(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態では、液体吐出容器の一例として、加圧ガス等を使用することなく、内容液を吐出する液体吐出容器を例に挙げて説明する。
【0017】
(液体吐出容器の構成)
図1に示すように、液体吐出容器1は、有底筒状に形成された容器本体10と、容器本体10に固定されたシリンダ20と、このシリンダ20の吸込み口21aに連通する吸込管(吸い上げパイプ)28と、シリンダ20内に連通する吐出口56aが形成された吐出ヘッド56と、を備えている。
【0018】
容器本体10は、胴部11と、外周面に雄ねじが設けられた口部12と、胴部11の下端に連設された底部13と、で有底筒状に形成されており、内部に内容液が充填されている。
なお、以下では、容器本体10の中心軸を容器軸Oと称し、この容器軸O方向に沿って口部12側を上側、底部13側を下側と称し、この容器軸O方向に沿った方向を上下方向と称する。また、容器軸Oに直交する方向を径方向と称し、容器軸O回りに周回する方向を周方向と称する。
【0019】
本実施形態の内容液は、粉粒体を含有する内容液とされる。粉粒体としては、例えば粉状、粒状、顆粒状の固形物であり、パウダー等が挙げられる。
容器本体10の胴部11は、横断面視円筒状に形成されている。容器本体10の底部13は、上方から下方に向かうにしたがって漸次縮径した略半球のカップ状に形成されている。具体的には、胴部11の下端開口部に連設されたヒール部13aと、このヒール部13aから、中心に位置する最底部(下端部)13bに向かうにしたがって漸次縮径したカップ状に形成されている。なお、ヒール部13aは、胴部11よりも縮径した横断面視円筒状に形成されている。
【0020】
このようにカップ状に形成された底部13には、容器本体10を立てた状態で載置するための支持カバー14が装着されている。この支持カバー14は、有底筒状に形成されており、底部13の下側から装着されて、ヒール部13aに外嵌固定される。支持カバー14の底面はフラット面とされ、底部13における最底部13bがこの底面に接している。
【0021】
容器本体10の口部12には、下端の吸込み口21aがこの口部12から容器本体10内に挿入された上記シリンダ20が固定されている。図示の例では、シリンダ20は、容器軸Oと同軸に配置された多段の筒状に形成され、下から順に第1筒部21、第2筒部22、第3筒部23、第4筒部24が連設されており、これら各筒部は上位に位置するものに従って内径及び外径がそれぞれ大きくなっている。
第4筒部24の上下方向における略中央からは、ネジ筒部25が外側下方に延びている。このネジ筒部25の内周面には雌ねじが設けられており、シリンダ20は、ネジ筒部25を容器本体10の口部12に螺合して容器本体10に固定されている。なお、口部12の上端面とネジ筒部25との間にはパッキン15が挟装されている。
【0022】
第1筒部21と第2筒部22との間には、環状の弁座部26が設けられており、第3筒部(シリンダの周壁)23の下端には複数の等圧孔27が開口している。
第1筒部21の内側は、前記吸込み口21aとなっていて、第1筒部21内には、下端部が容器本体10の底部13に達した吸込管28の上部部が嵌着されている。
この吸込管28は、例えば可撓性を有するパイプであり、下端部が底部13における最底部13bに達している。なお、吸込管28の下端開口が吸上げ口とされている。
また、吸込管28としては、例えばインジェクション成形されたパイプでも良いし、その他の手法で製造されたパイプであっても良い。
【0023】
また、第1筒部21の上端、即ち第2筒部22の下端には吸込弁29が取り付けられている。吸込弁29は、弁座部26に当接離反可能な弁体29aを有し、弁体29aが弁座部26に着座して閉弁となり、弁座部26から上方に離反して開弁となる。
【0024】
第2筒部22の内側には、筒状のスリーブ30が固定されている。スリーブ30は、下部を大径筒部30aとすると共に、上部を小径筒部30bとしており、小径筒部30bは、大径筒部30aよりも内径が小さい。小径筒部30bの上端からは、シール筒部30cが上方に起立している。また、小径筒部30bの上端は、第2筒部22の上縁に掛止されており、シール筒部30cは、等圧孔27から離間して配されている。
