(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、往復動工具を用いる場合、往復動工具の先端が、ワークの肉に対して、垂直方向から衝突することになる。このため、往復動工具の先端が鋭利であることが要求される。したがって、工具先端の研磨精度が高いことが要求される。そこで、本発明者は、工具に高い研磨精度が要求されない回転工具を用いて、ワークの貫通孔にキー溝を形成する方法を検討した。
【0005】
ところが、回転工具(後述するラジアル工具など)を有する回転工具ユニットは、工具台に対して、片持ち梁状に支持されている。並びに、回転工具は、自身の軸周りに回転している。このため、回転工具の回転に伴う加工負荷により、回転工具ユニットが振動したり、弾性変形したりするおそれがある。したがって、加工精度が低下するおそれがある。
【0006】
この点、特許文献1に記載の内面加工装置によると、工具がZ軸方向両側から支持されている。ただし、同文献記載の内面加工装置に用いられている工具は旋盤加工用の工具(固定工具)であり、回転工具ではない。したがって、回転工具特有の上記課題(加工精度が低下するおそれがあるという課題)は、特許文献1には、開示、示唆されていない。
【0007】
本発明のワーク加工装置は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、加工精度が低下しにくいワーク加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明のワーク加工装置は、互いに直交する座標軸をZ軸、X軸として、ワークが取り付けられる主軸台と、該Z軸方向および該X軸方向に移動可能な工具台と、該工具台に取り付けられる回転工具ユニットと、を備えるワーク加工装置であって、前記主軸台は、前記Z軸方向に移動可能であって該Z軸方向端部に主軸側当接部を有するサポート部材を有し、前記回転工具ユニットは、該Z軸方向から該サポート部材の該主軸側当接部が当接可能な工具側当接部を有する工具本体と、該工具本体から突出し自身の軸周りに回転可能な工具と、を有し、該主軸側当接部と該工具側当接部とを当接させた状態で、該工具本体を該Z軸方向に移動させることにより、回転する該工具で前記ワークを加工することを特徴とする。
【0009】
本発明のワーク加工装置によると、サポート部材により、回転工具ユニットをZ軸方向から保持することができる。このため、工具の振動や弾性変形を抑制することができる。したがって、加工精度が低下しにくい。
【0010】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記Z軸および前記X軸に直交する前記座標軸をY軸として、前記工具は、前記工具本体から該Y軸方向に突出しており、前記ワークは、前記Z軸方向に延在する貫通孔を有し、該貫通孔の内部において該工具本体を該Z軸方向に移動させることにより、該工具で、該貫通孔に、該Z軸方向に延在する溝を形成する構成とする方がよい。
【0011】
回転工具の一例として、ラジアル工具が挙げられる。ラジアル工具は、ワークの外周面に孔を穿設する際に用いられる。ラジアル工具は、スライド機構により、Z軸方向(主軸方向)、X軸方向(Z軸に対して直交する方向)に移動可能である。ラジアル工具の軸方向は、X軸方向である。
【0012】
ワークの外周面に孔を穿設する際には、まず、ラジアル工具を自身の軸周りに回転させる。次に、チャックに固定されたワークの外周面の径方向外側において、ラジアル工具を有する回転工具ユニットをZ軸方向に移動させる。続いて、孔を穿設する座標において、回転工具ユニットの移動方向を、Z軸方向からX軸方向に、切り替える。そして、ワークの外周面に、回転しているラジアル工具の先端を押し当てる。このようにして、ワークの外周面に、X軸方向に延在する孔を穿設する。
【0013】
ここで、ラジアル工具の軸方向(穿孔方向)はX軸方向である。また、ラジアル工具の移動方向は、Z軸方向、X軸方向のみである。このため、仮に、ワークの貫通孔に溝を形成する場合に当該ラジアル工具を転用すると、Z軸方向を溝の延在方向に、X軸方向を溝の深さ方向に、各々対応させることになる。
【0014】
しかしながら、この場合、溝の溝幅方向(Y軸方向=Z軸およびX軸に対して直交する方向)に、ラジアル工具を動かすことができなくなる。このため、溝の溝幅を拡張することができなくなる。
【0015】
この点、本構成によると、Z軸方向、X軸方向に移動可能な工具台に対して、工具がY軸方向に突出している。Y軸方向は、溝の溝深さ方向に対応している。X軸方向は、溝の溝幅方向に対応している。このため、工具台をX軸方向に移動させることにより、溝の溝幅を拡げることができる。
