(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クラッド材が、前記固体鋼体および前記スキャベンジ作用金属体が設けられ、かつ前記ビレット外部のガスが前記界面に侵入することを防止する封鎖されたハウジングの少なくとも一部を構成する請求項1に記載のビレット。
前記スキャベンジ作用金属体をアルミニウム、チタン、マグネシウムまたはマグネシウムとアルミニウムとの合金からなる群から選択する請求項1または2に記載のビレット。
前記スキャベンジ作用金属体が、アルミニウム、マグネシウムまたはこれらの合金からなる第1部分と、チタンからなる第2部分とからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載のビレット。
前記ハウジングが、前記固体鋼体が設けられる第1部分と、前記スキャベンジ作用金属体が挿入される第2部分とからなり、この挿入を両部分が結合される前に行う請求項2〜4のいずれか1項に記載のビレット。
前記クラッド材が、前記固体鋼体および前記スキャベンジ作用金属体が設けられ、かつ前記ビレット外部のガスが前記界面に侵入することを防止する封鎖されたハウジングの少なくとも一部を構成する請求項7に記載の方法。
前記スキャベンジ作用金属体が、アルミニウム、マグネシウムまたはこれらの合金からなる第1部分およびチタンからなる第2部分を有する請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
前記ハウジングが、前記固体鋼体が設けられる第1部分と、前記スキャベンジ作用金属体が挿入される第2部分とからなり、この挿入を両部分が結合される前に行う請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【背景技術】
【0005】
以下発明の背景を説明するが、Cacace等の発明者によって申請された特許によってカバーされる一連の発明に言及することが役立つと考えられる。これら特許および開示されている方法について、以下“初期Cacace”特許および方法と呼ぶ。これらのうち最も時期的に近いものは、USP6,706,416を含むパテント・ファミリーと思われる。
【0006】
初期Cacace特許は、軟鋼のコアからなり、ステンレス鋼クラッド材を有する補強棒(以下鉄筋と呼ぶ)などの長尺製品の製造を本質的に対象とするものである。これら鉄筋は、軟鋼削りくずのブリケットを充填したステンレス鋼ジャケットからなるビレットから製造する。これらビレットを加熱処理し、圧延処理して、目的の特性を有し、かつ軟鋼の低コストを利用した最終鉄筋製品に仕上げているが、耐腐食性をかなり強化するためにステンレス鋼クラッド材を利用している。これら特許の精査から、ステンレス鋼クラッド材と鋼コアとの間の界面における冶金学的結合が満足に得られているかについて問題があることが明らかになった。この問題の原因は、界面におけるステンレス鋼中のクロムの高温酸化の発生である。この酸化の原因となる潜在的な酸素源はいくつかあり、一つの酸素源は、ビレット形成後にブリケットおよびジャケットに残る空気中の残留酸素である。もう一つの酸素源は、特にビレット加熱処理後に両端からビレットに侵入する大気酸素である。この現象は、炉からビレットの取り出し後にビレットが冷え、ビレット内部のガス圧が大気圧力より低くなるために生じる。また、コアと非常に高温のクラッド材との間の熱勾配によってビレットが加熱されると生じる。この結果、コアとクラッド材との間に隙間が発生し、軟鋼の場合よりも大きいステンレス鋼の熱膨張作用によってさらにこの隙間が大きくなる。第3の潜在的な酸素源は、ブリケットを構成する軟鋼削りくずの粒子表面に存在する残留酸化(さび)である。対策を講じないと、このさびが炭素と反応し、温度が高くなるにつれて軟鋼から拡散し、CO(一酸化炭素)および/またはCO
2(二酸化炭素)を生成する。これらCOおよびCO
2は、ステンレス鋼の高温での有意な酸化の原因になり得るものである。
【0007】
USP6,706,416に記載されている方法の場合、ブリケットを形成する前に、削りくず粒子と混合した2種類の添加配合剤を使用してこの問題に対処している。これら添加配合剤のうち第1のものの実施例は、粉末化塩化アンモニウム(NH
4Cl)および尿素である。ビレットを加熱すると、これらが明らかに崩壊して、ステンレス鋼の酸化が有意になる温度よりも低い温度でガス状になる。これらガスは、ビレットの高温の内部において圧力に曝され、残留酸素を押し出す作用をもつ。第2添加配合剤の作用との関連でこの第1ステップを利用する。実施例としてアルミニウムが例示されているこの第2添加配合剤は、塩化アンモニウムまたは尿素が完全に崩壊する温度よりも温度が高くなると、反応性が強くなる。アルミニウムがさび中の酸素と反応し、酸化アルミニウムを形成し、また大気中からビレットに侵入する酸素がある場合にはこれと反応し、クロムの酸化を抑制する。
【0008】
USP6,706,416には、“NH
4Clおよび尿素の両者は200℃〜約500℃の温度範囲においてかなりの量の還元ガスを発生する”と記載されている。同様な記載は、単一のNH
4Clおよび尿素などの添加配合剤の使用を示唆しているUSP5,676,775にも認められる。これら記載は、NH
4Clおよび尿素がビレット中のCr酸化物を還元するガスを発生することを示唆している限り正確さに欠ける。事実は、上記添加配合剤が窒素(N
2)、水素(H
2)および塩素(Cl
2)を発生する。酸化物を形成する金属の反応を示すエリンガムダイアグラムは、ビレット中に存在する条件では、これら物質はCr酸化物に還元作用を示すものではないことを示している。現在、出願人はこれら発生物質がビレット内に正のガス圧を発生すると考えている。このようにしてビレットからガスが運び出され、この過程で、残留空気をビレットから追い出す。従って、500℃をかなり下回る温度から、ビレット内に残留している大気空気の量が、恐らくゼロに近くなるまで減少すると考えられる。ビレット中の残留酸素源は、従って、削りくずの表面にある酸化鉄と、NH
4Clおよび尿素が消費された後のビレット両端から侵入する空気であると考えられる。
【0009】
USP6,706,416に記載されているように、削りくずからの酸化鉄は軟鋼削りくずから誘導される炭素と結合し、最初にCO
2を生成し、次により高温でCOを生成する。この過程は、恐らく300℃というかなり低い温度で有意なスケールで起こり始める。CO
2がCrに対して酸化作用を示す、そしてUSP6,706,416の記載とは反対に、エリンガムダイアグラムは、約1,225℃以上になって始めてCOがCr酸化物に還元作用を示すことを明らかにしている。コアとジャケットとの間の界面におけるビレット内の温度は、必ずしも均等にこの遷移温度を超えるものではない。というのは、この温度が、オーステナイト系SSとクラッド化したビレットが通常炉を出る温度(1,260〜1,280℃)にきわめて近いからである。これは、ビレット内の温度変動を原因とするか、あるいは炉内の不十分な浸漬時間を原因とするものと考えることができる。COの還元反応は、従って、必ずしも完全な還元をもたらす程強くなく、顕微鏡で可視なCr酸化物の層がSSの表面に分散することになる。少なくとも遷移温度に達しない場合には、酸化物層がより集中して発生し、あるいはより連続的に発生し、この結果界面における結合がいっそう弱くなり、場合によって製品に欠陥が生じる。
【0010】
