(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5982052
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】複合糸および手術用ガーゼ
(51)【国際特許分類】
D02G 3/44 20060101AFI20160818BHJP
A61F 13/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
D02G3/44
A61F13/00 301Z
A61F13/00 301S
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-218635(P2015-218635)
(22)【出願日】2015年11月6日
【審査請求日】2016年4月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598007263
【氏名又は名称】茶久染色株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今枝 憲彦
【審査官】
福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−261145(JP,A)
【文献】
特開2013−189718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00−3/48
D02J 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材にICチップとアンテナとが実装されたインレットを備えるRFタグと、
上記インレットの長手方向の長さよりも長く形成されるとともに上記RFタグを内部に保持するテープ材を備え、該テープ材が糸状に圧縮された状態とされている芯線と、
該芯線の外周を被覆する被覆糸と、
を有する、複合糸。
【請求項2】
上記テープ材は、撚り合わされることなく糸状に圧縮された状態とされている、請求項1に記載の複合糸。
【請求項3】
上記テープ材は、第1テープ部と第2テープ部とを備え、
上記第1テープ部と上記第2テープ部とにより上記RFタグが挟持されている、請求項1または2に記載の複合糸。
【請求項4】
上記テープ材は、上記第1テープ部の一部と上記第2テープ部の一部とが接合されてなる接合部を有しており、該接合部により上記テープ材の内部に上記RFタグが固定されている、請求項3に記載の複合糸。
【請求項5】
上記テープ材は、不織布または樹脂フィルムより構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合糸。
【請求項6】
上記被覆糸は、上記芯線の外周に編み込まれている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合糸。
【請求項7】
上記被覆糸は、上記芯線の外周に巻回されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合糸。
【請求項8】
上記RFタグは、上記ベース基材における実装面側の表面に貼り合された保護基材を備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合糸。
【請求項9】
上記保護基材は、基材本体層と、該基材本体層の上記ベース基材側に形成された粘着層とを有しており、上記基材本体層の材質は、二軸延伸ポリプロピレン、および、ポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される1種である、請求項8に記載の複合糸。
【請求項10】
上記芯線または上記被覆糸は、造影糸を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合糸。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の複合糸を有する、手術用ガーゼ。
【請求項12】
経糸と緯糸とを有しており、上記経糸の1つに上記複合糸が用いられている、請求項11に記載の手術用ガーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合糸および手術用ガーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICチップとアンテナとを有するRFタグを用いる無線通信技術であるRFIDの応用開発が種々の分野で行われている。例えば、医療分野では、識別情報を記録したRFタグを手術用ガーゼに取り付けることにより、手術用ガーゼの使用枚数等を正確に把握し、ガーゼ遺残の防止を図ろうとする取り組みがなされている。この種の手術用ガーゼとしては、RFタグを挟み込んだ不織布をガーゼ本体の一方面に溶着により一体化したもの(特許文献1参照)が上市されている。
