(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982192
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】復水給水制御装置および復水給水サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F22B 37/42 20060101AFI20160818BHJP
F22B 37/46 20060101ALI20160818BHJP
F22D 11/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
F22B37/42 A
F22B37/46
F22D11/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-140096(P2012-140096)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-5955(P2014-5955A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100108785
【弁理士】
【氏名又は名称】箱崎 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】高 橋 一 平
(72)【発明者】
【氏名】当 房 昌 幸
(72)【発明者】
【氏名】野 上 和 生
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−003491(JP,A)
【文献】
特開2009−204255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/42
F22B 37/46
F22D 11/00
G21D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンから排気された蒸気を復水器にて復水し、復水ポンプとボイラ給水ポンプとで昇圧させた水を蒸気発生ドラムに供給して蒸気を発生させ、前記蒸気タービンへ供給する復水給水サイクルシステムに用いられ、
前記復水ポンプのうちで運転中の復水ポンプが異常停止した場合に、バックアップ起動指令信号を生成して待機中の復水ポンプに供給する復水ポンプバックアップ起動手段と、
前記バックアップ起動指令信号が生成されると、一時強制停止信号を生成して運転中のボイラ給水ポンプに供給し、前記ボイラ給水ポンプを強制的に一時停止させるボイラ給水ポンプ一時強制停止手段と、
前記ボイラ給水ポンプの吸込圧力を監視する吸込圧力監視回路と、
前記吸込圧力が安定化した後に前記強制停止されたボイラ給水ポンプを再起動させるボイラ給水ポンプ再起動手段と、
を備える復水給水制御装置。
【請求項2】
前記ボイラ給水ポンプの一時停止からの経過時間を測定し、前記ボイラ給水ポンプの前記吸込圧力が安定化する前に、予め設定された許容時間が超過した場合に、その旨をオペレータに通知するための第1のアラーム信号を生成する時限監視手段と、
前記第1のアラーム信号の生成により前記ボイラ給水ポンプ再起動手段の動作を停止する制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の復水給水制御装置。
【請求項3】
前記蒸気発生ドラムの水位を測定し、前記ボイラ給水ポンプの前記吸込圧力が安定化する前に、測定された前記蒸気発生ドラムの水位が予め設定された許容水位を下回った場合に、その旨をオペレータに通知するための第2のアラーム信号を生成する水位監視手段と、
前記第2のアラーム信号の生成により前記ボイラ給水ポンプ再起動手段の動作を停止する制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の復水給水制御装置。
【請求項4】
前記復水給水サイクルシステムは、前記ボイラ給水ポンプから前記蒸気発生ドラムへの給水量を制御する蒸気発生ドラム給水制御弁を有し、