従って、USP6,706,416では、ビレットに添加配合される第2金属であるアルミニウムを利用して、NH
4Clまたは尿素が消費された後の温度上昇に伴うCr酸化物の還元または抑制を確保している。
【0011】
前記初期特許の開示に関連して言えば、開示されている方法では、各還元剤それ自体が、後の工程におけるSSジャケットとコアとの結合を邪魔するCr酸化物の形成を防ぐためには不十分であることが明らかである。
【0012】
また、前記初期方法において使用されている粒子状軟鋼ブリケットからなる端部が開いているビレットについては、2つの添加配合剤、即ちNH
4Clまたは尿素、およびアルミニウムの粒子間の分散が良好であることが本質的な条件であることが自明であると考えられる。いずれにせよ結論は、SSジャケットと炭素鋼コアとの十分な結合を実現するためには、加熱処理の開始からジャケットがコアに接合する間、界面にCr酸化物が形成することをできる限り抑制する必要があるということである。
【0013】
前記初期方法の場合、コアの原料として削りくずを使用することは、潜在的にかなり不利である。
【0014】
本格的な製造運転の場合、最終製品が国際基準または国際仕様を満足する必要がある状況において特定等級の削りくずの信頼性のある削りくず源を維持することは難しい。
【0015】
さらに、前記初期方法で削りくずおよびビレットを製造するためには、コストの高い専用装置(その一部はUSP5,088,399に開示されている)が必要であることが自明である。加えて、既に確立されている多くの圧延機の場合、その特有な炉設計の理由から、円形ビレットから圧延を行えない。圧縮削りくずからなり、横断面が円形ではない形状をもつビレットを製造できる装置を構成することは容易ではない。さらに、ビレットの大きさ、特に長さは、少なくとも初期特許に記載されている限り、きわめて小さい。このような短いビレットを圧延できる既存の圧延機は数においてごく限られ、また円形のビレットから圧延できる圧延機はさらに少ない。この理由の一つは、既存の炉はいずれも四角形のビレットを対象とするプシャータイプ(pusher type)であるからである。円形ビレットはウォーキング・ビームタイプの炉を必要とする。小さなビレットを使用した場合には、圧延作用が不十分になりやすい。というのは、現在利用されている圧延機は生産性を高めるために、非常に長いビレットを圧延するように設計されているからである。原理的には、圧縮削りくずからなるビレットの大きさおよび長さについては大きくでき、また形状を変更できるが、このために適する圧延機を実現するさいに発生する技術的問題は、解決しにくい。
【0016】
同様に明らかな、前記初期方法に固有な別な問題は、NH
4Clおよび尿素によって発生するガスについて必ず排気しなければならないことである。USP5,124,214に記載されているように、これがビレットの両端を開放している理由である。なお、それにもかかわらず当該公報にはキャップを利用してビレットの端部を閉じることが示唆されている。また、当該特許の日付は、前記の添加配合剤を使用する以前である。さらに、当該公報には、コアの両端に黒鉛ペースト被覆することによって管をシール処理することが示唆されているが、うまくいかないと考えられる。
【0017】
黒鉛ペーストの場合、急速に脆弱化、多孔化し、ペースト内の湿分が直ちに追い出される。このため、黒鉛が崩壊するため、意図するバリヤをもはや形成できなくなる。さらに、黒鉛は約1,000℃の温度でブリケット中の鋼と反応し、溶融鋳鉄が反応性高く形成するため、Cr酸化物を還元するためには全く役に立たないと考えられる。
【0018】
USP5,676,775には、両端が開放しているビレットのみが開示されている。また、USP6,706,416には、添加配合剤としてアルミニウムのみを含む実験用ビレットが開示されている。このビレットは端部が閉じていると記述されているが、各端部には通気孔が設けられているため、ガスがビレットから逃げ出ることができる。この通気孔はビレットが炉から出された後溶接して閉じられる。上記に述べられていることに関して、本出願人は、アルミニウム添加配合剤が活性作用を示す前に、これら通気孔が残留している大気酸素を防ぐことができず、より低温でビレット中のCrが酸化すると考えている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の完成に関連して出願人が現在までに行った研究過程で使用したものは、炭素鋼のコア本体、およびA304 SS、UNS S32101並びにS32304二相ステンレス鋼のクラッド材からなるビレットであったので、以下このビレットに絞って本発明の実施態様を説明する。なお、ニッケルおよび銅のFEOFはクロムよりも高いことを考慮すると、本出願人は、本発明の方法は大きな改変を加えなくてもニッケル−クロム合金、ニッケル−銅合金または銅−ニッケル合金とクラッド化した鋼コア本体からなる製品の製造に適用すると良好な結果が得られると考えている。
【0037】
添付図面において、以下説明する点を除いて、各ビレットBは、固体本体、または、炭素鋼のコアCまたは、通常ステンレス鋼よりも腐食しやすい適当な等級の鋼からなる。コアCは、本実施例ではジャケットJの形を取るクラッド材に設けられる。なお、このジャケットJは、場合にもよるが、ステンレス鋼から構成した中心部分J1および軟鋼から構成した外側部分12で構成することができる。また場合によっては、全体をSSで構成してもよい。このSSは任意の適当な等級でよく、例示するとASTM316、A304あるいは二相範囲にあるステンレス鋼の一つである。従って、各ビレットには、ビレットの加熱時に結合するコアCおよびジャケットの並置部分間に界面がある領域Zが存在する。
【0038】
各ビレットには、ジャケットJ中のクロムの酸化の原因になり得るガスを領域Zにおける界面から排除する抑制手段を設ける。この抑制手段は、少なくとも一つのスキャベンジ作用金属からなる金属体を有する。この金属は、本質的ではないが通常、以下の実施例においてEで示され、かつコアCの少なくとも一端に隣接するジャケット内に設けられるため、領域Zにおける並置部分間の界面から変位しているブリケットなどの要素体の形を取る。
【0039】
本明細書における要素体を構成する金属に関連して、略語“FD”は、微細な形の金属を指す。本発明に適当なものとして例示すれば、削りくず、リボン、粉末、ワイヤー線材(いわゆるスティールウール)および鋼粒および砂粒(shot and grit)並びに通常当業者にとって理解されている意味で、かつ前記初期特許明細書において使用されている意味における削りくずがある。
【0040】
以下に説明する実施例において、典型的なビレットは横断面が正方形、横断面の大きさが150mm×150mm、そして長さが6m〜14mであればよい。なお、これら寸法は例示のみを目的として挙げたもので、長さおよび大きさは任意に選択すればよい。これらは、例えば、コアおよびジャケットに使用されている市販バーおよび管の長さおよび大きさによって設定すればよい。
【0041】
鋼コアに金属クラッド材を適用するために各種の技術が公知であり、また示唆されてきている。本明細書に開示する方法に従って処理する前に、ビレットをこれらの適当な方法によって製造すればよい。本発明の場合、本質的ではないが二相SSから構成するのが好ましい一つかそれ以上のプレートを鋼コアバーの周囲に巻き付け、これらプレートの当接縁部を溶接する。このようなビレットの実例の断面図を
