(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明による実施形態を説明する。
図1は本発明によるベルトクリーニング装置を備えたインクジェット記録装置の第1実施形態の概略構成を示す模式図である。
【0015】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、装置筐体100と、装置筐体100の内部の下方に配置された給紙部200と、給紙部200の上方に配置されたインクジェット記録方式の画像形成部300と、画像形成部300の一方側に配置された用紙搬送部400と、画像形成部300の他方側に配置された用紙排出部500とを備える。
【0016】
給紙部200は、装置筐体100に着脱自在の給紙カセット201と、給紙ローラー202と、ガイド板203とを備える。給紙ローラー202は給紙カセット201の一端側の上方に配置されている。ガイド板203は、給紙ローラー202と用紙搬送部400との間に配置されている。
【0017】
給紙カセット201内には複数の被記録媒体としての用紙Pが積み重ねられた状態で収納されている。給紙ローラー202は、給紙カセット201内の用紙Pを一枚ずつ取り出す。ガイド板203は、給紙ローラー202が取り出した用紙Pを用紙搬送部400に案内する。
【0018】
用紙搬送部400は、略C字形の用紙搬送路401と、用紙搬送路401の入口側に設けられた搬送ローラー対402と、用紙搬送路401の出口側に設けられたレジストローラー対403と、レジストローラー対403と画像形成部300との間に配置されたガイド板404とを備える。
【0019】
搬送ローラー対402は、給紙部200から給紙される用紙Pを挟んで用紙搬送路401に送出する。レジストローラー対403は、用紙搬送路401から供給される用紙Pの斜行補正を行う。そして、レジストローラー対403は、印字のタイミングと用紙Pの搬送とを同期させるために用紙Pを一時待機させた後、用紙Pを印字タイミングに合わせてガイド板404に送出する。ガイド板404は、レジストローラー対403が送出した用紙Pを画像形成部300に案内する。
【0020】
画像形成部300は、記録部310と、搬送ユニット320と、乾燥部330と、ノズルクリーニング装置340と、昇降ユニット360とを備える。
【0021】
記録部310は、記録ヘッド312と、昇降ユニット360の下方に配置されたタンクユニット316とを備える。
【0022】
搬送ユニット320は、支持ローラー321と、駆動ローラー322と、一対のテンションローラー323と、搬送ベルト324と、吸引ユニット(図示せず)とを備える。
【0023】
搬送ベルト324は無端状で、支持ローラー321、駆動ローラー322、及びテンションローラー323を囲むように張設されている。搬送ベルト324には厚さ方向に貫通する複数の貫通孔(図示せず)が穿孔されている。
【0024】
吸引ユニットの内部にはファンや真空ポンプ等の吸引手段が設置されている。吸引手段を駆動すると、吸引ユニットの内部に負圧が発生する。負圧は搬送ベルト324の複数の貫通孔を介して搬送ベルト324の一方の面に支持された用紙Pに作用し、用紙Pが搬送ベルト324上に吸引される。
【0025】
駆動ローラー322は支持ローラー321に対して用紙搬送方向に間隔をおいて配置されている。駆動ローラー322はモーター322aによって回転駆動され、搬送ベルト324を用紙Pの搬送方向である第1方向及び第1方向と背反する第2方向に回転させる。テンションローラー323は支持ローラー321と駆動ローラー322との間の下方に配置され、搬送ベルト324にテンションを付与する。
【0026】
記録ヘッド312は、用紙搬送方向の上流側から下流側に向けて並設された4個のインクジェットヘッドとしてのノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Yを有する。
【0027】
タンクユニット316は、用紙搬送方向の上流側から下流側に向けて並設された4個のインクタンク316K、316C、316M、及び316Yを有する。
【0028】
ノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Yの各々は、搬送ベルト324の幅方向(Y方向)に配列された複数のノズルを備える。記録ヘッド312はライン型と称される。例えば、ライン型の記録ヘッド312は、装置筐体100に固定されている。
【0029】
ノズルヘッド312Kの複数のノズルの各々は、ノズルヘッド312K内に形成された加圧室(図示せず)に連通している。加圧室はノズルヘッド312K内に形成されたインク液室(図示せず)に連通している。インク液室はインク供給ポンプ(図示せず)に連通している。そして、インク供給ポンプはインクタンク316Kに連通している。
