(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
密閉されたチャンバ内において所望の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の各分割層毎に金属材料粉体を均一に撒布して形成される材料粉体層上の所定の照射領域にレーザ光を照射して焼結層を形成するレーザ照射装置と、
前記チャンバ内が常時所定濃度以上の不活性ガスで充満されているように前記チャンバに不活性ガスを供給するとともにヒュームを前記チャンバの外に排出する不活性ガス給排装置と、を備え、
前記不活性ガス給排装置は、
前記チャンバに不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、
前記チャンバから排出されたヒュームを含む不活性ガスを吸引する吸込部と、ヒュームを含む不活性ガスからヒュームを除去する集塵装置と、ヒュームが除去された不活性ガスを前記チャンバ内へ返送する排気部とを備えるヒュームコレクタと、
前記吸込部側と前記排気部側とに接続され、前記排気部側から前記吸込部側への不活性ガスの気流を形成し、前記チャンバ内へ返送される不活性ガスの流量を適量に制限するバイパスと、を含み、
前記チャンバと前記吸込部および前記排気部間の流路と、前記吸込部から前記集塵装置を通過し前記排気部へと通じる流路と、前記バイパス内の流路と、は同時に開放されていることを特徴とする、積層造形装置。
【背景技術】
【0002】
レーザ光による金属粉末焼結積層造形法においては、造形テーブル上に金属材料粉体を均一に撒布して材料粉体層を形成し、材料粉体層の所定箇所にレーザ光を照射して焼結させることによって焼結層を形成し、この焼結層の上に金属材料粉体を均一に撒布して新たな材料粉体層を形成し、その新たな材料粉体層にレーザ光を照射して焼結させることによって下の焼結層と接合した新たな焼結層を形成し、そしてこれらを繰り返すことによって、複数の焼結層を積層して一体となる焼結体からなる所望の三次元造形物を形成する。
【0003】
金属材料粉体をレーザ光によって焼結する場合は、金属材料粉体を変質させないように保護するとともに、所要のエネルギのレーザ光を安定して照射できるようにするために、所定の造形領域の周囲を可能な限り酸素が存在しない状態に維持することが要求される。そのため、レーザ光による金属粉末焼結積層造形法を実施するための積層造形装置は、密閉されたチャンバ内に窒素ガスのような不活性ガスを供給し、チャンバ内において酸素濃度が十分に低い雰囲気下で所定の照射領域にレーザ光を照射することができるように構成されている。
【0004】
また、金属材料粉体にレーザ光を照射して焼結させるときに、ヒュームと称される特有の煙が発生する。ヒュームがチャンバ内に充満すると、レーザ光を遮蔽して、所要のエネルギのレーザ光が焼結部位に届かなくなり、焼結不良が発生するおそれがある。
【0005】
そのため、レーザ光による積層造形法においては、チャンバ内を低酸素雰囲気に維持するとともに、チャンバ内からヒュームを除去する必要がある。特許文献1に開示されるように、チャンバ内に清浄な不活性ガスを供給するとともに、チャンバ内からヒュームを含む不活性ガスを排出する積層造形装置が知られている。また、特許文献1に係る積層造形装置においては、チャンバ外に排出されたヒュームを含む不活性ガスからヒュームを除去し、再度チャンバ内へと返送することでチャンバ内の不活性ガスを循環させている。このようにして、チャンバ内は清浄な不活性ガス雰囲気下に維持されるように構成される。
【0006】
また、不活性ガスからヒュームを除去する装置としては、ヒュームコレクタと呼ばれる集塵機が用いられる。特許文献2に開示されるように、吸排気および装置内部でのガスの循環を容易にするため、送風機により気流を生成する集塵機が公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
積層造形装置のチャンバは密閉されるように構成されるが、完全な気密性を得ることは困難であり、僅かな隙間から不活性ガスが漏出するとともに外部空気が流入する。そのため、積層造形中はチャンバ内が常時所定濃度以上の不活性ガスで充満されているように、不活性ガス供給装置によって不活性ガスの供給を行う必要がある。
【0009】
また、ヒュームコレクタ等に送風機を設け、循環する不活性ガスの風量が増えるよう気流を生成すれば、ヒュームコレクタ内部を通過する風量が増加するため、より短時間でヒュームを除去することができる。
【0010】