【0016】
また、仮に、工具がX軸方向に突出している場合、X軸方向が溝の溝深さ方向に、Y軸方向が溝の溝幅方向に、各々対応することになる。したがって、溝幅拡張機能を確保するためには、既存の工具台にY軸方向の移動機構(例えばスライドなど)を増設する必要がある。これに対して、本構成によると、既存の工具台(Z軸方向、X軸方向に移動可能な工具台)を、そのまま使用することができる。このため、汎用性が高い。
【0017】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記主軸側当接部と前記工具側当接部とは、前記X軸方向にずれた状態で、係合可能である構成とする方がよい。溝の溝幅を拡張するためには、主軸側当接部に対して、工具側当接部を、X軸方向にずらす必要がある。この点、本構成によると、主軸側当接部に対して工具側当接部をずらしても、主軸側当接部と前記工具側当接部との間の係合状態を確保することができる。このため、溝幅拡張時においても、工具の振動や弾性変形を抑制することができる。
【0018】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記主軸側当接部および前記工具側当接部のうち、一方は前記X軸方向に延在する係合リブを、他方は該X軸方向に延在し該係合リブが挿入される係合溝部を、有する構成とする方がよい。
【0019】
本構成によると、主軸側当接部に対して工具側当接部をずらしても、係合リブと係合溝部との間の係合状態を確保することができる。このため、溝幅拡張時においても、工具の振動や弾性変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、加工精度が低下しにくいワーク加工装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のワーク加工装置をCNC旋盤として具現化した実施の形態について説明する。
【0024】
<第一実施形態>
[CNC旋盤の構成]
まず、本実施形態のCNC旋盤の構成について説明する。以下の図において、Z軸方向は、左右方向(主軸方向)に対応している。X軸方向は、後上−前下方向に対応している。Y軸方向は、後下−前上方向に対応している。Z軸、X軸、Y軸は、互いに直交している。
【0025】
図1に、本実施形態のCNC旋盤の内部斜視図を示す。
図1に示すように、CNC旋盤1は、回転工具ユニット2と、工具台4と、主軸台6と、ベッド7と、を備えている。
【0026】
ベッド7は、工場の床面に配置されている。ベッド7の上面右後側には、傾斜部70が配置されている。傾斜部70は、後方から前方に向かって下るスロープ状を呈している。
【0027】
主軸台6は、ベッド7の上面左前側に配置されている。主軸台6は、主軸台本体60と、主軸61と、チャック62と、サポートバー63と、を備えている。サポートバー63は、本発明の「サポート部材」の概念に含まれる。主軸61は、主軸台本体60の右面から右側に突設されている。主軸61は、左右方向に延在している。主軸61は、自身の軸周りに回転可能である。チャック62は、いわゆる三つ爪チャックである。チャック62は、主軸61の右端に配置されている。チャック62には、着脱可能に、円筒状のワーク9が固定されている。すなわち、ワーク9には、左右方向に延在する貫通孔90が穿設されている。サポートバー63は、左右方向に延在する丸棒状を呈している。サポートバー63は、主軸台本体60から右側に突出している。
図1に矢印Y1で示すように、サポートバー63は、左右方向に移動可能である。サポートバー63の右端面は、主軸側当接部630である。主軸側当接部630は、一対の係合溝部630aを備えている。係合溝部630aは、X軸方向に延在している。X軸方向から見て、係合溝部630aは、V字状を呈している。一対の係合溝部630aは、Y軸方向に並んでいる。
【0028】
工具台4は、工具台本体40と、タレット41と、X軸スライド42と、X軸下スライド43と、Z軸スライド44と、Z軸下スライド45と、二つの歯車部(図略)と、を備えている。
【0029】
Z軸下スライド45は、傾斜部70に配置されている。
図1に矢印Y2で示すように、Z軸スライド44は、Z軸下スライド45に対して、左右方向に移動可能である。X軸下スライド43は、Z軸スライド44の上面に配置されている。
