(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
通常、雌ねじに対して雄ねじを締結する過程では、
図11(1)に示すように、締結回転時には、ねじ回し(十字ドライバー)のカムアウトを防ぐため軸方向(進み側)にねじ回しがカムアウトしない程度の推力を加える。そのため雄ねじねじ山10の進み側フランク11と、雌ねじねじ山20のフランク21が推力を受け、面で干渉した状態で締結方向3にねじ込まれる。そして、締結固定時には
図11(2)に示すように、圧力方向4に雄ねじねじ山10の圧力側フランク12と、雌ねじねじ山20のフランク22が、面で干渉してその摩擦力により締結固定される。
【0003】
通常は、締結固定時の上記雄ねじねじ山10の圧力側フランク12と雌ねじねじ山20のフランク22の干渉による摩擦力を維持させるために、図示しない被固定物と雄ねじ座面14の間に平ワッシャー及びスプリングワッシャーを介在させるが、スプリングワッシャーの機能低下や、振動等によりねじの弛みが発生する場合がある。
【0004】
このような状況に対し、これまでにねじの弛みを防止する目的で種々のねじが提案されている。これらのものとしては、例えば、主に精密機器等に用いられる弛み防止ねじとして、ねじ山にナイロン等の樹脂を被覆したものが提案されている。この弛み防止ねじは、ねじ山に被覆したナイロン等の樹脂の可撓性によって雄ねじフランクと雌ねじフランクの摩擦力を増加させてねじを弛み難くしたものである。
【0005】
しかしながら、これらの弛み防止を目的とするねじは、通常、ねじを外すことを想定して用いられるものではないため、一度ねじを外すと弛み防止効果が極端に低下してしまうという問題がある。
【0006】
上記の提案のほか、ねじ山の形状を特殊な形状にして、弛みを防止する緊締ねじが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この提案によれば、締結状態で雄ねじ圧力側フランクの先端部の傾斜をこれに対向する雌ねじフランクの傾斜よりも大きくすることにより、締結固定時に、雄ねじのねじ山先端部を雌ねじフランクに、また雌ねじフランク基端角部を雄ねじフランクに相互に食い込ませることにより強固な弛み防止効果を発現させるものである。
【0007】
しかしながら、この提案では、雄ねじ及び雌ねじのフランクに相互のねじ山の先端部を食い込ませて相互に傷つけ合い、その摩擦により弛み防止効果を期待するものであるため、ねじを外すことにより、あるいはねじが弛んだ場合の再度の締結時には当初の弛み防止効果を発現できないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような、従来の弛み防止ねじの問題点を解消するねじとして、本発明者は、従来の弛み防止ねじとは弛み防止の機序が全く異なる、繰り返しの締結固定においても弛み防止効果が衰えない弛み防止ねじを発明している(特許文献2を参照)。
【0010】
この弛み防止ねじは、雄ねじねじ山の進み側フランク形状と圧力側フランク形状を特定の形状として、ねじ山の先端部にバネ性を付与し、雌ねじのフランクを雄ねじ圧力側フランクの面で押えることにより、確実な弛み防止機能と、ねじを外した際、また再度の締結固定においても、当初の弛み防止効果を発現できる優れた弛み防止ねじである。
【0011】
一方、この発明のねじ山の先端部にバネ性を付与するというこれまでにない基本構成については、種々の構成のバリエーションが考慮され、前記本発明者による特許文献2に記載の発明を改良した弛み防止ねじに関しては更なる開発の余地があった。
【0012】
すなわち本発明は、前記特許文献2の発明をさらに発展飛翔させ、この発明に記載のねじ山の先端部にバネ性を付与する基本的な弛み防止の機序を基本原理として用い、新たな構成により、さらに弛み防止効果を向上させた弛み防止ねじを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0014】
第1に、雄ねじのねじ山の進み側フランク及び圧力側フランクにおいて、進み側フランクのフランク角が、圧力側フランクのフランク角よりも大きく、圧力側フランクのフランク角が雌ねじフランク角よりも小さく、
