(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記捕捉引込機構は、前記開閉体を前記固定部材に沿って移動させる開閉力によって前記捕捉部材および前記当接ブロックを直線的にスライド移動させるリンク機構を備えていることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1つに記載の開閉体緩衝装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置10について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態では、開閉体緩衝装置10を引き戸装置に使用したものについて説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る開閉体緩衝装置10を備えた引き戸2の上部の正面図であって、引き戸2が開閉方向(紙面左右方向)における中間に位置する状態を示したものである。また、
図2は、
図1の状態から引き戸2を閉じた状態を示す正面図、
図3は
図1の状態から引き戸2を開いた状態を示す正面図である。また、
図4は、捕捉引込機構20を単体で示したものであり、引き戸2が中間に位置する状態(
図1の状態)に対応する斜視図である。また、
図5は、捕捉引込機構20であって、引き戸2を閉じた状態(
図2の状態)に対応する斜視図、
図6は、引き戸2を開いた状態(
図3の状態)に対応する斜視図である。
【0030】
なお、以下の説明で使用する「前側(前方向)」とは、
図1の左側(戸閉側)をいうものとし、「後側(後方向)」とは、
図1の右側(戸開側)をいうものとする。また、「上下、左右」の方向は、
図1の開閉体緩衝装置10を前側から見たときの方向をいうものとする。
さらに、本明細書中で使用する「閉じ際」とは、開閉体緩衝装置10が閉側の被捕捉部材11を捕捉する位置から引き戸が完全に閉じた位置まで移動するまでの間をいう。その逆に、「開き際」とは、開閉体緩衝装置10が開側の被捕捉部材11を捕捉する位置から引き戸が完全に開いた状態になるまでの間をいうものとする。
【0031】
図1〜
図3に示す引き戸装置は、建物の開口部の上縁部に沿って前後方向(開閉方向)に延在するガイドレール1と、このガイドレール1に沿って前後方向へ移動することで開口部を開閉する引き戸2(開閉体)と、引き戸2の開き際または閉じ際に制動しつつ、この引き戸2を開位置または閉位置に誘導する開閉体緩衝装置10とで構成されている。
【0032】
開閉体緩衝装置10は、ガイドレール1の前側に配設された閉側の被捕捉部材11と、ガイドレール1の後側に配設された開側の被捕捉部材11と、このガイドレール1上を前後方向に沿って走行可能な捕捉引込機構20とで構成されている。
【0033】
2つの被捕捉部材11は、
図1に示すように、下側に向けて突出する突部11aを有する凸形状に形成されている。これらの被捕捉部材11は、捕捉引込機構20の構造に合わせて、前側および後側の所定の位置(引き戸2を開閉方向に誘導する位置)にそれぞれ取り付けられている。
【0034】
捕捉引込機構20は、下側が開口する断面コ字形状のガイドレール1の内方に収容されており、ガイドレール1の前後方向に沿って移動可能に取り付けられている。より詳細には、捕捉引込機構20には、その前側部と後側部とのそれぞれにガイドローラ21(
図1〜
図3において、前側に4個、後側に2個)が設けられており、このガイドローラ21がガイドレール1の転動面1a上を転動することによって、捕捉引込機構20がガイドレール1の前後方向に自由に移動できるようになっている。
【0035】
また、捕捉引込機構20の前側部分には、詳細は後述する吊り下げ部300が設けられている。この吊り下げ部300には、引き戸2の上端角部(
図1の紙面左斜め上の角部)が取り付けられており、吊り戸2の前端部分を吊り下げる態様で支持している。これにより、引き戸2を開閉方向(前後方向)に移動させると、捕捉引込機構20のガイドローラ21がガイドレール1上を転動し、引き戸2が前後方向にスムーズに開閉することになる。
【0036】
なお、捕捉引込機構20ではないが、引き戸2の右側の上端角部にも吊り下げ部5が取り付けられている。この吊り下げ部5は、吊り戸2の後端部分を吊り下げる態様で支持しており、引き戸2は、ガイドレール1の転動面1aを転動可能なガイドローラ21によって、前後方向にスムーズに開閉するようになる。
【0037】
この捕捉引込機構20には、
図1〜
図3および
図4〜
図6に示すように、前側に位置する第1キャッチ部100と、後側に位置する第2キャッチ部150とが設けられている。この第1キャッチ部100は、捕捉引込機構20の内部で前後方向にスライド移動できるようになっており、閉じ際の所定の位置で前側の被捕捉部材11の突部11aを捕捉する。また、第2キャッチ部150も捕捉引込機構20の内部で前後方向へスライド移動できるようになっており、開き際の所定の位置で後側の被捕捉部材11の突部11aを捕捉する(捕捉動作についての詳細は後述する)。
【0038】
捕捉引込機構20は、
図1に示すように、引き戸2が開閉方向における中間に位置する状態では、第1キャッチ部100および第2キャッチ部150が2つの被捕捉部材11の間に位置する。この状態では、第1キャッチ部100および第2キャッチ部150のいずれも被捕捉部材11の突部11aを捕捉していない。すなわち、この状態では、捕捉引込機構20は機能していない(待機状態)。この待機状態では、第1キャッチ部100は、捕捉引込機構20の本体側にロック(詳細は後述する)された状態で捕捉引込機構20の前端側に位置し、第2キャッチ部150もロックされた状態で捕捉引込機構20の後端側に位置する(
図4参照)。
【0039】
この待機状態から引き戸2を前側(
図1の紙面左側。戸閉側)に移動させると、引き戸2の閉まり際に、上述したキャッチ部100のロックが解除され、第1キャッチ部100が前側に位置する被捕捉部材11を捕捉する(戸閉状態。