前記ボイラ給水ポンプの一時停止により、前記蒸気発生ドラムへの給水制御の設定値を、前記ボイラ給水ポンプから前記蒸気ドラムへの実際の給水量にトラッキングさせるとともに、前記蒸気ドラムへの流入量の上限値を設定し、前記ボイラ給水ポンプが再起動してボイラ給水が再開した後、前記上限値の設定を一定時間継続させる給水量制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の復水給水制御装置。
【請求項5】
蒸気が有する熱エネルギーを回転エネルギーに変換する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから排気された蒸気を復水する復水器と、
前記復水器から供給された水の圧力を第1の圧力まで昇圧する復水ポンプと、
前記復水ポンプから供給された水の圧力を、前記第1の圧力を上回る第2の圧力まで昇圧するボイラ給水ポンプと、
前記ボイラ給水ポンプから供給された水から再び蒸気を発生させて前記蒸気タービンへ供給する蒸気発生ドラムと、
前記復水ポンプのうちで運転中の復水ポンプが異常停止した場合に、前記ボイラ給水ポンプを強制的に一時停止させ、前記ボイラ給水ポンプの吸込圧力が安定化した後に前記強制停止されたボイラ給水ポンプを再起動させる復水給水制御装置と、
を備え、
前記復水給水制御装置は、
前記運転中の復水ポンプが異常停止した場合に、バックアップ起動指令信号を生成して待機中の復水ポンプに供給する復水ポンプバックアップ起動手段と、
前記バックアップ起動指令信号が生成されると、一時強制停止信号を生成して運転中のボイラ給水ポンプに供給するボイラ給水ポンプ一時強制停止手段と、
前記ボイラ給水ポンプの吸込圧力を監視する吸込圧力監視回路と、
前記吸込圧力が安定化した後に前記強制停止されたボイラ給水ポンプを再起動させるボイラ給水ポンプ再起動手段と、
を備える復水給水サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、復水給水制御装置および復水給水サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所においては、ボイラの蒸気発生ドラムにより蒸気を発生させて蒸気タービンを駆動して発電機により発電し、該蒸気タービンから排気された蒸気を復水器で冷却し、凝結した復水を復水ポンプで昇圧した後にボイラ給水ポンプでさらに昇圧して蒸気発生ドラムに給水する復水給水サイクルシステムが採用されている。
【0003】
このような復水給水サイクルシステムにおいては、運転中の復水ポンプが何かしらの要因にて異常停止した場合に備え、復水ポンプおよびボイラ給水ポンプとして通常時の運転用のポンプに加えて予備のポンプをそれぞれ並列に接続した冗長構成とし、例えば運転中の復水ポンプが異常停止した場合、待機停止中の復水ポンプがバックアップ起動することで復水給水サイクルシステムが継続運転するようになっている。
【0004】
図8は、従来の技術による復水給水サイクルシステムの一例を示すブロック図である。
図8に示す復水給水サイクルシステムは、蒸気タービン100と、復水器110と、復水ポンプ1と、熱交換器3と、ボイラ給水ポンプ4と、蒸気発生ドラム給水制御弁V5と、ボイラ120とを備える。
【0005】
蒸気タービン100は、蒸気が有する熱エネルギーを、発電機(図示せず)を回転させるための回転エネルギーに変換する。
復水器110は、蒸気タービン100から排気された蒸気を冷却して水に戻す。
復水ポンプ1は、2台(1a,1b)を並列に接続して構成され、復水器110から供給された水の圧力を第1の圧力まで昇圧する。復水ポンプ1の吐出圧力は、圧力計PG1で測定される。
【0006】
熱交換器3は、復水ポンプ1から供給される水を熱交換により昇温し、その圧力を昇圧する。
【0007】