進み側フランクのフランク角が雌ねじフランク角の角度未満であり、締結回転時には、進み側フランクの先端部のみが雌ねじフランクに当接して抵抗なくねじ込むことができ、かつ、ねじ山がバネ性を有し、締結固定時に、雄ねじ圧力側フランクの先端部が雌ねじフランクに
食い込むことなく、バネ性により撓った状態で当接して押さえつけることを特徴とする弛み防止ねじである。
【0015】
第2に、雄ねじのねじ山の進み側フランク及び圧力側フランクにおいて、雄ねじねじ山頂部のフランク角が雄ねじねじ山谷部のフランク角より小さく、進み側フランク及び圧力側フランクの中間部にフランク角変位点を有し、進み側フランクのフランク角変位点が、圧力側フランクのフランク角変位点よりもねじ山頂部に近く、ねじ山頂部の圧力側フランクのフランク角がねじ山頂部の進み側フランク角よりも小さく、
進み側フランクの頂部側フランク角は谷部側フランク角より小さく、圧力側フランクの頂部側フランク角は谷部側フランク角より小さく、雄ねじねじ山頂部の圧力側フランクのフランク角が雌ねじフランク角よりも小さく、かつ、ねじ山がバネ性を有し、締結固定時に、雄ねじねじ山頂部の圧力側フランクの先端部が雌ねじフランクに当接して押さえつけることを特徴とする弛み防止ねじである
。
第3に、上記第2に記載の弛み防止ねじにおいて、進み側フランク角変位点がねじ山高さの1/2の位置であり、圧力側フランク角変位点がねじ山高さの1/3の位置であり、進み側フランクの頂部側フランク角が18〜22°、進み側フランクの谷部側フランク角が29〜31°、圧力側フランクの頂部側フランク角が5〜10°、圧力側フランクの谷部側フランク角が38〜42°の範囲であり、かつ、進み側フランクの頂部側フランク角/進み側フランクの谷部側フランク角=20/30、圧力側フランクの頂部側フランク角/圧力側フランクの谷部側フランク角=8/40、進み側フランクの頂部側フランク角/圧力側フランクの頂部側フランク角=20/8、進み側フランクの谷部側フランク角/圧力側フランクの谷部側フランク角=30/40の比であることが好ましい。
【0016】
第
4に、上記第1
から第3のいずれかに記載の弛み防止ねじにおいて、雄ねじのねじ山谷部に、締結する際の雌ねじのねじ山頂部と当接する高さの突起を少なくとも1以上形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の弛み防止ねじによれば、ねじ山の先端部にバネ性を付与する基本的な弛み防止の機序を用い、さらに弛み防止効果を飛躍的に向上させた弛み防止ねじを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のねじ山形状を示すねじ山断面図である。
【
図2】本発明のねじ山の形状変化の状態を示すねじ山断面図であり、(1)は締結回転時を示すねじ山断面図であり、(2)は締結固定時のねじ山断面図である。
【
図3】本発明の弛み防止ねじの締結時の断面写真である。
【
図4】本発明の弛み防止ねじの締結時の拡大断面写真である。
【
図5】本発明の他の実施形態のねじ山形状を示すねじ山断面図である。
【
図6】本発明の他の実施例のねじ山の形状変化の状態を示すねじ山断面図であり、(1)は締結回転時を示すねじ山断面図であり、(2)は締結固定時のねじ山断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態の弛み防止ねじの締結時の断面写真である。
【
図8】本発明の他の実施形態の弛み防止ねじの締結時の拡大断面写真である。
【
図9】(1)は本発明の弛み防止ねじのねじ山谷部に突起を設けたねじの正面図であり、(2)はねじ部A−Aの概略断面図である。
【
図10】(1)〜(3)は突起を1〜4個設けたねじのねじ部断面概略図である。
【
図11】一般的な雌ねじに対する雄ねじの締結過程を示す断面図であり、(1)は締結回転時を示すねじ山断面図であり、(2)は締結固定時のねじ山断面図である。
【
図12】(A)は実施例1の締付測定結果の平均値を示すグラフであり、(B)は戻し測定結果の平均値を示すグラフである。
【
