(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加圧二酸化炭素が供給された前記高圧容器の温度を加圧二酸化炭素供給時の温度より、15℃以上高い温度に制御することを含む請求項1又は2に記載の金属微粒子含有樹脂ペレットの製造方法。
加圧二酸化炭素が供給された前記高圧容器の温度を制御することが、前記高圧容器を加熱することである請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属微粒子含有樹脂ペレットの製造方法。
加圧二酸化炭素が供給された前記高圧容器の温度を制御することによって、前記高圧容器内の加圧二酸化炭素への前記金属微粒子の溶解度を向上させ、前記金属微粒子を前記加圧二酸化炭素と共に前記原料ペレットへ浸透させることを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属微粒子含有樹脂ペレットの製造方法。
前記高圧容器に加圧二酸化炭素を供給することが、液体二酸化炭素を前記高圧容器に満充填することを含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属微粒子含有樹脂ペレットの製造方法。
前記原料ペレットが、親水性セグメントを含むブロック共重合体を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の金属微粒子含有樹脂ペレットの製造方法。
第1の樹脂ペレットが親水性セグメントを含むブロック共重合体を含有し、前記ブロック共重合体が、更に第2の樹脂ペレットと相溶性を有するセグメントを含有することを特徴とする請求項13に記載の成形体の製造方法。
第1の樹脂ペレットが親水性セグメントを含むブロック共重合体を含有し、前記ブロック共重合体が、更に第2の樹脂ペレットと非相溶のセグメントを含有する請求項13に記載の成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
第1の実施形態として、
図1に示すフローチャートに従って金属微粒子含有樹脂ペレットの製造方法を説明する。ここで、「樹脂ペレット」とは、樹脂を加工し易いように小さな塊(ペレット)としたものを意味し、サイズ及び形状はペレットの用途により様々であるが、例えば、3〜5mm程度の粒子状、円柱状の樹脂の小片である。本実施形態の金属微粒子含有樹脂ペレットは、可塑化溶融して射出成形や押出成形することにより、成形品に加工することができる。
【0016】
まず、高圧容器の温度を所定温度に制御し(
図1のステップS1)、高圧容器に原料ペレット及び金属微粒子を収容する(同、ステップS2)。ここで「高圧容器」とは、超臨界状態等の加圧二酸化炭素を収容可能な耐圧性を有する容器を意味する。
【0017】
高圧容器の温度の制御方法は任意であるが、本実施形態では、容器の内部又は周囲に温度調節された水等の液体を循環させる流路を設け、流路内に循環させる液体の温度を制御することによって、高圧容器の温度を所定温度に制御する。所定温度としては、加圧二酸化炭素導入後の昇温による圧力上昇が容易になることから、−25℃〜30℃が好ましく、−10〜30℃がより好ましく、5〜20℃が更により好ましい。
【0018】
本実施形態の原料ペレットの材料には、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ナイロン等のポリアミド、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテーテルエーテルケトン、ABS系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の熱可塑性樹脂を用いることできる。また、原料ペレットには、ガラス繊維、タルク、カーボン繊維等、各種無機フィラー等を混練させることもできる。原料ペレットには、一種類の材料を用いても、又は、二種類以上の材料を混合して用いても良い。
【0019】
更に、原料ペレットの材料としては、親水性セグメントを含むブロック共重合体(以下、適宜「ブロック共重合体」と記載する)を用いてもよい。本実施形態で用いるブロック共重合体は、親水性セグメントを有し、更に、親水性セグメントとは異なる他のセグメント(以下、適宜「他のセグメント」と記載する)を有する。親水性セグメントには、アニオン性セグメント、カチオン性セグメント、ノニオン性セグメントを用いることができる。アニオン性セグメントとしては、ポリスチレンスルホン酸系、カチオン性セグメントとしては、四級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体系、ノニオン性セグメントとしては、ポリエーテルエステルアミド系、ポリエチレンオキシド−エピクロルヒドリン系、ポリエーテルエステル系が挙げられる。
【0020】
本実施形態で用いるブロック共重合体としては、成形体の耐熱性を確保しやすいことから、親水性セグメントがポリエーテル構造を有するノニオン性セグメントであることが好ましい。ポリエーテル構造としては、例えばアルキレンの炭素数が2〜4のオキシアルキレン基であるエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等のオキシアルキレン基、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、及びこれらの変性物、並びにポリエーテル含有親水性ポリマーが含まれ、特にポリエチレンオキシドが好ましい。
【0021】
本実施形態において、ブロック共重合体の他のセグメントは、親水性セグメントよりも疎水性であれば任意であるが、例えば、ナイロン、ポリオレフィン等を用いることができる。
【0022】
ブロック共重合体は市販品を用いてもよく、例えば、三洋化成工業製ペレスタット(登録商標)、ペレクトロン(登録商標)等を用いることができる。例えば、三洋化成工業製ペレスタットNC6321、1251は、親水性セグメントのポリエーテルと、他のセグメントのナイロンをエステル結合でコポリマー化したブロック共重合体である。
