特許第5982183号(P5982183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982183
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】立体駐車設備
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   E04H6/18 601G
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-123533(P2012-123533)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-249600(P2013-249600A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】焼山 誠
(72)【発明者】
【氏名】菅原 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】河合 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】平柳 哲
(72)【発明者】
【氏名】丸若 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 克仁
(72)【発明者】
【氏名】菊井 孝次
(72)【発明者】
【氏名】本田 健一
(72)【発明者】
【氏名】石塚 進一
(72)【発明者】
【氏名】塚原 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】大倉 一政
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真吾
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−167135(JP,A)
【文献】 特開平10−184062(JP,A)
【文献】 特開2011−226241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 − 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が個別に載せられるパレットと、
前記パレットを載せた状態で昇降される昇降部材、及び、前記パレットを前記昇降部材に対する受入れ側と排出側とにスライドさせるスライド機構を有し、前記車両の受渡し階において前記昇降部材と前記昇降部材に隣接するパレット受渡し位置との間で前記パレットを移送させる立体駐車部と、
前記パレットに入庫車両が載せられる入庫位置から前記パレット受渡し位置まで、前記パレットを移送する入庫移送部と、
前記入庫移送部とは別個に設けられ、前記パレット受渡し位置から出庫車両に乗車する出庫位置まで、前記パレットを移送する出庫移送部とを有することを特徴とする立体駐車設備。
【請求項2】
前記パレットは、載せられる車両の全長方向を長辺方向とする長方形状を有し、
前記入庫移送部と前記出庫移送部は、前記パレット受渡し位置にて前記パレットの長辺方向に接続され、前記立体駐車部は、前記昇降部材と前記昇降部材に隣接するパレット受渡し位置との間で、前記パレットの短辺方向に前記パレットを移送させることを特徴とする請求項1に記載の立体駐車場設備。
【請求項3】
前記出庫位置で前記車両が出庫した後の空パレットを、前記入庫移送部及び前記出庫移送部の下層において前記入庫移送部及び前記出庫移送部の真下を通る経路で前記入庫位置へ向けて移送させる空パレット移送部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の立体駐車設備。
【請求項4】
前記入庫移送部は、
前記車両が載せられた状態の実車パレットを、前記パレットの移送経路上で停止させる機能を有することを特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項に記載の立体駐車設備。
【請求項5】
前記出庫移送部の移送経路に隣接して当該移送経路上では無い位置に、前記車両が載せられた状態の実車パレットを待機させる出庫待機スペースを設け、
前記出庫移送部は、前記出庫位置と前記出庫待機スペースとの間で前記実車パレットを移送することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の立体駐車設備。
【請求項6】
