【実施例】
【0047】
イントロダクション
実施例 1および 2は出発物質として7-ホルミル-カンプトテシンジメチルアセタールを用いる7-[(E)-t-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシンの合成について扱う。
【0048】
実施例3および4はE 異性体を与える条件下で出発物質として7-ホルミル-カンプトテシンを用いる7-[(E)-t-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシンの合成を報告する。この群のすべての反応は実施例1および2に報告する反応より速く、アセタールの加水分解がおそらくアルデヒドからオキシムを与える反応よりも遅いことを示す。
【0049】
実施例 5はZ 異性体からE 異性体への変換を報告する。
【0050】
実施例 6は、7-[(E)-t-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシン (ギマテカン)について得られ得る、異なる(多形の) 結晶形態の合成および特徴決定を報告する。
【0051】
HPLC:分析は自動インジェクター (注入容量 5 μl)を備えた4つのポンプ(quaternary pump) (Waters Alliance 2690)および260 nmで作動するUV検出器(Waters 2487)を備え、ソフトウェアWaters 「Empower Pro」により制御される装置で行った。
【0052】
C18 逆相カラム (Symmetry C18; 75x4.6mm Waters)を用い直線溶出グラジエント (以下の表参照)にて、1.0 ml/分の流速で行った。
グラジエントプログラム
A:H
2O/CH
3CN 60/40 (v/v)
B:H
2O/CH
3CN 30/70 (v/v)
【表5】
【0053】
7-[(E)-tert-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシンの保持時間は12 分であり、Z-異性体の保持時間は 8 分である。
【0054】
実施例 1
7-ホルミルカンプトテシン-ジメチルアセタールからの7-[(E)-tert-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシンの調製
7-ホルミル-カンプトテシン-ジメチルアセタール (500mg; 1.2mmol)およびO-tert-ブチルヒドロキシルアミンヒドロクロリド (372mg; 2.9mmol) をマグネティックスターラーと冷却管とを備えた遮光した3首フラスコ中の95% エタノール (12.5 ml)に添加した。混合物を還流して4時間加熱した。HPLC 分析によりE:Z 比 99.8:0.2が示された。
粗生成物を反応混合物から沈殿として得、ろ過により単離した。ジクロロメタン-メタノール 95:5で溶出するシリカゲル (20g)でのクロマトグラフィー精製後、ギマテカン (460mg)を黄色粉末として得た (収率: 87%)。
【0055】
実施例 2
7-ホルミルカンプトテシン-ジメチルアセタールからの7-[(E)-tert-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシンの調製
7-ホルミル-カンプトテシン-ジメチルアセタール (500mg; 1.2mmol)、O-tert-ブチルヒドロキシルアミンヒドロクロリド (372mg; 2.9mmol)および水酸化ナトリウム (59mg; 1.47mmol) を、マグネティックスターラーおよび冷却管を備えた遮光した3首フラスコ中の95% エタノール (12.5 ml) に添加した。混合物を還流して24時間加熱した。HPLC 分析により E:Z 比 98.8:1.2が示された。 粗生成物を反応混合物から沈殿として得、ろ過により単離した。ジクロロメタン-メタノール 95:5で溶出するシリカゲル (20g)でのクロマトグラフィー精製後、ギマテカンを黄色粉末として得た(収率: 80%)。
【0056】
実施例 3 (参照実施例)
7-ホルミルカンプトテシンからの7-[(E)-tert-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシンの調製
7-ホルミル-カンプトテシン (500mg; 1.33mmol)、O-tert-ブチルヒドロキシルアミン ヒドロクロリド (417mg; 3.3mmol)および水酸化ナトリウム (67mg; 1.65mmol) を、マグネティックスターラーおよび冷却管を備えた遮光した3首フラスコ中の95% エタノール (12.5 ml) に添加した。
混合物を還流して2時間加熱した。HPLC 分析によりE:Z 比 97.4:2.6が示された。粗生成物を反応混合物から沈殿として得、ろ過により単離した。ジクロロメタン-メタノール 95:5で溶出するシリカゲル (20g)でのクロマトグラフィー精製後、ギマテカン (480mg)を黄色粉末として得た(収率: 80%)。
【0057】
実施例 4 (参照実施例)
7-ホルミルカンプトテシンからの7-[(E)-tert-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシンの調製