【0023】
本実施形態で用いる原料ペレットは、ブロック共重合体のみから形成されてもよいし、上述した熱可塑性樹脂等の他の材料と混合して用いてもよい。原料ペレット中のブロック共重合体の含有量は、本実施形態で製造される金属微粒子含有樹脂ペレットの使用用途によって異なる。例えば、本実施形態で製造される金属微粒子含有樹脂ペレットのみから成形体を成形する場合、原料ペレット中のブロック共重合体の含有量は、1〜15wt%が好ましく、1〜5wt%とすることが更に好ましい。1wt%以上とすると、本実施形態の金属微粒子含有樹脂ペレットを用いて製造した成形体をメッキ処理した場合に、メッキ液の成形体への浸透性を高めることができ、15wt%以下とすると、該成形体が十分な機械強度を有することができ、更に、メッキ膜形成後も耐熱衝撃性能を維持することができる。一方、本実施形態で製造される金属微粒子含有樹脂ペレット(第1の樹脂ペレット)を、金属微粒子を含有しない樹脂ペレット(第2の樹脂ペレット)と共に可塑化溶融して成形体を成形する場合、本実施形態で製造される金属微粒子含有樹脂ペレット(第1の樹脂ペレット)中のブロック共重合体濃度はコストや性能面から最適化され、10〜70wt%であることが好ましい。
【0024】
本実施形態の金属微粒子としては、Pd、Ni、Pt、Cu等の金属微粒子、金属錯体、金属アルコキシド等の金属酸化物の前駆体を用いることができる。金属錯体の種類は任意であるが、より具体的には、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)金属錯体、白金ジメチル(シクロオクタジエン)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトネート)パラジウム等が、加圧二酸化炭素への溶解性が高く好ましい。これらの金属微粒子は、本実施形態で製造した金属微粒子含有樹脂ペレットを用いて製造した成形体において、メッキ触媒と機能し、該成形体に無電解メッキを施すことができる。また、金属微粒子としてAgの金属微粒子を用いると、該成形体に抗菌機能を付与することができる。
【0025】
高圧容器へ収容される原料ペレットの重量に対する金属微粒子の重量の割合は、原料ペレット及び金属微粒子の種類、本実施例で製造される金属微粒子含有樹脂ペレットの使用用途、高圧容器の容量等を考慮した任意の値とすることができるが、機能確保や低コスト化の観点から、100〜5000ppmが好ましく、200〜1000ppmが更に好ましい。
【0026】
高圧容器へ金属微粒子を収容する方法は任意の方法を用いることができ、金属微粒子を直接、高圧容器に収容してもよいし、間接的に高圧容器に収納してもよい。金属微粒子を間接的に高圧容器に収容する方法とは、例えば、フィルタ付きの小型容器に金属微粒子を収容し、その小型容器ごと高圧容器に収容する方法である。小型容器のフィルタは、加圧二酸化炭素とそれに溶解した金属微粒子のみ透過可能である。本実施形態では、小型容器を用いて金属微粒子を高圧容器内へ収容する。
【0027】
本実施形態では、高圧容器の温度を制御した後に高圧容器に原料ペレット及び金属微粒子を収容するが、高圧容器に原料ペレット及び金属微粒子を収容した後に高圧容器の温度を制御してもよい。但し、量産性向上の観点からは、高圧容器の温度を制御した後に、高圧容器内に原料ペレット及び金属微粒子を収容することが好ましい。
【0028】
次に、所定温度に温度制御され、原料ペレット及び金属微粒子が収容された高圧容器に、圧力1.5〜8MPaである加圧二酸化炭素を供給する(
図1のステップS3。以下、適宜「加圧二酸化炭素供給工程」と記す)。そして、高圧容器に供給された加圧二酸化炭素の圧力が、加圧二酸化炭素供給時の圧力より高くなるように、前記高圧容器の温度を制御する。本実施形態では、高圧容器を加熱する。高圧容器を加熱することにより、高圧容器内の加圧二酸化炭素を膨張させ、その圧力を上昇させることができる(同、ステップS4。以下、適宜「高圧容器加熱工程」と記す)。
【0029】
高圧容器に供給された加圧二酸化炭素の圧力が、加圧二酸化炭素供給時の圧力より高くなるように、高圧容器の温度を制御することにより、金属微粒子の加圧二酸化炭素への溶解度が向上する。また、金属微粒子が溶解した加圧二酸化炭素の原料ペレットへの浸透性が向上する。そして、金属微粒子が溶解した加圧二酸化炭素が原料ペレットに十分に浸透することによって、原料ペレットは金属微粒子によって改質され、金属微粒子含有樹脂ペレットが製造される。本実施形態では、高圧容器の温度を制御することによって、金属微粒子が溶解した加圧二酸化炭素が、原料ペレットに十分に浸透可能な圧力まで加圧二酸化炭素の圧力を上昇させることができる。これにより、加圧ポンプ等の加圧二酸化炭素の昇圧設備を必要とせず、製造コストを低減できる。
【0030】
加圧二酸化炭素供給工程では、供給される加圧二酸化炭素の圧力は原料ペレットに浸透可能な高い圧力である必要がない。加圧二酸化炭素供給工程では、加圧二酸化炭素は原料ペレットに浸透しないか、浸透したとしても原料ペレットを金属微粒子によって改質するには不十分な浸透量であっても問題がない。したがって、本実施形態では、ボンベ等の二酸化炭素貯蔵容器から、そこに貯蔵される加圧二酸化炭素を更に昇圧することなく高圧容器へ供給することができる。そのため、加圧二酸化炭素供給工程においても、加圧ポンプ等の加圧二酸化炭素の昇圧設備を必要としない。
【0031】
高圧容器へ供給する加圧二酸化炭素の圧力は、1.5〜8MPaである。加圧二酸化炭素の圧力が1.5MPa未満であると、冷温、低圧で加圧された液体二酸化炭素を貯蔵する断熱容器が使用できなくなり量産性が悪化し、一方、8MPaを越えると、通常のボンベが使用できなくなる。また圧力上昇が容易となり、更に、安定供給が容易であるという観点から、高圧容器へ供給する加圧二酸化炭素の圧力は、4〜8MPaであることが好ましく、5〜7MPaであることが更に好ましい。
