(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982010
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】大型サイズの内燃エンジンのためのピストン
(51)【国際特許分類】
F02F 3/00 20060101AFI20160818BHJP
F16J 1/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
F02F3/00 J
F02F3/00 G
F02F3/00 M
F16J1/00
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-549506(P2014-549506)
(86)(22)【出願日】2011年12月30日
(65)【公表番号】特表2015-504131(P2015-504131A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】FI2011051169
(87)【国際公開番号】WO2013098464
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】514164535
【氏名又は名称】コンポーネンタ フィンランド オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピシレ、サカリ
(72)【発明者】
【氏名】レンスコグ、トミー
【審査官】
永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
ソ連国特許発明第1716185(SU,A)
【文献】
国際公開第2005/066481(WO,A1)
【文献】
実開昭56−156944(JP,U)
【文献】
実開昭58−64843(JP,U)
【文献】
米国特許第1403917(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0073061(US,A1)
【文献】
米国特許第5857440(US,A)
【文献】
特開平10−246330(JP,A)
【文献】
特開2006−105103(JP,A)
【文献】
特開2000−297694(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0041684(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0234994(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00−3/28,
F16J 1/00−1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
180mmから650mmのピストン直径(D)を有する、内燃ディーゼルエンジンのためのピストン(1)であって、前記ピストン(1)が互いに接続可能であるトップ部分(2)及びボディ部分(3)を備え、
前記トップ部分(2)が、前記エンジンのシリンダ内に設置されるときに燃焼室の前記ピストン(1)側を画定し、そして
前記ボディ部分(3)が、ピストンピン(4)のための開口(30)、使用時に前記ピストン(1)と前記ピストンピン(4)との間に、力を分散させるためのボス(32)を有し、前記ボディ部分(3)が、内部(33)と、外側表面(34)と、動作可能接続表面(35)と、前記ボディ部分(3)の前記内部(33)が波(331)表面のマクロ幾何形状を有する内壁(又は、内側表面)(330)を有し、
波(331)表面において、波(331)の長さ(L)が3mmから25mmであり、波(331)の高さ(h)が0.3mmから3mmであり、前記波(331)表面が、前記表面の両方向に同様のパターンを有する等方性のミクロ幾何形状を有し、そして前記等方性のミクロ幾何パターンは、5μmから9μmの算術平均表面粗さRaとして測定可能なこと、を特徴とする、ピストン(1)。
【請求項2】
前記波表面が、前記波の波頭(3311)が前記ピストン(1)の軸方向を向くように、前記内壁内で方向付けられること、を特徴とする、請求項1に記載のピストン(1)。
【請求項3】
前記ボスにより、前記波の波頭(3311)が前記内部の1つ又は複数のドーム(36)の方を向くこと、を特徴とする、請求項1に記載のピストン(1)。
【請求項4】
前記ピストンの前記直径(D)が180mmから300mmであり、前記波の長さ(L)が3mmから15mmであり、前記波の高さ(h)が0.3mmから1.0mmであること、を特徴とする、請求項1に記載のピストン(1)。
【請求項5】
