特許第5982283号(P5982283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982283
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】減圧噴霧乾燥方法及び減圧噴霧乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/04 20060101AFI20160818BHJP
   A23L 3/46 20060101ALI20160818BHJP
   B01D 1/18 20060101ALI20160818BHJP
   B01D 1/20 20060101ALI20160818BHJP
   B01J 2/04 20060101ALI20160818BHJP
   F26B 3/06 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   F26B5/04
   A23L3/46
   B01D1/18
   B01D1/20
   B01J2/04
   F26B3/06
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-526528(P2012-526528)
(86)(22)【出願日】2011年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2011067065
(87)【国際公開番号】WO2012014923
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年4月4日
【審判番号】不服2015-15159(P2015-15159/J1)
【審判請求日】2015年8月12日
(31)【優先権主張番号】特願2010-170765(P2010-170765)
(32)【優先日】2010年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 博覧会名:FOOMA JAPAN 2010(国際食品工業展)主催者名:社団法人 日本食品機械工業会 開催日:2010年6月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000217594
【氏名又は名称】田辺工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 豊
(72)【発明者】
【氏名】山崎 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山野 善次
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 窪田 治彦
【審判官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−267402(JP,A)
【文献】 実開昭58−78102(JP,U)
【文献】 特開平6−114398(JP,A)
【文献】 特表2007−501219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D1/00
A23L3/00
B01J2/00
F26B5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧下に維持されると共に噴霧ノズルを備えた装置本体と、
過熱水蒸気を前記噴霧ノズルに供給する過熱水蒸気供給手段と、
液体原料を加熱することなく前記噴霧ノズルに供給する液体原料供給手段と、
前記装置本体から排気される過熱水蒸気と液体原料からの揮発蒸気とを冷却し凝縮水として回収する冷却手段と、
この冷却手段を介して前記装置本体内を減圧下に維持する減圧手段と、
前記装置本体内で生成した粉末製品を捕集する製品捕集手段と
を備え、
前記過熱水蒸気供給手段から供給される過熱水蒸気と前記液体原料供給手段から供給される液体原料とを前記噴霧ノズルから装置本体内に同時に噴霧してこの装置本体内で液体原料を霧化させると共に、液体原料が霧化して生成した霧状原料を過熱水蒸気と熱交換させ、液体原料を乾燥させて粉末化することを特徴とする減圧噴霧乾燥方法。
【請求項2】
装置本体が、一端側に過熱水蒸気と液体原料を噴霧する噴霧ノズルを備えていると共に他端側に冷却手段へと連通する排気口を備えた蒸発缶で構成されており、
前記噴霧ノズルから蒸発缶内に液体原料を噴霧して生成した霧状原料が、前記噴霧ノズルから蒸発缶内に噴霧される過熱水蒸気の流れに乗って排気口まで移動する間に、この過熱水蒸気と熱交換して乾燥し粉末化する請求項1に記載の減圧噴霧乾燥方法。
【請求項3】
装置本体が、一端側に過熱水蒸気を噴霧する第1の噴霧ノズルを備えていると共に、他端側に冷却手段へと連通する排気口と第1の噴霧ノズルに対して間隔をあけて向き合う状態で配置され液体原料を噴霧する第2の噴霧ノズルとを備えている蒸発缶で構成されており、
前記第2の噴霧ノズルから蒸発缶内に液体原料を噴霧して生成した霧状原料が、前記第1の噴霧ノズルから蒸発缶内に噴霧された過熱水蒸気の流れに乗って排気口まで移動する間に、この過熱水蒸気と熱交換して乾燥し粉末化する請求項1に記載の減圧噴霧乾燥方法。
【請求項4】
製品捕集手段が、装置本体と冷却手段との間に配置されたサイクロン捕集器であり、装置本体内で乾燥して粉末化した粉末製品を、この装置本体から冷却手段へと移送される排気ガスと共にサイクロン捕集器へ輸送し、このサイクロン捕集器内で固体と気体に分離して回収する請求項1に記載の減圧噴霧乾燥方法。
【請求項5】
サイクロン捕集器で分離された気体の一部を回収して乾燥させた後に、装置本体とサイクロン捕集器の間を接続する配管の内部に導入して戻す請求項4に記載の減圧噴霧乾燥方法。
【請求項6】
サイクロン捕集器で分離された粉末製品としての固体を回収する回収部の内部に、乾燥させた空気又は窒素を導入する請求項4に記載の減圧噴霧乾燥方法。
【請求項7】
噴霧ノズルとして、中心位置に液体原料の噴霧口を備え、この液体原料の噴霧口の周囲部に過熱水蒸気の噴出口を備えた構造のノズルを用いる請求項2に記載の減圧噴霧乾燥方法。
【請求項8】
第2の噴霧ノズルとして、中心位置に液体原料の噴霧口を備え、この液体原料の噴霧口の周囲部に過熱水蒸気の噴出口を備えた構造のノズルを用いる請求項3に記載の減圧噴霧乾燥方法。
【請求項9】
装置本体での減圧噴霧乾燥の操業条件は、装置本体内の真空度が2〜20kPaであり、過熱水蒸気供給手段から噴霧ノズルに供給される過熱水蒸気の蒸気温度が120〜250℃であり、装置本体内の乾燥温度が15〜80℃である請求項1〜8のいずれかに記載の減圧噴霧乾燥方法。
【請求項10】
減圧下に維持されると共に噴霧ノズルを備えた装置本体と、
過熱水蒸気を前記噴霧ノズルに供給する過熱水蒸気供給手段と、
液体原料を加熱することなく前記噴霧ノズルに供給する液体原料供給手段と、
前記装置本体から排気される過熱水蒸気と液体原料からの揮発蒸気とを冷却し凝縮水として回収する冷却手段と、
この冷却手段を介して前記装置本体内を減圧下に維持する減圧手段と、
前記装置本体内で生成した粉末製品を捕集する製品捕集手段とを備えており、
前記噴霧ノズルは、その中心位置に液体原料の噴霧口を備えていると共に、この噴霧口の周辺部に過熱水蒸気の噴出口を備えた構造のノズルであり、
前記過熱水蒸気供給手段から供給される過熱水蒸気と前記液体原料供給手段から供給される液体原料とを前記噴霧ノズルから装置本体内に同時に噴霧してこの装置本体内で液体原料を霧化させると共に、液体原料が霧化して生成した霧状原料を過熱水蒸気と熱交換させ、液体原料を乾燥させて粉末化することを特徴とする減圧噴霧乾燥装置。
【請求項11】
装置本体が、一端側に噴霧ノズルを備えていると共に他端側に冷却手段へと連通する排気口を備えた蒸発缶で構成されており、
前記噴霧ノズルから蒸発缶内に原料液体を噴霧して生成した霧状原料が、過熱水蒸気の流れに乗って排気口まで移動する間に、この過熱水蒸気と熱交換して乾燥し粉末化する請求項10に記載の減圧噴霧乾燥装置。
【請求項12】
減圧下に維持されると共に噴霧ノズルを備えた装置本体と、
過熱水蒸気を前記噴霧ノズルに供給する過熱水蒸気供給手段と、
液体原料を加熱することなく前記噴霧ノズルに供給する液体原料供給手段と、
前記装置本体から排気される過熱水蒸気と液体原料からの揮発蒸気とを冷却し凝縮水として回収する冷却手段と、
この冷却手段を介して前記装置本体内を減圧下に維持する減圧手段と、
前記装置本体内で生成した粉末製品を捕集する製品捕集手段とを備えており、
前記噴霧ノズルは、過熱水蒸気の噴出口を備える第1の噴霧ノズルと、液体原料の噴霧口を備え、前記第1の噴霧ノズルと間隔をあけて向き合う状態で配置される第2の噴霧ノズルとで構成されており、
前記過熱水蒸気供給手段から供給される過熱水蒸気を前記第1の噴霧ノズルから装置本体内に噴霧する一方で、前記液体原料供給手段から供給される液体原料を前記第2の噴霧ノズルから装置本体内に過熱水蒸気と衝突させるように噴霧して当該装置本体内で液体原料を霧化させるとともに、液体原料が霧化して生成した霧状原料を過熱水蒸気と熱交換させ、液体原料を乾燥させて粉末化することを特徴とする減圧噴霧乾燥装置。
【請求項13】
