(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の車両用格納シート装置において、上記オープンレバーは、スライドレールのアッパレールとロアレールのいずれか一方に枢着され、上記キャンセルレバーと解除レバーは、他方に枢着されていて、該オープンレバーとキャンセルレバーは、アッパレールがロアレールに対して最も後退したリヤモスト位置で互いに係合可能である車両用格納シート装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明による車両用格納シート装置の全体構成及び大略の格納操作を示している。車両の後席には、後部シート100が備えられている。この後部シート100は、シートレール10上に、シートクッション21と、このシートクッション21の後部の軸22に枢着されたシートバック23を備えている。シートバック23は軸22を中心に使用位置と前倒位置との間を回動可能である。軸22中心のロック機構の有無及びその構成は問わない。シートレール10は、シートクッション21下面に固定されたアッパレール11と、このアッパレール11に摺動自在に嵌めたロアレール12を有し、ロアレール12の前部には、軸13で連結リンク14の一端部が枢着され、後部にはストライカ15が固定されている。連結リンク14の他端部は、軸16で車両床面18の足置き凹部17に枢着されている。
【0012】
車両床面18側には、ロアレール12の後部に固定したストライカ15を把持開放(ロック/ロック解除)する使用位置ロック機構30が固定されていて、使用位置ロック機構30には(第1の)リリースレバー31が備えられている。
【0013】
一方、シートバック23には、操作レバー24が支持されており、シートレール10には、解除リンク群40が支持されている。操作レバー24は、シートクッション21またはシートバック23に対して上下方向に移動自在に支持されている。
【0014】
この操作レバー24と解除リンク群40の間は、解除ワイヤ25によって接続されていて、操作レバー24が引き上げられると、解除ワイヤ25を介して解除リンク群40が動作し、リリースレバー31を介して使用位置ロック機構30によるストライカ15のロックが解除される。
【0015】
操作レバー24が引き上げ操作され、使用位置ロック機構30によるストライカ15のロックが解除されると、シートクッション21と、シートクッション21上に折りたたんだシートバック23の全体を、軸13及び軸16を中心とする連結リンク14の揺動動作により、足置き凹部17内に格納することができる。使用位置ロック機構30を車両床面18側に設けたので、シートクッション21及びシートバック23全体の重量が軽減され、シート格納操作が容易になる。
【0016】
図2ないし
図9は、以上の基本動作の車両用格納シート装置を実現するための具体的な第1の実施形態である。シートレール10のアッパレール11には、第1ブラケット11aが固定されており、この第1ブラケット11aに、軸41aと軸42aで第1(第1の)オープンレバー41と第2(第2の)オープンレバー42が枢着されている。第1オープンレバー41には、一端部を操作レバー24に接続した解除ワイヤ25の他端部が結合されている。解除ワイヤ25の他端には球形または円柱形の係合部材(玉止め)25aが固定されていて、係合部材25aが第1オープンレバー41のワイヤ係合部41dに係合されている。第1オープンレバー41と第2オープンレバー42は、第1オープンレバー41の径方向開放溝41bに第2オープンレバー42のピン42bを係合させたもので、第1オープンレバー41の回動が予め定めた回動角比率で第2オープンレバー42に伝わる。第2オープンレバー42はトーションばね42cによって
図2の時計方向(第1オープンレバー41が解除ワイヤ25を引く方向)に回動付勢されている。第2オープンレバー42のトーションばね42cの強さは、通常使用状態において解除ワイヤ25を弛み無く張った状態に保持する強さである。第1オープンレバー41と第2オープンレバー42は一部材(一体)とすることもできる。この場合、一部材のオープンレバーは、解除ワイヤ25が引かれたときに
図2の反時計方向回動する構成にする。
【0017】
シートレール10のロアレール12には、第2ブラケット12aが固定されており、この第2ブラケット12aに、軸43でキャンセルレバー44と解除レバー45が同軸に枢着されている。キャンセルレバー44は、第2オープンレバー42の先端の運動伝達部42pと係脱する連動ピン44aを有し、トーションばね44bによって、運動伝達部42pから離間する方向(