図1に矢印Y3で示すように、X軸スライド42は、X軸下スライド43に対して、X軸方向に移動可能である。工具台本体40は、X軸スライド42に固定されている。タレット41は、工具台本体40の左側に配置されている。Z軸スライド44、X軸スライド42により、タレット41つまり回転工具ユニット2は、Z軸方向およびX軸方向に、移動可能である。
【0030】
図2に、本実施形態のCNC旋盤のX軸スライド、工具台本体、タレット、回転工具ユニットの透過斜視図を示す。
図2に示すように、タレット41は、中央部410と、外輪部411と、を備えている。外輪部411は、10角形状を呈している。すなわち、外輪部411は、10個の取付面411aを備えている。10個の取付面411aには、各々、後述する回転工具ユニット2を取り付けることができる。取付面411aの中央には、径方向に延在する取付孔411bが穿設されている。外輪部411は、中央部410に対して、36°ずつ回転可能である。つまり、角度割出可能である。
【0031】
歯車部46は、工具台本体40および中央部410の内部に、配置されている。歯車部46は、シャフト460とかさ歯車461とを備えている。シャフト460は、左右方向に延在している。シャフト460は、工具台本体40から中央部410まで、延在している。かさ歯車461は、シャフト460の左端に配置されている。かさ歯車461は、中央部410の内部に配置されている。シャフト460の右端には、モータ(図略)から、回転方向の駆動力を伝達可能である。
【0032】
歯車部47は、中央部410の内部に配置されている。歯車部47は、シャフト470とかさ歯車471とを備えている。シャフト470は、X軸方向に延在している。シャフト470は、シャフト460に対して、直交する方向に延在している。かさ歯車471は、シャフト470の後上端に配置されている。かさ歯車471とかさ歯車461とは、互いに噛合している。シャフト470の前下端は、外輪部411の10個の取付孔411bのうち、シャフト470の前下側の取付孔411bに、連なっている。言い換えると、10個の取付孔411bは、外輪部411が36°ずつ回転することにより、交代でシャフト470に連なることができる。
【0033】
回転工具ユニット2は、工具本体20と、エンドミル21と、歯車部24、25と、7個の平歯車26と、ホルダ部27と、を備えている。エンドミル21は、本発明の「工具」の概念に含まれる。
【0034】
図3に、本実施形態のCNC旋盤の回転工具ユニット、主軸、チャック、サポートバーの斜視図を示す。ホルダ部27は、外輪部411の取付面411aに着脱可能に取り付けられている。工具本体20は、ホルダ部27の左面から、左方に突設されている。工具本体20は、左右方向に延在する円筒状を呈している。工具本体20の左端面は、工具側当接部200である。
図3に透過して示すように、工具側当接部200は、一対の係合リブ200aを備えている。係合リブ200aは、X軸方向に延在している。X軸方向から見て、係合リブ200aは、V字状を呈している。一対の係合リブ200aは、Y軸方向に並んでいる。工具側当接部200と主軸側当接部630とは、左右方向に対向している。また、一対の係合リブ200aと一対の係合溝部630aとは、左右方向に対向している。
【0035】
エンドミル21は、工具本体20の左端付近の外周面から、径方向外側に突設されている。エンドミル21は、Y軸方向に延在する短軸円柱状を呈している。エンドミル21の外周面および前上側の端面には、刃(図略)が形成されている。
【0036】
図2に示すように、歯車部24は、シャフト240とかさ歯車241とを備えている。シャフト240は、X軸方向に延在している。シャフト240の後上側の部分は、外輪部411の取付孔411b(シャフト470の前下側の取付孔411b)に挿入されている。シャフト240の後上端とシャフト470の前下端とは、回転トルク伝達可能に係合している。シャフト240の前下側の部分は、ホルダ部27の内部に配置されている。かさ歯車241は、シャフト240の前下端に配置されている。
【0037】
歯車部25は、ホルダ部27の内部に配置されている。歯車部25は、シャフト250とかさ歯車251とを備えている。シャフト250は、Y軸方向に延在している。シャフト250は、シャフト240に対して、直交する方向に延在している。かさ歯車251は、シャフト250の後下端に配置されている。かさ歯車251とかさ歯車241とは、互いに噛合している。
【0038】
7個の平歯車26は、ホルダ部27および工具本体20の内部に配置されている。7個の平歯車26は、シャフト250とエンドミル21とを、動力伝達可能に連結している。7個の平歯車26のうち、右端の平歯車26は、シャフト250の前上端に配置されている。7個の平歯車26のうち、左端の平歯車26は、エンドミル21に連なっている。7個の平歯車26のうち、残りの5個の平歯車26は、左右両端の一対の平歯車26間を、左右方向に連結している。
