特許第5982164号(P5982164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982164
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】建物用接着剤の試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/00 20060101AFI20160818BHJP
   G01N 19/04 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   G01N3/00 Q
   G01N19/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-95057(P2012-95057)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-221899(P2013-221899A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(72)【発明者】
【氏名】古志 祐治
【審査官】 西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−018551(JP,A)
【文献】 特開平06−101319(JP,A)
【文献】 特開平05−331447(JP,A)
【文献】 特開平08−157792(JP,A)
【文献】 特開2010−117210(JP,A)
【文献】 特開平07−301587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00−3/62
C09J 1/00−5/10
C09J 9/00−201/10
E04F 13/00−13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の下地材に接着剤を塗布し、複数のブロック状の装飾材を、この装飾材どうしの間に目地を形成して前記接着剤により接着する建物用接着剤の試験方法であって、
前記下地材と同構造であり、実物よりも小さな面積のサンプル下地材の表面に、前記接着剤を塗布し、前記装飾材を、実物と同様に配置して前記接着剤により接着してサンプル材を形成し、さらに、前記サンプル材の形成にあたり、前記サンプル下地材を、前記表面に沿う方向で複数に分割された分割サンプル下地材から形成し、かつ、前記装飾材を、前記分割サンプル下地材どうしの間に形成される継ぎ目を跨いで接着して1つの前記サンプル材を形成し、
時間経過による前記接着剤の硬化を図ると共に、前記サンプル材を曲げ変形させ、さらに、前記サンプル材の曲げ変形は、前記サンプル材の裏面が接する支持面との間に帯状の変位用スペーサを介在させた状態で、前記変位用スペーサの設置位置を跨いだ位置で前記サンプル材の前記表面側から押圧力を加えて行い、
前記目地部分の状態を確認することを特徴とする建物用接着剤の試験方法。
【請求項2】
請求項に記載の建物用接着剤の試験方法において、
前記変位用スペーサを、前記継ぎ目に沿って配置することを特徴とする建物用接着剤の試験方法。
【請求項3】
請求項または請求項に記載の建物用接着剤の試験方法において、
前記継ぎ目に直交する方向の前記装飾材の列どうしで、前記装飾材の前記直交する方向の配置が異なる配置として前記サンプル材を形成することを特徴とする建物用接着剤の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁、内壁、床、天井などに用いられる下地材にタイルなどの装飾材を接着して接着剤により形成された目地部分におけるひび割れなどの性能を評価する建物用接着剤の試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイルなどの装飾材を使用した建物の外壁が知られている(例えば、特許文献1参照)。この外壁は、板状の外壁下地にタイルなどの装飾材を接着剤により接着した構造となっており、装飾材は、外壁下地の表面に縦横に並べられ、装飾材どうしの間には、接着剤による目地が形成されている。
このような外壁では、接着剤によっては、建物への設置後に、経時劣化などにより、目地にひび割れが生じるおそれがある。
【0003】
そこで、接着剤のひび割れ耐久性を正しく評価する必要がある。
このような、ひび割れの発生を測定する技術も、従来から知られている(例えば、特許文献2参照)。
この従来技術によれば、試材に荷重をかけて試材を曲げ変形させてひび割れの有無を確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−60427号公報
