(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の製造方法においては、透明基板上の遮光層をパターニングする工程を含むことができる。上記透明基板上に上記遮光層を被覆するように位相シフト層が形成される。上記位相シフト層は、少なくとも不活性ガスと、40%以上90%以下の窒化性ガスと、10.4%以下の酸化性ガスとを含む混合ガスの雰囲気下、より好ましくは40%以上70%以下の窒化性ガス及び9.2%以上10.4%以下の酸化性ガスを含む混合ガスの雰囲気下、クロム系材料のターゲットをスパッタすることで形成される。上記位相シフト層は、300nm以上500nm以下の波長領域のいずれかの光、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)を含む複合波長による光に対して180°の位相差をもたせ、前記g線の透過率と前記h線の透過率と前記i線の透過率との差をいずれも5%以下とすることが可能な厚みで形成される。さらに、形成された上記位相シフト層は、所定形状にパターニングされる。
【0015】
本発明の位相シフトマスクは、前記g線の透過率と前記h線の透過率と前記i線の透過率との差をいずれも5%以下とするとともに略180°の位相差をもたせることが可能な位相シフト層を有する。したがって、当該位相シフトマスクによれば、上記波長領域の光、特にg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)を含む複合波長を露光光として用いることで、位相の反転作用により光強度が最小となる領域を形成して、露光パターンをより鮮明にすることができる。このような位相シフト効果により、パターン精度が大幅に向上し、微細かつ高精度なパターン形成が可能となる。前記g線の透過率と前記i線の透過率との差は、2.5%以上、5%以下とすることがより好ましい。前記g線の透過率と前記i線の透過率との差を小さくすることで各波長での透過率差異が小さくなり、各波長における位相シフト効果が高くなることとなる。
【0016】
上記位相シフト層を酸化窒化クロム系材料で形成する際に、10.4%以下の酸化性ガスを含む混合ガス雰囲気とすることにより、所望の透過率および屈折率を有するスパッタ膜を安定して形成することができる。酸化性ガスは9.2%以上であれば、所望の屈折率が得られるために、g線、h線、i線での透過率が高くなって、位相シフト効果が高くなり、好ましい。しかし、酸化性ガスが9.2%未満であっても、透過率値は低くなり、位相シフト効果が小さくはなるものの効果が認められるため、良好である。酸化性ガスが6.5%以上であれば良好である。酸化性ガスが10.4%を超えると、膜中の酸素濃度が高すぎて所望とする透過率および屈折率が得られなくなるとともに、ターゲットの酸化を抑制することができず、安定したスパッタが困難となる。一方、窒化性ガスが40%未満の場合、ターゲットの酸化を抑制することができず、安定したスパッタが困難となる。また、窒化性ガスが70%を越えると、所望とする透過率および屈折率等の膜特性が得られ難くなる。上記条件の混合ガス雰囲気で成膜することにより、例えばi線に関しての透過率が1〜20%である位相シフト層を得ることができる。i線の透過率が1%未満であっても若干ながら位相シフト層の効果を得ることも可能であり、0.5%以上であればよい。
【0017】
上記位相シフト層の厚みは、i線に対して略180°の位相差をもたせる厚みとすることができる。さらに、h線またはg線に対して略180°の位相差をもたせることが可能な厚みで上記位相シフト層を形成してもよい。
ここで「略180°」とは、180°又は180°近傍を意味し、例えば、180°±10°以下である。
【0018】
上記位相シフト層の厚みは、前記g線の透過率と前記h線の透過率と前記i線の透過率との差をいずれも5%以下とするとともに、i線に付与する位相差とg線に付与する位相差との差が40°以下となるような厚みとすることができる。
これにより、各波長光に対して一定の位相シフト効果が得られることで、微細かつ高精度なパターン形成を確保することができる。
【0019】
上記混合ガスは、不活性ガスをさらに含んでいてもよい。
これにより、プラズマの安定した形成が可能となる。また、窒化性ガス及び酸化性ガスの濃度を容易に調整することができる。
【0020】
本発明の位相シフトマスクを用いたFPDの製造方法としては、基板上にフォトレジスト層を形成する工程を含む。上記フォトレジスト層に近接して、位相シフトマスクが配置される。上記位相シフトマスクは、300nm以上500nm以下の波長領域のいずれかの光に対して180°の位相差をもたせ、前記g線の透過率と前記h線の透過率と前記i線の透過率との差をいずれも5%以下とすることが可能な酸化窒化クロム系材料からなる位相シフト層を有する。上記フォトレジスト層は、上記300nm以上500nm以下の複合波長の光として、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)を含む複合波長の光を上記位相シフトマスクに照射することで露光される。
