特許第5982364号(P5982364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5982364測定媒体の成分または特性、特に生理的血液値を特定およびモニタするための装置ならびに方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982364
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】測定媒体の成分または特性、特に生理的血液値を特定およびモニタするための装置ならびに方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20160818BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20160818BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   A61B5/14 322
   A61B10/00 EZDM
   G01N21/27 B
【請求項の数】30
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-515863(P2013-515863)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公表番号】特表2013-533769(P2013-533769A)
(43)【公表日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】EP2011060337
(87)【国際公開番号】WO2011161102
(87)【国際公開日】20111229
【審査請求日】2014年5月22日
(31)【優先権主張番号】11163361.6
(32)【優先日】2011年4月21日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10166854.9
(32)【優先日】2010年6月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】312016894
【氏名又は名称】センスペック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SENSPEC GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルケ,アクセル
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/079661(WO,A1)
【文献】 特開2009−300423(JP,A)
【文献】 実公平05−018686(JP,Y2)
【文献】 特表平07−503863(JP,A)
【文献】 特表2003−513236(JP,A)
【文献】 特表2000−515778(JP,A)
【文献】 特開2004−261364(JP,A)
【文献】 特開2008−132335(JP,A)
【文献】 特開2008−008794(JP,A)
【文献】 特開2009−066119(JP,A)
【文献】 特開平07−308312(JP,A)
【文献】 特開2007−252693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1455
A61B 10/00
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定媒体の成分または特性を特定およびモニタするための装置であって、前記装置は、
測定領域(3;3′,3″)に作用するために、広帯域光(2;2a,2b)を発生するための少なくとも1つの光源(20;20a,20b)と、
波長に従い分析光(4)を分光するための手段とを備え、分析光(4)は少なくとも1つの測定点(3;3′,3″)から戻ってきている、または測定点を透過しており、さらに
分光された分析光(13)を記録するための二次元センサアレイ(11)を備え、センサアレイは、異なる波長の光がセンサアレイ(11)の異なる点に当たり、分光された分析光が二次元センサアレイの複数の隣接する列に当たり、スペクトルが二次元センサアレイの複数の列によって同時に捉えられるよう配置され、
装置(1)はハウジング(16)を有し、少なくとも光源(20;20a,20b)、分光するための手段(9)、およびセンサアレイ(11)を含み、
二次元センサアレイ(11)は、分光された分析光が二次元センサアレイ(11)の複数の隣接する列に当たるように配置され、前記装置は、信号対ノイズ比を改善するために隣接する列によって生成されたスペクトルを加算するコンピュータを有する、装置。
【請求項2】
ハウジング(16)は人間の患者の体のある点に固定するよう適合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
分光するための手段は、回折格子(9)を有する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
装置(1)は、分析光(4)用の入力領域と分光するための手段(9)との間に配置されるスリットアパーチャ(7)を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