【0003】
また、例えば、衣類の分野では、RFタグを担持させた複合糸を衣類に取り付け、これにより衣類を管理する提案がなされている。この種の複合糸としては、例えば、特許文献2に、糸表面に無電解めっきによるアンテナを形成した後、ICチップを取り付けた支持体を糸本体にらせん状に巻き付け、支持体の端子部分をアンテナに接着した後、これを保持糸でカバーリングしてなる複合糸が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−212219号公報
【特許文献2】特開2013−189718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、以下の点で課題がある。すなわち、RFタグを挟み込んだ不織布をガーゼ本体表面に溶着して一体化する技術によれば、RFタグの取り付け部分がその周囲よりも明らかに硬くなる。そのため、デリケートな臓器に触れる手術用ガーゼとしては使いづらい。
【0006】
一方、従来の複合糸は、カバーリングした保持糸の隙間から外部にICチップが露出するおそれがある。ICチップは、硬くて角があるものが多い。そのため、上記複合糸を手術用ガーゼに適用した場合には、使用時に露出したICチップが臓器に触れるおそれがある。それ故、上記複合糸を手術用ガーゼに適用するのは難しい。
【0007】
さらに、上記複合糸は、糸表面に無電解めっき処理を施したり、ICチップを取り付けた支持体の端子部分を、糸表面のアンテナと接触するように正確に巻き付けたりするなど、複雑な製造工程が必要となる。そのため、上記複合糸は、生産性に劣る。
【0008】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、柔らかく、ICチップが外部に露出し難く、生産性の高い複合糸、これを用いた手術用ガーゼを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ベース基材にICチップとアンテナとが実装されたインレットを備えるRFタグと、
上記インレットの長手方向の長さよりも長く形成されるとともに上記RFタグを内部に保持するテープ材を備え、該テープ材が糸状に圧縮された状態とされている芯線と、
該芯線の外周を被覆する被覆糸と、
を有する、複合糸にある。
【0010】
本発明の他の態様は、上記複合糸を有する手術用ガーゼにある。
【発明の効果】
【0011】
上記複合糸は、上述した構成の芯線を有している。この芯線は、RFタグを内部に保持するテープ材が糸状に圧縮された状態とされているため、柔らかい。特に、芯線のうち、RFタグの保持部分以外の部分は、RFタグが内部にないため、より柔らかい。また、上記複合糸は、糸形状を呈しているため、手術用ガーゼ表面に溶着して一体化する必要がなく、手術用ガーゼを構成する糸として使用することができる。そのため、上記複合糸によれば、RFタグを有さない手術用ガーゼと比べても遜色のない柔らかさで使いやすく、かつ、RFIDに対応した手術用ガーゼを得ることができる。
【0012】
また、上記複合糸は、芯線の内部にRFタグが保持されている上、芯線の外周が被覆糸で被覆されている。そのため、上記複合糸は、RFタグのICチップが外部に露出するのを抑制することができる。
【0013】
さらに、上記複合糸は、例えば、RFタグを内部に保持するテープ材の外周に被覆糸を被覆することにより、テープ材が糸状に圧縮された状態の芯線を比較的簡単に形成することができる。そのため、上記複合糸は、従来の複合糸のような複雑な製造工程が不要となり、生産性に優れる。
【0014】
上記手術用ガーゼは、上記複合糸を有している。そのため、上記手術用ガーゼは、RFタグを有さない手術用ガーゼと比べても遜色のない柔らかさで使いやすく、かつ、RFIDに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1の複合糸を模式的に示した説明図である。
【
図2】
図1のII−II線断面を模式的に示した説明図であり、(a)は実施例1の複合糸の断面図、(b)は(a)の変形例である。
【
図3】実施例1の複合糸において、糸状に圧縮された状態とされる前のテープ材を分解して模式的に示した説明図である。
【
図4】
図3に示されるRFタグのIV−IV線断面である。
【
図5】実施例1の複合糸において、糸状に圧縮された状態とされる前のテープ材の外観を模式的に示した説明図である。
【
図6】
図4のVI−VI線断面を模式的に示した説明図である。
【
図7】実施例2の手術用ガーゼを模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記複合糸において、RFタグは、ベース基材にICチップとアンテナとが実装されたインレットを備えている。ベース基材は、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)などより構成することができる。