【0032】
高圧容器への加圧二酸化炭素の供給は、二酸化炭素貯蔵容器に貯蔵される加圧二酸化炭素を貯蔵時の圧力を保持したまま、又は、貯蔵時の圧力から減圧して前記高圧容器へ供給してもよい。この場合、二酸化炭素貯蔵容器には、高圧容器への供給圧力以上の圧力で二酸化炭素が貯蔵されている。
【0033】
高圧容器に供給される加圧二酸化炭素は、液体状態又は、ガス(気体)状態の加圧二酸化炭素を用いることができる。上述したように、加圧二酸化炭素供給工程においては、加圧二酸化炭素は原料ペレットに浸透する必要がないので、加圧二酸化炭素は超臨界二酸化炭素である必要はない。加圧二酸化炭素は、密度が高く、安定して供給(液送)できることから、液体二酸化炭素が好ましい。また、高圧容器加熱工程において、高圧容器内に気体二酸化炭素が存在すると、昇温による昇圧時間が不安定となる。したがって、高圧容器に液体二酸化炭素を満充填することが更に好ましい。ここで、「満充填」とは、高圧容器内の空間において、原料ペレットや金属微粒子が収容された小型容器等の固体が占めるスペース以外のスペースを全て液体二酸化炭素が占め、空気や気体二酸化炭素等の気体が存在しない状態を意味する。本実施形態では、液体二酸化炭素を供給しながら、高圧容器内に存在する空気や気体二酸化炭素等の気体を排出する方法を用いて、液体二酸化炭素を高圧容器に満充填する。尚、高圧容器に供給される加圧二酸化炭素の供給量は、供給前後の高圧容器の重量を測定し、重量変化からもとめることができる。
【0034】
本実施形態では、上述したように、フィルタ付きの小型容器に金属微粒子を収容し、その小型容器ごと高圧容器に収容する。加圧二酸化炭素供給工程において、加圧二酸化炭素は小型容器のフィルタから小型容器内部に侵入し、金属微粒子に接触する。そして、金属微粒子は、小型容器内の加圧二酸化炭素に飽和溶解度まで溶解するが、小型容器内に存在できる加圧二酸化炭素の量は限定されるので、それに溶解できる金属微粒子の量も限られる。したがって、加圧二酸化炭素に接触した金属微粒子は一度に全量が溶解することなく、徐々に溶解していく。そして、金属微粒子が溶解した加圧二酸化炭素は、小型容器からフィルタを介して高圧容器内へゆっくり拡散していく。このように、フィルタ付きの小型容器を用いると、金属錯体の高圧容器内への急激な拡散を抑制できる。加圧二酸化炭素への溶解性が高い金属微粒子を用いる場合、小型容器は特に有用である。例えば、加圧二酸化炭素供給工程において、高圧容器内に存在する気体二酸化炭素等の気体を排出しながら液体二酸化炭素を高圧容器に満充填する場合、加圧二酸化炭素への溶解性が高い金属微粒子は、気体二酸化炭素と共に高圧容器から排出される虞がある。本実施形態では、小型容器内に金属微粒子が収容されているので、金属微粒子の高圧容器内への急激な拡散が抑制され、その結果、加圧二酸化炭素供給工程において、金属微粒子が高圧容器の外へ排出されることを抑制できる。
【0035】
高圧容器加熱工程(
図1、ステップS4)において、高圧容器の加熱は任意の方法で行えるが、本実施形態では、上述のように容器の内部又は周囲に温度調節された水等の液体を循環させる流路を設け、流路内に循環させる液体によって高圧容器を直接加熱する。また、他の加熱方法としては、高圧容器の外部に高周波誘導加熱装置を設置し、高周波誘導加熱装置を用いて高圧容器を外部から間接的に加熱してもよい。この場合、高圧容器に温度センサーを設けて高圧容器の温度をモニターし、モニターした値を無線を用いて高周波誘電装置にフィードバックすることで、高圧容器の温度を制御することができる。尚、本実施形態では、加圧二酸化炭素が供給された高圧容器を加熱することにより、高圧容器の温度を制御したが、高圧容器の温度制御方法は、これに限定されない。例えば、加圧二酸化炭素供給時の高圧容器の温度が室温以下であった場合は、高圧容器を加熱せず、単に放置しておいてもよい。高圧容器を放置することによって、高圧容器の温度は室温まで上昇し、内部の加圧二酸化炭素の圧力を加圧二酸化炭素供給時の圧力より高くすることができる。
【0036】
高圧容器加熱工程において、高圧容器の温度は、加圧二酸化炭素供給時の温度より15℃以上高い温度(以下、適宜、高圧容器加熱工程の「到達温度」と記載する)に達することが好ましい。到達温度と加圧二酸化炭素供給時の温度との差が15℃以上であれば、高圧容器内の加圧二酸化炭素の圧力が原料ペレットに十分に浸透可能な圧力まで上昇し、十分な量の金属微粒子を原料ペレットに浸透させることができる。また、生産性向上やエネルギー削減の観点から、高圧容器加熱工程の到達温度は、加圧二酸化炭素供給時の温度より、10〜40℃高いことが好ましく、10〜25℃高いことが更に好ましい。尚、本実施形態において、高圧容器加熱工程の到達温度は、その絶対値よりも加熱前の加圧二酸化炭素供給時の温度との温度差(相対値)が重要である。高圧容器に供給される加圧二酸化炭素は、その温度によって密度が異なり、低温であるほど密度が高い。したがって、供給時の加圧二酸化炭素が比較的低い温度であれば、高圧容器加熱工程の到達温度も比較的低い温度でよい。加熱前後において、適当な温度差があれば、加圧二酸化炭素は十分に膨張し、目的とする処理をポリマーに施すことが可能な圧力に達することができる。反対に、供給時の液体二酸化炭素が比較的高い温度であれば、高圧容器加熱工程の到達温度も比較的に高い温度となる。このように、高圧容器加熱工程の到達温度は、供給する時の加圧二酸化炭素の温度に依存して適宜決定することができるが、連続生産性やエネルギーロスの観点からは、到達温度の絶対値は、20〜80℃が好ましく、25〜45℃が更に好ましい。
【0037】
高圧容器加熱工程において、加圧二酸化炭素の圧力は、加圧二酸化炭素が金属微粒子と共に原料ペレットに浸透して、原料ペレットに十分な金属微粒子を含有させることが可能な圧力まで上昇する(この圧力を適宜、高圧容器加熱工程の「到達圧力」と記す)。高圧容器加熱工程の到達圧力は、高圧容器に所定の値に設定した背圧弁を設けることにより制御してもよい。高圧容器加熱工程の到達圧力は、8〜50MPaが好ましく、10〜30MPaがより好ましく、10〜20MPaが更により好ましい。
