(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シール部材の一部が、前記筒状端部の前記端面から前記間隙内に露出し且つ前記筒状端部の外周面及び前記本体部の外周面よりも径方向中心側に配置される、請求項1に記載のロボットの関節シール構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロボットが嫌汚染製品の製造に用いられてロボットの外部環境に高クリーン性が要求される場合、シール部材の果たす役割が極めて重要となる。この場合、ロボットを定期的に洗浄して、ロボットそのものを清潔に保つ必要も生じる。医薬品の製造や再生医療における細胞培養などに用いられて上記要求が特に強くなる場合、ロボットの洗浄のために、外部環境から高圧洗浄水をロボットに吹き付けることがある。
【0006】
しかしながら、特許文献1の関節シール構造では、第2シール部材が外部環境に露出している。このため、第2シール部材によるシールが水圧に耐えきれず一時的に破れてしまい、洗浄水が関節の内部に浸入するおそれがある。すると、駆動機構が洗浄水に晒される可能性がある。また、ロボットの作業中に、関節の内部に溜まっていた洗浄水が不所望に周囲壁の部材間隙を通過して外部環境に漏出する可能性もある。
【0007】
そこで本発明は、高圧洗浄水でロボットを洗浄する場合でもシールを保護することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものであり、本発明に係るロボットの関節シール構造は、第1部材の筒状端部に第2部材を嵌挿してなるロボットの関節シール構造であって、前記第2部材の端部に設けられて前記筒状端部に嵌挿された嵌込み端部と、前記筒状端部の内周面に全周に渡って延びるように形成された周溝と、前記周溝内に収容され、前記嵌込み端部の外周面に密着する環状のシール部材と、を備え、前記嵌込み端部が、前記第2部材の本体部よりも小径に形成され、前記本体部と前記嵌込み端部との間の段差面は、前記筒状端部の端面と軸線方向に近接対向し、前記段差面と前記筒状端部の前記端面との間に、全周に渡って延び、前記第1部材及び前記第2部材の外に開放され、且つ、外周側に向かうほど拡がる間隙が形成されている。
【0009】
前記構成によれば、シール部材を筒状端部の内周面に形成された周溝内に収容しているので、外部環境からシール部材を保護することができ、高圧洗浄水を噴射してロボットを洗浄する場合でも、高圧洗浄水がシール部材に直接に当たるのを抑制することができる。このため、洗浄水でシールが破れにくく、洗浄水が関節の内部に浸入するのを抑えることができる。間隙は、外周側に向かうほど拡がっているので、シール部材に高圧洗浄水が直接当たるのを抑制しつつも洗浄水を間隙に当てることができ、間隙の奥まで洗浄することができる。また、間隙の奥に入り込んだ水は、拡がった間隙を介して容易に排水される。
【0010】
前記筒状端部の前記端面に、前記周溝を前記間隙に連通させる開口部が開口していてもよい。前記構成によれば、シール部材に高圧洗浄水が直接当たることを抑制しつつも洗浄水を間隙及びシール部材周辺に当ててシール部材周辺を洗浄することができ、また、周溝に浸入した水を開口部及び間隙を介して排水することができる。前記開口部が周方向に間隔をおいて形成されてもよい。前記開口部が全周に渡って延びるように形成されてもよい。
【0011】
前記シール部材の一部が、前記筒状端部の前記端面から前記間隙内に露出し且つ前記筒状端部の外周面及び前記本体部の外周面よりも径方向中心側に配置されてもよい。
【0012】
前記ロボットが医薬品の製造に用いられるロボットであると好適である。前記構成によれば、クリーン化が強く要請される作業現場において好適に本発明を実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、高圧洗浄水でロボットを洗浄する場合でもシールを保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には同一の符号を付してその重複する詳細な説明を省略する。