前記立体駐車部は、前記入庫移送部及び前記出庫移送部による前記パレットの移送方向に、複数の前記昇降部材を互いに隣接させた状態で有し、
前記パレット受渡し位置は、複数の前記昇降部材のそれぞれに対応して定められていることを特徴とする請求項1に記載の立体駐車設備。
【請求項7】
前記入庫移送部及び前記出庫移送部による前記パレットの移送方向に隣接した複数の前記昇降部材は、前記移送方向の両側に対向して設けられ、前記対向して設けられた前記昇降部材の間に、2つの前記入庫移送部及び2つの前記出庫移送部が設けられ、
複数の前記パレット受渡し位置は、2つの前記入庫移送部及び前記出庫移送部の、各昇降部材に隣接する位置にマトリクス状に設けられており、
前記スライド機構は、前記移送方向に隣接する前記パレット受渡し位置の間、及び前記対向して設けられた前記昇降部材に対応するパレット受渡し位置の間で前記パレットを移送させることを特徴とする請求項に記載の立体駐車設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を立体的に駐車する立体駐車部を有する駐車設備に関する。
【背景技術】
【0002】
立体駐車部を有する立体駐車設備では、入庫時や出庫時における待ち時間の短縮化が求められている。待ち時間を短縮化するため、特許文献1の駐車設備では、複数の車両待機部と、個別移送部と、共用移送部とが設けられている。そして、各車両待機部でパレットに載せられた車両を、個別移送部及び共用移送部によってパレットごと立体駐車部へ移送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−226241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の駐車設備は、共用移送部でパレットを個別に移送しているため、複数台の車両に対する連続的な処理に時間を要してしまう可能性があった。例えば、共用移送部で或るパレットを移送している間は他のパレットを移送することが難しいことから、或る車両の入庫と他の車両の出庫が時間的に重なった場合には、何れかの車両を待機させておく必要があった。また、複数台の車両について入庫を行う場合、車両が載せられた実車パレットの移送中は、車両が載せられていない空パレットを移送できず、反対に空パレットの移送中は実車パレットを移送できなかった。
【0005】
加えて、前述の駐車設備では、奥側リフトと共用移送部との間に手前側リフトが配置されているため、手前側リフトの運転状況によっては奥側リフトに対するパレットの移送が制限されてしまう可能性もあった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数台の車両に対する連続的な入出庫処理を効率化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するため、本発明に係る立体駐車設備は、車両が個別に載せられるパレットと、前記パレットを載せた状態で昇降される昇降部材、及び、前記パレットを前記昇降部材に対する受入れ側と排出側とにスライドさせるスライド機構を有し、前記車両の受渡し階において前記昇降部材と前記昇降部材に隣接するパレット受渡し位置との間で前記パレットを移送させる立体駐車部と、前記パレットに入庫車両が載せられる入庫位置から前記パレット受渡し位置まで、前記パレットを移送する入庫移送部と、前記入庫移送部とは別個に設けられ、前記パレット受渡し位置から出庫車両に乗車する出庫位置まで、前記パレットを移送する出庫移送部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る立体駐車設備では、車両の受渡し階における、昇降部材と隣接する位置にパレット受渡し位置が定められており、入庫移送部は、入庫位置からパレット受渡し位置までパレットを移送し、出庫移送部は、パレット受渡し位置から出庫位置までパレットを移送するように構成されている。このため、入庫車両と出庫車両とを経路上で干渉させずに移送できる。また、昇降部材とパレット受渡し位置とが隣接されているので、昇降部材とパレット受渡し位置の間におけるパレットの受渡しを速やかに行うことができる。その結果、複数台の車両に対する連続的な入出庫処理を効率化できる。
【0009】
前述の立体駐車場設備において、前記パレットは、載せられる車両の全長方向を長辺方向とする長方形状を有し、前記入庫移送部と前記出庫移送部は、前記パレット受渡し位置にて前記パレットの長辺方向に接続され、前記立体駐車部は、前記昇降部材と前記昇降部材に隣接するパレット受渡し位置との間で、前記パレットの短辺方向に前記パレットを移送させることが好ましい。
