特許第5982359号(P5982359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982359
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】シンクロコンテンツ放送配信システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/262 20110101AFI20160818BHJP
   H04N 21/8547 20110101ALI20160818BHJP
   H04N 21/43 20110101ALI20160818BHJP
   H04H 20/18 20080101ALI20160818BHJP
【FI】
   H04N21/262
   H04N21/8547
   H04N21/43
   H04H20/18
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-503511(P2013-503511)
(86)(22)【出願日】2012年3月2日
(86)【国際出願番号】JP2012055420
(87)【国際公開番号】WO2012121158
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2014年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-48044(P2011-48044)
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151092
【氏名又は名称】株式会社電通
(73)【特許権者】
【識別番号】592164890
【氏名又は名称】朝日放送株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514134228
【氏名又は名称】株式会社D2Cソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 文夫
(72)【発明者】
【氏名】藤 孝司
(72)【発明者】
【氏名】香取 啓志
(72)【発明者】
【氏名】森川 達也
【審査官】 後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−054094(JP,A)
【文献】 特開2010−154523(JP,A)
【文献】 国際公開第01/39506(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00−21/858
H04H 20/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPストリーム化した放送データにシンクロコンテンツをシンクロさせるためのシンクロコンテンツ放送配信システムであって、
絶対時間に合わせてタイムコードを生成し、放送局マスタから出力された放送データに対して該タイムコードを埋め込むタイムコードジェネレータと、
前記タイムコードが埋め込まれた前記放送データをエンコードしてIPストリームに変換するエンコーダと、
前記IPストリームを配信するストリーミングサーバと、
前記ストリーミングサーバから配信された前記IPストリームをデコードし、当該IPストリームに埋め込まれた前記タイムコードを読み込むデコーダと、
少なくとも一つまたは二つ以上のシンクロコンテンツを記憶する記憶装置からシンクロコンテンツを読み取り、当該シンクロコンテンツを配信するウェブサーバと、
前記ストリーミングサーバから配信された前記IPストリームと前記ウェブサーバから配信されたシンクロコンテンツを受信する再生デバイスと、
前記デコーダが前記IPストリームから読み込んだ前記タイムコードの時間と絶対時間との時間差を算出し、当該算出した時間差をシンクロコンテンツのトリガ発生時間に加算して該時間差に対応したトリガ時間を算出するトリガ時間演算装置と、を備え、
前記ウェブサーバは、前記IPストリームに埋め込まれた前記タイムコードと前記ウェブサーバから受信したシンクロコンテンツのトリガ発生時間とが一致した時点で、前記再生デバイスに前記シンクロコンテンツに対する処理を実行させるように構成され
前記ウェブサーバは、前記トリガ時間演算装置によって算出した前記トリガ時間に基づいて前記記憶装置から読み取った前記シンクロコンテンツを少なくとも前記トリガ時間以降に前記再生デバイスに配信するように構成され、
前記ウェブサーバは、各々が前記トリガ時間演算装置によって算出した前記トリガ時間に異なるバッファ時間長をそれぞれ加算して形成される異なる実効バッファ時間長に対応する複数のフィードを備え、
前記複数のフィードの各々は、シンクロコンテンツの表示に必要なデータ群の中の一つのデータに対応付けられたフィードアイテムを書き込むように構成された階層状の複数の表示エリアを有する、
ことを特徴とするシンクロコンテンツ放送配信システム。
【請求項2】
前記再生デバイスは、前記ウェブサーバに備えられた前記異なるバッファ時間長に対応する複数のフィードを備え、
特定のバッファ時間長がリクエストされた場合に、当該リクエストされた特定のバッファ時間長に対応するフィードの表示エリアに書き込まれているフィードアイテムに基づいてシンクロコンテンツに対して処理を実行するように構成にされる、請求項1に記載のシンクロコンテンツ放送配信システム。
【請求項3】
前記再生デバイスは、前記ウェブサーバに備えられている前記複数のフィードを一定時間ごとに読みに行くように構成されていて、前記ウェブサーバで前記フィードの更新が実行された場合に、遅延なく該再生デバイスの対応するフィードを更新し、当該更新されたフィードに書き込まれているフィードアイテムに基づいてシンクロコンテンツに対して処理を実行するように構成にされる、請求項2に記載のシンクロコンテンツ放送配信システム。
【請求項4】
前記再生デバイスは、シンクロコンテンツ表示のトリガにより、前記フィードに書き込まれたエクスパンドシンクロコンテンツ表示用のフィードアイテムに対応付けられたファイルを読み込むことにより、該再生デバイスの再生ソフトの表示領域を拡大するエクスパンド機能を備え、当該エクスパンド機能により前記シンクロコンテンツ表示の制限を取り除くように構成されている、請求項3に記載のシンクロコンテンツ放送配信システム。
【請求項5】
前記再生デバイスは、シンクロコンテンツ表示のトリガにより、前記フィードに書き込まれたテイクオーバーシンクロコンテンツ表示用のフィードアイテムに対応付けられたファイルを読み込むことにより、該再生デバイスの再生ソフトの表示領域を一定時間だけシンクロコンテンツに変えるテイクオーバー機能を備え、当該テイクオーバー機能により前記シンクロコンテンツ表示の制限を取り除くように構成されている、請求項4に記載のシンクロコンテンツ放送配信システム。
【請求項6】