【0016】
図1は、第1実施形態に係るロボットRの模式図である。本実施形態に係るロボットRは、医薬品の製造に用いられるが、他用途に用いられてもよい。本実施形態に係るロボットRは、垂直多関節型6軸ロボットであるが、軸数は6に限定されないし、関節を有するのであれば垂直多関節型以外の形式であってもよい。
【0017】
図1に示すように、ロボットRを医薬品の製造に用いる場合、ロボットRは、無菌の作業空間90内に配置され、当該作業空間90内で医薬品の原料、中間製品又は最終製品をハンドリングする。ロボットRの清潔性を保つため、複数の洗浄ノズル91が作業空間90内で分散配置されている。洗浄ノズル91は、ロボットRの定期洗浄に用いられ、洗浄水を高圧で噴射することができる。洗浄ノズル91からの洗浄水は、ロボットRに吹き付けられ、それによりロボットRの表面を滅菌したり、ロボットRで発生した塵埃を洗い落としたりすることができる。ロボットRの定期洗浄において、洗浄ノズル91が滅菌ガスを噴射してもよい。滅菌ガスは、ロボットRに吹き付けられてロボットRの表面を滅菌する。
【0018】
ロボットRは、基台1と、回転台2と、基端アーム3と、先端アーム4と、基端手首5と、先端手首6と、アタッチメント7とを備えており、これら部材1〜7がこの順で順次に連結されている。基台1は、作業空間90を規定する壁面92に設置される。回転台2は、第1関節J1を介して基台1に連結され、基台1に対して第1回転軸線A1周りに回転する。他の部材3〜7は、第2〜第6関節J6それぞれを介して部材2〜6それぞれに連結され、この連結相手2〜6それぞれに対して第2〜第6回転軸線A2〜A6それぞれ周りに回転する。アタッチメント7には、医薬品の製造に用いるエンドエフェクタ9(例えばピペット等)が着脱可能に装着される。
【0019】
図2は、
図1のII−II線に沿って切断して示す関節シール構造の断面図であり、
図3は、
図2のIII−III線に沿って切断して示す関節シール構造の断面図である。
図2及び
図3は、
図1に示した6つの関節J1〜J6のうち第1関節J1を例示している。以降では、
図2等を参照しながら第1関節J1について説明するが、その他は概ね同一の構造を有するので、その詳細説明を省略する。
【0020】
図2に示すように、基台1(第1部材)は筒状端部11を有しており、第1関節J1は、基台1の筒状端部11に回転台2(第2部材)を嵌挿してなる。本実施形態では、嵌挿される部材(第2部材)が筒状端部(第1部材)を有する部材に対して回転するが、筒状端部を有する部材(第1部材)が嵌挿される部材(第2部材)に対して回転してもよい。
【0021】
筒状端部11は、円筒状に形成され、その先端に円形状の挿入開口12を有する。回転台2は、本体部21と、本体部21の端部に一体的に設けられた嵌込み端部22とを有する。本体部21及び嵌込み端部22はどちらも、円筒状に形成されている。嵌込み端部22は、挿入開口12から筒状端部11の内周側に回転摺動可能に嵌挿される。
【0022】
第1関節J1は、回転台2を基台1に対して回転させるための駆動機構を内蔵しており、
図2では、その構成要素の一例として回転シャフト31が示されている。回転シャフト31は、筒状端部11の内部から嵌込み端部22を貫通して本体部21の内部へと延び、回転台2に固定される。固定にどのような手段を用いてもよく、例えば、回転シャフト31に挿し込んだボルト(図示せず)が嵌込み端部22を貫通して本体部21に螺合されてもよい。回転シャフト31は、基台1に設けられたアクチュエータ(図示せず)により駆動され、その中心軸線周りに回転する。回転シャフト31が回転すると、基台1は動かず回転台2が回転シャフト31の中心軸線周りに回転する。回転シャフト31の中心軸線は、第1関節J1の第1回転軸線A1を成し、筒状端部11の中心軸線、嵌込み端部22の中心軸線及び本体部21の中心軸線と同軸に配置される。図示省略するが、第1関節J1は、回転シャフト31を回転可能に支持する軸受など、駆動機構を構成する他の要素も内蔵している。