図2の時計方向)に回動付勢されている。解除レバー45は、その自由端部の押圧部45pが使用位置ロック機構30のリリースレバー31(被押圧部31b)と係合するもので、引張ばね45aにより押圧部45pがリリースレバー31から離れる方向(
図2の反時計方向)に回動付勢されて、図示しないストッパに当接して停止している。キャンセルレバー44には、該キャンセルレバー44の
図2の時計方向の回動を解除レバー45に伝達する運動伝達突起44cが形成されている。引張ばね45aが解除レバー45を反時計方向に回動付勢する付勢力は、トーションばね44bがキャンセルレバー44を時計方向に回動付勢する付勢力よりも強く設定されているので、解除レバー45は、自由状態では、
図2に示すように、側面視でロアレール12の一部を構成する第2ブラケット12aの内側(背面)において図示しないストッパに当接した初期位置(ロック機構解除準備位置)に保持されている。
【0018】
以上のように、第1オープンレバー41と第2オープンレバー42はアッパレール11側に枢着され、キャンセルレバー44と解除レバー45はロアレール12側に枢着されているので、第2オープンレバー42(の運動伝達部42p)とキャンセルレバー44(の連動ピン44a)は常時係合する位置関係にはなく、アッパレール11とロアレール12の特定のスライド位置でのみ係合可能である。この実施形態では、この特定のスライド位置は、アッパレール11がロアレール12に対して最も後退したリヤモスト位置(最後退位置)としている(
図2のスライド位置)。アッパレール11がリヤモスト位置以外の位置に移動した状態では、
図5に示したように、第2オープンレバー42(の運動伝達部42p)とキャンセルレバー44(の連動ピン44a)が前後方向(
図5の左右方向)に離反しているので、第2オープンレバー42を回動させてもキャンセルレバー44は動かない空振りが生じ、ロック解除されない。言い換えると、シートクッション21がリヤモスト位置に位置しているときのみ使用位置ロック機構30のロック解除操作が可能な構成である。この構成により、使用位置ロック機構30は、シートを格納するときに前のシートに干渉する位置、またはシートバック23をシートクッション21上に折り畳めない位置にシートクッション21が移動しているときにロック解除動作できない。
【0019】
図6乃至
図9は、後部シート100を格納する工程を示す側面図である。
図2の特定スライド位置(リヤモスト位置)において、操作レバー24がロック解除方向に引き上げ操作されると、解除ワイヤ25を介して第1オープンレバー41が時計方向に回動し、第2オープンレバー42が反時計方向に回動して、第2オープンレバー42の先端の運動伝達部42pが連動ピン44aを叩いてキャンセルレバー44を時計方向(ロック解除方向)に回動させ、運動伝達突起44cが解除レバー45を連れ回りさせて、解除レバー45の押圧部45pがリリースレバー31の被押圧部31bを叩き、使用位置ロック機構30によるストライカ15のロックが解除される(
図6参照)。
【0020】
第2オープンレバー42は、ロックを解除した後さらに同方向に回動して、先端の運動伝達部42pが、キャンセルレバー44の連動ピン44aを乗り越える(
図7参照)。運動伝達部42pがキャンセルレバー44の連動ピン44aを乗り越えた瞬間に、キャンセルレバー44はトーションばね44bの回動付勢力により初期位置(
図2の位置)に復帰し、その際引張ばね45aにより解除レバー45が初期位置に復帰する(
図7の二点鎖線)。解除レバー45は、初期位置に復帰すると側面から見てシートレール10内に位置するので、シート格納作業等において他の部材と干渉することがない。
【0021】
その後操作レバー24の引き上げ操作力が開放されて解除ワイヤ25が開放されると、第1オープンレバー41及び第2オープンレバー42は、トーションばね42cの回動付勢力により反時計方向及び時計方向に連動回動して、初期位置(
図2の位置)に復帰する。この回動の際に第2オープンレバー42は、先端の運動伝達部42pとは反対側端面がキャンセルレバー44の連動ピン44aに当接し、トーションばね42cの回動付勢力がトーションばね44bの回動付勢力より強く設定されているので、キャンセルレバー44を初期位置から反時計方向に回動(オーバー位置方向にオーバー回動)させながら、初期位置(ロック機構解除準備位置)まで回動する(
