(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上部構造物及び下部構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した上沓及び下沓で構成し、該上沓及び下沓との対向部分における摺動面同士の摺動を許容する支承装置であって、
前記下沓に、
前記摺動面を構成する下沓摺動面構成部材を嵌め込むとともに、前記上沓の摺動面の挿入を許容し、前記上沓及び下沓の前記摺動面同士が摺動する摺動部分が配置される挿着凹部を備え、
前記挿着凹部の径外側の下沓上面及び前記挿着凹部の内面のうち少なくともいずれかと、前記上沓とを跨ぐとともに、前記摺動部分の径外側を囲うようにそれぞれと密着する環状部材のダストカバーを備えた
支承装置。
上部構造物及び下部構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した上沓及び下沓で構成し、該上沓及び下沓との対向部分における摺動面同士の摺動を許容する支承装置に装着するダストカバーであって、
前記摺動面を構成する下沓摺動面構成部材を嵌め込むとともに、前記上沓の摺動面の挿入を許容し、前記上沓及び下沓の前記摺動面同士が摺動する摺動部分が配置される、前記下沓に備えた挿着凹部の径外側の下沓上面及び前記挿着凹部の内面のうち少なくともいずれかと、前記上沓とを跨ぐとともに、前記摺動部分の径外側を囲うようにそれぞれと密着する環状部材で構成する
ダストカバー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、確実に防塵できるとともに、耐久性のあるダストカバー及び、当該ダストカバーを備えた支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上部構造物及び下部構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した上沓及び下沓で構成し、該上沓及び下沓との対向部分における摺動面同士の摺動を許容する支承装置であって、前記下沓に、前記摺動面を構成する下沓摺動面構成部材を嵌め込むとともに、前記上沓の摺動面の挿入を許容し、前記上沓及び下沓の前記摺動面同士が摺動する摺動部分が配置される挿着凹部を備え、前記挿着凹部の
径外側の下沓上面及び前記挿着凹部の内面のうち少なくともいずれかと、前記上沓とを跨ぐとともに、前記摺動部分の
径外側を囲うようにそれぞれと密着する環状部材のダストカバーを備えたこと、または当該構成のダストカバーであることを特徴とする。
【0009】
上記上部構造物及び下部構造物は、例えば、橋脚を下部構造物とし、主桁を上部構造物とする橋梁、ビルを下部構造物とし、ビルとビルとを連絡する渡り廊下を上部構造物とする連絡通路、柱を下部構造物とし、トラス屋根を上部構造物とする屋根構造、あるいは、ビルを下部構造物とし、別のビルを上部構造物とするエキスパンション構造における構造物とすることができる。
上記環状部材は、平面視円形リング部材のみならず、閉鎖形状であれば、外形が矩形や多角形のリング部材も含む概念である。
【0010】
上記支承装置は、回転方向の移動のみを許容する固定支承あるいは可動支承であり、可動支承としては、摺動面における面内方向の任意の方向に可動する全方向可動支承、あるいは面内方向の一方向に可動する一方向可動支承とすることができる。
【0011】
上記面内方向は、例えば、上沓及び下沓との対向部分における摺動面が平面である場合、摺動面同士が摺動する摺動部分を構成する平面上の方向であり、該平面に交差する方向を含まない概念である。
【0012】
上述の前記挿着凹部の
径外側の下沓上面は、下沓本体において前記挿着凹部が形成された
径外側の上面、あるいは下沓本体に固定した部材を介した当該上面部分であることを含む概念とする。
また、上述の前記挿着凹部の内面は、挿着凹部における内側面や、高さ方向中間部分で縮径された挿着凹部における縮径部分の底面等を含む概念である。
【0013】
さらに、上述の前記挿着凹部の
径外側の下沓上面及び前記挿着凹部の内面のうち少なくともいずれかと、前記上沓とを跨ぐとともに、前記摺動部分の
径外側を囲うようにそれぞれと密着する環状部材は、環状部材の外径側が前記挿着凹部の