前記再生デバイスは、シンクロコンテンツ表示のトリガにより、前記フィードに書き込まれたサブシークエンスシンクロコンテンツ表示用のフィードアイテムに対応付けられたファイルを読み込むことにより、番組本編の内容にシンクロして、該再生デバイスの再生ソフトの表示領域をスライドショー的に変えるサブシークエンス機能を備え、当該サブシークエンス機能により前記シンクロコンテンツ表示の制限を取り除くように構成されている、請求項5に記載のシンクロコンテンツ放送配信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイマル放送を利用したシンクロコンテンツ放送配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット通信網および衛星放送の普及に伴い、スマートフォン等の高機能型の携帯電話或いは高機能型の再生端末装置が開発されて、多くのユーザに利用されるようになってきた。
【0003】
また、テレビやラジオ放送と同時に、該テレビやラジオ放送の内容と同じ内容の放送或いは該テレビやラジオ放送そのものを、IP(インターネットプロトコル)網のような、本放送以外の伝送路を使用してリアルタイムで配信するIPサイマル配信のサービスが提供されるようになってきており、それらのサービスを利用することができるIPサイマルテレビ、IPサイマルラジオ、等が一般の人達にも利用されるようになってきている。
【0004】
そこで、テレビやラジオで放送される広告(コマーシャル:CM)枠に同期して、再生端末装置のディスプレイに、広告主サイトとハイパーリンクされている広告関連情報を表示させるように構成されたシンクロコンテンツ(放送連動型広告)を実現するシンクロコンテンツ放送配信が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009年278315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常のラジオ、テレビの放送(ラジオ局、テレビ局から配信されている放送)を、放送と同時にIP公衆網を利用して、PC、スマートフォン、タブレット型端末、情報家電など多様なデバイス(再生デバイス)に配信するように構成されているIPサイマルラジオ、IPサイマルテレビでは、様々な要因で再生時間に遅延が生じ、その遅延の大きさは、利用している再生デバイスの種類により異なる。その結果、再生デバイスにおいて、シンクロコンテンツ表示タイミングの問題が発生する。シンクロコンテンツの表示の遅延は、通常IPサイマルラジオ、IPサイマルテレビの番組本編の再生の遅延より少ない。したがって、放送される番組本編の配信よりも先にシンクロコンテンツが再生デバイスのソフト(表示画面)上に表示されてしまう(即ち「ずれ」が生じる)という問題が発生する。その一例として、シンクロコンテンツの場合に、番組本編がサッカー放送の場合に、番組本編(例えば得点するシーン)の配信より先に、得点が既に表示されたスコアボード(アドを伴う)が、再生デバイスのソフト(表示画面)上に表示されてしまう等の不都合が生じる(即ち「ずれ」が生じる)。
【0007】
本発明は、上述した従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであり、オンエアーされているコマーシャル或いは番組本編とウェブページ、アプリケーション等との間で遅延が生じた場合であっても、簡便かつ迅速な方法でずれを発生させずに、シンクロコンテンツをオンエアーされている番組本編及び/又はコマーシャルにシンクロさせてウェブページ、アプリケーション等を再生デバイスのディスプレイ上に表示するように構成されたシンクロコンテンツ放送配信システムを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、IPストリーム化した放送データにシンクロコンテンツをシンクロさせるためのシンクロコンテンツ放送配信システムであって、絶対時間に合わせてタイムコードを生成し、放送局マスタから出力された放送データに対して該タイムコードを埋め込むタイムコードジェネレータと、タイムコードが埋め込まれた放送データをエンコードしてIPストリームに変換するエンコーダと、IPストリームを配信するストリーミングサーバと、ストリーミングサーバから配信されたIPストリームをデコードし、当該IPストリームに埋め込まれたタイムコードを読み込むデコーダと、少なくとも一つまたは二つ以上のシンクロコンテンツを記憶する記憶装置からシンクロコンテンツを読み取り、当該シンクロコンテンツを配信するウェブサーバと、ストリーミングサーバから配信されたIPストリームとウェブサーバから配信されたシンクロコンテンツを受信する再生デバイスと、を備え、ウェブサーバは、IPストリームに埋め込まれたタイムコードとウェブサーバから受信したシンクロコンテンツのトリガ発生時間とが一致した時点で、再生デバイスにシンクロコンテンツに対する処理を実行させるように構成される、シンクロコンテンツ放送配信システムによって達成される。なお、上記一致した時点については、後述する。
【0009】
本発明のシンクロコンテンツ放送配信システムでは、デコーダがIPストリームから読み込んだタイムコードの時間と絶対時間との時間差を算出し、当該算出した時間差をシンクロコンテンツのトリガ発生時間に加算して該時間差に対応したトリガ時間を算出するトリガ時間演算装置を更に備え、ウェブサーバは、トリガ時間演算装置によって算出したトリガ時間に基づいて記憶装置から読み取ったシンクロコンテンツを少なくともトリガ時間以降に再生デバイスに配信するように構成されるのがよい。
【0010】
本発明のシンクロコンテンツ放送配信システムでは、ウェブサーバは、各々がトリガ時間演算装置によって算出したトリガ時間に異なるバッファ時間長をそれぞれ加算して形成される異なる実効バッファ時間長に対応する複数のフィードを備え、複数のフィードの各々は、シンクロコンテンツの表示に必要なデータ群の中の一つのデータに対応付けられたフィードアイテムを書き込むように構成された階層状の複数の表示エリアを有するように構成するのがよい。
【0011】
本発明のシンクロコンテンツ放送配信システムでは、再生デバイスは、ウェブサーバに備えられた異なるバッファ時間長に対応する複数のフィードを備え、特定のバッファ時間長がリクエストされた場合に、当該リクエストされた特定のバッファ時間長に対応するフィードの表示エリアに書き込まれているフィードアイテムに基づいてシンクロコンテンツに対して処理を実行するように構成にされるのがよい。
【0012】
本発明のシンクロコンテンツ放送配信システムでは、再生デバイスは、ウェブサーバに備えられている複数のフィードを一定時間ごとに読みに行くように構成されていて、ウェブサーバでフィードの更新が実行された場合に、遅延なく該再生デバイスの対応するフィードを更新し、当該更新されたフィードに書き込まれているフィードアイテムに基づいてシンクロコンテンツに対して処理を実行するように構成にされるのがよい。
【0013】
本発明のシンクロコンテンツ放送配信システムでは、再生デバイスは、シンクロコンテンツ表示のトリガにより、フィードに書き込まれたエクスパンドシンクロコンテンツ表示用のフィードアイテムに対応付けられたファイルを読み込むことにより、該再生デバイスの再生ソフトの表示領域を拡大するエクスパンド機能を備え、当該エクスパンド機能によりシンクロコンテンツ表示の制限を取り除くように構成されているのがよい。