ボイラ給水ポンプ4は、2台(4a,4b)を並列に接続して構成され、熱交換器3を経由して復水ポンプ1から供給された水の圧力を、上記第1の圧力を上回る第2の圧力まで昇圧してボイラ120へ供給する。ボイラ給水ポンプ4a,4bの吸い込み口には、圧力計PG4a,PG4bが設けられ、復水器110から復水ポンプ1までの静水頭による圧力と、復水ポンプ1および熱交換器3により昇圧された復水の圧力との合計は、ボイラ給水ポンプ4a,4bにそれぞれ設けられた圧力計PG4a,PG4bによってボイラ給水ポンプ4a,4bの吸込直前で測定される。
【0008】
蒸気発生ドラム給水制御弁V5は、ボイラ給水ポンプ4からボイラ120へ供給される水の水量を調整する。
【0009】
ボイラ120は蒸気発生ドラム6を含む。蒸気発生ドラム6は、ボイラ給水ポンプ4から供給された水の圧力を降圧することで蒸気を発生させて蒸気タービン100へ供給し、これにより蒸気タービン100が駆動される。蒸気発生ドラム6には水位計WGと圧力計PG6が設けられている。
図8に示す復水給水サイクルシステムにおいて、復水ポンプ1とボイラ給水ポンプ4との間には脱気器等の貯水タンクが設けられていない。
【0010】
図8に示す復水給水サイクルシステムにおいて、例えば復水ポンプ1aが運転中であるところ、なんらかの要因で異常停止した場合、待機停止中の復水ポンプ1bがバックアップ起動することで復水給水サイクルシステムが継続運転するようになっている。
【0011】
しかしながら、運転中の復水ポンプ1aの異常停止から待機停止中の復水ポンプ1bがバックアップ起動するまでの過渡状態において、ボイラ給水ポンプ4の吸込圧力は、復水ポンプ1からの吐出圧力を失い、復水器110内の貯水量、および復水器110の出口からボイラ給水ポンプ4の入口に至る配管落差が持つ静水頭に依存することになる。ボイラ給水ポンプ4は、このようなクリティカルな状態で運転されるので、ボイラ給水システム4は、蒸気発生ドラム給水制御弁V5により給水量を制御しながら運転継続されることになる。
【0012】
このような過渡状態は、何かしらの要因により配管内の圧力や温度のバランスが崩れることでボイラ給水ポンプ4の吸込圧力が不安定になると、ボイラ給水ポンプ4は、自身が持つ機器保護機能によって停止し、さらには最悪の場合、ボイラ給水ポンプ4内部に気泡が発生することに起因してポンプインペラが損傷することに繋がることが懸念され、復水給水サイクルシステムの運転上、好ましい運転状態ではない。
【0013】
なお、
図8においてはボイラ給水ポンプ4も冗長化させているが(ボイラ給水ポンプ4a,4b)、例えばボイラ給水ポンプ4aの吸込圧力が不安定な状態の下では、保護停止後または事故停止後に補完操作にてもう一台のボイラ給水ポンプ4bを起動させて継続運転させようにも、同様に保護停止または事故停止することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平09−145893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、復水給水サイクルシステムに用いられ、吸込圧力が不安定な状態でのボイラ給水ポンプの継続運転を回避できる復水給水制御装置、およびこのような復水給水制御装置を備える復水給水サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
実施形態の復水給水制御装置は、蒸気タービンから排気された蒸気を復水器にて復水し、復水ポンプとボイラ給水ポンプとで昇圧させた水を蒸気発生ドラムに供給して蒸気を発生させ、前記蒸気タービンへ供給する復水給水サイクルシステムに用いられる。前記復水給水制御装置は、前記復水ポンプのうちで運転中の復水ポンプが異常停止した場合に、前記ボイラ給水ポンプを強制的に一時停止させ、前記ボイラ給水ポンプの吸込圧力が安定化した後に前記強制停止されたボイラ給水ポンプを再起動させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1による復水給水制御装置を備える復水給水サイクルシステムの概略構成を示すブロック図。
【
図2】
図1に示す復水給水制御装置の機能の一例を説明する図。
【
図3】