【0038】
高圧容器加熱工程において、溶質(金属微粒子)の加圧二酸化炭素に対する溶解度が低い場合には、高圧容器内の加圧二酸化炭素は、超臨界状態であることが好ましい。一方、上記溶解度が高く二酸化炭素を相変化させることによるエネルギー消費を抑制する場合には、高圧容器内の加圧二酸化炭素は、超臨界状態でないことが好ましい。高圧容器加熱工程において、加圧二酸化炭素を超臨界状態とするか否かは、目的とするポリマー処理の種類、処理対象であるポリマーの種類等に応じて、高圧容器加熱工程の到達温度及び到達圧力を制御することにより選択できる。
【0039】
更に、本実施形態では、加圧二酸化炭素供給工程(
図1、ステップS3)の後、高圧容器を回転させてもよい。高圧容器を回転させることにより高圧容器の収容物を攪拌し、容器内部の温度、原料ペレットと加圧二酸化炭素の接触頻度、加圧二酸化炭素中の金属微粒子の濃度等を均一化することができる。更に、高圧容器を回転させることにより高圧容器の収容物を攪拌することは、他の攪拌手段と比較して以下に説明する利点を有する。
【0040】
本発明者らの検討によれば、原料ペレットに加圧二酸化炭素を接触させて金属微粒子を浸透させる方法においては、高圧容器内の加圧二酸化炭素占有スペースを小さくすることが、原料ペレットへの加圧二酸化炭素の浸透量を高める上で重要であることがわかった。高圧容器内の「加圧二酸化炭素占有スペース」とは、高圧容器内で加圧二酸化炭素及びそれに含まれる金属微粒子が占有する空間を意味する。加圧二酸化炭素占有スペースを小さくするためには、高圧容器の原料ペレット占有体積を高めることが必要である。高圧容器内の加圧二酸化炭素占有スペースが全く無いと、高圧容器に加圧二酸化炭素を供給することが出来なくなるので、高圧容器内の加圧二酸化炭素占有スペースは、5〜50vol%が好ましく、5〜30vol%が更に好ましい。高圧容器の内部において加圧二酸化炭素占有スペースを小さくすることで、原料ペレットへの金属微粒子の浸透量、つまり分配効率を高めることができる。反対に、加圧二酸化炭素占有スペースが大きいと、原料ペレットの処理時間が長くなり量産性が低下するという問題が生じる。
【0041】
高圧容器内の温度等を均一化する目的で、高圧容器内に攪拌機を設置した場合、高圧容器に収容できる原料ペレットの量が減少してしまう。更に、上述した加圧二酸化炭素占有スペースが増加する可能性もあり、原料ペレットの改質処理効率に悪影響を与える。高圧容器内を攪拌する他の方法としては、高圧容器の外部に循環ポンプ設け、循環ポンプと高圧容器とを配管で接続し、加圧二酸化炭素を循環させる方法が考えられる。しかし、原料ペレットの存在しない配管は上述の加圧二酸化炭素占有スペースと同様に原料ペレットの改質処理効率を低下させ、更に配管での金属微粒子の析出、残存等も問題になる。
【0042】
本実施形態では、高圧容器そのものを回転することによって高圧容器の収容物を攪拌するので、高圧容器内の加圧二酸化炭素占有スペースは増加せず、外部に配管を設ける必要もない。したがって、原料ペレットの改質処理効率を下げることなく、高圧容器内の温度、原料ペレットと加圧二酸化炭素の接触頻度及び加圧二酸化炭素中の金属微粒子の濃度等を均一化することができる。
【0043】
高圧容器の回転の前に、高圧容器と二酸化炭素貯蔵容器とを切り離し、その後、高圧容器を回転することが好ましい。高圧容器と二酸化炭素貯蔵容器とを切り離すことにより、高圧容器を安全及び簡便に回転させることができる。
【0044】
高圧容器と二酸化炭素貯蔵容器とを切り離すことは、高圧容器と二酸化炭素貯蔵容器とを接続する配管等を物理的に遮断して切り離すことのみならず、高圧容器と二酸化炭素貯蔵容器とを接続する配管に設けられているバルブを閉鎖することより、高圧容器と二酸化炭素貯蔵容器との間の流通を遮断することも意味する。高圧容器と二酸化炭素貯蔵容器とは、配管等を物理的に遮断して切り離した方が、高圧容器を回転させ易いため好ましい。しかし、高圧容器と二酸化炭素貯蔵容器とを配管等で接続した状態(バルブ等により流通を遮断した状態)であっても、高圧容器の回転方向を周期的に変化させることで、配管に負担をかけずに高圧容器を回転させることは可能である。
【0045】
また、高圧容器の回転は、高圧容器加熱工程(
図1、ステップS4)中に、高圧容器を加熱しながら回転させてもよいし、高圧容器加熱工程後に回転させてもよいが、昇温中も高圧容器内の温度を均一化できることから、加熱しながら回転することが好ましい。
【0046】
また、回転方法は任意であり、高圧容器全体を回転させてもよいし、高圧容器内部に原料ペレット及び金属微粒子を収容する内部容器を設けて内部容器のみを回転させてもよい。コスト面やメンテナンス面を考慮すると、シール部が少なくて済み、加圧二酸化炭素占有スペースを低減できる等の利点のある、高圧容器全体を回転させる方式が好ましい。また、高圧容器の回転手段は任意であり、例えば、ローラー式攪拌機や、電磁誘導方式を用いた装置により回転させることができる。
【0047】
以上説明した方法により製造される金属微粒子含有樹脂ペレットを用いることで、汎用の射出成形機、押出成形機等の成形機を使用して、金属微粒子を含む成形体を製造できる。したがって、金属微粒子を含む成形体を製造するために、新たな成形機を導入する等の設備投資をする必要がなく、製造コストを抑えることができる。そして、金属微粒子を含む成形体は、成形体表面に触媒を付与する必要がなく、触媒付与のために環境負荷が高い薬品を用いた表面処理を行う必要がないため、環境負荷を低減できる。
【0048】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態として、成形体の成形方法を説明する。まず、第1の実施形態の製造方法により製造した金属微粒子含有樹脂ペレットを用意し、金属微粒子含有樹脂ペレットを可塑化溶融して成形体を成形する。