前述の立体駐車設備において、前記出庫位置で前記車両が出庫した後の空パレットを、前記入庫移送部及び前記出庫移送部の下層において前記入庫移送部及び前記出庫移送部の真下を通る経路で前記入庫位置へ向けて移送させる空パレット移送部を有することが好ましい。この構成では、入庫車両や出庫車両の移送を妨げることなく空パレットを入庫位置へと移送させることができ、複数台の車両に対する連続的な入出庫処理を一層効率化できる。
【0010】
前述の立体駐車設備において、前記入庫移送部は、前記車両が載せられた状態の実車パレットを、前記パレットの移送経路上で停止させる機能を有することが好ましい。この構成では、移送経路上に待機させた実車パレットを速やかにパレット受渡し位置へと移送できるので、複数台の車両に対する連続的な入出庫処理を一層効率化できる。
【0011】
前述の立体駐車設備において、前記出庫移送部の移送経路に隣接して当該移送経路上では無い位置に、前記車両が載せられた状態の実車パレットを待機させる出庫待機スペースを設け、前記出庫移送部は、前記出庫位置と前記出庫待機スペースとの間で前記実車パレットを移送することが好ましい。この構成では、先行の出庫車両の受渡しができない場合であっても、先行の出庫車両を出庫待機スペースに待機させることで、後続の出庫車両を先に出庫させることができる。このため、複数台の車両に対する連続的な出庫処理を効率化できる。
【0012】
前述の立体駐車設備において、前記立体駐車部は、前記入庫移送部及び前記出庫移送部による前記パレットの移送方向に、複数の前記昇降部材を互いに隣接させた状態で有し、前記パレット受渡し位置は、複数の前記昇降部材のそれぞれに対応して定められていることが好ましい。この構成では、複数の昇降部材によって複数台の車両に対する入出庫処理を一層効率化することができる。
【0013】
前述の立体駐車設備において、前記入庫移送部及び前記出庫移送部による前記パレットの移送方向に隣接した複数の前記昇降部材は、前記移送方向の両側に対向して設けられ、前記対向して設けられた前記昇降部材の間に、2つの前記入庫移送部及び2つの前記出庫移送部が設けられ、複数の前記パレット受渡し位置は、2つの前記入庫移送部及び前記出庫移送部の、各昇降部材に隣接する位置にマトリクス状に設けられており、前記スライド機構は、前記移送方向に隣接する前記パレット受渡し位置の間、及び前記対向して設けられた前記昇降部材に対応するパレット受渡し位置の間で前記パレットを移送させることが好ましい。この構成では、隣接するパレット受渡し位置の間でもパレットを移送できるので、複数台の車両に対する入出庫処理を一層効率化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る立体駐車設備によれば、複数台の車両に対する連続的な入出庫処理を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の立体駐車設備を説明する斜視図である。
図2】立体駐車部、入庫移送部、出庫移送部を説明する平面図である。
図3】空パレット移送部を説明する平面図である。
図4】空パレット搬入リフト、及び、その周辺部を説明する断面図である。
図5】空パレット搬出リフト、及び、その周辺部を説明する断面図である。
図6A】入庫処理を説明する図であり、入庫車両が入庫位置でパレットに載せられた状態を示す。
図6B】入庫処理を説明する図であり、実車パレットが入庫移送経路を移送されている状態を示す。
図6C】入庫処理を説明する図であり、実車パレットがパレット受渡し位置まで移送された状態を示す。
図7A】出庫処理を説明する図であり、実車パレットがパレット受渡し位置まで移送された状態を示す。
図7B】出庫処理を説明する図であり、実車パレットが出庫移送経路を移送されている状態を示す。
図7C】出庫処理を説明する図であり、実車パレットが出庫位置まで移送された状態を示す。
図7D】出庫処理を説明する図であり、空パレットが空パレット移送経路を移送されている状態を示す。
図8A】第2実施形態の立体駐車設備における出庫処理を説明する図であり、先行する実車パレットが出庫位置まで移送された状態を示す。
図8B】第2実施形態の立体駐車設備における出庫処理を説明する図であり、先行する実車パレットを待機位置まで移送し、後続の実車パレットを出庫位置へと移送する過程を示す。
図9A】第3実施形態の立体駐車設備における立体駐車部、入庫移送部、出庫移送部を説明する平面図である。
