【実施例1】
【0009】
本実施例では、指の輪郭位置を測定する手段を備えた指静脈認証装置の例を説明する。
図1 (a)は、本発明の第一の実施形態の認証システムの構成図である。
図1 (b)は認証システム内のメモリ12と記憶装置14の内部を示す図である。
認証システムは、個人認証に必要な画像を取得するための指静脈データ取得装置2、画像入力部18、認証処理部10、記憶装置14、表示部17、情報入力部19、音声出力部6及び電源部15を含む。
指静脈データ取得装置2の筺体表面には、血管画像を取得する指を提示される指提示領域7が形成され、この指提示領域7は、指静脈撮影用の光源50、指位置測定用の光源部60、撮像装置4、指を提示するための指置き台5から構成される。
また、指提示領域7の一部には、
図17に示すように指の先端側を提示可能な先端提示領域8と、指の根元側を提示可能な根元提示領域9とが指置き台5と一体に設けられている。本実施例では、開口部20は指との接触を避けるべく、筺体平面上に対して段差を有する構成をなっているが、開口部20の段差をなくし、開口部20、先端提示領域7、根元提示領域8、指置き台5をフラットな一面として一体に形成してもよい。
光源50は、例えば、赤外線発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)であり、指置き台5に形成される指提示領域7上に提示された指1に赤外光を照射する。光源部60は1個または複数個の光源から構成される。光源としては例えば赤外線発光ダイオードを用いる。また携帯電話等の液晶画面内蔵の端末に組み込んで用いる場合は、液晶画面上から出力される光を光源として用いてもよい。撮像装置4は、提示された指1を撮像する。
画像入力部18は、撮像装置4で撮像された画像を、処理部として機能する認証処理部10へ入力する。尚、画像入力部18において、撮像装置4で撮像された画像から血管パターン像を抽出する処理を行い、抽出した血管パターン画像を認証処理部10に入力する構成としても良い。
また、この画像入力装置18と指静脈データ取得装置2とを一体として、血管画像抽出装置として構成しても良いし、画像入力装置18は認証処理部10と一体として構成されていても良いことは言うまでもない。
認証処理部10は、中央処理部(Central Processing Unit:CPU)11、メモリ12、種々のインタフェース(Interface:IF)13を含む。CPU11は、メモリ12に記憶されているプログラム100を実行することによって各種処理を行う。メモリ12は、CPUが実行する認証プログラム100を一時的に記憶する。また、メモリ12は、画像入力部18から入力された画像を記憶する。インタフェース13は、認証処理部10の外部の装置と接続されている。具体的には、インタフェース13は、指静脈データ取得装置2、記憶装置14、表示部17、情報入力部19、音声出力部6、画像入力部18等と接続する。
記憶装置14は、利用者の登録データ30とプログラム100を予め記憶している。登録データ30は、利用者を照合するための情報であり、例えば、指静脈パターンの画像等である。指静脈パターンの画像は、指の掌側の皮下に分布する血管(指静脈)を暗い影のパターンとして撮像した画像である。
表示部17は、例えば、液晶ディスプレイ等であり、認証処理部10から受信した情報を表示する。情報入力部19は、例えば、キーボード等であり、利用者から入力された情報を認証処理部10に送信する。音声出力部6はスピーカ等であり、認証処理部10から受信した情報を、音声で発信する。電源部15は、乾電池や外部電源であり、指静脈データ取得装置2や認証処理部10が駆動するための電力を供給する。
本認証システムでは、利用者が指静脈データ取得装置2に指1を提示すると、指位置測定用の光源部60から光が照射され、撮像部4にて画像が撮影される。撮影された画像は認証処理部10内に取り込まれ、認証処理部は入力された画像を元に指1の提示位置を算出する。
指位置測定が完了すると、静脈撮影用の光源50が点灯し、指の静脈画像が撮影される。光源50は指1に対して光を照射する。照射された光は指1の内部で散乱し、指1を透過した光が撮像部4に入射する。入射した光は撮像部4により電気信号に変換され、画像として認証処理部10に取り込まれる。取り込まれた画像はメモリ12に記憶される。