【0017】
上記複合糸において、RFタグは、具体的には、例えば、ベース基材における実装面側の表面に貼り合された保護基材を備える構成とすることができる。この場合には、保護基材によりICチップ、アンテナが覆われるため、ICチップ、アンテナが薬品によって侵され難くなる。そのため、複合糸の耐薬品性を向上させることができる。
【0018】
とりわけ、保護基材は、基材本体層と、この基材本体層のベース基材側に形成された粘着層とを有しており、基材本体層の材質が、二軸延伸ポリプロピレン、および、ポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される1種であることが好ましい。この場合には、ICチップ、アンテナが漂白剤によって侵され難くなる。そのため、この複合糸を手術用ガーゼに適用した場合には、ガーゼ製造時における漂白時に、ICチップ、アンテナが漂白剤によって侵され難いため、手術用ガーゼに好適な複合糸が得られる。また、保護基材が粘着層を有することにより、ベース基材と保護基材との密着が高まり、ICチップ、アンテナの密封性が向上する。そのため、複合糸の漂白剤に対する耐性向上に有利である。また、ベース基材に保護基材の粘着層を貼り合わせるだけで、ベース基材に保護基材を密着させることができるので、複合糸の生産性向上にも有利である。基材本体層の材質は、比較的低コストで漂白剤に対する耐性が高い観点から、二軸延伸ポリプロピレンであるとよい。
【0019】
上記複合糸において、テープ材は、具体的には、撚り合わされることなく糸状に圧縮された状態とされていることが好ましい。この場合には、テープ材が幅方向内方に縮められているため、芯線を柔らかくしやすい。そのため、この場合には、テープ材が撚り合わされて糸状に圧縮された状態とされている場合に比べ、柔らかい複合糸を得やすい。また、テープ材が撚り合わされると、テープ材が捻じれて長手方向で縮みやすくなり、上記複合糸の製造時に、芯線方向のRFタグの位置制御が難しくなる。これに対し、テープ材が撚り合わされることなく糸状に圧縮された状態とされている場合には、テープ材が捻じれて縮むこともないので、芯線方向のRFタグの位置制御が容易な複合糸が得られる。また、この場合には、撚り合わせ工程も不要となるため、この観点からも生産性の向上に有利な複合糸が得られる。
【0020】
上記複合糸において、テープ材は、第1テープ部と第2テープ部とを備え、第1テープ部と第2テープ部とによりRFタグが挟持されている構成とすることができる。この場合には、例えば、第1テープ部の一方表面にRFタグを配置し、第2テープ部を重ね合わせることにより、RFタグを内部に保持するテープ材を比較的簡単に構成することができる。そのため、この場合には、生産性の高い複合糸を得やすくなる。
【0021】
上記複合糸において、テープ材が第1テープ部および第2テープ部を有する場合、テープ材は、第1テープ部の一部と第2テープ部の一部とが接合されてなる接合部を有しており、この接合部によりテープ材の内部にRFタグが固定されている構成とすることができる。この場合には、接合部によりRFタグの位置ずれを抑制することができるので、必要な位置にRFタグが確実に配置された複合糸を得やすくなる。
【0022】
上記複合糸において、テープ材は、具体的には、例えば、不織布または樹脂フィルムより構成することができる。この場合には、テープ材を糸状に圧縮された状態としやすい。テープ材は、好ましくは、不織布より構成されているとよい。この場合には、テープ材を糸状に圧縮された状態としやすいうえ、テープ材が樹脂フィルムで構成されている場合に比べ、より柔らかい複合糸を得やすくなる。なお、上述した第1テープ部、第2テープ部としては、具体的には、テープ状に形成された不織布または樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0023】
不織布は、より具体的には、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどより構成することができる。また、樹脂フィルムは、より具体的には、例えば、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、二軸延伸ポリプロピレンなどより構成することができる。
【0024】