光を分光するための手段(9)について、スリットアパーチャ(7)は、細長い画像が細長い画像と異なる方向に広げられるように配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
装置は、二次元センサアレイ(11)の出力信号をアナログからデジタルに変換するアナログ/デジタルコンバータを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
装置は、二次元センサアレイ(11)の出力信号を増幅し、前記装置の外側からパラメータ化が可能な増幅器を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
装置は電気的通信接続(29)用のコネクタを有し、装置は光を向けるまたは離れるよう案内するためのコネクタを有さない、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
装置は透過および反射を測定するよう設計されている、請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
装置はコンピュータ(26)を有し、透過測定および反射測定を交互に行なうことができるよう設計されており、装置は、第1の測定領域(3′)を照射することにより、反射測定を行なうための第1の光源と、透過測定を行なうために、第2の測定領域(3″)を照射するための第2の光源(20b)とを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
装置には、分析光(4)を反射領域(3′)および透過領域(3″)から分離するための手段(17)が設けられる、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
装置は50Hzを超える周波数で走査するよう設計されており、それにより測定される生理的血液値の組織成分およびパルス性成分を確定することができる、請求項1から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置の外部に配置されたコンピュータ(26,30)が前記装置に接続され、前記コンピュータは測定が時間分解態様で行なうことができるよう設計されている、請求項1から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記装置の外部に配置されたコンピュータ(26,30)が前記装置に接続され、前記コンピュータは、得られたスペクトルの二次導関数を確定することができるよう、および生理的血液値がこの二次導関数に基づき確定できるよう、設計されている、請求項1から13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
ンピュータ(32)および請求項1から14のいずれか1項に記載の装置を組合せた機器であって、装置(1)およびコンピュータ(32)は、通信ケーブル(29)によって、相互接続されるまたは相互接続可能である、機器。
【請求項16】
生物の測定媒体の成分または特性を特定およびモニタするための方法であって、前記方法は、
広帯域光源(20;20a,20b)からの光(2;2a,2b)を少なくとも測定領域(3;3′,3″)に与えるステップと、
反射および/または透過モードで戻ってきた分析光(4)を捉えるステップと、
捉えられた分析光(4)に対して波依存分光を行ない、捉えられた分析光(4)の個々の波長依存成分を、二次元センサアレイ(11)でスペクトルを生成するために結像するステップとを備え、分光された分析光は、スペクトルが二次元センサアレイの複数の列によって同時に捉えられるようにセンサアレイ(11)の複数の隣接する列に結像され、前記方法はさらに、
測定媒体の成分または特性を確定するために、生成されたスペクトルを評価するステップとを備え、信号対ノイズ比を改善するために、個々の列によって生成されたスペクトルが加算され、
ハウジングが前もって生物の測定領域(3;3′,3″)に与えられ、ハウジングは光源およびセンサアレイを収納する、方法。
【請求項17】
分析光(4)は回折格子(9)で分光される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
分析光(4)は、反射モードおよび透過モードで捉えられる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
分析光(4)は、時間分解態様で評価される、請求項16から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
生理的血糖値を確定するために、捉えられたスペクトルの二次導関数が確定される、請求項16から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
走査は50Hzを超える周波数で行なわれ、測定された生理的血液値の組織成分およびパルス性成分が確定される、請求項16から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
コンピュータプログラムであって、コンピュータで実行される場合、請求項16から21のいずれか1項に記載のステップを実行する、コンピュータプログラム。