図28に示すが、これは、現状において生産ラインにおいてビレットを製造し、かつ同時に専用のプラントにかかる資本支出を最低限に抑えるために最適な構成と考えられる。ここで正方形コアCが、予め一枚のプレートから湾曲処理または圧延処理したSSのチャネル状の部材l00に載置されているものとする。まず、部材l00をコアの三面に並置する。コアの設定後、部材l00のフランジl01をコアの第四面に周囲に折り曲げ、縁部l02を相互に当接する。これら縁部を符号l03で示すように、溶接する。高速製造ラインの場合、SSのストリップを通常のパイプミルによってコイルから繰り出し、断面が部材l00の断面と本質的に同じチャネル状にこのストリップを形成する。コアバーをチャネルに載置し、コアバーの周囲に二つのフランジを折り畳み、パイプミルの次の段階で溶接する。
【0042】
また、任意の適当な方法によってコアを予め成形しておいたSS管に挿入してもよい。これら適当な方法には、有利なものとして、仮オーストラリア特許出願第2009 905 130号に準拠して出願され、“金属製品製造用ビレット”を発明の名称とする国際特許出願に添付された明細書に開示されている方法の一つかそれ以上の方法が含まれる。
【0043】
図1に、ジャケットの端部がコアの端部l0の上に重なっているビレットB1の一端を示す。一つの独立した要素体Etをコアの端部に対して載置する。管l2内においてプレートl4を要素体Etの外側端部に対して設け、所定の個所で溶接し、管をシール処理する。この実施例では、ビレットの反対側端部を同様に構成する。従って、ジャケットJが、コアおよびEtが設けられ、かつビレットの外側からガスが領域Zに侵入することを防止する防止手段として作用する封鎖金属ハウジングを構成することになる。これらガスには、炉ガスおよび大気ガスが含まれる。本実施例では、要素体Etは任意の適当なFD形を取るチタン(Ti)からなり、ビレットに挿入する前にブリケットに圧密しておく。
図2の場合にはプレートl4を使用しない代わりに、予め成形したキャップまたはドームを利用する。キャップについては、プレートから深絞り加工によって製造できる。また、要素体Etについては、キャップをジャケットの端部l2に溶接する前に、キャップに圧密するか、挿入するのが有利である。このキャップは、エンドプレートl4の溶接部よりも圧延時破損しにくい。
【0044】
図6について説明すると、炉Fnに符号I1およびI2で概略を示す第1セットを含む誘導コイルを設ける。これら誘導コイルが第1段階において、要素体Etが少なくとも500℃の温度、好ましくは800℃の温度に達するまでビレットの端部を直ちに加熱する。この間、残りのビレット、特にステンレス鋼部分J1からなるビレット部分は、領域Z内のジャケットの表面にクロム酸化物が生成しない温度よりも低い温度のままになっている。このより低い温度においてさえ、空気の主成分ガスである窒素および酸素の両者とTiは強く結合し、安定した酸化物および窒化物を生成する。即ち、Tiがこれら大気ガスを領域Zから活性的にスキャベンジし、各ビレット端部において等価な固体酸化物および窒化物を生成するため、ごく少量のアルゴン(Ar)などの不活性ガスが残存する。通常空気中に存在するArの量を考えると、この段階ではおよそ19mmHgの部分真空が生じる結果になる。
【0045】
次に、コイルI1およびI2とともに第2セットの誘導コイルI3に通電し、ビレット全体をRTまで加熱する。この段階で、炭素鋼が加熱されるため脱炭が生じる。Tiが不在の場合、コアの表面に鉄酸化物があると遊離した炭素がこれと反応し、最初にCO
2を生成し、次により高温で若干のCとともにCOを生成する。そしてCO
2およびCOの両者がSS中のクロムに酸化作用を与えると考えられる。ただし、Tiは、CrよりもFEOFが低いため、Crに還元作用を与える。このTiが酸化鉄からの酸素を始めとする酸素がある場合には、これと結合し、Crの酸化物を生成しなくなるか、あるいは既に生成しているCrの酸化物を少なくする。
【0046】
本明細書で酸化を“防止”または“抑制”することを示唆する場合、これは本発明により産業上有用な製品が得られる範囲まで酸化を防止または抑制することを含意するものである。当業者ならば、酸化が絶対的な意味で防止または抑制できるとは恐らく考えないはずである。
【0047】
本発明の別な構成では、要素体Etはいくつかのガス燃焼式またはオイル燃焼式のバーナーによって加熱できるが、これらバーナーは、ビレット全体を次に加熱する主炉に隣接配置する。これら主炉としては、既に言及した誘導炉であればよく、あるいはガス燃焼式炉またはオイル燃焼式炉も使用可能である。
【0048】
加熱されたビレットB1を圧延機に移し、
図7にRで横断面を示す鉄筋や、あるいは
図8に示す平板(flat bar)などの長尺製品に圧延する。なお、他の適当な形状や大きさの製品も本発明方法によって、本明細書に開示するビレットから製造できることは明らかなはずである。
【0049】
図1に戻って説明を続けると、ジャケットが完全に元のままである限り、従って空気の侵入に対してシールされている限り、ビレットを炉から取り出すさいに生じる冷却の結果としてビレットB1の両端から空気が侵入する恐れはない。ジャケットを確実にコアに結合するために必要な数のロールスタンドにビレットを通した後、Etの残りを収めた部分を有するより長尺になったビレットの端部を切り落とす。
【0050】
この第1実施例でEtのためにTiを選択した一つの理由は、その融点がRTより高いためである。従って、AlおよびMgの場合と同じように、また利用できると考えられる他のいくつかの金属の場合と同様に、Tiをコアから分離しておくための用意が必要ないことは以下に説明する通りである。Tiの高融点にかかわらず、Tiがビレット中で形成する酸化物が金属Tiに吸収されるため、酸化物の形成が続くことになる。AlおよびMgが固体相状態にある場合と異なり、従って、Tiは、加熱されている状態では、ビレット中に生成される酸素がある場合この酸素と連続的に反応する可能性がある。それゆえ、Tiは効率的な酸素スキャベンジャーとして機能するために融解する必要はない。さらに、Tiは低温で反応性を示す。AlおよびMgの場合と同様に、(ブリケット化に好適な)乾燥/浄化処理チタン削りくずは、金属としての価値が高いため、入手が簡単である。従って、初期特許に記載されている方法では必要な削りくずの浄化処理、乾燥処理を行うスクラップ加工プラントは必要ない。
【0051】
本発明の作用効果の一つは、コア鋼として円形、正方形、長方形やその他の適当な形状のものを使用できることである。コアをもつビレットを使用すると、本発明方法は任意の横断面大きさおよび長さのビレットに適用できることになる。特にビレットの大きさについては、既存の圧延機に合わせて選択できる。
【0052】
コアとしては予め成形しておいた中空鋼を使用することができ、またビレットを使用して、内部または外部にSSクラッド材をもつ鋼パイプを製造することができる。長方形のビレットを製造できる能力があるため、これらをSSクラッドプレートだけでなく長尺製品を圧延するために使用できることになる。このような製品については、
図25、
図26および
図27を参照して以下に説明する。
【0053】
鋼コアのステンレス鋼ジャケットへの嵌合をより簡単に行うために、コアのために使用すべきコアバーをまず機械的に研磨することができる。この結果として、コアバーからさびを取ることもできる。この用途の市販コアバーはいずれもさびを取る必要がある。これは、通常ショットブラスト法によって行われる。このようなショットブラスト法は、コアバーを研磨する場合には必要ないと考えられる。
