉砕した。
【0109】
比較例B:PS/シリカ複合材粒子の機械的安定性
比較例Aの複合材粒子を、テーブルAに関連して上記したトナーと配合した。50mLのガラス瓶中で、40gのCu−Znフェライト担体(60〜90μm粒子径、Powdertech Co., Ltd.から購入)を、0.8gのトナー/粒子配合物と混合した。この瓶を、Willy A. Bachofen AG(スイス国)が製造したTURBULA(商標)T 2 F中に容れ、そして101サイクル/分で三次元動作で撹拌した。10分間の振とうの後に撮ったSEM顕微鏡写真に、粒子が、明確に劇的に変形されていることを示している(図17)。手動の粒子径分析で下記の結果を得た。
【0110】
【表9】
【0111】
結果は、粒子の粉砕の結果もたらされる50%の直径の増加は、統計的に有意である。粉砕された粒子は、トナー粒子を互いに分離することができ難いので、そのような粒子は、トナーの外部添加剤としての使用には望ましくない。更に、それら粒子はまた、洗浄助剤としても望ましくない、何故ならば、それらの弾力が、研磨材粒子としてのそれらの効果を低下させるためである。対照的に、例1および2の粒子が、トナーおよび担体と配合され、そして同じ方法で30分間撹拌された場合には、粒子の平均直径の変化は、統計的に有意ではない(テーブル9)。
【0112】
【表10】
【0113】
比較例C:複合材粒子の調製および疎水化
複合材粒子は、比較例Aの方法に従って、200gの水中の20gのBindzil 2040、24.75gの2−ビニルピリジン(Aldrich)、24.75gのメチルメタクリレート(Aldrich)、0.5gのジビニルベンゼン(Aldrich)、および50gの水中の0.5gのAIBAを用いた。乾燥の前に、4.8gのヘキサメチルジシラザン(Gelest)を複合材粒子の分散液に加え、そして75℃で4時間反応を進行させた。最終的な混合物をろ過して凝固物を取り除き、そして分さん液を、パイレックス皿中で、110℃で一晩乾燥させた。しかしながら、粒子は、粉末を形成するのではなく、乾燥の間に溶融した。
【0114】
本発明の好ましい態様の前述の記載は、例示および説明の目的で提示されている。網羅的であることや、本発明を開示された正確な形態に限定することを意図してはいない。上記の教示を踏まえて、修正および変更が可能であるか、または本発明の実施から取得することができる。これらの態様は、本発明の原理およびその実際的な応用を説明して、当業者が本発明を、種々の態様において、そして予期される具体的な用途に適合するように種々の変更を加えて用いることができるように、選択し、そして記載されている。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって規定されることが意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B