次に、記憶装置14に保存されている登録データ30とプログラム100が記憶装置14よりメモリ12に格納される(
図1 (b))。また、CPU11はメモリ12に格納されたプログラム100に従って、入力画像から認証データ40を作成し、登録データ30との照合を行う。
照合処理では、認証処理部10で求めた指提示位置の結果を元に、登録データと認証データとの位置ずれを補正する。その後、登録データと認証データとの相関を求める。求めた相関の値に応じて登録されているデータと一致するかを判定する。この判定結果を利用して個人を認証する。認証結果は表示部17に表示を行う、または音声出力部6から音声で知らせる。
【0010】
図2は第一の実施例における、指静脈データ取得装置2の外観を示す図である。
図2 (a)は指静脈データ取得装置2の上面図、
図2 (b)は装置2に指を提示したときの上面図、
図2 (c)は
図2 (b)のA−A‘断面図、
図2 (d)は
図2 (b)のB−B’断面図である。
【0011】
指静脈データ取得装置2の上面には、利用者が認証対象の指を提示するための指置き台5が設けられている。指置き台5の中央には開口部20が設けられている。開口部20には、開口部20を覆うように赤外透過フィルタ21を設置しても良い。赤外透過フィルタ21を設けることで、赤外光以外の不要な光が装置内に進入するのを防ぐことが出来る。また、ほこりやごみなどの異物が装置内に入るのを防ぐことが出来る。フィルタ21は指置き台5よりも数ミリ程度低い位置に設置し、指1とフィルタ21が接触しないようにすると良い。これにより、指の押し付けによって血管パターンが消えたり、変形したりするのを防ぐことができる。またフィルタ21に汚れが付着するのを防ぐことができる。
【0012】
開口部の周囲には指静脈撮影用の光源50が設置されている。さらに、開口部20の直下には、撮像部4が設置されている。指1が提示されると、一または複数の光源素子から成る光源50が指1に赤外光を照射する。照射された光は指内部に到達するとあらゆる方向に散乱する。指内部で散乱した光の一部は開口部20の上方付近に到達し、さらにその一部は指の内部から指の外部に向け進行する。この光は開口部20、フィルタ21を通り抜け、撮像部4によって撮影される。この光は指1の内部から指1の掌側の表面を透過しているため、静脈部分を通り抜けたために減衰された弱い光と、静脈のない部分から抜け出た減衰していない強い光とのコントラスト差を持っている。従って、この光を撮像すると、その映像には開口部20の真上に位置する部分領域の指静脈パターン画像が映し出される。これにより指1の指静脈パターンが獲得される。
【0013】
開口部20の上方に位置する指1の部分領域、すなわち被撮像部分の指静脈パターンを鮮明に撮影するためには、以下の光学的な条件を満たす必要がある。まず、指外部から被撮像部分の皮膚表面に照射された光の反射光が撮影されないようにすること、すなわち、指静脈の存在する深さまで到達していない散乱光が撮影されないようにすることである。この条件が満たされない場合、指静脈パターンの情報を持たない光が指静脈部分とそれ以外の生体組織とのコントラストを低下させる。さらに、指表面のしわなどの不要な映像が鮮明に映り込んでしまうため指静脈パターンが見えにくくなる。そこで、本実施例では開口部20の大きさは指1の幅、長さより小さくし、利用者が指1を提示した際に、開口部20が指1で完全に覆われるようにする。これにより指を透過しない光が、直接装置内に進入するのを防ぐことができる。開口部20を狭くし撮影範囲を狭めることで、カメラと被写体との距離を近づけることが可能になる。つまり、開口部20を狭くすることは、静脈データ取得装置2を薄型にする効果もある。
【0014】
静脈撮影用の光源50の設置位置は、指1の提示される領域(指の長軸方向)の左右側である。さらには、開口部20の周囲の4方に光源50を設ければ、より満遍なく光を照射させることができる。また、開口部から取り込む透過光の光量を増大させたい場合は、対角上に設けられた光源50を、開口部20側に向き合うように照射させてもよい。
【0015】
設置する高さは、指置き台5と同じ高さまたは指置き台5よりも低い位置とする。また光源50の設置角度αは指提示領域7側に0度<α<90度の範囲とし、斜め上に向けて光を照射する(