装置本体が、一端側に第1の噴霧ノズルを備えていると共に、他端側に冷却手段へと連通する排気口と第1の噴霧ノズルに対して間隔をあけて向き合う第2の噴霧ノズルを備えた蒸発缶で構成されており、
前記第2の噴霧ノズルから蒸発缶内に原料液体を噴霧して生成した霧状原料が、第1の噴霧ノズルから蒸発缶内に噴霧された過熱水蒸気の流れに乗って排気口まで移動する間に、この過熱水蒸気と熱交換して乾燥し粉末化する請求項12に記載の減圧噴霧乾燥装置。
【請求項14】
製品捕集手段が、装置本体と冷却手段との間に配置されたサイクロン捕集器であり、装置本体内で乾燥して粉末化した粉末製品を、この装置本体から冷却手段へと移送される排気ガスと共にサイクロン捕集器へ輸送し、このサイクロン捕集器内で固体と気体に分離して回収する請求項10又は12に記載の減圧噴霧乾燥装置。
【請求項15】
サイクロン捕集器で分離された気体の一部を回収して乾燥させた後に、装置本体とサイクロン捕集器の間を接続する配管の内部に導入して戻す乾燥維持手段を備えている請求項14に記載の減圧噴霧乾燥装置。
【請求項16】
サイクロン捕集器で分離された粉末製品としての固体を回収する回収部の内部に、乾燥させた空気又は窒素を導入する乾燥保持手段を備えている請求項14に記載の減圧噴霧乾燥装置。
【請求項17】
装置本体及び/又はサイクロン捕集器は、その内部壁面を保温して結露防止を行うための保温手段を備えている請求項10、12又は14に記載の減圧噴霧乾燥装置。
【請求項18】
第2の噴霧ノズルとして、その中心位置に液体原料の噴霧口を備え、この液体原料の噴霧口の周囲部に過熱水蒸気の噴出口を備えた構造のノズルを用いる請求項12に記載の減圧噴霧乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体原料を減圧下に乾燥させて粉末化するための減圧噴霧乾燥方法及び減圧噴霧乾燥装置に関するものである。詳しくは、特に限定するものではないが、例えば乳酸菌、ビタミンC、お茶の香り成分、熱に弱い天然食品やその成分等の食品原料や医薬品原料等のように加熱されると容易に酸化され、分解され、あるいは劣化するような熱変性し易い物質が水などに溶解又は分散した液体原料を乾燥させて粉末化させるのに好適な減圧噴霧乾燥方法及び減圧噴霧乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、熱変性し易い物質を低温で乾燥させる方法として、幾つかの技術が提案されている。
例えば、特許文献1(特開2005-287,373号公報)には、減圧下の乾燥装置本体内に減圧過熱蒸気を導入し、乾燥装置本体内に静置された熱変性し易い食品等の被乾燥物をこの減圧過熱蒸気で乾燥させる方法が提案されている。
しかしながら、この方法においては、静置した被乾燥物に減圧過熱蒸気を接触させて熱交換させるものであるから、被乾燥物が液体原料であると大きな蒸発伝熱面を確保することが難しく、また、大きな蒸発伝熱面を確保しようとすると装置が大型化するという問題がある。
【0003】
また、特許文献2(特開2005-291,598号公報)には、流動層乾燥装置本体内にガラスビーズ等の流動化粒子と熱変性し易い食品等の被乾燥物とを装入し、この流動層乾燥装置本体内に減圧下で減圧過熱蒸気を導入し、被乾燥物と減圧過熱蒸気とを流動状態で接触させて乾燥させる方法が提案されている。
しかしながら、この方法においても、被乾燥物が流動層乾燥装置本体内で流動化粒子と混ざり合って流動状態を形成する必要があることから、熱変性し易い物質の液体原料を乾燥させて粉末化する方法としては不向きである。
【0004】
更に、特許文献3(特開2006-297,243号公報)には、超音波霧化装置により被乾燥液を霧化させ、生成した噴霧液滴を真空チャンバ内に導入し、この真空チャンバの外周面に取り付けられたシリコンラバーヒータ等の加熱手段で加熱し、噴霧液滴を減圧下に加熱乾燥させて粉末化させる真空スプレードライヤが提案されている。
しかしながら、この方法においては、真空チャンバの外周面に取り付けられた加熱手段からこの真空チャンバ内に導入された噴霧液滴に対して真空下で熱を伝えることになり、伝熱効率が悪いという問題がある。
【0005】
更にまた、特許文献4(特開2006-333,838号公報)には、減圧下の乾燥塔内に圧縮空気を用いて発酵乳を噴霧し、この乾燥塔に設けられた遠赤外線ヒーターで加熱し、霧化した発酵乳を50℃以下の温度で減圧下に乾燥させて発酵乳粉末を製造する方法が提案されている。
しかしながら、この方法においては、乾燥塔内に導入されてこの乾燥塔内を流れる風量が不足し、乾燥して生成した発酵乳粉末を吹き飛ばすことが難しく、また、遠赤外線ヒーターからの輻射熱が乾燥塔内中心部に届き難く、少量生産には適しているものの大量生産には不向きであるという問題がある。
【0006】
そして、特許文献5(特開2009-103,398号公報)には、減圧下のドライヤ本体内に二流体ノズルを介して薬剤等の原料液と窒素ガス等の噴霧用ガスとを導入してこのドライヤ本体内で原料液を霧化し、また、このドライヤ本体内にはドライヤ本体の外周側に設けた熱風導入部から空気又は窒素ガスからなる加熱用ガスを導入し、ドライヤ本体内で霧化した原料液を加熱用ガスにより乾燥させて粉末化させる方法が提案されている。
しかしながら、この方法においては、加熱用ガスが空気や窒素ガス等の非液化ガス(非凝縮性)であるため、ドライヤ本体内の真空度を一定に維持するのが難しいほか、熱容量が比較的小さいために乾燥に必要な熱量を確保するためにはガス量を多くする必要がある。また、加熱用ガスの熱風導入部が二流体ノズルから離れているために、加熱用ガスの熱が霧化した原料液に効率良く伝達されない場合があり、装置が大型化し、また、短時間での粉末化が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-287,373号公報
【特許文献2】特開2005-291,598号公報
【特許文献3】特開2006-297,243号公報
【特許文献4】特開2006-333,838号公報
【特許文献5】特開2009-103,398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、上述した食品原料や医薬品原料等のように熱変性し易い物質を含む液体原料を乾燥させて粉末化させるのに好適な減圧噴霧乾燥の方法及び装置について鋭意検討した。その結果、熱源として過熱水蒸気を用い、噴霧ノズルから減圧下の装置本体内にこの過熱水蒸気と液体原料とを同時に噴霧し、装置本体内では液体原料を霧化させて霧状原料にすると共に、この生成した霧状原料を減圧下に過熱水蒸気と熱交換させ、これによって液体原料を乾燥させて粉末化することにより、液体原料を低温で、かつ、迅速に乾燥させて粉末化することができるほか、装置本体内を所定の真空度に維持する際の真空ポンプの負荷を軽減することができることを見い出し、本発明を完成させた。
【0009】
従って、本発明の目的は、食品原料や医薬品原料等のように熱変性し易い物質を含む液体原料を乾燥させて粉末化させるのに好適な新しい減圧噴霧乾燥の方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、減圧下に維持されると共に噴霧ノズルを備えた装置本体と、過熱水蒸気を前記噴霧ノズルに供給する過熱水蒸気供給手段と、液体原料を前記噴霧ノズルに供給する液体原料供給手段と、前記装置本体から排気される過熱水蒸気と液体原料からの揮発蒸気とを冷却し凝縮水として回収する冷却手段と、この冷却手段を介して前記装置本体内を減圧下に維持する減圧手段と、前記装置本体内で生成した粉末製品を捕集する製品捕集手段とを備え、前記過熱水蒸気供給手段から供給される過熱水蒸気と前記液体原料供給手段から供給される液体原料とを前記噴霧ノズルから装置本体内に同時に噴霧してこの装置本体内で液体原料を霧化させると共に、液体原料が霧化して生成した霧状原料を過熱水蒸気と熱交換させ、液体原料を乾燥させて粉末化することを特徴とする減圧噴霧乾燥方法である。
【0011】
また、本発明は、減圧下に維持されると共に噴霧ノズルを備えた装置本体と、過熱水蒸気を前記噴霧ノズルに供給する過熱水蒸気供給手段と、液体原料を前記噴霧ノズルに供給する液体原料供給手段と、前記装置本体から排気される過熱水蒸気と液体原料からの揮発蒸気とを冷却し凝縮水として回収する冷却手段と、この冷却手段を介して前記装置本体内を減圧下に維持する減圧手段と、前記装置本体内で生成した粉末製品を捕集する製品捕集手段とを備えており、前記噴霧ノズルは、その中心位置に液体原料の噴霧口を備えていると共に、この噴霧口の周辺部に過熱水蒸気の噴出口を備えた構造のノズルであり、前記過熱水蒸気供給手段から供給される過熱水蒸気と前記液体原料供給手段から供給される液体原料とを前記噴霧ノズルから装置本体内に同時に噴霧してこの装置本体内で液体原料を霧化させると共に、液体原料が霧化して生成した霧状原料を過熱水蒸気と熱交換させ、液体原料を乾燥させて粉末化することを特徴とする減圧噴霧乾燥装置である。
【0012】