【0049】
本実施形態の成形方法は、金属微粒子含有樹脂ペレットを用いるため、汎用の射出成形機、押出成形機等の成形機を使用して、金属微粒子を含む成形体を製造できる。したがって、金属微粒子を含む成形体を製造するために、新たな成形機を導入する等の設備投資をする必要がなく、製造コストを抑えることができる。
【0050】
本実施形態では、第1の実施形態の製造方法により製造される金属微粒子含有樹脂ペレット(第1の樹脂ペレット)のみから成形体を成形してもよい。また、金属微粒子を含有する第1の樹脂ペレットを、該金属微粒子を含有しない樹脂ペレット(第2の樹脂ペレット)と共に可塑化溶融して成形体を成形してもよい。第1の樹脂ペレットを第2の樹脂ペレットに混合して成形体を成形する場合、第1の樹脂ペレットは、マスターバッチであり、第2の樹脂ペレットは、マスターバッチが配合されるベース樹脂に相当する。マスターバッチとは、染料、顔料、その他の添加剤等の機能性材料を高濃度に含有した樹脂ペレットであり、機能性材料を含有しないベース樹脂に混合され、ベース樹脂と共に成形される。マスターバッチを用いると、機能性材料を直接ベース樹脂に添加して成形する場合と比較して、材料の取り扱い性が容易で秤量精度も向上する。本実施形態では、第1の実施形態の製造方法により製造される金属微粒子含有樹脂ペレット(第1の樹脂ペレット)を金属微粒子を含有したマスターバッチとして用いることができる。
【0051】
第1の樹脂ペレットをマスターバッチとして用いる場合、第1の樹脂ペレットはブロック共重合体を含むことが好ましい。第1の樹脂ペレットがブロック共重合体を含む場合、第1の樹脂ペレット及び第2の樹脂ペレットの合計重量に対する第1の樹脂ペレット重量は、1〜15wt%が好ましく、1〜5wt%とすることが更に好ましい。
【0052】
第1の樹脂ペレットが配合される第2の樹脂ペレットの材料としては、上述した第1の樹脂ペレットの原料ペレットに使用可能な熱可塑性樹脂を用いることができる。第2の樹脂ペレットは、原料ペレットと同様に、ガラス繊維、タルク、カーボン繊維等、各種無機フィラー等を混練させることもでき、また、一種類の材料を用いても、又は、二種類以上の材料を混合して用いても良い。
【0053】
更に、本実施体では、成形体の表面にメッキ膜を形成してもよい。無電解メッキ液としては、公知のものを使用できるが、触媒活性が高く液が安定であるという点から、無電解ニッケルリンメッキ液が好ましい。
【0054】
本実施形態の成形体は、メッキ触媒として働く金属微粒子が内部に分散されているので、メッキ触媒付与処理を行う必要がない。また、本実施形態では、無電解メッキ液が樹脂成形体の表面から浸透して樹脂成形体に含まれる金属微粒子に接触し、金属微粒子を触媒としてメッキ膜が成長する。したがって、メッキ膜は樹脂成形体に食い込んだ状態(メッキ膜の一部が樹脂成形体に浸透した状態)で樹脂成形体上に形成される。それゆえ、従来の無電解メッキ法のように樹脂成形体の表面をエッチングで粗化する必要がなく、多様な種類の樹脂成形体に対しても容易に密着性の優れたメッキ膜を形成することができる。また、本実施形態では、従来の無電解メッキ法のように樹脂成形体の表面を粗化しないので、表面粗度の非常に小さい(ナノオーダー)メッキ膜を形成することができる。
【0055】
更に、本発明者らは、第1の実施形態の製造方法により製造する金属微粒子含有樹脂ペレットがブロック共重合体を含有すると、ブロック共重合体がメッキ膜の成長を促し、更にメッキ膜の質を向上させることを見出した。この理由は定かではないが、以下のように推察される。
【0056】
金属微粒子含有樹脂ペレットを用いた成形体の成形過程、又は成形後において、成形体に含まれるブロック共重合体は、親水性セグメントが成形体表面にブリードアウトしようと移動する。よって、ブロック共重合体は、成形体の表面近傍に偏在し、ブロック共重合体の親水性セグメントにより、成形体は表面近傍が親水化される。
【0057】
本実施形態では、成形体に無電解メッキ液を接触させると、メッキ液は成形体の表面から内部に浸透して金属微粒子と接触し、樹脂成形体の内部から樹脂成形体を押し広げながらメッキ膜が成長する。このとき、本実施形態の成形体はブロック共重合体により表面近傍が親水化されているため、メッキ液の浸透とメッキ膜の成長が促されると考えられる。本実施形態の成形体は、メッキ膜の付きまわり性が良好で、短時間でメッキ膜が形成される。メッキ膜形成時間が短くなることで、ピンホール等のメッキ膜の欠陥も生じにくくなる。
【0058】
一方、ブロック共重合体は、成形体の表面近傍に偏析する傾向を有する。そのため、ブロック共重合体により親水化されるのは成形体の表面近傍である。ブロック共重合体は成形体の親水性を部分的に向上させるが、成形体全体の吸水性(マクロ的吸水性)へ与える影響は小さい。よって、メッキ液中での成形体の脆性破壊を抑制でき、成形体の機械的特性を低下させない。この結果、メッキ膜形成後も成形体は十分な耐熱衝撃性能を有する。
【0059】
更に、本実施形態において、ブロック共重合体が成形体の表面近傍へ移動するのに伴って、金属微粒子も表面近傍へ移動し表面近傍に偏在化し易くなると推察される。この現象の理由は定かではないが、金属微粒子が表面近傍に偏在化することで、メッキ膜を樹脂表面に形成し易くなり、メッキ膜の密着力低下が抑制され、メッキ反応ムラやピンホール等の外観不良が低減される。また、メッキ反応に寄与する金属微粒子は成形体表面近傍のみである。したがって、金属微粒子を成形体表面近傍に偏在させることで、メッキ反応に寄与しない成形体中心部の金属微粒子を減らし、コストを削減することができる。
【0060】