【0054】
本明細書で説明するビレットのうち任意のビレットから大気酸素を除去することを助けるためには、加熱する前に、ビレットの一端または両端を真空ポンプPに接続することによってビレットを真空化することが有利な場合がある。これについては、
図9に概略を示す。ビレットを炉に移す前に、ビレットからポンプの接続を外し、ポンプを接続していたビレットの開口を塞ぐ。ビレットをこのように真空化する手段は公知であり、これ以上詳しく説明する必要はないと考えられる。
【0055】
ビレットを真空化する代わりに、あるいはこれに加えて、ポンプPによってAr等の不活性ガスをビレットに圧送し、残留空気を置換することも可能である。
【0056】
図3に、ビレットB3の一端の別な実施例を示す。ビレットB3および以下に説明すべきビレット、およびそれぞれの製造、および圧延製品への圧延については、既にビレットB1に関連して説明した特徴から有意味な差をもつ限りにおいて説明することにする。
【0057】
ビレットB3の各端部に2つの要素体Es、Eaを挿入する。EaとコアCの端部l0との間にEsを挟む。Esは、この実施例ではFD炭素鋼からなるが、FDチタンとしてもよいブリケットである。いずれの場合も、EsはFD鋼またはTiを直接管l2に圧入するか、あるいは管l2内にプレス嵌めする前に、ブリケットに圧入することによって形成することができる。EaはEtと同様であるが、TiではなくFDアルミニウム(Al)、FDマグネシウム(Mg)か、あるいはこれらの合金からなる。これら三種類のスキャベンジ作用金属の特性については、便宜上一括して説明する。本発明方法における各金属のスキャベンジ作用はEtにおけるTiと同様である。
【0058】
本発明方法に関連して好適に使用される以上の金属すべてのうちアルミニウムが最も広く利用され、かつ最もコストが低い金属である。アルミニウムはまた取り扱い上安全であると認識されている。USP6,706,416に記載されているように、アルミニウムは攻撃的な酸素スキャベンジャーであるが、本発明の文脈では、この点に関するアルミニウムの有効性は、一旦その酸化物Al
2O
3が形成すると、金属Alの表面上に固体状態を維持し、スキャベンジ作用に対してバリヤになるという事実の制限を受ける。このバリヤは、アルミニウムが約660℃で融解と消失する。この温度は、ビレットの端部を予め誘導加熱することによって簡単に実現できる。これが、Alを使用する一つの利点である。アルミニウムの沸点(以下“BP”と呼ぶ)はRTよりもかなり高く、ガス状態のアルミニウムを有効な酸素スキャベンジャーとするには高すぎる。
【0059】
一方、Mgの融点(“MP”)は約650℃であり、そのBPは約1,100℃である。加えて、MgはAlよりもさらに攻撃的な酸素スキャベンジャーである。ところが、一般の認識では、Mgは取り扱い上安全ではない。この見解は、USP6,706,416に記載されているが、この見解に対して、Mgの産業上の供給側の情報によれば、簡単で、実現が容易な上に安全な対策を取る限り、本発明を実施する作業条件では、EaのためにMgを使用しても、Mgの使用を禁止するほどの危険は実証されていないように思われる。つまり、これはMgを削りくずまたはリボンの形で使用すれば危険がなく、またMgを粉末の形で使用すればより安全であることを意味しているように思われる。
【0060】
アルミニウムおよびマグネシウムはいずれも安定な酸化物、窒化物、水素化物および炭化物を形成し、そして上述したように、大気ガスやその他のガスの活性スキャベンジャーである。また、低コストというメリットもある。さらに、Al削りくずおよびMg削りくずは入手範囲が広い。また、これらは融解時に最も反応性が強くなり、そして融点では、表面酸化物層がスキャベンジ作用を抑制することをやめる。それぞれのFEOFはチタンよりも低く、もちろんCrよりもかなり低い。
【0061】
B3などのビレットの場合、Tiを始めとする、RT未満では沸騰しないAlまたはその他の前記金属のうち任意の金属からなる要素体Eaを使用することは若干不利である。この場合、圧延開始時においてビレット内部のガス圧が大気圧よりも低くなるため、管12の一端が、圧延時にコアに結合する前に破損するか、あるいはプレートl4の溶接部におけるピンホール漏れを通じて破損すると、空気がビレットに侵入することになる。ところが、この場合でも、空気中の酸素が要素体EsおよびEaによってスキャベンジされ、大気中のArのみが要素体を通ってビレットの内部に侵入することになる。
【0062】
逆に、EaにMgを使用すると、Mgの温度がその沸点よりも高くなった場合に、正のガス圧がビレット内部に発生し、固体酸化物を形成する結果としてこのガス圧が発生する部分真空を置換する。Mgは大気圧では1,100℃で蒸発するが、部分真空下ではより低い温度でも蒸発する。RTdでは、ビレット内で気化したMgの圧力が大気圧に近くなる。RTaでは、ビレット内で気化したMgの圧力は大気圧以上になる。これによって、ジャケットが破損した場合、圧延中に空気が侵入する可能性はかなり小さくなる。
【0063】
気化したMgは、ビレットにCOおよびCO
2が生じた場合にこれらに対する強力な還元ガスとして作用する。COは約780℃から生成を始め、1,225℃より高温でのみCrを還元する。
【0064】
要素体Eaもアルミニウム/マグネシウム合金から構成することができる。公知なように、このような合金のBPは成分金属の割合を調節することによって制御できる。従って、必要ならば、この合金のBPはRTよりも高くでき、また低くできる。これを利用する仕方の一つを以下に説明する。
【0065】
MgおよびAlはRTよりも低い温度で融解するため、ビレットB3にEaを使用する場合には、融解したMgおよび/またはAlがコアとSSジャケットの界面に進むことを防止することが望ましい。これはEsがFD鋼から構成されるか、あるいはTiから構成されるかに関係なく、RT未満で融解せず、また融解金属に対してバリヤとして作用するEsの存在によって実現できる。これがEsの一つの機能である。EsにFD鋼を使用した場合には、例えば0.4%〜1%の炭素を含有する中〜高炭素等級とするのが好ましい。必要な場合には、黒鉛をFD鋼に添加配合し、炭素含有量を高くしてもよい。温度が高くなると、FD鋼から、そして使用した場合には黒鉛からCOが発生することになる。RTaでは、エリンガムダイアグラムに従ってクロム内の酸化物にCOが還元作用を与える。RTdにおいてさえ、AlまたはTiの存在下でCOがCrに還元作用を与えることができる。
【0066】
EsをTiから構成する場合、Esは最初から存在しているか、あるいは領域Zの内部で発生する酸素に対するスキャベンジャーとして作用するだけでなく、既述したように溶接部やジャケットの破損部から領域Zに大気中の酸素が入り込む前にこの酸素をスキャベンジするために役立つ。
【0067】
図4に、各端部において3つの要素体Es、EaおよびEtの集合体からなるビレットB4の端部を示す。ここで代表例を挙げると、EsはFD鋼からなり、EaはAl、Mgまたはこれらの合金からなり、そしてEtはFDTiからなる。この集合体では、従って、Eaを構成する金属はRTdだけでなくRTaでも融解する。B4におけるEs、EaおよびEtについては、B1およびB3の場合とそれぞれ同じ機能を発揮するため、これ以上説明しないが、B4におけるEtは、以上説明してきたいずれかの経過でビレットに入り込むことがある特に空気からの酸素をスキャベンジするさらなる手段として作用することを指摘しておく。このような問題の結果としてCrが酸化する潜在的可能性は、ビレット内部および流れ込んでくる空気の温度が1,225℃より低くなるといっそう強くなる。