【請求項23】
前記二次元センサアレイ(11)は、二次元CMOSアレイである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記装置は、生理的血液値をモニタおよび特定するためのものである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記広帯域光は、500nmから850nmおよび/または800nmから1200nmの光を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
前記光源は、LEDを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項27】
前記ハウジング(16)は、指もしくは耳たぶに、または測定媒体用のラインに固定するよう設計されている、請求項2〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項28】
前記分光するための手段は、ホログラフィック回折格子を有する、請求項3〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記細長い画像は、細長い画像と垂直な方向に広げられる、請求項5〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
請求項1から14のいずれか1項に記載の装置または請求項15に記載の機器と併せて実行される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定媒体の成分または特性、特に生理的血液値を特定およびモニタするための装置ならびに方法に関し、独立請求項のプリアンブルの特徴を有する。測定媒体の成分または特性をモニタおよび測定することは、医療および非医療の様々な用途で現在行なわれている。一例として、患者の血液の成分(たとえば血糖値または酸素飽和度)、または非医療用途(たとえば、プロセス監視)の処理流体(液体または気体)の成分は、オンラインで特定し、続けてモニタされるべきである。
【背景技術】
【0002】
一例として、パルスオキシメトリは、動脈血の脈拍(PR)および酸素飽和度(%SpO2)を定めるための方法である。今日、これは確立した方法であり、多くの医療分野、たとえば睡眠の監視や、手術の間の集中治療に用いられている。
【0003】
もととなる技術においては、一般にLEDによって生成される2つの波長(典型的には660nmおよび940nm)を記録し、これは光センサを用いて速いクロック速度で行なわれる。可変のおよび固定した領域における異なる信号強度から、所望の測定値を抽出することができる。組織が観測スペクトル範囲に対して透明である結果、さらなる信号を、変動の結果として強いかつ特に変動し得る外部光の場合に、発生することができる。これらは、LEDの照明がなくても、第3の測定点によってそれぞれ捉えることができる。
【0004】
一般的な問題は、光学測定技術の場合において組織に導入することができる光の量が制限されていることである。制限されなければ、組織は熱的影響の結果損傷を受けるからである。このため、測定時間は既知の測定方法および装置では相対的に長い。これは劣った信号対ノイズ比をもたらす。しかし最良の信号対ノイズ比が必須である。特に、非常に低い濃度の物質を測定する場合(たとえば、mmol/lの領域の濃度を測定する血糖検査の場合)においては必須である。
【0005】
今日では、患者をモニタする際に重要なパラメータを得るために、ヘモグロビンの酸素飽和度に加えて、さらなる血液のパラメータを得ることが望ましい。
【0006】
第1に、血液中のガスバランスをモニタすることが重要である。WO 2008/132205 A1は、パルスオキシメトリに加えて、組織におけるCO2分圧を定めるために用いることができるセンサを記載している。
【0007】
モニタの際のさらなる重要な値は、異なるヘモグロビン誘導体である。これは、総ヘモグロビン濃度(ctHb)、一酸化炭素ヘモグロビン濃度(HbCO)および他の血液の値を定めることを含む。しかし、これらの追加の血液値は、上記の技術(2つの波長)によっては得ることができない。これらの値を得るための前提となるのは、広いスペクトル範囲にわたる動脈血および組織の分光特性を正確に決定することである。
【0008】
測定するべき別の血液値は血糖含有量である。糖尿病は世界で最も一般的な代謝病であり、食事習慣が変化していることにより、ますます増えてきている。したがって、2010には約2.85億人(世界全人口の6.4%)の患者数があると考えられ、2030年には4.39億人(人口の7.7%)の患者数になると予測される。これは体の流体のグルコース濃度が臨床化学において最も具体的に必要なパラメータの1つとなる理由である。ここでは、非侵襲性の方法を用いて正確に血糖値を定めるのが理想である。
【0009】