本明細書において、「成形体の表面近傍」とは、成形体の内部であって、且つ、表面に近い領域を意味し、成形体をメッキ液に接触させたときに表面からメッキ液が浸透してメッキ反応が起きる領域を意味する。「成形体の表面近傍」が、樹脂成形体の表面から、どの程度の深さまでの領域を意味するかは、成形体に用いられる熱可塑性樹脂によっても異なるが、成形体の表面から、0.1〜10μmまでの深さの領域であることが好ましい。
【0061】
尚、本実施形態では、ブロック共重合体を用いることによって、被メッキ体である成形体の少なくとも表面近傍を親水化し、上述の効果を奏することができる。また、低分子の界面活性剤も成形体表面に偏析する性質を有しているが、本実施形態のブロック共重合体と同等の効果を奏することはできない。ブロック共重合体は、通常の低分子の界面活性剤とは異なり、ポリマーである。ブロック共重合体は、大きな分子量有するため、混合される金属微粒子を伴って成形体の表面近傍に移動できると考えられる。また、ポリマーであるので、成形体の表面に高濃度に偏在しても、成形体の耐熱性や機械的強度を低下させない。更に、上述したように、可塑化溶融した状態で十分な粘度を有するので、ブロック共重合体単独であっても押出成形が可能であり、ペレット化することができる。
【0062】
第1の樹脂ペレットに含有されるブロック共重合体の他のセグメントは、親水性セグメントより疎水性のセグメントであれば任意であり、目的にあった種類を選択できる。例えば、他のセグメントに、第2の樹脂ペレットと相溶する材料を用いると、第1及び第2の樹脂ペレットの混合時及び、成形後の成形体内部での相分離を抑制できるという利点がある。一方、他のセグメントに第2の樹脂ペレットと非相溶の材料を用いると、ブロック共重合体は成形体表面にブリードアウトしようと移動する働きが強くなり、成形体の表面近傍に偏析しやすいという利点がある。第2の樹脂ペレットと相溶する材料としては、第2の樹脂ペレットと同じ構造又は、類似の構造を有する樹脂が好ましい。例えば、第2の樹脂ペレットにナイロン等のポリアミド樹脂を用いる場合には、他のセグメントはポリアミド成分を含むナイロン等が好ましい。たま、第2の樹脂ペレットにポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を用いる場合には、他のセグメントはポリオレフィン成分を含むことが好ましい。反対に、第2の樹脂ペレットと非相溶の材料としては、第2の樹脂ペレットと異なる構造や、異なる性質を有する樹脂が好ましい。例えば、第2の樹脂ペレットが疎水性のポリプロピレン等のポリオレフィンであれは、他のセグメントには比較的親水性の高いナイロン等を用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されない。
【0064】
[実施例1]
本実施例では、原料ペレットとしてポリアルキレングリコールとナイロン12のブロック共重合体(三洋化成工業製ペレスタット1251)を用い、金属微粒子としてパラジウム錯体(ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II))を用いて、金属微粒子含有樹脂ペレットを製造した。
【0065】
[金属微粒子含有樹脂ペレット製造装置]
本実施例に使用した金属微粒子含有樹脂ペレット製造装置について説明する。
図2に示す金属微粒子含有樹脂ペレット製造装置1000は、主に、内部に原料ペレット及び金属微粒子を収容する高圧容器100と、高圧容器100の温度を制御する温度制御機構200と、高圧容器100へ加圧二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置300と、高圧容器100を回転させることにより、高圧容器の収容物を攪拌するローラー式攪拌機400と、高圧容器100から二酸化炭素を排気する二酸化炭素排出機構500を備える。
【0066】
高圧容器100は、中心軸mを回転中心とし、一方の底面1aに開口部を有する円筒形容器1と、円筒形容器1の開口部を封止可能な容器蓋2と、円筒形容器1の他方の底面1bに取り付けられる円筒形容器保持部材3を備える。円筒容器保持部材3には、円筒形容器保持部材3を貫通する2つの貫通穴3a、3bがそれぞれ形成されている。円筒形容器1及び容器蓋2は、中心軸mを回転軸として回転可能である。一方、円筒形容器保持部材3は、図示しない支持体により金属微粒子含有樹脂ペレット製造装置1000の設置部位に固定されている。円筒形容器保持部材3は、ベアリングを介して円筒形容器1を回転可能に保持している。
【0067】
円筒形容器1は、内槽4と、内槽4に溶接された外槽5を有し、これらにより二重構造が形成されている。内槽4の内部空間6には原料ペレット及び金属微粒子が収容され、内槽4と外槽5との間には温度調節された水が循環する流路7が形成される。本実施例では、内部空間6の容積が20Lである高圧容器100を用いた。
【0068】
本実施例では、金属微粒子は直接、内部空間6に収容するのではなく、
図2に示すように、フィルタ付きの小型容器40に金属微粒子を収容し、小型容器40ごと内部空間6に収容した。小型容器40は円筒形であり、2つの底面40a、40bにはメッシュ粗さ0.5μmフィルタが設けられており、加圧二酸化炭素とそれに溶解した金属微粒子のみがフィルタを透過できる。本実施例では、容積20mlの円筒形小型容器を用いた。
【0069】
図3に示すように、内槽4及び外槽5の間には、内槽4と外槽5とを接続する接続部45a、45bが存在する。接続部45a、45bは、中心軸mと並行に延在し、中心軸mを対称軸とした回転対称な位置関係に配置されている。したがって、
図4に示すように、流路7の形状は略円筒形であるが、接続部45a、45bにより一方の端部7aから2分割され、半円筒状の流路7b、7cを形成している。接続部45a、45bは流路7の他方の端部7dには達しておらず、流路7b、7cは、他方の端部7d付近で合流している。
【0070】
図2に示すように、流路7の一方の端部7aは、円筒形容器1の底面1bに達している。したがって、流路7は円筒形容器1の底面1bにおいて円筒形容器保持部材3の貫通穴3a、3bと通じている。一方、流路7の他方の端部7dは、円筒形容器1の底面1aには達していない。