しかしながら、チャンバ内を循環する不活性ガスの風量が増えると、不活性ガスの供給口付近においては気圧が上昇し不活性ガスの外部漏出が促進されるともに、排出口付近においては気圧が低下しチャンバ内へ外部空気の流入が起こりやすくなる。そのため、不活性ガス供給装置の処理能力を超える流量の外部空気の流入が起こるとチャンバ内の不活性ガス濃度が低下して酸素濃度が許容値を上回る。不活性ガス供給装置の最大供給量には実用上の限界がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ヒュームコレクタ内部の風量を増加させヒュームの除去を効率的に行うと共に、ヒュームコレクタからチャンバ内へ返送される不活性ガスの量を適量に制限することで、ヒューム除去の効率化とチャンバ内の不活性ガス濃度の維持とを両立させた積層造形装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、密閉されたチャンバ内において所望の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の各分割層毎に金属材料粉体を均一に撒布して形成される材料粉体層上の所定の照射領域にレーザ光を照射して焼結層を形成するレーザ照射装置と、前記チャンバ内が常時所定濃度以上の不活性ガスで充満されているように前記チャンバに不活性ガスを供給するとともにヒュームを前記チャンバの外に排出する不活性ガス給排装置とを備え、前記不活性ガス給排装置は、前記チャンバに不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、前記チャンバから排出されたヒュームを含む不活性ガスを吸引する吸込部とヒュームを含む不活性ガスからヒュームを除去する集塵装置とヒュームが除去された不活性ガスを前記チャンバ内へ返送する排気部とを備えるヒュームコレクタと、前記吸込部側と前記排気部側とに接続され前記排気部側から前記吸込部側への不活性ガスの気流を形成し前記チャンバ内へ返送される不活性ガスの流量を適量に制限するバイパスと、を含む積層造形装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る積層造形装置においては、ヒュームコレクタの排気部側から吸込部側への不活性ガスの気流が形成されるように、吸込部側と排気部側とがバイパスで接続される。このようにすれば、ヒュームコレクタの集塵装置を通過した不活性ガスの一部または大部分が再度吸引部へと送出される。そのため、ヒュームコレクタ内部を通過する風量が増加するよう送風機を駆動させても、ヒュームコレクタからチャンバへと返送される不活性ガスの流量増加は抑えられる。すなわち、本発明に係る積層造形装置においては、ヒューム除去の効率化とチャンバ内の不活性ガス濃度の維持とが両立される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に説明される複数の各構成部材における変形例は、それぞれ任意に組み合わせて実施することができる。なお、以下の説明では、積層造形装置1の機械本機において、前チャンバ11の作業扉が設けられている側を前面または正面とし、前面に向かって右手側を右側面、左手側を左側面、後側を背面とする。図中の点線は、レーザ光Lの照射経路または信号線を示す。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態の積層造形装置1は、実質的に密閉されるように構成されたチャンバ10を備え、チャンバ10は、前チャンバ11と後チャンバ12に分かれている。前チャンバ11内に造形室111が設けられ、後チャンバ12内に駆動室121が設けられる。前チャンバ11の前面には、造形室111に連通する開口115が設けられ、開口115に図示しない覗窓付の作業扉が設けられている。造形室111と駆動室121は、伸縮可能なX軸蛇腹14で仕切られる。造形室111と駆動室121との間には、不活性ガスが通過できるだけのわずかな隙間である連通部15が存在している。また、積層造形装置1は、不図示のCAM装置において生成された造形データを受信し、この受信データに基づいて積層造形の制御を行う数値制御装置として制御装置27を備える。制御装置27は、後述する不活性ガス供給装置42およびヒュームコレクタ43の制御装置を兼ねる。
【0017】