図9B】第3実施形態の立体駐車設備における変形例の構成を説明する平面図である。
図10】第4実施形態の立体駐車設備における立体駐車部、入庫移送部、出庫移送部を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に例示した立体駐車設備は、立体駐車部1、入庫移送部2、出庫移送部3、及び、空パレット移送部4を有している。そして、各部は、図示しない管理装置によって動作が管理されており、入庫対象或いは出庫対象の車両X(図6A図8Bを参照,図1図5では不図示)をパレットPTに載せた状態(実車状態)で移送する。パレットPTは、車両Xが個別に載せられる板状の部材である。そして、車両Xの幅方向を短辺、全長方向を長辺とする矩形状をしている。
【0017】
立体駐車部1は、複数台の車両Xを駐車させる部分であり、塔状の建物11と、パレットPTを昇降させるリフト12を有している。建物11の内部は複数の階層に区分けされており、各階層には車両XをパレットPTごと駐車させる駐車スペース13が設けられている。また、建物11の1階は、車両Xの受渡し階になっている。なお、図1ではパレットPTのみを図示し、車両Xは図示していない。
【0018】
便宜上、以後の説明では、車両Xが載せられたパレットPTのことを実車パレットPT1といい、車両Xが載せられていないパレットPTのことを空パレットPT2という。そして、実車パレットPT1及び空パレットPT2を包含する場合には、単にパレットPTという。
【0019】
図2に示すように、リフト12は、パレットPTを上面に載せた状態で昇降される矩形板状の搬送台12a(昇降部材)と、搬送台12aの四隅を摺動可能な状態で支持し、鉛直方向に立設された4本の棒状ガイド部材12bと、パレットPTを搬送台12aへの受入れ方向と排出方向とにスライドさせるスライド機構12cとを有している。そして、図1に示すように、リフト12は、建物11の内部を上下方向に貫く昇降通路11aに設置されている。
【0020】
搬送台12aは、図示しないワイヤーロープやウインチによって昇降され、建物11における所望階で停止される。スライド機構12cは、図示していないが、搬送台12aとパレット受渡し部14の連動機構となっており、パレットPTをスライドさせることで、パレットPTを搬送台12aに載せたり、搬送台12aからパレットPTを排出させたりする。そして、建物11の1階には、搬送台12aの停止位置に隣接して、駐車スペース13とパレット受渡し部14とが設けられている。そして、搬送台12aと駐車スペース13との間、又は、搬送台12aとパレット受渡し部14との間で、パレットPTの受渡しが行われる。
【0021】
なお、建物11の2階から上の階にもスライド機構が設けられており(不図示)、搬送台12aと駐車スペース13との間でパレットPTの受渡しが行われる。すなわち、搬送台12aが所望の階層に停止されるとスライド機構が作動し、駐車スペース13から搬送台12aへのパレットPTの受入れ、或いは、搬送台12aから駐車スペース13へのパレットPTの排出が行われる。
【0022】
図2に示すように、入庫移送部2は、入庫部21(入庫位置21a)からパレット受渡し部14(パレット受渡し位置14a)まで、実車パレットPT1を移送する部分であり、建物11の1階と同じ高さである地上に設けられている。図示の入庫移送部2では、入庫部21からパレット受渡し部14まで、入庫移送経路に沿って実車パレットPT1が移送される。
【0023】
入庫移送部2は、パレットPTを短辺(車幅)方向に移送させる第1入庫移送部2aと、実車パレットPT1を長辺(全長)方向に移送させる第2入庫移送部2bとを有している。そして、入庫部21から遠い側に位置する第1入庫移送部2aの一端部と、パレット受渡し部14から遠い側に位置する第2入庫移送部2bの一端部とが直角に交差している。このため、入庫部21で車両Xが載せられた実車パレットPT1は、第1入庫移送部2aを短辺方向に移送され、各移送部2a,2bの交差部分で進行方向を変更して第2入庫移送部2bを長辺方向に移送され、パレット受渡し部14で停止される。
【0024】
ここで、本実施形態の入庫移送部2は、パレットPTを個別に移送させたり、停止させたりすることができる。このため、入庫移送部2は、後続の実車パレットPT1を入庫移送経路上で待機させることもできる。このように、実車パレットPT1を待機させることができるので、パレット受渡し部14における実車パレットPT1の有無に拘わらず、他の実車パレットPT1を入庫部21から速やかに退出させることができる。また、次の実車パレットPT1をパレット受渡し部14の近傍で待機させておくことにより、パレット受渡し部14が空いたならば直ちに次の実車パレットPT1を移送できる。