【0021】
上記位相シフトマスクは、前記g線の透過率と前記h線の透過率と前記i線の透過率との差をいずれも5%以下とするとともに、300nm以上500nm以下の波長領域のいずれかの光に対して180°の位相差をもたせることが可能な位相シフト層を有する。したがって、上記製造方法によれば、上記波長領域の光を用いることで位相シフト効果に基づくパターン精度の向上を図ることができ、微細かつ高精度なパターン形成が可能となる。これにより、高画質のフラットパネルディスプレイを製造することができる。
【0022】
上記複合波長の光としては、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)を含む光を用いることができる。
【0023】
本発明の位相シフトマスクは、透明基板と、遮光層と、位相シフト層とを具備する。上記遮光層は、上記透明基板上に形成される。上記位相シフト層は、上記遮光層の周囲に形成され、g線とh線とi線の透過率の差がいずれも5%以下とされるとともに、300nm以上500nm以下の複合波長領域のいずれかの光に対して180°の位相差をもたせることが可能な酸化窒化クロム系材料からなる。
【0024】
上記位相シフトマスクによれば、上記複合波長の光を用いることで位相シフト効果に基づくパターン精度の向上を図ることができ、微細かつ高精度なパターン形成が可能となる。上記効果は、上記波長範囲において異なる波長の光(例えば、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm))を複合化させた露光技術を用いることで、より顕著となる。
【0025】
上記位相シフト層の厚みは、g線とh線とi線の透過率の差がいずれも5%以下とされるとともに、i線に付与する位相差とg線に付与する位相差との差が30°以下となるような厚みとすることができる。
これにより、各波長光に対して一定の位相シフト効果が得られことで、微細かつ高精度なパターン形成を確保することができる。
【0026】
<第1の実施形態>
以下では、本発明に係る位相シフトマスクの製造方法の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法を模式的に示す工程図である。
【0027】
本実施形態の位相シフトマスクは、例えばFPD用ガラス基板に対するパターニング用マスクとして構成される。後述するように、当該マスクを用いたガラス基板のパターニングには、露光光にi線、h線及びg線の複合波長が用いられる。
【0028】
本実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法においては、まず、
図1(a)に示すように、透明基板10上に遮光層11が形成される。
【0029】
透明基板10としては、透明性及び光学的等方性に優れた材料が用いられ、例えば、石英ガラス基板が用いられる。透明基板10の大きさは特に制限されず、当該マスクを用いて露光する基板(例えばFPD用基板、半導体基板)に応じて適宜選定される。本実施形態では、径寸法100mm程度の基板や、一辺50〜100mm程度から、一辺300mm以上の矩形基板に適用可能であり、更に、縦450mm、横550mm、厚み8mmの石英基板や、基板寸法が1000mm以上の基板であっても用いることができる。
【0030】
また、透明基板10の表面を研磨することで、透明基板10の表面粗さを低減するようにしてもよい。透明基板10のフラットネスは、例えば、50μm以下とすることができる。これにより、マスクの焦点深度が深くなり、微細かつ高精度なパターン形成に大きく貢献することが可能となる。透明基板のフラットネスについては20μm以下であれば、より好ましく、10μm以下であれば、微細かつ高精細なパターン形成への寄与がより高くなるので好ましい。
【0031】
遮光層11は金属クロム又はクロム化合物(以下、クロム系材料ともいう。)で構成されるが、これに限られず、金属シリサイド系材料(例えば、MoSi、TaSi、TiSi、WSi)又はこれらの酸化物、窒化物、酸窒化物が適用可能である。遮光層11の厚みは特に制限されず、所定以上の光学濃度が得られる厚み(例えば、80〜200nm)であればよい。成膜方法は、電子ビーム蒸着法、レーザー蒸着法、原子層成膜法(ALD法)、イオンアシストスパッタリング法等が適用可能であり、特に大型基板の場合には、DCスパッタリング法によって膜厚均一性に優れた成膜が可能である。
【0032】
次に、
図1(b)に示すように、遮光層11の上にフォトレジスト層12が形成される。フォトレジスト層12は、ポジ型でもよいしネガ型でもよい。フォトレジスト層12としては、液状レジストが用いられるが、ドライフィルムレジストが用いられてもよい。