図1に示す復水給水制御装置を用いた復水給水サイクルシステムの制御方法の具体的手順を例示するフローチャート。
【
図4】実施形態2による復水給水制御装置を備える復水給水サイクルシステムの概略構成を示すブロック図。
【
図5】
図4に示す復水給水制御装置を用いた復水給水サイクルシステムの制御方法の具体的手順を例示するフローチャート。
【
図6】実施形態3による復水給水制御装置を備える復水給水サイクルシステムの概略構成を示すブロック図。
【
図7】
図6に示す復水給水制御装置を用いた復水給水サイクルシステムの制御方法の具体的手順を例示するフローチャート。
【
図8】従来の技術による復水給水サイクルシステムの一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態のいくつかについて図面を参照しながら説明する。図面において、同一の部分には同一の参照番号を付し、その重複説明は適宜省略する。なお、
図1、
図2、
図4、
図6および
図8において、ハッチングによる斜線は、何らかの要因で停止または休止した要素を示す。
【0019】
(1)実施形態1
図1は、実施形態1による復水給水制御装置を備える復水給水サイクルシステムの概略構成を示すブロック図である。本実施形態の復水給水サイクルシステムは、
図8に示す構成に加え、復水ポンプ1の異常停止を受けてボイラ給水ポンプ4を強制的に一時停止させ、ボイラ給水ポンプ4の吸込圧力が確立した後に一時停止させていたボイラ給水ポンプ4を再度起動させる復水給水制御装置130を備える。
【0020】
復水給水制御装置130は、吐出圧力監視回路15と、吸込圧力監視回路16と、復水ポンプバックアップ起動指令回路11と、ボイラ給水ポンプ一時強制停止回路12と、ボイラ給水ポンプ再起動指令回路14と、制御コンピュータ10と、モニタ18とを含む。
【0021】
吐出圧力監視回路15は、復水ポンプ1と熱交換器3との間に設置された圧力計PG1に接続され、復水ポンプ1の吐出圧力の測定データを与えられて復水ポンプ1に異常停止があったかどうかを検出する。
【0022】
制御コンピュータ10は、吐出圧力監視回路15から運転中の復水ポンプ1、例えば復水ポンプ1aに異常停止があったとの検出結果を受け、ボイラ給水ポンプ4を一時強制停止させるための制御信号S1を生成してボイラ給水ポンプ一時強制停止回路12へ供給する。これにより、ボイラ給水ポンプ一時強制停止回路12は、ボイラ給水ポンプ一時強制停止信号S2を生成して運転中のボイラ給水ポンプ4aへ送る。これにより、
図2に示すように、運転中のボイラ給水ポンプ4aが強制的に一時停止させられる。
【0023】
制御コンピュータ10はまた、復水ポンプ1bをバックアップ起動させるための制御信号S3を生成し、復水ポンプバックアップ起動指令回路11へ送る。これにより、復水ポンプバックアップ起動指令回路11は、復水ポンプバックアップ起動指令信号S4を生成して復水ポンプ1bへ送り、これにより、
図2に示すように、異常停止した復水ポンプ1aに代えて待機中の復水ポンプ1bが起動して運転を開始する。本実施形態において、復水ポンプバックアップ起動指令回路11は、例えば復水ポンプバックアップ起動手段に対応する。
【0024】
図1に戻り、吸込圧力監視回路16は、ボイラ給水ポンプ4a,4bの吸込口にそれぞれ設けられた圧力計PG4a,PG4bに接続され、それぞれの吸込圧力の測定データを与えられ、所定の閾値との比較等により、吸込圧力が安定したかどうかの監視を、ボイラ給水ポンプ4aが一時停止している間に行う。ボイラ給水ポンプ4aまたは4bの吸込圧力が安定したと判定すると、判定結果を制御コンピュータ10に供給する。本実施形態において、吸込圧力監視回路16は、例えば吸込圧力監視回路に対応する。
【0025】
