(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982019
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】光電センサ及び監視領域内の物体の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20160818BHJP
G01S 17/88 20060101ALI20160818BHJP
H03K 17/78 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01S17/88
H03K17/78 S
H03K17/78 R
H03K17/78 N
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-7561(P2015-7561)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2015-148605(P2015-148605A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2015年1月19日
(31)【優先権主張番号】10 2014 101 312.3
(32)【優先日】2014年2月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ウルリッヒ ニューブリング
【審査官】
三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/176362(WO,A1)
【文献】
特開2008−012109(JP,A)
【文献】
特開2013−083663(JP,A)
【文献】
特開2009−229458(JP,A)
【文献】
特開2008−249375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48− 7/51
G01S 17/00−17/95
G01C 3/00− 3/32
G01B 11/00−11/30
H03K 17/74−17/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域(18)内の物体を検出するための光電センサ(10)であって、発射光線(24)を送出するための発光器(20)と、台座ユニット(14)と、前記監視領域(18)内の物体により拡散反射された光(28)から受光信号を生成するための受光器(32)と、前記発射光線(24)により前記監視領域(18)を周期的に走査するために前記台座ユニット(14)に対して回転することが可能であり、内部に前記発光器(20)と前記受光器(32)が固定された走査ユニット(12)と、該走査ユニット(12)に含まれる第1の回路基板(34)と、前記受光信号に基づいて前記監視領域(18)内の物体に関する情報を得るための評価ユニット(42、50、52)とを備える光電センサ(10)において、
前記台座ユニット(14)は軸受(40)を備え、前記第1の回路基板(34)は該軸受(40)内で前記台座ユニット(14)に対して回転できるようにその外周部において支持されており、
前記第1の回路基板(34)が、前記台座ユニット(14)に対して前記走査ユニット(12)を回転させるための駆動部のロータとなっており、
モータコイル又は磁石が前記第1の回路基板(34)に統合されることにより該第1の回路基板(34)が駆動部の一部になっている
ことを特徴とする光電センサ(10)。
【請求項2】
前記第1の回路基板(34)が円形である請求項1に記載の光電センサ(10)。
【請求項3】
前記軸受(40)がリング軸受である請求項2の光電センサ(10)。
【請求項4】
前記第1の回路基板(34)が前記走査ユニット(12)のための担持体となっている請求項1〜3のいずれかに記載の光電センサ(10)。
【請求項5】
発光器(20)及び受光器(32)が前記第1の回路基板(34)上に配置されている請求項1〜4のいずれかに記載の光電センサ(10)。
【請求項6】
前記第1の回路基板(34)が前記台座ユニット(14)と前記走査ユニット(12)の間の非接触エネルギー伝送及び/又はデータ交換のためのインターフェイスユニット(38)を備えている請求項1〜5のいずれかに記載の光電センサ(10)。
【請求項7】
前記台座ユニット(14)が、前記駆動部のステータとなる第2の回路基板(42)を備えている請求項1〜6のいずれかに記載の光電センサ(10)。
【請求項8】
前記台座ユニット(14)が、前記走査ユニット(12)への非接触でのエネルギー供給及び/又はデータ交換を行うためのインターフェイスユニット(46)を有する第2の回路基板(42)を備えている請求項1〜7のいずれかに記載の光電センサ(10)。
【請求項9】