【0025】
入庫部21は、入庫車両XをパレットPTに載せる場所であり、所定の入庫位置21aに空パレットPT2が配置されている。この入庫部21は、運転者が入庫車両Xから降車するための降車スペースを区画する。そして、実車パレットPT1の入庫部21からの退出と、空パレットPT2の入庫部21への移送が同時になされる。本実施形態では、入庫部21よりもパレット搬送方向の上流側に、空パレット移送部4が有する空パレット搬入リフト43が設けられている。そして、空パレット搬入リフト43からの空パレットPT2が入庫部21へと移送される。このため、第1入庫移送部2aは、入庫部21を貫いて空パレット搬入リフト43まで設けられている。
【0026】
出庫移送部3は、パレット受渡し部14から出庫部31(出庫位置31a)まで、実車パレットPT1を移送する部分であり、入庫移送部2と同じく地上に設けられている。図示の出庫移送部3では、パレット受渡し部14から出庫部31まで出庫移送経路に沿って実車パレットPT1が移送される。
【0027】
出庫移送部3は、実車パレットPT1を長辺方向に移送させる第1出庫移送部3aと、実車パレットPT1を短辺方向に移送させる第2出庫移送部3bとを有している。そして、入庫移送部2と同様に、パレット受渡し部14から遠い側に位置する第1出庫移送部3aの一端部と、出庫部31から遠い側に位置する第2出庫移送部3bの一端部とが直角に交差している。このため、実車パレットPT1は、パレット受渡し部14から第1出庫移送部3aを長辺方向に移送され、各移送部3a,3bの交差部分で進行方向を変更して第2出庫移送部3bを短辺方向に移送され、出庫部31の出庫位置31aで停止される。
【0028】
出庫部31は、運転者が出庫車両Xに乗車する場所である。そして、車両Xが出庫すると、空パレットPT2は出庫部31の外部へ移送される。本実施形態では、出庫部31に隣接して、空パレット移送部4が有する空パレット搬出リフト42が設けられており、出庫部31からの空パレットPT2は、空パレット搬出リフト42に移載される。このため、空パレット搬出リフト42は、出庫部31よりもパレット移送方向の下流側の位置に設けられ、第2出庫移送部3bは、出庫部31を貫いて空パレット搬出リフト42まで設けられている。
【0029】
図1及び図3に示すように、空パレット移送部4は、出庫部31からの空パレットPT2を入庫部21へ向けて移送する部分であり、水平移送部41、空パレット搬出リフト42、及び、空パレット搬入リフト43を有している。
【0030】
水平移送部41は、空パレット搬出リフト42から受け取った空パレットPT2を空パレット搬入リフト43まで移送する部分であり、本実施形態では地下に設けられている。すなわち、実車パレットPT1を搬送する入庫移送部2及び出庫移送部3が上層に、空パレットPT2を搬送する水平移送部41が下層に設けられた二層構造になっている。この水平移送部41は、各移送部2,3の真下を通っており、平面視で反転コ字状に設けられている。また、水平移送部41は、入庫移送部2と同様に、空パレットPT2を個別に移送させたり、停止させたりすることができる。このため、空パレット搬入リフト43の手前から順に、空パレットPT2を待機させておくことができる。
【0031】
図4に示すように、空パレット搬入リフト43は、水平移送部41からの空パレットPT2を移載して上方に移送し、第1入庫移送部2aへと受け渡す部分であり、搬送台43aと、棒状ガイド部材43bと、スライド機構(不図示)とを有している。これらの各部は、立体駐車部1のリフト12と同様に構成されている。すなわち、搬送台43aは、棒状ガイド部材43bによって昇降可能な状態で支持されている。そして、図示しないワイヤーロープやウインチによって昇降され、上側受渡し位置と下側受渡し位置との間を移動する。スライド機構は、空パレットPT2をスライドさせるものであり、下側受渡し位置では空パレットPT2を搬送台43aに載せ、上側受渡し位置で搬送台43aからパレットPTを排出させる。
【0032】