図8)。第2オープンレバー42が初期位置に達する直前に運動伝達部42pがキャンセルレバー44の連動ピン44aを乗り越えて、キャンセルレバー44が、トーションばね44bの回動付勢力によって初期位置に復帰する(
図9)。
【0022】
このように第2オープンレバー42を初期位置(ロック機構解除準備位置)に復帰させることにより、第2オープンレバー42の運動伝達部42pがキャンセルレバー44の連動ピン44aの下方に復帰するので、第2オープンレバー42によって、キャンセルレバー44と解除レバー45を再びロック解除方向に回動させることができる。
使用位置ロック機構30は、
図6乃至
図8のロック解除操作過程から
図9のロック機構解除準備位置において、ストライカ15のロックを解除した状態を維持している。
【0023】
使用位置ロック機構30は、周知のストライカロック機構に、リリースレバー31を付設したもので、車両床面18(車両の構造物)に固定されたロックブラケット32に、軸33aでストライカ15を把持開放するフック33を枢着する一方、軸34aでフック33をロック位置に保持するラチェット34を枢着している(
図2)。ラチェット34は、その長穴34cが、軸36aでロックブラケット32に枢着されたリンクレバー36のリンクピン36cに嵌合されている。ラチェット34は、そのロック部34bがフック33のロック部33bに係合する方向に、フック33との間に張設された引張ばね35により回動付勢されており、ストライカ15がフック33のU字状溝33cに進入してフック33がロック位置方向に回動すると、引張ばね35の付勢力によりロック部34bがロック部33bと係合して、フック33をロック位置に保持している(
図2、
図5)。一方フック33は、ロック位置において、ストライカ15がフック33のU字状溝33cから脱する回動方向(反時計方向)に引張ばね35により付勢されている。
【0024】
リリースレバー31は、ロックブラケット32に軸31aで枢着されており、ラチェット34をリンクレバー36を介してロック位置からアンロック位置に回動させるもので、被押圧部31bとは軸31aを挟んだ反対側の端部に長穴31cが形成されていて、この長穴31cがリンクレバー36のリンクピン36bに嵌合されている。リンクレバー36は、リンクピン36bとは軸36aを挟んだ反対側の端部にリンクピン36cを有し、このリンクピン36cがラチェット34に形成された長穴34cに嵌合されている。
【0025】
リリースレバー31がロック解除方向(
図2、
図6において反時計方向)に回動すると、リンクレバー36が時計方向に回動し、ラチェット34がロック位置からアンロック位置方向に回動して、ロック部33bがロック部34bから離反してアンロック状態になり、フック33がアンロック位置方向(反時計方向)に回動可能になる(
図6)。
【0026】
フック33は、ラチェット34のロック部34bがロック部33bから離反した瞬間に、引張ばね35の付勢力によりアンロック位置方向に僅かに回動して、ロック部34bがロック部33bに係合するのを阻止し、アンロック状態を維持する(
図6、
図7、
図8、
図9)。このアンロック状態で、シートを足置き凹部17内(格納位置)に格納することができる。
【0027】
足置き凹部17内に格納したシートクッション21及びシートバック23の全体が使用位置に戻されると、ストライカ15がU字状溝33cに進入してフック33を引張ばね35の付勢力に抗して(引張ばね35を引き伸ばしながら)ロック位置まで回動させる。ラチェット34は、フック33がロック位置に達すると、引張ばね35の付勢力によりロック位置方向に回動してロック部34bがロック部33bに係合し、フック33をロック位置にロックする(
図2)。
【0028】
本実施形態の車両用格納シート装置のシート格納操作は、次の通りである。使用者は、操作レバー24を把持して引き上げ操作する。すると、使用位置ロック機構30がストライカ15のロックを解除する。使用者は、把持した操作レバー24をそのままさらに引き上げてシート100を持ち上げ、シート100を連結リンク14を軸として前方に揺動させて、足置き凹部17に格納(移動)する。このように本実施形態の車両用格納シート装置によれば、使用者は、操作レバー24を持ち変えることなく一連の動作で、使用位置ロック機構30のロック解除及びシート100の格納操作ができるので、操作性が向上した。
【0029】
