【実施例】
【0017】
以下に、化学蓄熱空調システムにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の化学蓄熱空調システム1は、
図1〜
図3に示すごとく、以下の反応器2、熱交換器25、蒸発・凝縮手段31,32、熱交換型水タンク4及び空調配管6を備えている。
反応器2は、容器本体内に化学蓄熱材21を内蔵して構成されている。熱交換器25は、反応器2と熱交換可能に構成されている。蒸発・凝縮手段31,32は、反応器2と接続され、化学蓄熱材21の水和反応に用いられる水Wを蒸発させるとともに化学蓄熱材21の脱水反応によって生じる水Wを凝縮させるよう構成されている。熱交換型水タンク4は、蒸発・凝縮手段31,32と熱交換器25とに別々に接続され、水和反応に用いられる水W及び脱水反応によって生じる水Wを貯めることができ、かつ熱交換器25と熱交換可能に構成されている。空調配管6は、反応器2及び熱交換器25に接触させる空気Aを通過させるよう構成されている。
【0018】
化学蓄熱空調システム1は、
図1に示すごとく、化学蓄熱材21の脱水反応時には、蒸発・凝縮手段31,32における凝縮器32を経由して熱交換型水タンク4に水Wを回収するよう構成されている。化学蓄熱空調システム1は、
図2に示すごとく、化学蓄熱材21の脱水反応完了直後又は化学蓄熱材21の水和反応時には、化学蓄熱材21の脱水反応によって生じた熱を熱交換器25を経由して熱交換型水タンク4に蓄熱するよう構成されている。化学蓄熱空調システム1は、
図3に示すごとく、化学蓄熱材21の水和反応時には、熱交換型水タンク4に回収した水Wを、蒸発・凝縮手段31,32における蒸発器31を経由して反応器2へ供給する際に、熱交換型水タンク4に蓄熱した熱を、蒸発器31の熱源として用い、かつ、化学蓄熱材21の水和反応によって生じる熱を用いて、空調配管6を通過して反応器2及び熱交換器25に接触する空気Aの温度調整を行うよう構成されている。
【0019】
以下に、本例の化学蓄熱空調システム1につき、
図1〜
図3を参照して詳説する。
本例の化学蓄熱空調システム1は、エンジン及び走行モータと、バッテリーとを有するハイブリッド自動車に搭載されている。この自動車には、車室内60を空調するエアコンディショナ等の空調装置が設けられている。また、この自動車は、エンジンを稼動させた走行時には、空調装置によって暖房及び冷房の空調を行い、エンジンを停止させた停車時には、化学蓄熱空調システム1によって暖房及び冷房の空調を行うよう構成されている。
【0020】
本例の反応器2において、化学蓄熱材21の脱水反応は、エンジン及び走行モータの稼動時に、走行モータが発電機として動作する際に、バッテリーに蓄電されずに捨てられる余剰エネルギーとしての電力を用いて行う。反応器2には、この余剰エネルギーとしての電力によって発熱するヒータ22が設けられている。なお、化学蓄熱材21の脱水反応は、エンジンから排気される排気エネルギーとしての排ガス、オルタネータによって発電されバッテリーに蓄電されずに捨てられる余剰エネルギーとしての電力を用いて行うこともできる。
【0021】
図1〜
図3に示すごとく、本例の蒸発・凝縮手段31,32は、化学蓄熱材21の脱水反応によって生じる水Wを凝縮させて、熱交換型水タンク4へ回収させるための凝縮器32と、熱交換型水タンク4における水Wを蒸発させて化学蓄熱材21に供給する蒸発器31とによって構成されている。反応器2は、蒸発器31を介して熱交換型水タンク4と接続されているとともに、凝縮器32を介して熱交換型水タンク4と接続されている。
熱交換器25と熱交換型水タンク4とは、熱交換型水タンク4内の水Wを熱交換器25との間で循環させるための循環経路51によって接続されている。循環経路51には、水Wの圧力を高めて、熱交換型水タンク4における飽和蒸気温度を高めるためのポンプ52と、ポンプ52によって高められる水Wの圧力を目標とする圧力に調整するための調圧バルブ53とが設けられている。
【0022】
本例の熱交換器25は、反応器2と一体的に形成されている。反応器2には、化学蓄熱材21に接触する水(水蒸気)Wが流れる水蒸気配管54と、熱交換器25に接触する水(液体)Wが流れる水配管としての循環経路51とが接続されている。反応器2と熱交換型水タンク4とは、蒸発器31又は凝縮器32を介して水蒸気配管54によって接続されており、ポンプ52及び調圧バルブ53を介して循環経路51によって接続されている。
【0023】
自動車においては、外気を車室内60に取り込むための外気用の空調配管と、車室内60の内気を循環させるための内気用の空調配管とが形成されている。本例の化学蓄熱空調システム1を構成する空調配管6は、内気用の空調配管を用いて形成されている。空調配管6において、反応器2及び熱交換器25が配置された位置よりも上流側には、空気Aを送風するブロワ63が配置されている。