【0039】
エンドミル21の回転機構について簡単に説明する。
図2に示すように、モータを駆動すると、矢印Y4に示すように、歯車部46が自身の軸周りに回転する。歯車部46のかさ歯車461と歯車部47のかさ歯車471とは、互いに噛み合っている。このため、矢印Y5で示すように、歯車部47も自身の軸回りに回転する。歯車部47のかさ歯車471と歯車部25のかさ歯車251とは、互いに噛み合っている。このため、矢印Y6で示すように、歯車部25も自身の軸周りに回転する。歯車部25のシャフト250には、7個の平歯車26のうち、右端の平歯車26が固定されている。このため、右端の平歯車26も回転する。7個の平歯車26は互いに噛合している。このため、矢印Y7で示すように、7個の平歯車26のうち、左端の平歯車26も回転する。したがって、左端の平歯車26に連結されているエンドミル21も、自身の軸周りに回転する。このようにして、工具台本体40内部のモータにより、エンドミル21を回転駆動する。
【0040】
[CNC旋盤による溝形成方法]
次に、本実施形態のCNC旋盤による溝形成方法について説明する。溝形成方法は、第一切削工程と、オフセット工程と、第二切削工程と、を有している。
【0041】
(第一切削工程)
図4に、溝形成方法の第一切削工程の第一段階における、回転工具ユニット、主軸、チャック、サポートバーの斜視図を示す。第一段階においては、矢印Y1aで示すように、サポートバー63を、右側に突出させる。サポートバー63は、主軸61、チャック62、ワーク9の貫通孔90の径方向内側を移動する。そして、工具本体20の工具側当接部200を、サポートバー63の主軸側当接部630に、突き当てる。この際、主軸側当接部630の一対の係合溝部630aに、工具側当接部200の一対の係合リブ200aを、係合させる。この状態を右側から見ると、工具本体20は、貫通孔90の径方向内側に収容されている。エンドミル21は、ワーク9の貫通孔90付近の肉と部分的に重複している。当該重複部分が、被切削部分である。
【0042】
図5に、同工程の第二段階初期における、回転工具ユニット、主軸、チャック、サポートバーの斜視図を示す。
図6に、同工程の第二段階終期における、回転工具ユニット、主軸、チャック、サポートバーの斜視図を示す。第二段階においては、エンドミル21を自身の軸周りに回転させる。次に、矢印Y1bで示すように、サポートバー63と工具本体20とを当接させたまま、ワーク9に対して、サポートバー63および回転工具ユニット2を左側に移動させる。なお、回転工具ユニット2の移動は、
図1に矢印Y2で示すように、Z軸スライド44を左側に移動させることにより行う。当該移動により、サポートバー63および工具本体20は、貫通孔90の径方向内側を移動する。一方、エンドミル21は、自身の軸周りに回転しながら、かつ左側に移動しながら、ワーク9の肉を切削する。貫通孔90の内周面には、左右方向に延在する半加工溝91aが形成される。半加工溝91a形成後、サポートバー63および回転工具ユニット2は、
図4に示す状態(エンドミル21が貫通孔90の右側に配置されている状態)まで、復動する。
【0043】
(オフセット工程)
図7に、溝形成方向のオフセット工程における、回転工具ユニット、主軸、チャック、サポートバーの斜視図を示す。本工程においては、まず、矢印Y1aで示すように、回転工具ユニット2を、右側に微動させる。そして、工具本体20の工具側当接部200を、サポートバー63の主軸側当接部630から、離間させる。次に、矢印Y3aで示すように、回転工具ユニット2を後上側に微動させる。回転工具ユニット2の移動は、
図1に矢印Y3で示すように、X軸スライド42を後上側に移動させることにより行う。
【0044】
(第二切削工程)
図8に、溝形成方法の第二切削工程の第一段階における、回転工具ユニット、主軸、チャック、サポートバーの斜視図を示す。第一段階においては、矢印Y1bで示すように、工具本体20の工具側当接部200を、サポートバー63の主軸側当接部630に、突き当てる。この際、主軸側当接部630の一対の係合溝部630aに、工具側当接部200の一対の係合リブ200aを、係合させる。
【0045】
ここで、オフセット工程において、回転工具ユニット2は後上側に微動している。このため、工具本体20は、サポートバー63に対して、後上側、つまり半加工溝91aの溝幅方向にずれた状態で、当接している。
【0046】