【0023】
嵌込み端部22は、本体部21よりも小径に形成されており、回転台2は、嵌込み端部22の外周面を本体部21の外周面に繋ぐ段差面23を有している。段差面23は、嵌込み端部22から本体部21の外周面に向かって径方向外周側に延び、軸線直交方向に見れば円環状である。筒状端部11は、挿入開口12を規定する円環状の端面13を有し、段差面23は、当該端面13と軸線方向に近接(僅かに離隔)した状態で対向している。
【0024】
本体部21は、筒状端部11から露出している。本体部21の外周面は、筒状端部11の外周面と軸線方向に離隔しており、本体部21の外周面の軸線方向端縁21aと、筒状端部11の外周面の軸線方向端縁11aとが、作業空間90を第1関節J1の内部に通じさせる開放口40を形成している。開放口40の奥(半径方向中心側)には、端面13と段差面23との間で間隙41が形成される。この間隙41は、筒状端部11の内周面と嵌込み端部22の外周面との間に形成されるクリアランス42に連通する。
【0025】
開放口40は、端縁11a,21aと同様、筒状端部11の周方向又は本体部21の周方向に全周に渡って延び、軸線直交方向に見ると円形を成す(
図3参照)。間隙41は、端面13及び段差面23と同様、筒状端部11の周方向又は嵌込み端部22の周方向に全周に渡って延び、軸線直交方向に見ると円環状断面を有する(
図3参照)。間隙41は、その径方向外周縁部にて、軸線直交方向に見て円形を成した開放口40を介し、基台1及び回転台2の外である作業空間90に開放される。クリアランス42は、筒状端部の内周面及び嵌込み端部の外周面により規定されるので、筒状端部11の周方向又は嵌込み端部22の周方向に全周に渡って延び、詳細図示は省略するが軸線直交方向に見ると円環状断面を有する。
【0026】
筒状端部11は、その内周面に全周に渡って延びるように形成された周溝14を有し、第1関節J1には、この周溝14内に収容された環状のシール部材35が設けられている。シール部材35は、その外周縁部で筒状端部11に密着し、その内周縁部で嵌込み端部22の外周面に密着している。これによりクリアランス42がシール部材35によってシールされる。以降の説明では、クリアランス42のうち、周溝14から見て軸線方向先端側(すなわち、間隙41や開放口40に空間的に近い側)の部分を先端クリアランス42aと称し、周溝14から見て軸線方向基端側(すなわち、間隙41及び開放口40から空間的に遠い側)の部分を内側クリアランス42bと称する。
【0027】
シール部材35は、内側クリアランス42bを含む関節J1の内部を、先端クリアランス42a、間隙41、開放口40及び作業空間90から空間的に隔離する。第1関節J1は、当該シール部材35から見て作業空間90に向かっていく空間経路上に他のシール部材を備えていない。しかし、図示省略するが、当該シール部材35から見て作業空間90から遠ざかっていく空間経路上に他のシール部材が設けられていてもよい。
【0028】
図4は、
図2の拡大図であって
図2に示すシール部材35の周辺部位の断面図であり、
図5は、
図2に示すシール部材35の周辺部位の斜視断面図である。前述のとおり、間隙41は、段差面23と端面13との間に形成され、段差面23の周方向及び端面13の周方向に全周に渡って延び、その外周縁部で開放口40を介して基台1及び回転台2の外に開放されている。間隙41は、軸線直交方向に見て円環状断面を有するところ、径方向外周側に向かうほど軸線方向に拡がるように形成される。
【0029】
図4及び
図5に示すように、間隙41がかかる末広がり構造を有するべく、段差面23は、その一部又は全部において、径方向外周側に向かうほど端面13から離れるように傾斜又は湾曲している。本実施形態では、段差面23が、嵌込み端部22の外周面に繋がる内周縁から本体部21の外周面に繋がる外周縁(すなわち端縁21a)までの略全部において、径方向外周側に向かうほど筒状端部11から離れるように軸線直交平面Pに対して傾斜した平面である。