【0071】
更に、円筒形容器1の底面1a付近の側面下部には、内部空間6へ加圧二酸化炭素を供給するための導入口19が設けられ、側面上部には、内部空間6から二酸化炭素を排出するための排出口20が設けられている。導入口19及び排出口20には、二酸化炭素供給装置300、二酸化炭素排出機構500がそれぞれ接続している。更に、導入口19には、二酸化炭素供給装置300とは別に、圧力計P6及び背圧弁23が接続している。背圧弁23を所定の圧力に設定することで、高圧容器100へ加圧二酸化炭素を供給した後の高圧容器100内部の圧力を所定の圧力以下に保持することができる。
【0072】
温度制御機構200は、水の温度を−20℃〜45℃に制御可能な温度制御機構と、温度制御した水を外部装置へ循環させる循環ポンプを備える。温度制御機構200からは、2本のホース8a、8bが伸びており、高圧容器100の円筒形容器保持部材3の2つの貫通穴3a、3bにそれぞれ接続している。温度制御機200は、温度制御した水をホース8a、8b及び貫通穴3a、3bを介して、高圧容器100内の流路7へ循環させることにより、高圧容器100の温度を制御する。本実施例の円筒形容器1は回転するが、流路7は円筒形容器1の底面1bにおいて、回転しない円筒形容器保持部材3の貫通穴3a、3bと常に接している。これにより、円筒形容器1が回転中であっても、温度制御機構200は、温度制御した水を流路7へ循環させて高圧容器100の温度を制御することができる。
【0073】
二酸化炭素供給装置300は、主に、並列に接続された3つの二酸化炭素貯蔵容器10と、3つの二酸化炭素貯蔵容器10を覆う断熱壁11と、断熱壁11内部の温度を制御する図示しない空気調節機を備える。本実施例では、二酸化炭素貯蔵容器10として、30kg入り二酸化炭素ボンベを用いた。
【0074】
二酸化炭素貯蔵容器10は、内部に充填(密閉)された液相(液体二酸化炭素)13aと気相(気体二酸化炭素)13bからなる加圧二酸化炭素13と、二酸化炭素貯蔵容器10から液相13aを取り出すためのサイフォン管14を備える。
【0075】
3つの二酸化炭素貯蔵容器10は、接続ジョイント21及びバルブ22を介して、円筒形容器1の下部に設けられた導入口19に接続している。二酸化炭素供給装置300は、二酸化炭素貯蔵容器10内の液相13aをサイフォン管14を用いて、高圧容器100の内部空間6へ供給する。尚、高圧容器100と二酸化炭素貯蔵容器10とは、接続ジョイント21で切り離すことによって、物理的に分離することができる。
【0076】
ローラー式攪拌機400は、中心軸mと並行に延在する複数本の円柱状のローラー26と、ローラー26を回転させる回転台27を備え、複数本のローラー26上に高圧容器100が回転可能に戴置される。ローラー式攪拌機400は、ローラー26を回転させることにより、その上に戴置される高圧容器100を回転させる。したがって、ローラー26の回転方向と、高圧容器100の回転方向は、互いに逆回転となる。ローラー26の回転方向、回転速度及び回転時間を制御することにより、高圧容器100の回転方向、回転速度及び回転時間を制御することができる。
【0077】
二酸化炭素排出機構500は、主に、排出される二酸化炭素の質量と流量を計測可能なコリオリ流量計30と、二酸化炭素から金属微粒子を遠心分離するサイクロン31から構成される。コリオリ流量計30及びサイクロン31は、それぞれ排気バルブ32、33を介して接続ジョイント34に接続し、更に、自動バルブ35を介して円筒形容器1の上部に設けられた排出口20に接続している。尚、高圧容器100と二酸化炭素排出機構500とは、接続ジョイント34を切り離すことによって、物理的に分離することができる。
【0078】
[金属微粒子含有樹脂ペレットの製造]
まず、上述した金属微粒子含有樹脂ペレット製造装置1000において、温度制御機構200から冷却水を高圧容器100内部に設けられた流路7へ循環させ、高圧容器100の温度を10℃に制御(冷却)した。
【0079】
次に、高圧容器100の容器蓋2を取り外し、円筒形容器1の開口部から内部空間6へ原料ペレット及び金属微粒子を挿入し、原料ペレット及び金属微粒子を高圧容器100に収容した。本実施例で用いた金属微粒子は、加圧二酸化炭素への溶解度が高いので、小型容器40に金属微粒子を収容し、小型容器40ごと内部空間6に収容した。小型容器40は排出口20から離れた、円筒形容器1の底面1b付近に配置した。高圧容器内に配置した原料ペレットは、10kgであり、金属微粒子は、5gである。このとき、高圧容器内は常圧であり、常圧下において原料ペレット及び小型容器40は高圧容器の内容積の80vol%を占めた。したがって、本実施例における加圧二酸化炭素占有スペースは、20vol%であった。
【0080】
円筒形容器1の開口部を容器蓋2により封止した後、高圧容器100と二酸化炭素供給装置300との間のバルブ22を開放し、二酸化炭素供給装置300から二酸化炭素貯蔵容器10の貯蔵する液相13aをサイフォン管14で吸い上げ、図示しない高圧流量計で調整しながら100ml/minの一定流量で、高圧容器100下部に設けられた導入口19より液体二酸化炭素を内部空間6へ供給した。液体二酸化炭素の供給圧力は、各二酸化炭素貯蔵容器10に設けた圧力計P1〜P3により測定し、6.0〜6.5MPaとした。
【0081】
本実施例では、二酸化炭素供給装置300において、3つの二酸化炭素貯蔵容器10を覆う断熱壁11の内部は図示しない空気調節機により20±3℃に制御した。また、本実例では、次に説明する方法により、高圧容器100の内部空間6に液体二酸化炭素を満充填した。高圧容器100と二酸化炭素排出機構500との間に設けられた自動バルブ35、更にコリオリ流量計30へ続く排気バルブ32を開き、液体二酸化炭素を高圧容器100下部に設けられた導入口19より内部空間6へ供給しながら、高圧容器100上部に設けられた排出口20から、内部空間6に存在する空気、気体二酸化炭素等の気体を排出した。排出口20から排出された気体は、コリオリ流量計30により質量をモニターし、密度の高い液体二酸化炭素を検知したタイミングで自動バルブ35を閉じた。これにより、高圧容器100の内部空間6に液体二酸化炭素を満充填できた。本実施例では、圧力約6MPaである液体二酸化炭素を約1.5kg、高圧容器100に充填した。加圧二酸化炭素の供給量は、高圧容器100が戴置されている円柱状ローラー26を介して供給前後の高圧容器100の重量を測定し、供給前後の重量変化からもとめた。