図9に、同工程の第二段階における、回転工具ユニット、主軸、チャック、サポートバーの斜視図を示す。第二段階においては、前出
図5、
図6同様に、サポートバー63および工具本体20を、X軸方向に互いにずれた状態のまま、左側に移動させる。そして、半加工溝91aの溝幅を拡張する。その後、
図9に矢印Y1aで示すように、サポートバー63および工具本体20を、右側に移動させる。このようにして、ワーク9の貫通孔90の内周面に、左右方向に延在すると共に所定の溝幅W1を有する、キー溝91を形成する。なお、キー溝91は、本発明の「溝」の概念に含まれる。
【0047】
[作用効果]
次に、本実施形態のCNC旋盤1の作用効果について説明する。本実施形態のCNC旋盤1によると、
図5に示すように、貫通孔90にキー溝91を形成する際に、サポートバー63により、回転工具ユニット2をZ軸方向から保持することができる。このため、エンドミル21の振動や弾性変形を抑制することができる。したがって、キー溝91の加工精度が向上する。
【0048】
また、本実施形態のCNC旋盤1によると、
図1に示すように、Z軸方向、X軸方向に移動可能なタレット41に対して、エンドミル21がY軸方向に突出している。Y軸方向は、キー溝91の溝深さ方向に対応している。X軸方向は、キー溝91の溝幅方向に対応している。このため、タレット41をX軸方向に移動させることにより、キー溝91の溝幅を拡げることができる。
【0049】
また、仮に、エンドミル21がX軸方向に突出している場合、X軸方向がキー溝91の溝深さ方向に、Y軸方向がキー溝91の溝幅方向に、各々対応することになる。したがって、溝幅拡張機能を確保するためには、既存の工具台4にY軸方向の移動機構(例えばスライドなど)を増設する必要がある。これに対して、本実施形態のCNC旋盤1によると、既存の工具台4を、そのまま使用することができる。このため、汎用性が高い。
【0050】
また、本実施形態のCNC旋盤1によると、
図3に示すように、主軸側当接部630に係合溝部630aが、工具側当接部200に係合リブ200aが、各々配置されている。係合溝部630a、係合リブ200aは、各々X軸方向に延在している。このため、
図7、
図8に示すように、主軸側当接部630に対して工具側当接部200をX軸方向にずらしても、係合溝部630aと係合リブ200aとの間の係合状態を確保することができる。したがって、溝幅拡張時においても、エンドミル21の振動や弾性変形を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態のCNC旋盤1によると、
図9に示すように、キー溝91の溝幅W1を、オフセット工程における、サポートバー63に対する工具本体20のオフセット量により、調整することができる。
【0052】
また、本実施形態のCNC旋盤1によると、
図9に示すように、キー溝91の溝幅拡張方向を、オフセット工程における、サポートバー63に対する工具本体20のオフセット方向により、調整することができる。
【0053】
<第二実施形態>
本実施形態のCNC旋盤と、第一実施形態のCNC旋盤との相違点は、回転工具ユニットが二つのエンドミルを備えている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
図10に、本実施形態のCNC旋盤の回転工具ユニット付近の透過右面図を示す。なお、
図1、
図3と対応する部位については、同じ符号で示す。また、
図10に示すのは、溝完成後のワーク9である。また、説明の便宜上、ワーク9、工具本体20、エンドミル21に、ハッチングを施す。
図10に示すように、回転工具ユニット2は、二つのエンドミル21を備えている。二つのエンドミル21は、工具本体20の外周面に、Y軸方向に180°対向して配置されている。
【0054】
本実施形態のCNC旋盤と、第一実施形態のCNC旋盤とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のように、回転工具ユニット2に二つのエンドミル21を配置してもよい。こうすると、径方向に対向する二つの溝92を、一度に貫通孔90の内周面に形成することができる。
【0055】
<第三実施形態>
本実施形態のCNC旋盤と、第一実施形態のCNC旋盤との相違点は、溝形成方法が、第一切削工程、第一オフセット工程、第二切削工程、第二オフセット工程、第三切削工程を有している点である。ここでは相違点についてのみ説明する。
【0056】
図11(a)に、溝形成方法の第一切削工程における、本実施形態のCNC旋盤の回転工具ユニット付近の透過右面図を示す。
図11(b)に、溝形成方法の第二切削工程における、同回転工具ユニット付近の透過右面図を示す。