【0025】
図示の例では、シール筒部30cの上端の位置は、第3筒部23の上端の位置と一致している。更に、シール筒部30cの上端部には、複数の溝部30dが周方向に間隔をあけて形成されている。なお、スリーブ30はシリンダ20の一部をなしている。
【0026】
第4筒部24のほぼ上半分の内周面には、周方向に等しい間隔をあけて断面半円形の縦溝31が複数設けられており、第4筒部24の外周面には、係合突起24aが外方に突出して設けられている。
第4筒部24の外側には、容器軸Oと同軸に配置された回動環40が周方向に回動可能で上下方向に移動不能に取り付けられている。回動環40は、上端にネック筒部41を有しており、ネック筒部41の下部に、上部に吐出弁51が設けられ、下部開口がシリンダ20内に位置する吐出管50が固定されている。
【0027】
吐出弁51は、吐出管50の上部開口を塞ぐように取り付けられている。また、吐出弁51は、入口管52と出口管53と弁体54とスプリング55とを主要構成とし、入口管52が吐出管50に連通している。
出口管53の上端には、吐出弁51に連結され下方に押し下げ可能になっていて押し下げ動作により吐出弁51を開弁させて吐出口56aから内容液を線状(ストレート状)に吐出(いわゆる直吐出)可能な上記吐出ヘッド56が固定されている。
【0028】
図示の例では、吐出ヘッド56は、ネック筒部41に、このネック筒部41の外周面に沿って下降可能に外嵌されている。また、吐出ヘッド56の外周面に設けられた前記吐出口56aは、吐出ヘッド56内に設けられた通路を介して出口管53内に連通している。
【0029】
スプリング55は、出口管53を上方に付勢して弁体54を閉弁位置に位置させている。この吐出弁51においては、吐出ヘッド56を下方に押して出口管53をスプリング55の弾性に抗して押し下げると、弁体54が開弁して入口管52と出口管53とが連通し、その結果、吐出口56aが吐出管50に連通するようになっている。そして、吐出ヘッド56から手を離すとスプリングバックして弁体54が閉弁位置に復帰するようになっている。
吐出管50は、容器軸Oと同軸に配置されていると共に先部がシリンダ20内に挿入されており、その先端がシリンダ20の第3筒部23の内側に配されている。
【0030】
シリンダ20と吐出管50との間には、容器軸Oと同軸に配置された筒状のプランジャ60が吐出管50に液密に外嵌して上下摺動可能に取り付けられている。プランジャ60は、駆動筒部61とスカート部62とを備えている。
駆動筒部61は、下筒部63と、上筒部64と、これらを連結する環板部65とを有し、環板部65は下筒部63よりも若干内方に延びて、その内端縁が上下両方向に突出している。
【0031】
下筒部63の外径は、スリーブ30の小径筒部30bの内径よりも若干小径となっている。下筒部63の外周面には、下方に向けて開口すると共に上下方向に延在する連通溝63aが形成されている。
なお、連通溝63aは、下筒部63の外周面に1つのみ形成されていても良く、また、周方向に互いに間隔をあけて複数形成されていても良い。また以下では、下筒部63において上下方向に沿って連通溝63aが形成されている部分を下筒部63の下側部分と称し、下筒部63において前記下側部分よりも上側の部分を上側部分と称する。
【0032】
下筒部63の内側には、スカート部62が固定されている。スカート部62は、下筒部63に内嵌固定された支持筒部66と、支持筒部66から外方に且つ下方に延びるシール脚筒部67と、支持筒部66の下方延長上に延びる複数の押さえ脚部68、とを備えている。
【0033】
支持筒部66の内径は、環板部65の内径と同径に形成されていて、吐出管50の外径よりも僅かに大径にされている。支持筒部66の上部内縁端と環板部65の下向き内縁端との間にはゴム製のシールリング69が挟装されており、シールリング69は、駆動筒部61とスカート部62と吐出管50との間を液密にシールしつつ、吐出管50の外周面を圧接摺動するようにされている。
【0034】