図2参照)。
この戸閉状態では、
図5に示すように、第1キャッチ部100が前側の被捕捉部材11を捕捉しながら、ばね226(
図7および
図8参照)の力で中央部側(矢印A方向)に移動する。すなわち、捕捉引込機構20は、捕捉した被捕捉部材11を引き戸2側(
図1の右側。後側)に引き寄せるように作用する。これにより、引き戸2は、相対的に閉じる方向(
図1の左側。前側)へと強制的に移動し、
図2に示すように、引き戸2が前側の戸当り3と当接するまで完全に閉じられるようになる。なお、この戸閉状態では、第2キャッチ部150はロックされた状態で、待機状態と同じ位置に留まっている。
【0040】
一方、待機状態から引き戸2を後側(
図1の紙面右側。戸開側)に移動させると、引き戸2が完全に開くときの開き際に、上述したキャッチ部150のロックが解除され、第2キャッチ部150が後側に位置する捕捉引込部材11を捕捉する(戸開状態。
図3参照)。
この戸開状態では、
図6に示すように、第2キャッチ部150が後側の被捕捉部材11を捕捉しながら、ばね226の力で中央部側(矢印B方向)に移動する。すなわち、捕捉引込機構20は、捕捉した被捕捉部材11を引き戸2側(
図1の左側。前側)に引き寄せるように作用する。これにより、引き戸2は、相対的に開く方向(
図1の右側。後側)へと強制的に移動し、
図3に示すように、引き戸2が後側の戸当たり4と当接するまで完全に開かれるようになる。なお、この戸開状態では、第1キャッチ部100はロックされた状態で、待機状態と同じ位置に留まっている。
【0041】
図7は、捕捉引込機構20を上側から見た分解斜視図であり、
図8は、捕捉引込機構20を下側から見た分解斜視図である。さらに、
図9は、第1キャッチ部100を分解した状態の拡大図であって、(a)は上斜め右側から見た分解斜視図、(b)は左斜め下側から見た分解斜視図である。また、
図10は、第2キャッチ部150を後斜め下側から見た分解斜視図である。
【0042】
捕捉引込機構20は、
図4〜
図6および
図7、
図8に示すように、前側の被捕捉部材11の突部11aを捕捉する第1キャッチ部100と、後側の被捕捉部材11を捕捉する第2キャッチ部150と、これらのキャッチ部100、150をガイドレール1の延在方向(前後方向)に沿って中央側へ引き込むための引込部200とを備えている。
【0043】
第1キャッチ部100は、後述するリンクピン140の位置によって動作するリンク機構として構成されている。詳細には、第1キャッチ部100は、
図7、
図8、特に
図9(a)、
図9(b)に示すように、被捕捉部材11の突部11aと所定位置で当接する当接ブロック110と、この突部11aを捕捉するために上下方向に移動する捕捉板120と、これらの当接ブロック110と捕捉板120とを内包してこれら全体で前後方向へ移動する第1内包ブロック130と、これらの当接ブロック110、捕捉板120、第1内包ブロック130がリンク機構として動作するためのリンクピン140とで構成されている。
【0044】
当接ブロック110は、ほぼ直方体形状に形成された本体部111と、この本体部111の後方斜め上側に突出する態様で形成され、その上部が本体部111の上面よりも上側に突出している受け部112とで構成されている。
【0045】
本体部111は、その内側が空洞になっており、この空洞は上下に貫通する態様で形成されている。この空洞内には、その下側の開口から、捕捉板120が挿入されて組み付けられる。また、本体部111には、前方斜め上側から後方斜め下側に向かって延びる傾斜穴111aが形成されている。この傾斜穴111aは、本体部111の左右方向に貫通する態様で形成されており、第1キャッチ部100が組み付けられる際にリンクピン140が挿通されるようになる。
【0046】
受け部112の前側の面には、
図9(a)、
図9(b)に示すように、本体部111の上面から上方に向けて起立する当接面112aが形成されている。この当接面112aは、引き戸2が閉じ際の所定の位置まで到達したときに、前側の被捕捉部材11の突部11aと当接して押圧されるようになる。
【0047】
また、受け部112の後側の面には、
図9(b)に示すように、前後方向に窪んだ形状のばね受け溝112bが形成されている。このばね受け溝112bには、圧縮コイルばね113の一端部が支持される。
【0048】
捕捉板120は、略矩形状に形成され、その上面から上側に向けて突出する捕捉爪121が形成されている。この捕捉爪121は、捕捉板120がリンク機構によって上方向に移動したときに、上述した受け部112とこの捕捉爪121とで被捕捉部材11の突部11aを前後方向において捕捉するようになる。
【0049】
この捕捉爪121の後面には、テーパ当接面121aが形成されている。このテーパ当接面121aは、テーパの下側から前方斜め上側に向かって傾斜する傾斜面である。このテーパ当接面121aには、引き戸2を閉じた状態(
図2参照)から開方向へ移動させるときに、被捕捉部材11の突部11aが当接する。そして、突部11aが捕捉爪121をこのテーパ面と垂直な方向である前方斜め下側に向けて押し下げるようになる。これにより、突起11aを捕捉した状態から解除され、戸閉状態から待機状態に復帰するようになる。
【0050】
また、捕捉板120には、捕捉爪121の前側に位置する補助爪122が形成されている。この補助爪122は、上述した捕捉爪121と受け部112とによって突部11aを捕捉できなかったときに、捕捉爪121とこの補助爪122との間で突部11aを捕捉する、いわば補助的に設けられたものである。
【0051】
この補助爪122は、捕捉爪121と補助爪122とで被捕捉部材11を捕捉した場合であっても、開閉体緩衝装置10が引き戸2を閉止させることができるようになっている。より詳細には、捕捉爪122は、引き戸2を開くときであって被捕捉部材11の突起11aによって前方に向けて押圧されたときに、捕捉爪122が下側に撓んで被捕捉部材11を補助爪122の前側に逃がすようになっている。