図11(c)に、溝形成方法の第三切削工程における、同回転工具ユニット付近の透過右面図を示す。なお、
図1、
図3、
図9と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0057】
図11(a)に示すように、第一切削工程においては、完成後のキー溝91の溝幅方向中央部分に対応する、半加工溝91aを形成する。
図11(b)に示すように、第一オフセット工程においては、回転工具ユニット2を後上方向(溝幅方向)に、所定のオフセット量S1だけ、移動させる。
図11(b)に示すように、第二切削工程においては、エンドミル21を左右方向(Z軸方向)に移動させることにより、半加工溝91aの溝幅を拡張する。
図11(c)に示すように、第二オフセット工程においては、回転工具ユニット2を前下方向(溝幅方向)に、所定のオフセット量S1(
図11(a)の状態に対するオフセット量)だけ、移動させる。
図11(c)に示すように、第三切削工程においては、エンドミル21を左右方向(Z軸方向)に移動させることにより、半加工溝91aの溝幅を拡張する。このようにして、三回の切削工程を経て、キー溝91が形成される。
【0058】
本実施形態のCNC旋盤と、第一実施形態のCNC旋盤とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のように、切削工程、オフセット工程の実行数は特に限定しない。キー溝91の溝幅W1、必要な加工精度などに応じて、実行数は適宜設定すればよい。また、オフセット方向、オフセット量S1は特に限定しない。キー溝91の位置、溝幅W1に応じて、適宜設定すればよい。
【0059】
<その他>
以上、本発明のワーク加工装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0060】
図12に、その他の実施形態のCNC旋盤の回転工具ユニットの透過斜視図を示す。なお、
図2と対応する部位については、同じ符号で示す。
図12に示すように、一対のプーリ280と、ベルト281とにより、エンドミル21を回転させてもよい。すなわち、一対のプーリ280のうち、一方を歯車部25に連結し、他方をエンドミル21に連結してもよい。そして、一対のプーリ280間に、ベルト281を巻き架けてもよい。このように、エンドミル21の駆動機構は特に限定しない。
【0061】
上記実施形態においては、ワーク9の貫通孔90の内周面に、左右方向に延在するキー溝91を形成した。しかしながら、スプライン、内歯車などを形成することもできる。スプライン、内歯車なども、本発明の「溝」の概念に含まれる。
【0062】
チャック62をZ軸周りに回転させると、ワーク9を回転させることができる。溝形成方法(
図4〜
図9参照)を実行し、ワーク9を所定角度だけ回転させ停止し、再び溝形成方法を実行する。この作業を繰り返すことにより、貫通孔90の内周面に、スプラインや内歯車を形成することができる。
【0063】
上記実施形態においては、
図7に示すように、オフセット工程を、貫通孔90の右側で行ったが、貫通孔90の径方向内側で行ってもよい。すなわち、
図6に示す状態の直後に、オフセット工程を行い、第二切削工程に移行してもよい。こうすると、エンドミル21の復動時(貫通孔90を左側から右側に移動する際)に、半加工溝91aの溝幅を拡張することができる。
【0064】
上記実施形態においては、主軸側当接部630に係合溝部630aを、工具側当接部200に係合リブ200aを、各々配置した。しかしながら、主軸側当接部630に係合リブ200aを、工具側当接部200に係合溝部630aを、各々配置してもよい。また、主軸側当接部630および工具側当接部200に、互いに型対称となるような、X軸方向に延在する段差を配置してもよい。
【0065】
上記実施形態においては、工具(エンドミル21)の軸方向をY軸方向に設定した。しかしながら、工具の軸方向は、Y軸方向に限定しない。Z軸方向、X軸方向、Y軸方向のうち、少なくとも一つの成分を含む方向であればよい。
【0066】
上記実施形態においては、工具(エンドミル21)によりワーク9の貫通孔90にキー溝91を形成した。しかしながら、工具によりワーク9の外周面を加工してもよい。また、工具によりワークの軸方向端面を加工してもよい。
【0067】
上記実施形態においては、本発明の「工具」として、エンドミル21を用いた。しかしながら、フライスカッターを用いてもよい。CNC旋盤1の主軸方向は特に限定しない。すなわち、横型旋盤、正面旋盤、立型旋盤として本発明のワーク加工装置を具現化してもよい。