【0014】
本発明のシンクロコンテンツ放送配信システムでは、再生デバイスは、シンクロコンテンツ表示のトリガにより、フィードに書き込まれたテイクオーバーシンクロコンテンツ表示用のフィードアイテムに対応付けられたファイルを読み込むことにより、該再生デバイスの再生ソフトの表示領域を一定時間だけシンクロコンテンツに変えるテイクオーバー機能を備え、当該テイクオーバー機能によりシンクロコンテンツ表示の制限を取り除くように構成されているのがよい。
【0015】
本発明のシンクロコンテンツ放送配信システムでは、再生デバイスは、シンクロコンテンツ表示のトリガにより、フィードに書き込まれたサブシークエンスシンクロコンテンツ表示用のフィードアイテムに対応付けられたファイルを読み込むことにより、番組本編の内容にシンクロして、該再生デバイスの再生ソフトの表示領域をスライドショー的に変えるサブシークエンス機能を備え、当該サブシークエンス機能によりシンクロコンテンツ表示の制限を取り除くように構成されているのがよい。
【0016】
また、本発明の上記課題は、IPストリーム化した放送データにシンクロコンテンツをシンクロさせるためのシンクロコンテンツ放送配信システムであって、
絶対時間に合わせてタイムコードを生成し、放送局マスタから出力された放送データに対して該タイムコードを埋め込むタイムコードジェネレータと、
タイムコードが埋め込まれた放送データをエンコードしてIPストリームに変換するエンコーダと、
IPストリームを配信するストリーミングサーバと、
ストリーミングサーバから配信されたIPストリームをデコードし、当該IPストリームに埋め込まれたタイムコードを読み込むデコーダと、
少なくとも一つまたは二つ以上のシンクロコンテンツを記憶する記憶装置からシンクロコンテンツを読み取り、当該シンクロコンテンツを配信するウェブサーバと、
ストリーミングサーバから配信されたIPストリームとウェブサーバから配信されたシンクロコンテンツを受信する再生デバイスと、を備え、
ウェブサーバは、各々が異なる実効バッファ時間長に対応する複数のフィードを備え、複数のフィードの各々は、シンクロコンテンツの表示に必要なデータ群の中の一つのデータに対応付けられたフィードアイテムを書き込むように構成された階層状の複数の表示エリアを有し、
ウェブサーバにおいて、フィードにフィードアイテムが追加、変更、または削除された場合、
再生デバイスは、少なくとも一つのストレージ領域を備え、かつ
(i)フィードを、ウェブサーバから定期的に取得し、
(ii)フィード取得後、フィードアイテムの差分を抜き出し、
(iii)ユーザが任意に設定した音声及び/又は映像バッファ時間+固定値(想定される音声及び/又は映像の遅延時間)が経過した後に、再生デバイスの表示用ストレージ領域に用意された表示用フィードに、フィードアイテムの差分を追加、変更、または削除し、
(iv)表示用ストレージ領域から、追加、変更、または削除が実行された表示用フィードを定期的に読み込み、
(v)読み込んだフィードを再生デバイスの表示画面上に即時表示することにより、
配信されたコンテンツのずれを解消することを特徴とするシンクロコンテンツ放送配信システムによって達成される。
【0017】
更に、本発明の上記課題は、IPストリーム化した放送データにシンクロコンテンツをシンクロさせるためのシンクロコンテンツ放送配信システムであって、
絶対時間に合わせてタイムコードを生成し、放送局マスタから出力された放送データに対して該タイムコードを埋め込むタイムコードジェネレータと、
タイムコードが埋め込まれた放送データをエンコードしてIPストリームに変換するエンコーダと、
IPストリームを配信するストリーミングサーバと、
ストリーミングサーバから配信されたIPストリームをデコードし、当該IPストリームに埋め込まれたタイムコードを読み込むデコーダと、
少なくとも一つまたは二つ以上のシンクロコンテンツを記憶する記憶装置からシンクロコンテンツを読み取り、当該シンクロコンテンツを配信するウェブサーバと、
ストリーミングサーバから配信されたIPストリームとウェブサーバから配信されたシンクロコンテンツを受信する再生デバイスと、を備え、
ウェブサーバは、各々が異なる実効バッファ時間長に対応する複数のフィードを備え、複数のフィードの各々は、シンクロコンテンツの表示に必要なデータ群の中の一つのデータに対応付けられたフィードアイテムを書き込むように構成された階層状の複数の表示エリアを有し、
ウェブサーバにおいて、フィードにフィードアイテムが追加、変更、または削除された場合、
ウェブサーバは、フィードアイテム毎に追加、変更、または削除を行うべき絶対時刻(トリガ発生時刻)を記録し、
再生デバイスは、少なくとも一つのストレージ領域を備え、かつ
(i)フィードをウェブサーバから定期的に取得し、
(ii)フィード取得後、フィードアイテムの差分を抜き出し、
(iii)フィードアイテムがウェブサーバ上で生成された時に記述された絶対時刻+ユーザが任意に設定した音声及び/又は映像バッファ時間+固定値を加えた時刻に、再生デバイスの表示用ストレージ領域に用意された表示用フィードに、フィードアイテムの差分を追加、変更、または削除し、
(iv)表示用ストレージ領域から、追加、変更、または削除が実行された表示用フィードを定期的に読み込み、
(v)読み込んだフィードを再生デバイスの表示画面上に即時表示することにより、
配信されたコンテンツのずれを解消することを特徴とするシンクロコンテンツ放送配信システムによって達成される。
【0018】
そして、本発明の上記課題は、IPストリーム化した放送データにシンクロコンテンツをシンクロさせるためのシンクロコンテンツ放送配信システムであって、
絶対時間に合わせてタイムコードを生成し、放送局マスタから出力された放送データに対して該タイムコードを埋め込むタイムコードジェネレータと、
タイムコードが埋め込まれた放送データをエンコードしてIPストリームに変換するエンコーダと、
IPストリームを配信するストリーミングサーバと、
ストリーミングサーバから配信されたIPストリームをデコードし、当該IPストリームに埋め込まれたタイムコードを読み込むデコーダと、
少なくとも一つまたは二つ以上のシンクロコンテンツを記憶する記憶装置からシンクロコンテンツを読み取り、当該シンクロコンテンツを配信するウェブサーバと、
ストリーミングサーバから配信されたIPストリームとウェブサーバから配信されたシンクロコンテンツを受信する再生デバイスと、を備え、
ウェブサーバは、各々が異なる実効バッファ時間長に対応する複数のフィードを備え、複数のフィードの各々は、シンクロコンテンツの表示に必要なデータ群の中の一つのデータに対応付けられたフィードアイテムを書き込むように構成された階層状の複数の表示エリアを有し、
ウェブサーバにおいて、
音声及び/又は映像に関して、ウェブサーバ上で一定単位のサイズでファイル化し、それぞれのファイルの所定の部分に絶対時間情報を書き込み、
再生デバイスにおいて、
(i)再生デバイスには、取得用フィード及び表示用フィードの2種類のフィードのための少なくとも一つのストレージ領域が設けられており、