シール脚筒部67は、駆動筒部61の下筒部63の下方に配されていて外径が該下筒部63の外径とほぼ同径に形成されている。シール脚筒部67の下端部は、下方に向かって拡径するテーパー筒部67aにされている。テーパー筒部67aの下端外径は、スリーブ30の大径筒部30aの内径よりも小径で、テーパー筒部67aと大径筒部30aとの間に隙間があいている。また、前記下端外径は、小径筒部30bの内径とほぼ同径か若干大径とされ、テーパー筒部67aは、小径筒部30bの外周面を圧接摺動するようにされている。
【0035】
押さえ脚部68は、隣り合う押さえ脚部68の間に隙間を有して形成されており、各押さえ脚部68は、プランジャ60が最下限位置に位置した時に吸込弁29の弁体29aを上から押圧し、弁座部26と協働して弁体29aの開弁を阻止するようにされている。
また、シリンダ20と吸込弁29と吐出管50とプランジャ60とによって囲まれた空間は加圧室93とされている。
【0036】
回動環40とプランジャ60との間には、回動環40のシリンダ20に対する回転動作をプランジャ60のシリンダ20に対する上昇動作に変換する変換機構75が設けられている。以下、この変換機構75について説明する。
【0037】
プランジャ60の上筒部64の外周面には、周方向に互いに間隔をあけて形成された垂直溝70bと、周方向に隣接する垂直溝70bの上端と下端とを連結する傾斜溝70aとからなる断面半円形のカム溝70が、容器軸O回りの全周に亘って設けられている。
このカム溝70及びシリンダ20の縦溝31それぞれには、ボール71が回動可能に係合している。即ち、ボール71の半分はカム溝70に挿入され、残りの半分が縦溝31に挿入されている。
【0038】
また、プランジャ60は、中継部材42によって回動環40に相対回転不能で上下方向に相対移動可能に連結されている。
この中継部材42は、外側下延筒部43と内側下延筒部44と上延筒部45とが頂板部46によって連結されて構成されており、外側下延筒部43の内周面に設けられた突起43aをシリンダ20の第4筒部24の係合突起24aに掛止させてシリンダ20に対して相対回転可能に取り付けられている。更に中継部材42は、上延筒部45の係合突条45aを回動環40の係合溝40aに係合することによって、回動環40と同期回転するようにされている。
【0039】
一方、中継部材42は、内側下延筒部44の外周面に設けた縦突条44aを駆動筒部61の上筒部64の内周面に設けた縦溝64aに係合することによって、プランジャ60に対して相対回転不能で上下方向に相対移動可能に連結されている。
【0040】
プランジャ60は、中継部材42との間に介装されたスプリング(付勢機構)47によって下方に付勢されている。従って、前記ボール71は、回動環40を回動操作する間において常にシリンダ20の縦溝31の下端に係合し、カム溝70の上壁面に係合している。
【0041】
以上に示した構成においては、ボール71が傾斜溝70aの上端に係合している状態で回動環40を容器本体10に対して回転させると、
図2に示すように、ボール71がそのままの高さ位置で傾斜溝70aに沿って該傾斜溝70aを相対的に下っていく状態となるので、プランジャ60が上昇する。この際、プランジャ60がスプリング47を弾性圧縮する。
そして、
図3に示すように、回動環40のさらなる回転に伴って、ボール71がそのままの高さ位置でカム溝70の傾斜溝70aの下端から垂直溝70bの下端に移行すると、スプリング47の弾性復元力によってプランジャ60は下降可能となる。プランジャ60が下降すると、ボール71はそのままの高さ位置で垂直溝70bを相対的に上昇することとなり、最終的に隣接する傾斜溝70aの上端に達する。
【0042】
このようにプランジャ60が回動環40に対して相対回転不能で上下方向に相対移動可能に連繋され、シリンダ20とプランジャ60とが縦溝31とカム溝70とボール71で構成されたカム機構によって連繋されているので、回動環40を容器本体10に対して回転させることによってプランジャ60をスプリング47の弾性に抗して上昇させることができ、その後、スプリング47の弾性復元力によってプランジャ60を下降させることができる。