図13】(A)は実施例2の締付測定結果の平均値を示すグラフであり、(B)は戻し測定結果の平均値を示すグラフである。
【
図14】(A)は比較例の締付測定結果の平均値を示すグラフであり、(B)は戻し測定結果の平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態をあげて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
本発明の弛み防止ねじは、雄ねじねじ山の幅を薄くして、ねじ山を撓り易くし、かつ、雄ねじのねじ山先端の僅かな部分のみを雌ねじフランクに当接させることにより、バネ性による締結圧力を雄ねじ先端の当接部に集中させ、素材の弾性力を有効かつ十分に活用させて弛み防止効果を得るものである。
【0021】
本発明の弛み防止ねじの具体的な構成として、
図1に示すような構成のねじを挙げることができる。
【0022】
図1に示す弛み防止ねじは、雄ねじねじ山10の進み側フランク110及び圧力側フランク120において、進み側フランク110のフランク角θ
1が、圧力側フランク120のフランク角θ
2よりも大きく、かつ、圧力側フランク120のフランク角θ
2が、雌ねじのフランク角よりも小さく、さらに、ねじ山がバネ性による復元力を有する構成となっている。
【0023】
本発明の弛み防止ねじの材質としては、ねじ山10、特にその先端部にバネ性を付与することができ、撓りに対する復元力を有するものであれば特に制限なく用いることができる。
【0024】
例えば、鉄鋼材(SS400、SWCH、S45C、SCM435、SNB7等)、ステンレス鋼材(XM7、304、316、316L、410、430等)、真鍮、銅、燐青銅、アルミ、チタン、樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABS、ユリヤ等)を用いることができる。
【0025】
この構成の弛み防止ねじでは、締結回転時には、
図2(1)に示すように、雌ねじフランク21に雄ねじの進み側フランク110が当接した状態でねじ込まれる。なお、雄ねじの進み側フランク110のフランク角(θ
1)は、雌ねじフランク21のフランク角の角度未満であることが望ましい。
【0026】
雄ねじの進み側フランク110のフランク角(θ
1)を、雌ねじフランク21のフランク角の角度未満とすることにより、進み側フランク110の先端部のみが雌ねじフランク21に当接するため、抵抗なくねじ込むことができる。
【0027】
そして、雄ネジ締結固定時には、
図2(2)、
図3、
図4に示すように、圧力側フランク120の先端部が雌ねじフランク22に当接する。この際、雄ねじのねじ山10の先端部は、雌ねじフランク22に食い込むことなく、バネ性により撓った状態で雌ねじフランク22に当接している。このような状態で締結固定される本発明の弛み防止ねじによれば、雄ねじ圧力側フランク120の先端部が僅かな接触面積で撓った状態で雌ねじフランクに当接して、強い力で押さえつけることにより、雄ねじねじ山10の先端部自体にスプリングワッシャーと同様の機能を持たせることが可能となり、優れた弛み防止効果が発現する。
【0028】
摩擦力に関するクーロンの法則によれば、摩擦力は見かけの接触面積の大きさには無関係であるとされる。即ち、本発明者による特許文献2に記載の発明では、雄ねじフランクのバネ性により雌ねじフランクを比較的広い接触面積で押さえつけて弛み防止効果を発揮させているのに対し、本発明では、上記の通り圧力側フランクの先端部の僅かな接触面積で強い力により押さえつけるため、特許文献2の発明弛み防止ねじと同等、又はそれ以上の弛み防止効果を発現させることができる。
【0029】
なお、雄ねじねじ山頂部の圧力側フランク120のフランク角(θ
2)と、雌ねじのフランク角の差を大きく設定することにより、雄ねじねじ山10の撓り幅を調整することができ、これにより、バネ性による押さえつける力を大きく調整することができる。
【0030】
また、本発明の弛み防止ねじによれば、雄ねじねじ山のバネ性により雌ねじフランクに食い込むことがないため、繰り返しの締結固定によっても、弛み防止効果が衰えることがない。
【0031】