図11に示すようにビレットを改良することで、この問題に対処する。
【0068】
図11に、およそEa未満で起こると言われている現象の制限を受けるが、同じ金属からなり、かつB4について挙げた同じ要素体と同じ機能を発揮する3つの要素体Es、EaおよびEtを各端部に設けたビレットB11の一端を示す。まず、B11の端部をプレート40aによってシール処理するが、各プレートには、予め選択できるが、いずれの場合も1,225℃以上の温度で融解し、かつ炉内でビレットを排気できる温度依存プラグ46を設ける。このようなプラグに好適な材料は、1,237℃で完全に融解する30%銅−ニッケルである。プラグが融解すると、ビレット内にある真空条件により、通常およそ1,300℃の温度、場合によってはおよそ1,225℃をかなり上回る温度にある高温の酸化性炉ガスがビレットに急速に吸引される。これら炉ガスはEs、EaおよびEtを通過する。即ち、金属を還元し、スキャベンジする3層を通過する。最初にTiからなる外側要素体Etを通過するが、既に述べたように、このスキャベンジ効果は、これらが500〜800℃以上への加熱時に金属それ自体に吸収されるため、酸化物被膜または窒化物被膜が形成した場合にこれらの被膜によって阻害されない。次に、炉ガスはEaを通過するが、EaがAlからなり、従っておよそ650℃で融解する場合には、EsとEtとの間に保持される。Eaについては、Al/Mg合金から構成してもよく、スキャベンジ作用をいっそう強力にすることができる。最終要素体Esの通過時に酸素またはCO
2が残存している場合には、これらがCOに転換する。この場合、CO
2またはO
2の分子毎に2つのCO分子が生成するため、圧力が高くなる。1,225℃をかなり上回る温度で領域ZにCOが入ると、界面に依然として存在しているトレース量のCr酸化物がある場合には、これに対して還元作用を発揮する。
【0069】
ビレットB11の各端部に圧入した3つの要素体も、圧延時ジャケット端部が破損した場合には、領域Zにおいてコアおよびジャケットの酸化に対する予防策として補強的な保護を与える。従って、要素体は、プラグが融解した場合に、またジャケットの両端が万一圧延時に破損した場合に、CO変換体として二つの目的を果たすものである。
【0070】
鋼コアとジャケットとの間に比較的大きな初期間隙50が残るため、粉末AlまたはNH
4Clなどの添加剤が、コアCがジャケットJ1に挿入されている間に、コアCの上部に散布されることになる。この概略は、
図10に符号120で示す。
【0071】
図12に、ビレットB11の変形例であり、3つの要素体Es(またはEt)、EmおよびEtを設けたビレットB12の一端を示す。真ん中の要素体EmはMgからなり、そして外側の要素体EtはここでもTiから構成することができる。ここでもビレットは炉内にある、既述の温度依存プラグ46から排気できる。この実施例では、圧延前および圧延時にビレット内部に存在するMg蒸気を利用する。
【0072】
まず、EmがMgのみからなるものとして検討するのが便利である。添付図面に示す他のビレットのすべての場合と同様に、最初にEm中のMgが融解するまで、ビレットB12の端部を急速加熱する。本質的に、Mgは融点に達すると発火し、N
2、O
2、CO
2およびCOのすべてを急速にスキャベンジし、ビレット内に真空を創りだす。この段階で、ビレット全体がRTaかRTdに加熱される。Mgは真空作用により850℃で気化する。Mg蒸気は温度が高くなるにつれ圧力が増し、正圧を発生する。
【0073】
既に説明した実施例と同様に、必要に応じて、RTaかRTdに近い温度で融解するように構成された銅−ニッケルのプラグ46を設けることによって、炉内にある間にビレットを排気する。銅−ニッケル10%は、Mgの沸点よりも高い1,145℃で完全融解する。Mg蒸気によって与えられる正圧により炉ガスがビレットに侵入することがなくなり、また圧延処理のために炉から取り出された後は、空気の侵入もなくなる。
【0074】
あるいは、端部コンパートメントが初期圧延時に通気あるいは破断するように設計し、そしてMg蒸気が逃げ出すように設計することが有利な場合もある。圧力下にあるため、ジャケットとコアが結合するまで空気の侵入はない。
【0075】
Mgに対するAlの比については、合金が850℃〜1,260℃の範囲のどこかで気化するように選択できる。本質的に、本発明方法はCr酸化物を還元するために、COではなく、Mg蒸気を利用するものである。
【0076】
実際には、対象ビレットのRT未満の温度で蒸発するマグネシウムやマグネシウム合金などの金属から要素体を構成することは許容できない場合がある。理由は、領域Zに侵入する蒸気が最終製品の界面に許容できない含有物として残る場合があるからである。他方、RTが、要素体が蒸発する温度より低いビレットに同じ要素体を使用することが許容できる場合もある。このような要素体を使用できるかどうかは、経験によって決定すればよい。
【0077】
本発明に関連して行った試験の途中で、驚くべきことに、
図3に示されるように製造し、かつ従来から使用されてきた特定のプシャー型炉に送られたビレットの端部の場合、これら端部を予熱するために炉内に特殊な構成を利用しなくとも、中心部分の前に十分に加熱されること(本発明の目的のために)が見出された。この理由は完全には明らかになっていないが、いくつかのファクターのいずれか一つか、あるいは恐らくこれらの複合した2つ以上が関与していると考えられる。多くのプシャー型炉では、ビレットは炉床に載置され、最終的に最も高い温度で排出される。炉ガスは、ビレットの上面および2つの端面のみを加熱する。これは、ビレットの他の面が炉ガスに曝されないからである。ところが、ビレットの上面は、ヒートシンクとして作用する鋼の連続平坦体を与えるため、ビレット端部は、初期には比較的冷たいままになっているビレットの中心部分よりも急速に高温になる。さらに、TiおよびAl両者の熱伝導率、およびMgの熱伝導率は、鋼またはSSよりもはるかに高い。
【0078】
ガスが制御された仕方でビレットに流れるように圧延シーケンスを構成できる。例えば、インライン式圧延機を使用する場合、ロールに入り込むビレットの端部を封鎖することができ、また後端は圧延時排気されるように設計されている。Mg蒸気および他のガスはかなりの圧力がある場合には、排気口に向かって常に押し出され、これによってまだ端部コンパートメントに押し込まれていない少量の固体のMg酸化物および/または窒化物を流す。この方法を用いると、BP未満に冷える前に、すべてのMg蒸気を1,100℃以上で確実に排出することができる。この状態が発生すると、酸化物および窒化物はビレットに固体の非金属含有物として残る場合もある。
【0079】
以下の説明では、あらゆる場合における要素体またはその一部の構成の説明を具体的に繰り返す必要はないと考え、このような要素体を単にEで示すことにする。
【0080】
ビレットが以上示唆してきた特にアルミニウムおよびチタンなどの金属からなる要素体を含むにもかかわらず、端部を予め加熱した後、ビレット内部の条件により依然としてCrが一部酸化するが、これは、加熱前に空気がビレットからスキャベンジ、即ち排気されている事実にかかわらず生じる。