上記複合糸において、被覆糸は、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリアミド、綿などより構成することができる。被覆糸は、具体的には、例えば、芯線の外周に編み込まれていてもよいし、芯線の外周に巻回されていてもよい。好ましくは、前者である。被覆糸が芯線の外周に巻回されると、芯線が捻じれて長手方向で縮む場合があり、上記複合糸の製造時に、芯線方向のRFタグの位置制御が難しい場合がある。これに対し、被覆糸が芯線の外周に編み込まれている場合には、芯線が縮み難くなるため、芯線方向のRFタグの位置制御が容易な複合糸を得やすくなる。なお、被覆糸は、具体的には、例えば、芯線の外周に、リリアン編みにて編み込まれた構造とすることができる。この場合には、被覆糸のカバリング時に、比較的簡単に被覆糸によってテープ材が幅方向内方に縮められるため、テープ材が糸状に圧縮された状態とされた芯線を得やすくなる。なお、被覆糸は、1本、2本、またはそれ以上の本数より構成することができる。
【0025】
上記複合糸において、芯線または被覆糸は、造影糸を含む構成とすることができる。この場合には、X線透過装置により上記複合糸の位置を特定することが可能となる。そのため、この場合には、従来の手術用ガーゼにおける造影糸を、上記複合糸に代替えするだけで、RFIDに対応した手術用ガーゼが得られる。
【0026】
上記複合糸の用途としては、手術用ガーゼ以外にも、具体的には、例えば、クリーニング等における衣類の管理、在庫管理、入退室管理などが挙げられる。
【0027】
上記手術用ガーゼは、具体的には、例えば、経糸と緯糸とが織り込まれて形成されており、経糸の1つに上記複合糸が用いられている構成とすることができる。この場合には、ガーゼ製造時に、緯糸として上記複合糸を飛ばす必要がないので、製造性に優れたRFID対応の手術用ガーゼが得られる。
【0028】
上記手術用ガーゼは、上記複合糸以外にも、公知の造影糸を有することができる。なお、上述したように、上記複合糸として造影糸を含むものを用いた場合には、従来の手術用ガーゼにおける造影糸を、上記複合糸に代替えするだけでRFIDに対応した手術用ガーゼが得られる。
【0029】
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例の複合糸および手術用ガーゼについて、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0031】
(実施例1)
実施例1の複合糸について、
図1〜
図6を用いて説明する。
図1〜
図6に示されるように、本例の複合糸1は、RFタグ2と、芯線3と、被覆糸4とを有する。
【0032】
RFタグ2は、ベース基材201にICチップ202とアンテナ203とが実装されたインレット20を備えている。本例では、インレット20は、短冊状のベース基材201の表面に導電性ペースト(アルミニウム、銅、銀等)を用いてアンテナ203が印刷されている。ベース基材201の材質は、ポリエステルである。アンテナ203の長手方向の中央部にRFID用のICチップが搭載されている。なお、この種のインレット20としては、例えば、日立化成社の「IM5−DIN6004−R」を用いることができる。
【0033】
また、本例では、RFタグ2は、ベース基材201における実装面側の表面に貼り合された保護基材204を備えている。保護基材204は、基材本体層204aと、この基材本体層204aのベース基材201側に形成された粘着層204bとを有している。基材本体層204aの材質は、具体的には、二軸延伸ポリプロピレンである。なお、この種の保護基材204としては、例えば、OPPテープ(寺岡製作所社製、「465#40」)などを用いることができる。なお、
図3では、保護基材204が透明であるため、ベース基材201と保護基材204との間に存在するICチップ202、アンテナ203が保護基材204の表面に透けて見える様子が描かれている。
【0034】
芯線3は、RFタグ2を内部に保持するテープ材30を備えている。テープ材30は、テープ状(帯状)に形成された材料である。テープ材30は、インレット20の長手方向の長さよりも長く形成されている。なお、糸状に圧縮された状態とされる前のテープ材30のテープ幅は、インレット20の挟持のしやすさ、糸形成性、糸径などの観点から、10〜25mm程度とすることができ、本例では、20mmとされている。
【0035】
芯線3では、テープ材30は、糸状に圧縮された状態とされている。本例では、テープ材30は、撚り合わされることなく糸状に圧縮された状態とされている。テープ材30は、概略、
図2(a)のようにテープ幅方向で縮められることにより、糸状に丸められている。なお、
図2において、テープ材30の長手方向は、紙面に垂直な方向である。また、
図2(b)は、変形例の一つを例示したものである。テープ材30は、
図2に示されるように、芯線3の柔らかさを増す観点から、空隙300を含むように糸状に圧縮されているとよい。
【0036】
本例では、テープ材30は、第1テープ部301と第2テープ部302とを備えている。第1テープ部301および第2テープ部302は、いずれもポリエステル製の不織布より構成されている。RFタグ2は、第1テープ部301と第2テープ部302とにより挟持されている。