さらに、本発明は、減圧下に維持されると共に噴霧ノズルを備えた装置本体と、過熱水蒸気を前記噴霧ノズルに供給する過熱水蒸気供給手段と、液体原料を前記噴霧ノズルに供給する液体原料供給手段と、前記装置本体から排気される過熱水蒸気と液体原料からの揮発蒸気とを冷却し凝縮水として回収する冷却手段と、この冷却手段を介して前記装置本体内を減圧下に維持する減圧手段と、前記装置本体内で生成した粉末製品を捕集する製品捕集手段とを備えており、前記噴霧ノズルは、過熱水蒸気の噴出口を備える第1の噴霧ノズルと、液体原料の噴出口を備え、前記第1の噴霧ノズルと間隔をあけて向き合う状態で配置される第2の噴霧ノズルとで構成されており、前記過熱水蒸気供給手段から供給される過熱水蒸気を前記第1の噴霧ノズルから装置本体内に噴霧する一方で、前記液体原料供給手段から供給される液体原料を前記第2の噴霧ノズルから装置本体内に過熱水蒸気と衝突させるように噴霧して当該装置本体内で液体原料を霧化させるとともに、液体原料が霧化して生成した霧状原料を過熱水蒸気と熱交換させ、液体原料を乾燥させて粉末化することを特徴とする減圧噴霧乾燥装置である。
【0013】
本発明において、減圧下に噴霧乾燥を行う装置本体については、それが装置本体内で液体原料を霧化させると共に液体原料が霧化して生成した霧状原料と過熱水蒸気とを熱交換できるものであれば、特に制限はないが、好ましくは、一端側に噴霧ノズルを備えていると共に他端側に冷却手段へと連通する排気口を備えた蒸発缶である。また、一端側に過熱水蒸気を噴霧する第1の噴霧ノズルを備えていると共に、他端側に冷却手段へと連通する排気口と第1の噴霧ノズルに対して間隔をあけて向き合う状態で配置され液体原料を噴霧する第2の噴霧ノズルとを備えている蒸発缶である。かかる蒸発缶を用いた場合には、前記噴霧ノズルから蒸発缶内に噴霧された原料液体が、過熱水蒸気の流れに乗って排気口まで移動する間に、霧化して霧状原料となり、過熱水蒸気と熱交換して乾燥し粉末化すると共に、生成した粉末製品は蒸発缶の内壁にほとんど付着することなく過熱水蒸気の流れに乗って排気口側へと移送される。
【0014】
また、装置本体としては、より好ましくは、上端側に噴霧ノズル(第1の噴霧ノズル)を備えると共に下端側に排気口(排気口及び第2の噴霧ノズル)を備え、過熱水蒸気の流れが上方から下方へと形成されるように構成された蒸発缶である。この蒸発缶を用いた場合は、その蒸発缶内で乾燥し粉末化して生成した粉末製品がより確実に過熱水蒸気の流れに乗って蒸発缶の下端側にある排気口側にむけて移送される。また、上端側に第1の噴霧ノズルを備え、下端側に排気口と第2の噴霧ノズルを備えた蒸発缶を用いた場合には、例えば、液体原料としてその成分の性状や濃度により比重や粘度が変わって噴霧の状態が変動するおそれがあるものを適用したときでも、その液体原料の霧状原料が蒸発缶内で良好に乾燥されて粉末化し、その生成した粉末製品が蒸発缶の内壁に付着することやその製品が熱変質することがより確実に防止される。
【0015】
また、本発明において、装置本体内で生成した粉末製品を捕集する製品捕集手段としては、例えば、装置本体として上方部分の熱交換部と下方部分の製品回収部とが分離可能に結合された蒸発缶を用いて構成することができる。この場合は、その蒸発缶の熱交換部に、この熱交換部内に液体原料を供給する噴霧ノズルと、この熱交換部から冷却手段へと移送される排気ガス(主として、装置本体内で霧状原料と熱交換した後の過熱水蒸気と、液体原料の溶媒及び溶質に由来する揮発蒸気とからなる気体である。)のための排気口を設け、その熱交換部内で乾燥し粉末化した粉末製品を下方部分の製品回収部に収容するようにすればよい。
【0016】
更に、製品捕集手段としては、このましくは、装置本体の排気口と冷却手段との間に配置するサイクロン捕集器を用いる。この場合は、装置本体内で乾燥して粉末化した粉末製品を、この装置本体から冷却手段へと移送される排気ガスと共にサイクロン捕集器へ輸送し、このサイクロン捕集器内で固体と気体に分離して回収するようにしてもよい。
【0017】
製品捕集手段としてサイクロン捕集器を用いる場合には、サイクロン捕集器で分離された気体の一部を回収して乾燥させた後に、装置本体とサイクロン捕集器の間を接続する配管の内部に導入して戻す構成(乾燥維持手段)を採用するとよい。この場合は、例えば、液体原料として吸湿性の高い物質を含むものを適用したときでも、その液体原料が装置本体で乾燥されて粉末化された粉末製品を吸湿させることなく乾燥状態を維持しながらサイクロン捕集器で捕集することができる。また、製品捕集手段としてサイクロン捕集器を用いる場合には、サイクロン捕集器で分離された粉末製品としての固体を回収する回収部の内部に、乾燥させた空気又は窒素を導入する構成(乾燥保持手段)を採用するとよい。この場合は、例えば、乾燥した粉末製品をサイクロン捕集器の回収部に吸湿させることなく乾燥状態を保持して回収することができる。
【0018】
本発明において、装置本体に取り付けられる噴霧ノズルは、この装置本体内に過熱水蒸気と液体原料とを同時に噴霧し、装置本体内で液体原料を霧化させて霧状原料を生成させることが必要である。噴霧ノズルとしては、その中心位置に液体原料の噴霧口を備えていると共にこの噴霧口の周辺部に過熱水蒸気の噴出口を備えているものが好ましい。また、噴霧ノズルとしては、その中心位置に1つ又は2つ以上の液体原料の噴霧口を備え、この噴霧口を取り囲むようにその周辺部に過熱水蒸気の噴出口を備えたリング状のノズルであることがより好ましい。更に、上記第2の噴霧ノズルとしては、少なくとも液体原料を噴霧することができるものが使用されるが、液体原料に加えて過剰水蒸気を併せて噴霧することができるものを用いてもよい。第2の噴霧ノズルについても、上記の如く、その中心位置に液体原料の噴霧口を備えていると共にこの噴霧口の周辺部に過熱水蒸気の噴出口を備えているものを適用することができる。
【0019】
そして、上記液体原料の噴霧口については、液体原料を霧化して霧状原料にすることができればよく、例えば、液体用の吐出孔と圧縮空気等の圧縮気体の吐出孔とで構成することができる。また、上記過熱水蒸気の噴出口については、上記液体原料の噴霧口の周辺部においてこの噴霧口を取り囲むように、リング状に開口した吐出孔を配置して構成したり、あるいは、比較的小さな直径を有する多数の吐出孔を互いに所定の間隔をおいて配置して構成してもよい。更に、上記の液体原料の噴霧口とこの周囲を取り囲む過熱水蒸気の噴出口についても、設計上許容される範囲内で、互いに接近させて設けても、また、互いに離間させて設けてもよい。
【0020】
このような噴霧ノズルとして特に好ましいのは、その中心位置に配設される液体原料の噴霧口が、中心部の液体原料を吐出する液体原料吐出孔と、この液体原料吐出孔の外側に位置して液体原料吐出孔をリング状に取り囲む断熱用の空気を吐出する空気吐出孔と、更にこの空気吐出孔の外側に位置して空気吐出孔をリング状に取り囲む噴霧用の飽和蒸気を吐出する飽和蒸気吐出孔とを備えており、さらに、このように構成された噴霧口の外側に位置してその飽和蒸気吐出孔をリング状に取り囲む過熱水蒸気の噴出口を備えている、いわゆるリング状の噴霧ノズルである。
【0021】
このような噴霧ノズルによれば、噴霧ノズル中心部の液体原料吐出孔から噴霧される液体原料は、空気吐出孔から吐出される断熱用の空気によって加熱されることなく、飽和蒸気吐出孔から吐出される噴霧用の飽和蒸気によって効率良く霧化される。また、この液体原料が霧化されて生成した霧状原料は、飽和蒸気吐出孔を取り囲む噴出口から噴出される過熱水蒸気と装置本体内で効率良く接触して効率の良い熱交換が行われ、装置本体の内部壁面に到達する前に確実に乾燥して粉末化する。
【0022】
また、本発明において、過熱水蒸気を前記噴霧ノズルに供給する過熱水蒸気供給手段としては、特に制限されるものではないが、正確に制御された温度で過熱水蒸気を噴霧ノズルに供給するために、好ましくは、ボイラーに加えて、このボイラーと噴霧ノズルとの間に加熱ヒーターを備えているものがよい。また、液体原料を噴霧ノズルに供給する液体原料供給手段についても、特に制限されるものではなく、例えば、液体原料を一時的に貯留する貯留槽とこの貯留槽から一定量の液体原料を噴霧ノズルに送液する送液ポンプからなるもの等が挙げられる。
【0023】
そして、本発明において、装置本体の排出口から排出される排気ガスを冷却し、この排気ガスから凝縮水を回収する冷却手段は、基本的には、排気ガス中の過熱水蒸気及び揮発蒸気を冷却するコンデンサーと、このコンデンサーの熱交換器に冷媒を循環させる冷却ユニットと、前記コンデンサーで生成した凝縮水を回収するレシーバータンクとを備えていればよい。また、前記冷却手段を介して装置本体内を減圧下に維持する減圧手段としては、好適には真空ポンプが用いられる。具体的には、真空ポンプは冷却手段のコンデンサーとレシーバータンクとの間に接続され、コンデンサーを介して装置本体内を所定の減圧下に維持することができるものであればよい。
【0024】
更に、本発明においては、好ましくは装置本体に保温手段を設け、この装置本体の内部壁面を保温して結露防止を行うのがよい。このように装置本体の内部壁面を保温して結露防止を行うことにより、乾燥して粉末化した粉末製品が装置本体の内部壁面に付着して固化したり、あるいは、結露を吸収してその乾燥状態が不十分になる等の問題を未然に防止することができる。また、製品捕集手段として前記サイクロン捕集器を用いる場合は、上記保温手段を装置本体とサイクロン捕集器の双方に設けたり、あるいは、サイクロン捕集器のみに設けてもよい。
【0025】
