【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は、本発明に係る電動リニアアクチュエータの一実施形態を示す縦断面図、(b)は、(a)のI−I線に沿った横断面図、
図2は、
図1のアクチュエータ本体を示す縦断面図、
図3は、
図1の回り止め機構を示す要部拡大図、
図4(a)は、
図3の変形例を示す要部拡大図、(b)は、
図3の他の変形例を示す要部拡大図である。
【0025】
この電動リニアアクチュエータ1は、
図1(a)に示すように、円筒状のハウジング2と、このハウジング2に取り付けられた電動モータ3と、この電動モータ3の回転力をモータ軸3aを介して伝達する一対の平歯車4、5からなる減速機構6と、この減速機構6を介して電動モータ3の回転運動を駆動軸7の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構8とを備えている。
【0026】
ハウジング2は、A6063TEやADC12等のアルミ合金からなり、第1のハウジング2aと、その端面に衝合された第2のハウジング2bとを備え、固定ボルト(図示せず)によって一体に固定されている。第1のハウジング2aには電動モータ3が取り付けられると共に、第1のハウジング2aと第2のハウジング2bには、ねじ軸12を収容するための袋孔9、10が形成されている。
【0027】
電動モータ3のモータ軸3aの端部には小平歯車4が圧入により相対回転不能に取り付けられ、第2のハウジング2bに装着された転がり軸受11によって回転自在に支持されている。大平歯車5は、後述するボールねじ機構8を構成するナット14に一体形成され、小平歯車4に噛合している。駆動軸7は、ボールねじ機構8を構成するねじ軸12と一体に構成されている。
【0028】
ねじ軸12は、(b)に示すように、その端部にガイドピン20が嵌挿されると共に、第1のハウジング2aの袋孔9にスリーブ18が装着され、このスリーブ18に形成されたガイド溝18aにガイドピン20を係合させることにより、ねじ軸12の回り止めを行う。
【0029】
ボールねじ機構8は、
図2に拡大して示すように、ねじ軸12と、このねじ軸12にボール13を介して外挿されたナット14とを備えている。ねじ軸12は、外周に螺旋状のねじ溝12aが形成され、軸方向移動自在に、かつ回転不可に支承されている。一方、ナット14は、ねじ軸12に外装されると共に、内周にねじ軸12のねじ溝12aに対応する螺旋状のねじ溝14aが形成され、これらねじ溝12a、14aとの間に多数のボール13が転動自在に収容されている。そして、ナット14は、ハウジング(図示せず)に対して、2つの支持軸受15、16を介して回転自在に、かつ軸方向移動不可に支承されている。17は、ナット14のねじ溝14aを連結して循環部材を構成する駒部材で、この駒部材17によって多数のボール13が無限循環することができる。
【0030】
各ねじ溝12a、14aの断面形状は、サーキュラアーク形状であってもゴシックアーク形状であっても良いが、ここではボール13との接触角が大きくとれ、アキシアルすきまが小さく設定できるゴシックアーク形状に形成されている。これにより、軸方向荷重に対する剛性が高くなり、かつ振動の発生を抑制することができる。
【0031】
ナット14はSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、真空浸炭焼入れによってその表面に55〜62HRCの範囲に硬化処理が施されている。これにより、熱処理後のスケール除去のためのバフ加工等を省略することができ、低コスト化を図ることができる。一方、ねじ軸12はS55C等の中炭素鋼あるいはSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、高周波焼入れ、あるいは浸炭焼入れによってその表面に55〜62HRCの範囲に硬化処理が施されている。
【0032】
ナット14の外周には減速機構6を構成する大平歯車5が一体に形成されると共に、この大平歯車5の両側に2つの支持軸受15、16が所定のシメシロを介して圧入されている。これにより、駆動軸7からスラスト荷重が負荷されても支持軸受15、16と大平歯車5の軸方向の位置ズレを防止することができる。また、2つの支持軸受15、16は、両端部にシールド板が装着された密封型の深溝玉軸受で構成され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から摩耗粉等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0033】
ここで、本実施形態では、
図3に示すように、第1のハウジング2aの袋孔9に筒状のスリーブ18が圧入されている。このスリーブ18は、硬化処理されたSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼、あるいはS45C等の炭素鋼からなり、後述する回り止め機構21を構成する軸方向に延びるガイド溝18a、18aが周方向に2箇所対向して形成されている。これにより、少なくともアルミ合金からなる第1のハウジング2aよりも材料強度と耐摩耗性が高くなり、耐久性を向上させることができる。
【0034】