(ii)フィードアイテムに書き込まれたトリガ時間と、配信された音声及び/又は映像ファイルのタイムスタンプとが一致したところで、音声及び/又は映像を、取得用フィードのためのストレージ領域から、表示用フィードのためのストレージ領域に書き込み、再生デバイスの表示画面上に即時表示することにより、
配信されたコンテンツのずれを解消することを特徴とするシンクロコンテンツ放送配信システムによって達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるシンクロコンテンツ放送配信システムは、より広告効果を高めるために、オンエアーされているコマーシャルの内容にシンクロして、オンライン上のウェブページ、アプリケーションを、例えばスライドショー方式で、ディスプレイ上に表示させることができる。
【0020】
また、本発明によるシンクロコンテンツ放送配信システムは、広告(オンエアーされているコマーシャル)だけでなく、番組本編に利用することにより、放送されている番組本編とオンラインとが組み合わされた新しいメディア展開が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明によるシンクロコンテンツ放送配信システムの実施例1に係る概略構成を示す概略ブロック図である。
図2図1のシンクロコンテンツ放送配信システムの動作を説明するための概略フロー図である。
図3図1のシンクロコンテンツ放送配信システムによる配信側における遅延の調整方法を説明するための図である。
図4図1のシンクロコンテンツ放送配信システムによる再生デバイス(再生ソフト)側における遅延の調整方法を説明するための図である。
図5図1のシンクロコンテンツ放送配信システムによるフィードを用いたバッファリング機能を説明するための図である。
図6図1のシンクロコンテンツ放送配信システムによるエクスパンド機能を説明するための図である。
図7図1のシンクロコンテンツ放送配信システムによるテイクオーバー機能を説明するための図である。
図8】本発明によるシンクロコンテンツ放送配信システムの実施例2に係る概略構成を示す概略ブロック図である。
図9】本発明によるシンクロコンテンツ放送配信システムの実施例3に係る概略構成を示す概略ブロック図である。
図10】本発明によるシンクロコンテンツ放送配信システムの実施例4に係る概略構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明によるシンクロコンテンツ放送配信システムの実施例1の概略構成を示す概略ブロック図である。
【0024】
以下の説明において、コマーシャル、アドバタイズメント、アド、或いはCMと記載されているものは、番組本編であってもよいし、コマーシャルと番組本編との組合せであってもよいが、説明を簡略化するために、単にコマーシャルと記述する。
【0025】
なお、以下の説明では、コマーシャルは、アドバタイズメント、アド、或いはCMと記載される場合がある。
【0026】
図1に示すように、本実施例のシンクロコンテンツ放送配信システム10は、
絶対時間に合わせてタイムコードを生成し、放送局マスタ20から出力された放送データに対して該タイムコードを埋め込むタイムコードジェネレータ40と、タイムコードが埋め込まれた放送データをエンコードしてIPストリームに変換するエンコーダ50と、IPストリームを配信するストリーミングサーバ60と、ストリーミングサーバ60から配信されたIPストリームをデコードし、当該IPストリームに埋め込まれたタイムコードを読み込むデコーダ80と、少なくとも一つまたは二つ以上のシンクロコンテンツを記憶する記憶装置90からシンクロコンテンツを読み取り、当該読み取ったシンクロコンテンツを配信するウェブサーバ100と、ストリーミングサーバ60から配信されたIPストリームとウェブサーバ100から配信されたシンクロコンテンツを受信する再生デバイス70と、を備え、ウェブサーバ100は、IPストリームに埋め込まれたタイムコードとシンクロコンテンツのトリガ発生時間とが一致した時点で、再生デバイス70にシンクロコンテンツに対する処理を実行させるように構成される。
【0027】
ここで、シンクロコンテンツに対する処理とは、以下に説明するフィードの表示エリアに書き込まれているフィードアイテムを実行することであり、その一例としては、再生デバイス70にシンクロコンテンツを表示させる処理である。
【0028】
更に、デコーダ80がIPストリームから読み込んだタイムコードの時間と絶対時間との時間差TDMINを算出し、かつ当該算出した時間差TDMINをシンクロコンテンツのトリガ発生時間Tに加算して該時間差に対応したトリガ時間TDMIN+Tを算出するトリガ時間演算装置110を備えている。ここで、時間差TDMINとは、換言すると、再生デバイス70で設定されたか或いは再生デバイス70に固有な遅延時間(処理に対する遅延時間)を考慮に入れない場合における、シンクロコンテンツの配信と当該シンクロコンテンツの表示との時間差を表すものである。
【0029】
ウェブサーバ100は、トリガ時間演算装置110によって算出したトリガ時間TDMIN+Tに基づいて(即ち、トリガ時間TDMIN+Tを考慮に入れて)、IPストリームに埋め込まれたタイムコードとシンクロコンテンツのトリガ発生時間とが一致した時点で、記憶装置90から読み取ったシンクロコンテンツに対して再生デバイス70に処理を実行させるように構成されている。本実施例において、ウェブサーバ100が実行する処理の一例は、記憶装置90から読み取ったシンクロコンテンツを再生デバイス70に配信し、再生デバイス70に、シンクロコンテンツを再生デバイス70の再生ソフトRS上に表示させることである。
【0030】
以下、図2のフロー図を参照して、図1に示すシンクロコンテンツ放送配信システム10の動作を上記構成部分の機能及び動作に基づいて詳述する。
【0031】
本実施例では、コマーシャルは、表1に示すように、当該コマーシャルの素材を特定する10桁のCM共通コードと、当該CMに対応付けられたシンクロコンテンツを特定する4桁のシンクロコンテンツコードと、から構成されている。例えば、楽園保険というラジオコマーシャルと、そのラジオコマーシャルにリンクするシンクロコンテンツ(ラジオコマーシャルの詳細な内容を示すもの)を、それぞれ以下のコードで表す:
【0032】
[表1]
CM共通コード 楽園保険 ABCD000001
シンクロコンテンツコード 楽園保険 ABCD000001-S001
ここで、シンクロコンテンツコードに記載されているS001は、CM共通コードABCD000001で示される楽園保険のコマーシャルにリンクする1番目のシンクロコンテンツであることを示す。
【0033】
本実施例では、上記CM共通コード及び上記シンクロコンテンツコードは、コード管理センター(図示省略)によって付番されるものとするが、本発明は、それに限定されるものではなく、様々な方法により付番を実行してもよい。
【0034】
まず、放送局マスタ20は、本編番組と映像及び/又は音声で構成されかつ上記CM共通コード及び上記シンクロコンテンツコードが付番されたコマーシャルとによって構成されている放送データを出力する(ステップS1)。