【0030】
ノズルヘッド312Cの複数のノズルの各々は、ノズルヘッド312C内に形成された加圧室(図示せず)に連通している。加圧室はノズルヘッド312C内に形成されたインク液室(図示せず)に連通している。インク液室はインク供給ポンプ(図示せず)に連通している。そして、インク供給ポンプはインクタンク316Cに連通している。
【0031】
ノズルヘッド312Mの複数のノズルの各々は、ノズルヘッド312M内に形成された加圧室(図示せず)に連通している。加圧室はノズルヘッド312M内に形成されたインク液室(図示せず)に連通している。インク液室はインク供給ポンプ(図示せず)に連通している。そして、インク供給ポンプはインクタンク316Mに連通している。
【0032】
ノズルヘッド312Yの複数のノズルの各々は、ノズルヘッド312Y内に形成された加圧室(図示せず)に連通している。加圧室はノズルヘッド312Y内に形成されたインク液室(図示せず)に連通している。インク液室はインク供給ポンプ(図示せず)に連通している。そして、インク供給ポンプはインクタンク316Yに連通している。
【0033】
ノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Yは、搬送ベルト324によって搬送される用紙Pにインクを吐出して用紙P上に画像を形成する。
【0034】
乾燥部330は、乾燥機332と、ガイド板334とを備える。
【0035】
乾燥機332は、用紙Pに温風を送風して、記録ヘッド312から用紙P上に吐出されたインク滴を乾燥させる。なお、乾燥部330は省略されてもよい。例えば、インクの種類等により、乾燥部330を設けてインクを乾燥させる必要がなければ乾燥部330を省略できる。
【0036】
ガイド板334は、搬送ユニット320が送出した用紙Pを用紙排出部500に案内する。
【0037】
ノズルクリーニング装置340は、昇降ユニット360による搬送ユニット320の昇降に連動してZ方向に沿って昇降するとともに、水平移動機構(図示せず)によりX方向に沿って水平移動する。
【0038】
ノズルクリーニング装置340は、水平移動機構による移動操作により、ノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Yのクリーニングが可能なワイプ位置と、ワイプ位置から水平方向に離間した退避位置とを選択的に取ることができる。ノズルクリーニング装置340は、画像形成時には退避位置に移動し、ノズルクリーニング時にはワイプ位置に移動する。
【0039】
用紙排出部500は、排出ローラー対501と、排出トレイ502とを備える。排出トレイ502は、装置筐体100に形成された排出口101から外部に突出するように装置筐体100に固定されている。
【0040】
乾燥機332を通過した用紙Pは、排出ローラー対501によって排出口101の方向に送出され、排出トレイ502に案内されて排出口101を介して装置筐体100の外部に排出される。
【0041】
図2は
図1に示されるインクジェット記録装置1に備えられた搬送ユニット320と昇降ユニット360の斜視図であり、
図3は搬送ユニット320と昇降ユニット360とを制御する制御系のブロック図であり、
図4は搬送ユニット320と昇降ユニット360の動作説明図である。なお、
図4(a)は搬送ユニット320が画像形成位置にある状態を示し、
図4(b)は搬送ユニット320がクリーニング位置にある状態を示す。
【0042】
昇降ユニット360は、昇降ユニット本体362と、クリーニングローラー364と、押込部材としての押込ローラー365と、コントローラー366と、搬送ユニット320を昇降させる昇降機構367と、搬送ユニット320の位置を検知する昇降検知部(図示せず)と、駆動機構368とを備える。駆動機構368は押込ローラー365をクリーニングローラー364に対して接近及び離間させる。昇降ユニット360は本発明のベルトクリーニング装置として機能する。
【0043】
クリーニングローラー364は、モーター364aによって、第1方向と同じ方向及び第2方向と同じ方向に回転可能である。ここで、例えばクリーニングローラー364が第1方向と同じ方向に回転するとは、クリーニングローラー364における搬送ベルト324と当接する箇所の回転方向が第1方向と同じであることをいう。この場合、クリーニングローラー364を回転駆動するモーター364aの回転方向は、搬送ベルト324を第1方向に駆動するモーター322aの回転方向と背反する方向となる。
【0044】