図2 (d))。
【0016】
以上のように、光源の設置位置を低くすることで装置を薄型にすることができる。また、指の左右側に斜め上に傾けて設置することで、指の高い位置に光を照射できるため、鮮明な静脈画像が撮影できる。尚、光源の設置位置は、指1の指幅より外側に設置することが望ましい。これにより、指1の上半面、すなわち指の甲側に光を照射できる。もし、光源を指幅より内側に設置してしまうと、指1の指の下反面、すなわち指の掌側に光が照射されるため、撮像画像の鮮明度が低下する。
【0017】
指置き台5の内部にはタッチセンサを設けても良い。これによって利用者の指が提示されたことを容易に検知することができる。
【0018】
開口部の両側には指位置測定用の光源部60が設置されている。光源部60は複数個の光源から構成されている。複数個の光源は、指1の指幅方向に一列に並べて設置されている。また、
図2 (c)で示すように、光源部60内の光源は真上に向けて設置されている。これらの光源は、
図2(a)のように指置き台5上全体に、隙間無く並べることが好ましい。光源を広範囲に配置することで、指の提示位置が左右に大きくずれた場合でも指の提示位置の測定が可能になる。また太い指の提示位置検知ができるようになる。光源を隙間なく隣り合う光源同士が接するように並べることは、指位置測定の分解能を向上する効果がある。
【0019】
次に、光源部60を形成する複数の光源の配置について
図17を用いて説明する。
図17に矢印で示すように、先端提示領域8と根元提示領域9とを結ぶ向きを縦方向(提示軸)と定義した場合、光源部60を形成する複数の光源は、横方向に横列に配置されている。提示される指1を基準に言い換えれば、指の長手方向に対して、短手方向に複数の光源が配置されている構成である。
【0020】
横列は、縦方向(提示軸)と垂直であることが望ましいが、本発明の効果を得るには、少なくとも縦方向の提示軸と、複数の光源の配列軸また当該配列軸の延長線とが交差するように配列されていればよい。
【0021】
また、
図17に示すように複数の光源は、開口部20を介して両側に、夫々第1光源郡、第2光源郡として形成されている。
以下では
図5を用いて、CPU11が実行するプログラム100で実施される登録処理手順の一実施例について説明する。登録処理では、はじめに、装置に指が提示された(載せられた)か否かを判定する指提示検知処理(S101)を実施し、指が提示された場合には、光源部60を用いて、指の位置を測定する(S102)。その後、適切な光量を光源50から照射するための光量調整処理(S103)を実施する。光量の調整完了後、パターン抽出処理(S108)、特徴データ作成処理(S109)を行う。最後に、特徴データを記憶装置14に保存し、登録処理が完了する。言い換えるなら、CPU11は特徴抽出手段、特徴照合手段のみならず、光量制御手段や、指の位置を測定する手段としても機能する処理部である。
以下では、上記登録フローの詳細について記す。
【0022】
はじめに、指提示検知処理(S101)について説明する。指提示検知処理は装置2に指が乗せられたか否かを判定する処理である。判定の方法には、指置き台5内部に設置されたタッチセンサを用いる方法や、画像処理による方法、タッチセンサと画像処理を組み合わせる方法などを用いることができる。
【0023】
ここでは画像処理による方法の一例について述べる。画像処理による方法は指検知専用のセンサが不要になるため部品点数を減らしコスト削減ができる利点がある。まず、指静脈パターン撮影の照明として用いられる前述の光源50を一定周期で点滅させる。指置き台5の上に指1が提示されていない場合、光源50が点灯しても消灯しても、光を散乱する物体が無いため、光源50から発せられた光は撮像部4に映り込むことはない。従って、光源50が点灯している状態と消灯している状態における撮像部4の画像の比較を行った場合、その輝度値には大きな変化はない。
【0024】
一方、指1が装置上に提示された場合、光源50から照射された光は指1により散乱し撮像部4に映り込む。従って、光源50が点灯している状態と消灯している状態との画像の輝度値に大きな変化が生じる。そこで、点灯時と消灯時に撮影した画像の変化量を、画像入力部18を介して認証処理部10に送り、CPU11で計算し、保持することで、指の提示を検知することが可能である。