【0035】
次いで、ベースバンド(基底帯域)伝送装置30は、放送局マスタ20から出力された放送データを入力してベースバンドストリームに変換し、変換したベースバンドストリームを配信する(ステップS2)。
【0036】
タイムコードジェネレータ40は、ベースバンド伝送装置30から配信されたベースバンドストリームに対してタイムコード(例えば、SMPTE Time Code)を生成し、当該生成したタイムコードをベースバンドストリームに埋め込む(ステップS3)。
【0037】
表2に、タイムコードの一例として上記楽園保険のシンクロコンテンツコードに対するものを示す:
【0038】
[表2]
ABCD000001-S001 19:30:00 00:01:00
表2に示された数字列の中において、タイムコードは、S001の右側の部分に、
19:30:00 00:01:00
として表される数字列である。
【0039】
上記タイムコードが表している内容は、楽園保険(ABCD000001)の1番目のシンクロコンテンツ(S001)を19時30分にトリガして、19時30分から1分間、再生ソフトSRの表示領域(即ち、再生再生デバイス70の表示画面)上に表示する、というものである。
【0040】
エンコーダ50は、タイムコードジェネレータ40でタイムコードが埋め込まれたベースバンドストリームをエンコードして、エンコードしたベースバンドストリームを配信する(ステップS4)。
【0041】
ストリーミングサーバ60は、エンコーダ50から配信されたベースバンドストリームを読み込む(ステップS5)。
【0042】
デコーダ80は、ストリーミングサーバ60が読み込んだベースバンドストリームをIPストリームにデコードする(ステップS6)。
【0043】
また、デコーダ80は、タイムコード読取機能を用いて、デコードしたIPストリームに埋め込まれたタイムコードを読み込む(ステップS7)。
【0044】
そして、ストリーミングサーバ60は、デコーダ80によりデコードしたIPストリームを再生デバイス70に配信する(ステップS8)。
【0045】
(A)配信側における遅延の調整
図3を参照して、配信側における遅延の調整について説明する。
【0046】
(i)トリガ時間演算装置110は、デコーダ80でIPストリームから読み込んだタイムコードの時間TREと絶対時間TABとの時間差TDMIN(即ち、シンクロコンテンツの配信と当該シンクロコンテンツの表示との時間差)を算出し(ステップS9)、当該算出した時間差TDMINをシンクロコンテンツのトリガ発生時間Tに加算してトリガ時間TDMIN+Tを取得する(ステップS10)。
【0047】
(ii)ウェブサーバ100は、トリガ時間演算装置110によって算出したトリガ時間TDMIN+Tに基づいて(即ち、トリガ時間TDMIN+Tを考慮に入れて)、IPストリームに埋め込まれたタイムコードとシンクロコンテンツのトリガ発生時間とが一致した時点で、記憶装置90から読み取ったシンクロコンテンツに対して再生デバイス70に処理を実行させる(ステップS11)。
【0048】
本実施例では、ウェブサーバ100が再生デバイス70に実行させる処理の一例として、記憶装置90から読み取ったシンクロコンテンツを再生デバイス70に配信し、再生デバイス70に、シンクロコンテンツを再生デバイス70の再生ソフトRS上に表示させることである。その他の処理の例については、後述する。
【0049】
本発明では、上述した方法、即ちトリガ時間演算装置110によって算出したトリガ時間TDMIN+Tに基づいて、配信側におけるシンクロコンテンツの遅延を調整する。
【0050】
(B)再生デバイス70の再生ソフトRS側における遅延の調整
図4を参照して、再生デバイス70の再生ソフトRS側における遅延の調整について説明する。
【0051】
(i)表示させたいシンクロコンテンツのトリガ発生時間Tを予めIPストリームに埋め込んで放送局マスタ20から配信する(以下、トリガ発生時間が予め埋め込まれたIPストリームを便宜上トリガ信号と呼ぶ)(ステップS13)。
【0052】
[表3]
トリガ信号の一例:
ABCD000001-S001 19:30:00 00:01:00
上記トリガ信号の意味は、楽園保険(ABCD000001)の1番目のシンクロコンテンツ(S001)を19時30分(19:30:00=トリガ発生時間T)から1分間(00:01:00)表示するというものである。
【0053】
(ii)スイッチオンされた再生デバイス70(例えば、IPサイマルラジオ)上の再生ソフトRS(例えば、表示クライアントソフト)で上記配信されてきたトリガ信号を受信してトリガ発生時間Tを読み込む(ステップS14)。
【0054】
(iii)他方で、上記ステップS7でストリーミングサーバ60から配信されたIPストリームを受信してIPストリームに埋め込まれたタイムコードを読み込む(ステップS15)。
【0055】
(iv)上記ステップS12で読み込んだトリガ発生時間Tと、上記ステップS13で読み込んだタイムコードに示されている時間とが一致した時点(これについては後述する)で、シンクロコンテンツ(上記の例では、楽園保険のシンクロコンテンツ)を再生デバイス70の再生ソフトRS上(再生デバイス70の表示画面上)に表示する(ステップS16)。
【0056】
ここで、上記「トリガ発生時間Tと、タイムコードに示されている時間とが一致した時点」について説明する。
【0057】
説明を簡略化するために、トリガ発生時間Tを示すトリガ信号は、遅延なしで再生デバイス70に配信されてきたものとする。
【0058】
上記のトリガ信号の一例:
ABCD000001-S001 19:30:00 00:01:00
では、19:30:00がトリガ発生時間Tを示すものである。
【0059】
他方、ウェブサーバ100には、遅延したIPストリームが配信されてきている。その遅延の程度は、デコーダ80でIPストリームから読み込んだタイムコードの時間TREと絶対時間TABとの時間差TDMIN(即ち、シンクロコンテンツの配信と当該シンクロコンテンツの表示との時間差)として表される。
【0060】
換言すると、ウェブサーバ100では、受信したIPストリームのタイムコードが、実質的にこの時間差TDMINの時間分だけ、その表示値よりも遅れている(ずれている)ということである。
【0061】
例えば、時間差TDMINを5秒とすると、受信したIPストリームのタイムコードの表示値19:30:00(トリガ発生時間T)が、絶対時間に対して5秒ずれている(遅れている)ことになり、(絶対時間に対して)19:30:05が実際のトリガ発生時間T’となる。これは、絶対時間19:30:00の時点では、再生デバイス70が19:29:55(対絶対時間)の放送内容を放送しており、この時点でCM等のシンクロコンテンツを放送に挿入した場合(即ち、CMのトリガを発生した場合)には、ユーズが再生デバイス70を利用してIPサイマルラジオを聴いているときに、音楽が流れている最中にその音楽が突然遮られてCMの放送が流れてくる(即ち、CM放送が混入する)状態になる。