本発明において、減圧噴霧乾燥処理の対象となる液体原料については、特に制限されるものではないが、液体原料をできるだけ微細な液滴として噴霧するために、好ましくは固形分含量が20重量%以上30重量%以下、より好ましくは25重量%以上28重量%以下であって、残部が溶媒としての水と溶質中に微量存在する揮発成分とであるのがよい。ここで、固形分含量が20重量%より低くなると減圧噴霧乾燥処理におけるエネルギー効率が悪くなり、反対に、30重量%より高くなると原料液体の粘度が上昇し、噴霧時の微細化が困難になるという問題が生じる。
【0026】
また、本発明において、減圧噴霧乾燥の操業条件については、装置本体内の真空度が通常2kPa以上20kPa以下、好ましくは5kPa以上10kPa以下であり、装置本体内に導入される過熱水蒸気の蒸気温度が通常120℃以上250℃以下、好ましくは150℃以上200℃以下であり、また、装置本体内での乾燥温度が通常15℃以上80℃以下、好ましくは35℃以上45℃以下であるのがよい。
【0027】
上記装置本体内の真空度が2kPaより低いとコンデンサーでの水分凝縮に低温の冷媒が必要となりコストが掛かるという問題が生じ、反対に、20kPaより高くなると飽和温度が上がり部分的に熱変質が生じ易くなるという問題が生じる。また、過熱水蒸気の蒸気温度が120℃より低いと温度差が小さすぎて必要な蒸気量が多くなりすぎるという問題が生じ、反対に、250℃より高くなると部分的に熱変質が生じやすくなるという問題が生じる。更に、装置本体内の乾燥温度が15℃より低いと結露しやすくなりせっかく乾いた粉体が濡れてしまうという問題が生じ、反対に、80℃より高くなると部分的に熱変質が生じやすくなるという問題が生じる。
【0028】
減圧噴霧乾燥の操業条件が上記の如き範囲内に制御されることにより、例えば乳酸菌、ビタミンC、お茶の香り成分等の食品原料や医薬品原料等のように熱変性し易い物質を含む液体原料を、物質に熱変性を引き起こすことなく効率良く乾燥させて粉末化させることができる。
【0029】
ここで、装置本体における減圧噴霧乾燥の操業条件が上記の如き範囲内に制御された場合には、装置本体内における噴霧ノズルから排気口に至るまでの過熱水蒸気の流速が概ね平均0.5〜1.5m/sec程度になり、また、装置本体の排気口からサイクロン捕集器に至る配管内の流速は、概ね15〜60m/sec程度、好ましくは20〜40m/sec程度になる。これらはいずれも粉体の流体移送に十分な流速であって、装置本体内の過熱水蒸気の流れ及び装置本体の排気口からサイクロン捕集器に至る配管内の排気ガスの流れは、装置本体で生成した粉末製品をサイクロン捕集器にまで移送するために必要かつ十分な移送流体となる。
【0030】
本発明においては、装置本体内に噴霧された霧状原料を乾燥するための熱源が過熱水蒸気であるため、冷却手段を設けてこの過熱水蒸気を液化することにより、装置本体内を一定の減圧下に維持することが容易になる。しかも、過熱水蒸気は、熱容量が比較的大きいので、比較的少量のガス量で乾燥に必要な熱量を容易に確保することができ、装置を大型化することなく、短時間で比較的大量の粉末化が可能になる。
【0031】
また、本発明においては、減圧下に維持された装置本体内に1つの噴霧ノズルから液体原料と過熱水蒸気とが(並行した状態で)同時に噴霧される。この際、その噴霧ノズルでは液体原料を装置本体内に噴霧する噴霧口と過熱水蒸気を装置本体内に噴霧する噴出口とが互いに接近しているので、装置本体内に噴霧されて生成した霧状原料と過熱水蒸気とは容易に熱交換し、この霧状原料は装置本体の内部壁面に到達する前に可及的に乾燥して確実に粉末化する。このため、装置本体内に噴霧された霧状原料が液滴のまま装置本体の内部壁面に到達し、この内部壁面に付着して乾燥し固化することを可及的に防止することができる。
【0032】
また、本発明においては、減圧下に維持された装置本体内に第1の噴霧ノズルからの過熱水蒸気と第2の噴霧ノズルからの液体原料とが(対向した状態で)同時に噴霧される。この第1の噴霧ノズルと第2の噴霧ノズルを使用した場合は、第1の噴霧ノズルと第2の噴霧ノズルが所定の間隔をあけて向き合った状態で配置されているので、装置本体内に噴霧されて生成した霧状原料が装置本体内で過熱水蒸気と衝突するような状態で接触するようになり、その霧状原料と過熱水蒸気とが効率よく熱交換され、そのときの霧状原料が装置本体の内部壁面に到達する前により一層可及的に乾燥して確実に粉末化する。このため、装置本体内に噴霧された霧状原料が例えば比重や粘度の変動により噴霧状態が変わるようなものであっても、その霧状液滴のまま装置本体の内部壁面に到達し、その内部壁面に付着して固化することをより確実に防止することができる。
【0033】
更に、本発明において、装置本体として一端側に噴霧ノズルを備えていると共に他端側に冷却手段へと連通する排気口を備えた蒸発缶を採用し、また、製品捕集手段として前記蒸発缶の排気口と冷却手段との間に配置されたサイクロン捕集器を採用した場合には、次の点で有利である。すなわち、この蒸発缶内で乾燥し粉末化して生成した粉末製品を、この蒸発缶内では過熱水蒸気の流れに乗せて排気口まで確実に移送することができ、また、この蒸発缶の排気口からサイクロン捕集器を経て冷却手段へと流れる排気ガスの流れに乗せてサイクロン捕集器まで確実に移送することができる。この結果、その間に、粉末製品が蒸発缶の内部壁面や蒸発缶の排気口からサイクロン捕集器に至る配管内に付着するのを可及的に防止することができ、また、サイクロン捕集器内で固体と気体に分離して効率良く回収することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の減圧噴霧乾燥の方法及び装置によれば、食品原料や医薬品原料等のように熱変性し易い物質を含む液体原料を効率良く乾燥させて粉末化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の実施例1に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置を説明するための説明図である。
図2図2は、図1の噴霧ノズルを説明するための部分縦断面説明図である。
図3図3は、本発明の実施例2に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置を説明するための図1と同様の説明図である。
図4図4は、図3の装置に使用される噴霧ノズルにおける過熱水蒸気の噴出口を説明するための説明図であり、(a)は平面説明図、(b)は(a)のQ1−Q1線に沿う縦断面説明図、及び(c)は底面説明図である。
図5図5は、本発明の実施例3に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置において採用されている噴霧ノズルを説明するための部分縦断面説明図である。
図6図6は、図5の要部を拡大して示す部分拡大断面説明図である。
図7図7は、本発明の実施例4に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置において採用されている噴霧ノズルを説明するための部分縦断面説明図である。
図8図8は、本発明の実施例5に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置において採用されている噴霧ノズルを説明するための部分縦断面説明図である。
図9図9は、本発明の実施例6に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置において採用されている噴霧ノズルを説明するための部分縦断面説明図である。
図10図10は、本発明の実施例7に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置を説明するための説明図である。
図11図11は、本発明の実施例8に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置を説明するための説明図である。
図12図12は、本発明の実施例9に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置を説明するための説明図である。
図13図13は、本発明の実施例10に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に示す実施例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【0037】
[実施例1]
図1及び2に、本発明の実施例1に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置が示されている。
この実施例1において、減圧噴霧乾燥装置は、蒸発缶(装置本体)1と、過熱水蒸気供給手段2と、液体原料供給手段3と、冷却手段4と、真空ポンプ(減圧手段)5と、サイクロン捕集器(製品捕集手段)6とで構成されている。
【0038】
蒸発缶1は、減圧下に維持される容器であり、その上端に噴霧ノズル7を備え、かつ、その下端に排気口1aを備えている。過熱水蒸気供給手段2は、過熱水蒸気を噴霧ノズル7に供給するものであり、水蒸気を発生させるボイラー2aと、ボイラー2aから発生した水蒸気を加熱して過熱水蒸気にする加熱ヒーター2bを備えている。液体原料供給手段3は、液体原料を一時的に貯留する貯留槽3aと液体原料を送る送液ポンプ3bを備え、貯留槽3aから一定量の液体原料を噴霧ノズル7に供給するものである。
