特許第5982277号(P5982277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982277
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/18 20060101AFI20160818BHJP
   C08F 8/28 20060101ALI20160818BHJP
   C08F 12/24 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   C08L25/18
   C08F8/28
   C08F12/24
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-280194(P2012-280194)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-122311(P2014-122311A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】海野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】北野 智
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸雄
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−170165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/18
C08F 8/28
C08F 12/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(ここで、Raは水素原子またはメチル基を表し、Rbは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、mは1ないし3であり、nは1ないし3である。)
で表される、アルコキシメチル基で置換されたヒドロキシスチレンの繰り返し単位を含む硬化性樹脂の製造方法であって、
(a)ヒドロキシスチレンの重合体を得る工程と、
(b)アルカリ触媒の存在下でホルムアルデヒドを反応させて、前記重合体のベンゼン環にヒドロキシメチル基を導入する工程と、
(c)酸触媒の存在下で炭素原子数1ないし4のアルコールを反応させて、前記重合体のベンゼン環に導入されたヒドロキシメチル基をアルコキシ化する工程と
を含むことを特徴とする硬化性樹脂の製造方法
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】
(ここで、Ra、Rb、m、およびnは請求項1で定義したとおりであり、Rcは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基もしくはアルコキシ基またはアリール基を表し、lは1ないし3であり、xは70モル%以上であり、yは30モル%以下である。)
で表される、アルコキシメチル基で置換されたヒドロキシスチレンの繰り返し単位およびスチレンの繰り返し単位を含む硬化性樹脂の製造方法であって、
(a)ヒドロキシスチレンとスチレンとの共重合体を得る工程と、
(b)アルカリ触媒の存在下でホルムアルデヒドを反応させて、前記共重合体のベンゼン環にヒドロキシメチル基を導入する工程と、
(c)酸触媒の存在下で炭素原子数1ないし4のアルコールを反応させて、前記共重合体のベンゼン環に導入されたヒドロキシメチル基をアルコキシ化する工程と
を含むことを特徴とする硬化性樹脂の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂およびその製造方法ならびに硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスには樹脂硬化物からなる絶縁膜が用いられていることが多く、これらの絶縁膜には耐薬品性が求められている。近年では、電子ペーパーに代表されるフレキシブルな電子デバイスに対する需要も高くなっている。こうしたフレキシブルな電子デバイスに用いられる絶縁膜には、耐薬品性に加えて可とう性が求められている。
【0003】
特許文献1には、ヒドロキシスチレンを含む樹脂、酸発生剤、テトラメトキシメチルグリコールウリル等の架橋剤およびシランカップリング剤を含有する絶縁膜形成用樹脂組成物が記載されている。特許文献2には、特定のアセタール構造を有するヒドロキシスチレンを含む樹脂、酸発生剤、アルコキシメチル化グリコールウリル等の架橋剤および密着助剤を含有する樹脂組成物が記載されている。
【0004】
特許文献3には、ヒドロキシスチレンとメチルメタクリレート共重合体、キノンジアジド基含有化合物、熱硬化性樹脂および場合により特定のトリアジン化合物を含有する組成物が記載されている。特許文献4には、ポリビニルフェノール、感光材およびメラミン系硬化剤を含有する熱硬化性感光材料が記載されている。
【0005】
これらの特許文献に記載されている樹脂組成物では、多官能の架橋剤または硬化剤を中心として架橋が進むため、架橋剤または硬化剤の導入量を増加させると架橋密度が高くなりすぎ、可とう性は低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−065488号公報
【特許文献2】特開2008−304902号公報
【特許文献3】特開平5−158232号公報
【特許文献4】特開平7−140648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐薬品性と可とう性とを両立させた硬化物を与える硬化性樹脂、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によると、下記一般式(1)
【化1】
【0009】
(ここで、Raは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、Rbは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、mは1ないし3であり、nは1ないし3である。)で表される、アルコキシメチル基で置換されたヒドロキシスチレンの繰り返し単位を含むことを特徴とする硬化性樹脂が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によると、(a)ヒドロキシスチレンの重合体またはヒドロキシスチレンとスチレンとの共重合体を得る工程と、(b)アルカリ触媒の存在下でホルムアルデヒドを反応させて、前記重合体または共重合体のベンゼン環にヒドロキシメチル基を導入する工程と、(c)酸触媒の存在下で炭素原子数1ないし4のアルコールを反応させて、前記重合体または共重合体のベンゼン環に導入されたヒドロキシメチル基をアルコキシ化する工程とを含むことを特徴とする前記硬化性樹脂の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によると、前記硬化性樹脂を硬化させた硬化物が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、別途架橋剤を使用することなく、耐薬品性と可とう性とを両立した硬化物を与える硬化性樹脂、およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂は、アルコキシメチル基を導入したヒドロキシスチレンの繰り返し単位を含む重合体ある。この重合体を使用すれば、架橋基であるアルコキシメチル基を分子内に分散させることが可能であり、耐薬品性と可とう性とを両立した硬化物を与える硬化性樹脂が得られる。