監視領域(18)内の物体の検出方法であって、発射光線(24)が送出され、台座ユニット(14)に対する走査ユニット(12)の回転運動により前記監視領域(18)が周期的に走査され、前記監視領域(18)内の物体により拡散反射された光から受光信号が生成され、該受光信号が前記監視領域(18)内の物体に関する情報の取得のために評価される方法において、
前記走査ユニット(12)の第1の回路基板(34)の外周部を、該第1の回路基板(34)を囲繞する軸受(40)によって支持することにより、前記回転運動が作り出され、
前記第1の回路基板(34)が、前記台座ユニット(14)に対して前記走査ユニット(12)を回転させるための駆動部のロータとなっており、
モータコイル又は磁石が前記第1の回路基板(34)に統合されることにより該第1の回路基板(34)が駆動部の一部になっていることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載の光電センサ、及び請求項10のプレアンブルに記載の監視領域内の物体の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水平方向に広い角度範囲を測定できるシステムが必要な距離測定には光電式のシステム、特にレーザスキャナが好適である。レーザスキャナでは、レーザにより生成された光線が偏向ユニットの作用により周期的に監視領域を塗りつぶすように掃引される。この光は監視領域内の物体により拡散反射され、スキャナ内で評価される。偏向ユニットの角度位置から物体の角度位置が推定され、更に光の通過時間と光速から、レーザスキャナから物体までの距離が推定される。
【0003】
これら角度と距離の情報から、監視領域における物体の場所が二次元極座標で検出される。これにより、各物体の位置を求めたり、また複数の位置で同一の物体を検知する場合にはその物体の輪郭を特定したりすることができる。更にまた、レーザスキャナ内で偏向ユニットに更なる運動の自由度を与えたり、レーザスキャナに対して物体を相対移動させたりする等の方法により、走査方向に交差する方向の相対移動を行うことで、第3の空間座標を検出することも可能である。このようにすれば三次元的な輪郭も計測できる。
【0004】
このような測定への応用の他、レーザスキャナは、例えば危険な機械に代表されるような、危険の発生源を監視するための安全技術にも用いられる。このような安全用レーザスキャナが特許文献1から知られている。そのレーザスキャナでは、機械の稼働中に操作者の進入が禁止された防護領域が監視される。例えば操作者の脚等、許可されない物の該領域への侵入を認識すると、レーザスキャナは機械の緊急停止を作動させる。安全技術用のセンサは特に確実に機能しなければならず、そのため、例えば、欧州規格EN13849(機械の安全に関する規格)やEN61496(非接触動作型防護装置(beruehrungslos wirkende Schutzeinrichtungen; BWS)に関する装置規格)等の高い安全要件を満たさなければならない。
【0005】
レーザスキャナにおける監視平面の走査は通常、発射光線を回転鏡に当てることにより行われる。発光器、受光器及びそれらに付随する電子機器及び光学系は装置内で固定されており、鏡と共に回転はしない。このように回転鏡を用いる場合、その回転軸に対して発光器と受光器の向きを非常に高い精度で決める必要がある。その向きがずれると監視平面が曲がってしまう。また、そのような光学ユニットはサイズが大きくなる。なぜなら、物体距離のうち鏡を介して受光光学系へと至る部分が必ず機器の内部まで延びるからである。また、前面ガラス自体やその汚れに起因して該前面ガラス上に生じる迷光の効果によりセンサ機能が損なわれることになる。
【0006】
回転鏡の代わりに一体駆動型の走査ユニットを用いることも知られている。例えば特許文献2に記載の装置では発光器と受光器を含む測定ヘッド全体が回転する。特許文献3の装置も同様に回転可能な発光・受光ユニットを備えている。この走査ユニットには、センサのうち回転しない領域から、例えば変圧の原理により電力が供給される。
【0007】
前記公知の各レーザスキャナでは、回転鏡又は走査ユニットが固定されたシャフトを持つモータによって回転運動が作り出される。このような古典的なモータ構造はシャフト用に2つの軸受部を必要とし、そのための構造空間を要する上、取り付けにもコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE 43 40 756 A1
【特許文献2】DE 197 57 849 B4