前記ピストンの前記直径(D)が300mmを超え、前記波の長さ(L)が15mmより大きく、前記波の高さ(h)が1.0mmより大きいこと、を特徴とする、請求項1に記載のピストン(1)。
【請求項6】
前記波の半径(R)が、10mmから30mmであること、を特徴とする、請求項1に記載のピストン(1)。
【請求項7】
前記波の半径(R)が、12.5mmから25mmであること、を特徴とする、請求項1に記載のピストン(1)。
【請求項8】
前記ボディ部分(3)の前記内壁(330)が圧縮応力を有する表面層を備えること、を特徴とする、請求項1に記載のピストン。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のピストンの製造方法であって、ピストンブランクが鋳造又は鍛造によって形成され、前記ボディ部分(3)の前記内部(33)がプランジミリングによって加工され、前記ボディ部分(3)の前記内部(33)の波(331)表面がショットピーニング又はショットブラスティングによって得られる、等方性のミクロ幾何パターンを備えること、を特徴とする、方法。
【請求項10】
前記ボディ部分(3)の前記内部(33)の前記内壁(330)が圧縮応力を有する表面層を備えること、を特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、180mmから650mmのピストン直径を有する、内燃ディーゼルエンジンのためのピストンに関し、ピストンが、互いに接続可能であるトップ部分及びボディ部分を備え、トップ部分が、エンジンのシリンダ内に設置されるときに燃焼室のピストン側を画定し、ボディ部分が、ピストンピンのための開口、使用時にピストンとピストンピンとの間に、力を分散させるためのボスを有し、ボディ部分が、内部と、外側表面と、動作可能接続表面(operable connecting surface)とを有する。
【背景技術】
【0002】
大型の内燃エンジンは、船舶推進システムの動力源としてなど、電力プラントでの要求の厳しい動力供給タスクで広く使用されている。
【0003】
大型の内燃エンジンでは、シリンダ排気量(cylinder displacement)を変えずにエンジンからより多くの動力を得ることの要求が高まっている。その目的は、エンジンから発生する排気を減少させながら動力率を向上させることである。このような成果を得るための1つのルートは動作中のシリンダ圧力を増大させることである。一方で、これらの大型のエンジンの信頼性も向上させなければならず、つまり、動作時にいかなる不具合が生じることも強く望まれない。したがって、ピストンを含めたこれらのエンジンのすべての部品を開発させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、180mmから650mの範囲のピストン直径を有する、大型サイズの内燃ディーゼルエンジンのためのピストンを提供することである。本発明の目的は、動作時の高いシリンダ圧力に長時間耐えることができるピストンを提供することである。
【0005】
特には、内燃ディーゼルエンジンの高い動力率で疲労に耐え得ることが本発明の1つの目的である。これらの高い要求のためにピストンを開発する難しい技術的課題を見据えながら、ピストン製造の経済的側面も考慮する必要がある。ピストンは好適には1つのピストンの単価が過度に高くならないように製造される。したがって、製造コストと技術的優良度とのバランスを考慮しなければならない。大型サイズのピストンの現在の市場では、製品はやはり過度に高価にならず且つ技術的に可能な限り繊細であるべきであり、不具合を一切発生させることなくエンジンの耐用年数を通して機能し続けるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のことを特徴とする。即ち、ボディ部分の内部が波状表面のマクロ幾何形状を有する内壁(又は、内側表面)を備え、ここでは、波の長さが3mmから25mmであり、波の高さが0.3mmから3mmであり、波状表面が5μmから9μmの表面粗さとして測定可能な
等方性ミクロ幾何形状を有する。ここでは表面粗さは、R
a、つまり、表面粗さの算術平均として測定される。
【0007】
出願人は、この種類の内部幾何形状を有するピストンでは、鋳造表面又は鍛造表面を有する従来の大型サイズのピストンと比較して製造コストを妥当なレベルに維持し得ながら疲労抵抗が大幅に向上することを発見した。特許請求される幾何形状を有するピストンでは、従来のピストンでは初期のクラックが拡大し続けるようなスポットをマクロ幾何形状とミクロ幾何形状との組み合わせにより実質的に排除することにより、疲労条件に対応する。
【0008】
好適な一実施例によると、波状表面が、波の波頭がピストンの軸方向を向くように、内壁内で方向付けられる。これにより、おそらくは製造の複雑さを最小にしならが良好な立体構造を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