制御コンピュータ10は、ボイラ給水ポンプ4aまたは4bの吸込圧力が安定したとの判定結果を吸込圧力監視回路16から受けると、ボイラ給水ポンプ4の運転を再開させるための制御信号S4を生成してボイラ給水ポンプ再起動指令回路14に送る。ボイラ給水ポンプ再起動指令回路14は、制御コンピュータ10から制御信号S4を与えられ、再起動指令信号S5を生成してボイラ給水ポンプ4aに供給する。これにより、一時停止していたボイラ給水ポンプ4aが再び運転を開始する。本実施形態において、ボイラ給水ポンプ一時強制停止回路12は、例えばボイラ給水ポンプ一時強制停止手段に対応し、また、ボイラ給水ポンプ再起動指令回路14は、例えばボイラ給水ポンプ再起動手段に対応する。
【0026】
本実施形態による復水給水制御装置130を用いた復水給水サイクルシステムの制御方法について、
図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0027】
まず、運転中の復水ポンプ1、例えば復水ポンプ1aに異常停止があった場合(ステップS1)、吐出圧力監視回路15がこれを検出する。吐出圧力監視回路15から検出結果を受けた制御コンピュータ10は、制御信号S1を生成して復水ポンプバックアップ起動指令回路11に送り、復水ポンプバックアップ起動指令信号S4を生成させて復水ポンプ1bに供給する。これにより、待機中の復水ポンプ1bが起動して運転を開始する(ステップS2)。
【0028】
制御コンピュータ10は、復水ポンプバックアップ起動指令とほぼ同時に、制御信号S1を生成してボイラ給水ポンプ一時強制停止回路12に送り、ボイラ給水ポンプ一時強制停止信号S2を生成させて運転中のボイラ給水ポンプ4aへ供給する。これにより、運転中のボイラ給水ポンプ4aが強制的に一時停止させられる(ステップS3)。
【0029】
その後、吐出圧力監視回路15により復水ポンプ1bの吐出圧力が回復して安定化したと判定され(ステップS4)、さらに吸込圧力監視回路16によりボイラ給水ポンプ4aの吸込圧力が回復して安定化したと判定されると(ステップS5)、ボイラ給水ポンプ再起動指令回路14が、制御コンピュータ10からの制御信号S4に基づいて再起動指令信号S5を生成してボイラ給水ポンプ4aに供給する。これにより、一時停止していたボイラ給水ポンプ4aが再び運転を開始する(ステップS6)。
【0030】
ボイラ給水ポンプ4が保護停止または事故停止となることは、蒸気発生ドラム6への給水停止を招き、ひいては復水給水サイクルシステムの運転継続をも不可能にしてしまい、蒸気タービンを用いる発電システムの発電運転継続を停止させることに繋がるものである。
【0031】
吸込圧力が不安定な状態のままでボイラ給水ポンプ4が継続的に運転することを回避するには、運転中の復水ポンプ1aの異常停止から、待機停止中の復水ポンプ1bがバックアップ起動されるまでの過渡状態の時間を極力短くする必要がある。しかしながら、電気的要因によるバックアップ起動動作の遅れやポンプモータ動作不良、その他の外的要因によってボイラ給水ポンプ4の吸込圧力が確保できない等、何かしらの2次的要因にて過渡状態の時間が長引いた場合、ボイラ給水ポンプ4の不安定状態下の運転継続は回避できない。
【0032】
本実施形態によれば、ボイラ給水ポンプ4が保護停止または事故停止する前に、復水ポンプ1が過渡状態となった時点でボイラ給水ポンプ4を一時停止させてしまうので、不安定状態下でのボイラ給水ポンプ4の運転継続を根本的に回避することが可能である。
【0033】
(2)実施形態2
図4は、実施形態2による復水給水制御装置を備える復水給水サイクルシステムの概略構成を示すブロック図である。
図1との対比により明らかなように、本実施形態は、実施形態1における復水給水制御装置130に代え、時限監視回路21およびドラムレベル監視回路23を含む復水給水制御装置132を備える。その他の構成は、
図1に示す復水給水サイクルシステムと実質的に同一である。
【0034】
前述した実施形態1では、復水ポンプ1が過渡状態となった時点でボイラ給水ポンプ4を一時停止させてしまうこととしたが、ボイラ給水ポンプ4が停止している間もボイラ120は稼働しており、蒸気発生ドラム6中の水から蒸気を発生させている。したがって、ボイラ給水ポンプ4の停止状態が許容される限界が当然にあり、蒸気発生ドラム6の許容水位を下回ってもなおボイラ給水ポンプ4の停止が解除されなければ、ボイラ120の空焚きという危険な事態を招くことになる。そこで、本実施形態では、タイマTMによる時限監視と蒸気発生ドラム6の水位による監視で蒸気発生ドラム6が許容限界を超えることを防止する。