【0052】
さらに、捕捉板120には、捕捉爪121の下側に位置し、左右方向に貫通する取付穴123が形成されている。この取付穴123は、リンクピン140の外径と同じか少し大きな径の丸穴であり、この取付穴123には、詳細は後述するリンクピン140が挿通される。これにより、捕捉板120は、リンクピン140の移動に伴ってリンクピン140と一緒に移動するようになる。
【0053】
第1内包ブロック130は
図7、
図8、特に
図9(a)、
図9(b)に示すように、ほぼ直方体形状に形成された外郭部131と、この外郭部131の後端から後側に突出する支持部132と、外郭部131の左右の両側部からそれぞれ左右の外側に向けて突出する案内突部133、134とで構成されている。
【0054】
外郭部131は、その内部が空洞になっている。この空洞は上下に貫通する態様で形成されており、この空洞内には、その上側の開口から、当接ブロック110が挿入されて組み付けられる。また、外郭部131には、正面から見て、上下方向に延在する誘導穴131aが形成されている。この誘導穴131aは、外郭部131の左右方向に貫通する態様で形成されており、第1キャッチ部100が組み付けられる際に、当接ブロック110の傾斜穴111a、捕捉板120の取付穴123と一緒にリンクピン140が挿通されるようになる。
【0055】
また、外郭部131の空洞内の後端部には、上下に起立する受け面131bが形成されている。この受け面131bには、第1内包ブロック130内に当接ブロック110が組み付けられた状態で、圧縮コイルばね113の他端部が支持される。
【0056】
さらに、外郭部131の下側後部(受け面131bの下側)には、詳細は後述する引張ばねユニット225のばね受け227のくびれ部227aを収容する、くびれ部収容溝131cが形成されている。このくびれ部収容溝131cは、ばね受け227が組み付けられた状態で、このばね受け227の左右方向および前後方向の位置を規制する。
【0057】
支持部132には、その後端部に上下方向に延びる取付溝132aが形成されている。この取付溝132aには、詳細は後述するダンパーユニット221(緩衝部材)の出力軸221aの先端部が挿入され、この出力軸221aの左右方向の取付位置を規制している。
【0058】
案内突部133、134は、前後方向(引き戸2の移動方向)に延在している。これらの案内突部133、134は、第1内包ブロック130が後述する引込部200のガイド部210に組み込まれた状態で、詳細は後述するガイド部210の突条部218(
図17(a)、
図17(b)参照)と段差部260とによって形成された溝条部261の内部に挿入され、この溝条部261に沿って前後方向へスライドする。これにより、第1キャッチ部100が引込部200に対して、前後方向に移動するようになる。
【0059】
さらに、外郭部131には、前側および後側のそれぞれの両側に、スライド突起135、136が設けられている。これらのスライド突起135、136は、第1内包ブロック130が後述する引込部200のガイド部210に組み込まれた状態で、ガイド部210の内側面210aと接する。これにより、第1内包ブロック130のガイド部210内での左右方向の位置が規制される。また、第1内包ブロック130が前後方向に移動する際に、これらのスライド突起135、136がガイド部210の内側面210aと摺動し、前後方向へスムーズにスライド移動できるようになる。
【0060】
リンクピン140は、
図9(a)、
図9(b)に示すように、略円柱形状に形成されている。このリンクピン140の長さは、第1内包ブロック130の幅方向の寸法よりも長く形成されている。すなわち、リンクピン140によって、当接ブロック110、捕捉板120、および第1内包ブロック130を一体に組み付けた状態で、第1内包ブロック130の幅方向の両側から、リンクピン140の端部140aが突出する態様で組み付けられる。この突出する端部140aは、第1内包ブロック130が後述する引込部200のガイド部210に組み込まれた状態で、突条部218の上部に載せられて、前後方向にスライド移動するようになる。
【0061】
一方、第2キャッチ部150は、
図7、
図8、特に
図10に示すように、被捕捉部材11の突部11aと所定位置で当接する当接ブロック110と、この突部11aを捕捉するために上下方向に移動する捕捉板120と、これらの当接ブロック110と捕捉板120とを内包してこれら全体で前後方向へ移動する第2内包ブロック160と、これらの当接ブロック110、捕捉板120、第2内包ブロック160がリンク機構として動作するためのリンクピン140とで構成されている。
【0062】
この第2キャッチ部150も、第1キャッチ部100と同様に、リンクピン140の位置によって動作するリンク機構として構成されている。このリンク機構の動作は、第1キャッチ部100と比較して、前後方向で逆の動作をする以外は第1キャッチ部100と同じである。より簡単にいうと、第2キャッチ部150は、第1キャッチ部100の第1内包ブロック130の替わりに第2内包ブロック160が使用されたものである。そのため、以下で記載する第2キャッチ部150の説明では、当接ブロック110、捕捉板120、およびリンクピン140の説明は省略し、第2内包ブロック160についてのみ詳細に説明する。
【0063】
第2内包ブロック160の外郭部161は、
図7、
図8および
図10に示すように、その後側部分の内部が空洞になっている。この空洞は上下に貫通する態様で形成されており、この空洞内には、その上側の開口から、当接ブロック110が挿入されて組み付けられる。また、外郭部161には、正面から見て、上下方向に延在する誘導穴161aが形成されている。この誘導穴161aは、外郭部161の左右方向に貫通する態様で形成されており、第2キャッチ部150が組み付けられる際に、当接ブロック110の傾斜穴111a、捕捉板120の取付穴123と一緒にリンクピン140が挿通されるようになる。
【0064】