一実施例によると、マクロ幾何形状が、ボスにより波の波頭を内部の1つ又は複数のドームの方に向けるように、形成される。言い換えると、波の波頭がボディ部分の内部の1つ又は複数のドームに向かって延びる。この特徴により、内部のドームに向かって収束する幾何学的に一様な幾何形状又は放射状に対称な幾何形状を得ることが可能となる。この特徴には、疲労クラックの初期スポットとして作用する可能性がある応力集中が発生するのを防止するのを補助するという効果がある。
【0010】
本発明の一実施例によると、ミクロ幾何形状の表面パターンが等方性となる。これは、ボディ部分内部の表面が、表面の平面の両方向で実質的に同様であるパターンを有することを意味する。この等方性表面パターンは、例えば、ショットピーニング又はショットブラスティングによって得られる。この特徴の効果は表面を一様にすることであり、ここでは、マクロ幾何形状のフライス削りなどの前の製造段階によって方向性のマーキング(orientated marking)が生じる可能性がない。また、言及した方法では、ボディ部分の内部のちょうど表面のところに大きい圧縮応力が発生することになり、さらにこれはピストンの疲労抵抗に良好に作用する。したがって、本発明の一実施例によると、ボディ部分の内壁が圧縮応力を有する表面層を備える。
(定義)
【0011】
本文脈では、動作可能接続表面は、ピストンの別の部分又はエンジン自体に接触するか或はピストンの別の部分又はエンジン自体に相互に関連付けられて相互作用する、ピストンの表面を意味する。例えば、設置されるときにピストンピンに接触するピストンピン開口の表面が動作可能接続表面である。また、ボディ部分の外側では、小さいクリアランスで摺動し且つ薄い油層により
シリンダ表面から分離されるスリーブ部分が動作可能接続表面とみなされる。また、ピストンのトップ部分とボディ部分との間の接続表面も1つの動作可能接続表面である。ピストンの実際の構造によってはさらに存在する可能性もある。
【0012】
また、本文脈では、ミクロ幾何形状の表面パターンが等方性である特徴は、この表面が表面の平面の両方向で同様の平坦方向にあることを意味する。ここでは、ピストンの軸方向がピストンの動作時の運動方向である。ピストンは通常は円形であるか又は概略円形であり、したがって軸方向が円の中心軸と平行となる。
【0013】
波状表面のマクロ幾何形状に関しては、1つの波の長さは、例えば、1つの波の波頭から隣接する波の波頭までで測定され得る。同様に、1つの波の高さは、波の底部から、波の2つの隣接する波頭を接続する線分に対して垂直な方向で測定され得る。
【0014】
以下で、同封の図に関連させて本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】ピストンボディ部分内部を示すより詳細な図である。
【
図3】ミクロ幾何形状の一実施例が顕微画像として示される、ボディ部分の内部の波状幾何形状の一実施例を示す図である。
【
図4】ボディ部分の内部のところにある波状幾何形状及びボスの一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1では、180mmから650mmのピストン直径Dを有する、内燃ディーゼルエンジンのためのピストン1が提示されており、ピストン1が互いに接続されるトップ部分2及びボディ部分3を備え、
− トップ部分2が、エンジンのシリンダ内に設置されるときに燃焼室のピストン側を画定し、
− ボディ部分3が、ピストンピン4(図示せずにその位置のみが示される)のための開口30、使用時にピストン1とピストンピンとの間に、力を分散させるためのボス32を有し、ボディ部分3が、内部33と、外側表面34と、動作可能接続表面35とを有する。例示のためにここではピストン1は一部分が断面で提示されており、したがって他の部分を容易に視認することができる。
【0017】
図2ではピストン1のボディ部分3が提示されており、ボディ部分の内部を見ることができる。ボディ部分3の内部33が波状表面331のマクロ幾何形状を有する内壁330(又は、内側表面)を備え、ここでは、波331の長さLが3mmから25mmであり、波331の高さhが0.3mmから3mmであり、波状表面331が、5μmから9μmの表面粗さR
a(つまり表面粗さの算術平均)として測定可能なミクロ幾何形状を有する。
【0018】
ピストン1の直径Dが180mmから300mmであるピストン1の一実施例によると、波331の長さLは3mmから15mmであり、波331の高さhは0.3mmから1.0mmである。ピストン1の直径Dが300mmを超える場合の一実施例によると、波331の長さLは実質的に15mmより大きく、波の高さhは1.0mmより大きい。しかし、特定の領域では、ボス32又はドーム36などにより、波の長さLは上記の15mmより小さくなる可能性もあり、ゼロに収束する可能性もある。これにより、ピストン1の全体のサイズを基準として波331を非常に適切なサイズとすることが可能となり、そして、同時に、製造性も許容されるレベルに維持される。
