【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
窒素置換を行った1L3口フラスコにパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部、反応溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル88.2質量部、重合開始剤としてV−601(和光純薬工業(株)商品名)17.2質量部を溶解し、攪拌下、80℃で8時間反応を行った。反応終了後、35質量%塩酸10質量部を加え、還流下で6時間反応を行い、パラヒドロキシスチレンの重合体溶液を得た。得られた溶液を純水580質量部に添加し、析出物をろ別し、真空乾燥機を用いて60℃で8時間乾燥し、パラヒドロキシスチレンの重合体粉末を得た。得られた粉末60質量部を10質量%水酸化ナトリウム溶液400質量部に溶解した後、92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部を添加し、40℃で5時間反応を行った。反応後、30質量%硫酸140質量部を添加し、沈殿物を回収した。沈殿物にメタノール600質量部を加え、溶解後、96質量%硫酸2質量部を加え、還流下で8時間反応を行った。反応後、減圧下で濃縮してメタノールを留去し、純水400質量部を加え、析出して得られた沈殿物を回収した。沈殿物にガンマブチロラクトン200質量部を加えて溶解し、残存するメタノール、純水を減圧下で留去させ、パラヒドロキシスチレン重合体のメトキシメチル化物のガンマブチロラクトン溶液を得た。得られたパラヒドロキシスチレンのメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は5700、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は2040Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は32モル%であった。
【0031】
[実施例2]
上記実施例1の製造法においてパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部の代わりにパラターシャーリーブトキシスチレン74.9質量部、スチレン7.8質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は7900、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は670Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は56モル%であった。
【0032】
[実施例3]
上記実施例1の製造法においてパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部の代わりにパラターシャーリーブトキシスチレン66.1質量部、スチレン13質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は8100、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は170Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は53モル%であった。
【0033】
[実施例4]
上記実施例1の製造法においてパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部の代わりにメタターシャーリーブトキシスチレン79.3質量部、スチレン5.2質量部を使用した。得られたメタヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は16000、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は560Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は41モル%であった。
【0034】
[実施例5]
上記実施例1の製造法においてパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部の代わりにメタターシャーリーブトキシスチレン70.5質量部、スチレン10.4質量部を使用した。得られたメタヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は22000、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は160Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は42モル%であった。
【0035】
[実施例6]
上記実施例3の製造法において92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド15.7質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は6500、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は170Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は32モル%であった。
【0036】
[実施例7]
上記実施例3の製造法において92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド11.8質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は5400、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は190Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は21モル%であった。
【0037】
[実施例8]
上記実施例3の製造法において92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド7.8質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は4600、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は230Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は9モル%であった。
【0038】
[実施例9]
上記実施例7の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 10.3質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は9500、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は80Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は23モル%であった。
【0039】
[実施例10]
上記実施例7の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 6.9質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は18300、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は60Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は24モル%であった。
【0040】
[実施例11]
上記実施例7の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりに2,2´―アゾビスイソブチロニトリル18.9質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は6400、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は250Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は23モル%であった。
【0041】
[実施例12]