【0030】
間隙41が末広がり構造を有するべく、筒状端部11の端面13も、その一部又は全部において、径方向外周側に向かうほど段差面23から離れるように傾斜又は湾曲している。本実施形態では、端面13は、開口12を規定する内周縁部では軸線直交平面Pに対して平行であり、この平行部位から連続する傾斜面13aを有する。当該傾斜面13aは、径方向外周側に向かうほど本体部21から離れるように軸線直交平面Pに対して傾斜し、その外周縁にて筒状端部11の外周面に繋がっている。
【0031】
このように本実施形態では、内周縁部においては、端面13が軸線直交平面Pに対して平行である一方で段差面23は筒状端部21から遠ざかるよう傾斜しているので、その結果として、径方向外周側に向かうほど端面13及び段差面23は互いに相対的に遠ざかり、間隙41は、径方向外周側に向かうほど軸線方向に拡がっていく。外周縁部においては、端面13(傾斜面13a)及び段差面23が互いに遠ざかるように傾斜しているので、間隙41は、径方向外周側に向かうほど軸線方向により大きく拡がっていく。結果として本実施形態に係る間隙41は、軸線通過断面をとるとV字を形成している。
【0032】
ただし、この段差面23及び端面13の形状は一例に過ぎず、結果的に間隙41の末広がり構造を実現できるのであれば(すなわち、径方向外周側に向かうほど段差面23及び端面13が軸線方向に相対的に遠ざかるのであれば)、段差面23及び端面13は別の形状に形成されていてもよい。段差面23は、その一部又は全部が曲面であってもよく、端面14は、その全部が曲面又は傾斜した平面であってもよい。段差面23は、曲面部分と平面部分とを有してもよいし、部分的に軸線直交方向平面Pと平行な部分や、軸線直交方向平面Pに対して上記とは逆側に傾斜又は湾曲する部分を有していてもよい。端面13も同様である。段差面23は、本体部21の外周面及び/又は嵌込み端部22の外周面と丸角を介して接続されてもよい。端面13も同様である。
【0033】
端面13には、周溝14を間隙41に連通させる開口部15が開口している。筒状端部11は、周溝14よりも軸線方向先端側に端壁部16を有し、端壁部16は、端面13と、その反対側の面であって周溝14を取り囲む一側面14aとを有する。端壁部16の内周面16aは、挿入開口12を規定すると共に、嵌込み端部22の外周面との間で先端クリアランス42aを形成する。開口部15は、この端壁部16に設けられ、前記一側面14aにより規定される周溝14を端面13により規定される間隙41に連通させる。
【0034】
図3を参照すると、開口部15は、端壁部16をその内周面16aから径方向外周側へ切り欠くことで形成される。筒状端部11は、複数の開口部15を有し、これら開口部15は周方向に間隔をおいて配置されている。本実施形態では、4つの開口部15が周方向に等間隔をおいて(すなわち、90度おきに)配置されている。なお、
図3は、各開口部15が軸線直交方向に見て矩形状である場合を例示しているが、開口部は円形状又は他の非円形状であってもよい。また、開口部15の数は4に限定されず、適宜変更可能である。
【0035】
開口部15が端壁部16を内周面16aから切り欠くことで形成されると、その切欠き部位で先端クリアランス42aは径方向に拡大する。本実施形態に係る開口部15は、周方向に全周に渡って延びる先端クリアランス42aの一部を径方向に拡大する役割を果たし、それにより周溝14の間隙41への連通を部分的に顕在化させている。なお、開口部15は、端壁部16の内周面16aよりも径方向外周側において端壁部16を軸線方向に貫通することで形成されてもよい。こうすれば、先端クリアランス42aを拡大させることにはならないが、周溝14の間隙41への連通を部分的に顕在化させることはできる。
【0036】