【0025】
指の提示が検知されると指の提示位置測定処理が実施される。以降では
図3、
図4を用いて指の提示位置測定の原理を説明する。
【0026】
上述の通り、静脈データ取得装置2には指位置測定用の光源部60が設置されている。光源部60は複数個の光源61〜70から構成されている。光源61〜70は
図3(a)で示すように指置き台5の下に一列に等間隔に並べて配置されている。また、光源61〜70は指置き台5の上面に対し垂直になる向きで設置されている。
【0027】
図3(a)は光源部60に含まれる光源うち、指1の直下にある光源68を点灯したときの光の進路を示す図である。
図3(b)は指1の輪郭よりも外側に設置された光源70を点灯したときの光の進路を示す図である。
【0028】
図3(a)で示すように、指1が指置き台に置かれた状態で光源68を点灯すると、指1に対し光が照射される。指1に照射された光は、指1内部に到達するとあらゆる方向に散乱する。散乱した光の一部は開口部20を通過し、撮像部4によって撮影される。撮像部4で撮影された画像の一例を
図3(c)に示す。光源68からの光が、指1を介して撮像部4に到達するため、撮影される画像の輝度値は、指1が置かれていないときの画像の輝度値と比べて高い値を示す。一方、光源70を点灯した場合、光源70の上方に指1は存在しないため、指1に光は当たらない(
図3(b))。そのため、光源70が発した光が撮像部4に映りこむことが無い。光源70を点灯したときに撮影される画像は
図3(d)のように輝度の低い画像となる。従って、光源61〜光源70を順次点灯し、撮像部4で撮影される画像の輝度を確認することにより、各光源の上方に指が存在するかどうかを判定することができ、指の輪郭位置の検出も可能となる。
【0029】
図4を用いて、指の輪郭位置の特定方法をより詳細に説明する。
図4(a)は静脈データ取得装置2の断面図である。
図4(b)は、指1が
図4(a)のように提示された状態で、光源61〜光源70を点灯し撮影した画像の輝度値と、光源61〜光源70の位置との関係を示すグラフである。横軸が光源の位置であり、縦軸が画像の輝度値を示す。なお、
図4では、指位置測定用の光源61、光源62・・・、光源70の設置位置を、それぞれx
1、x
2・・・、x
10で表す。詳細は後述するが、各光源は指の輪郭位置の判定、すなわち指置き台5に配置された指の位置の検出に用いられるため、各光源の光軸が、少なくとも指の提示される提示空間(各図で示している指1が提示されている空間)では交わらないように配置されている。より厳密に配置するためには、各光源の光軸が、指置き台5の平面に対して垂直方向に向かうよう配置されていることが望ましい。
【0030】
また、指置き台5の平面に対して、各光源の照射軸を開口部20が配置される側と反対側に傾けて配置してもよい。言いかえれば、
図2(b)にて説明した角度αの値が90度<α<180度となるように配置する。この構成により、指の提示位置を検出する領域は垂直に配置した時と同等に確保しつつ、光源の配置スペースは狭くすることができるため、より装置薄型、小型にすることができる。
図4(b)グラフを見ると、光源62〜光源68を点灯したときに撮像画像の輝度値が高くなり、光源61、光源69、光源70を点灯すると撮像画像の輝度値が低くなることがわかる。このことから、光源62〜光源68が設置されている位置、すなわちx
2からx
8の範囲に指1が提示されていると判定できる。このとき、指の左右の輪郭はそれぞれ指からの距離が最も遠いx
2とx
8の位置にあると検出し、指輪郭位置を判定することができる。
指の輪郭位置の判定方法は、
図4(b)のように指の有無を判定するための閾値を輝度値に設けてもよいし、前後の光源、例えばx
2であれば、x
1やx
3における輝度値との変化率に閾値を設けても良い。
また、本実施例では主に、開口部20の両側に光源部60が配置された構成について説明するが、実施例5にて詳細後述するように、開口部の片側だけに光源部60を配置してもよい。例えば、光源部60のうち、光源61〜65のみを配置して、光源66〜70が配置される側には、指の位置合わせを行うための仕切り等の目印を所定位置に配置する。
【0031】
以上のように、光源を点灯したときの輝度値と光源の位置とを測定することで、提示された指の輪郭位置を特定することが可能である。