また、外郭部161の空洞内の後端部には、上下に起立する受け面161bが形成されている。この受け面161bには、第2内包ブロック160内に当接ブロック110が組み付けられた状態で、圧縮コイルばね113の他端部が支持される。
【0065】
さらに、外郭部161の下側後部(受け面161bの下側)には、詳細は後述する引張ばねユニット225のばね受け227のくびれ部227aを収容する、くびれ部収容溝161cが形成されている。このくびれ部収容溝161cは、ばね受け227が組み付けられた状態で、このばね受け227の左右方向および前後方向の位置を規制する。
【0066】
また、外郭部161には、くびれ部収容溝161cよりも前側に、引張ばねユニット収容溝161dが形成されている。この引張ばねユニット収容溝161dには、
図7および
図8に示す引張ばねユニット225が収容される。
【0067】
一方、外郭部161の中央上部であって引張ばねユニット収容溝161dの上側には、ダンパー収容溝167が形成されている。このダンパー収容溝167は、前後方向に延在し、その断面がダンパーユニット221のユニット本体221bの略円柱状の形状に合わせて半円弧状に形成されている。これにより、ダンパー収容溝167にユニット本体221bが収容された状態で、ダンパーの左右方向の位置が規制される。
【0068】
このダンパー収容溝167の後側には、ユニット本体221bの後端部を支持するための後端支持部168が形成されている。この後端支持部168は、略円筒形状に形成されており、この内部にユニット本体221bの後端部を前側から後側へ挿入することで、ユニット本体221bが取り付けられるようになっている。
【0069】
また、外郭部161の前側上部には、ダンパーユニット221の出力軸221aを支持する支持部162が設けられている。この支持部162には、上側が開口したU字形状の取付溝162aが形成されている。この取付溝162aにダンパーユニット221の出力軸221aの基端部が上側から挿入されて、この出力軸221aの左右方向の位置が規制されるようになる。
【0070】
さらに、外郭部161の前側および後側の側部には、案内突部163、164が設けられている。これらの案内突部163、164は、前後方向(引き戸2の移動方向)に延在している。これらの案内突部163、164は、詳細は後述するガイド部210の突条部218(
図17(a)、
図17(b)参照)と段差部260とによって形成された溝条部261の内部に挿入され、この溝条部261に沿って前後方向へスライドする。これにより、第2キャッチ部150が引込部200に対して、前後方向に移動するようになる。
【0071】
さらに、外郭部161には、前側および後側のそれぞれの両側に、スライド突起165、166が設けられている。これらのスライド突起165、166は、第2内包ブロック160が後述する引込部200のガイド部210に組み込まれた状態で、ガイド部210の内側面210aと接する。これにより、第1内包ブロック130のガイド部210内での左右方向の位置が規制される。また、第2内包ブロック160が前後方向に移動する際に、これらのスライド突起165、166がガイド部210の内側面210aと摺動し、前後方向へスムーズにスライド移動できるようになる。
【0072】
上述したこれらの第1キャッチ部100および第2キャッチ部150は、
図7および
図8に示すように、ダンパーユニット221および引張ばねユニット225によって前後方向に連結されている。
【0073】
ダンパーユニット221は、出力軸221aと、この出力軸221aを軸方向に進退自在に保持している略円柱状のユニット本体221bとを有している。ユニット本体221b内には、出力軸221aの縮長方向(前後方向)への移動に制動力を作用させるオイルなどの抵抗流体(図示省略)が収容されている。
【0074】
出力軸221aの先端部は、第1キャッチ部100の支持部132の取付溝132aに取り付けられる。また、ユニット本体221bは、第2内包ブロック160の後端支持部168に挿入された後にダンパーユニット収容部167に組み付けられ、上側から取付カバー170を取り付けることで固定される。
【0075】
一方、引張ばねユニット225は、第2内包ブロック160の引張ばねユニット収容溝161d内に収容される。この引張ばねユニット225は、
図7および
図8に示すように、引張ばね226と、この引張ばね226の両端部に設けられた2つのばね受け227とで構成されている。
【0076】
2つのばね受け227は略棒状に形成されており、その一端の先端部分に、径方向に溝状に形成された、くびれ部227aを有している。
【0077】
前側に位置するばね受け227のくびれ部227aは、第1内包ブロック130のくびれ部収容溝131cに挿入され、前後方向および左右方向の位置が規制される。また、前側に位置するばね受け227は、くびれ部収容溝131cから、後側に位置する第2内包ブロック160の引張ばねユニット収容溝161dまで延びるように配置されている。
【0078】
後側に位置するばね受け227のくびれ部227aは、第2内包ブロック160のくびれ部収容溝161cに挿入され、前後方向および左右方向の位置が規制される。また、後側に位置するばね受け227は、くびれ部収容溝161cから、引張ばねユニット収容溝161dに沿って前後方向に延びるように配置される。
【0079】
これらの2つのばね受け227は、引張ばね226によって前後方向に連結されている。この引張ばね226はコイルばねであり、引張ばねユニット225では、2つのばね受け227を中央側に付勢する引っ張りばねとして使用されている。
【0080】
これにより、引張ばねユニット225が第1キャッチ部100および第2キャッチ部150を捕捉引込機構20の中央部側へと付勢する一方、ダンパーユニット221が引張ばね226のばね力に抗して第1キャッチ部100および第2キャッチ部150の前後方向への移動を緩衝するようになる。
【0081】
引込部200は、
図7および