クリーニングローラー364は吸液性を有する弾性材を用いて形成される。クリーニングローラー364の材料は、搬送ベルト324及びクリーニングローラー364の劣化や、クリーニングローラー364と搬送ベルト324との摺動音を抑制するために、摩擦係数が低い方が好ましい。そのような材料としては、例えば、連続気孔を有する多孔質体を用いることができる。
【0045】
連続気孔を有する多孔質体を使用する場合、気孔径が小さい方がクリーニングローラー364の表面が平滑になり、インクの堰き止め能力が向上する。また、平均気孔率が高いほど、吸液量が増加する。そのような多孔質体としては、例えば、アイオン株式会社製のポリウレタン製スポンジであるソフラスN(商品名)を用いることができる。なお、ソフラスNの平均気孔径は25μm、平均気孔率は83%である。ソフラスNを用いてクリーニングローラー364を形成する場合には、例えば、直径12mmの金属シャフトの外周面に厚さ6mmのシート状のソフラスNを巻き付けることによってクリーニングローラー364が形成される。
【0046】
押込部材としての押込ローラー365は支軸365aを介して移動部材(図示せず)に回転自在に軸支されている。当該移動部材は、昇降ユニット本体362の筐体に移動自在に取り付けられ、押込ローラー365がクリーニングローラー364に対して接近及び離間する方向に移動可能となっている。
【0047】
当該移動部材は駆動機構368によって駆動される。駆動機構368は、例えばプランジャーによって構成される。押込ローラー365がクリーニングローラー364に接近する方向へ移動部材が移動すると、押込ローラー365がクリーニングローラー364の外周面に当接してクリーニングローラー364を内方へ弾性変形させる。
【0048】
押込ローラー365は、例えば樹脂や金属等により形成することができるが、クリーニングローラー364との摩擦が小さいものによって形成するのが好ましい。押込ローラー365は、回転するクリーニングローラー364を圧縮しながらクリーニングローラー364に従動して回転することで、クリーニングローラー364が吸収したインク等の液体をクリーニングローラー364の内方へ押し込む。なお、押込ローラー365の表面は撥水性を有していることが好ましい。その場合、クリーニングローラー364が吸収した液体が押込ローラー365側へ移行するのを抑制することができるので、液体がクリーニングローラー364の内方へ押し込まれ易くなる。
【0049】
押込ローラー365はクリーニングローラー364と背反する方向に回転するため、押込ローラー365とクリーニングローラー364との間に生じる摩擦抵抗が小さい。したがって、押込ローラー365とクリーニングローラー364の耐久性が向上するとともに、モーター364aの消費電力を小さくすることができる。本実施形態では、押込ローラー365がクリーニングローラー634に従動して回転するため、装置構成が簡素で、製造コストが安価である。なお、押込ローラー365をモーターによって回転駆動するようにしてもよい。
【0050】
コントローラー366は、CPU、ROM、及びRAMを含むマイクロコンピューターにより構成されている。CPUはROMに格納されたプログラムに従って所定の処理を実行する。コントローラー366は、汚れ量算出手段366aと、駆動機構制御手段366bと、クリーニング制御手段366cとを含む。汚れ量算出手段366a、駆動機構制御手段366b、及びクリーニング制御手段366cは、ROMに格納されたプログラムによって構成されている。駆動機構制御手段366bは本発明の制御手段として機能する。
【0051】
汚れ量算出手段366aは、画像メモリー600に格納された印字データに基づいて搬送ベルト324の汚れ量を算出する。すなわち、用紙Pが紙詰まりを起こした場合、用紙Pが搬送されなくなるため、記録ヘッド312から吐出されるインク滴が用紙P上に付着せずに搬送ベルト324上に付着する。汚れ量算出手段366aは、用紙Pに印刷される単位面積当たりのインク量を印字データに基づいて算出し、このインク量を搬送ベルト324の汚れ量とする。
【0052】
搬送ベルト324の汚れ量の算出方法について、
図3及び
図5を参照して説明する。
図5は、本実施形態の搬送ベルト324の汚れ量の算出方法を説明する図である。汚れ量算出手段366aは、用紙Pを単位面積αの領域R1〜R15に等分割し、各領域毎にインク量を算出する。本実施形態では、単位面積当たりの印字面積率と印字回数との積をインク量とする。
【0053】
例えば、印字データI
1は、領域R1と領域R2とに跨るように印字される4色刷りの印字データである。印字データI
1の領域R1に対する印字面積率を70%とすると、印字データI
1は4色刷りであるので、領域R1には単位面積αの70%の面積のインクが4回印刷される。この場合、領域R1のインク量は70%×4=280%となる。