【0033】
続いて、
図1(c)(d)に示すように、フォトレジスト層12を露光及び現像することで、領域12aを除去して遮光層11の上にレジストパターン12P1が形成される(
図1(C))。レジストパターン12P1は、遮光層11のエッチングマスクとして機能し、遮光層11のエッチングパターンに応じて適宜形状が定められる。
【0034】
続いて、
図1(e)に示すように、遮光層11が所定のパターン形状にエッチングされる。これにより、透明基板10上に所定形状にパターニングされた遮光層11P1が形成される。
【0035】
遮光層11のエッチング工程は、ウェットエッチング法又はドライエッチング法が適用可能であり、特に基板10が大型である場合、ウェットエッチング法を採用することによって面内均一性の高いエッチング処理が実現可能となる。
【0036】
遮光層11のエッチング液は適宜選択可能であり、遮光層11がクロム系材料である場合、例えば、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸の水溶液を用いることができる。
このエッチング液は、ガラス基板との選択比が高いため、遮光層11のパターニング時に基板10を保護することができる。一方、遮光層11が金属シリサイド系材料で構成される場合、エッチング液としては、例えば、フッ化水素アンモニウムを用いることができる。
【0037】
遮光層11P1のパターニング後、
図1(f)に示すように、レジストパターン12P1は除去される。レジストパターン12P1の除去には、例えば、水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
【0038】
次に、
図1(g)に示すように、位相シフト層13が形成される。位相シフト層13は、透明基板10の上に遮光層11P1を被覆するように形成される。
【0039】
位相シフト層13の成膜方法としては、電子ビーム(EB)蒸着法、レーザー蒸着法、原子層成膜(ALD)法、イオンアシストスパッタリング法等が適用可能であり、特に大型基板の場合には、DCスパッタリング法を採用することによって、膜厚均一性に優れた成膜が可能である。なお、DCスパッタリング法に限られず、ACスパッタリング法やRFスパッタリング法が適用されてもよい。
【0040】
位相シフト層13は、クロム系材料で構成される。特に本実施形態では、位相シフト層13は、窒化酸化クロムで構成される。クロム系材料によれば、特に大型の基板上において良好なパターニング性を得ることができる。なお、クロム系材料に限られず、例えば、MoSi、TaSi、WSi、CrSi、NiSi、CoSi、ZrSi、NbSi、TiSi又はこれらの化合物等の金属シリサイド系材料が用いられてもよい。さらに、Al、Ti、Ni又はこれらの化合物などが用いられてもよい。
【0041】
酸化窒化クロムからなる位相シフト層13をスパッタリング法で形成する場合、プロセスガスとして、窒化性ガス及び酸化性ガスの混合ガス、又は、不活性ガス、窒化性ガス及び酸化性ガスの混合ガスを用いることができる。成膜圧力は、例えば、0.1Pa〜0.5Paとすることができる。不活性性ガスとしては、ハロゲン、特にアルゴンを適用することができる。
【0042】
酸化性ガスには、CO、CO
2、NO、N
2O、NO
2、O
2等が含まれる。窒化性ガスには、NO、N
2O、NO
2、N
2等が含まれる。不活性ガスとしては、Ar、He、Xe等が用いられるが、典型的には、Arが用いられる。なお、上記混合ガスに、CH
4等の炭化性ガスがさらに含まれてもよい。
【0043】
混合ガス中の窒化性ガス及び酸化性ガスの流量(濃度)は、位相シフト層13の光学的性質(透過率、屈折率など)を決定する上で重要なパラメータである。本実施形態では、窒化性ガス40%以上70%以下及び酸化性ガス9.2%以上10.4%以下の条件で、混合ガスが調整される。ガス条件を調整することで、位相シフト層13の屈折率、透過率、反射率、厚み等を最適化することが可能である。
【0044】
酸化性ガスが9.2%未満の場合、膜中の酸素濃度が低すぎて透過率が低くなりすぎる。また、酸化性ガスが10.4%を超えると、膜中の酸素濃度が高すぎて光の波長による透過率のバラツキが大きくなりすぎるとともに、ターゲットの酸化を抑制することができず、安定したスパッタが困難となる。ここで、酸化性ガスとしては、二酸化炭素をあげることができる。窒化性ガスが40%未満の場合、ターゲットの酸化を抑制することができず、安定したスパッタが困難となる。また、窒化性ガスが90%を越えると、膜中の酸素濃度が低すぎて所望とする屈折率が得られ難くなる。ここで、窒化ガスとしては窒素ガスをあげることができる。上記条件の混合ガス雰囲気で成膜することにより、例えばi線に関しての透過率が1〜20%である位相シフト層を得ることができる。透過率は0.5%以上であってもよい。
【0045】