本発明では、指1の位置を特定するために画像の輝度値に注目する。ここで、輝度値は、撮影された画像全体の平均輝度を見てもよいし、
図3(c)の破線で囲んだ領域28のように部分領域の平均輝度値を利用してもよい。
【0032】
ここで、より高精度、高速に認証を行うべく、平均輝度を算出する領域を、光源からの光によって輝度が大きく変化する画像領域を用いてもよい。
【0033】
たとえば、
図3における領域28付近の画像領域は、より光源に近い部位を撮影している領域であるため、輝度の変化が大きく、撮影される画像は、
図3(c)の例のように、光源68に近い領域(画像の右側領域)の輝度が高く、光源68から通い領域(画像の左側領域)の輝度が低くなる。
【0034】
そこで、この輝度の変化が大きい部分領域の画像の平均輝度値を、輪郭位置を判定するための値として用いれば、指の設置による輝度値の変化がより顕著であるため判定精度を向上させることができる。また、画像全体ではなく部分領域の画像を用いて判定するため、平均輝度値の演算負荷を軽減させることができ、より高速に判定を行うことが可能となる。
図7は指位置検出処理(S102)フローチャートの一例である。指の輪郭位置を検知する際は、初めに、光源部60に含まれる光源のうち1つの光源を点灯する(S1021)。光源iを点灯したときの画像を撮影し(S1023)、所望とする全体画像または一部の画像領域の平均輝度を算出する(S1025)。点灯する光源を変えながら、S1021、S1023、S1025のフローを繰り返す。
光源部60に含まれる全ての光源をタイミングを変えて点灯させ、各光源に対応する輝度値を獲得する。獲得した輝度値が事前に決定した閾値を超えているかどうかを確認することで、対応する光源の上に指があるかどうかを判定する。得られた結果から指の輪郭位置を求める(S1027)。
光源の点灯順序は、開口部20からの距離が長い光源側から、距離が短い光源側へ順に点灯させて光を照射するか、開口部20から近い側の光源から遠い側の光源の順に点灯させ光を照射することが望ましい。光源部60のうち光源61〜65を例として説明すると、光源61,62,63,64,65の順に点灯させるか、逆に65,64,63,62,61の順に点灯させる。装置全体の小型化を鑑みれば、指提示領域7における指の占める領域が大きくなるため、開口部20からの距離が長い光源側から順次点灯させた方が、指の輪郭位置をより高速に検出することが可能となる。
この点灯方法と、各光源に基づく画像の輝度値や各画像間の輝度値の変化率の演算を並行して行えば、全ての光源を点灯させて全画像を取得せずとも、輝度値や変化率が閾値を超えた段階で、指の有無や輪郭位置を判定することができる。この手法により、より高速に輪郭位置を特定することが可能になると共に、光源による消費電力を軽減させることが可能となる。
さらに高速に指の有無や輪郭位置を判定する場合には、開口部21を介して配置される左右両側の光源郡の夫々を、並行して順次点灯させてもよい。
本点灯方法の説明のため、光源61〜65を第1光源郡、光源66〜70を第2光源郡として説明する。
まず、撮像部4で撮影された画像を、第1光源郡に近い側の指を撮影した第1画像領域と、第2光源郡に近い側の指を撮影した第2画像領域の2つに分割する。
次に、第1画像領域の輝度値は、第1光源郡の光源に起因する輝度値と見なし、光源61〜65夫々を点灯した際の台1画像領域の輝度値を算出し、上記の方法で指の有無、輪郭位置を判定する。同様に、第2画像領域の輝度値は、第2光源郡の光源に起因する光源と見なして、同様の判定を行う。
このように、左右両側の光源郡を並行して別々に制御し、画像処理の演算も別々に処理する事で、より高速に指の有無や輪郭位置の判定を実行することが可能となる。
処理フローS1021では、全ての光源で同一の明るさを点灯することが望ましい。光源毎に明るさが異なっていると、指に光が当たらなくて輝度が下がっているのか、その光源の発光量が低くて輝度が下がっているのかの区別がつかなくなるためである。しかし、光源としてLEDを利用した場合、LEDの個体差によって、同じ電流を流しても、異なる明るさで発光してしまう場合がある。そこで、事前に、全てのLEDのばらつきを調査し、全てのLEDで、同じ明るさを発光できるよう、LED毎に、流す電流の量を決めておくとよい。