7-ホルミル-カンプトテシン (500mg; 1.33 mmol)、O-tert-ブチルヒドロキシルアミン ヒドロクロリド (417mg; 3.3mmol)および水酸化ナトリウム (120mg; 3mmol) をマグネティックスターラーおよび冷却管を備えた遮光した3首フラスコ中の95% エタノール (12.5 ml) に添加した。
混合物を還流して2時間加熱した。HPLC 分析により E:Z 比 95.5が示された。粗生成物を反応混合物から沈殿として得、ろ過により単離した。ジクロロメタン-メタノール 95:5で溶出するシリカゲル (20g)でのクロマトグラフィー精製後、ギマテカン (550 mg) を黄色粉末として得た(収率: 93%)。
【0058】
実施例 5
異性体変換
7-[(Z)-tert-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシン (100 mg)をジクロロメタン (30 ml)に溶解した。 塩酸 (0.2 ml)を室温で添加し、混合物を125 W Hg 高圧UVランプでの照射に1時間供した。HPLC 分析によりZ-異性体が完全にE-異性体に変換したことが示された。
【0059】
実施例 6
結晶化研究
7-[(E)-tert-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシン (2.5g) をジクロロメタン (500 ml)に溶解した。共溶媒 (500 ml)を溶液に添加し、ロータベーパー(rotavapor)により、混合物を40℃で体積250 mlとなるまで濃縮した。
【0060】
懸濁液を室温で30 分間撹拌して維持し、形成した固体を20 mlの共溶媒で2回洗浄することによってろ過した。50℃のオーブンで減圧下で一晩おいた後、2.1 gの生成物を得た。
【0061】
用いた共溶媒は以下のものであった: アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、トルエン、n-ブチルクロリド、メチル tert-ブチルエーテル、およびヘキサン。
【0062】
得られた結晶をX線粉末回折法により分析した。ディフラクトグラム(diffractogram)を20-50 mgの粉末について、(002) グラファイト結晶により単色にされた(monochromated) CuK-α 照射源、ソレルススリット(Sollers slits)および狭い(0.3°) 発散および受入開口を備えたSiemens D-500 コンピュータ制御回折計を用いて得た。散乱角の信頼限界は、± 0.5 2-θ(Theta)である。
【0063】
アセトンを共溶媒として用いて得られたサンプル(形態I)は以下の結果を与えた。
【0064】
X線粉末 ディフラクトグラムは結晶性物質に特徴的である。この形態の特徴的な主な回折ピークを以下の表に示す:
【表6】
【0065】
エタノールまたはメタノールを共溶媒として用いて得られたサンプル (形態III)は以下の結果を与えた。
【0066】
X線粉末 ディフラクトグラムは結晶性物質に特徴的である。この形態の特徴的な主な回折ピークを以下の表に示す:
【表7】
【0067】
酢酸エチル、トルエン、n-ブチルクロリド、メチル t-ブチルエーテルまたはヘキサンを共溶媒として用いて得られた サンプル(形態II)は以下の結果を与えた。
【0068】
X線粉末 ディフラクトグラムは結晶性物質に特徴的である。この形態の特徴的な主な回折ピークを以下の表に示す:
【表8】
【0069】
ギマテカンのこれら結晶形態をさらに特徴決定するために、同じサンプルをIR 分光法により調べた。以下の表は3つの形態に特徴的なピーク (cm
-1) を示す。
【表9】
* 同じデータが、トルエン、n-ブチルクロリド、メチル t-ブチルエーテルまたはヘキサンから得られた形態についても観察されている。
** 同じデータがメタノールから得られた形態についても観察されている。
IRスペクトルは1% KBrペレット上で4 cm
-1 にてPerkin Elmer Spectrum 1000 FT-IR で収集した。
【0070】
図面の簡単な説明
図 1は、左に7-[(E)-t-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシン (ギマテカン)の構造式および右に7-[(Z)-t-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシンの構造式を報告する。
【0071】
図 2は、7-[(E)-t-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシン (ギマテカン)の結晶形態 IのX線回折パターンを報告する。
【0072】
図 3は、7-[(E)-t-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシン (ギマテカン)の結晶形態 IIのX線回折パターンを報告する。
【0073】
図 4は、7-[(E)-t-ブチルオキシイミノメチル]-カンプトテシン (ギマテカン)の結晶形態 IIIのX線回折パターンを報告する。