位相シフト層13の厚みは、300nm以上500nm以下の波長領域にあるg線とh線とi線のいずれかの光に対して180°の位相差をもたせることが可能な厚みとされる。180°の位相差が付与された光は、位相が反転することで、位相シフト層13を透過しない光との間の干渉作用によって、当該光の強度が打ち消される。このような位相シフト効果により、光強度が最小(例えばゼロ)となる領域が形成されるため露光パターンが鮮明となり、微細パターンを高精度に形成することが可能となる。
【0046】
本実施形態では、上記波長領域の光は、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)の複合光(多色光)であり、目的とする波長の光に対して180°の位相差を付与し得る厚みで位相シフト層13が形成される。上記目的とする波長の光はi線、h線及びg線のうち何れでもよいし、これら以外の波長領域の光でもよい。位相を反転するべき光が短波長であるほど微細なパターンを形成することができる。
【0047】
本実施形態では、i線に付与する位相差とg線に付与する位相差との差が30°以下となるような厚みで位相シフト層13を形成することができる。これにより、各波長の光に対して一定の位相シフト効果を得ることができる。例えば、上記複合波長のうち中間の波長領域であるh線に対して略180°(180°±10°)の位相差を付与し得る膜厚に位相シフト層を形成することができる。これにより、i線及びg線の何れの光に対しても180°に近い位相差を付与することができるため、各々の光について同様な位相シフト効果を得ることが可能となる。
【0048】
位相シフト層13の膜厚は、透明基板10の面内において均一であることが好ましい。
本実施形態では、g線、h線及びi線の各々の単一波長光について、基板面内における位相差の差分が20°以下となる膜厚差で、位相シフト層13が形成されている。当該位相差の差分が20°を越えると、複合波長における光強度の重ね合わせ効果により光強度の強弱が小さくなり、パターニング精度が低下してしまう。上記位相差の差分は、15°以下、更には10°以下とすることで、パターニング精度のより一層の向上を図ることができる。
【0049】
位相シフト層13の透過率は、例えばi線について1%以上20%以下の範囲とすることができる。透過率は0.5%以上であってもよい。透過率が0.5%未満の場合、十分な位相シフト効果が得られにくくなるため、微細なパターンを高精度に露光することが困難となる。また、透過率が20%を越える場合、成膜速度が低下し、生産性が悪化する。
上記の範囲において更に、透過率は、2%以上15%以下の範囲とすることができる。さらに、上記の範囲において透過率は、3%以上10%以下とすることができる。
【0050】
位相シフト層13の反射率は、例えば、40%以下とする。これにより、当該位相シフトマスクを用いた被処理基板(フラットパネル基板又は半導体基板)のパターニング時にゴーストパターンを形成し難くして良好なパターン精度を確保することができる。
【0051】
位相シフト層13の透過率及び反射率は、成膜時のガス条件によって任意に調整することができる。上述した混合ガス条件によれば、i線に関して1%以上20%以下の透過率、及び40%以下の反射率を得ることができる。透過率は0.5%以上であってもよい。
【0052】
位相シフト層13の厚みは、上述した光学特性が得られる範囲で適宜設定することができる。言い換えれば、位相シフト層13の厚みを最適化することにより、上述した光学的特性を得ることができる。例えば、上記ガス条件によって上記光学的特性を得ることができる位相シフト層13の膜厚は、例えば、100nm以上130nm以下である。この範囲においては更に、位相シフト層13の膜厚は、110nm以上125nm以下の範囲とすることができる。
【0053】
例を挙げると、スパッタ成膜時の混合ガスの流量比をAr:N
2:CO
2=71:21.5:120とし、膜厚を114nmとした場合、i線における透過率を3.10%、i線における位相差を180°、g線における透過率を7.95%、位相差を150°とすることができる。
【0054】
図2,
図3は、位相シフト層13の成膜時の成膜条件と、各波長成分の位相差及びi線の透過率との関係を示す実験結果を示している。本例では、窒化性ガスとしてN
2、酸化性ガスとしてCO
2、不活性ガスとしてArを用いた。成膜圧力は、0.4Paとした。
【0055】
実験例2に示すように、9.2%以上10.4%以下の酸化性ガスを含む混合ガスの条件においては、i線における透過率を3.10%、i線における位相差を180°、g線における透過率を7.95%とすることができる。また、i線に対して180°±10°の位相差を付与できる厚みに位相シフト層を形成することで、i線とh線とg線との間の透過率の差を5%以下に抑えることができる。さらに、i線の透過率を1%以上10%以下の範囲に設定することができる。