【特許文献2】特開平7−301587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術は、建物への設置状態において、目地を形成して装飾材が接着された外壁のひび割れ耐久性の評価に用いるのには適切でなく、外壁の目地におけるひび割れ耐久性を正しく評価することが難しかった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決することを目的とするものであり、建物の目地におけるひび割れ耐久性を高い精度で評価可能な建物用接着剤の試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、
板状の下地材に接着剤を塗布し、複数のブロック状の装飾材を、この装飾材どうしの間に目地を形成して前記接着剤により接着する建物用接着剤の試験方法であって、
前記下地材と同構造であり、実物よりも小さな面積のサンプル下地材の表面に、前記接着剤を塗布し、前記装飾材を、実物と同様に配置して前記接着剤により接着してサンプル材を形成し、さらに、前記サンプル材の形成にあたり、前記サンプル下地材を、前記表面に沿う方向で複数に分割された分割サンプル下地材から形成し、かつ、前記装飾材を、前記分割サンプル下地材どうしの間に形成される継ぎ目を跨いで接着して1つの前記サンプル材を形成し、
時間経過による前記接着剤の硬化を図ると共に、前記サンプル材を曲げ変形させ、さらに、前記サンプル材の曲げ変形は、前記サンプル材の裏面が接する支持面との間に帯状の変位用スペーサを介在させた状態で、前記変位用スペーサの設置位置を跨いだ位置で前記サンプル材の前記表面側から押圧力を加えて行い、
前記目地部分の状態を確認することを特徴とする建物用接着剤の試験方法とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の建物用接着剤の試験方法では、サンプル材を用い、このサンプル材を撓ませて、建物目地における変位を再現し、かつ、接着剤の硬化過程における変化を再現し、目地におけるひび割れ耐久性を高い精度で評価することが可能となる。
しかも、下地材よりも小さな面積のサンプル下地材を用いて形成したサンプル材を用いるため、下地材をそのまま用いたサンプル材を使用するものと比較して、省スペース化、省コスト化を図ることができる。
【0009】
なお、前記サンプル材の曲げ変形は、前記サンプル材の裏面が接する支持面との間に帯状の変位用スペーサを介在させた状態で、前記変位用スペーサの設置位置を跨いだ位置で前記サンプル材の前記表面側から押圧力を加えて行う。
したがって、サンプル材の表面側から押圧力を加えた際に、サンプル材が変位用スペーサの厚み分だけ変形し、建物の外壁、内壁、床、天井などに用いられる下地材の、建物に固定した状態における微小な変位を再現して、目地におけるひび割れ耐久性をより高い精度で評価することが可能となる。
また、前記サンプル下地材を、前記表面に沿う方向で複数に分割された分割サンプル下地材から形成し、かつ、前記装飾材を、前記分割サンプル下地材どうしの間に形成される継ぎ目を跨いで接着して1つの前記サンプル材を形成する。
したがって、サンプル材に押圧力を加えたときに、継ぎ目を挟んで分割サンプル下地材が変位するのに対し、継ぎ目を跨ぐ装飾材が、いずれかの分割サンプル下地材の変位に追従しないことにより、サンプル下地材と装飾材との間に剥がれ方向の荷重が作用する。これにより、目地におけるひび割れの発生原因を、サンプル材において再現することが可能となり、目地におけるひび割れ耐久性をより高い精度で評価することが可能となる。
また、前記変位用スペーサを、前記継ぎ目に沿って配置することが好ましい。
これにより、建物の下地材と装飾材との相対変位による目地部分への荷重の作用を、サンプル下地材と装飾材との間でより正確に再現し、目地におけるひび割れ耐久性をさらに高い精度で評価することが可能となる。
また、前記継ぎ目に直交する方向の前記装飾材の列どうしで、前記装飾材の前記直交する方向の配置が異なる配置として前記サンプル材を形成することが好ましい。
これにより、サンプル材は、上記のように装飾材が配列されて形成された建物の目地部分を再現し、目地におけるひび割れ耐久性をさらに高い精度で評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態の建物用接着剤の試験方法の試験対象となる外壁の構造を示す断面図である。
図2図2は、実施の形態の建物用接着剤の試験方法に用いる外壁サンプル材を示す斜視図である。
図3図3は、実施の形態の建物用接着剤の試験方法の養生時における外壁サンプル材の状態を示す斜視図である。