【0081】
図5に、この問題に対処するビレットB5の端部を示す。B5は、4つの要素体Eu、Es、EaおよびEtの集合体からなる。後者の3つは既述の要素体と同じであり、またそれぞれ同じ機能を発揮する。プレート14は省略することができ、あるいは排気口42を形成したプレート40を設けて、圧延時に要素体を所定位置に保持するために役立てることができる。Esとコアの端部10との間に挟んだEuは、NH
4Clまたは尿素からなるブリケットである。この集合体は、初期特許に記載されているように、NH
4Clまたは尿素が低い温度で解離し、排気口42を介してビレットから逃げ出る大容量のガスを生成する点で有効である。というのは、これが生じるのは、Es、EaおよびEtが十分に多孔化するからである。これらのガスはビレットの領域Z内の残留空気を排気する。NH
4Clまたは尿素の解離は200℃未満の温度で始まり、NH
4Clまたは尿素が消費され、ビレットの端部からのガス流れが止まる600℃未満の温度に達するまで続く。このため、ビレットB5内部の大気ガスを取り除くために排気処理する必要、即ちパージ処理する必要はない。Es、EaおよびEtが多孔性であるため、端部が加熱されている状態では大気空気もビレットに吸引されるが、Es、Et、およびEaの融解成分がビレット内に残留あるいは発生した酸素がある場合にはこれをスキャベンジするだけでなく、空気中の酸素および他のガスについても、これらがビレットの内部に侵入する前にスキャベンジする。
【0082】
別な要素体E30を
図13に示す。この要素体は、炭素鋼と混合された、参照符号80で概略を示す削りくずなどの適当なFDとしてのTiからなるか、あるいは参照符号82で概略を示すワイヤや削りくずその他の適当なFDとしてのTiからなる。
【0083】
ビレットB1〜B4の場合、コア本体を受け取り、大気に対して封鎖されるジャケットJが、コアとSSジャケットの界面部分が結合するまで、ビレット外部からの酸化性ガスが領域Zに侵入することを防止する手段になる。B5などのビレットの場合、この手段は、Es、EaやEtなどの要素体をスキャベンジする集合体と要素体Euを併用することによって効果的に実現することができる。Euはより低い温度範囲において領域Zから酸化性ガスを取り去る活性を発現し、そしてスキャベンジ作用要素体はこれらガスの逃げ出しを可能にするだけでなく、より低い温度で十分なシール作用を発揮し、大気ガスや炉ガスが領域Zに侵入することを抑える。温度が高くなると、スキャベンジ作用要素体の活性がより強くなり、大気ガスや炉ガスが領域Zに侵入しやすくなるが、これらガスに酸素がある場合、侵入する前に、Es、EaおよびEtによってスキャベンジされる。これら要素体は、界面部分が結合するまで、領域Zにおいて発生する酸化性ガスをもスキャベンジする作用を示す。
【0084】
なお、B4などのビレットに3つものスキャベンジ作用要素体を設けることは、必要ない場合がある。例えば、要素体Etは活性が十分高いため、真ん中のEaは省略してもよい。Etについては融解しないため、バリヤ要素体Esは必要がない場合もある。
【0085】
各要素体の体厚は、例えば10〜150mmに設定すればよいが、これは例示であり、体厚は任意である。
【0086】
恐らく、スキャベンジ作用金属材料に関しては、要素体Eが、ビレットが加熱される前に領域Zに存在しないようにしておくことが必須であると考えられる。これら金属が有意な量で残存すると、コアとジャケットとの界面の結合に悪影響を与えやすく、圧延後このような残渣を含むビレットの部分を廃棄せざるを得なくなる場合が出てくる。従って、スキャベンジ作用要素体Eについては、最初はコアとジャケットとの界面から離れた位置にこれを設ける必要があると考えられる。この点に関して、FDスキャベンジ作用金属体、特にTi体をFD鋼と混合し、そして有利にはビレット端部にブリケットの形で挿入すればよい。この場合には、FD鋼はスキャベンジ作用金属を所定の個所に保持するマトリックスとして作用するものと考えられる。
【0087】
ジャケットの中心部分J1に予め成形した管を使用する場合、コアをジャケットに挿入するためにコアをジャケットよりも小さく設定しなければならない。例えば、150mm×150mmで、壁厚が7mmのジャケットJ1を備えた長さ14mのビレットには、122mm×122mmの正方形の鋼コアを挿入することが考えられる。この実施例では、室温において、コアとジャケットの間の隙間は14mmになると考えられ、この隙間が空気、即ち78%の窒素および21%の酸素の一部50lを表わすことになる。
【0088】
分子グラム基準で:
Mgの1グラムが遊離空気の320ccをスキャベンジし、
Tiの1グラムが空気の250ccをスキャベンジし、そして
Alの1グラムが空気の480ccをスキャベンジできると考えられる。
【0089】
従って、空気50lを含むシール処理ビレットの場合には、部分真空を与えて1%のArを残すためにはAlを104グラム用意するだけでよいと考えられる。同じサイズのビレットから50lの空気をスキャベンジし、同じ部分真空を残すためには、同様に、156グラムのMgまたは200グラムのTiが必要と考えられる。なお、開放端部をもつ同じサイズのビレットの場合には、5,000lの内部空気および/または外部空気をスキャベンジして上記のようにビレット内部に50lのArを与える必要がある。即ち、50,000cc/0.01=5,000,000cc。
【0090】
以下の計算により説明を行うが、これはB4などのビレットを製造することを前提にしている。また、要素体Eaがアルミニウムからなることを前提にする。なお、このアルミニウムは産業上最も頻用されている金属である。Alの密度は2.7g/ccである。ラフに計算して(重量基準で)10.4kgのFDアルミニウムが必要であり、換言すれば各端部に約5.2kg必要である。これは、ビレット全重量の2,000kgの0.5%を占める。固体アルミニウムの相対密度が70%のアルミニウムブリケットそれぞれの重量は5.2kgで、内部寸法が136mm×136mmのジャケットの各端部に密嵌めするためにその長さは170mmである。
【0091】
ビレット内部にArを充填した場合、最終的に内外のガス圧平衡に達する。炉をRTまで加熱する際に生じるガスの膨張または収縮の結果、あるいは炉温度のバラツキの結果として圧力平衡がくずれた場合、この平衡くずれは自動的に調節されることになる。従って、各端部の要素体Eが、圧力平衡に対する自己調節機構になる。
【0092】
CrよりもFEOFが低く、従ってAl、MgまたはTiの代わりに使用できる可能性がある他の金属もある。なお現状では、これら他の金属は使用できる可能性は低いが、無視はできない金属である。例示すると、ジルコニウム、リチウム、カルシウム、ケイ素、バナジウム、マンガンおよびウランである。
【0093】
さらに考えられる別な可能性を