【0039】
冷却手段4は、蒸発缶1の排気口1aから排出される排気ガスを冷却して生成される凝縮水を回収するものである。冷却手段4は、蒸発缶1の排気口1aから排出される排気ガス(主として、蒸発缶1内で霧状原料と熱交換した後の過熱水蒸気と、液体原料中の溶媒及び溶質に由来する揮発蒸気)を冷却して凝縮するコンデンサー4aと、このコンデンサー4aに冷媒を循環させる冷却ユニット4bと、前記コンデンサー4aで生成した凝縮水を回収するレシーバータンク4cを備えている。真空ポンプ5は、冷却手段4におけるコンデンサー4aとレシーバータンク4cとの間に接続され、コンデンサー4aを介して蒸発缶1の内部を所定の減圧下に維持するものである。
【0040】
サイクロン捕集器6は、蒸発缶1と冷却手段4との間に配設され、蒸発缶1内で乾燥し粉末化して生成し、排気ガスの流れに乗って移送される粉末製品を捕集するものである。サイクロン捕集器6は、その捕集器本体の側部に、一端が蒸発缶1の排出口1aに接続された配管8aが接続されており、また、その捕集器本体の上部に、一端がコンデンサー4aに接続された配管8bが接続されている。
【0041】
この実施例1においては、蒸発缶1及びサイクロン捕集器6に保温手段9が設けられており、これにより蒸発缶1及びサイクロン捕集器6の内部壁面での結露を防止するようになっている。保温手段9は、蒸発缶1及びサイクロン捕集器6の各外壁面に設けられる保温用の温水循環部9a,9bと、ボイラー2aからの温水を一時的に貯留する温水タンク9cと、この温水タンク9c内の温水をサイクロン捕集器6の温水循環部9bと蒸発缶1の温水循環部9aをこの順に経由するように供給してから温水タンク9c内に戻して循環させる温水循環ポンプ9dを備えている。
【0042】
また、この実施例1においては、噴霧ノズル7が、図2に示されているように、その中心位置に液体原料の噴霧口7aを備え、また、この噴霧口7aを取り囲むようにその周辺部には過熱水蒸気供給手段2からライン(配管など)10を介して供給される過熱水蒸気の噴出口7bを備えた、リング状のノズルとして構成されている。この噴霧ノズル7における液体原料の噴霧口7aは、通常の液体を霧化するノズルと同様に、図示外の液体用の吐出孔と圧縮空気用の吐出孔とを有する二重構造になっており、液体原料供給手段3からライン11を介して供給される液体原料とライン12を介して供給される噴霧用圧縮空気とを同時に吐出させることにより、その液体原料を霧化させて霧状原料に変化させるように構成されている。
【0043】
更に、この実施例1においては、サイクロン捕集器6の下端部に切換え弁6aを介して製品受器6bが設けられており、また、この製品受器6bの下端に粉末製品を外部に取り出すための開閉弁6cが設けられている。このサイクロン捕集器6は、切換え弁6aを閉じて開閉弁6cを開くことにより、サイクロン捕集器6内の減圧条件を破ることなく、製品受器6b内に回収された粉末製品を外部に取り出すことができるようになっており、これにより実施例1に係る減圧噴霧乾燥装置の連続運転を可能にしている。
【0044】
以下、実施例1に係る減圧噴霧乾燥装置による減圧噴霧乾燥の動作について説明する。
【0045】
まず、液体原料供給手段3から供給される液体原料が、過熱水蒸気供給手段2から供給される過熱水蒸気と共に蒸発缶1の噴霧ノズル7内に入り、この噴霧ノズル7の噴霧口7aから霧化して霧状原料となって噴霧される。続いて、その霧状原料が、噴霧ノズル7の噴出口7bから噴出される過熱水蒸気の流れに乗って、その過熱水蒸気と熱交換しながら蒸発缶1内をその排出口1aに向けて移送されるとともに、排出口1aに到達するまでの間に乾燥させられて粉末化されることにより、粉末製品となる。
【0046】
そして、蒸発缶1内で生成した粉末製品は、蒸発缶1からサイクロン捕集器6へと排気される排気ガスの流れに乗って、この蒸発缶1の排出口1aから配管8aを通ってサイクロン捕集器6へと移送された後、サイクロン捕集器6内で固体と気体に分離され、その固体が粉末製品として切換え弁6aを通過して製品受器6b内へと回収される。
【0047】
また、サイクロン捕集器6内で固体と気体に分離された排気ガスは、配管8bを通って冷却手段4へと移送された後、その冷却手段4におけるコンデンサー4a内に吸い込まれ、このコンデンサー4a内の熱交換器で冷却ユニット4bから循環する冷媒と熱交換される。このときに生成する凝縮水はレシーバータンク4c内に貯留される。
【0048】
この間、蒸発缶1内とサイクロン捕集器6内は、真空ポンプ(減圧手段)5により冷却手段4のコンデンサー4aを介して所定の減圧下に維持されるが、コンデンサー4aにより排気ガス中の熱交換後の過熱水蒸気と液体原料由来の揮発蒸気を凝縮させてレシーバータンク4c内に回収している。これにより、蒸発缶1内を所定の真空度に維持する際の真空ポンプ5の負荷を軽減することができる。
【0049】
[実施例2]
図3及び図4には、本発明の実施例2に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置が示されている。
【0050】
この実施例2においては、上記の実施例1の場合とは異なり、装置本体として上方部分の熱交換部13と下方部分の製品回収部14とを分離可能に結合した蒸発缶1が用いられている。
【0051】
熱交換部13は、その上部の側壁に、熱交換部13の側方からその内壁面の内周方向に向けて液体原料と過熱水蒸気とを供給する噴霧ノズル7が設けられており、また、その上端部に、排気ガスを排気させる排気口1aが設けられている。また、熱交換部13の排気口1aからは、冷却手段4へと排気ガスを直接に移送するための配管8cが設けられている。更に、製品回収部14は、熱交換部13の下方に配置され、その熱交換部13内で乾燥し粉末化した粉末製品を回収するようになっている。
【0052】
実施例2における噴霧ノズル7は、上記の実施例1の場合と同様に、その中心に位置する液体原料の噴霧口7aと、この噴霧口7aを取り囲むように位置する過熱水蒸気の噴出口7bとを備えた、リング状のノズルとして構成されている。
【0053】
そして、この噴霧ノズル7の噴出口7bは、図4(a)〜(c)に示されているように、両端が開口する内筒体15aと、この内筒体15aの外周を取り囲むように所定の隙間(過熱水蒸気の噴出口7b)を維持して配設された外筒体15bと、この外筒体15bの上端部において内筒体15aの上部外側面を取り囲むように形成され、外部から供給された過熱水蒸気の圧力を均一化して前記隙間(過熱水蒸気の噴出口7b)内に送り込む圧力緩衝室15cとを備えている。
【0054】
また、噴出口7bは、内筒体15aの先端部が外筒体15bの先端部より先方に突出した状態に形成されている。これにより、この噴出口7bでは、前記隙間(過熱水蒸気の噴出口7b)を通過して噴出する過熱水蒸気の噴出方向を内筒体15aの外周面で案内し、前記隙間で形成される噴出口7bから噴出した過熱水蒸気が、直ちには内筒体15aの先端部を越えて内筒体15aの中心軸の方向に拡散しないようになっている。
【0055】
実施例2に係る減圧噴霧乾燥装置においては、噴霧ノズル7が、横断面が円形状からなる蒸発缶1の上部において、そのノズル7の噴霧方向を蒸発缶1の内部壁面の円周方向に沿わせるように配置されている。このため、この噴霧ノズル7から蒸発缶1内に同時に噴霧された霧状原料と過熱水蒸気とは、その噴霧の直後には過熱水蒸気が霧状原料を包み込むような状態で噴出される。そして、これらの過熱水蒸気や霧状原料が装置本体1内で拡散する際、その霧状原料は、蒸発缶1の内部壁面に到達する前において過熱水蒸気と効率良く熱交換することで乾燥して粉末化する。
【0056】
[実施例3]
図5及び図6には、本発明の実施例3に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置の一部が示されている。
【0057】
この実施例3においては、上記の実施例1の場合とは異なり、噴霧ノズル7として次の構成からなるものを採用している。
すなわち、実施例3における噴霧ノズル7は、その中心位置に配設される液体原料の噴霧口7aが、中心部の液体原料を吐出する液体原料吐出孔16と、この液体原料吐出孔16の外側に位置して液体原料吐出孔16をリング状に取り囲む断熱用の空気を吐出する空気吐出孔17と、更にこの空気吐出孔17の外側に位置して空気吐出孔17をリング状に取り囲む噴霧用の飽和蒸気を吐出する飽和蒸気吐出孔18とを備えている。また、この噴霧ノズル7は、液体原料の噴霧口7aの周辺部に位置する過熱水蒸気の噴出口7bが、噴霧口7aの外側に位置してその飽和蒸気吐出孔18をリング状に取り囲むように形成されており、いわゆるリング状の噴霧ノズル7を構成している。
【0058】
なお、図5において、符号10は過熱水蒸気を噴霧ノズル7の噴出口7bに供給するラインであり、符号11は液体原料を噴霧ノズル7の噴霧口7aを形成する液体原料吐出孔16に供給するラインであり、符号12は断熱用の空気を噴霧ノズル7の噴霧口7aを形成する空気吐出孔17に供給するラインであり、符号19は噴霧用の飽和蒸気を噴霧ノズル7の噴霧口7aを形成する飽和蒸気吐出孔18に供給するラインである。
【0059】