指提示位置測定処理(S102)が完了すると光源50から静脈撮影の照明用の光が出力される。提示される指の太さや皮膚の厚みなどによって、静脈撮影に必要な光量は異なる。そこで、最も鮮明な画像が得られるように静脈撮影用光源50の光量を調整する(S103)。指静脈の撮影では、撮像画像の平均輝度値が輝度諧調の中心付近の値になっている場合に、鮮明な静脈の画像を得ることができる。例えば、画像の平均輝度が低すぎるときは、血管とそれ以外のコントラストが悪いため、鮮明ではない。逆に平均輝度が高すぎるときは、飽和している部分が発生し血管パターンを抽出できない。つまり、光量調整処理(S103)では、輝度諧調の中央値を目標輝度値とし、撮像画像の平均輝度値が目標値に近づくように光量を調整する。この光量調整手法として、本実施例では、画像の平均輝度値を常に監視し、その値に応じて光量をフィードバック制御しながら目標輝度値に近づける手法を用いる。
図15に光量調整処理(S103)のフローチャートの一例を示す。光量調整処理では、まず、あらかじめ設定しておいた初期光量値L0で光源50を点灯させる(S1031)。初期光量L0は、標準的な指を置いたときに目標輝度値の画像が撮影可能になる光量値を予め測定し、その値を設定しておく。次に、撮像部4で画像を撮影する(S1032)。この画像の平均輝度値V0を算出する(S1033)。算出した平均輝度値V0が、目標輝度値であるか判別する(S1034)。目標輝度値に達していない場合は、次の光量値Lnを再設定し、光源50を点灯する(S1035)。次の光量値Lnの算出は、光量値と撮像画像の平均輝度値とが比例関係にあるという特徴を利用して行なう。光量値再設定後、画像撮影(S1032)、平均輝度値算出(S1033)、平均輝度値の判定(S1034)を再度実施する。このフローを繰り返し、目標の輝度値に近づけていく。S1034の平均輝度値の判定で目標輝度値に達した場合は、光量調整を完了する。なお、光源50の光量を制御するためには、光源部60に供給する電力を制御すれば良い。電力制御方法としては、たとえば、例えば、パワートランジスタを用いた、PWM(Pulse Width Modulation)等の高速なスイッチング制御が利用できる。
【0035】
次に、血管パターンの抽出処理を実施する(S108)。血管パターンの抽出処理(S108)とは、撮像部4で撮影した画像から、認証に不要な情報(ノイズやしわなど)を除外し、血管パターン部分を検出する処理である。血管パターンの抽出方法として、線分を強調するエッジ強調フィルタやマッチドフィルタを用いる方法、線成分を追跡することで線パターンを抽出する方法、画像の断面プロファイルにおける輝度値の局所的な窪み位置を抽出する方法などを用いることができる。
【0036】
その後、抽出した結果から特徴データを作成する(S109)。特徴データとして、特徴抽出処理結果の画像そのものを特徴量とする方法、分岐点や端点を検出する方法などを用いることができる。画像そのものを特徴量とする場合は、データサイズを小さくするために、特徴抽出後の画像に縮小処理を適用してもよい。抽出した血管パターンの形状を特徴データとして利用する場合は、抽出後のパターンを細線化し、全ての血管幅を同一幅に揃えても良いし、血管幅を変更せず、血管幅の情報を残した状態で特徴データを作っても良い。血管幅を細線化した場合、認証時の環境変化により血管が収縮、拡張した場合でも、登録時と同じ血管幅のパターンを生成できるため、環境変化に強い認証装置を実現できる。一方、血管幅を正規化せず、血管幅の情報を残したままで特徴データを生成すると、個人識別のための情報量が増えるため、他人受入れの起こりにくい高精度な認証装置を実現できる。なお、血管幅情報を利用して認証を行うと、血管が収縮した際に同一指を誤って別指と判断する可能性があるため、これを回避する対策を追加すると良い。例えば、特徴抽出処理後の画像を元に、血管パターンの線幅を一定の割合で細くした画像を生成し、これを登録データに含める方法がある。このような登録データを作った場合、認証処理では、通常の血管幅の血管パターンと画像処理で血管幅を細くした血管パターンの両方と照合を行い、いずれかの血管パターンとの一致率が高くなれば本人と判定する。以上のように、画像処理によって、血管幅を変更した血管パターンを生成し、登録することで血管幅の変動に強い認証が可能になる。 登録データの保存処理(S110)では、特徴データ作成処理(S109)で生成した特徴データと、指位置測定処理(S102)で算出した指の提示位置情報とを記憶装置14に保存する。指の位置情報としては、指の右側の輪郭位置と左側の輪郭位置とを保存してもよいし、輪郭位置情報をもとに算出した指の中心位置を保存してもよい。また、保存する前に特徴データに対し暗号化処理を施しても良い。