【0062】
即ち、「トリガ発生時間Tとタイムコードで示されている時間TTCとが一致する時点」とは、絶対時間に対して実際のトリガ発生時間T'とシフトしたタイムコード時間T'TC(見掛け上のタイムコード時間)とが「一致する時」のことを意味しており、上記の例では、19:30:05が「一致する時」を表すものである。即ち、絶対時間で19:30:05になったときに、ウェブサーバ100でシンクロコンテンツの処理(タイムコードTTC=19:30:00に対応する処理)がトリガされることになる。これは、後続する処理にも同様に反映されるので、再生デバイス70では、5秒の遅れで全ての処理が実行されることになる。
【0063】
次に、図5を参照して、上記時間差TDMIN(即ち、上記トリガ時間TDMIN+T)に基づいて、シンクロコンテンツを再生デバイス70の再生ソフトRS上に表示する段階(上記ステップS16)を説明する。
【0064】
再生デバイス70の再生ソフトRSは、ストリーミングのバッファ時間を設定できる機能を有している。本実施例では、再生デバイス70の再生ソフトRSは、0秒、15秒、30秒、1分、3分のいずれかのバッファ時間を選択することができるように構成されているものとするが、バッファ時間は、これらに限定されるものではなく、任意の時間間隔で設定できるように構成してもよい。
【0065】
シンクロコンテンツの表示に必要なデータ群をフィードアイテムと呼ぶ。このフィードアイテム(即ちデータ郡)は、URL、表示用テキスト(text)、コマンド(command)、集計ログ(log)用のビーコン(beacon)等から構成されている。
【0066】
また、フィードアイテムを複数格納する機能をフィード、特にバッファ時間用のフィードと呼ぶ。
【0067】
ウェブサーバ100は、再生デバイス70に設定されているバッファ時間に応じて、各々がトリガ時間演算装置110によって算出したトリガ時間TDMIN+Tに、異なるバッファ時間長(例えば、0秒、15秒、30秒)をそれぞれ加算して形成される異なる実効バッファ時間長(例えば、TDMIN+T+0秒、TDMIN+T+15秒、TDMIN+T+30秒)に対応する複数のフィードを備えている。そして、複数のフィードのそれぞれは、各々がシンクロコンテンツの表示に必要なデータ群の中の一つのデータに対応付けられたフィードアイテムを書き込むように構成された階層状の複数の表示エリアを有している。
【0068】
他方、再生デバイス70は、ウェブサーバ100に備えられた異なるバッファ時間長に対応する複数のフィードを備え、特定のバッファ時間長(例えば、30秒)がリクエストされた場合に、当該リクエストされた特定のバッファ時間長に対応するフィードの表示エリアに書き込まれているフィードアイテムに基づいて動作するように構成にされているので、実質的に遅延が存在しない状態でシンクロコンテンツを再生デバイスに表示することができる。
【0069】
また、再生デバイス70は、ウェブサーバ100に備えられている複数のフィードを一定時間ごとに読みに行くように構成されていて、ウェブサーバ100でフィードの更新が実行された場合に、遅延なく該再生デバイス70の対応するフィードを更新し、当該更新されたフィードに書き込まれているフィードアイテムに基づいて動作するように構成にされている。
【0070】
以下に、上記バッファリングの方法を具体的に説明する。
【0071】
例えば、一つの再生デバイス70Aが0秒のバッファ時間長を有し、別の一つの再生デバイス70Bが30秒のバッファ時間長を有する場合について説明する。
【0072】
上記の例と同様に、トリガ信号の一例:
ABCD000001-S001 19:30:00 00:01:00
では、19:30:00がトリガ発生時間Tを示すものである。
【0073】
他方、ウェブサーバ100には、遅延したIPストリームが配信されてきている。その遅延の程度は、デコーダ80でIPストリームから読み込んだタイムコードの時間TREと絶対時間TABとの時間差TDMIN(即ち、シンクロコンテンツの配信と当該シンクロコンテンツの表示との時間差)として表される。
【0074】
換言すると、ウェブサーバ100では、受信したIPストリームのタイムコードが、実質的にこの時間差TDMINの時間分だけ、その表示値よりも遅れている(ずれている)ということである。
【0075】
例えば、時間差TDMINを5秒とすると、受信したIPストリームのタイムコードの表示値19:30:00(トリガ発生時間T)が、絶対時間に対して5秒ずれている(遅れている)ことになり、(絶対時間に対して)19:30:05が実際のトリガ発生時間T’となる。
【0076】
(1)0秒のバッファ時間長を有する再生デバイス70Aの場合には、
絶対時間:
19:30:00
において、実質的には、絶対時間
19:29:55
の時点で受信すべき信号(IPストリーム)を現在受信している。
【0077】
この時点で、再生デバイス70Aは、0秒のバッファリング時間が必要になる。そこで、0秒後に受信するIPストリームを待つことになる。
【0078】
即ち、絶対時間で
19:30:00
にならないと、トリガが発生しないことになる。即ち、トリガ時間TDMIN+T=19:30:05が考慮されて、絶対時間で、
19:30:05
にならないと再生デバイス70Aでは、トリガが実際に発生しないことになる。
即ち、絶対時間において
19:30:05
の時刻に、実効バッファ時間長(TDMIN(=5秒)+T+0秒)に対応する複数のフィードを読み行き、最上位のフィード(表示エリア)に書き込まれているフィードアイテムに従って処理を実行する。ここでは、フィードアイテムが特定のURLとして書き込まれているので、その書き込まれているURLにアクセスして楽園保険のCMを1分間放送する。
【0079】
00:01:00
上記の時間は、CMを1分間放送することを示している。
【0080】
(2)30秒のバッファ時間長を有する再生デバイス70Bの場合には、
絶対時間:
19:30:00
において、実質的には、絶対時間に対して5+30秒=35秒だけ遅れている
19:29:25
の時点で受信すべき信号(IPストリーム)を現在受信している。
【0081】
この時点で、再生デバイス70Bは、35秒のバッファリング時間が必要になる。そこで、35秒後に受信するIPストリームを待つことになる。
【0082】
即ち、絶対時間で
35秒後に受信するIPストリームを待つことになる。
【0083】
即ち、絶対時間で
19:30:35
にならないと、トリガが発生しないことになる。即ち、トリガ時間TDMIN+T=19:30:05とデバイス70Bのバッファ時間30秒が考慮されて、絶対時間で、
19:30:35
にならないと再生デバイス70Bでは、トリガが実際に発生しないことになる。
即ち、絶対時間において
19:30:35
の時刻に、実効バッファ時間長(TDMIN(=5秒)+19:30:00+30秒)に対応する複数のフィードを読み行き、最上位のフィード(表示エリア)に書き込まれているフィードアイテムに従って処理を実行する。ここでは、フィードアイテムが特定のURLとして書き込まれているので、その書き込まれているURLにアクセスして楽園保険のCMを1分間放送する。