チャンバ10内に駆動装置13が設けられる。駆動装置13は、ベース21上に配置されたベッド23に設置される。駆動装置13は、造形室111内に配置される加工ヘッド135をY軸方向に移動させるY軸駆動装置133と、Y軸駆動装置133をX軸方向に移動させるX軸駆動装置131で構成される。加工ヘッド135は、図示しないスピンドルを含んでなり、Z軸駆動装置によってZ軸方向に移動する。スピンドルは、エンドミルなどの回転切削工具を装着して回転させることができるように構成されている。以上の構成によって、回転切削工具を造形室111内の任意の位置に相対移動させて、焼結層に対して切削加工を施すことができるようになっている。この回転切削工具を用いて、所定数の焼結層が形成される度に、焼結層に対して切削加工を行ってもよい。また、リコータヘッド33が焼結層の隆起部に衝突したときにも、隆起部を除去するために焼結層に対して切削加工を行ってもよい。
【0018】
図2および
図3に示すように、前チャンバ11内に粉体層形成装置3が設けられる。粉体層形成装置3は、ベッド23の上に水平に固定され造形領域Rを有するベース台31と、ベース台31上に配置されかつ水平1軸方向(矢印B方向)に移動可能に構成されたリコータヘッド33と、リコータヘッド33の移動方向に沿って造形領域Rの両側に設けられた細長部材35,37とを備える。造形領域Rには、上下方向(矢印A方向)に移動可能な造形テーブル39が設けられる。積層造形装置の使用時には、造形テーブル39上に造形プレート5が配置され、その上に材料粉体層6が形成される。
【0019】
リコータヘッド33は、
図4および
図5に示すように、
図2に示される材料供給装置16から供給される材料粉体を貯留する材料収容部331と、材料収容部331の上面に設けられた材料供給部332と、材料収容部331の底面に設けられかつ材料収容部331内の金属材料粉体を排出する材料排出部333とを備える。材料排出部333は、リコータヘッド33の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向(矢印C方向)に延びるスリット形状である。リコータヘッド33の両側面には、材料排出部333から排出された金属材料粉体を平坦化して材料粉体層6を形成するブレード334,335が設けられる。金属材料粉体は、例えば平均粒径20μmの球形をなす鉄粉などの金属粉である。
【0020】
前チャンバ11の上方にはレーザ照射装置25が設けられ、レーザ照射装置25から出力されたレーザ光Lは、前チャンバ11に設けられたウィンドウ113を透過して造形領域Rに形成された材料粉体層6に照射される。レーザ照射装置25は、前チャンバ11内において所望の形状の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の分割層の各分割層毎に金属材料粉体を均一に撒布して形成される材料粉体層6上の所定の照射領域に所要のエネルギのレーザ光Lを照射して焼結層を形成する。レーザ照射装置25は、造形領域Rにおいてレーザ光Lを二次元走査可能に構成されていればよく、例えば、レーザ光Lを生成するレーザ光源と、レーザ光Lを造形領域Rにおいて二次元走査可能とする一対のガルバノスキャナとで構成される。レーザ光Lは、金属材料粉体を焼結可能なものであればその種類は限定されず、例えば、CO2レーザ、ファイバレーザ、YAGレーザなどである。ウィンドウ113は、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。例えば、レーザ光Lがファイバレーザ又はYAGレーザの場合、ウィンドウ113は石英ガラスで構成可能である。
【0021】
次に、不活性ガス給排装置4の不活性ガス供給系統とヒューム排出系統について説明する。実施形態の不活性ガス給排装置4は、ヒューム拡散装置41と、不活性ガス供給装置42と、ヒュームコレクタ43と、ダクトボックス45,46と、バイパス47とを含む。不活性ガス給排装置4は、チャンバ10が常時所定濃度以上の不活性ガスで充満されているように不活性ガスを供給するとともに、レーザ光Lの照射によって発生したヒューム25によって汚染された不活性ガスをチャンバ10の外に排出する。なお、本明細書において、不活性ガスとは、金属材料粉体と実質的に反応しないガスであり、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが例示される。
【0022】
また、不活性ガス給排装置4は、チャンバ1に設けられる複数の不活性ガスの供給口および排出口と、各供給口および各排出口と不活性ガス供給装置42およびヒュームコレクタ43とを接続する配管を含む。本実施例の供給口は、第1供給口481と、第2供給口482と、副供給口483と、ヒューム拡散装置供給口484と、駆動室供給口485からなる。本実施例の排出口は、第1排出口491と、第2排出口492と、第3排出口493と、第4排出口494と、副排出口495からなる。