【0037】
以下では
図6を用いて、プログラム100で実施される認証処理手順の一実施例について説明する。
【0038】
認証処理では、指提示検知処理(S101)、指位置測定処理(S102)、光量調整処理(S103)、パターン抽出処理(S108)、特徴データ作成処理(S109)を行う。その後、事前に登録されている特徴データとの照合処理(S112)を実施し、認証対象の指が登録されている指か否かを判定する。
【0039】
上記の認証処理の処理手順のうち、指提示検知処理(S101)、指位置測定処理(S102)、光量調整処理(S103)、パターン抽出処理(S108)、特徴データ作成処理(S109)の5つの処理は、登録処理と同様の手法を用いる。以下では照合処理(S112)について述べる。
【0040】
照合処理(S112)では、認証処理中の特徴データ生成処理(S109)で生成した特徴データと、登録時に作成、保存した特徴データとを比較照合する。画像そのものを特徴データとしている場合では、画像同士を重ね合わせ、画素値同士の比較を実施して一致率を計算する。分岐点や端点を特徴データとしている場合はそれらの個数、分岐線の角度、相対的な距離などの情報を比較することで一致率を算出する。ここで得られた一致率を用いて、同一指であるか別指であるかを判定する。判定するための認証閾値は事前に統計的に算出しておくことが可能である。認証閾値よりも高い一致率となった場合は登録者と判定し、低い場合は登録されていない指が提示されたとみなし認証を拒否する。
照合処理(S112)で一致率を算出する際、登録時の指の提示位置と認証時の指の提示位置がずれていると、撮像画像中の静脈パターンの位置がずれてしまうため、同一指であっても一致率が低下し、誤って別指と判定されることがある。このような誤判定を防ぐためには、登録時と認証時の位置ずれ量を算出し、位置補正を行うことが重要になる。そこで登録処理時に保存した指の提示位置情報と、認証処理中の指位置測定処理(S102)で算出した指の提示位置情報とを比較し、位置ずれ量を求める。求めた位置ずれ量に合わせて、認証時の特徴データの位置を補正する。これにより、登録時と認証時の指の提示位置がずれた場合でも高精度な認証を行うことができる。なお、位置ずれ補正は上述のように特徴データに対して施してもよいし、パターン抽出処理前の入力画像に対して施しても良い。
照合処理(S112)の上記と別処理方法を
図18を用いて説明する。
まずこの方法では、登録データの画像領域は、認証処理時に撮影される画像よりも広い画像領域(例えば、指の輪郭も含むような指全体の画像)にて取得しておく。さらに、この登録データの画像領域は、複数の画像領域に分割して保存されており、各分割画像が、筺体の指提示領域のどの提示位置にて撮影された画像なのかが対応づけられている。尚、分割画像は予め保存しておいてもよいし、認証処理時に登録画像を読み出した際に分割画像を作成してもよい。広い画像領域の登録データを作成する方法としては、開口部20を大きいサイズに変更した登録時専用の静脈画像撮影装置2を作成し、登録時のデータを登録時専用装置2にて撮影する方法がある。登録データの撮影は、認証装置を初めて使う際に一度だけ行う処理なので、登録時専用の静脈画像撮影装置2のサイズが大きくても利用者の利便性を落とすことは無い。広領域を撮影した登録データを生成する別の手法としては、登録処理時に、利用者に複数回指を提示させ、指位置検出処理(S102)で算出した位置情報と、特徴データ生成処理(S109)にて生成した特徴データとを対応づけて保存する方法がある。利用者が指を置きなおしながら複数回撮影することで、撮影領域位置の異なる画像が複数枚撮影できるため、上述のような、分割画像と指の提示位置とが対応づけられた登録データ群を構築できる。
【0041】
登録者であると判定された場合は、認証後の処理として例えばロックの解除等を行う(S114)。