【0084】
00:01:00
上記の時間は、CMを1分間放送することを示している。
【0085】
このように構成することにより、再生デバイス70A、70Bでは、それぞれ異なる絶対時間となっても、シンクロコンテンツへのアクセス、即ち、シンクロコンテンツがそれぞれの再生デバイス70A、70Bの表示ソフト上に表示されるときに、それぞれの再生デバイス70A、70Bでは、本編の表示とシンクロコンンテンツとの表示の間に「ずれ」が発生しない。
【0086】
(C)シンクロ表示に対する制限を取り除く方法
(i)エクスパンド(拡張)
図6は、図1のシンクロコンテンツ放送配信システムによるエクスパンド機能を説明するための図である。
【0087】
通常、再生デバイスにおいて、再生ソフトのタイムラインの表示領域が小さいために、簡単なアイコンとテキスト程度のものだけしか表示領域に表示することができないというシンクロ表示の制限がある。そこで、このようなシンクロ表示の制限を取り除くために、本発明では、シンクロコンテンツ表示のトリガにより、再生デバイス70の再生ソフトRSの表示領域(再生デバイス70の表示画面の一部或いは全部)を拡大させるエクスパンド(拡張)機能を再生デバイス70の再生ソフトRSに設けた。その結果、再生デバイス70の再生ソフトRSの表示領域における表現力が格段に強化され、当該表示領域をエクスパンド(拡張)すると通常のウェブサイトとほぼ同様の表現を実現することができる。
【0088】
ストリーミングサーバ60には、再生ソフトとエクスパンドシンクロコンテンツ型再生ソフトのXML等で記述されたファイルとが用意されている。フィード(例えばフィードの最上位)にエクスパンドシンクロコンテンツ表示用のフィードアイテムが書き込まれ、そのフィードアイテムに対応付けられたファイルを再生ソフトRS側で読み込むと、再生プレイヤーRPがエクスパンド(拡張)するように構成されている。
【0089】
図6に示すように、通常、左側の再生プレイヤーのみが表示されて、右側のエクスパンドした部分、即ちアドの部分は、表示されない。ここで、上述したエクスパンド機能を用いることにより、右側のエクスパンドした部分、即ちアドの部分を表示することができるようになる。
【0090】
このように表現領域が拡大されることにより、テキスト、静止画、動画、ツイッター(twitter)等との連携が可能になる。即ち、シンクロコンテンツ領域上にソーシャルメディアが公開しているAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を利用してマッシュアップすることにより、例えば当該番組のハッシュタグのツイッターのタイムラインをエンコードすることができる。
【0091】
そして、シンクロコンテンツ表示のトリガから一定の表示時間を設定し、設定した表示時間が満了或いは経過すると、元の再生ソフトに戻るように構成されている(これは、エクスパンドコンテンツが単に一定時間だけエクスパンド(拡張)する構成とは原理的に異なる)。これは、フィードに書き込まれたフィードアイテムに、通常の再生ソフトを指定時間に読み込むコマンドを書き込むことによって実現される。
【0092】
[表4]
一例: ABCD000001-S001 19:30:00 ex 00:01:00
上記の符号の意味は、「楽園保険」の「シンクロコンテンツ」を19時30分から1分間表示させる、ということである。
【0093】
(ii)テイクオーバー
図7は、図1のシンクロコンテンツ放送配信システムによるテイクオーバー機能を説明するための図であり、主にスマートフォン等の携帯型再生デバイスにおいて実施されるものである。
【0094】
再生ソフトの表示領域を拡大できないスマートフォン等の再生デバイスに対しては、ナウオンエア等の番組関連情報を表示する部分が一定時間だけシンクロコンテンツに変わる機能(テイクオーバー機能)を再生デバイス70の再生ソフトSRに設ける。このテイクオーバー機能は、上述したエクスパンドの原理的に全く同じ方法で実現される。指定した一定時間が経過すると、エクスパンドの時と同様に、元の再生ソフトSRに戻る。
【0095】
(iii)サブシークエンス
図1のシンクロコンテンツ放送配信システムによるサブシークエンス機能を説明する。
【0096】
上記エクスパンドや、上記テイクオーバーされる部分(番組関連情報を表示する部分)に関して、トリガ以降サブシークエンスがスタートし、さらに番組本編の内容にシンクロしてページがスライドショー的に変わる機能(サブシークエンス機能)を再生デバイス70の再生ソフトSRに設ける。
【0097】
サブシークエンスに対応しているシンクロコンテンツ(サブシークエンス対応シンクロコンテンツ)は、複数のページからなるブック(Book)形式で構成されていて、トリガ時に再生ソフトSR側にバッファリングされる。このバッファリングについては上述したので、ここではその説明を省略する。
【0098】
トリガ以降のページの変更は、音声或いは映像コマーシャルの内容にシンクロしたスケジュールに基づき実施される。
【0099】
例えば、1分間の楽園保険のコマーシャルに対応した4ページからなるシンクロコンテンツがあった場合には、最初のページは19:30(再生ソフトの開始時間)にスタートし、2ページ目が15秒後、3ページ目が40秒後、最後の4ページ目は50秒後から1分間に亘って表示(満了時間00:01:50)させる場合には、スケジュールを下記に示すように設定することによって、シンクロコンテンツを再生デバイス70の再生ソフトSRの表示領域に表示させることができる:
一例: ABCD000001-S001-SQ001 19:30:00(トリガ)
サブシーケンス開始:
ABCD000001-S001-SQ001 00:00:00 (ページ1を表示)
ABCD000001-S001-SQ002 00:00:15 (ページ2を表示)
ABCD000001-S001-SQ003 00:00:40 (ページ3を表示)
ABCD000001-S001-SQ004 00:00:50 (ページ4を表示)ex 00:01:50
上述した実施例では、トリガ発生をIPストリームに埋め込まれたトリガ発生時間のタイムコードに基づいて実行するように構成したが、本発明によるトリガ発生方法は、これに限定されるものではない。例えば、ウォータマーク、フィンガープリント、タイムスタンプ、等の方法を用いてもよい。
【0100】
本発明は、上述したように構成することにより、オンエアーされているコマーシャル或いは番組本編とウェブページ、アプリケーション等との間で遅延が生じた場合であっても、簡便かつ迅速な方法で「ずれ」を発生させずに、シンクロコンテンツをオンエアーされている番組本編及び/又はコマーシャルにシンクロさせてウェブページ、アプリケーション等を再生デバイス70のディスプレイ上に表示すると共に、再生デバイス70の表示画面上でウェブページ、アプリケーション等の表示領域をエクスパンド、テイクオーバー、或いはサブシークエンスさせて表示することができるようになる。
【実施例2】
【0101】