【0054】
また、印字データI
2は、領域R2〜領域R5と、領域R7〜領域R10とに跨るように印字される1色刷りの印字データである。印字データI
2の領域R7に対する印字面積率を20%とすると、印字データI
2は1色刷りであるので、領域R7のインク量は20%×1=20%となる。
【0055】
また、印字データI
3は領域R14と領域R15とに跨るように印字される2色刷りの印字データである。印字データI
3の領域R14に対する印字面積率を30%とすると、印字データI
3は2色刷りであるので、領域R14のインク量は30%×2=60%となる。
【0056】
駆動機構制御手段366bは、汚れ量算出手段366aが算出した領域R1〜領域R15のインク量に基づいて駆動機構368を制御する。すなわち、領域R1〜領域R15のインク量のうちの少なくとも1つが所定の閾値以上の場合、押込ローラー365がクリーニングローラー364に圧接される方向に移動部材を移動させる。
【0057】
図6は、本実施形態のベルトクリーニング装置による搬送ベルトのクリーニング効果を確認するための実験結果を示す表である。領域R1〜領域R15の各々のインク量を0%から100%まで20%ずつ変化させ、押込ローラー365がクリーニングローラー364から離間した状態と、押込ローラー365がクリーニングローラー364に圧接された状態との両方において、クリーニング効果を確認した。すなわち、クリーニングローラー364で搬送ベルト324をクリーニングした後の画像形成において、搬送ベルト324から用紙Pにインクが転写されなかった場合(クリーニングが適切に行われた場合)を○、搬送ベルト324から用紙Pにインクが転写された場合(クリーニングが不十分であった場合)を×としている。
【0058】
実験の結果、インク量が60%未満の場合には、押込ローラー365がクリーニングローラー364から離間した状態で搬送ベルト324をクリーニングすると、クリーニング後の画像形成において、搬送ベルト324から用紙Pにインクが転写されなかったが、インク量が60%以上の場合には、押込ローラー365がクリーニングローラー364から離間した状態で搬送ベルト324をクリーニングすると、クリーニング後の画像形成において、搬送ベルト324から用紙Pにインクが転写された。
【0059】
一方、押込ローラー365がクリーニングローラー364に圧接された状態で搬送ベルト324をクリーニングすると、インク量に関わらず、クリーニング後の画像形成において、搬送ベルト324から用紙Pにインクが転写されなかった。そこで、本実施形態では、領域R1〜領域R15の各々に印字されたインク量のうちの少なくとも1つが60%以上の場合には、押込ローラー365をクリーニングローラー364に圧接した状態で搬送ベルト324のクリーニングを行う。
【0060】
クリーニング制御手段366cは、昇降機構367を制御して搬送ユニット320を上昇及び下降させる。また、クリーニング制御手段366cは、駆動ローラー322のモーター322a及びクリーニングローラー364のモーター364aを制御して搬送ベルト324のクリーニングを行う。
【0061】
次に、
図4〜
図7を参照して第1実施形態の作用及び効果を説明する。
図7はインクジェット記録装置1における搬送ベルトのクリーニング方法を示すフローチャートである。
【0062】
画像形成時には、記録ヘッド312(
図1参照)のノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Yが用紙P上にインクを吐出し、用紙P上のインクを乾燥機332(
図1参照)で乾燥させることで、用紙Pに画像形成が行われる。画像形成時には、搬送ベルト324が第1方向(
図4(a)の矢印D1方向)に駆動される。
【0063】
ジャムが発生すると、図示しないジャム検知器によってジャムが検知される。そして、インクジェット記録装置1の動作が停止し、詰まった紙の除去を要求するメッセージが表示部(図示せず)に表示される。ユーザーがインクジェット記録装置1のカバー(図示せず)を開いて詰まった紙を除去し、カバーを閉めると、搬送ベルト324のクリーニングが開始する。なお、この時点では、押込ローラー365はクリーニングローラー364から離間している。
【0064】
図7に示すように、まず、ステップS10において、コントローラー366が画像メモリー600から印字データを取り込む。そして、ステップS20において、汚れ量算出手段366aが、用紙Pの領域R1〜領域R15に印刷されるインク量を印字データに基づいて算出する。
【0065】