【0037】
なお、本例では、複合糸1は、芯線3に複数のRFタグ2を含んでいる。各RFタグ2は、芯線3の長手方向に所定距離隔てて配置されている。具体的には、各RFタグ2は、手術用ガーゼの経糸方向または緯糸方向の幅と同じ長さを一区切りとしてテープ材30が長手方向に区切られた場合に、各一区切りに対してRFタグ2が1つずつ含まれるように配置されることができる。そのため、本例の複合糸1は、上記一区切りの長さで切断されることにより、RFタグ2を1つ含む複合糸1を採取可能とされている。
【0038】
本例では、テープ材30は、第1テープ部301の一部と第2テープ部302の一部とが接合されて形成された接合部303を有している。RFタグ2は、接合部303によりテープ材30の内部に固定されている。接合部303は、具体的には、テープ材30の長手方向に垂直な方向にRFタグ2を跨ぐように延びており、テープ材30の長手方向に複数配置されている。本例では、接合部303は、第1テープ部301と第2テープ部302とによりRFタグ2が挟持された状態で、第1テープ部301の一部と第2テープ部302の一部とが溶着されることによって形成されたものである。
【0039】
被覆糸4は、芯線3の外周を被覆している。本例では、被覆糸4の材質は、具体的には、ポリエステルである。被覆糸4は、芯線3の外周に編み込まれている。編み構造は、具体的には、リリアン編みである。
【0040】
複合糸1は、例えば、以下のようにして製造することができる。RFタグ2を内部に保持するテープ材30を準備する。テープ材30の外周に被覆糸4を被覆しながら、被覆糸4によってテープ材30をテープ幅方向に縮めて糸状に圧縮する。これにより、複合糸1を得ることができる。
【0041】
複合糸1は、上述した構成の芯線3を有している。この芯線3は、RFタグ2を内部に保持するテープ材30が糸状に圧縮された状態とされているため、柔らかい。特に、芯線3のうち、RFタグ2の保持部分以外の部分は、RFタグ2が内部にないため、より柔らかい。また、複合糸1は、糸形状を呈しているため、手術用ガーゼ表面に溶着して一体化する必要がなく、手術用ガーゼを構成する糸として使用することができる。そのため、複合糸1によれば、RFタグ2を有さない手術用ガーゼと比べても遜色のない柔らかさで使いやすく、かつ、RFIDに対応した手術用ガーゼを得ることができる。
【0042】
また、複合糸1は、芯線3の内部にRFタグ2が保持されている上、芯線3の外周が被覆糸4で被覆されている。そのため、複合糸1は、RFタグ2のICチップ202が外部に露出するのを抑制することができる。
【0043】
さらに、複合糸1は、RFタグ2を内部に保持するテープ材30の外周に被覆糸4を被覆することにより、テープ材30が糸状に圧縮された状態の芯線3を比較的簡単に形成することができる。そのため、複合糸1は、従来の複合糸のような複雑な製造工程が不要となり、生産性に優れる。
【0044】
(実施例2)
実施例2の手術用ガーゼについて、
図7を用いて説明する。本例の手術用ガーゼ5は、複合糸1を有している。本例では、具体的には、手術用ガーゼ5は、経糸51と緯糸52とが織り込まれて形成されており、経糸51の1つに複合糸1が用いられている。
【0045】
なお、手術用ガーゼ5における複合糸1は、手術用ガーゼ5の経糸方向の幅と同じ長さで実施例1の複合糸1が切断されて採取されたものであり、RFタグ2を1つ含んでいる。複合糸1のその他の構成は、実施例1と同様である。
【0046】
手術用ガーゼ5は、複合糸1を有している。そのため、手術用ガーゼ5は、RFタグ2を有さない手術用ガーゼと比べても遜色のない柔らかさで使いやすく、かつ、RFIDに対応することができる。
【0047】
また、ガーゼ製造時における漂白時に、ICチップ202、アンテナ203が漂白剤によって侵され難いため、白く、柔らかで、使いやすく、RFIDに対応することができる手術用ガーゼ5が得られる。
【0048】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 複合糸
2 RFタグ
20 インレット
201 ベース基材
202 ICチップ
203 アンテナ
3 芯線
30 テープ材
4 被覆糸
5 手術用ガーゼ
【要約】
【課題】柔らかく、ICチップが外部に露出し難く、生産性の高い複合糸、これを用いた手術用ガーゼを提供する。
【解決手段】複合糸1は、RFタグ2と、芯線3と、被覆糸4とを有する。RFタグ2は、ベース基材201にICチップ202とアンテナ203とが実装されたインレット20を備える。芯線3は、RFタグ2を内部に保持するテープ材30を備える。テープ材30は、インレット20の長手方向の長さよりも長く形成されている。芯線3では、テープ材30は、糸状に圧縮された状態とされている。被覆糸4は、芯線3の外周を被覆している。
【選択図】
図2