なお、本発明で用いる雄ねじねじ山のバネ性の意味は、雌ねじのフランクに当接した際に食い込むことなく、撓りにより雌ねじフランクを押さえつけ、雄ねじを緩めた状態で、ある程度元のねじ山形状に復元することを意味する。
【0032】
本発明の弛み防止ねじの実施形態としては、上記で説明した
図1、
図2に示す実施形態の他、
図5、
図6に示す実施形態の構成の弛み防止ねじとすることもできる。
【0033】
図5に示す構成の弛み防止ねじでは、進み側フランクの頂部側(110)フランク角θ
3は谷部側(111)フランク角θ
4より小さく、さらに、圧力側フランクの頂部側(120)フランク角θ
5は谷部側(121)フランク角θ
6より小さくなっている。
【0034】
また、進み側フランクのフランク110とフランク111の中間部にはフランク角変位点112を有し、圧力側フランクのフランク120とフランク121の中間部にはフランク角変位点122を有している。
【0035】
さらに、雄ねじねじ山10頂部の圧力側フランク120のフランク角θ
5は、雌ねじフランク角よりも小さくなっている。
【0036】
各フランク角の角度は、上記条件を満足すれば特に制限されるものではないが、適正なバネ性付与の観点から、フランク角θ
3:18〜22°、フランク角θ
4:29〜31°の範囲、フランク角θ
5:5〜10°、フランク角θ
6:38〜42°の範囲とすることが好ましい。
【0037】
上記の範囲内の具体的なフランク角としては、例えばフランク角θ
3=20°、フランク角θ
4=30°、フランク角θ
5=8°、フランク角θ
6=40°とすることができる。
【0038】
また、上記各フランク角はそれぞれの比を、フランク角θ
3/フランク角θ
4=20/30、フランク角θ
5/フランク角θ
6=8/40、フランク角θ
3/フランク角θ
5=20/8、フランク角θ
4/フランク角θ
6=30/40とすることが好ましい。
【0039】
各フランク角を上記の条件とすることにより、ねじ山先端部に所望のバネ強度を付与することができ、適用するねじの特性、材質に応じたねじ山先端部のバネ性を設定することが可能となる。
【0040】
また、進み側フランクのフランク110とフランク111のフランク角変位点112を、圧力側フランクのフランク120とフランク121のフランク角変位点122よりもねじ山の頂部に近い位置とする。この進み側フランクのフランク角変位点112と、圧力側フランクのフランク角変位点122の位置関係は、上記の条件を満足すれば特に制限されるものではないが、適正なバネ性付与の観点から、進み側フランク角変位点112を、ねじ山高さ/2の位置とし、圧力側フランク角変位点122は、ねじ山高さ/3の位置とするのが好ましい。
【0041】
フランク角変位点の位置関係を上記の条件とすることにより、作用点となる圧力側フランク120と、支点としての進み側フランク角変位点112の位置関係から、ねじ山の戻ろうとする力が大きくなるようにねじ山を変形させ、また、雄ねじフランク120の先端部を雌ねじフランク22に対して僅かな面積で強力に押さえつけるため、雌ねじフランクに対する雄ねじフランク先端部の強力な圧力での干渉が可能となる。
【0042】
図6(1)、
図6(2)に、締結回転時及び締結固定時の雌ねじのねじ山20と雄ねじのねじ山10の状態の概略断面図を示す。
【0043】
雄ねじの進み側フランク110の先端部は、雌ねじフランク21と接する状態で締結回転してねじ込まれる。なお、雄ねじの進み側フランク110のフランク角の角度(θ
3)は、雌ねじフランク21のフランク角の角度未満であることが望ましい。
【0044】
雄ねじの進み側フランク110のフランク角の角度を、雌ねじフランク21のフランク角の角度未満とすることにより、進み側フランク110の先端部のみが雌ねじフランク21に当接するため、抵抗なくねじ込むことができる。
【0045】
締結固定時には、
図6(2)、
図7、
図8に示すように、雄ねじの圧力側フランク120が雌ねじフランク22と干渉する際に、フランク120が進み側のフランク角変位点112を支点として撓るように変形し、フランク先端部が元に戻ろうとするバネ性による力により、フランク120の先端部は雌ねじフランク22を押さえつけ、この力により弛み防止効果を発現させる。