次に、ステップS30において、汚れ量算出手段366aは、算出したインク量が閾値以上か否かを判定する。すなわち、領域R1〜領域R15のうち、インク量が60%以上の領域があるか否かを調べる。ステップS30において、インク量が60%以上の領域があると判定された場合には、ステップS40において、駆動機構制御手段366bが駆動機構368を制御して押込ローラー365をクリーニングローラー364に圧接する。ステップS30において、インク量が60%以上の領域が無いと判定された場合には、駆動機構制御手段366bは駆動機構368を駆動せず、押込ローラー365がクリーニングローラー364から離間したままの状態が維持される。
【0066】
そして、ステップS50において、クリーニング制御手段366cが昇降機構367を駆動し、搬送ユニット320が下降してクリーニングローラー364が搬送ベルト324に当接する。次に、クリーニング制御手段366cは駆動ローラー322のモーターを駆動し、搬送ベルト324が第2方向(
図4(b)の矢印D2方向)に駆動される。そして、クリーニング制御手段366cはクリーニングローラー364のモーター364aを駆動し、クリーニングローラー364が矢印D3方向に回転する。搬送ベルト324とクリーニングローラー364との相対運動によって、搬送ベルト324に付着したインク等の異物がクリーニングローラー364によって拭き取られる。
【0067】
クリーニングローラー364が矢印D3方向に回転すると、それに従って押込ローラー365が矢印D4方向に回転する。クリーニングローラー364に吸収されたインクは押込ローラー365によってクリーニングローラー364の内方へ押し込まれる。
【0068】
本実施形態のベルトクリーニング装置は、クリーニングローラー364の外周面に付着したインクの粘度が高い場合でも、押込ローラー365が当該インクをクリーニングローラー364の内方へ押し込むことができる。その結果、クリーニングローラー364の外周面の吸液性能が速やかに回復し、効果の高いクリーニングを行うことができる。
【0069】
また、本実施形態では、領域R1〜領域R15の各々に印字されたインク量のうちの少なくとも1つが60%以上の場合には、押込ローラー365がクリーニングローラー364に圧接される。したがって、押込ローラー365が常時クリーニングローラー364に圧接される場合と比べてクリーニングローラー364の摩耗と永久歪みとを抑制できるため、クリーニングローラー364と押込ローラー365とが長寿命化する。また、クリーニングローラー364を回転駆動するモーター364aの負担が低減するため、消費電力が低減する。
【0070】
なお、本実施形態では、クリーニングローラー364が搬送ベルト324のクリーニングを行う際に、クリーニングローラー364が搬送ベルト324の駆動方向と背反する方向に回転駆動される。その結果、搬送ベルト324のクリーニングローラー364に対する相対移動速度が大きくなり、クリーニングローラー364と搬送ベルト324との摩擦力が大きくなるため、搬送ベルト324のクリーニング効果が向上する。なお、クリーニングローラー364を搬送ベルト324の駆動方向と同じ方向に回転駆動してもよい。
【0071】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図8は、本発明によるベルトクリーニング装置を備えるインクジェット記録装置の第2実施形態の概略構成を示す模式図である。なお、本実施形態において、第1実施形態と対応する部分には同一の符号を使用し、重複する説明を省略する。本実施形態では、ノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Mの搬送ベルト324への単位面積当たりのインク吐出量を搬送ベルト324の汚れ量とする。
【0072】
図8に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置1’は、用紙先端検知器701と、第1用紙検知器702と、第2用紙検知器703とを備える。第1用紙検知器702と第2用紙検知器703とは搬送ベルト324の搬送方向に間隔をおいて配置されている。用紙先端検知器701、第1用紙検知器702、及び第2用紙検知器703の各々は、例えばフォトセンサーによって構成される。
【0073】
用紙先端検知器701は、ガイド板404によって案内される用紙Pの先端を検知する。第1用紙検知器702は、ノズルヘッド312Kとノズルヘッド312Cとの間に設置され、用紙Pを検知する。第2用紙検知器703は、ノズルヘッド312Yに対して用紙Pの搬送方向下流側に設置され、用紙Pを検知する。用紙先端検知器701、第1用紙検知器702、及び第2用紙検知器703は、本発明の詰まり検知手段として機能する。また、第1用紙検知器702及び第2用紙検知器703の各々は、本発明のセンサーとして機能する。