なお、上述したように、ボール71は同じ高さ位置を維持したまま、回動環40の回転操作に伴って傾斜溝70a及び垂直溝70bからなるカム溝70を相対的に走行(移動)する状態となり、これによりプランジャ60が上下動することとなる。
【0043】
なお、図示の例では、中継部材42の頂板部46には、この頂板部46を貫通する複数の空気孔46aが、容器軸O回りに沿って互いに間隔をあけて形成されている。また、頂板部46の内縁部には、吐出管50の上部が掛止されている。
【0044】
図1に示すように、シリンダ20の第3筒部23の上端には、等圧弁80が配置されている。
この等圧弁80は、容器軸Oと同軸の円環状に形成されると共に下面が第3筒部23及びシール筒部30cそれぞれの上端縁に当接されて支持された弁本体84と、シール筒部30cに対して当接離反する第1弁部81と、下筒部63の外周面上を摺動する第2弁部82と、プランジャ60に対して当接離反する第3弁部83と、を備えている。
なお、この等圧弁80は例えば軟質樹脂やゴム等の弾性部材(弾性体)で形成されている。
【0045】
シリンダ20とプランジャ60との間には、等圧弁80を間に挟んで下側に液圧逃がし通路91が形成され、上側に空気流入通路92が形成されている。
液圧逃がし通路91は、プランジャ60のテーパー筒部67aがスリーブ30の大径筒部30aの側方に位置している時に加圧室93に連通し、
図2及び
図3に示すように、テーパー筒部67aが小径筒部30bに圧接している時に加圧室93から遮断される。
即ち、液圧逃がし通路91は、プランジャ60が最下限位置に位置した時には加圧室93に連通し、プランジャ60が最下限位置から外れて位置した時には加圧室93から遮断される。
【0046】
また、液圧逃がし通路91は、第3筒部23に形成された等圧孔27を通して容器本体10の内部と連通可能とされている。
図1に示すように、空気流入通路92は、プランジャ60の駆動筒部61とシリンダ20の第4筒部24との間の隙間、カム溝70、シリンダ20の縦溝31、中継部材42の空気孔46a等を介して外部に連通して外気導入可能となっている。
【0047】
第1弁部81は、弁本体84から下方に延びると共に容器軸Oと同軸の筒状をなし、下端部がスリーブ30のシール筒部30cの外周面に当接離反可能になっていて、シール筒部30cに着座して等圧孔27を閉塞し、シール筒部30cから離反して等圧孔27を開放するように動作する。
なお、図示の例では、第1弁部81の下端部は、シール筒部30cの外周面において、溝部30dよりも下側に位置する部分に当接離反可能となっている。そして、第1弁部81は、液圧逃がし通路91内の圧力と容器本体10内の圧力との圧力差によって動作して容器本体10内から液圧逃がし通路91への流通を阻止し、液圧逃がし通路91から容器本体10内への流通のみを許容する逆止弁として機能する。
【0048】
第2弁部82は、弁本体84の内周面から径方向の内側に向けて突出する環状突部に形成されていて、例えば上下方向に間隔をあけて2つ形成されている。また、
図1及び
図2に示すように、第2弁部82は、駆動筒部61の下筒部63の上側部分の外周面に液密に圧接摺動するように形成されており、
図3に示すように、下筒部63の下側部分を摺動する時には、前記連通溝63aを介して第2弁部82の上方と下方とが連通される。即ち、第2弁部82は、下筒部63の上側部分を摺動する時は閉弁状態であり、下筒部63の下側部分を摺動する時は開弁状態となる。
【0049】
第3弁部83は、弁本体84において第1弁部81よりも径方向の内側から下方に延びると共に容器軸Oと同軸の筒状をなし、その先端部分が先端シール部となっている。第3弁部83の先端シール部は、
図1及び
図3に示すように、駆動筒部61の下筒部63の上側部分の外周面及びスカート部62におけるシール脚筒部67の外周面に液密に圧接摺動するように形成されている。また、
図2に示すように、第3弁部83の先端シール部が下筒部63の下側部分を摺動する時には、前記連通溝63aを介して第3弁部83の上方と下方とが連通される。
即ち、第3弁部83は、下筒部63の上側部分及びシール脚筒部67を摺動する時は閉弁状態であり、下筒部63の下側部分を摺動する時は開弁状態となる。
【0050】