上記実施例3の製造法において92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド30.3質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン/スチレン共重合体のメトキシメチロール化物のGPCによる重量平均分子量は12000、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は150Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は82モル%であった。
【0042】
[実施例13]
上記実施例1の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 10.3質量部、92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド75.8質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は23000、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は1500Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は124モル%であった。
【0043】
[実施例14]
上記実施例13の製造法において92質量%パラホルムアルデヒド19.6質量部の代わりに92質量%パラホルムアルデヒド59.9質量部を使用した。得られたパラヒドロキシスチレン重合体のメトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は12600、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は1750Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は98モル%であった。
【0044】
[実施例15]
上記実施例1の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 10.3質量部、メタノールの代わりにエタノールを使用した。得られたパラヒドロキシスチレン重合体のエトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は12000、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は1650Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は34モル%であった。
【0045】
[実施例16]
上記実施例1の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 10.3質量部、メタノールの代わりにノルマルブタノールを使用した。得られたパラヒドロキシスチレン重合体のブトキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は12300、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は1420Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は36モル%であった。
【0046】
[実施例17]
上記実施例1の製造法においてV−601 17.2質量部の代わりにV−601 10.3質量部、メタノールの代わりにイソプロパノールを使用した。得られたパラヒドロキシスチレン重合体のイソプロポキシメチル化物のGPCによる重量平均分子量は12300、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液によるアルカリ溶解速度は1530Å/秒、13C−NMRによる架橋基の割合は42モル%であった。
【0047】
[比較例1]
窒素置換を行った1L3口フラスコにパラターシャーリーブトキシスチレン88.2質量部、反応溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル88.2質量部、重合開始剤としてV−601 10.3質量部を溶解し、攪拌下、80℃にて8時間反応を行った。反応終了後、35質量%塩酸を10質量部加え、還流下で6時間反応を行い。パラヒドロキシスチレン重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を得た。得られた溶液を純水580質量部に添加し、析出物をろ別し、真空乾燥機を用いて60℃で8時間乾燥し、パラヒドロキシスチレンの重合体粉末を得た。得られた粉末60質量部をガンマブチロラクトン150質量部に溶解し、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル3質量部を加え、熱硬化性樹脂組成物ガンマブチロラクトン溶液を調製した。
【0048】
[比較例2]
上記比較例1の製造法において、テトラメトキシメチルグリコールウリル3質量部の代わりに、テトラメトキシメチルグリコールウリル6質量部を使用し、熱硬化性樹脂組成物ガンマブチロラクトン溶液を調製した。
【0049】
[比較例3]
上記比較例1の製造法において、テトラメトキシメチルグリコールウリル3質量部の代わりに、テトラメトキシメチルグリコールウリル18質量部を使用し、熱硬化性樹脂組成物ガンマブチロラクトン溶液を調製した。
【0050】
実施例1〜17および比較例1〜3について、下記の測定および評価を行った。
[アルカリ溶解速度(ADR)の測定]
3.5インチシリコンウェハー上に、実施例1〜17で作製したワニスおよび、比較例1〜3で調製した溶液をスピンコーターを用いて塗布し、ついでホットプレートを用いて、110℃で1分間プリベークし、Nanometrics社製 光干渉式膜厚測定装置 AFT M5100を用いて膜厚を測定した。塗膜したシリコンウェハーを2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液に浸し、塗膜が完全に溶解するまでの時間を測定した。アルカリ溶解速度は式1に従い算出した。
ADR=Tpre / DT ・・・式1
ここで、ADRはアルカリ溶解速度(Å/秒)、Tpreはプリベーク後の膜厚(Å)、DTは溶解に要した時間(秒)である。
【0051】
[重量平均分子量(Mw)の算出]
重量平均分子量は東ソー社製 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー HLC−8220 GPCを用いて測定した。重量平均分子量はポリスチレン標準にて換算した数値を用いた。
【0052】
[架橋基の割合の算出]
日本電子製 NMR LA−400を用い、13C定量モードで測定を行った。架橋基の割合として、ベンゼン環のピークを基準とし、アルコキシメチル基の割合を算出した。本測定においてベンゼン環1モルに対するアルコキシメチル基のモル数×100をモル%と表す。
【0053】
比較例1〜3については、ベンゼン環1モルに対するメトキシメチル基のモル数×100を算出してモル%と表す。
【0054】
[耐溶剤性の評価]
3.5インチシリコンウェハー上に、実施例1〜17で作製したワニスおよび、比較例1〜3で調製した溶液をスピンコーターを用いて塗布し、ついでホットプレートを用いて、120℃で3分間プリベークし、オーブンを用いて180℃で2時間熱硬化させ、硬化被膜をそれぞれ得た。硬化被膜について、Nanometrics社製 光干渉式膜厚測定装置 AFT M5100を用いて膜厚を測定した。得られた硬化被膜をアセトンに2時間含浸させ、乾燥後、再び膜厚を測定した。アセトン含浸前後での膜厚を比較し、耐溶剤性を評価した。膜厚の変動率を算出し、±5%未満を○、±5〜10%を△、±10%を超える場合および剥れてしまった場合を×とした。
【0055】
[可とう性の評価]
アルミニウム板上に、実施例1〜17で作製したワニスおよび、比較例1〜3で調製した溶液をバーコーターを用いて1μmの膜厚で塗布し、オーブンを用いて180℃で2時間熱硬化させ、硬化被膜をそれぞれ得た。得られた硬化被膜を外側にし、45°、90°にそれぞれ折り曲げ、可とう性を評価した。90°折り曲げでヒビ割れなしを○、45°折り曲げでヒビ割れなし、かつ90°折り曲げでヒビ割れありを△、45°折り曲げでヒビ割れありを×とした。
【0056】
以上のデータを表1に示す。
表1から、実施例1〜17の硬化物は、耐溶剤性(耐薬品性)および可とう性の両方とも優れていることがわかる。
【表1】