【0074】
次に、
図8及び
図9を参照して第2実施形態の作用及び効果を説明する。
図9はインクジェット記録装置1’に備えられた搬送ベルト324のクリーニング方法を示すフローチャートである。
【0075】
インクジェット記録装置1’が画像形成を開始し、レジストローラー対403が用紙Pをガイド板404に送出すると、
図9のステップS110において、用紙先端検知器701が用紙Pの先端を検知する。そして、用紙先端検知器701が用紙Pの先端を検知してから所定時間経過後にノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Mからインクが吐出され始める。
【0076】
次に、ステップS120において、コントローラー366は、用紙先端検知器701が用紙Pの先端を検知してからの経過時間tが閾値Q1以上か否かを判定し、t≧Q1の場合は、ステップS130において、第1用紙検知器702がONか否かを判定する。第1用紙検知器702がONの場合(ステップS130においてYES)は、コントローラー366は、ジャムが発生していないと判定する。次に、ステップS140において、コントローラー366は、経過時間tが閾値Q2以上か否かを判定し、t≧Q2の場合は、ステップS150において、第2用紙検知器703がONか否かを判定する。第2用紙検知器703がONの場合(ステップS150においてYES)は、コントローラー366は、ジャムが発生していないと判定する。そして、搬送ベルト324が用紙Pを乾燥部330に送出する。
【0077】
ステップS130において、第1用紙検知器702がOFFの場合(ステップS130においてNO)は、コントローラー366は、用紙先端検知器701と第1用紙検知器702との間でジャムが発生したと判定してインクジェット記録装置1’を停止し、詰まった紙の除去を要求するメッセージを表示部(図示せず)に表示する。同様に、ステップS150において、第2用紙検知器703がOFFの場合(ステップS150においてNO)は、コントローラー366は、第1用紙検知器702と第2用紙検知器703との間でジャムが発生したと判定してインクジェット記録装置1’を停止し、詰まった紙の除去を要求するメッセージを表示部(図示せず)に表示する。ユーザーがインクジェット記録装置1’のカバー(図示せず)を開いて詰まった紙を除去し、カバーを閉めると、搬送ベルト324のクリーニングが開始する。なお、クリーニング開始時には、押込ローラー365はクリーニングローラー364から離間している。
【0078】
搬送ベルト324のクリーニングが開始すると、ステップS160において、汚れ量算出手段366aがノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Mの搬送ベルト324への単位面積当たりのインク吐出量を算出する。すなわち、ノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Mがインクの吐出を開始してからインクジェット記録装置1’が停止するまでの間のノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Mのインク吐出時間に基づいてインク吐出量を算出する。
【0079】
次に、ステップS170において、汚れ量算出手段366aは、算出されたインク吐出量が閾値以上か否かを判定する。そして、当該インク吐出量が閾値以上の場合(ステップS170においてYES)は、ステップS180において、駆動機構制御手段366bが駆動機構368を制御して押込ローラー365をクリーニングローラー364に圧接する。なお、ステップS170において、インク吐出量が閾値未満の場合(ステップS170においてNO)には、駆動機構368が駆動されず、押込ローラー365がクリーニングローラー364から離間したままの状態が維持される。
【0080】
そして、ステップS190において、クリーニング制御手段366cが昇降機構367を駆動し、搬送ユニット320が下降してクリーニングローラー364が搬送ベルト324に当接する。次に、クリーニング制御手段366cは駆動ローラー322のモーターを駆動し、搬送ベルト324が駆動される。そして、クリーニング制御手段366cはクリーニングローラー364のモーター364aを駆動し、クリーニングローラー364が回転する。搬送ベルト324とクリーニングローラー364との相対運動によって、搬送ベルト324に付着したインク等の異物がクリーニングローラー364によって拭き取られる。
【0081】