図4図4は、実施の形態の建物用接着剤の試験方法の養生時における外壁サンプル材に押圧力を加えて変位させた際の作用を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態の建物用接着剤の試験方法について、図1図4に基づいて説明する。
ここで、まず、実施の形態の建物用接着剤の試験方法を適用する外壁WLの構造について説明する。
実施の形態を適用する建物の外壁WLは、図1の断面図に示すように、下地材としての外壁下地材10、接着剤20、装飾材としてのタイル30を備えている。
【0012】
外壁下地材10は、硬質木片セメント板11の表面に、塗料を平吹き塗装して塗装層12を設けた構造となっている。
【0013】
接着剤20は、外壁下地材10の表面10aに塗布されており、変成シリコーンポリマーを主成分とする1液あるいは2液型のもので、塗布後に、空気中の水分により分解し、硬化・接着を行う。
【0014】
タイル30は、陶磁器製のもので、長方形の薄板状に形成されており(図2参照)、接着剤20により外壁下地材10の表面10aに接着されている。なお、タイル30は、外壁下地材10の表面10aに、長方形の長辺の方向(図2の矢印X方向)および短辺(図2の矢印Y方向)の方向に並んで配置される。したがって、タイル30とタイル30との間には、接着剤20により目地40が形成されている。
【0015】
このような構造の外壁WLにあっては、接着剤の硬化過程での荷重の入力や経時劣化などにより、目地40にひび割れが生じるおそれがある。そこで、接着剤20として新しい接着剤を用いる場合などには、目地40にひび割れが生じるおそれがないか試験を行う必要がある。あるいは、ひび割れが生じた場合に、その原因を探るために試験を行う必要がある。
【0016】
本実施の形態の建物用接着剤の試験方法は、このような場合に用いる試験方法である。
以下に、本実施の形態の建物用接着剤の試験方法を、順を追って説明する。
(サンプル材形成工程)
まず、建物用接着剤の試験方法に用いる外壁WLと同様の構造の、図2に示す外壁サンプル材Swを形成する。
この外壁サンプル材Swは、サンプル下地材100の表面100hに、外壁WLと同様の厚さで接着剤20を塗布し、外壁WLと同様の配置でタイル30を並べて接着し、外壁WLと同様の寸法の目地40を形成したものである。
【0017】
サンプル下地材100は、外壁下地材10と同様の構造の板材で形成されたもので、その縦横寸法L,Wは、外壁下地材10よりも小さな寸法(例えば、300〜500mm程度の寸法)に形成されている。
また、サンプル下地材100は、表面100hに沿う方向に2分割されており、継ぎ目110を挟んで配置された2枚の分割サンプル下地材100a,100bから構成されている。
【0018】
外壁サンプル材Swを形成する場合、図2に示すように、継ぎ目110を挟んで並べられた2枚の分割サンプル下地材100a,100bの上に、接着剤20を外壁WLと同様の厚さで塗布する。本実施の形態では、接着剤20の塗布厚は、例えば、1〜2mm程度の厚さであり、具体的には1.5mmとする。
【0019】
そして、接着剤20の上に、タイル30を外壁WLと同様に配置して接着剤20により接着させる。
タイル30は、陶磁器製のもので、図示のように長方形の板状に形成されており、矢印X方向の長辺の長さが、100〜200mm程度、矢印Y方向の短辺の長さが50〜100mm程度の大きさのものを用いている。
また、これらのタイル30は、X方向の列におけるタイル30の配置が、Y方向の1行おきに同じ配置となっており、また、隣り合う列どうしでは、タイル30が、長辺方向に1/2だけずれた、互い違いの配置となっている。
【0020】
さらに、タイル30どうしの間には、目地40が形成され、矢印Y方向の縦目地40aの間隔Wmyは、矢印X方向の横目地40bの間隔Wmxよりも小さく形成されている。具体的には、本実施の形態では、Wmy=6mm、Wmx=8mmとする。
なお、上述の外壁サンプル材Swは、後述する養生工程における養生条件に応じた数だけ作成する。
【0021】
(養生工程)
上述のサンプル材形成工程の実行後は、まず、接着剤20の硬化のために水分を噴霧する。これは、接着剤20として、水分により分解して硬化するものを用いているためであり、接着剤20の材質によっては不要である。
【0022】
その後、接着剤20を硬化させると共に、荷重を加えて変位させる養生工程を実行する。
この養生工程では、図3に示すように、外壁サンプル材Swを基台50の上に配置し、その際、外壁サンプル材Swと基台50との間に、変位用スペーサ60を介在させる。
【0023】