この実施例3における噴霧ノズル7を用いる減圧噴霧乾燥装置では、噴霧ノズル7の中心部の液体原料吐出孔16から噴霧される液体原料が、空気吐出孔17から吐出される断熱用の空気によって加熱されることなく、飽和蒸気吐出孔18から吐出される噴霧用の飽和蒸気によって効率良く霧化される。また、この液体原料が霧化されて生成した霧状原料は、上記実施例1の場合と同様に、飽和蒸気吐出孔18を取り囲む噴出口7bから噴出される過熱水蒸気と蒸発缶1内でより効率良く接触して効率の良い熱交換が行われ、蒸発缶1の内部壁面に到達する前に確実に乾燥して粉末化する。
【0060】
[試験例1]
先ず、液体原料として、市販のプレーンヨーグルト32重量部に蒸留水47重量部とスキムミルク21重量部とを添加し、全体を均一に混合して固形分濃度30wt%の発酵乳スラリーを調製した。
【0061】
図1及び図2に示す実施例1の減圧噴霧乾燥装置を用い、噴霧ノズルにおける発酵乳スラリーの送液量を1.2L/hr、圧縮空気の空気量を35NL/min、過熱水蒸気の蒸気量を40kg/hrにそれぞれ設定し、過熱水蒸気の蒸気温度を170℃、蒸発缶内の真空度を4〜5kPa、蒸発缶内の乾燥温度を65〜78℃、蒸発缶及びサイクロン捕集器の保温温度を40〜45℃にそれぞれ設定した操業条件のもとで、発酵乳スラリーの減圧噴霧乾燥を行い、回収率82.5wt%で水分含有量5〜6wt%の乳酸菌含有粉末ミルクを製造した。
【0062】
このようにして製造された乳酸菌含有粉末ミルクについて、液体原料として調製された発酵乳スラリーに対する粉末製品の乳酸菌含有粉末ミルクにおける乳酸菌数の変化を、混釈法による寒天平板法により調べた。このときの結果は、発酵乳スラリーが3.3×1011CFU/g-TSであるのに対して乳酸菌含有粉末ミルクが1.6×1011CFU/g-TSであり、乾燥前後の乳酸菌の保持率が約50%であった。
【0063】
また、乳酸菌含有粉末ミルクの製造を終了した後に蒸発缶、サイクロン捕集器及びこれらの間の配管に対する乾燥粉末の付着状況を目視で調べた。この結果、各所への乾燥粉末の付着が僅かに認められるのみで、十分に操業可能であることが判明した。
【0064】
[実施例4]
図7には、本発明の実施例4に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置の一部が示されている。
【0065】
この実施例4においては、上記の実施例1の場合とは異なり、噴霧ノズル7として次の構成からなるものを採用している。
すなわち、実施例4における噴霧ノズル7は、その中心位置に配設される液体原料の噴霧口7aとこの噴霧口7aの周囲に配置される過熱水蒸気の噴出口7bを備えたものであり、特に過熱水蒸気の噴出口7bを液体原料の噴霧口7aから離間させた状態で設けている。このうち過熱水蒸気の噴出口7bは、蒸発缶1の内壁に接近した状態で配置される円形ドーム状の外側板材30aとその外側板材30aの内側に所定の間隔をあけて過熱水蒸気の流路(間隙)30cを形成するように配置されるほぼ相似形状の内側板材30bとで構成される流速調整体30において、その構造体の下端側に存在する外側板材30aの下端部と内側板材30bの下端部で区画されるリング状の開口部として形成されている。流速調整体30の流路は、外側板材30aの内面と内側板材30bの外面で囲まれた状態で形成されており、また、その調整体30の上部のほぼ中央部においてライン10の配管と接続されている。一方、液体原料の噴霧口7aは、流速調整体30の上部のほぼ中央部に形成された貫通孔30dを通して配置される配管を介してライン11及びライン12の配管と接続されている。噴霧口7aは、液体原料と断熱用の空気を噴射する二流体ノズルの噴出口として形成されている。
【0066】
この実施例4における噴霧ノズル7を用いる減圧噴霧乾燥装置では、ライン10から供給される過熱水蒸気が噴霧ノズル7の流速調整体30の流路30cを通過することで適正な流速に調整された状態でリング状の噴出口7bから噴射される。噴霧ノズル7の噴出口7bから噴射される過熱水蒸気は、蒸発缶1の内部内壁に沿う状態で下方に移動する。一方、噴霧ノズル7の中心部の噴霧口7aから噴射される液体原料は、断熱用の空気によって加熱されることなく霧化される。過熱水蒸気の流速の調整は、例えば、流速調整体30における流路30cの高さ寸法などを変更することで行うことができる。
【0067】
そして、この液体原料が霧化されて生成した霧状原料は、液体原料の噴霧口7aと離間した状態で設けられているリング状の噴出口7bから上記の如く噴射される過熱水蒸気と蒸発缶1内で効率良く接触して効率の良い熱交換が行われ、蒸発缶1の内部壁面に到達する前に確実に乾燥して粉末化する。また、蒸発缶1の内部壁面に到達する方向に移動しようとする霧状原料又は粉末製品は、蒸発缶1の内部壁面に沿って下方に移動する過熱水蒸気の流れによってその内部壁面への付着が阻止される。
【0068】
特にこの噴霧ノズル7を用いる減圧噴霧乾燥装置では、例えば、液体原料として水よりも低沸点のアルコール類の揮発成分を含む液体原料を適用した場合でも、その液体原料を蒸発缶1内で噴霧ノズル7の噴出口7bから噴射される過熱水蒸気によって良好に乾燥させることができる。また、その液体原料が乾燥されて粉体化した粉末製品が蒸発缶1の内部壁面に付着することがなく、しかも、その粉末製品が熱で変質しまうこともない。
【0069】
[実施例5]
図8には、本発明の実施例5に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置の一部が示されている。
【0070】
この実施例5においては、上記の実施例1(実施例4)の場合とは異なり、噴霧ノズル7として次の構成からなるものを採用している。
すなわち、実施例5における噴霧ノズル7は、その中心位置に配設される液体原料の噴霧口7aとこの噴霧口7aの周囲に配置される過熱水蒸気の噴出口7bを備えたものであり、実施例4における噴霧ノズル7とほぼ同様に、特に過熱水蒸気の噴出口7bを液体原料の噴霧口7aから離間させた状態で設けている。このうち過熱水蒸気の噴出口7bは、蒸発缶1の内壁に接近した状態で配置される円形ドーム状の外側板材31aとその外側板材31aの下部にある円形開口部の内側に所定の間隙31cを形成するように非接触の状態で配置される円形の平板31bとで構成される流速調整体31において、その調整体31の下端側に存在する外側板材31aの下端部と円形の平板31bの外周縁部で区画されるリング状の開口部として形成されている。流速調整体31は、外側板材31aの内壁面と円形の平板31bとで囲まれる空間31dを備えている。また、その空間31dは、流速調整体31の上部のほぼ中央部においてライン10の配管と接続されている。一方、液体原料の噴霧口7aは、流速調整体31の上部のほぼ中央部に形成された貫通孔31eを通して配置される配管を介してライン11及びライン12の配管と接続されている。また、噴霧口7aは、液体原料と断熱用の空気を噴射する二流体ノズルの噴出口として形成されている。
【0071】
この実施例5における噴霧ノズル7を用いる減圧噴霧乾燥装置では、ライン10から供給される過熱水蒸気が噴霧ノズル7の流速調整体31における容積の大きい空間31dで拡散して通過することで適正な流速に調整されるとともに圧力も均一化された状態でリング状の噴出口7bから噴射される。噴霧ノズル7の噴出口7bから噴射される過熱水蒸気は、蒸発缶1の内部内壁に沿う状態で下方に移動する。一方、噴霧ノズル7の中心部の噴霧口7aから噴射される液体原料は、断熱用の空気によって加熱されることなく霧化される。過熱水蒸気の流速の調整は、例えば、流速調整体31における間隙31cの幅や空間31dの容積などを変更することで行うことができる。
【0072】
そして、この液体原料が霧化されて生成した霧状原料は、液体原料の噴霧口7aと離間した状態で設けられているリング状の噴出口7bから上記の如く噴射される過熱水蒸気と蒸発缶1内で効率良く接触して効率の良い熱交換が行われ、蒸発缶1の内部壁面に到達する前に確実に乾燥して粉末化する。また、蒸発缶1の内部壁面に到達する方向に移動しようとする霧状原料又は粉末製品は、蒸発缶1の内部壁面に沿って下方に移動する過熱水蒸気の流れによってその内部壁面への付着が阻止される。
【0073】
特にこの噴霧ノズル7を用いる減圧噴霧乾燥装置においても、例えば、液体原料として水よりも低沸点のアルコール類の揮発成分を含む液体原料を適用した場合でも、実施例4の場合とほぼ同様に、その液体原料を蒸発缶1内で噴霧ノズル7の噴出口7bから噴射される過熱水蒸気によって良好に乾燥させることができる。また、その液体原料が乾燥されて粉体化した粉末製品は蒸発缶1の内部壁面に付着することがなく、しかも、その粉末製品は熱で変質しまうこともない。
【0074】
[実施例6]
図9には、本発明の実施例6に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置の一部が示されている。
【0075】
この実施例6においては、上記の実施例1の場合とは異なり、噴霧ノズル7として次の構成からなるものを採用している。