本発明の車両用格納シート装置は、使用位置ロック機構30のロック解除を、シートバック23の前倒動作に連動させる構成とすることも可能である。例えば、シートバック23に解除ワイヤ25を結合して、シートバック23のリクライニング機構のロック解除レバーが操作されてシートバック23が前倒されたときに、解除ワイヤ25が第1オープンレバー41をロック解除方向に回動して、使用位置ロック機構30がロック解除動作する構成にする。あるいは、リクライニング機構のロック解除レバーを上方に引き上げ操作または回動操作したときにリクライニング機構がロック解除する構成とすれば、使用者はリクライニング機構のロック解除レバーを把持したまま持ち変えることなく、リクライニング機構のロック解除、使用位置ロック機構30のロック解除及びシートの格納操作を一連の操作で行うことが可能になる。
【0030】
図10及び
図11は、本発明による車両用格納シート装置の具体的な第2の実施形態である。
図10は第2の実施形態の使用位置ロック状態を、
図11は第2の実施形態の使用位置ロック解除状態を示している。
第2の実施形態は、シートレール10(解除リンク群402)側においては、第1の実施形態の第1オープンレバー41と第2オープンレバー42を単一のオープンレバー412に変えた点と、オープンレバー412がアッパレール11上に、キャンセルレバー442及び解除レバー452がロアレール12上に設けられた点と、解除レバー452と第1のリリースレバー312Xの間に別の運動伝達部材462が介在している点が第1の実施形態と異なる。使用位置ロック機構302側においては、リリースレバーを、運動伝達部材462(解除レバー452)によって操作される第1のリリースレバー312Xと、この第1のリリースレバー312Xと連動ワイヤ312Zを介して連動する第2のリリースレバー312Yに分割し、第2のリリースレバー312Yがラチェット34を連動動作させる点が第1の実施形態と異なる。
【0031】
オープンレバー412は、アッパレール11に固定されたブラケット(図示せず)に軸412aで枢着されていて、先端の運動伝達部412pがキャンセルレバー442のピン442aに係合する。キャンセルレバー442及び解除レバー452は、ロアレール12に固定されたブラケット(図示せず)に軸432で枢着されている。
運動伝達部材462は、ロアレール12に固定されたブラケットに上下方向にスライド自在に支持され、ピン462aが解除レバー452の長穴452eに嵌合されていて、解除レバー452が回動すると上下方向に直線移動して、下端の押圧部462pが第1のリリースレバー312Xの被押圧部312bを叩き、連動ワイヤ312Zを介して第1のリリースレバー312Xをアンロック方向に回動させて使用位置ロック機構302のロックを解除する。
【0032】
第2のリリースレバー312Yは、軸312aでロックブラケット32に枢着され、ピン312cがラチェット34の長穴34cに嵌合されている。第2のリリースレバー312Yは、ラチェット34がフック33をロックするロック位置方向にトーションばね352によって回動付勢されている。
【0033】
シート格納操作において、解除ワイヤ25が引かれ(操作レバー242がロック解除操作され)、オープンレバー412がロック解除方向(反時計方向)に回動すると、運動伝達部412pとピン442aの係合を介してキャンセルレバー442と解除レバー452がロック解除方向(時計方向)に回動し、長穴452eとピン462aの嵌合を介して運動伝達部材462がロック解除方向(下方)に直線移動して、運動伝達部材462の押圧部462pが第1のリリースレバー312Xの被押圧部312bを叩いて、使用位置ロック機構302のロックを解除させる(
図11)。
【0034】
オープンレバー412がロック解除方向(時計方向)にさらに回動すると、運動伝達部412pがピン442aを乗り越えて、キャンセルレバー442が弾性付勢部材(図示せず)の回動付勢力によって初期位置に復帰し、キャンセルレバー442の復帰に連れて解除レバー454及び運動伝達部材462が弾性付勢部材(図示せず)の回動付勢力により初期位置に復帰する。
【0035】
その後解除ワイヤ25が緩められると(操作レバー242がロック位置に復帰すると)、オープンレバー412は、初期位置方向に弾性付勢部材の回動付勢力によって回動し、初期位置に復帰する直前に、運動伝達部412pがピン442aを乗り越えて、初期位置に復帰する(
図10)。
【0036】
使用位置ロック機構302は、第1のリリースレバー312Xの被押圧部312bが運動伝達部材462の押圧部462pにより叩かれると、第1のリリースレバー312Xがロック解除方向(図において時計方向)に回動し、連動ワイヤ312Zを介して第2のリリースレバー312Yが時計方向に回動し、ラチェット34がロック位置からアンロック位置方向に回動して、フック33がアンロック状態になる(