この変位用スペーサ60は、厚さ数mmの薄く細長い帯状の板材であり、外壁サンプル材Swの継ぎ目110に沿って配置する。なお、本実施の形態では、変位用スペーサ60の厚さは2mm、幅は20mm程度とする。
【0024】
その後、外壁サンプル材Swに対し、継ぎ目110を挟んだ両側において、図3において矢印Fにより示すように上方から荷重を与え、外壁サンプル材Swを変位させる。この荷重は、矢印Fの位置に所望の重さの錘(図示省略)を載置してもよいし、流体圧シリンダやモータなどの駆動装置を有した押圧装置(図示省略)を用いて上方から荷重を与えるようにしてもよい。
【0025】
本実施の形態では、荷重を与えるタイミングは、接着剤20の硬化開始から2時間後としている。また、この荷重付与の開始後は、その荷重を与えた状態を継続する。
なお、外壁サンプル材Swに荷重を与えて変位させるタイミングを2時間後としたのは、目地40にひび割れが生じる原因の1つが、接着剤20の硬化反応が不十分な状態での変位と考えられるため、硬化初期に変位を与えるようにしている。
【0026】
さらに、本実施の形態では、この養生工程における養生条件として、複数の条件を設定する。
すなわち、本実施の形態では、養生条件として、温度条件および養生時間を設定している。
温度条件としては、低温、常温、高温の3通り設定している。これらの、温度条件は、施工時の条件に応じて設定しており、低温は、冬場の施工時に対応した温度であり、例えば、3〜7℃の範囲内の温度である。常温は、春秋の施工時に対応した温度、例えば、18〜25℃の範囲内の温度である。高温は、夏場の施工時に対応した温度、例えば、30℃〜45℃の範囲内の温度である。
【0027】
なお、温度条件は、上記したものに限定されない。例えば、本実施の形態では、低温、常温、高温の3通りを示したが、3通り未満であってもよいし、3通り以上としてもよい。3通り以上とする場合、例えば、冬場でも、想定される温度が地方により異なるため、極寒時に対応した極低温を加えても良いし、逆に、灼熱時に対応した極高温、あるいは、本実施の形態で示した常温と、高温との間の温度などを、さらに設定することができる。
【0028】
前述の養生時間は、複数設定する。例えば、接着剤20が充分に硬化するのに必要な時間を超える時間までの間に、30分、1時間、1時間半、2時間などの間隔で設定する。あるいはこのような一定時間の間隔に限らず、例えば、硬化初期は、短時間の間隔とし、養生時間が長くなると、間隔を長くするなどの不規則な間隔で設定することもできる。
【0029】
(評価工程)
評価工程は、上述の養生工程の終了時点で、目地40の状態を目視により確認して試験結果の評価、すなわち、ひび割れの発生の有無を確認する工程である。
【0030】
(実施の形態の効果)
以下に、実施の形態の効果を列挙する。
以上説明したように、本実施の形態の建物用接着剤の試験方法では、以下に述べる効果を得ることができる。
a) 実施の形態の建物用接着剤の試験方法では、
板状の外壁下地材10に接着剤20を塗布し、複数のブロック状の装飾材としてのタイル30を、このタイル30どうしの間に目地40を形成して接着剤20により接着する建物用接着剤の試験方法であって、
外壁下地材10と同構造であり、実物よりも小さな面積のサンプル下地材100の表面100hに、接着剤20を塗布し、タイル30を、外壁WLと同様に配置して接着剤20により接着して外壁サンプル材Swを形成し、
間経過による接着剤20の硬化を図ると共に、外壁サンプル材Swを曲げ変形させ、
目地40部分の状態を確認することを特徴とする。
したがって、外壁サンプル材Swを用いることにより、この外壁サンプル材Swを撓ませて、外壁WLの製造工程や設置時における変位を再現し、かつ、接着剤20の硬化過程における変化を再現し、目地40におけるひび割れ耐久性を高い精度で評価することが可能となる。
しかも、外壁下地材10よりも小さな面積のサンプル下地材100を用いて形成した外壁サンプル材Swを用いるため、外壁下地材10を用いたサンプル材を使用するものと比較して、省スペース化、省コスト化を図ることができる。
【0031】
b)実施の形態の建物用接着剤の試験方法では、
外壁サンプル材Swの曲げ変形は、外壁サンプル材Swの裏面が接する支持面50aとの間に帯状の変位用スペーサ60を介在させた状態で、変位用スペーサ60の設置位置を跨いだ位置で外壁サンプル材Swの表面側から押圧力(矢印F)を加えて行うことを特徴とする。
したがって、外壁WLを建物や建物ユニットに固定した状態における外壁WLの微小な変位を再現して、目地40におけるひび割れ耐久性をより高い精度で評価することが可能となる。
【0032】
c)実施の形態の建物用接着剤の試験方法では、
