特許第5982216号(P5982216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982216
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】警報システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 23/00 20060101AFI20160818BHJP
   G08B 21/18 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   G08B23/00 510A
   G08B21/18
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-172514(P2012-172514)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-32528(P2014-32528A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000182373
【氏名又は名称】酒井医療株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128842
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 温
(74)【代理人】
【識別番号】100137730
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 武志
(72)【発明者】
【氏名】西村 耕一郎
【審査官】 松平 英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−309865(JP,A)
【文献】 特開2008−059538(JP,A)
【文献】 特開2010−142389(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0222788(US,A1)
【文献】 特開平11−181850(JP,A)
【文献】 特開2003−260032(JP,A)
【文献】 特開2004−344362(JP,A)
【文献】 特開2005−192761(JP,A)
【文献】 特開2005−221456(JP,A)
【文献】 特開2008−282152(JP,A)
【文献】 特開2010−136104(JP,A)
【文献】 特開2011−227715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
A61H 9/00
19/00−37/00
G08B 1/00−9/20
19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室に設けられて異常を知らせる警報システムであって、
前記異常を検知する異常検知手段と、
前記異常検知手段で異常が検知された場合に、発光状態を変更することによって異常を報知する発光手段と、
を備え、
前記異常検知手段は、前記浴室に設けられる排水溝における水位の異常を検知し、
前記発光手段が、前記浴室の床の床面より下側に配置されていることを特徴とする警報システム。
【請求項2】
前記発光手段は、前記浴室に設けられる排水溝上に配置されるグレーチングの開口を介して光を前記床面より上に到達させるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の警報システム。
【請求項3】
浴室に設けられて異常を知らせる警報システムであって、
前記異常を検知する異常検知手段と、
前記異常検知手段で異常が検知された場合に、発光状態を変更することによって異常を報知する発光手段と、
を備え、
前記発光手段は、前記浴室の床の床面より下側に配置されるとともに、前記浴室に設けられる排水溝上に配置されるグレーチングの開口を介して光を前記床面より上に到達させるように設けられていることを特徴とする警報システム。
【請求項4】
前記異常検知手段は、前記浴室における水位の異常を検知することを特徴とする請求項に記載の警報システム。
【請求項5】
前記発光手段が、前記浴室に配置される浴槽、或いは、該浴槽を支持する支持部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に設けられる警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室には、通常、浴槽内の水(本明細書では、水という語は温度にかかわらず広い意味で用いる。水という語には湯や冷水も含む趣旨である)や、洗い場で使用した水を浴室外に排出する際に使用される排水溝が設けられている。このような排水溝を流れる水が、排水溝から溢れ出ると不都合が生じる。このために、排水溝における水位の異常が発生した場合には、そのような異常が発生していることが報知されるのが好ましい。これにより、報知を受けた者は、例えば、蛇口から流れる水を止めたり、浴槽の水を排出することをやめたりするといった対策をとることができる。