図11)。
【0037】
図12から
図13は、本発明による車両用格納シート装置の具体的な第3の実施形態である。
図12は第3の実施形態の使用位置ロック状態を、
図13は第3の実施形態の使用位置ロック解除状態を示している。
この第3の実施形態は、第2の実施形態における運動伝達部材462を省いて、解除レバー453の押圧部453pを直接リリースレバー313Xに作用させた点と、オープンレバー413と、キャンセルレバー443、解除レバー453の前後関係(アッパレール11に支持とロアレール12に支持)が異なるが、その他の構成は第2の実施形態と同じである。
【0038】
オープンレバー413は、アッパレール11に固定されたブラケット(図示せず)に軸413aで枢着されていて、先端の運動伝達部413pがキャンセルレバー443のピン443aに係合する。キャンセルレバー443及び解除レバー453は、ロアレール12に固定されたブラケット(図示せず)に同一の軸433で枢着され、キャンセルレバー443がロック解除方向(
図12の反時計方向)に回動すると、運動伝達突起443cを介して解除レバー453が同方向に回動する。解除レバー453は、ロック解除方向(
図12の反時計方向)に回動すると、下端の押圧部453pがリリースレバー313Xの被押圧部313bを叩き、リリースレバー313Xをアンロック方向に回動させて使用位置ロック機構302のロックを解除する。
【0039】
シート格納操作において、解除ワイヤ25が引かれオープンレバー413がロック解除方向(時計方向)に回動すると、運動伝達部413pとピン443aの係合を介してキャンセルレバー443と解除レバー453がロック解除方向(時計方向)に回動して、解除レバー453の押圧部453pがリリースレバー313Xの被押圧部313bを叩いて、使用位置ロック機構302のロックを解除させる(
図13)。
【0040】
オープンレバー413がロック解除方向(時計方向)にさらに回動すると、運動伝達部413pがピン443aを乗り越えて、キャンセルレバー443が弾性付勢部材(図示せず)の回動付勢力によって初期位置に復帰し、キャンセルレバー443の復帰に連れて解除レバー453が弾性付勢部材(図示せず)の回動付勢力により初期位置に復帰する。
【0041】
その後解除ワイヤ25が緩められると、オープンレバー413は、初期位置方向に弾性付勢部材の回動付勢力によって回動し、初期位置に復帰する直前に、運動伝達部413pがピン443aを乗り越えて、初期位置に復帰する(
図12)。
【0042】
図14から
図15は、本発明による車両用格納シート装置の具体的な第4の実施形態である。
図14は第4の実施形態の使用位置ロック状態を、
図15は第4の実施形態の使用位置ロック解除状態を示している。
【0043】
この第4の実施形態は、シートバック23に、軸22を中心に前倒するとき一緒に回動するワイヤ駆動腕244を設けてこのワイヤ駆動腕244に解除ワイヤ25を結合した点(シートバック23を前倒させると、解除ワイヤ25が引かれるようにした点)と、キャンセルレバー444と解除レバー454を異なる軸444dと軸454dにより枢着した点と、リリースレバー314が直接ラチェット34を回動させる点が第2、第3の実施形態と異なるが、その他の構成は第2、第3の実施形態と同じである。
【0044】
オープンレバー414は、アッパレール11に固定されたブラケットに軸414aで枢着され、一端に解除ワイヤ25が結合され、他端の運動伝達部414pがキャンセルレバー444のピン444aに係合していて、トーションばね414bによって解除ワイヤ25を引く方向(時計方向)に回動付勢されている。キャンセルレバー444は、ロアレール12に固定されたブラケット(図示せず)に軸444dで枢着され、トーションばね444bによって、運動伝達ピン444cが解除レバー454の被運動伝達部454eに係合する方向に回動付勢されている。解除レバー454は、ロアレール12に固定されたブラケットに軸454dで枢着され、トーションばね454aによって運動伝達部454pがリリースレバー314から離反する(ロック解除待機位置)方向に回動付勢されている。
【0045】
リリースレバー314は、ロックブラケット32に軸314aで枢着され、ピン314cがラチェット34の長穴34cに嵌合されている。
【0046】