【0014】
単量体であるヒドロキシスチレンとしては、パラヒドロキシスチレン、メタヒドロキシスチレン等が挙げられる。ヒドロキシスチレンのα炭素には炭素原子数1ないし4のアルキル基が導入されていてもよい。これらの単量体は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
上記ヒドロキシスチレン重合体のベンゼン環にヒドロキシメチル基を導入し、導入したヒドロキシメチル基をアルコキシ化することにより下記一般式(1)
【化2】
【0016】
(ここで、Raは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、Rbは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、mは1ないし3であり、nは1ないし3である。)
で表される繰り返し単位を含む硬化性樹脂が得られる。
【0017】
本発明における硬化性樹脂は、たとえば、下記一般式(2)
【化3】
【0018】
(ここで、Raは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、Rbは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、Rcは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基もしくはアルコキシ基またはアリール基を表し、mは1ないし3であり、nは1ないし3であり、lは1ないし3であり、xは70モル%以上であり、yは30モル%以下である。)
で表される、アルコキシメチル基で置換されたヒドロキシスチレンの繰り返し単位およびスチレンの繰り返し単位を含む硬化性樹脂であってもよい。xは100モル%未満、yは0モル%を超える。
【0019】
ここで、スチレンの繰り返し単位の割合yが30モル%を超えると、アルカリ溶液への溶解性が悪くなり、後述するアルカリ溶解速度と同様に微細加工時のパターン現像性が劣る。
【0020】
なお、本発明の硬化性樹脂においては、必ずしも全てのヒドロキシスチレンのベンゼン環にヒドロキシメチル基が導入されていなくてもよい。すなわち、下記一般式(3)
【化4】
【0021】
(ここで、Raは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、Rbは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、Rcは水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基もしくはアルコキシ基またはアリール基を表し、mは1ないし3であり、nは1ないし3であり、lは1ないし3である。)
で表される。下記一般式(3)においては、アルコキシメチル基で置換されたまたは非置換のヒドロキシスチレンの繰り返し単位の合計で70〜100モル%、スチレンの繰り返し単位が0〜30モル%である。
【0022】
アルコキシメチル基の割合(ベンゼン環1モルに対するアルコキシメチル基のモル数×100)は、10〜150モル%が好ましく、15〜50モル%がより好ましい。アルコキシメチル基の割合が上記の範囲よりも大きいと、耐薬品性は向上するが、可とう性が低下する。上記の範囲よりも小さいと、可とう性は向上するが、耐薬品性が低下する。
【0023】
硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3000〜30000の範囲であることが望ましい。この範囲を逸脱すると、ハンドリング性が劣る。
【0024】
アルカリ溶解速度(ADR)は、50〜3000Å/secであることが好ましい。この範囲を逸脱すると、微細加工時のパターン現像性が劣る。
【0025】
上記のアルコキシメチル基の割合、硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)、およびアルカリ溶解速度(ADR)の測定方法については後述する。
【0026】
次に、本発明の硬化性樹脂の製造方法を説明する。
まず、ヒドロキシスチレン重合体を、アゾ化合物を用いたラジカル重合等の公知の方法により製造する。
【0027】
得られたヒドロキシスチレンの重合体に、アルカリ触媒、例えば水酸化ナトリウムの存在下でホルムアルデヒドを添加して反応させ、ヒドロキシスチレン重合体のベンゼン環にヒドロキシメチル基を導入させる。
【0028】
次いで、酸触媒、例えば硫酸の存在下でアルコールと反応させ、先に導入したヒドロキシメチル基をアルコキシ化することにより、ヒドロキシスチレンのアルコキシメチル化物を得る。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
窒素置換を行った1L3口フラスコにパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部、反応溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル88.2質量部、重合開始剤としてV−601(和光純薬工業(株)商品名)17.2質量部を溶解し、攪拌下、80℃で8時間反応を行った。反応終了後、35質量%塩酸10質量部を加え、還流下で6時間反応を行い、パラヒドロキシスチレンの重合体溶液を得た。得られた溶液を純水580質量部に添加し、析出物をろ別し、真空乾燥機を用いて60℃で8時間乾燥し、パラヒドロキシスチレンの重合体粉末を得た。得られた粉末60質量部を10質量%水酸化ナトリウム溶液400質量部に溶解した後、92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部を添加し、40℃で5時間反応を行った。反応後、30質量%硫酸140質量部を添加し、沈殿物を回収した。沈殿物にメタノール600質量部を加え、溶解後、96質量%硫酸2質量部を加え、還流下で8時間反応を行った。反応後、減圧下で濃縮してメタノールを留去し、純水400質量部を加え、析出して得られた沈殿物を回収した。沈殿物にガンマブチロラクトン200質量部を加えて溶解し、残存するメタノール、純水を減圧下で留去させ、パラヒドロキシスチレン重合体のメトキシメチル化物のガンマブチロラクトン溶液を得た。得られたパラヒドロキシスチレンのメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は5700、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は2040Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は32モル%であった。
【0031】
[実施例2]
上記実施例1の製造法においてパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部の代わりにパラターシャーリーブトキシスチレン74.9質量部、スチレン7.8質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は7900、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は670Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は56モル%であった。