径外側の下沓上面及び前記挿着凹部の内面のうち少なくともいずれかと環状に密着し、環状部材の内径側が前記上沓と環状に密着することで、環状部材が前記挿着凹部の
径外側の下沓上面及び前記挿着凹部の内面のうち少なくともいずれかと、前記上沓とを跨ぐようにそれぞれに密着することを示している。
【0014】
また、上述の摺動部分の
径外側を囲うように密着するとは、摺動部分の
径外側において、連続して環状に囲うように、沓に密着することを指し、さらに、密着するとは、ダストや水等が侵入することなく、密着部分に隙間なく接着する状態や、摺動可能に接触する状態を含む概念である。
上記環状部材は、摺動部分の
径外側を囲めばよく、面内方向における円形、略矩形あるいは略三角形等の略多角形で構成することができる。
【0015】
この発明により、耐久性のあるダストカバーで摺動面へダストや水等が侵入することを防止できる。
詳しくは、前記挿着凹部の
径外側の下沓上面及び前記挿着凹部の内面のうち少なくともいずれかと、前記上沓とを跨ぐとともに、前記摺動部分の
径外側を囲うようにそれぞれと密着する環状部材のダストカバーを備えたことにより、例えば、高荷重下であっても磨耗したり、変形したりすることなく、確実にシールすることができる。
【0016】
また、ダストカバーが、下沓側の前記挿着凹部の内面、及び前記挿着凹部の
径外側の上面のうち少なくともいずれかに密着することで様々な形状の下沓であっても、挿着凹部内に位置する摺動部分より上方を確実にシールすることができる。
したがって、摺動部分へのダストや水等の侵入経路をダストカバーで塞ぐことで、摺動部分へダストや水等が侵入することを防止できる。
【0017】
この発明の態様として、前記上沓を、底面に底面視円形の摺動面を有する略円柱状で構成し、前記ダストカバーを、内側に平面視円形の開口を有する円形開口環状部材で構成することができる。
【0018】
この発明により、上沓と下沓の両方に密着してシールするダストカバーを、底面に底面視円形の摺動面を有する略円柱状で構成した上沓の形状に合わせて、内側に平面視円形の開口を有する円形開口環状部材で構成することにより、例えば、矩形開口を有する環状部材で構成する場合に比べて、シール性を向上することができる。
【0019】
詳しくは、略円柱状の上沓に対して、矩形開口を有する環状部材で構成するダストカバーの場合、矩形開口における内周縁部と、円柱状の上沓との間隔が周方向において異なるため、環状のダストカバーの周方向においてシール性が均一とならない。これに対し、円形開口における内周縁部と円柱状の上沓との間隔が周方向において変化せず、均一なシール性を確保することができる。したがって、円形開口を有する円形開口環状部材が円柱状の上沓に密着することで、シール性を向上することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記環状部材を、環状方向において複数に分割可能に構成することができる。
この発明により、上沓と下沓を対向させて支承装置を組み付けた状態であっても、環状のダストカバーを分割して、容易に交換や整備等を行うことができる。したがって、向上されたシール性を、長期にわたって維持することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記上沓に、前記摺動面より
径外側に突出するフランジ部を備えるとともに、前記下沓に、前記上沓の摺動面における
径外側において前記フランジ部の浮き上がりを防止可能に構成したストッパーを備え、前記ダストカバーが、前記フランジ部の外側面、上面、及び前記上沓の外側面のうち少なくともいずれかに密着する構成とすることができる。
この発明により、例えば、浮き上がり防止可能な支承装置であっても、ダストカバーによって確実にシールすることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記ストッパーを環状方向に複数配置し、前記ストッパー同士の間をシールするサブダストカバーを備えることができる。