図8に示すように、第1キャッチ部100および第2キャッチ部150が内側に組み付けられるガイド部210と、ガイド部210と吊り下げ部300(詳細は後述する)とを連結するための前側取付ブロック240と、ガイド部210と後側ガイドローラ部400とを連結するための後側取付ブロック250(詳細は後述する)とで構成されている。
【0082】
ガイド部210は、
図7および
図8に示すように、前後方向に延在しており、この前後方向と直交する面で切断した断面形状は、上側が開口するU字形状に形成されている。より詳細には、このガイド部210の断面形状は、特に
図17(b)に示すように、水平な底面部210Hと、この底面部210Hの両端からそれぞれ上方に延びる側部210SとでU字形状に形成されており、この側部210Sには、一端外方向に折り曲げられてからさらに上方に折り曲げられて形成された段差部260がそれぞれ形成されている。また、この段差部260の上側には、
図7、
図8および
図16,
図17に示すように、側部210Sの内側面210aから内側に向かって突出する突条部218が設けられている。この段差部260および突条部218は、ガイド部の前後方向の全長に亘って連続して形成されている。また、これらの段差部260、突条部218および内側面210aによって、内側方向に開口する略コ字形状の溝条部261が形成されている。
【0083】
突条部218の上には、リンクピン140の端部140aが載せられて、前後方向に摺動移動する(
図16(b)参照)。また、溝条部261には、第1内包ブロック130の案内突部133、134および第2内包ブロック160の案内突部163、164が入り込み、前後方向に摺動移動する。すなわち、上述した引張ばねユニット225およびダンパーユニット221によって前後に連結された第1キャッチ部100および第2キャッチ部150は、ガイド部210の前側または後側端部からガイド部210に挿入され、リンクピン140の端部140aおよびそれぞれの案内突部133、134、163、164が、上述した所定の位置を摺動移動するように組み付けられる。
【0084】
また、ガイド部210には、前側および後側の側部に、2つの突条部切除用穴219がそれぞれ設けられている。この突条部切除用穴219は、上下方向に延びる長穴であり、ガイド部210の左右の両側部を貫通する態様で形成されている。
【0085】
この突条部切除用穴219は、突条部218の延在方向の一部を切り欠くためのものであり、ボルト等が挿通されるものではない。より詳細には、突条部218の一部を切り欠く加工をするためには、上側の開口部から切削工具を挿入して切り欠くことが考えられるが、加工がしにくい。そのため、加工がし易い方法として、突条部切除用穴219を横方向から明けることで、突条部218の一部を切り欠くようにしたものである。
【0086】
この突条部切除穴219を形成することによって、この突条部218には、リンクピン140の端部140aが、この突条部218の上側から下方向へ移動可能な切り欠き部262が形成されることになる。
【0087】
この突条部切除用穴219(切り欠き部262)の前後方向における寸法は、上述したリンクピン140の直径と同等かそれよりも若干大きくなるように形成されている。また、前側の突条部切除用穴219の前後方向の位置は、前側の被捕捉部材11の突部11aと第1キャッチ部100の当接ブロック110の当接面112aとが当接(または当接解除)するときに、リンクピン140がある位置に空けられている。すなわち、第1キャッチ部100のリンク機構が動作する位置であって、リンクピン140が上下に移動する位置に合わせて、前側の突条部切除用穴219(切り欠き部262)が形成されている。
【0088】
同様に、後側の突条部切除用穴219(切り欠き部262)の前後方向の位置も、後側の被捕捉部材11の突部11aと、第2キャッチ部150の当接ブロック110の当接面112aとが当接(または当接解除)するときに、リンクピン140がある位置に空けられている。すなわち、第2キャッチ部150のリンク機構が動作する位置であって、リンクピン140が上下に移動する位置に合わせて、後側の突条部切除用穴219(切り欠き部262)が形成されている。
【0089】
さらに、ガイド部210には、
図7および
図8に示すように、突条部切除用穴219よりもさらに前側および後側に、2つの取付穴216が設けられている。この取付穴216は、ガイド部210の左右の両側部を貫通する態様で形成されている。この前側の取付穴216には、取付ピン215を介して前側取付ブロック240が取り付けられる。また、後側の取付穴216には、取付ピン215を介して後側取付ブロック250が取り付けられる。
【0090】
前側取付ブロック240は、
図7、
図8、および
図11に示すように、逆L字形状に形成されている。この前側取付ブロック240には、幅方向に貫通する左右貫通穴242が形成されている。この左右貫通穴242には、前側の取付穴216に幅方向から挿通された取付ピン215が挿入される。これにより、前側取付ブロック240がガイド部210の前端部に取り付けられる。
また、前側取付ブロック240の上側には、前後方向に延びる水平部243が設けられており、この水平部243には、上下方向に貫通する上下貫通穴241が形成されている。
【0091】
後側取付ブロック250は、
図7、
図8、および
図12に示すように、ブロック状の本体の幅方向に貫通する左右貫通穴251が形成されている。この左右貫通穴251には、後側の取付穴216に幅方向から挿通された取付ピン215が挿入される。これにより、後側取付ブロック250がガイド部210の後端部に取り付けられる。
【0092】
また、後側取付ブロック250には、その後面から後方向に突出する2つの係合爪230が設けられている。この係合爪230は、後側取付ブロック250の左右の両側にそれぞれ配置されている。また、この係合爪230は、左右方向に弾性によって内側に向かって撓むようになっている。
【0093】
また、ガイド部210の前側の底面には、