【特許文献3】EP 2 388 619 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、一体駆動型の走査ユニットを備えるセンサの構造を簡素化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載の光電センサ及び請求項10に記載の監視領域内の物体の検出方法により解決される。本発明のセンサは台座ユニットと走査ユニットという2つの部分から成る。レーザ光線により監視領域を周期的に走査するため、走査ユニットは台座ユニットに対して回転駆動され、監視領域からの前記レーザ光線の反響が評価される。台座ユニットは静止しており、センサのうち他の全ての動かない要素(例えばケーシング)を含む。ここで「静止している」又は「動かない」とは、センサの通常のカバー装置に対する関係を指しているが、例えば車両等の乗り物に搭載される移動可能なセンサ装置のように、センサ全体は動いてもよい。この場合、その乗り物が本発明に言う「静止した」カバー装置となる。本発明の基礎を成す技術思想は、走査ユニットの第1の回路基板を通じて該走査ユニットを回転させることにある。そのために第1の回路基板はその外周部において台座ユニットの軸受内に回転自在に支持されている。
【0011】
本発明には、1本のシャフトに対して、従来のようにモータ内に1つ、そしてシャフトと走査ユニットとの結合のために1つという、2つの軸受部を設けるのではなく、1つの軸受だけで済むという利点がある。軸受部を外周部に設けることで、軸受の直径が大きくなるため、軸受の遊びによる負の作用が幅広く抑えられる。発生する動力が軸受により問題なく受け取られる。本発明のセンサは、ケーシングと高度に一体化した簡単な構造を有しているため、特に構造が小さく、安価である。また、第1の回路基板の表面部分をシャフトとの結合に用いる必要がないため、その表面全体を利用することができる。
【0012】
第1の回路基板は円形であることが好ましい。この形状は回転運動及び外側の軸受部に特に適している。
【0013】
前記軸受はリング軸受であることが好ましい。このようにすると、第1の回路基板(ここでは円形である必要がある)がその外周全体を介して軸受内で支持される。そのためには簡単なリング軸受があれば十分であり、その等級に関する特別な要求事項はない。簡単な構成にも関わらず、発生する動力が十分に受け取られて分散されるため、回転が安定的かつ一様になる。その軽さと構造のサイズから、薄型リング軸受が好ましい。
【0014】
第1の回路基板は走査ユニットの担持体となっていることが好ましい。走査ユニットは、例えば発信器、受信器、付属の光学系、発光路と受光路との間の光路を分離するための鏡胴等を備えた完全な一体回転型の光学ヘッドとすることができる。これらの各素子は第1の回路基板により担持されているため、台座ユニットと走査ユニットの間の結合は外周部で軸受に支持された第1の回路基板のみによって行われる。
【0015】
発光器及び受光器が第1の回路基板上に配置されていることが好ましい。つまり、第1の回路基板に発光器と受光器を機械的に担持させるだけでなく、これらの素子を第1の回路基板に直接装備するのである。加えて、第1の回路基板は発光用及び受光用の電子機器(例えば発光器の駆動装置、増幅器)の少なくとも一部を含むことが可能であり、場合によっては他の制御及び評価要素まで含んでもよい。更に、走査ユニットに少なくとも1つの別の回路基板を設けることも考えられる。その場合、前記の各素子は複数の回路基板に分配される。
【0016】
第1の回路基板は台座ユニットと走査ユニットの間の非接触エネルギー伝送及び/又はデータ交換のためのインターフェイスユニットを備えていることが好ましい。このようにすれば、第1の回路基板は、走査ユニットに対する給電や制御並びに該ユニットからデータの読み出しを仲介する無線インターフェイスにもなる。
【0017】
第1の回路基板は台座ユニットに対して走査ユニットを回転させるための駆動部のロータとなっていることが好ましい。そのために、適宜のモータコイル又は磁石が第1の回路基板上に統合される。これにより、第1の回路基板自身が駆動部の一部となる。もはや専用のモータは存在せず、第1の回路基板がその役割も果たす。
【0018】
台座ユニットは駆動部のステータとなる第2の回路基板を備えていることが好ましい。ここでもまた、そのために必要なモータコイル又は磁石が今度は第2の回路基板上に統合される。このようにすれば、モータが非常にコンパクトで平らになる。
【0019】
台座ユニットは走査ユニットへの非接触でのエネルギー供給及び/又はデータ交換を行うためのインターフェイスユニットを有する第2の回路基板を備えていることが好ましい。そしてその回路基板が、駆動部のステータとなる回路基板と同一であればなお好ましい。このような第2の回路基板は、走査ユニットにエネルギーを供給したり、該ユニットを制御したり、データを読み出したりするための無線インターフェイスとして更なる追加的な役割を果たす。そして、駆動部自身は統合された追加機能となり、専用の部品が必要なくなる。更に、第2の回路基板は制御及び評価ユニットを含んでいてもよい。このように特にコンパクトに構成されたセンサ内に含まれるのは、両方の回路基板と、場合によって走査ユニット内に配置される光学系と、台座ユニット内に配置されることがある若干数の不可欠な追加の電子素子だけである。なお、一般に、電子的な機能部、特に制御及び評価ユニットは、走査ユニット及び/又は台座ユニット内の第1の回路基板、第2の回路基板及び他の基板の上にほぼ任意に分配することができる。