本実施形態では、ノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Mの搬送ベルト324への単位面積当たりのインク吐出量が閾値以上の場合にのみ押込ローラー365がクリーニングローラー364に圧接される。したがって、押込ローラー365が常時クリーニングローラー364に圧接される場合と比べてクリーニングローラー364の傷みを抑制することができるため、クリーニングローラー364と押込ローラー365とが長寿命化する。また、クリーニングローラー364を回転駆動するモーター364aの負担が低減するため、消費電力が低減する。
【0082】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本実施形態に種々の改変を施すことができる。
【0083】
例えば、本実施形態では、搬送ベルトの汚れ量に基づいて押込部材をクリーニングローラーに接離するようにしているが、ユーザーが任意のタイミングで押込部材をクリーニングローラーに接離させるようにしてもよい。例えば、クリーニングローラーの使用回数が所定回数以下の場合には常時押込部材をクリーニングローラーから離間させ、クリーニングローラーの使用回数が所定回数を超えた場合には常時押込部材をクリーニングローラーに圧接するようにしてもよい。
【0084】
また、第1実施形態では、被記録媒体に印刷される単位面積当たりのインク量を印字データに基づいて算出し、このインク量を搬送ベルトの汚れ量とし、第2実施形態では、詰まり検知手段の検知結果とインクジェットヘッドのインク吐出時間とに基づいて、ノズルヘッド312K、312C、312M、及び312Mの搬送ベルト324への単位面積当たりのインク吐出量を算出し、このインク吐出量を搬送ベルトの汚れ量としているが、他の方法で算出した汚れ量を搬送ベルトの汚れ量としてもよい。例えば、カメラで搬送ベルトを撮影し、その画像を解析して得られた搬送ベルトの単位面積当たりのインク量を汚れ量としてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、押込部材がローラー状である場合について説明したが、押込部材は他の形状(例えば、板状)であってもよい。押込部材が板状の場合、押込部材を金属や樹脂等で形成できるが、クリーニングローラーとの摩擦抵抗が低い材料(例えば、ポリアセタール)で形成すると、クリーニングローラーの耐久性が向上するので好ましい。
【0086】
また、本実施形態では、クリーニングローラーがモーターによって回転駆動されるが、クリーニングローラーが搬送ベルトに従動して回転するようにクリーニングローラーを構成してもよい。
【0087】
また、本実施形態では、駆動機構が押込部材を移動させて押込部材とクリーニングローラーとを接離させるようにしているが、駆動機構がクリーニングローラーを移動させて押込部材とクリーニングローラーとを接離させるようにしてもよい。
【0088】
また、第2実施形態では、2つのセンサーの検知結果とインクジェットヘッドのインク吐出時間とに基づいてインク吐出量を算出しているが、センサーは3つ以上でもよいし、1つでもよい。
【0089】
また、本実施形態では、貫通孔を有する搬送ベルトをクリーニングするベルトクリーニング装置に本発明を適用した場合について説明したが、貫通孔を有しない搬送ベルトをクリーニングするベルトクリーニング装置に本発明を適用することもできる。
【0090】
また、本実施形態では、インクジェット記録装置が用紙に画像形成を行う場合について説明したが、インクジェット記録装置が画像形成を行う被記録媒体は用紙以外のもの(例えば、プラスチックシート、布帛)であってもよい。
【0091】
また、本実施形態では、装置筐体に固定されたライン型の記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、そのようなインクジェット記録装置に限定されるものではない。例えば、装置筐体に対して移動する記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に本発明を適用してもよい。例えば、シリアル型の記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に本発明を適用してもよい。
【0092】
また、本実施形態では、インクジェット記録方式の画像形成部を備える画像形成装置に本発明を適用した場合について説明したが、インクジェット記録方式以外の画像形成部を備える画像形成装置に本発明を適用することもできる。例えば、電子写真方式の画像形成部を備える画像形成装置の中間転写ベルトをクリーニングするベルトクリーニング装置に本発明を適用することもできる。
【0093】
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で本実施形態に種々の改変を施すことができる。