また、閉弁状態にある第3弁部83は、液圧逃がし通路91内の圧力と空気流入通路92内の圧力との圧力差によって開閉するようになっていて、液圧逃がし通路91から空気流入通路92への流通を阻止し、空気流入通路92から液圧逃がし通路91への流通のみを許容する逆止弁として機能する。
【0051】
また、本実施形態では、シリンダ20との間で等圧弁80を上下方向に挟み等圧弁80をシリンダ20に固定する固定具86が備えられている。図示の例では、固定具86は、容器軸Oと同軸に配置された円環状に形成され、シリンダ20の内周面との間で等圧弁80を挟んでいる。
【0052】
ところで、容器本体10の底部13には、内容液に含有されている粉粒体のうち、該底部13に沈殿し、且つ底部13の内周面上を伝わって下降する粉粒体を一時的に滞留させる窪み部(滞留部)16が形成されている。
図示の例では、窪み部16は、底部13におけるヒール部13aと最底部13bとの間における内周面に下方に向けて凸となるように凹み、且つ底部13の全周に亘って環状に形成されている。さらに、環状の窪み部16が、容器軸O方向に連続的に4段並ぶように形成されている。
【0053】
(液体吐出容器の作用)
次に、上記のように構成された液体吐出容器1の作用を説明する。
<非加圧状態>
図1に示すように、液体吐出容器1の非使用時の状態である非加圧状態においては、吸込弁29及び吐出弁51が閉弁状態になっており、プランジャ60が最下限位置に位置していると共に、押さえ脚部68が吸込弁29の弁体29aを上から押圧している。また、液圧逃がし通路91は加圧室93に連通している。
【0054】
等圧弁80の第1弁部81は、シリンダ20におけるスリーブ30のシール筒部30cに圧接して液圧逃がし通路91と容器本体10とを遮断している。第2弁部8及び第3弁部83は、いずれもプランジャ60における下筒部63の上側部分に圧接して液圧逃がし通路91と空気流入通路92とを遮断している。
なお、吐出弁51については、この後、吐出ヘッド56を押し下げない限り、閉弁状態に維持される。
【0055】
<ポンプアップ操作 − 前半>
前記非加圧状態から回動環40を容器本体10に対して回転させると、プランジャ60がスプリング47を圧縮しながら上昇する。すると、プランジャ60の上昇により押さえ脚部68は吸込弁29の弁体29aから離反し、弁体29aは開弁可能になる。
なお、最下限位置からプランジャ60のテーパー筒部67aがスリーブ30の小径筒部30bに圧接する直前までのプランジャ60の移動範囲を下部移動域と称する。この下部移動域においては、等圧弁80の第2弁部82及び第3弁部83は両方ともプランジャ60の下筒部63の上側部分に液密に圧接しており、液圧逃がし通路91と空気流入通路92との間を遮断し続ける。
【0056】
そして、
図2に示すように、プランジャ60が下部移動域を脱して、プランジャ60のテーパー筒部67aがスリーブ30の小径筒部30bに圧接すると、それ以後のプランジャ60の上昇によって加圧室93が負圧となり、この負圧によって吸込弁29の弁体29aが弁座部26から離反して開弁する。
その結果、容器本体10内の内容液が吸込管28の下端部より吸い上げられ、この吸込管28を通った後、吸込み口21aから加圧室93内にポンプアップされる。
【0057】
なお、テーパー筒部67aはプランジャ60が最上限位置に至るまで、即ちポンプアップが完了するまで、スリーブ30の小径筒部30bを液密に圧接し続ける。また、プランジャ60の下筒部63の上側部分は、等圧弁80の第2弁部82に液密に圧接されながら摺動し、その結果、液圧逃がし通路91と空気流入通路92とは第2弁部82によって遮断された状態に保持される。
なお、テーパー筒部67aがスリーブ30の小径筒部30bに圧接し始めるのとほぼ同時に、等圧弁80の第3弁部83の先端シール部が下筒部63の下側部分を摺動し、第3弁部83が開弁状態になる。
【0058】
そして、内容液のポンプアップに伴い、容器本体10内は減圧されて負圧になり、この負圧によって等圧弁80の第1弁部81がスリーブ30のシール筒部30cから離反して開弁し、液圧逃がし通路91内の内容液は等圧孔27から容器本体10内に流れる。
【0059】
<ポンプアップ操作 − 後半>