図4に戻り、開口部15の軸線通過断面を参照すると、開口部15は、その径方向外周側に一側面15aを有するところ、当該一側面15aは、軸線方向に切り立ってはおらず、軸線方向先端側に向かうほど(すなわち、端面13に近付くほど)径方向外周側に向かうように傾斜している。換言すれば、当該一側面(以下、「傾斜面」とも称す)15aは、径方向外周側に向かうほど本体部21に近づくように軸線直交平面に対して傾斜している。
【0037】
開口部15の傾斜面15aの軸線方向基端縁15bは、当該傾斜面15aの内周縁であって、周溝14の一側面14aの内周縁でもある。シール部材35は、当該端縁15bと本体部21の端縁21aとに接する円錐面Cよりも径方向外周側に配置される。なお、当該円錐面Cは、
図4に示すとおり、軸線通過断面をとると直線で表される。
【0038】
上記のように構成される関節シール構造によれば、シール部材35が、筒状端部11の内周面に形成された周溝14に収容されるので、開放口40にシール部材35を設ける場合と比べ、シール部材35を第1関節J1のより奥まった箇所に配置することができる。シール部材35は端壁部16で覆われている。これにより、ロボットRの作業中にシール部材35から摩耗粉が発生しても、その摩耗粉が作業空間90に飛散するのを抑えることができる。このため、ロボットRを、高クリーン性が要求される用途で好適に利用することができる。
【0039】
このように高クリーン性が要求される用途では、ロボットRの定期洗浄において、高圧洗浄水が作業空間90からロボットRに吹き付けられる。作業空間90からの高圧洗浄水は、開放口40を通じて間隙41内に浸入する。間隙41内に浸入した洗浄水は、段差面23又は端面13に吹き付けられた後に又は間隙41内を一直線的に通過し、挿入開口12を介して先端クリアランス42aに浸入する。また、間隙41に浸入した洗浄水は、開口部15内に浸入する。洗浄水は、開口部15又は先端クリアランス42aから周溝14内に浸入する。
【0040】
本実施形態では、間隙41が径方向外側に向かうほど軸線方向に拡がるように形成されており、そのため開放口40が軸線方向に大きく開いている。このため、作業空間90からの高圧洗浄水が間隙41内に多く取り込まれ、間隙41内で円滑に流れる。このため間隙41を規定する段差面23及び端面13の洗浄効率が向上する。
【0041】
本実施形態では、周溝14を間隙41に連通させる開口部15が設けられているので、間隙41内に浸入した水を周溝14内に円滑に導くことができる。このため、シール部材35を保護すべく奥まった位置に周溝14を配置しても、当該周溝14内部の洗浄効率が向上する。このように、開口部15を設けたことで、シール部材35の保護とその周辺の洗浄効率の向上とを両立させることができる。特に本実施形態では、開口部15が周方向に間隔をおいて配置されており、そのため、開口部15を介した周溝14と間隙41の連通場所及び連通程度を限定的なものとしている。これにより、シール部材35の保護性を高めることができる。
【0042】
間隙41に浸入した洗浄水は、前述のとおり、挿入開口12を通じて先端クリアランス42aに浸入し得るが、その浸入は大きく期待できないし、一旦浸入すれば排水困難になる。本実施形態では、開口部15が、端壁部16を内周面16aから切り欠くことで形成されており、先端クリアランス42aを部分的に径方向に広げる役割を果たしている。このため、間隙41から挿入開口12ではなく開口部15に浸入した洗浄水が周方向に回って先端クリアランス42a内に浸入させることができるようになり、先端クリアランス42aの洗浄効率が向上する。また、先端クリアランス42aに浸入した洗浄水も開口部15を介して排水されやすくなり、先端クリアランス42aの排水効率の向上も期待できる。
【0043】