【0020】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に記載されているが、それらに限定されるものではない。
【0021】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、実施例に基づき、添付の図面を参照ながら詳しく説明する。図面の内容は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】回転する回路基板並びにその外周にある軸受部の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1はレーザスキャナとしての実施形態における光電センサ10の概略断面図である。物体検出用の光電センサの個々の要素の配置については他にも様々なものが考えられるが、それらも本発明に含まれる。特に、レーザスキャナの形態には他にも公知のものが多数あり、その各々を適宜変形することで本発明のレーザスキャナをそれぞれ得ることができる。従って、図の装置は単なる模範例であると理解すべきである。
【0024】
センサ10は大きく分けて、可動の走査ユニット12と、台座ユニット14とを含む。
図1中で走査ユニット12の境界を示している点線は単なる想像上の線であって、走査ユニット12自身のケーシングではない。それも確かに考えられるし、本発明に含まれるが、必須ではない。
【0025】
走査ユニット12は光学的な測定ヘッドである一方、台座ユニット14には、例えば給電部、評価用電子機器、接続部等の他の要素が収納されている。動作中、走査ユニット12は、監視領域18を周期的に走査するために、台座ユニット14に対し回転軸16を中心として回転駆動される。
【0026】
走査ユニット12において、発光器20が発光光学系22を用いて発射光線24を生成し、この光線が鏡26により方向転換されて監視領域18へと発射される。発射光線24が監視領域18において物体に当たると、それに応じた光線が反射光線28としてセンサ10へ戻ってくる。反射光線28は再び鏡26により方向転換され、受光光学系30により受光器32へと導かれて、そこで電気的な受光信号に変換される。
【0027】
発光器20と受光器32は、回転軸16に垂直になるように向けられた第1の回路基板34上に配置されている。更に第1の回路基板は図示しない制御及び評価ユニットの少なくとも一部を含むことができる。制御及び評価ユニットは、発射光線24の生成及び受光信号の評価に用いられる。
【0028】
第1の回路基板34は、発光器20及び受光器32とは反対側の裏面又は基板内部の層にモータコイル36又は磁石を備えている(図ではごく概略的にのみ描かれている)。そこからずれた位置に無線インターフェイスユニット38が設けられている。このユニットは、例えば容量型、誘導型、その他の任意の公知技術により、非接触で台座ユニット14からエネルギーを取り込んだり、非接触で台座ユニット14とデータ交換を行ったりする。ここではモータコイル36及びインターフェイス38の具体的な形態には詳しく立ち入らない。それゆえ、これらに関するいかなる配置の限定も
図1の描画から導き出してはならない。
【0029】
第1の回路基板34はその外周部においてリング軸受40の内側リング内に水平に支持されている。リング軸受40の外側リングは台座ユニット14内で固定されている。この構造により、第1の回路基板34はリング軸受40内で台座ユニット14に対して回転することができる。
図2はリング軸受40内の第1の回路基板34を上面から見た様子を補足的に示している。このように構成された第1の回路基板34は走査ユニット12の担持体となっている。なぜなら、回転可能に水平に支持されているのはこの第1の回路基板34であり、発光光学系22、受光光学系30及び鏡26は第1の回路基板34上で機械的に支持されているからである。
【0030】
台座ユニット14内には第2の回路基板42がある。第2の回路基板42は前記モータコイル36に対応して自らのモータコイル44又は磁石を備えている。その結果、2つの回路基板34、42自身が駆動部となっており、走査ユニット12内の第1の回路基板34がロータの役割を担い、台座ユニット14内の第2の回路基板42がステータの役割を担っている。従って、追加的な専用の駆動部はもはや必要ない。
【0031】
第2の回路基板42は更に無線インターフェイスユニット46を含んでいる。このユニットは第1の回路基板の無線インターフェイスユニット38とともに、走査ユニット12へ非接触でエネルギーを供給するための給電ユニット、及び/又は、好ましくは双方向の非接触データ通信インターフェイスを構成する。
【0032】
最後に、第2の回路基板42上には、図示せぬ別の電子機器もあり、これが第1の回路基板34の対応する電子機器と協同してセンサ10の制御及び評価ユニットを構成している。この点に関する走査ユニット12と台座ユニット14の間の機能配分は、本発明の様々な実施形態においてほぼ任意に変えることができる。その際、走査ユニット12が必要とするエネルギーが少なくなるように、そしてわずかな帯域でも無線データ転送ができるように配分を行うことが好ましい。