【0046】
なお、雄ねじねじ山10頂部の圧力側フランク120のフランク角θ
5と、雌ねじのフランク角の差を大きく設定することにより、雄ねじねじ山のバネ性による押さえつける力を大きく調整することができる。
【0047】
本発明の弛み防止ねじは、上記の形状及び動作により、ねじ山先端部に付与した強力なバネ性により、ねじの締結固定時において雌ねじフランク22と雄ねじフランク120の先端部が干渉した状態で、フランク120の押さえ付け効果により摩擦を増幅させ、弛みを防止することが可能となるものである。
【0048】
さらに、本発明の弛み防止ねじは、
図9、
図10に示すように、雄ねじの谷部に雌ねじのねじ山の頂部と干渉する高さの突起50を設けることができる。
図9(1)では、突起50が、ねじ山谷部円周上の軸方向に形成されており、
図9(2)のねじ部13のA−A断面図に示すように形成されている。この突起50は、
図10(1)〜(3)に示すように、1以上、好ましくは1〜4設けることができる。
【0049】
この突起50の断面形状は特に制限されるものではなく、断面三角形の形状、断面台形の形状、断面半円の形状等種々の形状とすることができる。また、締め付け時に雌ねじのねじ山頂部と接する突起先端部は摩擦を増幅させる目的で表面形状を加工したり、突起先端部表面にナイロン等を被覆することもできる。
【0050】
この突起50を設けることにより、雌ねじのねじ山頂部は、雄ねじのねじ山谷部に設けられた突起50と干渉し、締結回転時には、がたつきのない安定したねじ込み性が得られると共に、弛み防止機能を発現させることができる。
【0051】
さらに、締結固定後に振動が加わった場合であっても、がたつきの発生が抑制され、雄ねじと雌ねじのフランク面の滑りが発生し難くなるため、さらに弛み防止効果が得られる。
【0052】
本発明の弛み防止ねじの構成は、ねじの種類を選ぶことなく適用することができ、一般に用いられるねじ、ボルト、微細ねじ等に対しても適用することができる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1の弛み防止ねじとして、
図1〜3に示す形状の弛み防止ねじ(ねじの呼び:M2.5×5、材質:ニッケル3号(熱処理あり))を5本用意して、それぞれのねじについて、トルク測定試験機(クボタ社製:トルクデューサTD-001)を用いて、相手材料:鉄ナットに対して、荷重20Nの条件で5回の締付及び戻しの繰り返しを行い、そのときの締付トルク(TS)及び戻しトルク(TL)を測定した。また、その測定結果の平均値から、戻し/締付比を計算した。
【0054】
実施例1の締付測定結果の平均値を
図12(A)のグラフに、戻し測定結果の平均値を
図12(B)のグラフに示す。
<実施例2>
実施例1に用いた弛み防止ねじを
図4〜6に示す形状の弛み防止ねじ(ねじの呼び:M2.5×6、材質:三価クロメート白(熱処理あり))に変更した以外は実施例1と同様にして、締付トルク(TS)及び戻しトルク(TL)を測定し、戻し/締付比を計算した。
【0055】
実施例2の締付測定結果の平均値を
図13(A)のグラフに、戻し測定結果の平均値を
図13(B)のグラフに示す。
<比較例>
実施例1に用いた弛み防止ねじに替えて、標準ねじ(ねじの呼び:M2.5×4、材質:ニッケル3号(熱処理あり))を用いた以外は実施例1と同様にして、締付トルク(TS)及び戻しトルク(TL)を測定し、戻し/締付比を計算した。
【0056】
比較例の締付測定結果の平均値を
図14(A)のグラフに、戻し測定結果の平均値を
図14(B)のグラフに示す。
【0057】
また、上記実施例1、2比較例の測定結果をまとめて表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から、実施例1及び2の弛み防止ねじは、比較例の通常ねじに比べて戻しトルクが大きく、約15〜25%高いトルク比が得られることが確認された。
【0060】
これらの結果から、本発明の弛み防止ねじは従来のねじに比べて、優れた弛み防止効果を有することが確認された。