この一連の動作は、第1入庫移送部2aによるパレットPTの移送動作に連動して行われる。まず、入庫待ちの状態において、入庫部21の入庫位置21aには空パレットPT2が配置されている。また、空パレット搬入リフト43の搬送台43aは、空パレットPT2を載せた状態で上側受渡し位置に位置付けられている。そして、入庫部21で入庫車両Xが載せられると、この実車パレットPT1は第1入庫移送部2aによって移送される。この実車パレットPT1の移送に連動して搬送台43aの空パレットPT2が入庫部21へと移送される。また、空パレットPT2が移送されると搬送台43aは降下し、下側受渡し位置で水平移送部41から新たな空パレットPT2を受け取る。その後、搬送台43aは上側受渡し位置まで上昇する。
【0033】
このように、空パレット搬入リフト43による空パレットPT2の移送は、第1入庫移送部2aによるパレットPTの移送動作に連動して行われるので、空パレットPT2を入庫部21に対して連続的に供給することができる。
【0034】
図5に示すように、空パレット搬出リフト42は、第2出庫移送部3bによって移送された出庫部31からの空パレットPT2を下方に移送し、水平移送部41へと受け渡す部分であり、搬送台42aと、棒状ガイド部材42bと、スライド機構(不図示)とを有している。これらの各部は、空パレット搬入リフト43と同様に構成されている。そして、上側受渡し位置では空パレットPT2を搬送台42aに載せ、下側受渡し位置では搬送台42aから空パレットPT2を排出させる。この一連の動作は、出庫部31における車両Xの出庫に連動して行われる。
【0035】
次に、上記のように構成された立体駐車設備による入庫処理及び出庫処理について説明する。なお、立体駐車部1、入庫移送部2、出庫移送部3、及び、空パレット移送部4は、図示しない管理装置によって動作が管理されている。そして、管理装置は、各部と電気的に接続されており、その記憶部には、入庫処理や出庫処理を実現するためのシーケンスプログラムや必要な情報が記憶されている。
【0036】
まず、入庫処理について説明する。図6Aに示すように、入庫対象の車両X(入庫車両)が入庫位置21aのパレットPTに載せられ、その後に運転者が車両Xから降車すると、第1入庫移送部2aは、実車パレットPT1を短辺方向(第2入庫移送部2bの一端部側)へと移送する。そして、図6Bに示すように、入庫部21には新たな空パレットPT2が供給される。すなわち、上側受渡し位置で停止している空パレット搬入リフト43の搬送台43aから空パレットPT2を移送させ、この空パレットPT2を第1入庫移送部2aによって入庫位置21aに位置付ける。
【0037】
実車パレットPT1が第1入庫移送部2aと第2入庫移送部2bの交差部分まで移送されると、第1入庫移送部2aは実車パレットPT1の移送を停止し、第2入庫移送部2bは実車パレットPT1の移送を開始する。これによって移動方向が90度変わり、実車パレットPT1はパレットPTの長辺方向へと移動される。そして、図6Cに示すように、実車パレットPT1がパレット受渡し部14(パレット受渡し位置14a)まで移送されると、第2入庫移送部2bは実車パレットPT1の移送を停止する。その後、パレット受渡し部14の実車パレットPT1は、スライド機構12cによって搬送台12aに載せられ、適宜な階の空き駐車スペース13に格納される。
【0038】
この立体駐車部1では、搬送台12a(昇降部材)と隣接する位置にパレット受渡し部14が設けられており、入庫移送部2は、入庫部21で車両XがパレットPTに載せられ、移送可能な状態になると直ちに入庫位置21aからのパレットPTの移送を開始する。そして、入庫処理では、実車パレットPT1の退出と入れ替わりで空パレットPT2が入庫部21に配置されるので、車両Xが連続してもこれらの車両Xを滞りなく処理することができる。
【0039】
また、搬送台12aとパレット受渡し部14とが隣接されているので、実車パレットPT1の受渡しを速やかに行うことができる。加えて、入庫移送部2は、実車パレットPT1を個別に移送することができ、また入庫移送経路の途中で個別に停止させることができるので、複数の実車パレットPT1を入庫移送経路上に詰めた状態で待機させることができる。このため、或る実車パレットPT1をリフト12で昇降している最中に、他の実車パレットPT1をパレット受渡し部14で待機させることが可能となり、リフト12による実車パレットPT1の昇降処理を効率よく行うことができる。
【0040】
次に、出庫処理について説明する。図7Aに示すように、出庫対象の車両X(出庫車両)が載せられた実車パレットPT1がパレット受渡し部14(パレット受渡し位置14a)に位置付けられると、第1出庫移送部3aは実車パレットPT1の移送を開始する。すなわち、第1出庫移送部3aと第2出庫移送部3bの交差部分に向けて、実車パレットPT1を長辺方向へ移送させる。