この発明により、ストッパーを備えたことにより、ダストカバーが複雑な形状となることなく、確実なシール性を確保することができる。詳しくは、下沓に、上沓のフランジ部を所定方向に拘束するストッパーを備えたことにより、下沓に接触するダストカバーの形状が複雑になり、例えばストッパー同士の間等におけるシール性が低下するおそれがある。これに対し、ストッパー同士の間をシールするサブダストカバーを備えたことにより、サブダストカバーでストッパー同士の間におけるシール性を確保することができる。また、サブダストカバーによりストッパー同士の間をシールするため、容易に、ダストカバーにおけるシール性を確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、確実に防塵できるとともに、耐久性のあるダストカバー及び、当該ダストカバーを備えた支承装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は支承装置1の一部切断斜視図を示し、
図2は支承装置1の縦断面図を示し、
図3は支承装置1の分解斜視図を示し、
図4、5は支承装置1及びダストカバー40の組付けについての説明図を示している。
【0026】
各図面について詳細に説明すると、
図1において、上沓2と下沓3とで構成する支承装置1の構成について理解を容易にするため、上沓2と下沓3とを組み付けて構成した支承装置1の手前側の一部を切り欠いた状態の斜視図を示している。
【0027】
また
図2は、支承装置1の縦断面図を示しているが、中心線CLより右側を
図1におけるA−A矢視図を示し、中心線CLより左側を
図1におけるB−B矢視図を示している。
【0028】
図3は、上沓2及び下沓3で構成する支承装置1及びダストカバー40を分解した状態の斜視図を示している。なお、
図1及び
図3、並びに後述する
図4及び
図5では、
図2及び
図6において破線で示す上部構造物2a及び下部構造物3aの図示を省略している。また、
図3も、
図1と同様に、支承装置1の構成について理解を容易にするため、手前側の一部を切り欠いた状態の斜視図を示している。
【0029】
支承装置1及びダストカバー40の組付けについての説明図である
図4の
図4(a)は下沓3のベースポット本体30の挿着凹部30aに上沓2を挿入した状態の斜視図を示し、
図4(b)はベースポット本体30にストッパー36を取り付けた状態の斜視図を示し、
図4(c)はベースポット本体30にサブダストカバー42を取り付けた状態の斜視図を示し、
図4(d)はベースポット本体30にメインダストカバー41を取り付けて組み付けが完了した状態の支承装置1の斜視図を示している。
【0030】
なお、
図4(e)、(f)は別の実施形態のメインダストカバー41についての説明図を示し、詳しくは、
図4(e)は分割可能に構成したメインダストカバー41の斜視図を示し、
図4(f)は分割可能に構成したメインダストカバー41を組み付けた状態の斜視図を示している。
図5(a)乃至(d)は、
図4(a)乃至(d)における各状態の平面図を示している。
【0031】
支承装置1は、上部構造物である主桁2a(
図2において破線で示す)を、下部構造物である橋脚3a(
図2において破線で示す)で支持する橋梁における支承装置であり、主桁2aの底面に固定された上沓2と、橋脚の上面に固定された下沓3と、ダストカバー40とで構成し、下沓3に対する上沓2の水平面内回転を許容する構成である。
【0032】
上沓2は、略円柱状に構成され、底面にスライドプレート21を備えた円柱本体20と、円柱本体20の下端部において径方向外側に突出するフランジ部22とで構成している。なお、スライドプレート21は、SUS304で構成し、その底面は研磨仕上げされている。
【0033】
下沓3は、下から順に、上面に挿着凹部30aを有するベースポット本体30と、弾性プレート31、シム32、シールリング33、ピストン34、ベアリング35、及びストッパー36で構成している。
【0034】
ベースポット本体30は、橋脚3aに取り付けられる平面視矩形であり、本体上面30bに上述する弾性プレート31、シム32、シールリング33、ピストン34及びベアリング35並びに上沓2が、下からこの順で挿入される平面視円形の挿着凹部30aが開口している。
【0035】
なお、挿着凹部30aは、弾性プレート31、シム32、シールリング33、ピストン34及びベアリング35が挿入され、これらと略同じ径で形成された小径開口部30aaと、円柱本体20のフランジ部22の外径よりひとまわり大きな径で形成した大径開口部30abとが上下に連続して形成されている。
【0036】
弾性プレート31は、挿着凹部30aの小径開口部30aaよりわずかに小さな径の平面視円形、且つ小径開口部30aaの深さの半分程度の高さを有するゴム製のプレートである。