【0003】
なお、水位の異常が発生したことを知らせる報知手段としては、モニタ(文字表示)を利用する構成、音を利用する構成、光を利用する構成等が挙げられる(例えば、特許文献1や2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−53661号公報
【特許文献2】特開平8−43170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水位の異常が発生したことを知らせる報知手段を浴室内に設ける場合、例えば、浴室の壁や浴槽に取り付けることが考えられる。浴室の壁にモニタ等の報知手段を取り付ける場合、例えば壁に穴を開ける等の加工が必要となることが考えられる。しかし、このような対応は壁に対して傷をつけることになり、必ずしも好ましい対応とは言えない。また、壁から報知手段が突出していると、場合によっては浴室を狭くする原因となったり、外観を損ねる原因になったりする。
【0006】
また、浴室が狭い場合、浴槽はその側壁の大部分が浴室の壁に接するように配置されることになるために、浴槽に報知手段を設けようとしても、十分なスペースが得られず、取り付け困難になることがある。また、浴槽に取り付けた報知手段が浴槽内側へと突出してしまうと、入浴者の邪魔になったり、入浴者に怪我を負わせる原因になったりすることが考えられる。更には、浴槽に隣接して、要介助者(体が不自由で介助が必要な者)の入浴を介助するための入浴装置が配置されることがあるが、そのような場合、報知手段の設置場所に困ることがある。
【0007】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、その導入によって、浴室を狭くしたり、入浴者に邪魔と感じさせたりすることがない、浴室における異常を知らせる警報システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の警報システムは、浴室に設けられて異常を知らせる警報システムであって、前記異常を検知する異常検知手段と、前記異常検知手段で異常が検知された場合に、発光状態を変更することによって異常を報知する発光手段と、を備え、前記発光手段が、前記浴室の床の床面より下側に配置されている構成(第1の構成)になっている。
【0009】
本構成では、浴室における異常を報知する報知手段として機能する発光手段が、浴室の床の床面より低い位置に配置されている。このために、報知手段(発光手段)が、入浴者の邪魔になったり、浴室を狭くする原因となったり、外観を損ねる原因になったりすることを避けられる。また、本構成によれば、報知手段を浴室に設けるに際して、浴室の壁等を傷つけることを避けることもできる。なお、報知手段として機能する発光手段は、例えば、複数個のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)が並べられた、防水型、シート状のLEDパッケージが利用できる。
【0010】
上記第1の構成の警報システムにおいて、前記異常検知手段は、前記浴室における水位の異常を検知する構成(第2の構成)であってもよい。浴室において、水位異常が発生すると、例えば溢れだした水が他の部屋に漏れ出たりする可能性がある。このために、浴室に水位異常を検知する異常検知手段を設けることは有効である。
【0011】
上記第2の構成の警報システムにおいて、前記異常検知手段は、前記浴室に設けられる排水溝における水位の異常を検知する構成(第3の構成)であっても構わない。その他、前記異常検知手段は、例えば、前記浴室に設けられる浴槽の水位の異常を検知する構成であっても構わない。
【0012】
上記第1から第3のいずれかの構成の警報システムにおいて、前記発光手段は、前記浴室に設けられる排水溝上に配置されるグレーチングの開口を介して光を前記床面より上に到達させるように設けられている構成(第4の構成)であってよい。本構成によれば、排水溝上にグレーチングを設けることによって浴室の安全性を高めつつ、入浴者に邪魔に感じられたり、浴室の外観を損ねたりすることを避けた状態で、浴室における異常を知らせる警報システムの導入が可能である。
【0013】