【0056】
これに対して、酸化性ガスが9.2%以上10.4%以下の範囲にない条件である実験例1においては、膜の酸化度が小さく、膜厚を大きくしてもi線とg線との間の透過率の差を必要な範囲内に設定することができなかった。実験例3および4では、透過率は低いものの、i線とg線の透過率差異が小さくすることができた。
【0057】
続いて、
図1(h)に示すように、位相シフト層13の上にフォトレジスト層14が形成される。フォトレジスト層14は、ポジ型でもよいしネガ型でもよい。フォトレジスト層14としては、液状レジストが用いられる。
【0058】
次に、
図1(j)(k)に示すように、フォトレジスト層14を露光及び現像することで、位相シフト層13の上にレジストパターン14P1が形成される。レジストパターン14P1は、位相シフト層13のエッチングマスクとして機能し、位相シフト層13のエッチングパターンに応じて適宜形状が定められる。
【0059】
続いて、
図1(m)に示すように、位相シフト層13が所定のパターン形状にエッチングされる。これにより、透明基板10上に所定形状にパターニングされた位相シフト層13P1が形成される。
【0060】
位相シフト層13のエッチング工程は、ウェットエッチング法又はドライエッチング法が適用可能であり、特に基板10が大型である場合、ウェットエッチング法を採用することによって面内均一性の高いエッチング処理が実現可能となる。
【0061】
位相シフト層13のエッチング液は、適宜選択可能であり、本実施形態では、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸の水溶液を用いることができる。このエッチング液は、ガラス基板との選択比が高いため、位相シフト層13のパターニング時に基板10を保護することができる。
【0062】
位相シフト層13P1のパターニング後、
図1(n)に示すように、レジストパターン14P1は除去される。レジストパターン14P1の除去には、例えば、水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
【0063】
以上のようにして、本実施形態に係る位相シフトマスク1が製造される。本実施形態の位相シフトマスク1によれば、遮光層パターン11P1の周囲に、上述した構成の位相シフト層13P1が形成されている。これにより、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)を含む複合波長の光を用いた被露光基板に対する露光パターンの形成時において、i線とh線とg線との間の透過率の差を5%以下に抑えて、位相シフト効果に基づくパターン精度の向上を図ることができ、微細かつ高精度なパターン形成が可能となる。特に本実施形態によれば、上記波長範囲において異なる波長の光(g線、h線及びi線)を複合化させた露光技術を用いることで、より顕著となる。
【0064】
以下、本実施形態に係る位相シフトマスク1を用いたフラットパネルディスプレイの製造方法について説明する。
【0065】
まず、絶縁層及び配線層が形成されたガラス基板の表面に、フォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層の形成には、例えばスピンコータが用いられる。フォトレジスト層は加熱(ベーキング)処理を施された後、位相シフトマスク1を用いた露光処理が施される。露光工程では、フォトレジスト層に近接して位相シフトマスク1が配置される。そして、位相シフトマスク1を介して300nm以上500nm以下のg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)を含む複合波長をガラス基板の表面に照射する。本実施形態では、上記複合波長の光に、g線、h線及びi線の複合光が用いられる。これにより、位相シフトマスク1のマスクパターンに対応した露光パターンがフォトレジスト層に転写される。
【0066】
本実施形態によれば、位相シフトマスク1は、i線とh線とg線との間の透過率の差を5%以下に抑えるとともに、300nm以上500nm以下の波長領域のいずれかの光に対して180°の位相差をもたせることが可能な位相シフト層13P1を有する。したがって、上記製造方法によれば、上記波長領域の光を用いることで位相シフト効果に基づくパターン精度の向上を図ることができ、さらに焦点深度を深くすることができるため、微細かつ高精度なパターン形成が可能となる。これにより、高画質のフラットパネルディスプレイを製造することができる。
【0067】
本発明者らの実験によれば、当該位相シフト層を有しないマスクを用いて露光した場合、目標とする線幅(2μm)に対して30%以上のパターン幅のずれが生じていたが、本実施形態の位相シフトマスク1を用いて露光した場合、7%程度のずれに抑えられることが確認された。