【0023】
第1供給口481は、第1排出口491の設置位置に対応して第1排出口491に対面するように設けられる。望ましくは、第1供給口481は、リコータヘッド33が材料供給装置16の設置位置に対して所定の照射領域を挟んで反対側に位置しているときに第1排出口491と対面するように、矢印C方向に沿ってリコータヘッド33の片面に設けられる。
【0024】
第1排出口491は、前チャンバ11の側板に第1供給口481に対面するように所定の照射領域から所定距離離れて設けられる。また、第1排出口491に接続するように吸引装置496が設けられる。吸引装置496は、レーザ光Lの照射経路からヒューム7を効率よく排除することを助ける。また、吸引装置496によって、第1排出口491において、より多くの量のヒューム7を排出することができ、造形室111内にヒューム7が拡散しにくくなる。
【0025】
第2供給口482は、ベース21の端上に所定の照射領域を間に置いて第1排出口491に対面するように設けられる。第2供給口482は、リコータヘッド33が所定の照射領域を通過して第1供給口481が所定の照射領域を間に置かずに第1排出口491に直面する位置にあるとき、第1供給口481から第2供給口482に選択的に切り換えられて開放される。そのため、第2供給口482は、第1供給口481から供給される不活性ガスと同じ所定の圧力と流量の不活性ガスを第1排出口491に向けて供給するので、常に同じ方向に不活性ガスの流れを作り出し、安定した焼結を行なえる点で有利である。
【0026】
第2排出口492は、リコータヘッド33の第1供給口481が設けられている片面に対して反対側の側面に、矢印C方向に沿って設けられる。第1供給口481から不活性ガスを供給できないとき、換言すれば、第2供給口482から不活性ガスを供給するときに、所定の照射領域のより近くで不活性ガスの流れを作り出していくらかのヒューム7を排出するので、ヒューム7をより効率よくレーザ光Lの照射経路から排除することができる。
【0027】
不活性ガス給排装置4の不活性ガスの最大供給量を超えない範囲で、細長部材35,37にそれぞれ第3排出口493および第4排出口494が矢印B方向に沿って設けられる。所定の照射領域がより広く造形領域の前側または奥側の端にレーザ光の照射スポットがある場合は、第1供給口481または第2供給口482から第1排出口491までの間に形成される不活性ガスの流れにヒューム7が乗り切れずに漂流するおそれがある。第3排出口493および第4排出口494により、ヒューム7をより効率よく排出することができる。
【0028】
また、実施の形態の不活性ガス給排装置4は、第1排出口491に対面するように前チャンバ11の側板に設けられヒュームコレクタ43から送給されるヒューム7が除去された清浄な不活性ガス8を造形室111に供給する副供給口483と、前チャンバ11の上面に設けられヒューム拡散装置41へ不活性ガスを供給するヒューム拡散装置供給口484と、後チャンバ12に設けられ駆動室121へ不活性ガスを供給する駆動室供給口485と、第1排出口491の上側に設けられ前チャンバ11の上側に残留するヒューム7を多く含む不活性ガスを排出する副排出口495とを備える。
【0029】
前チャンバ11の上面には、ウィンドウ113を覆うようにヒューム拡散装置41が設けられる。ヒューム拡散装置41は、
図6および
図7に示すように、円筒状の筐体411と、筐体411内に配置された円筒状の拡散部材412を備える。筐体411と拡散部材412の間に不活性ガス供給空間413が設けられる。また、筐体411の底面には、拡散部材412の内側に開口部414が設けられる。拡散部材412には多数の細孔415が設けられており、ヒューム拡散装置供給口484を通じて不活性ガス供給空間413に供給された清浄な不活性ガス8は細孔415を通じて清浄空間416に充満される。そして、清浄空間416に充満された清浄な不活性ガス8は、開口部414を通じてヒューム拡散装置41の下方に向かって噴出される。この噴出された清浄な不活性ガス8は、レーザ光Lの照射経路に沿って流れ出てレーザ光Lの照射経路からヒューム7を排除し、ウィンドウ113がヒューム7によって汚れることを防止する。
【0030】