【0035】
図4に示すように、時限監視回路21は、タイマTMを含み、制御コンピュータ10に接続される。時限監視回路21は、吐出圧力監視回路15が、運転中の復水ポンプ1aに異常停止があったこと検出すると、制御コンピュータ10を介してその検出結果を受け、その時点からタイマTMを起動させる。タイマTMには、蒸気発生ドラム6が許容限界を超えるまでの時間THTが予め設定されており、復水ポンプ1aの異常停止からカウントして時間THTに至ると時限監視回路21は、警告信号AL1を生成して制御コンピュータ10に供給する。本実施形態において、時限監視回路21は例えば時限監視手段に対応し、また、警告信号AL1は例えば第1のアラーム信号に対応する。
【0036】
ドラムレベル監視回路23は、制御コンピュータ10のほか、蒸気発生ドラム6に設けられた水位計WGに接続されて水位計WGの計測結果を受ける。ドラムレベル監視回路23は、時限監視回路21と同様に、吐出圧力監視回路15が、運転中の復水ポンプ1aに異常停止があったことを検出すると、制御コンピュータ10を介してその検出結果を受け、その時点から予め設定された蒸気発生ドラム6の許容水位と水位計WGの計測結果とを比較する。ドラムレベル監視回路23は、水位計WGの計測結果が蒸気発生ドラム6の許容水位を下回ると、警告信号AL2を生成して制御コンピュータ10に供給する。本実施形態において、ドラムレベル監視回路23は例えば水位監視手段に対応し、また、警告信号AL2は例えば第2のアラーム信号に対応する。
【0037】
制御コンピュータ10は、ボイラ給水ポンプ4の運転を再開させるための制御信号S4を生成する前に、時限監視回路21またはドラムレベル監視回路23から警告信号AL1または警告信号AL2を受け取ると、制御信号S8を生成してボイラ給水ポンプ再起動指令回路14に供給し、ボイラ給水ポンプ4aの再起動シーケンスを中止させるとともに、警告信号AL3を生成してディスプレイ18に供給し、ボイラ給水ポンプ4の再起動操作待ちが解除されたことを表示させる。これにより、オペレータは、自動運転以外の他の操作へ速やかに移行することが可能になる。本実施形態において、制御コンピュータ10は例えば制御手段に対応する。
【0038】
本実施形態による復水給水制御装置132を用いた復水給水サイクルシステムの制御方法について、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0039】
まず、運転中の復水ポンプ1aに異常停止があった場合(ステップS11)、上述した実施形態1と同様に、吐出圧力監視回路15がこれを検出し、制御コンピュータ10を介した復水ポンプバックアップ起動指令回路11の制御により、待機中の復水ポンプ1bが起動して運転を開始する(ステップS12)。ほぼ同時に、制御コンピュータ10を介したボイラ給水ポンプ一時強制停止回路12の制御により、運転中のボイラ給水ポンプ4aが強制的に一時停止させられる。(ステップS13)。
【0040】
そして、待機中の復水ポンプ1bが起動すると、制御コンピュータ10がトリガ信号TS1,TS2を生成して時限監視回路21およびドラムレベル監視回路23に供給し、これにより、時限監視回路21による時限監視、およびドラムレベル監視回路23によるドラムレベルの監視が始まる(ステップS14)。
【0041】
以降は、設定時間が超過しない(ステップS15のNo、S25のNo)、または水位計WGの計測結果が蒸気発生ドラム6の許容水位を下回らない限り(ステップS16のNo、S26のNo)、上述した実施形態1と同様に、吐出圧力監視回路15による復水ポンプ1bの吐出圧力の確立判定(ステップS24)、吸込圧力監視回路16によるボイラ給水ポンプ4aの吸込圧力の確立判定(ステップS35)を経て、制御コンピュータ10を介したボイラ給水ポンプ再起動指令回路14の制御により、一時停止していたボイラ給水ポンプ4aが再び運転を開始する(ステップS36)。