回動環40の回転によりボール71がカム溝70における傾斜溝70aの下端近傍に達すると、プランジャ60の下筒部63の上側部分が等圧弁80の第2弁部82から離脱して下筒部63の下側部分を第2弁部82が摺動すると共に、プランジャ60のスカート部62のシール脚筒部67が第3弁部83の先端シール部に圧接し始める。なお、この位置から最上限位置までのプランジャ60の移動範囲を上部移動域と称する。
【0060】
この上部移動域においては、等圧弁80の第2弁部82は開弁状態となり、第3弁部83は空気流入通路92から液圧逃がし通路91への流通を許容しその逆方向の流通を阻止する逆止弁として機能する。
【0061】
ところで、前述したように液圧逃がし通路91は容器本体10内に連通しており負圧になっているので、この負圧により第3弁部83はシール脚筒部67から離反して開弁状態となる。その結果、空気流入通路92が液圧逃がし通路91及び等圧孔27を介して容器本体10内に連通し、大気がこれら通路を通って容器本体10内に流入し、容器本体10内が大気圧になる。この状態はプランジャ60が最上限位置に至るまで継続する。
【0062】
そして、
図3に示すように、ボール71が傾斜溝70aの下端、即ち垂直溝70bの下端に達すると、回動環40の回転は停止され、プランジャ60が最上限位置に位置することとなる。これにより、内容液のポンプアップは終了し、吸込弁29の弁体29aが弁座部26に着座して吸込弁29は閉弁する。
また、ポンプアップ終了と同時に、等圧弁80の第1弁部81がシール筒部30cに圧接して閉弁し、第3弁部83がシール脚筒部67に圧接して閉弁する。従って、この状態で万が一に液体吐出容器1を横転させたとしても内容液が液体吐出容器1の外へ漏洩することはない。
【0063】
なお、吐出弁51が閉弁されている限り加圧室93は内容液で充填されているため密閉空間となるので、スプリング47の弾性復元力がプランジャ60に作用していても、このままではプランジャ60が下降することはない。
【0064】
<吐出操作>
前述のように内容液をポンプアップした後、
図4に示すように、吐出ヘッド56を押し下げると、吐出弁51が開弁し、加圧室93が吐出口56aに連通して、加圧室93の密閉が破られる。
その結果、スプリング47の弾性復元力によりプランジャ60が下降し、加圧室93内の内容液が吐出口56aから線状に吐出される。なお、プランジャ60の下降時、ボール71はカム溝70の垂直溝70bをプランジャ60に対して相対的に上昇することとなる。
【0065】
プランジャ60の最下限位置への下降に伴い、液圧逃がし通路91内は負圧になるが、この負圧により等圧弁80の第3弁部83はシール脚筒部67から離反し開弁状態となるので、空気流入通路92から液圧逃がし通路91に大気が流入する。
プランジャ60が下降してその下筒部63の上側部分が等圧弁80の第2弁部82に圧接し始めると、即ちプランジャ60が上部移動域を脱すると液圧逃がし通路91は密閉されるので、それ以降はプランジャ60のテーパー筒部67aがスリーブ30の小径筒部30bから離脱するまでの間、即ち下部移動域に達するまでの間、プランジャ60の下降に伴い液圧逃がし通路91は減圧されて若干負圧化する。
【0066】
<吐出終了>
プランジャ60のテーパー筒部67aがスリーブ30の小径筒部30bから離脱して大径筒部30aの側方に位置するようになると、即ちプランジャ60が下部移動域に入ると、液圧逃がし通路91が加圧室93に連通するため液圧逃がし通路91内に加圧室93内の正圧が伝達される。
【0067】
その結果、液圧逃がし通路91内の圧力が容器本体10内の圧力よりも大きくなり、等圧弁80の第1弁部81がスリーブ30のシール筒部30cから離反し第1弁部81は開弁状態となって、加圧室93内の内容液(内圧)が液圧逃がし通路91及び等圧孔27を通って容器本体10内に流れ、これに伴い加圧室93内の圧力が急速に減圧されて、吐出口56aからの内容液の吐出が止まる。
以上により、液体吐出容器1からの内容液の吐出が終了する。
【0068】