すなわち、実施例6における噴霧ノズル7は、その中心位置に配設される液体原料の噴霧口7aとこの噴霧口7aの周囲に配置される過熱水蒸気の噴出口7bを備えたものであり、特に過熱水蒸気の噴出口7bを噴霧口7aの周囲に点在させた状態で設けている。このうち過熱水蒸気の噴出口7bは、蒸発缶1の内壁に接近した状態で配置される円形ドーム状の外側板材32aとその外側板材32aの下部にある円形開口部を塞ぐとともに貫通した複数の吐出孔32cが互いに所定の間隔をおいて設けられた円形の平板32bとで構成される流速調整体32において、その調整体32における円形の平板32bにある複数の吐出孔32cで点在した開口部として形成されている。この流速調整体32も、外側板材32aの内壁面と円形の平板32bとで囲まれる空間32dを備えている。また、その空間32dは、流速調整体32の上部のほぼ中央部においてライン10の配管と接続されている。一方、液体原料の噴霧口7aは、流速調整体32の上部のほぼ中央部に形成された貫通孔32eを通して配置される配管を介してライン11及びライン12の配管と接続されている。また、噴霧口7aは、液体原料と断熱用の空気を噴射する二流体ノズルの噴出口として形成されている。
【0076】
この実施例6における噴霧ノズル7を用いる減圧噴霧乾燥装置では、ライン10から供給される過熱水蒸気が噴霧ノズル7の流速調整体32の空間32dを通過することと複数の吐出孔32cに配分されて通過することで適正な流速に調整されるとともに広く分散された状態で噴出口7bから噴射される。一方、噴霧ノズル7の中心部の噴霧口7aから噴射される液体原料は、断熱用の空気によって加熱されることなく霧化される。過熱水蒸気の流速の調整は、例えば、流速調整体32における吐出孔32cの開口面積や数、空間32dの容積などを変更することで行うことができる。
【0077】
そして、この液体原料が霧化されて生成した霧状原料は、液体原料の噴霧口7aの周囲に点在した状態で設けられている噴出口7bから上記の如く噴射される過熱水蒸気と蒸発缶1内で効率良く接触して効率の良い熱交換が行われ、蒸発缶1の内部壁面に到達する前に確実に乾燥して粉末化する。
【0078】
特にこの噴霧ノズル7を用いる減圧噴霧乾燥装置では、例えば、液体原料として水よりも低沸点のアルコール類の揮発成分を含む液体原料を適用した場合でも、実施例4の場合とほぼ同様に、その液体原料を蒸発缶1内で噴霧ノズル7の噴出口7bから噴射される過熱水蒸気によって良好に乾燥させることができる。また、その液体原料が乾燥されて粉体化した粉末製品は蒸発缶1の内部壁面に付着することがなく、しかも、その粉末製品は熱で変質しまうこともない。
【0079】
[実施例7]
図10には、本発明の実施例7に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置が示されている。
【0080】
この実施例7においては、上記の実施例1の場合とは異なり、噴霧ノズルとして、過熱水蒸気の噴出口7bを備える第1の噴霧ノズル71と、液体原料の噴霧口7aを備え、第1の噴霧ノズル71と間隔をあけて向き合う状態で配置される第2の噴霧ノズル72とで構成されるものが用いられている。
【0081】
第1の噴霧ノズル71は、蒸発缶1の上端側に配置されており、過熱水蒸気の噴出口7bが蒸発缶1の下端側を向いた状態で取り付けられている。噴出口7bは、図2図4図7図9でそれぞれ示した各ノズル7のいずれかにおける噴出口7bと同じ構成を採用することでき、筒状の構造体や板状の構造体等を用いて形成する間隙で構成される構造になっている。そして、第1の噴霧ノズル71は、過熱水蒸気が供給されるライン10と接続されており、過熱水蒸気を噴出口7bから蒸発缶1の下端側にむけて噴霧するように構成されている。ちなみに、第1の噴霧ノズル71については、図2図4図7図9でそれぞれ示した各ノズル7をその液体原料の噴霧口7aを取り除いた構造のものとして構成することができる他、その各ノズル7を液体原料の噴霧口7aを取り除かずに残した構造のもの(その噴霧口7aは使用しない)として構成することも可能である。この点は、後記の実施例8における第1の噴霧ノズル71についても同様である。
【0082】
第2の噴霧ノズル72は、蒸発缶1の下端側において第1の噴霧ノズル71と所定の間隔をあけて互いに向き合う状態で配置されており、液体原料の噴霧口7aが第1の噴霧ノズル71の噴出口7bとほぼ向き合う状態で取り付けられている。また、第2の噴霧ノズル72は、蒸発缶1の下端側の排気口1aから所定の間隔をあけた位置に配置されている。更に、第2の噴霧ノズル72は、この噴霧ノズル7における液体原料の噴霧口7aは、図示外の液体用の吐出孔と圧縮空気用の吐出孔とを有する二重構造になっている。そして、第2の噴霧ノズル72は、液体原料を供給されるライン11と噴霧用の圧縮空気を供給するライン12に接続されており、その液体原料と噴霧用圧縮空気とを同時に吐出させることにより、その液体原料を霧化させて霧状原料に変化させるように構成されている。
【0083】
実施例7に係る減圧噴霧乾燥装置においては、蒸発缶1の上端側に配置された第1の噴霧ノズル71から過熱水蒸気が蒸発缶1の下端側に向けて拡散した状態で噴霧される一方で、蒸発缶1の下端側に第1の噴霧ノズル71と間隔をあけて向き合う状態で配置された第2の噴霧ノズル72から液体原料が蒸発缶1の上端側に向けて霧状になって噴霧される。この際、各噴霧ノズル71、72から蒸発缶1内に同時に向き合う状態で噴霧された過熱水蒸気と霧状原料とは、過熱水蒸気が霧状原料を上方から包み込むような状態になって接触し合う。また、液体原料は、第2の噴霧ノズル72から蒸発缶1の上端側に向けて安定した状態で噴霧される。これにより、その霧状原料は、過熱水蒸気と均一に安定した状態で接触するようになり、蒸発缶1の内部壁面に到達する前において過熱水蒸気と効率良く熱交換することで確実に乾燥して粉末化する。
【0084】
特にこの減圧噴霧乾燥装置では、例えば、液体原料としてその成分の性状や濃度により比重や粘度が変わって噴霧されるときの状態が変動するおそれがあるものを適用したときでも、その液体原料の霧状原料が蒸発缶内で過熱水蒸気と均一にかつ安定して接触することで良好に乾燥されて粉末化され、また、その生成した粉末製品が蒸発缶の内部内壁(特に下部の逆円錐のような形状をした底面にほぼ該当する内壁部分)に付着することやその製品が熱変質することがより確実に防止される。
【0085】
[実施例8]
図11には、本発明の実施例8に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置が示されている。
【0086】
この実施例8においては、上記の実施例1(実施例7)の場合とは異なり、噴霧ノズルとして、過熱水蒸気の噴出口7bを備える第1の噴霧ノズル71と、液体原料の噴霧口7a及び過熱水蒸気の噴出口7bを備え、第1の噴霧ノズル71と間隔をあけて向き合う状態で配置される第2の噴霧ノズル73とで構成されるものが用いられている。
【0087】
第1の噴霧ノズル71は、実施例7における第1の噴霧ノズル71と同様に構成されているものであり、蒸発缶1の上端側に配置されており、過熱水蒸気の噴出口7bが蒸発缶1の下端側を向いた状態で取り付けられている。そして、この第1の噴霧ノズル71は、過熱水蒸気が供給されるライン10と接続されており、ライン10から供給される過熱水蒸気の一部を噴出口7bから蒸発缶1の下端側にむけて噴霧するように構成されている。
【0088】
第2の噴霧ノズル73は、実施例7における第2の噴霧ノズル72の場合と同様に、蒸発缶1の下端側において第1の噴霧ノズル71と所定の間隔をあけて互いに向き合う状態で配置されており、液体原料の噴霧口7aが第1の噴霧ノズル71の噴出口7bとほぼ向き合う状態で取り付けられている。また、この第2の噴霧ノズル73も、蒸発缶1の下端側の排気口1aから所定の間隔をあけた位置に配置されている。更に、第2の噴霧ノズル73は、実施例1における噴霧ノズル7の場合とほぼ同様に、その中心位置に液体原料の噴霧口7aを備え、また、噴霧口7aを取り囲むようにその周辺部に過熱水蒸気の噴出口7bを備えた、リング状のノズルとして構成されている。そして、第2の噴霧ノズル73は、液体原料を供給されるライン11と噴霧用の圧縮空気を供給するライン12に接続されているとともに過熱水蒸気を供給するライン10とも接続されており、その液体原料については噴霧用圧縮空気と同時に吐出させて霧状原料に変化させるように構成し、また過熱水蒸気については液体原料と同時に噴霧させるように構成されている。
【0089】
実施例8に係る減圧噴霧乾燥装置においては、蒸発缶1の上端側に配置された第1の噴霧ノズル71から過熱水蒸気が蒸発缶1の下端側に向けて拡散した状態で噴霧される一方で、蒸発缶1の下端側に第1の噴霧ノズル71と間隔をあけて向き合う状態で配置された第2の噴霧ノズル73から液体原料が蒸発缶1の上端側に向けて霧状になって噴霧されるとともに過熱水蒸気も蒸発缶1の上端側に向けて噴霧される。この際、各噴霧ノズル71、73から蒸発缶1内に同時に向き合う状態で噴霧された過熱水蒸気と霧状原料とは、過熱水蒸気が霧状原料を上方及び下方からそれぞれ包み込むような状態になって接触し合う。また、液体原料は、第2の噴霧ノズル7から蒸発缶1の上端側に向けて安定した状態で噴霧される。これにより、その霧状原料は、過熱水蒸気と均一に安定した状態でより多く接触するようになり、蒸発缶1の内部壁面に到達する前において過熱水蒸気と更に効率良く熱交換することでより確実に乾燥して粉末化する。
【0090】