図14に示す。ビレットB14は、以上説明してきた実施例とほぼ同じ構成で一つかそれ以上の要素体を含む。なお、これら要素体については、ジャケット端部に直接設けないで、その代わりに軟鋼からなるカートリッジ60内に予めパックしておく。本実施例では、以上説明してきた実施例と同一な3つの要素体Es、Ea、Etを例示する。管12に密嵌めされるカートリッジは、長手方向に延長する管状外側体62を有し、これの内外端部にそれぞれエンドプレート64、66を形成する。これらエンドプレートを外側体62に溶接するか、あるいは一体化するため、プレートと外側体62との間の継ぎ手部分がシールされることになる。コアCの端部に対して設けられるエンドプレート64に、中心開口68を形成する。カートリッジをビレット端部に挿入した後、管12に溶接されたプレート70によってこのカートリッジを所定個所に固定する。プレート70の機能がプレート14の機能と同じであるため、必要に応じて、またカートリッジに挿入される一つ以上の要素体Eに応じて、プレート70には開口を形成してもよく、あるいは所定温度で融解するプラグを形成してもよい。あるいは、図示しないが、開口を設けなくてもよい。以上は、既に説明した実施例と同様である。これら場合のうち最初の2つについては、エンドプレート66に、プレート70の開口74に対して位置整合し、かつエンドプレート64の開口68と同様な開口72(
図14aに示す)を設ける。内側のエンドプレート64は、まず第1に、一つ以上の要素体をカートリッジ内の所定個所に保持する作用をもつ。以上説明してきた構成のどれにおいても、一つ以上の要素体Eをカートリッジ内にパックでき、かつビレットとは別に搬送できることが本発明の一つの態様である。この結果として、ビレットを構成するために必要な機械の構成をより簡単化することができる。カートリッジに挿入する要素体Eのうち一つの要素体を以上説明してきたように、RT未満の温度で融解するスキャベンジ作用金属で構成した場合には、各エンドプレート64、66も融解金属を保持するバリヤとして作用する。金属量については、融解した時に、その上面が開口68、72、74よりも低く位置するように選択することができる。このように選択すると、融解Alまたはその他の金属がカートリッジからこぼれ出て、高温のビレットの取り扱い時にコアとジャケットとの間の隙間に侵入することがなくなる。
【0094】
固体鋼のコアからなるビレットとともに前記のように複数の要素体を使用することによって、ジャケットJの端部を大気に対して封鎖する必要がなくなる場合がある。即ち、初期特許に記載されているように、端部のクリンプによってビレットを閉じるだけで十分である。このようにクリンプしたビレットB15、B16の端部を
図15および
図16に示す。これらビレットはいずれも既述の場合と同様に要素体Eを有する。ビレットB15の場合、前記実施例と同様に、要素体をカートリッジ60aに挿入する。ビレットB16の場合、カートリッジを使用せず、そしてクリンプする前に、要素体をビレットの端部に直接挿入する。この場合、クリンプする前にビレット端部内の炭素鋼プレート90を挿入する必要がある場合もある。ジャケットを閉じるためにプレート90を設けないため、これを所定個所に溶接することもない。また、プレート90は、要素体Eがクリンプ時にパイプ12に押しつぶされることを防止するために役立つ。
【0095】
図15aに、カートリッジ60bの本体端部98を受け取る周辺凹部92を形成できるコアCの端部98を示す。この結果、圧延開始時にカートリッジ端部をコア端部に溶接することが容易になり、カートリッジがコアから脱離することを防止でき、またコアとカートリッジとの間の接合部でジャケットが破損する恐れをなくすことができる。
【0096】
前記いずれの実施例においても、SSジャケットに溶接された炭素鋼パイプ端部12を使用しないほうが好ましい場合もあり、代わりに、目的に応じて長く設定されたSSジャケットの端部に要素体Eを挿入する。このように構成されたビレットB17を
図17に示す。図示のように、SSジャケットJはプレート14dを超えてビレットの端部110まで延長している。
図18に、カートリッジ60cをSSジャケットJの端部に挿入したビレットB18の一端を示す。ビレットB15およびB16の場合と同様に、ジャケットの端部を(図示のように)カートリッジ上にクリンプできるか、あるいはプレートによって封鎖することができる。
【0097】
ビレットB17およびB18の場合、ビレットの圧延後、端部が切断される結果、SSジャケットJの比較的大きな部分が無駄になる。これをある程度防ぐには、ビレットB19またはB20を設けるとよい(それぞれ
図19および
図20に示す)。いずれの場合にも、第1に、コアCの端部をジャケットJの端部に近接して設けるとともに、この端部にそれぞれ凹部92と同様な周辺凹部92d、92eを形成する。ここでも同様に、SSジャケットの端部を炭素鋼管に溶接しない代わりに、それぞれカートリッジ60d、60eを設ける。これらは、本体がそれぞれ凹部92d、92eに受け取られ、かつジャケットJに隅肉溶接される同じ内側端部94d、94eを有する点で、カートリッジ60bと同じである。なお、各カートリッジ60d、60eの本体は、ジャケットJの外側に設けられ、かつジャケットJの端部とは接触しないように突出する。これらの実施例では、各カートリッジの外側端部は閉じられ、従ってビレットは炉ガスおよび外部大気に対して封鎖されている。
【0098】
ビレットB19の場合、横断面の大きさがコアCのそれとほぼ等しい円筒形パイプによってカートリッジの本体を形成する。パイプの端部を所定個所に溶接されたプレート66dによって封鎖する。ビレットB20の場合、カートリッジの本体はカップ形状である。この本体は、深絞り加工によって形成できる。従って、ウエルデッドオン(welded−on)エンドプレートを設けなくてもよいことになる。正方形のパイプからなるジャケットの場合、ジャケットとコアと接触せずに突出するカートリッジ部分については、カートリッジが圧延機のガイドにそって進むように正方形パイプより小さく設定する必要がある。これらのガイドについては、(正方形の)ビレットの進行を正確に案内するように形状が設定され、かつより小さな成形体をガイドに送りこみ、かつロール間を進むように構成されている。
【0099】
図19および
図20に示すようなタイプのカートリッジを使用すると、カートリッジの内端の部分80d、80eが突出してビレットに入り込み、ジャケットの端部とコアの端部との間に挟まれるという作用効果が得られる。このため、カートリッジとビレットとの間の継ぎ手部分が冷えにくく、従って圧延プロセス時に亀裂しにくくなる。さらに、このタイプの継ぎ手部分の構造的強度は、圧延時にカートリッジ、コアおよびSSジャケット間に圧接が生じるに従って強くなるため、万一外側の溶接部が破損した場合に、継ぎ手部分が一種のバックアップ接続系として作用することになる。
【0100】
ビレットB19、B20のさらに別な実施例を
図21aおよび
図21bに示す。
図21aにおいて、コアおよびジャケットJの端部からなり、かつ例えば長さを50mmに設定することができるビレット部分96については、その横断面サイズ全体がコアの元の横断面サイズよりも小さくなるように、あるいは最大でもこのサイズに等しくなるようにスエージ加工する。このスエージ加工には、可撓性の油圧ホースの端部に取り付ける金属取り付け具をスエージ加工するためによく使用されているタイプのスエージ加工機を利用できる。このような加工機は、例えば、4個または8個の同心円動作の開閉ジョーを備えている。カートリッジ60fの内端80fが、ジャケットおよびコアのスエージ加工部分96の外側に滑り嵌めする。元のジャケットと同じ外側寸法をもち、かつ
図19に示すようなウェルデッドオンプレートまたは
図20に示すようなカップ状プレートによって封鎖することができるカートリッジ60fをジャケットに隅肉溶接する。この設計のカートリッジを使用すると、カートリッジに入り込むジャケット端部の部分を圧延時の過剰な熱損失から保護するためにも役立つ。
【0101】