図2の実施例では、ドーム36が、ピストンのトップ部分をピストンのボディ部分3に取り付けるためのボルトなどの締結手段ための表面として形成される。
【0019】
波状表面のマクロ幾何形状に関しては、波の測定値が
図2及び/又は
図3に示される従来の手法で決定され得る。1つの波の長さLは、例えば、1つの波の波頭3311から隣接する波の波頭3311までで測定され得る。同様に、1つの波の高さhは、波の底部3312から、波の2つの隣接する波頭3311を接続させる線分に対して垂直な方向で測定され得る。
【0020】
図3(及び、
図2)ではピストン内部の一実施例が示されており、ここでは、波の半径Rが10mmから30mm、好適には12.5mmから25mmである。波の半径Rは、クラックの発生又は初期クラックの成長に対する表面の抵抗に影響する可能性がある1つのファクタである。
【0021】
図3はまた、顕微画像(
図3では正方形の拡大図)として示されるミクロ幾何形状の一実施例を提示する。この画像では、ミクロ幾何形状の表面パターンが等方性であることに気が付くであろう。これは、ボディ部分内部の表面が、表面の平面の両方向で実質的に同様であるパターンを有することを意味する。この等方性表面パターンは、例えば、ショットピーニング又はショットブラスティングによって得られる。この特徴の効果は表面を一様にすることであり、ここでは、マクロ幾何形状のフライス削りなどの前の製造段階によって方向性のマーキングが生じる可能性がない。また、言及した仕上げ方法では、ボディ部分の内部のちょうど表面のところに大きい圧縮応力が発生することになり、さらにはこれはピストンの疲労抵抗に良好に作用する。
【0022】
表面粗さの範囲は疲労抵抗に対して一定の効果を有する。表面が過度に荒い場合、初期クラックを成長させるようなスポットを既に有する可能性がある。表面が例えばフライス削り処理により小さいが鋭い方向性のマーキングを有するような場合、十分な疲労抵抗を有さない可能性がある。疲労抵抗のための最適な表面に関する研究で、出願人は、最適な等方性表面粗さが、R
aすなわち表面粗さの算術平均として測定される場合に5μmから9μmの範囲にあることを発見した。
【0023】
図4では、ボス(単数あるいは複数)32のところの波状幾何形状の一実施例が提示されている。ボス32により、波の波頭3311が内部のドーム36(単数あるいは複数)の方を向いている。ボディ部分の内部は、好適には、小径の角部などを有さず、大径の湾曲部又は丸みを有するように設計される。1つの具体的な形状はドーム状形状である。ピストンのトップ部分が複数のボルトによりボディ部分の内部から取り付け可能である場合、内部は好適には各ボルト取り付け位置でドーム状となるような形状を有する。交互の応力による初期クラックに対する内壁の抵抗性を可能な限り高めるために、波状表面はその波がドームの頂点に向かって収束するような形状を有する。また、
図4からは、波状表面が、波の波頭3311の大部分がピストンの軸方向を向くように、内壁内で方向付けられることが分かる。
【0024】
上で説明したピストンを作るための1つの製造法は以下の通りである。ピストンブランクが鋳造又は鍛造によって形成される。このプストンブランクは、すぐに動作できるようなピストンの最終幾何形状にかなり近い全体の幾何形状を有するが、ピストンを完成させる前に実質的にすべての表面が機械加工されるようにピストン全体にわたって製造クリアランスを有する。ピストンボディ部分の内部が軸方向フライス削りツールを用いて機械加工され(プランジミリングなど)、ここでは、特許請求されるようにマクロ幾何形状が得られるようにフライス削り経路が選択される。好適な一実施例では、直径50mmのマシニングヘッド(波の半径Rが25mm)が選択される場合、参照されるマクロ幾何形状が得られるようにプログラムされる(数値制御(NC)フライス盤のツールの経路)。マクロ幾何形状がフライス削りされた後、ピストンのボディ部分がショットピーニング又はショットブラスティングされ、ボディ部分の内部に特許請求されるミクロ幾何形状が得られる。好適には、動作可能接続表面はショットピーニング及びショットブラスティングされない。
【符号の説明】
【0025】
1 ピストン
D ピストン直径
2 トップ部分
3 ボディ部分
30 開口
32 ボス
33 内部
330 内壁
331 波、波状表面
3311 波の波頭
3312 波の底部
L 波の長さ
h 波の高さ
R 波の半径
34 外側表面
35 動作可能接続表面
36 ドーム
4 ピストンピン