【0041】
ここで、実車パレットPT1が離れれば、パレット受渡し部14は、リフト12の搬送台12aとの間で実車パレットPT1を移載できる。このため、他の実車パレットPT1をパレット受渡し部14に位置付けることができる。例えば、次の出庫車両Xが載せられた実車パレットPT1をパレット受渡し部14に位置付けてもよいし、入庫車両Xが載せられた実車パレットPT1をパレット受渡し部14に位置付けてもよい。その結果、複数台の車両Xに対する入出庫処理を効率よく行うことができる。
【0042】
図7Bに示すように、実車パレットPT1が第1出庫移送部3aと第2出庫移送部3bの交差部分まで移送されると、第1出庫移送部3aは実車パレットPT1の移送を停止し、第2出庫移送部3bは実車パレットPT1の移送を開始する。これによって移動方向が90度変わり、実車パレットPT1はパレットPTの短辺方向へと移動される。そして、図7Cに示すように、実車パレットPT1が出庫部31における出庫位置31aまで移送されると、第2出庫移送部3bは実車パレットPT1の移送を停止する。
【0043】
運転者によって出庫車両Xが出庫されると、図7Dに示すように、空パレットPT2は入庫部21へ向けて戻される。すなわち、図5に示すように、第2出庫移送部3bによって空パレット搬出リフト42まで移送された空パレットPT2は、上側受渡し位置で停止している搬送台42aに移載される。空パレット搬出リフト42は、搬送台42aを下側受渡し位置まで降下させ、空パレットPT2を水平移送部41に受け渡す。そして、水平移送部41は、移載された空パレットPT2を空パレット搬入リフト43まで移送する。
【0044】
以上の説明から明らかなように、本実施形態の立体駐車設備では、入庫移送部2と出庫移送部3とが別個に設けられているので、入庫対象の車両Xと出庫対象の車両Xとが移送経路上で干渉されることはない。そして、パレット受渡し部14がリフト12(搬送台12a)の隣接位置に設けられているので、実車パレットPT1の移載に際し、パレット受渡し部14の占有時間を短くすることができる。これにより、複数台の車両Xに対する連続的な処理を効率よく行うことができる。
【0045】
また、空パレット移送部4は、出庫後の空パレットPT2を、入庫部21へ向けて入庫移送部2や出庫移送部3とは異なる経路で移送しているので、実車パレットPT1(入庫車両や出庫車両)の移送を妨げることなく空パレットPT2を入庫部21へと移送させることができる。その結果、複数台の車両Xに対する連続的な入出庫処理を一層効率よく行うことができる。そして、空パレット移送部4においても、複数の空パレットPT2を水平移送部41の上で待機させることができるため、空パレットPT2を速やかに入庫部21へと供給できる。これにより、複数台の車両Xに対する連続的な処理を効率よく行うことができる。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図8Aに示すように、この実施形態では、実車パレットPT1を待機させる出庫待機スペース32を、出庫移送部3の移送経路に隣接させて設けた点に特徴を有している。この例では、第2出庫移送部3bの一端部を第1実施形態よりもパレット1つ分延長することで、出庫待機スペース32を設けている。そして、第2出庫移送部3bは、出庫部31(出庫位置31a)と出庫待機スペース32との間で実車パレットPT1を移送する。
【0047】
例えば、先行の出庫車両Xを載せた実車パレットPT1が、運転者の都合等で受渡しできなかった場合、第2出庫移送部3bは、出庫部31の実車パレットPT1を出庫待機スペース32へ移送して待機させる。これにより、図8Bに示すように、後続の車両Xを先に出庫させることができる。このため、複数台の車両Xに対する連続的な出庫処理を効率化できる。
【0048】
なお、図8A,Bの実施形態では、1つの出庫待機スペース32を設けていたが、複数の出庫待機スペース32を設けてもよい。
【0049】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図9Aに示すように、この実施形態は、立体駐車部1の搬送台12a(昇降部材)を互いに隣接させた状態で複数有している点に特徴を有している。すなわち、2つの搬送台12aが、第2入庫移送部2b及び第1出庫移送部3aによるパレット移送方向に並んだ状態で設けられている。また、この実施形態では、各搬送台12aに隣接して2つのパレット受渡し部14が設けられるとともに、搬送台12a及び第1パレット受渡し部14の組に対応して2つのスライド機構12cが設けられている。