チャンバ10への不活性ガス供給系統には、不活性ガス供給装置42と、ヒュームコレクタ43が接続されている。不活性ガス供給装置42は、不活性ガスを供給する機能を有し、例えば、周囲の空気から窒素ガスを取り出す膜式窒素セパレータを備える装置である。実施の形態の不活性ガス供給装置42は、第1供給口481および第2供給口482を通じて不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給装置421と、ヒューム拡散装置供給口484および駆動室供給口485を通じて不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給装置422とからなる。第1不活性ガス供給装置421としては、不活性ガスの濃度を管理可能なものが好ましい。第2不活性ガス供給装置422は、第1不活性ガス供給装置421と同様の構成の装置であってもよいが、造形領域Rから比較的離れた位置にある供給口と接続され比較的不活性ガス濃度管理の重要性が低いので、不活性ガスの濃度を管理する機能を有していなくてもよい。ヒュームコレクタ43は、例えば、コロナ放電により不活性ガス中のヒューム7に電荷を与え、静電引力によってヒューム7を捕集する電気集塵機である。ヒュームコレクタ43は、その上流側及び下流側にそれぞれダクトボックス45,46を有する。前チャンバ11から排出されたヒューム7を含む不活性ガスは、ダクトボックス45を通じてヒュームコレクタ43に送られ、ヒュームコレクタ43においてヒューム7が除去された清浄な不活性ガス8がダクトボックス46を通じて前チャンバ11の副供給口483へ送られる。このような構成により、不活性ガスの再利用が可能になっている。
【0031】
不活性ガス供給系統として、
図1および
図2に示すように、第1不活性ガス供給装置421と、第1供給口481および第2供給口482とがそれぞれ接続され、第2不活性ガス供給装置422と、駆動室供給口485とがそれぞれ接続される。また、ヒュームコレクタ43と副供給口483とがダクトボックス46を通じて接続される。第1不活性ガス供給装置421および第2不活性ガス供給装置422は、制御装置27を通して制御バルブが所定量開放されることによって、所定の圧力と流量の清浄な不活性ガスを前チャンバ11および後チャンバ12へそれぞれ供給する。後チャンバ12内に供給された不活性ガスは、造形室111と駆動室121との間の連通部15を通じて造形室111内に供給される。
【0032】
また、実施の形態の積層造形装置1においては、開口115に設けられる作業扉が開かれた場合は、図示しない作業扉の開閉を検出する扉検知器によって制御装置27は作業扉が開いていることを検出し、第1不活性ガス供給装置421を停止するが、第2不活性ガス供給装置422は、不活性ガスを供給し続けるようにされている。作業扉が開いているときは、造形室111に不活性ガスを供給しても大気中に拡散してしまうので、作業扉が開いているときに造形室111への不活性ガスの供給を停止することによって、不活性ガスの無駄な供給を抑制することができる。
【0033】
ヒューム排出系統として、
図1および
図2に示すように、第1排出口491、第2排出口492、第3排出口493、第4排出口494および副排出口495とヒュームコレクタ43とがダクトボックス45を通じてそれぞれ接続される。ヒュームコレクタ43においてヒューム7が取り除かれた後の清浄な不活性ガス8は、前チャンバ11へと返送され再利用される。
【0034】
ここで、
図8に基づきヒュームコレクタ43およびバイパス47の構成をより詳細に説明する。ヒュームコレクタ43は、ヒューム排出系統との接続口となる吸込口431と、前チャンバ11から排出されたヒューム7を含む不活性ガスを吸引する吸込部433と、ヒュームコレクタ本体440と、ヒューム7が除去された不活性ガスを前チャンバ11内へ返送する排気部435と、不活性ガス供給系統との接続口となる排気口437とを備える。ヒュームコレクタ本体440は、プラスに荷電された針形状の荷電極443とアース接続された対向電極444とが対向配置されている荷電部442と、プラスに荷電された正極板446とアース接続された集塵板447とが交互に設けられる集塵部445とを有する集塵装置441を備える。好適には、ヒュームコレクタ43は、ヒュームコレクタ内部の不活性ガスを効率的に循環させるための送風機として、ファンモータ439をさらに備える。なお、
図8における白抜矢印は不活性ガスの気流の風向と流量を模式的に示している。
【0035】