なお、排水時には回転シャフト31を回転させ、回転台2を基台1に対して回転させてもよい。すると、嵌込み端部22がシール部材35及び筒状端部11に対して回転摺動する。これにより、先端クリアランス42a内に浸入していた洗浄水を開口部15に導きやすくなり、排水効率が向上する。また、周溝14内に浸入していた洗浄水は開口部15を介して間隙41に導かれやすくなり、排水効率が向上する。また、段差面23に付着している洗浄水滴を遠心力で径方向外周側に飛ばすことができ、間隙41内の洗浄水の排水効率も向上する。本実施形態では、間隙41を規定する段差面23及び傾斜面15aが互いに遠ざかるように傾斜している。間隙41内の洗浄水をこれら段差面23及び傾斜面15aに沿わせて開放口40に案内することができ、排水効率が向上する。
【0044】
シール部材35は、開放口40から見て先端クリアランス42aよりも奥まった箇所に配置された周溝14に収容されている。このため、開口部15を設けていても、高圧洗浄水はシール部材35に直接当たりにくい。よって、シール部材35によるクリアランス42でのシールが高圧洗浄水で破れにくく、高圧洗浄水が周溝14を通過して内部クリアランス42a及びそれに連通する関節J1の内部に浸入するのを防ぐことができる。このため、関節J1の内部に洗浄水が不所望に溜まるようなことがなく、回転シャフト31をはじめとした駆動機構を保護することができる。
【0045】
特に本実施形態では、前述のとおり、シール部材35が、周溝14に収容されると共に、開口部15の端縁15bと本体部21の端縁21aとに接する円錐面Cよりも径方向外周側に配置される。一方、作業空間90からの高圧洗浄水は、当該円錐面C上に沿って関節J1に向かっていく場合に、開放部40を通じて関節J1の最も奥まで浸入することができる。シール部材35は当該円錐面Cよりも径方向外周側に配置されるので、円錐面C上に沿って向かってくる高圧洗浄水W0でさえも、シール部材35に直接当たらない。よって、高圧洗浄水でクリアランス42のシールが破れるのをより確実に抑えることができる。
【0046】
段差面23の傾斜を大きくしたり開口部15を径方向に広げたりすると、開放口40、間隙41及び開口部15が大型化し、間隙41、先端クリアランス42a、周溝14の洗浄効率が向上し、これら空間からの排水効率も向上する。一方、円錐面Cは周溝14内により奥深くまで達するようになるので、高圧洗浄水はシール部材35に直接当たりやすくなる。
【0047】
そこで、シール部材35は、径方向内縁部のうち軸線方向先端部にて、本体部21に近づくほど嵌込み端部22の外周面から径方向に遠ざかるように形成されることが好ましい。このような形状を採用すれば、シール部材35を積極的に円錐面Cから逃がすことができる。このため、段差面23の傾斜を大きくする等して洗浄効率及び排水効率を向上させながら、クリアランス42のシールが高圧洗浄水で破れるのを防ぐことができる。
【0048】
更に本実施形態では、前述のとおり、開口部15に傾斜面15aを採用している。この傾斜の採用により、開口部15の奥部(径方向外周部)において、間隙41に近位では開口部15を径方向外周側へ極力広げることができる。これにより、開放口40を通じて間隙41に浸入した洗浄水は開口部15を介して先端クリアランス42a及び周溝14に導かれやすくなり、先端クリアランス42a及び周溝14の洗浄効率が向上する。これと逆に、浸入した洗浄水を排水しやすくもなる。また、傾斜の採用により、開口部15の奥部(径方向外周部)において、周溝14に近位では端壁部16を極力残すことができる。これにより、シール部材35が、開口部15を通じて間隙41に大きく露出するのを防ぐことができ、周溝14に収容されたシール部材35を端壁部16で好適に保護することができる。このように、洗浄効率及び排水効率の向上と、シール部材35の保護とを両立することができる。
【0049】
図6及び
図7は、第2実施形態に係るロボットRAの関節シール構造の断面図である。第2実施形態に係る関節シール構造は、開口部115及びその周辺の構造を除いて、第1実施形態と同様の構成である。