一方、ねじ軸12の端部には径方向に貫通する貫通孔19が形成され、この貫通孔19にガイドピン20が僅かな径方向すきまを介して嵌挿されている。この貫通孔19は、高周波焼入れによって表面硬さを60〜64HRCの範囲に所定の硬化層が形成されている。
【0035】
また、ガイドピン20は、耐摩耗性とせん断強度に富み、入手性が良く低コストな、ころ軸受のころが使用されている。特に、ころ軸受のころを使用することにより、外周面にクラウニングが形成されているので、貫通孔19との接触においてエッジロードを防止して接触面圧を低下させて耐久性を向上させることができる。なお、ころ軸受とは、針状ころ、円筒ころを含むものとする。そして、このガイドピン20がスリーブ18のガイド溝18aに係合し、ねじ軸12の軸方向の案内と共に回り止めを行う。このガイドピン20と、このガイドピン20に係合するガイド溝18aを有するスリーブ18とで回り止め機構21を構成している。
【0036】
このように、ガイド溝18aに係合するガイドピン20がねじ軸12の貫通孔19に僅かなすきまを介して嵌挿されているので、ガイドピン20が貫通孔19の中で回転自在となり、摺動摩擦や摩耗の低減を図ると共に、簡便な構造で低コストなナットの回り止め機構を備えた電動リニアアクチュエータを提供することができる。また、貫通孔19が高周波焼入れによって表面硬さを60〜64HRCの範囲に所定の硬化層が形成されているので、ガイドピン20として針状ころを使用しても、貫通孔19の耐摩耗性を向上させ、長期間に亘ってガイドピン20の安定した支持を行うことができる。
【0037】
図4(a)に、
図3の変形例を示す。なお、この実施形態は前述したものと基本的にはガイドピン20の支持構造が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
この回り止め機構22は、ガイドピン20と、このガイドピン20を回転自在に支承するブッシュ23を備えている。すなわち、ねじ軸12の端部には径方向に貫通する貫通孔24と、この貫通孔24の両端部に、貫通孔24よりも大径の装着部24a、24aが形成されている。そして、装着部24aにリング状のブッシュ23が嵌合されると共に、ガイドピン20がこれらブッシュ23、23と貫通孔24に僅かな径方向すきまを介して嵌挿されている。
【0039】
このように、ガイド溝18aに係合するガイドピン20がねじ軸12の貫通孔24とブッシュ23に僅かなすきまを介して嵌挿されているので、前述した実施形態と同様、ガイドピン20が貫通孔24の中で回転自在となり、摺動摩擦や摩耗の低減を図ることができる。
【0040】
ここで、ブッシュ23は焼結合金からなり、その金属粉として浸炭焼入が可能な材質、例えば、C(炭素)が0.13wt%、Ni(ニッケル)が0.21wt%、Cr(クロム)が1.1wt%、Cu(銅)が0.04wt%、Mn(マンガン)が0.76wt%、Mo(モリブデン)が0.19wt%、Si(シリコン)が0.20wt%、残りがFe(鉄)等からなるSCM415を例示することができる。これにより、耐摩耗性を向上させ、長期間に亘ってガイドピン20の安定した支持を行うことができる。
【0041】
なお、ブッシュ23の材質は、前述した材質以外にも、GF(グラス繊維)等の繊維状強化材が所定量充填されたPA(ポリアミド)66等の熱可塑性の合成樹脂で形成されていても良い。これにより、ねじ軸12に衝撃荷重が負荷されてもそれを緩和することができる。繊維状強化材としては、GFに限らず、これ以外に、CF(炭素繊維)やアラミド繊維、ホウ素繊維等を例示することができる。
【0042】
ブッシュ23の他の材質として、さらに、PPA(ポリフタルアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の所謂エンジニアリングプラスチックと呼称される熱可塑性の合成樹脂やポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)等の所謂スーパーエンジニアリングプラスチックと呼称される熱可塑性の合成樹脂、あるいは、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、ポリイミド樹脂(PI)等の熱硬化性の合成樹脂であっても良い。
【0043】
図4(b)に、
図3の他の変形例を示す。この実施形態は前述したものと基本的にはガイドピン20の支持構造が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
この回り止め機構25は、ガイドピン20と、このガイドピン20を回転自在に支承する転がり軸受26を備えている。すなわち、ねじ軸12の端部には径方向に貫通する貫通孔27が形成されている。そして、この貫通孔27に転がり軸受26が装着されている。この転がり軸受26は、貫通孔27に圧入される鋼板プレス製の外輪28と、保持器29を介して外輪28に転動自在に収容された複数の針状ころ30とを備えた、所謂シェル型の針状ころ軸受で構成されている。これにより、入手性が高く、低コスト化を図ることができる。
【0045】
このように、ガイド溝18aに係合するガイドピン20が、ねじ軸12の貫通孔27に装着された転がり軸受26により回転自在に支承されているので、前述した実施形態と同様、摺動トルクおよび摺動摩擦や摩耗の低減を一層図ることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。