図21bについて説明すると、カートリッジ60gの横断面サイズをカートリッジ60fよりも大きく設定すること以外は、前記と同じである。カートリッジ60fは、スエージ加工していない、ビレットB21bの端部部分に嵌合するスカート部を有する。
【0102】
いずれの場合も、カートリッジは、圧延時の冷却が過剰であってもSSよりも亀裂しにくい炭素鋼で構成できる。
【0103】
以上説明し、かつ添付図面に図示したビレットのコアおよびジャケットは、正方形の横断面形状についての代表例であるが、本質的なものではない。理由は、横断面寸法に関して必要な縦方向直線度および一様度をもつ正方形のコアを形成することが最も現実的と考えられるからである。なお、(円形や長方形を始めとする)他の横断面形状のビレットも使用できることは言うまでもない。
【0104】
図22に、SS管112を挿入する円形の挿入路111を有する中空鋼ブロック体110からなるビレットB22を示す。管の端部113はブロック体とは接触せずに突出している。以上説明してきた実施例と同様に構成した環状要素体Eの集合体を各端部113上に取り付け、かつ同様に環状であり、そしてブロック体の端部面に溶接した封鎖鋼ケーシング114に受け取る。これら要素体は、挿入路111内において管とブロック体との界面において領域Zの酸化を防止するものである。このビレットB22は、
図25に示す内部をSSでクラッド化した継ぎ目なし鋼パイプ115を公知の穿孔圧延法によって製造するために好適なものである。このパイプの鋼本体およびクラッド部分は、それぞれ参照符号110´および112´で示す。
【0105】
図23に、鋼ブロック体110aをSS管112aに受け取った点を除けばB22と同様なビレットB23を示す。ここでも同様に、B23は、
図26に示す外部をSSクラッド化した継ぎ目なし鋼パイプ115aを製造するために好適である。このパイプの鋼本体およびクラッド部分は、それぞれ参照符号110´´および112´´で示す。
【0106】
図24に、上面118にSSプレート119を使用した長方形鋼スラブ116からなるビレットB24を示す。このプレートは予め成形したもので、その4つの縁部それぞれを上面118に対して90°下向きに折り畳んでフランジを形成する。これらフランジのうち2つをビレットの正面端部および背面端部に設ける。参照符号は120である。残りの2つのフランジ(図に現れていない)は、プレートの側縁部に溶接する。プレート119を所定位置に設けた後、参照符号121で示すように、図に現れている2つのフランジを内側に再び折り畳み、これらフランジの自由縁部を、正面縁部および背面縁部においてプレートの下面122に溶接する。図に現れているこれらフランジ120が、以上説明してきたいずれかの実施例と同様に構成された要素体Eの集合体を取り囲む。好適には、ビレットB24は、加熱処理し、かつ圧延処理して一面をSSでクラッド化した、
図27に示す鋼プレート123に形成したほうがよい。このプレートの鋼本体およびクラッド部分は、それぞれ参照符号118´および119´で示す。
【0107】
図29に、管状で、かつSSクラッド化管124に接合した鋼本体122からなる正方形の、外部をSSクラッド化したパイプ120としての製品を示す。このパイプ120は、ビレットB23と本質的に同じように構成したビレットから製造できる。なお、構成成分すべての寸法差および形状差については適正なアローワンスを取ってある。
【0108】
図29に図示したものは、内側クラッド化管122に接合した鋼本体124からなる内部をSSクラッド化したパイプ120と等価とみなすことができる。このパイプ120は、ビレットB22と本質的に同じように構成したビレットから製造できる。なお、構成成分すべての寸法差および形状差については適正なアローワンスを取ってある。
【0109】
最初の実験で、それぞれ外側寸法が100mm×100mmで、長さが2mの炭素鋼の正方形コアバーからなる4つのビレットを製造した。コアバー毎に2つのクラッド化プレートを用意した。これらビレットのうち2つについては、プレートをプレート厚が6mmのUNS S32101二相SSとし、残りの2つのビレットについては、プレートをプレート厚みが同じく6mmのUNS S32304二相SSとした。各プレートを、基部と、コアバーの半分を密接して覆う2つの直立フランジをもつU字形に予め成形してコアバーの両側に設けて、コアバーの両面の中心線にそって延長するプレートの当接縁部間に溶接隙間を形成した。溶接をコアバーに侵入させることなく当接縁部にそってプレートを溶接して、コアバー周囲にSSケーシングを形成した。
【0110】
長さ170mmのカートリッジを用意した。これらは、Ti削りくず、Al削りくずおよび炭素鋼削りくずからなる、長さがほぼ35mmの圧密体からそれぞれなる3つの要素体をもっていた。これら3つの要素体を、ビレットB19の場合に例示されているように、プレート厚が8mmの炭素鋼プレートから製造した炭素鋼ケーシングにプレスした。同様にビレットB19の場合に例示したように、ビレットの各端部においてこのような一つのカートリッジをクラッド化プレートに溶接した。このようにして、各ビレットを大気に対して封鎖した。
【0111】
各ビレットの端部をほぼ800℃に予め加熱し、ビレットの中心部分を周囲温度に曝した。この後、ビレット全体を1,200℃に圧延機炉内で加熱した。
【0112】
次に、ダイヤモンド形正方形の圧延パス構成を備えた、従来利用されている圧延機で最初に6パスのビレット荒引き圧延を行った。この荒引き圧延で、ビレットは70mm×70mmの大きさまで縮小し、一部圧延された製品を切断検査した。すべてのビレットを通して、ビレット端部から50mm以上離れた距離でコアバーとの界面においてSSケーシングに有意な酸化の兆候はなかった。さらに、界面においてコアバーとケーシングとが完全に結合していた。SSケーシングのコアバーからロール隙間への剥離(de-bonding)を原因とするひれ付き現象(finning)も認められなかった。商業的生産の場合、エンドピースの残渣を含むビレットの端部は、経験によって結合が完全であるとわかった時点で直ちに切り落とされることになっている。本発明では、従って、実際上6回目のパス後にこれら端部を安全に切り落とすことができると結論した。
【0113】
さらに実験を行い、大きさが84mm×84mmで長さが2mの市販製品である2つの炭素鋼コアバーからさびを落とした。これらコアバーを、同様に市販製品である外側サイズが100mm×100mmで壁厚が6mmのASTM A304等級SSからなる正方形管に挿入した。初期には、コアバーと正方形管との間に4mmの公称クリアランス隙間があった。コアバーの挿入後、正方形管はSSの弾性限界を超えて延伸し、結果的に管の延伸率が12%になった。この過程で、正方形管は、管の丸い角部が歪み、コアバーの異なる曲率半径に対応できる点まで管が収縮し、コアバー上に密嵌めされた。正方形管はコアバーよりも長くなり、コアバーによって拘束されない突出端部では91mm×91mmの大きさまで収縮した。
【0114】
延伸後、長さが70mmの管状炭素鋼エンドピースを、同じInertfil309(TM)溶接ワイヤを使用してSSケーシングの端部に溶接した。長さ35mmでTi削りくずの圧密体からなる独立した一つの要素体を各エンドピースにプレスしてから、封鎖用プレートをエンドピースに挿入し、ビレットB1の場合に例示したようにこれに溶接した。
【0115】
最初の4つのビレットの場合と同じ方法でビレットを圧延し、同じ結果を得た。