シム32は、弾性プレート31と同じ径の平面視円形形状で形成したフッ素樹脂製の薄板で形成している。
【0037】
シールリング33は、径外側が垂直面となる断面台形状の円形リングであり、外径が弾性プレート31及びシム32と同じ径で形成し、シールリング33における台形断面における内径側が、連続して上方に向かうにつれ径外側に広がる傾斜面で形成している。
【0038】
ピストン34は、ステンレス製の略円錐台形状であり、シールリング33の嵌合を許容する嵌合溝34aを外周面の下端に形成している。
ベアリング35は、フッ素樹脂で構成された平面視円形の板状体であり、自己潤滑性を有しており、表面が低摩擦係数であり、ピストン34の上面に接合されている。なお、ピストン34の上面にベアリング35が嵌合する円形挿着凹部を形成し、円形挿着凹部にベアリング35をはめ込んで接合してもよい。
【0039】
ストッパー36は、所定長さのL型断面部材で構成し、平面視矩形に形成したベースポット本体30の対向する辺において、側面視L型の内角部がベースポット本体30の角部に沿うように配置し、ストッパー36のストッパ上面部分36aが、ベースポット本体30の本体上面30bに形成した挿着凹部30aにおいて径内側に突出するように装着される。
【0040】
支承装置1に装着するダストカバー40は、平面視リング状のメインダストカバー41と、メインダストカバー41の下面側に配置されるサブダストカバー42とを重ね合わせて構成している。メインダストカバー41とサブダストカバー42はともに、独立気泡性のCR系あるいはEPDM系のスポンジゴムで構成している。なお、ダストカバー40は、耐候性、非吸水性、下沓3に対する上沓2の回転を妨げない変形性を有する材質であれば、CR系あるいはEPDM系のスポンジゴムに限定されない。
【0041】
メインダストカバー41は、円柱本体20の外径と略同一な径の円形開口41aを有するとともに、フランジ部22の外径よりひと回り大きな外径を有する平面視リング状に形成し、周方向の一部に、径方向に対して交差する方向に切断した切断部41bを形成している。
【0042】
サブダストカバー42は、メインダストカバー41の円形開口41aの径と、メインダストカバー41の外径を有するアーチ状に形成し、その長さは、上述したように対向配置したストッパー36同士の間に配置して、その間を塞ぐ長さで形成している。また、サブダストカバー42は、ストッパー36のストッパ上面部分36aと略同じ高さ(厚み)で構成し、ベースポット本体30の本体上面30bに対して、ストッパー36同士の間に接着固定される。そして、メインダストカバー41は、本体上面30bに接着されたサブダストカバー42とストッパー36のストッパ上面部分36aとを跨ぐように、サブダストカバー42とストッパ上面部分36aの上面に接着固定している。
【0043】
上述したような構成でそれぞれが構成された支承装置1は、下沓3のベースポット本体30の挿着凹部30aに、弾性プレート31、シム32、嵌合溝34aにシールリング33を装着したピストン34、並びにベアリング35を、下からこの順で小径開口部30aaに挿着する。このとき、ピストン34の上部及びベアリング35は、小径開口部30aaの上部に露出する状態で挿着される。
【0044】
そして、スライドプレート21が底面に装着された円柱本体20を、ベアリング35とスライドプレート21が対向するように大径開口部30abに挿着し(
図4(a)及び
図5(a)参照)、その円柱本体20のフランジ部22より上方からストッパー36をベースポット本体30に取り付ける(
図4(b)及び
図5(b)参照)。
【0045】
このとき、スライドプレート21の底面と大径開口部30abの底面との間には高さ方向のクリアランスが形成されるとともに、フランジ部22の外側面と大径開口部30abの内側面との間にも径方向のクリアランスが形成される。
【0046】
さらには、ストッパー36の底面とフランジ部22の上面との間に高さ方向のクリアランスが形成されるとともに、ストッパー36における径内側に突出する部分の端部と円柱本体20の外側面との間にも径方向のクリアランスが形成される。
【0047】
この状態では、挿着凹部30aの径内側向きに突出するように取り付けられたストッパー36によって上沓2のフランジ部22は、上部において上下方向の移動が制限され、上沓2は下沓3に対して、水平面内方向の回転可能な支承状態となる。