図7、
図8、
図11に示すように、上下に貫通する取付穴212が形成されている。
さらに、ガイド部210の前側および後側の底面には、
図8に示すように、底部角穴217がそれぞれ形成されている。この底部角穴217からは、上述した第1キャッチ部100および第2キャッチ部150がガイド部210に組み付けられた状態で、それぞれの捕捉板120が下側に向かって突出するようになっている(
図13(b)、
図14、
図15参照)。より詳細には、捕捉板120が上側に移動しているときには、底部角穴217から突出しておらず(
図15および
図16参照)、捕捉板120が下側に移動しているときには、底部角穴217から突出する。これにより、引込部200を下側から見て、第1キャッチ部100および第2キャッチ部150の動作状態を目視で確認できるようになる。
【0094】
また、捕捉引込機構20の前側部には、
図7、
図8、
図11に示すように、引き戸2を吊り下げるための吊り下げ部300が設けられている。また、捕捉引込機構20の後側部には、
図7、
図8、
図12に示すように、後側ガイドローラ部400が設けられている。
【0095】
吊り下げ部300は、
図7、
図8、特に
図11に示すように、ガイドローラ21を備えた前側ガイドローラ部310と、この前側ガイドローラ部310の下側に取り付けられ、引き戸2を吊り下げる態様で固定すると共にその取付位置を微調整可能な固着ユニット320とを備えている。
【0096】
前側ガイドローラ部310には、回転軸312を介して4つのガイドローラ21が回転自在に取り付けられている。また、前側ガイドローラ部310には、
図11に示すように、下側後端部から後方向に向けて突出する下側突出部311が一体に形成されている。この下側突出部311には、上下方向に貫通する取付穴311aが形成されている。
【0097】
この下側突出部311は、
図11に示すように、引込部200の前側であって、上述した前側取付ブロック240の水平部243の下側に挿入される。そして、引込部200の下側から挿入される取り付けねじ213を、ガイド部210の取付穴212、下側突出部311の取付穴311a、前側取付ブロック240の上下貫通穴241の順に挿通させる。これにより、吊り下げ部300は、引込部200の前端部に着脱自在に取り付けられるようになる。
【0098】
また、固着ユニット320は、その前端に表出している調整部321にドライバーを差し込んで回転させることにより、この固着ユニット320に取り付けられた引き戸2の左右方向の位置を微調整できるようになっている。
【0099】
後側ガイドローラ部400は、
図7および
図8、特に
図12に示すように、取付カバー401と、後側の2つのガイドローラ21とによって構成されている。
【0100】
取付カバー401は、前側部分が開口しており、この開口から後側取付ブロック250の係合爪230が挿入される。この取付カバー401の左右の両側部には、係合爪230と係合する係合穴401bがそれぞれ形成されている。これにより、係合爪230は、ねじ等の締結部材を使用せずに自由に係合穴401bに着脱できるようになる。
また、2つのガイドローラ21は、取付カバー401を左右に貫通する回転軸402に回転自在に軸支されている。
【0101】
次に、本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置の作用、および、リンクピン140によって機能するリンク機構の動作について説明する。
図13(a)は捕捉引込機構の平面図、
図13(b)は捕捉引込機構の正面図、
図14は、
図12(a)のC−C断面図である。また、
図15は、第2キャッチ部の動作を説明する図であって、(a)は後側部分の拡大正面図、(b)はX−X断面図である。さらに、
図16は、第2キャッチ部の動作を説明する図であって、(a)は後側部分の拡大正面図、(b)はY−Y断面図である。また、
図17は、第2キャッチ部の動作を説明する図であって、(a)は後側部分の拡大正面図、(b)はZ−Z断面図である。また、
図18は、第2キャッチ部の断面図であって、(a)は、捕捉部材が被捕捉部材を捕捉する前の状態、(b)は、捕捉後の状態を示す図である。
【0102】
ここで、第1キャッチ部100および第2キャッチ部150の作用、およびリンク機構の動作は、前後方向の向きが逆なだけでその動作は同じである。ゆえに、以下の説明では、第2キャッチ部150でのリンク機構の動作について説明し、第1キャッチ部100のリンク機構についての説明は省略する。
【0103】
第2キャッチ部150が被捕捉部材11を捕捉していない待機状態(
図1、
図4、
図13(a)、
図13(b)、
図14参照)では、リンク機構を動作させるリンクピン140は、前後方向において突条部218を切り欠いた突条部切除用穴219の位置にある。また、リンクピン140の端部140aは、切り欠き部262を通って突条部218の上面よりも下側に位置する。このとき、第2キャッチ部150の捕捉板120は、
図15(a)、
図15(b)に示すように、下側に下がった状態であり、捕捉板120の下部がガイド部210の底部角穴217から下側に突出している。
【0104】
また、この状態では、
図15(a)および
図18(a)に示すように、リンクピン140の端部140aは、突条部切除用穴219によって形成された切り欠き部262の切り欠き面と前後方向で当接している。これにより、第2キャッチ部150は、前後方向へ自由に移動できないようにロックされた状態になる。
【0105】
この待機状態から引き戸2を戸開側(後側。
図18(a)のH方向)に移動させると、
図16(a)および
図18(b)に示すように、後側の被捕捉部材11の突部11aが、第2キャッチ部150の当接ブロック110の当接面112aと当接し、当接ブロック110を前方向に押圧する。この押圧力Eは、引き戸2を開こうとする力と同じであり、勢いよく開こうとしたときには大きな力が作用する。
【0106】