上記第1から第4のいずれかの構成の警報システムにおいて、前記発光手段が、前記浴室に配置される浴槽、或いは、該浴槽を支持する支持部材に取り付けられている構成(第5の構成)が採用されてもよい。本構成では、浴槽等の運搬可能な物に発光手段を取り付ける構成であり、汎用性を高められる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、浴室における異常を知らせる警報システムを浴室に導入するにあたって、浴室を狭くしたり、入浴者に邪魔と感じさせたりする事態の発生を回避できる。浴室における異常としては、例えば水位異常が挙げられるが、その他、例えば、入浴者の異常や、浴槽内の水(湯)の温度異常等も挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る警報システムが設けられる浴室の構成を示す概略上面図
図2図1のA−A位置における概略断面図
図3】本発明の実施形態に係る警報システムの構成を示すブロック図
図4】本発明の実施形態に係る警報システムが適用される浴室の構成の別形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る警報システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る警報システムが設けられる浴室10の構成を示す概略上面図である。浴室10は、概ね、4つの側壁W1、W2、W3、W4と、床Fと、図示しない天井とによって囲まれた空間で構成されている。浴室10への出入りは、壁W4に設けられる出入り口10aから可能になっており、出入口10aには不図示の扉が取り付けられている。浴室10には、入浴者が水(上述のように湯を含む概念)に浸かるための浴槽11と、入浴者が体を洗う際に使用する洗い場12と、が備えられている。
【0018】
上面視略矩形状に設けられる浴槽11は、その周囲三方が浴室10を構成する3つの側壁W1、W2、W3に接するように配置されている。浴槽11の底壁には排水口111が設けられており、浴槽11に溜めた水を浴槽外へと排出できるようになっている。また、壁W2に取り付けられる給水部13によって、浴槽11に水を溜めることができるようになっている。なお、給水部13には、入浴者が洗い場12で体を洗う際に使用するシャワーが取り付けられていてもよい。
【0019】
浴槽11と洗い場12との間には、排水溝14が設けられている。排水溝14は、浴槽11から排出される水や、洗い場12で使用した水を、浴室10外に排水する排水口15(図1の破線の丸が該当)へと導くために設けられている。排水溝14は、排水口15に水を導きやすいように、その底面が傾斜されているのが好ましい。排水溝14の上には、安全を考慮してグレーチング16(複数の開口を有する溝蓋)が配置されている。グレーチング16は、排水溝14の上から取り除く(取り外す)ことが可能である。
【0020】
図2は、図1のA−A位置における概略断面図である。図2に示すように、浴槽11は、浴室10の床Fの床面(洗い場12の床面)よりも低い位置に配置されている。このように構成することで、浴室10の床Fの床面から浴槽11上面までの高さを低くできるので、入浴者の浴槽11への出入りを楽にできる。
【0021】
浴槽11は、浴槽用フレーム112(浴槽11を支持する支持部材)で支えられている。これにより、浴槽11の下面と、浴槽11が配置される領域の上面との間に隙間が形成され、浴槽11から排出された水が排水溝14にスムーズに流れる。なお、図2に示すように、排水溝14の底面は、浴槽11が配置される領域の上面より更に低くなるように設けられている。
【0022】
以上のように構成される浴室10には、排水溝14の水位の異常を知らせる警報システムが設けられている。図3は、本発明の実施形態に係る警報システム20の構成を示すブロック図である。図3に示すように、警報システム20は、水位異常検知部21と、発光状態切替部22と、発光部23と、を備えている。
【0023】
水位異常検知部21は、排水溝14の水位の異常を検知する機能を有する。具体的には、排水溝14を流れる水の高さが予め設定される高さ(所定の高さ)を超えると、水位異常が発生したことを検知する。水位異常検知部21としては、例えば、スイッチ式、静電式、水圧式等の水位計が利用できる。水位異常検知部21は、一例として、フロートスイッチとすることができる。水位異常検知部21は、排水溝14の適所に取り付けることができる。水位異常検知部21は、例えば、排水口15が配置される側と反端側に配置する等してよい。
【0024】
発光状態切替部22は、水位異常検知部21による検知結果に基づいて発光部23の発光状態を切り替える機能を有する。発光状態切替部22は、水位異常検知部21によって水位異常が発生したことが検知された場合に、水位異常検知部21から異常検知を知らせる信号を受け取って、発光部23に電力を供給して発光させる。なお、この際の発光部23の点灯は、例えば、連続的に点灯する形態でもよいし、点灯と消灯が所定のパターンで繰り返される形態でもよい。なお、発光状態切替部22は、水位異常検知部21によって水位異常が発生したことが検知されていない場合には、発光部23に電力を供給せず、発光部23を連続的に消灯状態とする。発光状態切替部22は、例えばリレーによって構成することができる。また、場合によっては、発光状態切替部22はマイコン等であっても構わない。