サンプル下地材100を、複数の分割サンプル下地材100a,100bから形成し、かつ、タイル30を、分割サンプル下地材100a,100bどうしの間に形成される継ぎ目110を跨いで接着して1つの外壁サンプル材Swを形成することを特徴とする。
本願発明者によれば、目地40のひび割れの発生の原因の1つに、外壁WLが外壁下地材10の継ぎ目を跨いで変形した際に、タイル30が、接着面積の広い側の外壁下地材10と一体的に変位し、接着面積が小さい方の外壁下地材10との間に剥がれ方向の荷重Ha(図4参照)が作用することが見出された。
したがって、サンプル下地材100を分割サンプル下地材100a,100bにより形成するとともに、その継ぎ目110を跨いでタイル30を接着し、図4に示すように変位させることにより、この小さな外壁サンプル材Swにおいて、上述の外壁下地材10とタイル30との相対変位を、サンプル下地材100とタイル30との間で再現できる。すなわち、タイル30と接着面積が狭い分割サンプル下地材100bとの間に剥がれ方向の荷重Haを作用させ、目地40におけるひび割れ耐久性をより高い精度で評価することが可能となる。
【0033】
d)実施の形態の建物用接着剤の試験方法では、
変位用スペーサ60を、継ぎ目110に沿って配置することを特徴とする。
これにより、サンプル下地材100の継ぎ目110における上記c)で説明したタイル30との相対変位をより正確に再現し、目地40におけるひび割れ耐久性をさらに高い精度で評価することが可能となる。
【0034】
e)実施の形態の建物用接着剤の試験方法では、
継ぎ目110に直交する矢印X方向のタイル30の列が、隣り合う列どうしで、タイル30の配置が交互に異なる配置としたことを特徴とする。
これにより、外壁サンプル材Swは、より正確に外壁WLを再現し、目地40におけるひび割れ耐久性をさらに高い精度で評価することが可能となる。
【0035】
f)実施の形態の建物用接着剤の試験方法では、
接着剤20の硬化開始から2時間が経過した時点で、押圧力(矢印F)を加えて、外壁サンプル材Swを変位させるようにした。
すなわち、本願発明者は、ひび割れが生じる原因の1つに、接着剤20の硬化初期に外壁WLに変位が生じることであることを見出した。
そこで、接着剤20の硬化開始から2時間後に外壁サンプル材Swに変位を生じさせることにより、目地40におけるひび割れ耐久性をさらに高い精度で評価することが可能となる。
【0036】
g)実施の形態の建物用接着剤の試験方法では、
養生温度条件として、低温、常温、高温を設定した。
すなわち、本願発明者は、目地40のひび割れは、接着剤20が低温環境下で硬化する際に、生じやすいことを見出した。
そこで、養生温度条件として、低温と、その他の温度環境としての常温および高温を設定することにより、低温環境下における耐ひび割れ特性を、他の環境下における耐ひび割れ特性と比較することにより、より高精度で評価することが可能となる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【0038】
例えば、実施の形態では、外壁サンプル材を曲げ変形させるのにあたり、スペーサを用いた例を示したが、これに限定されず、外壁サンプル材の裏面の基台の形状を所望の変形が得られる曲面形状に形成し、その曲面に押さえ付けたり、あるいは、外壁サンプル材の表面に沿う方向から外力を加えて撓ませたりするなど、他の手段を用いてもよい。
【0039】
また、外壁サンプル材は、2枚に分割されたものを用いた例を示したが、これに限定されず、1枚の外壁サンプル材により形成してもよい。あるいは、3以上の複数に分割してもよい。この場合、スペーサは、1つの継ぎ目のみに配置してもよいし、各継ぎ目に配置してもよい。
【0040】
また、実施の形態では、装飾材として陶磁器製のタイルを示したが、装飾材としては陶磁器製のタイルに限定されるものではなく、他の樹脂製のものや、タイル以外の石その他の意匠を与えられたものなどを用いることができる。
さらに、装飾材の配置として、行と列の配置が互い違いになった例を示したが、これに限定されず、行方向、列方向に同一配置としてもよい。
また、実施の形態では、建物の目地として外壁の目地を例に挙げたが、下地材に装飾材を接着して目地が形成される部位であれば、外壁に限定されるものではない。例えば、内壁、天井、床などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 外壁下地材(下地材)
10a 表面
20 接着剤
30 タイル
40 目地
50 基台
50a 支持面
60 変位用スペーサ
100 サンプル下地材
100a 分割サンプル下地材
100b 分割サンプル下地材
110 継ぎ目
Sw 外壁サンプル材
WL 外壁
図1
図2
図3
図4