この押圧力Eが作用すると、第2キャッチ部150の当接ブロック110は、前方向にスライド移動する。このとき、当接ブロック110は、圧縮コイルばね113を圧縮するので、押圧力Eが緩衝されるようになる。これにより、まず、引き戸2を開くときの力がそのまま第2キャッチ部150に伝わらないようになり、より小さな力が作用するようになる。
【0107】
当接ブロック110が前方向にスライド移動すると、
図15(a)に示す当接ブロック110の傾斜穴111aは、
図16(a)に示すように前方向に移動するので、リンクピン140は、傾斜穴111aおよび第2内包ブロック160の誘導穴161aに沿って、上側F方向に押し上げられる。これにより、捕捉板120は、リンクピン140と共に上側へと移動する。この状態では、後側の被捕捉部材11の突部11aは、
図16(a)および
図18(b)に示すように、上述した当接ブロック110の受け部112と、捕捉板120の捕捉爪121とで前後を挟まれる態様で捕捉されるようになる。
【0108】
また、リンクピン140は上側F方向へ移動すると、
図16(b)に示すように、突条部218の上面よりも上側に位置するので、突条部218の切り欠き部262の切り欠き面でロックされていた状態が解除される。これにより、第2キャッチ部150のロックが解除され、リンクピン140の端部140aが突条部218の上面を摺動しながら前後方向へ自由にスライド移動できるようになる。
【0109】
さらに、捕捉板120の上方への移動速度は、傾斜穴111aの長さを基準にすると、誘導穴131aの長さが短いため、当接ブロック110の移動速度よりも遅くすることができる。すなわち、捕捉板120は、引き戸2を開閉させる速度(当接ブロック110の移動速度)よりも遅い速度で上方向へ移動するようになる。
【0110】
ロックが解除された状態では、
図17(a)に示すように、第2キャッチ部150は、引張ばねユニット225の引張ばね力によって、第1キャッチ部100側(前側。G方向)へ付勢される。より詳細には、第2キャッチ部150は、後側の被捕捉部材11の固定位置で突部11aを捕捉すると、その動作が完了し、その後には引張ばねユニット225およびダンパーユニット221が動作する。
【0111】
第2キャッチ部150は、後側の被捕捉部材11を捕捉しながら、G方向へと移動する。言い換えると、第2キャッチ部150は、被捕捉部材11を捕捉したまま被捕捉部材11の取付位置に留まり、第2キャッチ部150以外の捕捉引込機構20の全体が、相対的に後側へと移動する。すなわち、この引張ばねユニット225の引張ばね力は、引き戸2を強制的に開く方向へと付勢する。これにより、引き戸2は、
図3に示すように、引き戸2が完全に開いた状態まで導かれるようになる。
また、上述した移動状態では、引張ばねユニット225のばね力によって、引き戸2が勢いよく戸当り4に衝突しないように、ダンパーユニット221でばね力を緩衝している。
【0112】
逆に、引き戸2が完全に開いた状態から閉じる方向へ移動させるとき(
図3の状態から引き戸を閉じる方向へ移動させるとき)には、上述した動作と逆の動作になる。すなわち、引き戸2を前側に移動させると、後側の被捕捉部材11の突部11aは、捕捉板120の捕捉爪121と当接し、第2キャッチ部150が引張ばねユニット225の引張ばね226を引っ張る方向へと移動する。このとき、突部11aは、捕捉爪121のテーパ当接面121aを押圧するので、第2キャッチ部150の前後方向への移動中に捕捉板120には常に下側に押し下げる力が作用する。この押し下げる力は、リンクピン140が突条部218の上にあるときは、突条部218が受けるが、リンクピン140が突条部切除用穴219の位置に到達したとき、リンクピン140は突条部218の切り欠き部262を通って下側へと押し下げられる。
【0113】
また、上述した下側に押し下げる力が作用しているとき、リンクピン140の端部140aが突条部218の上に押し付けられているので、第2キャッチ部150の移動中に振動が発生し難い。そのため、第2キャッチ部150の移動によって第1キャッチ部100に伝達される振動を小さく抑えることができ、第1キャッチ部100のロックが外れる等の誤動作が発生し難くなる。
【0114】
これにより、捕捉板120は突条部切除穴219(切り欠き部262)の位置で下側へと移動して、捕捉状態が解除される。また、リンクピン140の端部140aは、切り欠き部262の切り欠き面に当接することによって前後方向にロックされ、第2キャッチ部150が前後方向へ自由に移動できないようになる。
また、当接ブロック110は、圧縮コイルばね113の付勢力によって、後方へと移動する力が促進(補助)されることになる。これにより、捕捉解除時のリンク機構の動きがよりスムーズに行われる。
【0115】
本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置によれば、引き戸2を移動可能に案内するガイドレール1の開側および閉側のそれぞれに設けられた被捕捉部材11と、引き戸2に取り付けられてガイドレール1上を開閉方向へ移動可能に構成された捕捉引込機構20とを備え、捕捉引込機構20は、閉側の被捕捉部材11を捕捉しているときに開閉方向へ移動可能に構成され、捕捉していないときに開閉方向への移動がロックされる第1キャッチ部100と、開側の被捕捉部材11を捕捉しているときに開閉方向へ移動可能に構成され、捕捉していないときに開閉方向への移動がロックされる第2キャッチ部150と、第1キャッチ部100および第2キャッチ部150を開閉方向に連結し、第1キャッチ部100が閉側の捕捉部材11を捕捉したときに、第1キャッチ部100を第2キャッチ部150側へ引き込み、第2キャッチ部150が開側の被捕捉部材11を捕捉したときに、第2キャッチ部150を第1キャッチ部100側へ引き込む引張ばね226と、引張ばね226が第1キャッチ部100または第2キャッチ部150を引き込む力を緩衝するダンパーユニット221とを備えた開閉体緩衝装置であって、第1キャッチ部100および第2キャッチ部150は、被捕捉部材11を捕捉するための捕捉板120(捕捉部材)、および、引き戸2をガイドレール1に沿って移動させる開閉力によって被捕捉部材11と当接して押圧されることによって捕捉部材11を直線的に移動させて被捕捉部材11を捕捉する当接ブロック110をそれぞれ有し、被捕捉部材11を捕捉する際に、被捕捉部材11に対して当接ブロック110が押圧される方向に移動するように構成されているので、引き戸2を勢いよく開閉したとしても、当接ブロック110が移動して第1キャッチ部100(または、第2キャッチ部150)での当接時の衝撃が小さく抑えられるようになる。