【0032】
[実施例3]
上記実施例1の製造法においてパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部の代わりにパラターシャーリーブトキシスチレン66.1質量部、スチレン13質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は8100、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は170Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は53モル%であった。
【0033】
[実施例4]
上記実施例1の製造法においてパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部の代わりにメタターシャーリーブトキシスチレン79.3質量部、スチレン5.2質量部を使用した。得られたメタヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は16000、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は560Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は41モル%であった。
【0034】
[実施例5]
上記実施例1の製造法においてパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部の代わりにメタターシャーリーブトキシスチレン70.5質量部、スチレン10.4質量部を使用した。得られたメタヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は22000、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は160Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は42モル%であった。
【0035】
[実施例6]
上記実施例3の製造法において92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド15.7質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は6500、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は170Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は32モル%であった。
【0036】
[実施例7]
上記実施例3の製造法において92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド11.8質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は5400、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は190Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は21モル%であった。
【0037】
[実施例8]
上記実施例3の製造法において92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド7.8質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は4600、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は230Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は9モル%であった。
【0038】
[実施例9]
上記実施例7の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 10.3質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は9500、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は80Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は23モル%であった。
【0039】
[実施例10]
上記実施例7の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 6.9質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は18300、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は60Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は24モル%であった。
【0040】
[実施例11]
上記実施例7の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりに2,2´―アゾビスイソブチロニトリル18.9質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は6400、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は250Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は23モル%であった。
【0041】
[実施例12]
上記実施例3の製造法において92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド30.3質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチロール化物のGPCによる重量平均分子量は12000、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は150Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は82モル%であった。
【0042】
[実施例13]
上記実施例1の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 10.3質量部、92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド75.8質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は23000、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は1500Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は124モル%であった。
【0043】
[実施例14]