【0050】
この実施形態では、パレットPTの移送方向に並ぶ2つの搬送台12aを使用して、実車パレットPT1を昇降させることができる。そして、この実施形態でも各パレット受渡し部14は、各搬送台12aに隣接した位置に設けられているので、各パレット受渡し部14と各搬送台12aとの間におけるパレットPTの受渡しを速やかに行うことができる。これにより、複数台の車両Xに対する入出庫処理を一層効率よく行うことができる。
【0051】
なお、第3実施形態に関し、図9Bに示すように、立体駐車部1、入庫移送部2(入庫部21等)及び出庫移送部3(出庫部31等)の配置を、図9Aの実施形態の配置から変更してもよい。すなわち、図9Aの実施形態では、入庫移送部2から立体駐車部1を通って出庫移送部3に至る一連の経路を反転コ字状に構成していたが、図9Bに示すように、当該経路をコ字状に構成してもよい。図9Bの実施形態でも、図9Aの実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0052】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図10に示すように、この実施形態では、4つのパレット受渡し部14を、2行2列のマトリクス状に隣接させた状態に設けている。そして、スライド機構12cが、各パレット受渡し部14の間で実車パレットPT1を移送するように構成されている点に特徴を有している。
【0053】
また、入庫部21及び出庫部31は2つずつ設けられている。これに伴い、第1入庫移送部2aは、各入庫部21を結ぶ直線状に設けられ、入庫移送部2bは、互いに平行な2つの入庫移送路を形成するように設けられている。同様に、第1出庫移送部3aもまた、互いに平行な2つの出庫移送路を形成するように設けられ、第2出庫移送部3bは、各出庫部31を結ぶ直線状に設けられている。なお、空パレット移送部4については図示を省略したが、第1実施形態と同様に各移送部2,3の真下に設けられている。
【0054】
本実施形態において、実車パレットPT1は、マトリクス状に配置された各パレット受渡し部14を自由に移動できるため、リフト12における任意の搬送台12aを用いて昇降させることができる。これにより、搬送台12aの選択について自由度が増し、複数台の車両Xに対する入出庫処理を一層効率よく行うことができる。また、パレット受渡し部14を移送経路の一部とすることもできるので、待機中の実車パレットPT1を避けて他の実車パレットPT1を移送することもできる。
【0055】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。例えば、次のように構成してもよい。
【0056】
空パレット移送部4に関し、前述の実施形態では、入庫移送部2や出庫移送部3との間で2層に設けられたものについて説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、空パレット移送部4を入庫移送部2や出庫移送部3よりも上の階に設けてもよい。要するに空パレット移送部4は、入庫移送部2や出庫移送部3による移送に干渉しない別経路で空パレットPT2を移送するものであればよい。
【0057】
前述の第4実施形態では、4つのパレット受渡し部14を2行2列のマトリクス状に隣接させているが、この構成に限定されない。例えば、3行2列のマトリクス状に隣接させてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…立体駐車部,11…建物,11a…昇降通路,12…リフト,12a…搬送台,12b…棒状ガイド部材,12c…スライド機構,13…駐車スペース,14…パレット受渡し部,2…入庫移送部,2a…第1入庫移送部,2b…第2入庫移送部,21…入庫部,21a…入庫位置,3…出庫移送部,3a…第1出庫移送部,3b…第2出庫移送部,31…出庫部,31a…出庫位置,32…出庫待機スペース,4…空パレット移送部,41…水平移送部,42…空パレット搬出リフト,42a…搬送台,42b…棒状ガイド部材,43…空パレット搬入リフト,43a…搬送台,43b…棒状ガイド部材,PT…パレット,PT1…実車パレット,PT2…空パレット,X…車両
図2
図3
図4
図5
図9A
図9B
図10
図1
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B