エンジンの稼動時に空調装置によって車室内60の空調を行う場合、及びエンジンの停止時に化学蓄熱空調システム1によって車室内60の空調を行う場合のいずれにおいても、ブロワ63を作動させて車室内60の空気Aを循環させることができる。
【0024】
図1に示すごとく、空調配管6は、ブロワ63から自動車の車室内60へ空気Aを導く第1配管部61と、反応器2及び熱交換器25が内部に配置され、第1配管部61から分岐して、反応器2及び熱交換器25に接触した空気Aを、第1配管部61に再び合流させることが可能な第2配管部62とによって構成されている。第1配管部61内には、蒸発器31に接続された冷却用熱交換器311が配置されており、第2配管部62内には、反応器2及び熱交換器25が配置されている。
図3に示すごとく、第1配管部61内を流れる空気Aは、冷却用熱交換器311に接触させることにより、冷却用熱交換器311における気化熱によって冷却することができる。
【0025】
図1〜
図3に示すごとく、第1配管部61に対して第2配管部62が分岐する位置には、ブロワ63によって送風される空気Aの流量を、第1配管部61と第2配管部62とに適宜割合で分配するよう構成された分配手段64が配設されている。分配手段64は、ダンパによって形成されている。
第2配管部62は、第1配管部61から分流される空気Aを反応器2及び熱交換器25に接触させた後、外部へ排気するための排気経路65が形成されている。第2配管部62において排気経路65の入口部には、第1配管部61を、第1配管部61に合流させるか又は排気経路65に接続するかの切換弁66が配設されている。
【0026】
化学蓄熱空調システム1は、
図1に示すごとく、エンジンの稼動時に、上記余剰エネルギーを利用して反応器2における化学蓄熱材21の脱水反応を行い、脱水された水Wを熱交換型水タンク4に回収して、蓄熱動作を行うよう構成されている。また、化学蓄熱空調システム1は、
図3に示すごとく、エンジンの停止時に、熱交換型水タンク4内の水Wを蒸発器31によって蒸発させ、この水Wを用いて反応器2における化学蓄熱材21の水和反応を行い、暖房動作又は冷房動作を行うよう構成されている。また、化学蓄熱材21の水和反応を行う際には、熱交換型水タンク4における圧力が、蒸発器31における圧力よりも高いことにより、この圧力差を利用してポンプ等の動力源を用いずに、熱交換型水タンク4から蒸発器31へ水Wを供給するよう構成されている。
【0027】
本例の化学蓄熱空調システム1においては、化学蓄熱材21の脱水反応完了直後に反応器2に残された顕熱を有効に利用する工夫をしている。
化学蓄熱空調システム1においては、熱交換器25が一体化された反応器2と、熱交換器25、蒸発器31及び凝縮器32に対して熱交換可能な熱交換型水タンク4とを用いる。
そして、
図2に示すごとく、化学蓄熱材21の脱水反応完了
後には、化学蓄熱材21の脱水反応
時に反応器2に残存する熱を熱交換器25を経由して熱交換型水タンク4に蓄熱する。これにより、反応器2に残存する顕熱を有効に蓄熱することができる。また、水和反応時の反応温度よりも高温に、脱水反応によって加熱された反応器2を、迅速に適切な温度まで低下させることができる。
【0028】
また、反応器2に残存する顕熱を熱交換型水タンク4に蓄熱する際には、ポンプ52及び調圧バルブ53によって、熱交換器25から熱交換型水タンク4に回収される水Wの圧力を高める。そして、水Wの圧力が高められることにより、熱交換型水タンク4における飽和蒸気圧力及び飽和蒸気温度が高められる。これにより、熱交換器25から熱交換型水タンク4への熱移動効率と、熱交換型水タンク4における蓄熱効率とを高めることができる。
【0029】
また、化学蓄熱材21の水和反応時には、熱交換型水タンク4に蓄熱した熱を、蒸発器31の熱源として用いる。これにより、蒸発器31に必要となる熱源を容易に確保することができる。また、水和反応時には、熱交換型水タンク4への蓄熱によって反応器2の温度が適切な温度まで低下している。そのため、化学蓄熱材21の水和反応によって生じる熱を用いて空調配管6を通過する空気Aの温度調整を行う際に、反応器2に接触する空気Aが過剰に加熱されてしまうことを防止することができる。これにより、車室内60へ供給する空気Aの温度調整を大きな温度変動を伴うことなく適切に行うことができる。
【0030】
それ故、本例の化学蓄熱空調システム1によれば、化学蓄熱材21の脱水反応後に、反応器2に残存する顕熱を有効に蓄熱することができ、化学蓄熱材21の水和反応時に、空気Aの温度調整を適切に行うことができる。