【0082】
本実施例では、小型容器40内に金属微粒子を収容することで、内部空間6への液体二酸化炭素供給時において、金属微粒子が内部空間6に急激に拡散することを抑制した。更に、小型容器40を排出口20から離れた位置に設置することで、排出口20を介して排出される気体二酸化炭素と共に、金属微粒子が高圧容器100から排出されることを抑制した。
【0083】
高圧容器100の内部空間6を液体二酸化炭素で満充填した後、接続ジョイント21、34において、二酸化炭素供給装置300、二酸化炭素排出機構500をそれぞれ高圧容器100から物理的に切り離した。二酸化炭素供給装置300、二酸化炭素排出機構500をそれぞれ高圧容器100から切り離した後、ローラー式攪拌機400のローラー26を回転されることにより、その上に戴置されている高圧容器100を回転速度50rpmで回転させた。高圧容器を回転させながら、温度制御機構200から35℃に温度制御した水を流路7へ循環させて高圧容器100を加熱し、高圧容器100の温度を30℃に制御した。二酸化炭素の臨界温度は、31.1℃であるので、高圧容器100内の加圧二酸化炭素は超臨界状態ではなかった。高圧容器100の温度が上昇したことに伴い、高圧容器100内部の加圧二酸化炭素の圧力も上昇した。本実施形態では、導入口19に接続する背圧弁23の値を18MPaに設定することで、高圧容器100内部の圧力が18MPaを越えないように調整した。
【0084】
高圧容器100内部の圧力が15MPaに達した後、高圧容器100を回転させながら、その状態で1時間保持した。本実施例では、高圧容器加熱工程の到達圧力を背圧弁23の設定圧力以下とすることで、処理中に加圧二酸化炭素及び金属微粒子が高圧容器の外部に排気されることを防止した。その後、温度制御機構200から冷却水を高圧容器100内の流路7へ循環させ、高圧容器100冷却し、その温度を10℃に制御した。このとき、高圧容器100内の圧力は5MPaまで低下した。その後、ローラー式攪拌機400のローラー26の回転を停止させることにより、高圧容器100の回転を停止した。高圧容器100の回転停止後、接続ジョイント34において、二酸化炭素排出機構500を接続した。高圧容器100と二酸化炭素排出機構500の間に設けられている自動バルブ35及び排気バルブ33を開放し、高圧容器100内部の二酸化炭素を排出することで、高圧容器100内部の圧力を大気圧まで低下させた。二酸化炭素の排出時、サイクロン31を駆動させ、原料ペレットに浸透せず、排出される二酸化炭素中に含有される金属微粒子を遠心分離することにより回収した。
【0085】
高圧容器100の容器蓋2を取り外し、以上の処理が施された原料ペレットを内部空間6から取り出しだ。原料ペレットは、本来の白色から薄茶色に変色していた。この変色は、原料ペレットがパラジウム錯体を含有していることを示す。この結果から、本実施例において、パラジウム錯体を含有する金属微粒子含有樹脂ペレットが製造されたことが確認できた。尚、金属微粒子含有樹脂ペレットは発泡していなかった。
【0086】
[実施例2]
本実施例では、実施例1で製造した金属微粒子含有樹脂ペレットをマスターバッチ(第1の樹脂ペレット)として、ベース樹脂(第2の樹脂ペレット)に混合して成形体を製造した。更に、製造した成形体表面にメッキ膜を形成した。ベース樹脂の樹脂ペレットとしては、グラスファイバー強化のナイロン6樹脂のペレット(東レ製、アミランCM1001G30)を用いた。
【0087】
まず、マスターバッチ5wt%、ベース樹脂ペレット95wt%の比率で、2種類のペレットをドライブレントした。ドライブレンドしたペレットを汎用の射出成形機(日本製鋼所製、J180AD‐2M‐300H)を用いて射出成形し、成形体を得た。このとき、射出成形機内の溶融樹脂の温度は270℃、溶融樹脂を射出充填する金型温度は110℃とした。
【0088】
得られた成形体の表面に、以下に説明する方法でメッキ膜を形成した。まず、成形体を80℃、濃度75vol%の1,3−ブタンジオール水溶液に5分間浸漬し、その後、85℃の無電解ニッケルリンメッキ液(奥野製薬工業製、トップニコロンRCH)に浸漬し、ニッケルリン膜を形成した。次に、ニッケルリン膜を形成した成形体を置換銅メッキ液(奥野製薬液工業製、ANCアクチ)に常温で1分間浸漬し、更に、電解メッキ法により、40μmの銅メッキ膜を形成した。
【0089】
以上の方法により、ニッケルリン膜、無電解銅メッキ膜及び電解銅メッキ膜からなる金属膜を有する成形体(試料)を得た。得られた試料の金属膜の密着強度を引っ張り試験機を用いて測定した。その結果、本実施例で作製した試料の金属膜の密着強度は、15N/cmであった。この結果は、プラスチックメッキの密着強度目標値である10N/cmを越える高い密着強度であった。
【0090】
以上説明したように、本実施例では、金属微粒子含有樹脂ペレットを用いることにより、汎用の成形機を使用して金属微粒子を含む成形体が製造できた。更に、環境負荷が高い表面処理を行うことなく、成形体上にメッキ膜を形成することができ、形成されたメッキ膜が高い密着強度を有することがわかった。このような高い密着強度を有するメッキ膜が得られたのは、マスターバッチ(第1の樹脂ペレット)がブロック共重合体を含有することで、親水基であるポリエーテルが成形体表面の吸水性を高め、成形体の表面近傍のブロック共重合体及び金属微粒子が少量で効率よく機能したためと推測される。