【0068】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法を説明する工程図である。なお、
図4において、
図1と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略するものとする。
【0069】
本実施形態の位相シフトマスク2(
図4(J))は、周辺部に位置合わせ用のアライメントマークを有し、このアライメントマークが遮光層11P2で形成されている。以下、位相シフトマスク2の製造方法について説明する。
【0070】
まず、透明基板10上に遮光層11が形成される(
図4(A))。次に、遮光層11の上にフォトレジスト層12が形成される(
図4(B))。フォトレジスト層12は、ポジ型でもよいしネガ型でもよい。続いて、フォトレジスト層12を露光及び現像することで、遮光層11の上にレジストパターン12P2が形成される(
図4(C))。
【0071】
レジストパターン12P2は、遮光層11のエッチングマスクとして機能し、遮光層11のエッチングパターンに応じて適宜形状が定められる。
図4(C)では、基板10の周縁の所定範囲内にわたって遮光層を残存させるべく、レジストパターン12P2を形成した例を示す。
【0072】
続いて、遮光層11が所定のパターン形状にエッチングされる。これにより、透明基板10上に所定形状にパターニングされた遮光層11P2が形成される(
図4(D))。遮光層11P2のパターニング後、レジストパターン12P2は除去される(
図4(E))。レジストパターン12P2の除去には、例えば、水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
【0073】
次に、位相シフト層13が形成される。位相シフト層13は、透明基板10の上に遮光層11P2を被覆するように形成される(
図4(F))。位相シフト層13は、酸化窒化クロム系材料からなり、DCスパッタリング法で成膜される。この場合、プロセスガスとして、窒化性ガス及び酸化性ガスの混合ガス、又は、不活性ガス、窒化性ガス及び酸化性ガスの混合ガスを用いることができる。位相シフト層13は、上述の第1の実施形態と同様な成膜条件で形成される。
【0074】
続いて、位相シフト層13の上にフォトレジスト層14が形成される(
図4(G))。
次に、フォトレジスト層14を露光及び現像することで、位相シフト層13の上にレジストパターン14P2が形成される(
図4(H))。レジストパターン14P2は、位相シフト層13のエッチングマスクとして機能し、位相シフト層13のエッチングパターンに応じて適宜形状が定められる。
【0075】
続いて、位相シフト層13が所定のパターン形状にエッチングされる。これにより、透明基板10上に所定形状にパターニングされた位相シフト層13P2が形成される(
図4(I))。位相シフト層13P2のパターニング後、レジストパターン14P2は除去される(
図4(J))。レジストパターン14P2の除去には、例えば、水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
【0076】
以上のようにして、本実施形態に係る位相シフトマスク2が製造される。本実施形態の位相シフトマスク2によれば、アライメントマークが遮光層11P2で形成されているので、アライメントマークを光学的に認識し易くなり、高精度な位置合わせが可能となる。
本実施形態は、上述の第1の実施形態と組み合わせて実施することができる。
【0077】
また、位相シフト層13は、ハーフトーン層(半透過層)として機能させることができる。この場合、位相シフト層13を透過した光と透過しない光とで露光量に差をもたせることが可能となる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0079】
例えば以上の第1の実施形態では、遮光層のパターニング後に位相シフト層の成膜及びパターニングを行うようにしたが、これに限られず、位相シフト層の成膜及びパターニングの後、遮光層の成膜及びパターニングを行ってもよい。すなわち、遮光層と位相シフト層との積層順を変更することが可能である。この場合、遮光層と位相シフト層との間にNi、Co、Fe、Ti、Si、Al、Nb、Mo、W及びHfから選択された少なくとも1種の金属を主成分とする不図示のエッチングストッパー層が設けられることが好ましい。
【0080】
また、以上の実施形態では、遮光層11を基板10の全面に成膜した後、必要部位をエッチングすることで遮光層11P1を形成したが、これに代えて、遮光層11P1の形成領域が開口するレジストパターンを形成した後、遮光層11を形成してもよい。遮光層11の形成後、上記レジストパターンを除去することにより、必要領域に遮光層11P1を形成することが可能となる(リフトオフ法)。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。