【0042】
しかしながら、ボイラ給水ポンプ4aの一時強制停止から再起動に至るまでに、時限監視回路21により設定時間が超過したと判定され(ステップS15のYes、S25のYes)、または水位計WGの計測結果が蒸気発生ドラム6の許容水位を下回った(ステップS16のYes、S26のYes)と判定され場合は、警告信号AL1または警告信号AL2を受けた制御コンピュータ10が、ボイラ給水ポンプ4aの再起動シーケンスを中止し、警告信号AL3をディスプレイ18に供給してボイラ給水ポンプ4の再起動操作待ちが解除されたことを表示させる(ステップS27)。これにより、オペレータは、自動運転以外の他の操作へ速やかに移行することが可能になる。この場合、ボイラ給水ポンプ4aの運転が自動的に再開されることはない。
【0043】
本実施形態によれば、時限監視回路21によりボイラ給水ポンプ4が蒸気発生ドラム6の許容限界を超えて停止することを防止し、また、ドラムレベル監視回路23によりボイラ給水ポンプ4aの再起動前に蒸気発生ドラム6の水位が許容水位を下回ることを未然に防止するので、復水給水サイクルシステムの継続運転が不能になる事態を確実に防止することができる。
【0044】
なお、上述した説明では復水給水サイクルシステムが時限監視回路21およびドラムレベル監視回路23の双方を備える場合を取り挙げたが、これに限ることなく、いずれか一方のみを具備することとして、時限監視およびドラムレベル監視の一方のみを行うこととしてもよい。
【0045】
(3)実施形態3
図6は、実施形態3による復水給水制御装置を備える復水給水サイクルシステムの概略構成を示すブロック図である。
図1との対比により明らかなように、本実施形態は、実施形態1における復水給水制御装置130に代え、ドラム流入量設定値切替回路25およびドラム給水制御弁上限開度切替回路27を含む復水給水制御装置134を備える。本実施形態の復水給水システムのその他の構成は、
図1に示す復水給水サイクルシステムと実質的に同一である。
【0046】
上述した実施形態1または2のシーケンスによれば、ボイラ給水ポンプ4aが強制的に一時停止した後であっても、蒸気発生ドラム6は蒸気の発生を継続しているため、その後ボイラ給水ポンプ4aが再起動した直後は、強制停止した時よりも蒸気発生ドラム6の水位が低下している。この状態で通常のボイラ120への給水操作を実施すると、蒸気発生ドラム給水制御弁V5は蒸気発生ドラム6のレベルを復旧させるために蒸気発生ドラム6への給水を無制限で行うことになる。これを放置すると、ボイラ給水ポンプ4aが即座に過流量運転となるおそれがあり、その場合は蒸気発生ドラム6に過大な負荷が掛かることになる。
【0047】
そこで、本実施形態の復水給水サイクルシステムは、制御コンピュータ10および蒸気発生ドラム給水制御弁V5に接続されたドラム流入量設定値切替回路25により、ボイラ給水ポンプ4aの一時強制停止を受けて蒸気発生ドラム6への給水制御のレベル制御設定値を実レベルに切り替えて蒸気発生ドラム給水制御弁V5をトラッキングにて動作させる。そのため、ドラム流入量設定値切替回路25は、蒸気発生ドラム6の圧力計PG6にも接続され、蒸気発生ドラム6内の圧力データを送られてボイラ給水ポンプ4aによる給水状態が定常状態にあるかどうかを判定する。本実施形態の復水給水サイクルシステムはまた、制御コンピュータ10および蒸気発生ドラム給水制御弁V5に接続されたドラム給水制御弁上限開度切替回路27により、蒸気発生ドラム給水制御弁V5の上限開度を蒸気発生ドラム6内の水位から導かれる給水流量制限開度に設定する。そのため、ドラム給水制御弁上限開度切替回路27は、蒸気発生ドラム6の圧力計PG6にも接続され、蒸気発生ドラム6内の圧力データを送られてボイラ給水ポンプ4aによる給水状態が定常状態にあるかどうかを判定する。
【0048】