【0048】
しかしながら、上述したように、スライドプレート21の底面と大径開口部30abの底面との間、及びストッパー36の底面とフランジ部22の上面との間に高さ方向のクリアランス、並びに、フランジ部22の外側面と大径開口部30abの内側面との間、及びストッパー36における径内側に突出する部分の端部と円柱本体20の外側面との間に径方向のクリアランスが形成され、さらには、弾性プレート31の弾性により、上沓2と下沓3は、
図2に示すように、所定角度θの鉛直面内方向における回転が許容される状態となる。
【0049】
続いて、
図4(c)及び
図5(c)に示すように、対向配置したストッパー36同士の間にサブダストカバー42を配置し、接着剤で固定する。詳しくは、ストッパー36の幅方向両側同士の間において、サブダストカバー42の内周側が円柱本体20の外側面に接触し、挿着凹部30aにおいて、上方から望んで露出するフランジ部22に被せるようにして、ベースポット本体30の本体上面30bにサブダストカバー42を固定する。このとき、サブダストカバー42はストッパー36のストッパ上面部分36aと同じ厚みで形成しているため、サブダストカバー42の上面と、ストッパー36のストッパ上面部分36aとは略面一となる。
【0050】
そして、
図4(d)及び
図5(d)に示すように、サブダストカバー42及びストッパ上面部分36aを跨ぐようにメインダストカバー41を装着し、接着剤で固定する。このとき、メインダストカバー41の切断部41bを開き、円柱状の円柱本体20の外側面に、円形開口41aを形成する内周縁が密着状態で、接着せずにメインダストカバー41を装着して、支承装置1の組み付けを完了する。
このようにして組み付けられた支承装置1は、現場で主桁2a及び橋脚3aの間の所定箇所に運ばれて設置する。
【0051】
このように、ダストカバー40を備えた支承装置1では、上沓2が下沓3に対して水平面内方向の回転可能に支承する状態において、メインダストカバー41及びサブダストカバー42の内周側面が円柱本体20の外側面と摺動しながら挿着凹部30aの上部を覆うことで、ベースポット本体30のベアリング35と、円柱本体20のスライドプレート21とが摺動する摺動部分Sへのダストや水等の侵入を防止することができる。
【0052】
詳述すると、主桁2a及び橋脚3aにおけるそれぞれの対向部分に配設し、上沓2及び下沓3におけるスライドプレート21及びベアリング35の摺動を許容する支承装置1において、摺動部分Sが配置される挿着凹部30aの面内方向外側の本体上面30bと、底面に底面視円形のスライドプレート21を有する略円柱状で構成した円柱本体20とを跨いでそれぞれに密着するダストカバー40により、挿着凹部30a内部における摺動部分Sより上部で、摺動部分Sへのダストの侵入経路をシールすることができる。
【0053】
つまり、ベースポット本体30の本体上面30bに開口するため、ダストや水等が侵入しやすく、たまりやすい挿着凹部30aの内部で上沓2と下沓3とが摺動部分Sで摺動するが、挿着凹部30a内部における摺動部分Sより上部で、摺動部分Sへのダストや水等の侵入経路となる挿着凹部30aの開口部分をダストカバー40で覆ってシールするため、摺動部分Sより上部で摺動面へのダストの侵入経路をシールし、摺動部分Sへのダストや水等の侵入を防止することができる。
【0054】
また、ダストカバー40を、耐候性、非吸水性、下沓3に対する上沓2の回転を妨げない変形性を有する材質である独立気泡性のCR系あるいはEPDM系のスポンジゴムで構成しているため、円柱本体20及び本体上面30bに対するダストカバー40の密着性は高く、より確実に摺動部分Sへのダストや水等の侵入を防止できる。
【0055】
なお、硬度が10〜35、より好ましくは20〜30で設定された、耐候性、非吸水性、下沓3に対する上沓2の回転を妨げない変形性を有する材質でダストカバー40を構成することにより、より耐久性が高く、ダストカバー40に求められる所望の機能を十分に発揮することができる。
【0056】
また、ダストカバー40の円形開口41aを、円柱本体20の外径に応じた平面視円形に形成したことにより、例えば、矩形開口を有する環状部材でダストカバーを構成する場合に比べて、均一な密着状態でシールして確実に摺動部分Sへのダストや水等の侵入を防止することができる。