この減圧噴霧乾燥装置においても、実施例7に係る減圧噴霧乾燥装置の場合と同様に、例えば、液体原料としてその成分の性状や濃度により比重や粘度が変わって噴霧されるときの状態が変動するおそれがあるものを適用したときでも、その液体原料の霧状原料が良好に乾燥して粉末化され、また、その生成した粉末製品が蒸発缶の内壁(特に下部の逆円錐のような形状をした底面にほぼ該当する内壁部分)に付着することやその製品が熱変質することがより確実に防止される。
【0091】
[試験例2]
液体原料としては、試験例1の場合と同様に、市販のプレーンヨーグルト32重量部に蒸留水47重量部とスキムミルク21重量部とを添加し、全体を均一に混合して固形分濃度30wt%の発酵乳スラリーを調製した。
【0092】
図10に示す実施例7の減圧噴霧乾燥装置を用い、第2の噴霧ノズル72における発酵乳スラリーの送液量を2.0L/hr及び圧縮空気の空気量を40NL/minにそれぞれ設定し、第1の噴霧ノズル71における過熱水蒸気の蒸気量を40kg/hrにそれぞれ設定し、過熱水蒸気の蒸気温度を190℃、蒸発缶1内の真空度を4〜5kPa、蒸発缶1内の乾燥温度を45〜50℃、蒸発缶1及びサイクロン捕集器6の保温温度を40〜45℃にそれぞれ設定した操業条件のもとで、発酵乳スラリーの減圧噴霧乾燥を行い、回収率75wt%で水分含有量5〜6wt%の乳酸菌含有粉末ミルクを製造した。
【0093】
このようにして製造された乳酸菌含有粉末ミルクについて、試験例1の場合と同様にしてそのミルクにおける乳酸菌数の変化を、混釈法による寒天平板法により調べた。このときの結果は、発酵乳スラリーが1〜6×105CFU/g-TSであるのに対して乳酸菌含有粉末ミルクが2〜5×105CFU/g-TSであり、乾燥前後の乳酸菌数には殆ど差異がみられないことが確認された。また、乳酸菌含有粉末ミルクの製造を終了した後に蒸発缶、サイクロン捕集器及びこれらの間の配管に対する乾燥粉末の付着状況を目視で調べた。この結果、各所への乾燥粉末の付着が僅かに認められるのみで、十分に操業可能であることが判明した。
【0094】
[実施例9]
図12には、本発明の実施例9に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置が示されている。
【0095】
この実施例9においては、上記の実施例1の場合とは異なり、サイクロン捕集器6で分離された気体の一部を回収して乾燥させた後に、装置本体の蒸発缶1とサイクロン捕集器6の間を接続する配管8aの内部に導入するための乾燥維持手段19が増設されている。
【0096】
乾燥維持手段19は、サイクロン捕集器6で分離された気体(飽和水蒸気)を吸引するブースタポンプ20と、その吸引した空気を加熱する加熱ヒーター21と、これらを接続する配管等からなるライン22とで構成されている。ブースタポンプ20は、ライン22の配管により、サイクロン捕集器6と冷却手段4のコンデンサー4aとの間を接続する配管8bの途中の部分に接続されている。ブースタポンプ20の上流側には、吸引する気体に含まれる固体を除去するフィルタ23が配置されている。加熱ヒーター21は、ブースタポンプ20で吸引した気体を、乾燥維持手段19で配管8aの内部に導入する気体により蒸発缶1から排出される粉末製品が熱変質を起こさない程度の温度まで加熱するように設定されている。加熱ヒーター21で加熱された気体は、配管8aのうち蒸発缶1の排気口1aと近い部分に接続されたライン22の配管部分を通して配管8aの内部に送り込まれるようになっている。
【0097】
実施例9に係る減圧噴霧乾燥装置においては、サイクロン捕集器6で分離された気体の一部がブースタポンプ20の吸引により乾燥維持手段19に導き入れられ、加熱ヒーター21で加熱されて乾燥した状態にされてから、蒸発缶1とサイクロン捕集器6の間を接続する配管8aの内部に導入されて戻される。そして、蒸発缶1から配管8aを通して排出される粉末製品と過熱水蒸気は、乾燥維持手段19により導入される乾燥した気体と合流して混合されるような状態でサイクロン捕集器6まで搬送される。これにより、例えば液体原料として吸湿性の高い物質を含むものを適用した場合でも、その液体原料から蒸発缶1内で生成される粉末製品がサイクロン捕集器6において吸湿した状態で回収されることが防止される。この結果、乾燥維持手段19を増設したことにより、減圧噴霧乾燥装置の蒸発缶1などにおける真空度を維持しながら、吸湿性の高い物質を含む粉末製品を湿らせることなく乾燥した状態で捕集することができる。
【0098】
上記の吸湿は、蒸発缶1から粉末製品と排出される過熱水蒸気が蒸発缶1内における乾燥工程で熱エネルギーが消費されて温度が低下することで飽和蒸気になり、この飽和蒸気が吸湿性の高い物質を含む粉末製品と接触することで発生している。このため、乾燥維持手段19により飽和蒸気が乾燥した気体になって配管8aに戻されることにより、蒸発缶1から排出される当該粉末製品が飽和蒸気と接触する機会が減り、吸湿しにくくなる。ちなみに、このときの飽和蒸気は、配管8aやサイクロン捕集器6で結露を発生させることはない。
【0099】
[実施例10]
図13には、本発明の実施例10に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置が示されている。
【0100】
この実施例10においては、上記の実施例1(実施例9)の場合とは異なり、乾燥維持手段19に加えて、サイクロン捕集器6で分離された粉末製品としての固体を回収する回収部の内部に、乾燥させた空気又は窒素を導入するための乾燥保持手段24が増設されている。
【0101】
乾燥保持手段24は、サイクロン捕集器6の回収部である製品受器6bと接続されてその受器の内部に空気又は窒素を導入するための配管等からなるライン25と、ライン2に送り込む空気等を加熱するための加熱ヒーター26とで構成されている。加熱ヒーター26は、導入する空気等を、例えば製品受器6bに回収される粉末製品が熱変質を起こさない程度の温度まで加熱するように設定されている。乾燥保持手段24から製品受器6bの内部に導入する空気等の量は、サイクロン捕集器6の分級精度に殆ど影響がでることがなく且つ製品受器6b内に飽和蒸気が入り込むことがない条件に設定されている。空気と窒素は、粉末製品の酸化されやすさの度合いに応じて使い分けられ、例えば粉末製品が酸化さやれすいものであるときには窒素が使用される。
【0102】
実施例10に係る減圧噴霧乾燥装置においては、サイクロン捕集器6で分離された粉末製品が製品受器6bに収容されるが、そのサイクロン捕集器6の製品受器6bの内部に対して乾燥保持手段24によって乾燥した空気等が導入される。この導入された空気等により、製品受器6bの内部に前記飽和蒸気が浸入することが防止される。これにより、例えば液体原料として吸湿性の高い物質を含むものを適用した場合でも、その液体原料から生成される粉末製品は、サイクロン捕集器6の製品受器6bに収容されたときに飽和蒸気との接触が減り、吸湿しにくくなる。この実施例10では、乾燥維持手段19も装備しているので、吸湿性の高い物質を含む粉末製品がサイクロン捕集器6に達した時期に吸湿することも回避される。この結果、乾燥維持手段19及び乾燥保持手段24を増設したことにより、減圧噴霧乾燥装置の蒸発缶1などにおける真空度を維持しながら、吸湿性の高い物質を含む粉末製品を湿らせることなく乾燥した状態でサイクロン捕集器6の製品受器6bに確実に捕集することができる。
【0103】
[他の実施形態]
なお、実施例9における乾燥維持手段19と実施例10における乾燥保持手段24は、実施例7及び8に同様に適用することもできる。また、実施例10においては、乾燥維持手段19の設置を省略し、乾燥保持手段24のみを設置するように構成してよい。
【0104】
また、噴霧ノズル7についても、各実施例で示す噴霧ノズルの構成を組み合わせた構造のものにすることが可能である。例えば、図8に示した実施例5における噴霧ノズル7において、その円形の平板31bに(間隙31cを残した状態で)、図9に示した実施例6における噴霧ノズル7の平板32bに形成されている複数の吐出口32cを同様に形成した構造のものが適用可能である。
【0105】
この他、実施例1,2、7〜10に係る減圧噴霧乾燥の方法及び装置においては、装置本体内において液体原料を乾燥させて粉末化する段階では液体原料と過熱水蒸気を装置本体内に同時に噴霧するが、装置の運転手順としては以下の順番で噴霧することがある。まず、運転開始時には、先に過熱水蒸気を装置本体内に噴霧して装置本体内の温度を安定にした状態に保った後に、液体原料を装置本体内に噴霧して減圧噴霧乾燥動作を開始する。また、運転停止時には、最初に液体原料の噴霧を停止して減圧噴霧乾燥動作を停止させてから、過熱水蒸気の噴霧を停止させることが好ましいが、特にこれに限定されない。
【符号の説明】
【0106】
1 …蒸発缶(装置本体)
1a…排気口
2 …過熱水蒸気供給手段
3 …液体原料供給手段
4 …冷却手段
5 …真空ポンプ(減圧手段)
6 …サイクロン捕集器(製品捕集手段)
6b…製品受器(回収部)
7 …噴霧ノズル
7a…液体原料の噴霧口
7b…過熱水蒸気の噴出口
8a,8b…配管
9 …保温手段
19…乾燥維持手段
24…乾燥保持手段
71…第1の噴霧ノズル
72…第2の噴霧ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13