【0033】
動作中、制御及び評価ユニットは発光器20に光を発生させ、受光器32の受光信号を受け取り、更にそれを評価する。加えて該ユニットはモータコイル36、44を通じて回転運動を制御し、角度測定ユニット(図示せず)から信号を受け取る。角度測定ユニットは各時点における走査ユニット12の角度位置を特定するものであり、レーザスキャナの分野では周知である。評価のために、検知された物体までの距離を光通過時間法により測定することが好ましい。そのために、位相ベースのシステムでは、発光器20の出力する発射光が変調され、受光器32の出力する受光信号との位相関係が評価される。あるいはパルスベースのシステムの場合、幅の狭い光パルスが発射光として所定の発光時点に送出され、受光信号からその受光時点が算出される。パルスベースのシステムの場合、単発の発射パルスからその都度距離を求める個別パルス法と、多数回にわたり連続的に発射光を送出した後、受光信号を累積して統計的に評価するパルス平均法が考えられる。発射光線24がそれぞれ送出されたその都度の角度位置も前記角度測定ユニットにより同様に分かるため、走査ユニット12が1回転する度に、走査平面内における全ての対象点の2次元極座標が前記角度及び距離を通じて分かる。更に、走査ユニット12を傾動させれば監視領域18の3次元的な認識も可能である。
【0034】
こうして判明した物体の位置又は輪郭は、センサのインターフェイス48を通じて出力することができる。センサのインターフェイス48又は別の図示せぬ接続部は、逆にパラメータ設定用のインターフェイスとしても機能する。安全技術に応用する場合は、監視領域18内に設定可能な防護域への不許可の侵入を監視し、その結果から、必要に応じて、安全確保のための電源遮断信号を、安全に構成されたインターフェイス48(Output Signal Switching Device; OSSD)を通じて出力する。
【0035】
図3は光電センサ10の別の実施例の概略断面図である。
図1と同一の符号は同一の特徴部分を示している。このセンサ10と
図1のセンサとの違いは走査ユニット12の光学的な構造と追加の回路基板50、52とにある。これらの回路基板は第1の回路基板34又は第2の回路基板42を補うものであって、何度か言及した追加の回路基板の一例に過ぎない。
【0036】
この実施形態においては、発光器20及び受光器32の光軸が回転軸16に対して垂直な方向、つまり
図1に対して90度傾いた方向に向けられている。それゆえ、鏡26が不要である。その代わりに、回転軸16上に位置し、第1の回路基板34と電気的に接続された追加の回路基板50が設けられている。また、光学的な構成を変えることが可能であることを示すため、本実施例では、発光器20と受光器32が
図1のような同軸上ではなく並列に配置されており、発光光学系22及び受光光学系30として二重レンズが用いられている。
【0037】
同様に、台座ユニット14内には第2の回路基板42と電気的に接続された別の回路基板52がある。この回路基板52は、第2の回路基板42に十分な場所と容量がない場合に、その機能的な拡張部として利用される。実施形態によってはこの追加の回路基板52を省略してもよいし、逆により多くの回路基板を設けることもある。
【0038】
あらゆる実施形態において、発光器20は、例えば可視、紫外又は赤外領域内に波長を持つ光を発する半導体ダイオードのような簡単な光源として構成することができるが、他の実施形態においては、例えば複数の光源を一列又は行列状に配置したものであってよい。それに対応して受光器32も、フォトダイオードのように単純な受光面を持つものや、CCDやCMOSチップのように多数の受光素子を一列又は行列状に配列したものとすることができる。後者の場合、個別の走査光線だけでなく多数の受光光線が生じるから、それを用いて光通過時間法により2次元又は3次元画像データを取得することができる。原理的には走査ユニット12内でほぼ任意の形態のセンサユニットを回転させ、監視領域18を認識することができる。例えば、同一又は異なる物理的な測定原理で互いに補い合う複数のセンサユニットを異なる角度位置で配置してもよい。
【0039】
本発明に従って第1の回路基板34の外周部に軸受部を設けることにより、2つの軸受部を備える従来の意味での本来のモータシャフトを完全に無くすことができる。代わりに第1の回路基板34が、その表面に取り付けられたモータコイル36や、第1の回路基板34により担持された走査ユニット12の他の要素とともに、直接回転駆動される。リング軸受40が、第1の回路基板34を囲繞する唯一の大きな軸受を構成する。軸受の直径が大きいため、軸受の遊びによる作用が小さくなる。また、例えば比較的等級の低い薄型のリング軸受のような、非常に好都合な軸受で間に合わせることもできる。本実施形態のような軸受は、発生した動力をすべて非常に効率よく受け取ることができる。