特に、本実施形態の液体吐出容器1によれば、容器本体10の底部13に複数の環状の窪み部16が設けられているので、内容液に含有されている粉粒体がカップ状の底部13に沈殿し、該底部13の内周面上を伝わって吸込管28の下端部が位置する最底部13bに向けて移動したとしても、最底部13bに達する前に各窪み部16内に滞留させて一時的に留まらせることができる。
従って、吐出の初期段階で、多量の粉粒体を吸込管28で吸い上げてしまうことを抑制でき、初期段階から終期段階までの間で、濃度のばらつきを抑制しながら内容液を吐出させることができる。しかも、上記実施形態では、底部13におけるヒール部13aと最底部13bと間において、環状の窪み部16が4段形成されているので、沈殿した粉粒体を吸込管28の下端部に達する前に、効率良く溜め込んで留まらせておきやすい。
【0069】
また、容器本体10の底部13がカップ状に形成されているので、内容液の残量が少なくなった場合に、底部13の最底部13bに内容液を自然と集めることができ、効率良く吸い上げて吐出させることができる。従って、残量を低減させることができ、内容液を無駄なく使い切り易い。
【0070】
このように、この液体吐出容器1によれば、濃度のばらつきを抑制しながら内容液を吐出させ易く、吐出性能に優れた容器とすることができる。特に、粉粒体を多量に吸い上げてしまうことを抑制できるので、例えば内容液の効能の確実な発揮や、吸込管28内の詰まりの防止等を行える。
【0071】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態では、回動環40の回転操作により加圧室93内を負圧化させることで内容液を加圧室93内に所定量吸い上げて溜め込み、その後、吐出ヘッド56の押し下げ操作により加圧室93内の内容液を吐出させる液体吐出容器1を例に挙げて説明したが、この容器に限定されるものでない。
吐出ヘッドの押し下げ操作により、内容液を吸い上げて吐出する液体吐出容器であれば、本発明を適用することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、固定具86及び押さえ脚部68をそれぞれ備えるものとしたが、これらは無くても良い。また、変換機構75は、回動環40とプランジャ60との間に設けられ回動環40の回転動作をプランジャ60の上昇動作に変換するものであれば、前記実施形態に示したものに限られない。
【0074】
また、上記実施形態では、等圧弁80が第1弁部81、第2弁部82及び第3弁部83を備えるものとしたが、等圧孔27を開閉すると共に、プランジャ60の外周面に圧接摺動して液圧逃がし通路91と空気流入通路92との間を開閉するものであればこれに限られるのではない。
【0075】
また、上記実施形態では、容器本体10の底部13に環状の窪み部16を4段形成したが、1段だけでも良いし、5段以上設けても構わない。また、環状の窪み部16としたが、環状ではなく周方向に延びる周溝のような窪み部16であっても構わない。
また、
図5に示すように、ヒール部13aから最底部13bに向かって延びるように縦長状の窪み部100を形成し、該窪み部100を周方向に間隔をあけて複数配置しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。なお、
図5では、窪み部100を明瞭に図示するため、吸込管28の図示を省略している。
【0076】
なお、粉粒体の種類や量等に応じて、窪み部16(100)の形状や窪み具合等を適宜調整し、滞留を最適に行えるように自由に設計して構わない。
【0077】
また、上記実施形態では、窪み部16(100)を、粉粒体を滞留させる滞留部として機能させたが、
図6に示すように、底部13における最底部13bから、吸込管28の内径(パイプ内径)よりも拡径した突起部110を上方に向けて突設させ、この突起部110を滞留部として機能させても構わない。
この場合には、沈殿した粉粒体を突起部110の周囲に留まらせて堆積させた状態にすることができるので、容器本体10の多少の姿勢変動があったとしても、粉粒体を確実に留まらせることができる。従って、濃度のばらつきをより抑制しながら内容液を吐出させ易い。
【0078】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。