そのため、捕捉動作による振動が伝達される第2キャッチ部150(または、第1キャッチ部100)で、その伝達される振動を小さくすることができる。そのため、振動が伝達される第2キャッチ部150(または、第1キャッチ部100)で、振動による誤動作が生じないようにすることができる。
【0116】
また、引き戸2を勢いよく開閉させた場合であって、引張ばね226が捕捉板120を引き込む速度よりもダンパーユニット221が縮長する速度の方が速くなり、引張ばね226の付勢力が発揮できなくなったとしても、当接ブロック110が被捕捉部材11に押圧されてこの押圧される方向に移動している限りにおいて捕捉動作が解除されることはない。そのため、捕捉動作中にこのような誤動作が生じることがなく、信頼性の高い開閉体緩衝装置を提供することができる。
【0117】
さらに、引き戸2を勢いよく開閉したとしても、当接ブロック110が移動して被捕捉部材11に当接する勢いを緩衝することにより、捕捉時に当接ブロック110と被捕捉部材11とが接触するときの係合音(衝突音)を抑制し、係合音をより小さくすることができる。
【0118】
また、捕捉板120が、引き戸2を開閉させる速度よりも遅い速度で移動するようにしているので、捕捉板120が移動する勢いを緩め、捕捉板120をゆっくり移動させることができる。これにより、捕捉時に捕捉板120が上限まで移動したときに、リンクピン140と誘導穴131a或いは傾斜穴111aの上端部との衝突音を抑制し、動作音をより小さくすることができる。
【0119】
さらに、捕捉引込機構20は、引き戸2をガイドレール1に沿って移動させる開閉力によって捕捉板120および当接ブロック110を直線的にスライド移動させるリンク機構を備えているので、捕捉板120を回動せずに、スライド移動しながら被捕捉部材11を捕捉するようになる。そのため、回動動作によって係合或いは係合解除する構造と比較して、無理な力が作用せず、スムーズに動作するので、捕捉時の振動や係合音を小さくすることができる。
【0120】
また、リンク機構は、捕捉板120に取り付けられたリンクピン140と、リンクピン140が挿通される誘導穴131aを有し、誘導穴131aに沿って捕捉板120を上下に移動させる第1および第2内包ブロック130、160と、当接ブロック110と、で構成され、当接ブロック110には、リンクピン140が挿通される傾斜穴111aが形成され、被捕捉部材11に押圧されたときに、傾斜穴111aに沿って捕捉板120を上下方向に移動させると共に、傾斜穴111aに沿って当接ブロック110が第1および第2内包ブロック130、160に対して前後方向に移動するようにしているので、リンク機構によって、捕捉板120が上下に移動しながら、当接ブロック110が前後に移動するようになる。その結果、簡易な構造でリンク機構を構成することができる。
【0121】
さらにまた、リンク機構には、第1および第2内包ブロック130、160と当接ブロック110との間に、開閉方向へ縮長する圧縮コイルばね113(第2の弾性体)が設けられているので、第2の弾性体が、前後方向へ移動する当接ブロックの移動を緩衝し、かつ捕捉解除時の復帰動作を促進するようになる。そのため、引き戸2の開閉力を緩衝することができると共に、捕捉板120が下側に移動する復帰動作をアシストすることができる。
【0122】
また、捕捉引込機構20は、捕捉板120をスライド移動させて捕捉解除したときに、引張ばね226の付勢力を保持するロック機構を備えているので、一方側の第1キャッチ部100(或いは、第2キャッチ部150)側に、他方側の第2キャッチ部150(或いは、第1キャッチ部100)を引き込むようにすることができる。そのため、一本の引張ばね226で互いに引き合うようになり、部品点数を少なくすることができる。
【0123】
さらに、ロック機構は、捕捉板120を上下方向に移動させることによって動作するようにしているので、捕捉板120の上下移動を利用して、簡単にロック機構を構成することができる。また、回動する動作ではなく直線的に移動するので、ロック動作をスムーズに行えるようになり、回動する構造と比較して、係合または係合解除時の振動や音を小さくすることができる。
【0124】
以上、本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、引き戸2について記載しているが、これに限定されるものではない。例えば、抽斗や観音開きの戸などを開閉する場合であっても、戸を強制的に閉じる方向に付勢する装置であれば、本発明を利用することができる。
【0125】
また、本実施の形態では、引き戸の上部に開閉体緩衝装置10を設けているが、下部に設けることもできる。すなわち、ガイドレール1を開口部の下縁部に取り付けてある場合であっても、本発明に係る開閉体緩衝装置20をその下部に取り付けるようにしてもよい。
【0126】
また、本実施の形態では、引張ばね226および圧縮コイルばね113を、弾性体であるばねとして記載したが、ばねに限定されない。すなわち、弾性によって付勢力を生じさせるものであれば本発明に使用することができる。
【0127】
さらに、本実施形態では、ガイドレール1側に被捕捉部材11を取り付け、引き戸2側に捕捉引込機構20を取り付けているが、逆であっても構わない。これによれば、引き戸2の構造に合わせて、取り付け易い方に捕捉引込機構20を構成することができ、設計自由度が広がる。