図6に示すように、本実施形態に係る関節J1Aにおいては、開口部115が、基台101の筒状端部111の端壁部116に周方向に全周に渡って延びるようにして形成されている。特に、本実施形態では、開口部115が、端壁部116の内周面を一様に径方向外周側にセットバックすることで形成されており、その結果として開口部115が挿入開口112及び先端クリアランス142aを周方向全周に渡って径方向外周側に拡大している。周溝114は、当該開口部115を介し、周方向においてどの部位においても間隙141と軸線方向に連通することとなる。このような開口部115を採用することで、周溝114、先端クリアランス142aの洗浄効率が向上するし、周溝114からの洗浄水の排水効率が向上する。開口部115の傾斜面115aの軸線方向基端縁115bは、第1実施形態と同様、シール部材135の外周面よりも径方向中心側に位置し、それによりシール部材135を端壁部116で保護することができる。なお、筒状端部111の端面113は、傾斜面115aの軸線方向先端縁から径方向外周側に延びており、径方向外周側に向かうほど段差面23から離れるように傾斜している。
【0050】
図8は、第3実施形態に係るロボットRBの関節シール構造の断面図である。
図8に示すように、本実施形態に係る関節J1Bでも、基台201の筒状端部211は、その先端に円形状の挿入開口212と、挿入開口212を規定する円環状の端面213を有し、端面213は回転台2の段差面23と軸線方向に近接対向している。開放口240が、本体部21の外周面と筒状端部211の外周面との間に形成され、開放口240の奥には、端面213と段差面23との間に間隙241が形成される。間隙241は外周側に向かうほど拡がっている。筒状端部211は、その内周面に全周に渡って延びるように形成された周溝214と、周溝214よりも軸線方向先端側に位置する端壁部216とを有する。端壁部216は、端面213と、その反対側の面であって周溝214を取り囲む一側面214aと、嵌込み端部22の外周面と対向する内周面216aとを有する。
【0051】
環状のシール部材235は、軸線方向中間部に全周に渡って延びる溝235aを有し、端壁部216は、端面213の径方向内縁部、一側面214aの径方向内縁部及び内周面216aが溝235aを規定する面に密着する状態で、溝235a内に嵌め込まれている。シール部材235は、溝235aよりも軸線方向基端側に、周溝214内に収容される収容部235bを有する。シール部材235は、溝235aよりも軸線方向先端側に、端面213から突出して間隙241内に露出する先端部235cを有する。シール部材235は、筒状端部211の外周面及び本体部21の外周面(すなわち、開放口240)よりも径方向中心側に配置されている。このように本実施形態では、シール部材235の一部が、間隙241内に露出し且つ筒状端部211の外周面及び本体部21の外周面よりも径方向中心側に配置される。先端部235cは、端面213と接触する径方向外周縁から嵌込み端部22の外周面と接触する径方向内周縁に向かうにつれて軸線方向先端側に傾斜した傾斜面235dを形成している。
【0052】
本実施形態に係るシール部材235は、上記実施形態における先端クリアランス42a又は142aを塞ぎ、周溝214が間隙241と連通するのを阻止している。このため、端面213の径方向外縁部、段差面23及び傾斜面235dで規定された間隙241のみが、開放口240を介して作業空間90に開放される。したがって、洗浄水及び滅菌ガスが侵入してしまう狭隘な空間がなく、ロボットRの表面の滅菌しやすくなる。間隙241が外周側に向かうほど拡がっているので、洗浄水及び滅菌ガスを間隙241内に進入させやすく間隙241から排出させやすい。また、間隙241表面に付着した洗浄水の拭取り作業も容易に行うことができる。シール部材235のうち間隙241の表面の一部を形成する部分を傾斜面235dとしたので、間隙241の奥に入り込んだ洗浄水を排水しやすい。シール部材235は間隙241の奥まった個所に配置されているので、シール部材235を保護することができる。
【0053】
これまで実施形態について説明したが、上記構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更、追加又は削除可能である。