ドラム流入量設定値切替回路25およびドラム給水制御弁上限開度切替回路27はさらに、ボイラ給水ポンプ4aが再起動した後であっても、一定時間だけ蒸気発生ドラム給水制御弁V5に上記設定を継続させ、再開後のボイラ給水ポンプ4aによる給水状態が定常状態へ移行したことが確認されると、蒸気発生ドラム給水制御弁V5の設定を通常レベルおよび通常開度へそれぞれ切り替える。本実施形態において、ドラム流入量設定値切替回路25およびドラム給水制御弁上限開度切替回路27は、例えば給水量制御手段に対応する。
【0049】
本実施形態による復水給水制御装置134を用いた復水給水サイクルシステムの制御方法について、
図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0050】
まず、運転中の復水ポンプ1aに異常停止があった場合(ステップS41)、上述した実施形態1と同様に、吐出圧力監視回路15がこれを検出し、制御コンピュータ10を介した復水ポンプバックアップ起動指令回路11の制御により、待機中の復水ポンプ1bが起動して運転を開始する(ステップS42)。ほぼ同時に、制御コンピュータ10を介したボイラ給水ポンプ一時強制停止回路12の制御により、運転中のボイラ給水ポンプ4aが強制的に一時停止させられる。(ステップS43)。
【0051】
次いで、ドラム流入量設定値切替回路25およびドラム給水制御弁上限開度切替回路27が制御コンピュータ10からボイラ給水ポンプ4aが強制的に一時停止されたことの通知を受けて制御信号S6,S16をそれぞれ生成し、蒸気発生ドラム給水制御弁V5へ供給する。これにより、蒸気発生ドラム給水制御弁V5は、給水制御弁のレベル制御を通常レベルから実レベルのトラッキング動作に切り替え(ステップS44)、さらに、給水の上限レベルを通常開度から給水流量制限開度へ切り替える(ステップS45)。
【0052】
その後、吐出圧力監視回路15による復水ポンプ1bの吐出圧力の確立判定(ステップS54)、吸込圧力監視回路16によるボイラ給水ポンプ4aの吸込圧力の確立判定(ステップS55)を経て、制御コンピュータ10を介したボイラ給水ポンプ再起動指令回路14の制御により、一時停止していたボイラ給水ポンプ4aが再び運転を開始しても(ステップS56)、ボイラ給水ポンプ4aによる給水状態が定常状態へ移行するまでは、蒸気発生ドラム給水制御弁V5が、上述の実レベルおよび給水流量制限開度を維持する(ステップS57のNo)。
【0053】
そして、ボイラ給水ポンプ4aによる給水状態が定常状態へ移行すると(ステップS57のYes)、ドラム流入量設定値切替回路25およびドラム給水制御弁上限開度切替回路27は、制御信号S7,S17をそれぞれ生成して蒸気発生ドラム給水制御弁V5へ供給し、これにより、蒸気発生ドラム給水制御弁V5が、給水制御弁のレベル制御を実レベルから通常レベルへ戻し(ステップS58)、給水の上限開度を給水流量制限開度から通常開度へ戻す(ステップS59)。
【0054】
このように、本実施形態によれば、ボイラ給水ポンプ4aによる給水状態に応じて蒸気発生ドラム給水制御弁V5から蒸気発生ドラム6への給水量を制御するドラム流入量設定値/上限開度切替回路25を備えるので、ボイラ給水ポンプ4の過流量運転を防止して復水給水サイクルシステムの安全継続運転を実現することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1,1a,1b…復水ポンプ、4,4a,4b…ボイラ給水ポンプ、6…蒸気発生ドラム、10…制御コンピュータ、11…復水ポンプバックアップ起動指令回路、12…ボイラ給水ポンプ一時強制停止、14…ボイラ給水ポンプ再起動指令回路、15…吐出圧力監視回路、16…吸込圧力監視回路、21…時限監視回路、23…ドラムレベル監視回路、25…ドラム流入量設定値切替回路、27…ドラム給水制御弁上限開度切替回路、100…蒸気タービン、110…復水器、120…ボイラ、130,132,134…復水給水制御装置、PG1,PG4a,PG4b,PG6…圧力計、V5…蒸気発生ドラム給水制御弁、WG…水位計