上述した実施例1では、配信されたコンテンツが再生デバイス70の表示画面上に表示されるまでの処理工程において、配信されたコンテンツの「ずれ」を、主として再生デバイス70以外の構成要素によって解消する構成について説明した。
【0102】
実施例2は、配信されたコンテンツの「ずれ」を、図1に示す再生デバイス70において解消する別の処理方法について説明する。
【0103】
実施例2では、配信されたコンテンツの「ずれ」を、図1に示す再生デバイス70とは、その構成が多少異なる再生デバイス170(図8参照)によって解消する処理方法について説明する。
【0104】
本実施例の処理方法は、トリガ発生時にウェブサーバ100(サーバ側)のフィード内にフィードアイテム(例えば、楽天保険のCMのシンクロコンテンツ)が追加される場合に適用される。
【0105】
次に、具体的な処理内容を以下に示す。
【0106】
ウェブサーバ100(サーバ側)において、随時、フィードにフィードアイテムが追加、変更、または削除される。
【0107】
再生デバイス170(クライアント側)において、
(1)フィードを、ウェブサーバ100から定期的に取得する。
【0108】
(2)フィード取得後、フィードアイテムの差分(新たに追加したシンクロコンテンツの部分)を抜き出す。
【0109】
(3)取得用フィード及び表示用フィードの2種類のフィードを設ける。
【0110】
(4)再生デバイス170のストレージ領域(表示用ストレージ領域)170Aに用意された表示用フィードに、ユーザが任意に設定した音声及び/又は映像バッファ時間+固定値(想定される音声及び/又は映像の遅延時間)が経過した後に、フィードアイテムの差分を追加、変更、または削除する。
【0111】
(5)再生デバイス170は、表示用フィードを定期的に読み込み、読み込んだフィードを再生デバイス170の表示画面上に即時に表示する。
【0112】
即ち、実施例2の処理方法は、再生デバイス170に表示用フィードを別途設け、再生デバイス170は、表示用フィードを単に定期的に読み込み或いは表示する処理のみを実行し、表示用フィードに書き込むタイミングをバッファ時間分(音声及び/又は映像バッファ時間+固定値)だけ遅らせるようにした。
【実施例3】
【0113】
実施例3では、配信されたコンテンツの「ずれ」を、上述した実施例2と同様に、図9に示す再生デバイス270において解消する別の処理方法について説明する。
【0114】
本実施例の処理方法は、音声及び/又は映像ストリームに埋め込まれたタイムスタンプを参照することにより、精度の高いシンクロを実現する。
【0115】
ウェブサーバ100において、
(1)随時、フィードに、フィードアイテムが追加、変更、または削除される。
【0116】
(2)その際、ウェブサーバ100でフィードアイテム毎に追加、変更、または削除を行うべき絶対時刻を記録する。例えば、トリガ発生時として、楽天保険のCMのシンクロコンテンツ 19:30:00にトリガが発生される場合、等。
【0117】
再生デバイス270において、
(1)取得用フィード及び表示用フィードの2種類のフィードを設ける。
【0118】
(2)フィードをウェブサーバ100から定期的に取得する。
【0119】
(3)フィード取得後、フィードアイテムの差分(新たに追加したシンクロコンテンツの部分)を抜き出す。
【0120】
(4)再生デバイス270のストレージ領域270Aに用意された表示用フィードに、フィードアイテムがウェブサーバ100上で生成された時に記述された絶対時刻+音声及び/又は映像バッファ時間+固定値を加えた時刻に、フィードアイテムの差分を追加、変更、または削除する。
【0121】
(5)再生デバイス270は、表示用フィードを定期的に読み込み、読み込んだフィードを再生デバイス270の表示画面上に即時に表示する。
【0122】
即ち、実施例3の処理方法は、再生デバイス270がウェブサーバ100からフィードを受け取ることの遅延にも対応させるべく、フィードアイテム毎に絶対時刻を記録し、バッファ時間を加算して制御するようにした。
【実施例4】
【0123】
上述した実施例2及び実施例3では、配信されたコンテンツの「ずれ」を、図1に示す再生デバイス70によって解消するそれぞれ別の処理方法について説明した。
【0124】
実施例4では、配信されたコンテンツの「ずれ」を、図1図8及び図9に示す再生デバイス70、170、270とは、その構成が異なる再生デバイス370(図10参照)によって解消する処理方法について説明する。即ち、実施例4は、音声及び/又は映像の遅延によるズレを解消する処理方法について説明する。
【0125】
なお、実施例4における構成は、再生デバイス70が再生デバイス370に変更された以外は、図1の構成と同じである。
【0126】
また、シンクロコンテンツに関しては上記実施例3の処理方法を参照のこと。
【0127】
ウェブサーバ100において、
(1)音声及び/又は映像に関しては、ウェブサーバ100上で一定単位のサイズ(例えば、1秒間)でファイル化し、それぞれのファイルのヘッダ等に絶対時間情報を書き込む(即ち、タイムスタンプを施す)。
【0128】
再生デバイス370において、
(1)フィードアイテムに書き込まれたトリガ時間と、配信された音声及び/又は映像ファイルのタイムスタンプとが一致したところで、音声及び/又は映像を、取得用フィードのためのストレージ領域370Aから、表示用フィードのためのストレージ領域370Bに書き込み、表示する。
【0129】
(2)再生デバイス370には、取得用フィード及び表示用フィードの2種類のフィードのためのストレージ領域370A、370Bが設けられている。
【0130】
ここで、上記ファイル化とは、ファイルそのものをHTTP通信方式で伝送するプロトコルのことであり、例として、HLS(HTTP Live Streaming)、AdobeのHDS(HTTP Dynamic Streaming)等がある。
【0131】
上述した実施例2乃至実施例4に示すように、本発明のシンクロコンテンツ放送配信システムによれば、配信されたコンテンツの「ずれ」を、再生デバイスにおいて、複雑なメカニズム或いはプログラムを用いることなく、解消することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のシンクロコンテンツ放送配信システムは、配信されたコンテンツが再生デバイスの表示画面上に表示されるまでの処理工程において、配信されたシンクロコンテンツの「ずれ」を容易に解消することができるので、スマートフォンやページャ等の携帯端末装置におけるシンクロコンテンツ放送配信に利用することができる。
【符号の説明】
【0133】
10 シンクロコンテンツ放送配信システム
20 放送局マスタ
30 ベースバンド伝送装置
40 タイムコードジェネレータ
50 エンコーダ
60 ストリーミングサーバ
70 再生デバイス
80 デコーダ
90 記憶装置
100 ウェブサーバ
110 トリガ時間演算装置
170 再生デバイス
170A ストレージ領域
270 再生デバイス
270A ストレージ領域
370 再生デバイス
370A 取得用ストレージ領域
370B 表示用ストレージ領域
図1
図2
図3
図4
図5
図8
図9
図10
図6
図7