【0025】
発光部23は、水位異常が発生した場合に点灯(点滅であってもよい)することによって、水位異常が発生していることを報知する機能を備える。発光部23は、浴室10の床Fの床面よりも下側に配置され、例えば浴室10に居る者に対して浴室10の床下から光を届ける構成になっている。
【0026】
本実施形態では、図2に示すように、発光部23は浴槽用フレーム112の一側面部に固定配置されている。発光部23によって発光された光は、グレーチング16の開口を介して、浴室10の床Fの床面より上に到達される。そして、これにより、例えば浴室10に居る者等に、排水溝14で水位異常が発生したことが報知される。発光部23は、例えば、複数のLEDを並べたシート状のLEDパッケージで構成することができる。また、本実施形態では、発光部23は、水がかかり易い位置に配置されるために防水構造とするのが好ましい。
【0027】
なお、発光部23の取り付け位置は、浴槽用フレーム112に限定されるものではなく、その位置は適宜変更されて構わない。例えば、浴槽11や排水溝14等に発光部23が取り付けられても構わない。
【0028】
以上のように構成される警報システム20では、発光部23が浴室10の床Fの床面より下側に配置される構成であるために、異常を知らせる報知手段が邪魔に感じられたり、外観を損ねたり、浴室10を狭くしたりすることがない。また、例えば浴室10の壁W1〜W4に報知手段を取り付ける場合等には、浴室10に傷を付けることが懸念されるが、本実施形態の構成では、このような懸念が発生しない。
【0029】
本実施形態のように浴槽11が一の側面を除いて壁W1〜W3に囲まれる場合、浴槽11に、異常を報知する報知手段を配置し難い。また、図4に示すように、浴槽11には、要介助者の入浴を介助するための入浴装置30が付設される場合がある。入浴装置30は、未使用の場合には手すりとして機能するとともに、使用状態では要介助者が座る椅子部(不図示)が取り付けられるアーム部30aを備える。なお、アーム部30aは、昇降可能であるとともに、洗い場12に引き出し可能に設けられている。例えば、このような構成の入浴装置30が浴槽11に付設される場合には、報知手段を浴槽11に配置することが益々困難になる。この点、本実施形態の警報システム20は、報知手段として機能する発光部23が浴室10の床Fの床面より下に配置される構成であり、入浴装置30や浴室10の壁が浴槽11に近接配置されても、そのことが取り付け位置に悪影響を及ぼすことがない。
【0030】
なお、以上に示した実施形態は、本発明の一例にすぎない。以上に示した実施形態の構成は、本発明の技術的思想を超えない範囲で適宜変更されて構わない。
【0031】
例えば、以上に示した実施形態では、水位異常が発生した場合に発光部23が点灯し、水位異常が発生していない場合には発光部23は消灯する構成とした。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、例えば、水位異常が発生した場合に発光部23が消灯し、水位異常が発生していない場合には発光部23は点灯している構成が採用されてもよい。また、例えば、水位異常が発生した場合に発光部23が点滅し、水位異常が発生していない場合には発光部23が連続的に点灯している構成が採用されてもよい。
【0032】
また、以上に示した実施形態では、警報システムは、排水溝14の水位の異常を報知するものとして構成されている。しかし、この構成に限らず、本発明の警報システムは、例えば、浴槽11の水位の異常を報知する手段として利用されても構わない。この場合には、警報システムを構成する水位異常検知部は、浴槽の水位の異常を検知できるように設ける必要がある。
【0033】
また、以上に示した実施形態では、警報システムは、水位の異常を報知するものとして構成されている。しかし、この構成に限らず、本発明の警報システムは、水位以外の異常を報知するものに対しても適用可能である。例えば、本発明の警報システムは、浴室に居る入浴者の異常や、浴槽の水温の異常等を報知する場合にも適用できる。この場合、異常検知手段は、当然ながら上述した構成とは変更する必要がある。例えば、浴室に居る入浴者の異常はカメラ映像を利用して検知するようにしてもよい。また、水温の異常は温度計を利用して検知するようにしてもよい。
【0034】
その他、場合によっては、本発明の警報システムには、発光部に加えて、音等の別の手段で水位等の異常を知らせる報知手段が含まれても勿論構わない。
【符号の説明】
【0035】
10 浴室
14 排水溝
16 グレーチング
20 警報システム
21 水位異常検知部(異常検知手段)
23 発光部(発光手段)
112 浴槽用フレーム(支持部材)
F 浴室の床
図1
図2
図3
図4