【0057】
また、ベースポット本体30において対向配置したストッパー36同士の間を塞ぐようにサブダストカバー42を備え、メインダストカバー41が、フランジ部22の上方の円柱本体20の外側面及びフランジ部22の上面と、サブダストカバー42及びストッパ上面部分36aとを跨いで密着するため、ダストカバー40で確実に摺動部分Sへのダストや水等の侵入を防止することができる。
【0058】
詳しくは、上沓2のフランジ部22の上方への移動を制限するストッパー36をベースポット本体30において対向配置したことにより、上沓2及び下沓3に密着するダストカバー40の形状が複雑になり、例えばストッパー36同士の間等におけるシール性が低下するおそれがあるが、ストッパー36同士の間をシールするサブダストカバー42を備えるとともに、メインダストカバー41が、フランジ部22の上方の円柱本体20の外側面及びフランジ部22の上面と、サブダストカバー42及びストッパ上面部分36aとを跨いで密着するため、ダストカバー40でストッパー36同士の間におけるダストや水等の侵入経路をシールすることができる。
【0059】
また、組み立て環境が整った工場等で、上沓2と下沓3とを組み付け、ダストカバー40を装着して支承装置1を構成してから運搬して、施工環境が厳しい現場における所定箇所に設置できるため、取り付け作業性が向上する。また、組み立て環境が整った工場等で上沓2と下沓3とを組み付けてからダストカバー40を装着するため、現場で主桁2aに上沓2を取り付け、橋脚3aに下沓3を取り付けて、所定箇所に支承装置1を構成する場合に比べて、施工性が格段に向上する。また、ダストカバー40を装着してから支承装置1を運び出すため、運搬途中や、設置途中に、摺動部分Sにダストや水等が侵入することを防止できる。
【0060】
また、上沓2は下沓3に対してストッパー36により、上下移動が規制されるものの、上述したように、スライドプレート21の底面と大径開口部30abの底面との間、及びストッパー36の底面とフランジ部22の上面との間に高さ方向のクリアランス、並びに、フランジ部22の外側面と大径開口部30abの内側面との間、及びストッパー36における径内側に突出する部分の端部と円柱本体20の外側面との間に径方向のクリアランスが形成されるとともに、下沓3を構成する弾性プレート31が弾性を有するため、所定角度θの鉛直面内方向における回転が許容される状態で下沓3に対して上沓2を支承することができる。
【0061】
なお、上述の説明では、
図2及び
図6(a)に示すように、サブダストカバー42をベースポット本体30の本体上面30bにおける所定位置に接着固定し、メインダストカバー41をサブダストカバー42及びストッパ上面部分36aに接着固定し、メインダストカバー41の円形開口41aを形成する内周縁と円柱本体20の外側面が摺動する構成であったが、サブダストカバー42を本体上面30bに接着固定し、メインダストカバー41を円柱本体20の外側面に接着固定して、サブダストカバー42の上面及びストッパ上面部分36aと、メインダストカバー41の底面とが摺動してもよい。また、メインダストカバー41は、円柱本体20の外側面、サブダストカバー42及びストッパ上面部分36aのいずれとも接着せず、円柱本体20の外側面並びにサブダストカバー42及びストッパ上面部分36aと摺動する構成であってもよい。
【0062】
また、メインダストカバー41とサブダストカバー42とを接着により一体化してダストカバー40を構成してもよく、また、メインダストカバー41とサブダストカバー42とを予め一体成型してダストカバー40を構成してもよい。この場合、円柱本体20の外側面と接着しなければ、本体上面30bやストッパ上面部分36aに接着固定しても、しなくてもよい。
【0063】
このように、円柱本体20の外側面とダストカバー40とを接着せずに摺動させる、あるいはメインダストカバー41を円柱本体20の外側面と接着し、メインダストカバー41と、サブダストカバー42及びストッパ上面部分36aとの対向面で摺動させても、ダストカバー40により、下沓3に対する上沓2の回転を規制することはない。
【0064】
さらには、