上記実施例13の製造法において92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド59.9質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は12600、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は1750Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は98モル%であった。
【0044】
[実施例15]
上記実施例1の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 10.3質量部、メタノールの代わりにエタノールを使用した。得られたパラヒドロキシスチレン重合体のエトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は12000、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は1650Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は34モル%であった。
【0045】
[実施例16]
上記実施例1の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 10.3質量部、メタノールの代わりにノルマルブタノールを使用した。得られたパラヒドロキシスチレン重合体のブトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は12300、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は1420Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は36モル%であった。
【0046】
[実施例17]
上記実施例1の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 10.3質量部、メタノールの代わりにイソプロパノールを使用した。得られたパラヒドロキシスチレン重合体のイソプロポキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は12300、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は1530Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は42モル%であった。
【0047】
[比較例1]
窒素置換を行った1L3口フラスコにパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部、反応溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル88.2質量部、重合開始剤としてV−601 10.3質量部を溶解し、攪拌下、80℃にて8時間反応を行った。反応終了後、35質量%塩酸を10質量部加え、還流下で6時間反応を行い。パラヒドロキシスチレン重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を得た。得られた溶液を純水580質量部に添加し、析出物をろ別し、真空乾燥機を用いて60℃で8時間乾燥し、パラヒドロキシスチレンの重合体粉末を得た。得られた粉末60質量部をガンマブチロラクトン150質量部に溶解し、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル3質量部を加え、熱硬化性樹脂組成物ガンマブチロラクトン溶液を調製した。
【0048】
[比較例2]
上記比較例1の製造法において、テトラメトキシメチルグリコールウリル3質量部の代わりに、テトラメトキシメチルグリコールウリル6質量部を使用し、熱硬化性樹脂組成物ガンマブチロラクトン溶液を調製した。
【0049】
[比較例3]
上記比較例1の製造法において、テトラメトキシメチルグリコールウリル3質量部の代わりに、テトラメトキシメチルグリコールウリル18質量部を使用し、熱硬化性樹脂組成物ガンマブチロラクトン溶液を調製した。
【0050】
実施例1〜17および比較例1〜3について、下記の測定および評価を行った。
[アルカリ溶解速度(ADR)の測定]
3.5インチシリコンウェハー上に、実施例1〜17で作製したワニスおよび、比較例1〜3で調製した溶液をスピンコーターを用いて塗布し、ついでホットプレートを用いて、110℃で1分間プリベークし、Nanometrics社製 光干渉式膜厚測定装置 AFT M5100を用いて膜厚を測定した。塗膜したシリコンウェハーを2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液に浸し、塗膜が完全に溶解するまでの時間を測定した。アルカリ溶解速度は式1に従い算出した。
ADR=Tpre / DT ・・・式1
ここで、ADRはアルカリ溶解速度(Å/秒)、Tpreはプリベーク後の膜厚(Å)、DTは溶解に要した時間(秒)である。
【0051】
[重量平均分子量(Mw)の算出]
重量平均分子量は東ソー社製 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー HLC−8220 GPCを用いて測定した。重量平均分子量はポリスチレン標準にて換算した数値を用いた。
【0052】
[架橋基の割合の算出]
日本電子製 NMR LA−400を用い、13C定量モードで測定を行った。架橋基の割合として、ベンゼン環のピークを基準とし、アルコキシメチル基の割合を算出した。本測定においてベンゼン環1モルに対するアルコキシメチル基のモル数×100をモル%と表す。
【0053】
比較例1〜3については、ベンゼン環1モルに対するメトキシメチル基のモル数×100を算出してモル%と表す。
【0054】
[耐溶剤性の評価]
3.5インチシリコンウェハー上に、実施例1〜17で作製したワニスおよび、比較例1〜3で調製した溶液をスピンコーターを用いて塗布し、ついでホットプレートを用いて、120℃で3分間プリベークし、オーブンを用いて180℃で2時間熱硬化させ、硬化被膜をそれぞれ得た。硬化被膜について、Nanometrics社製 光干渉式膜厚測定装置 AFT M5100を用いて膜厚を測定した。得られた硬化被膜をアセトンに2時間含浸させ、乾燥後、再び膜厚を測定した。アセトン含浸前後での膜厚を比較し、耐溶剤性を評価した。膜厚の変動率を算出し、±5%未満を○、±5〜10%を△、±10%を超える場合および剥れてしまった場合を×とした。
【0055】
[可とう性の評価]
アルミニウム板上に、実施例1〜17で作製したワニスおよび、比較例1〜3で調製した溶液をバーコーターを用いて1μmの膜厚で塗布し、オーブンを用いて180℃で2時間熱硬化させ、硬化被膜をそれぞれ得た。得られた硬化被膜を外側にし、45°、90°にそれぞれ折り曲げ、可とう性を評価した。90°折り曲げでヒビ割れなしを○、45°折り曲げでヒビ割れなし、かつ90°折り曲げでヒビ割れありを△、45°折り曲げでヒビ割れありを×とした。
【0056】
以上のデータを表1に示す。
表1から、実施例1〜17の硬化物は、耐溶剤性(耐薬品性)および可とう性の両方とも優れていることがわかる。
【表1】