シート格納操作において、ワイヤ駆動腕244がシートバック23の前倒操作と一緒に時計方向回動して解除ワイヤ25が引かれると、オープンレバー414がロック解除方向(反時計方向)に回動し、運動伝達部414pとピン444aの係合を介してキャンセルレバー444がロック解除方向(時計方向)に回動し、運動伝達ピン444cと被運動伝達部454eの係合を介して解除レバー454がロック解除方向(反時計方向)に回動し、解除レバー454の運動伝達部454pがリリースレバー314の被押圧部314bを叩いて、使用位置ロック機構304のロックを解除させる(
図15)。
【0047】
オープンレバー414がロック解除方向(時計方向)にさらに回動すると、運動伝達部414pがピン444aを乗り越えて、キャンセルレバー444がトーションばね444bの回動付勢力によって初期位置に復帰し、キャンセルレバー444の復帰に連れて解除レバー454がトーションばね454aの回動付勢力により初期位置に復帰する。
【0048】
その後解除ワイヤ25が緩められると、オープンレバー414は、初期位置方向にトーションばね414cの回動付勢力によって回動し、初期位置に復帰する直前に、運動伝達部414pがピン444aを乗り越えて、初期位置に復帰する(
図14)。
【0049】
リリースレバー314がロック解除方向(
図14、
図15において時計方向)に回動すると、ラチェット34がロック位置からアンロック位置方向に回動して、フック33がアンロック状態になる(
図15)。
【0050】
図16は、
図2乃至
図9の実施形態に示した第1オープンレバー41(あるいは
図10ないし
図15のオープンレバー412、413、414)の好ましい一実施形態の斜視図である。第1オープンレバー41は、解除ワイヤ25の先端の係合部材(係合球)25aに接続される部材であり、解除ワイヤ25を引くことにより、軸41aを中心に回動される部材である。この第1オープンレバー41は、第2オープンレバー42のピン42bが挿通される径方向開放溝41bとは軸穴41cに対する角度位置を異ならせて、かつ該軸穴41cからの距離が遠い先端部分に、解除ワイヤ25の係合部材25aを結合するワイヤ係合部41dを形成している。このワイヤ係合部41dは、第1オープンレバー41の先端部分に、レバー板面と直交する直角部41f1と平行部41f2を有するコ字状の係合壁部41fを曲折形成し、その平行部41f2から直角部41f1にかけて、J字状をなすワイヤ係合溝41eを形成している。解除ワイヤ25は、その係合部材25aを係合壁部41fで囲まれた部分に位置させて、平行部41f2に位置するワイヤ係合溝41eの開口部から挿入され、直角部41f1の行き止まり溝に係止される。係合部材25aは、ワイヤ係合溝41eの周縁部となる係合壁部41fに係合して、解除ワイヤ25の引張り力を第1オープンレバー41に伝達する。
【0051】
図17及び
図18は、
図2乃至
図9に示した第1の実施形態における解除レバー45とリリースレバー31に対応する解除レバー455とリリースレバー315の間に、連動伝達部材としてローラ(ローラ部材)455dとローラ455dが転動する被押圧面315bを備えた第5の実施形態を示している。なお、第5の実施形態は、解除レバー455及びリリースレバー315を除く他の部材について第1の実施形態と同一の部材を使用できるので、同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
解除レバー455は、第2ブラケット12aに、軸43でキャンセルレバー44と同軸に枢着されている。解除レバー455は、その自由端部にローラ455dが軸43と平行な軸455cにより回動自在に枢着されている。
【0053】
解除レバー455は、図示しない引張ばねによりローラ455dがリリースレバー315の被押圧面315bから離れる方向(
図17の反時計方向)に回動付勢されている。キャンセルレバー44の
図17の時計方向の回動は、運動伝達突起44cにより解除レバー455に伝達される。引張ばねが解除レバー455を反時計方向に回動付勢する付勢力は、トーションばね44bがキャンセルレバー44を時計方向に回動付勢する付勢力よりも強く設定され、解除レバー455は、自由状態では、
図17に示すように、側面視でロアレール12の一部を構成する第2ブラケット12aの内側(背面)において図示しないストッパに当接した初期位置(ロック機構解除準備位置)に保持されている。
【0054】