図6(b)に示すように、挿着凹部30aの大径開口部30abを深く形成し、円柱本体20の外側面及びフランジ部22の上面と、大径開口部30abの内側面とを跨いで密着するようにダストカバー40を備えてもよい。このとき、ダストカバー40は、円柱本体20の外側面及びフランジ部22の上面と、大径開口部30abの内側面とのいずれか一方に接着し、他方と摺動してもよく、さらには、いずれとも接着せず、両方と摺動してもよい。
【0065】
また、
図6(c)に示すように、30aの大径開口部30abを深く形成し、円柱本体20の外側面及びフランジ部22の上面と、大径開口部30abの内側面に加えて、ベースポット本体30の本体上面30bとを跨いで密着するようにダストカバー40を備えてもよい。
【0066】
さらには、フランジ部22を備えない上沓2であっても、
図6(d)に示すように、円柱本体20の外側面と、大径開口部30abの内側面及びベースポット本体30の本体上面30bとを跨いで密着するようにダストカバー40を備えてもよい。
【0067】
また、
図6(e)に示すように、フランジ部22を備えない上沓2において、円柱本体20の外側面と、大径開口部30abの内側面及び大径開口部30abの底面とを跨いで密着するようにダストカバー40を備えてもよい。さらには、
図6(f)に示すように、フランジ部22を備えない上沓2において、円柱本体20の外側面と、大径開口部30abの内側面及び大径開口部30abの底面に加えてベースポット本体30の本体上面30bとを跨いで密着するようにダストカバー40を備えてもよい。
【0068】
このように、ダストカバー40は、上沓2と挿着凹部30aとの形状に応じて様々な形態をとることができる。このように、上沓2と挿着凹部30aの形状に応じた形態のダストカバー40を用いることにより、摺動部分Sへのダストや水等の侵入経路を塞いで、摺動部分Sのダストや水等の侵入を確実に防ぐことができる。
なお、上述の様々な形状のダストカバー40は、一体形成してもよいし、メインダストカバーとサブダストカバーとを組み合わせ可能に別体構成してもよい。
【0069】
また、上述のように、ダストカバー40は、本体上面30bや円柱本体20の外側面等に密着させ、また、接着材等で固定するため、タップを切ったりして、ボルトでダストカバー40を固定する場合に比べて、容易にダストカバー40を所定箇所にセットすることができる。
【0070】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、
本実施形態の摺動面は、スライドプレート21及びベアリング35の対向面で構成する摺動部分Sに対応し、
以下同様に、
上部構造物は、主桁2aに対応し、
下部構造物は、橋脚3aに対応し、
上沓及び一方の沓は、上沓2に対応し、
下沓及び他方の沓は、下沓3に対応し、
一方の沓における摺動面は、スライドプレート21に対応し、
ダストカバー及び円形開口環状部材は、ダストカバー40に対応し、
下沓摺動面構成部材は、弾性プレート31、シム32、シールリング33、ピストン34及びベアリング35に対応するも、上記実施形態に限定するものではない。
【0071】
例えば、橋脚で主桁を支持する場合の支承装置1について説明したが、ビルとビルとを連絡する渡り廊下をビルから支持する場合の支承装置、トラス屋根を柱で支持する場合の支承装置、あるいは、ビル同士を接続するエキスパンション構造における支承装置として用いてもよい。
【0072】
また、上述の説明では、回転方向の移動のみを許容する固定支承である支承装置1について説明したが、摺動部分Sにおける面内方向の任意の方向に可動する全方向可動支承、あるいは面内方向の一方向に可動する一方向可動支承など可動支承装置であってもよい。
【0073】
また、ダストカバー40を構成するメインダストカバー41に切断部41bを備えて、切断部41bを開いて円柱本体20に装着したが、
図4(e)、(f)に示すように、メインダストカバー41を分割可能に構成してもよい。このとき、分割したメインダストカバー41の端部は、径方向に対して交差する方向に形成することによって、
図4(f)に示すように、分割可能に構成したメインダストカバー41を組み付けた状態で、径方向のダストや水等の侵入を防止できる。また、上沓2と下沓3を対向させて支承装置1を組み付けた状態であっても、環状のダストカバー40を分割して、容易に交換や整備等を行うことができる。したがって、向上されたシール性を、長期にわたって維持することができる。