吸込部433と排気部435とを接続するように、バイパス47が設けられる。バイパス47は、吸込部433とヒュームコレクタ本体440間の開口面積が吸込部433とバイパス47間の開口面積よりも大きくなるように構成されるとともに、排気部435とバイパス47間の開口面積が排気部435と排気口437間の開口面積よりも大きくなるように構成される。開口面積がより大きい方が流体抵抗は低下するため、バイパス47内には排気部435から吸込部433へと流れる不活性ガスの気流が形成される。なお、以下において、バイパス47内における排気部435から吸込部433方向の不活性ガスの気流をバイパス気流という。
【0036】
ヒューム排出系統は、ヒュームコレクタ43の吸込口431と接続され、ヒューム7を含んだ不活性ガスが吸込口431から吸込部433を経由して、ヒュームコレクタ本体440へと送られる。ヒュームコレクタ本体440の集塵装置441では、まず不活性ガスに含まれるヒューム7が、荷電部442において荷電極443と対向電極444間に生じるコロナ放電によりプラスに荷電される。プラスに荷電されたヒューム7が集塵部445を通過する際、ヒューム7はクーロン力により正極板446に反発し、集塵板447に捕集される。集塵装置441によりヒューム7を除去された不活性ガスは、ヒュームコレクタ本体440から排気部435へと送られる。このとき、不活性ガスの一部または大部分は、バイパス気流となりバイパスを通じて吸込部433へ戻される。吸込部433へと戻された不活性ガスは、再度ヒュームコレクタ本体440へと送られ、前述の集塵工程を繰り返す。吸込部433へ戻されなかった残りの清浄な不活性ガス8は、排気口437と接続された不活性ガス供給系統へと送られ、ダクトボックス46を経由して、副供給口483から前チャンバ11内へと返送される。
【0037】
以上のような構成によって、ファンモータ439などによりヒュームコレクタ43内を循環する不活性ガスの流量を増加させても、ヒュームコレクタ43からチャンバ10へと返送される不活性ガスの流量は抑えられ、チャンバ10における不活性ガス濃度の低下は抑制される。
【0038】
実施形態の積層造形装置1のように、切削加工を行うための駆動装置13を備える積層造形装置1においては、駆動装置13を設置するためにチャンバ10がより大きくなる。チャンバ10が大きくなるとヒューム7の排出効率が低下する。ゆえに、駆動装置13を備える積層造形装置1においては、不活性ガス濃度を維持しつつヒューム7除去を効率化させることができる本発明はより有用である。
【0039】
なお、本実施例においては、バイパス47の両端はヒュームコレクタ43の吸込部433と排気部435とに接続されているが、バイパス47は、チャンバ10からヒュームコレクタ43へと送られる吸込部433側の不活性ガスの流路と、ヒュームコレクタ43からチャンバ10へと返送される排気部435側の不活性ガスの流路とが接続されるように設けられればよい。例えば、バイパス47の両端が、積層造形装置1の前チャンバ11における副供給口483と副排出口495とに接続されるように構成してもよい。
【0040】
また、本実施例においては、流体抵抗差を利用してバイパス気流を形成したが、他の構成によってバイパス気流を形成してもよい。例えば、送風機といった機械的なバイパス気流形成手段をさらに設けてもよい。
【0041】
ヒュームコレクタ43は不活性ガスからヒューム7を除去する装置であれば、本実施例において示した構成に限定されない。例えば、針形状の荷電極443の代わりに金属細線を用いてもよいし、荷電部442においてヒューム7にマイナスの荷電を行うよう構成してもよい。
【0042】
本発明は、すでにいくつかの例が具体的に示されているように、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形または応用が可能である。
【解決手段】材料粉体層6上の所定の照射領域にレーザ光Lを照射して焼結層を形成するレーザ照射装置25と、チャンバ10に不活性ガスを供給するとともにヒュームをチャンバ10の外に排出する不活性ガス給排装置4とを備え、不活性ガス給排装置4は、チャンバ10に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、チャンバ10から排出されたヒュームを含む不活性ガスを吸引する吸込部とヒュームを含む不活性ガスからヒュームを除去する集塵装置とヒュームが除去された不活性ガスをチャンバ内へ返送する排気部とを備えるヒュームコレクタ43と、吸込部側と排気部側とに接続され排気部側から吸込部側への不活性ガスの気流を形成しチャンバ10内へ返送される不活性ガスの流量を適量に制限するバイパス47と、を含む積層造形装置1。