図17のロック解除状態において操作レバー24が引き上げられると、解除ワイヤ25を介して第1オープンレバー41が時計方向に回動し、該レバー41の径方向開放溝41bと第2オープンレバー42のピン42bの係合関係によって、同レバー42が反時計方向に回動する。第2オープンレバー42が反時計方向に回動すると、その先端の運動伝達部42pとキャンセルレバー44の連動ピン44aにより、キャンセルレバー44及び解除レバー455が時計方向に回動して、ローラ455dが被押圧面315bに当接し、被押圧面315b上を転動しながら、リリースレバー315を反時計方向に回動させる。このように第5の実施形態によれば、ローラ455dが被押圧面315bを転動しながら解除レバー455のロック解除力をリリースレバー315に伝達するので、ローラ455dと被押圧面315bとの間の摩擦抵抗が小さく、ロック解除力の伝達ロスが少なくなり、耐久性が向上する。
【0055】
ローラ455dは、ゴム、合成樹脂など、被押圧面315bと衝突した際に衝撃を吸収し、衝撃音が小さい部材が好ましい。なお、ローラ455dを金属で形成し、被押圧面315bにゴム、合成樹脂などのシートを固着してもよく、また被押圧面315bを形成する部分を合成樹脂などで形成してもよい。またローラをリリースレバー315に装着し、被押圧面を解除レバー455に設けてもよい。
【0056】
リリースレバー315は、ロックブラケット32に軸315aで枢着されており、ラチェット34をリンクレバー36を介してロック位置からアンロック位置に回動させるもので、被押圧面315bとは軸315aを挟んだ反対側の端部に、ロック解除押圧部315cが形成されていて、このロック解除押圧部315cがリンクレバー36のリンクピン36bに係合可能に位置している。リリースレバー315は、引張ばね355によって、時計方向(使用位置ロック機構30をロックする方向)に回動付勢されていて、自由状態では、ロックブラケット32に設けられたストッパ32sに当接した初期位置(使用位置ロック機構30のロック位置)に保持されている(
図17)。使用位置ロック機構30がロック状態に保持されているとき、リンクレバー36は、リンクピン36bとロック解除押圧部315cとが非接触状態となるように設定することが好ましい。この構成によると、リンクレバー36は、ロック解除方向だけでなくロック位置方向にも回動可能な状態になるので、リリースレバー315、リンクレバー36、ラチェット34の部品精度、組み立て精度にかかわらず、ラチェット34を確実にロック位置、アンロック位置に移動させ、保持することが可能になる。
【0057】
リリースレバー315がロック解除方向(
図17の反時計方向)に回動すると、ロック解除押圧部315cがリンクピン36bに係合し、リンクレバー36をロック解除方向に回動させて、ラチェット34がロック解除方向(
図18の反時計方向)に連動回動して、ロック部34bがフック33のロック部33bから離反してアンロック状態になり、フック33がアンロック位置方向(反時計方向)に回動可能になる(
図18参照)。つまり、使用位置ロック機構30によるストライカ15のロックが解除される。
【0058】
以上のロック解除押圧部315cとリンクピン36bは、リリースレバー315がロック解除方向(
図17、
図18の反時計方向)に回動するときにその回動力をリンクレバー36に伝達するが、リンクレバー36がロック解除方向(
図17、
図18の時計方向)に回動するとき、ロック解除押圧部315cはリンクピン36bを拘束せず、をリンクレバー36の回動力をリリースレバー315に伝達しない一方向伝達機構を構成している。この構成により、フック33のアンロック位置からロック位置への移動を伴うリンクレバー36(ラチェット34)の移動が妨げられず、ロック動作が良好となる。
【0059】
以上は、第1の実施形態の解除レバー45とリリースレバー31に対応する解除レバー455とリリースレバー315の間にローラ355dを設けた第5の実施形態について説明したものであるが、第2乃至第4の実施形態においても、運動伝達部材462と第1のリリースレバー312X(被押圧部312b)の間、解除レバー453とリリースレバー313X(被押圧部313b)の間、解除レバー454とリリースレバー314(被押圧部314b)の間にローラを設けてもよい。また、使用位置ロック機構30がロック状態に保持されるとき、リンクレバー36のリンクピン36bとロック解除押圧部315cとが接触状態となってもよい。
【0060】
以上、本発明の車両用格納シート装置について車両の後部シートに適用した実施形態について説明したが、本発明は、タンブルシートなど、格納可能なシート一般に適用できる。