患者のモニタに向けて、WO 2006/094169 A1は、さらなる血液パラメータを検査するために、LEDに基づく測光システムを提案しており、このシステムは異なる波長の複数のLED(一般に8個)を有し、異なるスペクトルノードで信号を集めることができる。しかし、この技術にはいくつかの欠点がある。LEDは順次スイッチングされ、広帯域センサによって時間のずれを有して記録されるので、外部光が変わった影響やセンサに対する動きがある場合、しばしば仮想重畳信号を有することがある。この技術において、多くのLEDおよびノードが順次切換えられなければならないので、さらに互いに対する信号の相対的強度から評価が主に行なわれなければならないので、このような重畳は特に大きな影響を与える。さらに、LEDは温度依存照射曲線を有し、スペクトルの20nmから30nmの間の半値全幅は一般にLED照射のもととなるので、これは狭いスペクトル範囲の正確な限定を可能にせず、したがって該当する化学成分も限定できない。さらに、人によって異なる皮膚表面および組織の特性と組合せられたノードの数が少ないことにより、血液成分の正確な分離および定量分析は、ある限定されたレベルでしか可能ではない。測定からは少しのノードの比率しか生成できず、これらの少ない比率を用いて化学成分を分析するしかない。しかし、血液の分光計測および光が通過する組織の特性(人によって異なる散乱特性および波長依存)は、測定結果に大きく影響するので、この方法を用いた測定は誤差を持つ傾向がある。
【0010】
今日、開発の多様性により、血漿、血清などの血液や液体だけでなく、たとえば尿といった他の体液から由来して、グルコース濃度の確実な値が決定可能になった。近年、特に酵素に基づく方法が確立されてきている。しかし、この場合、これらの方法の多くは少量の採血を必要とし、それゆえ侵襲性の方法の1つといえる。
【0011】
グルコースを測定する現在の実務は、たとえば医者に掛かった場合の頻度の低いものから、集中治療の患者の場合のように1時間数回測定されるものもある。インシュリンに依存する糖尿病患者では、帯状の器具を用いて1日多くて6回ほど自己モニタして、改良された、しかし理想的ではない、血液グルコース濃度を規制することが一般的である。このような測定は採血を必要とし、患者はこれを好ましく思わない。さらに、押出されるということにより、血液は必ずしも組織流体と平衡ではない。これは不正確さをもたらす。
【0012】
したがって、医療工学において、非侵襲性の方法およびそれに関連する装置の開発が非常に望ましい。
【0013】
血糖値を定めるためには、血液中のグルコース濃度を定量的に定める必要がある。
複雑な体液中のグルコースを決定するための、試薬を使わない分光法が既に開発されている。一例として、近赤外範囲(NIR分光法)における分光測定は既に開示されている。ここでは、低濃度のグルコース(約2mmol/lから約30mmol/lまで;ターゲット範囲5.0から7.0mmol/l)が検出されなければならない。さらに、血液には高い水分含有量(典型的には80%を超える)があり、NIR分光法では、より大きな吸収が引起される。さらに、血液は他の物質を変動するおよび未知の濃度で含み、交差感度を除外しなければならない。非侵襲性の測定とするのなら、周りの組織内の体内で測定を行なう必要があり、異なる媒体の影響を考慮するまたは除外しなければならない。
【0014】
さらに、非侵襲性測定方法の場合、体上の測定点を選択する必要がある。有利な測定点は、必ずしも血液が別にあるのではなく、血液が組織の中にある場合もある。さらに、組織は皮膚の層によって覆われており、その特性は人によって異なり、さらに時間にわたって大きく変動し得る。たとえば、皮膚の水分量は大きく変動し、とりわけ汗の活動に大きく依存する。さらに、皮膚は異なる構造を有し、多くの場所で皮下脂肪層を有し、まずその脂肪の層はより低い水分量によって特徴付けられており、第二により低い灌流を有し、それゆえ必ずしも血糖と平衡ではない。さらに、光学測定領域には骨組織もあるということを考慮する必要がある場合が多い。ここでは、骨組織が成分と平衡であるということは自明ではない。
【0015】
化学成分の波長に依存する検査は、いくつかの異なる方法で行なわれ得る。測定は別個のノードで行なうことができる。一般に、これは光度測定またはマルチスペクトル測光と呼ばれ、異なる波長を有する複数の光トランスミッタで行なわれるか、広帯域の「白色光」が用いられ、複数のスペクトルが制限されているレシーバ(フィルタ技術)が用いられる。異なる波長を有する光トランスミッタは、LEDもしくはレーザによって、さらに広帯域の照射およびフォトレシーバ上の狭い帯のフィルタによって、実施することができる。LEDが用いられるのなら、さらなる技術的困難がある。第1に、これらは相対的に広い放射分散を有することであり、第2に、放射分散はエミッタが加熱されるに従い変わることである。一例として、この技術はたとえば米国特許第5,086,229号に記載されている。
【0016】
これら測定技術は一般に3から約10の波長または波長範囲を有し、これらが記録および評価される。
【0017】
この測定技術は血糖値を測定する用途を早めるものではない。第1に、複数のノードが800nmから1200nmの間の有効な波長範囲内においてこの測定技術で実施しなければならない。ここでは、これらのノードは3つの要件を満たさなければならない:
1.グルコースおよび水の吸収帯域上および外になければならない。
【0018】
2.血液または組織で起こり得る他の物質に対する交差感度と独立していなければならない。
【0019】
3.異なる散乱信号および光路を計算し、そこから異なる基本信号を計算できるよう、設計されなければならない。
【0020】
こうして、血糖含有量を非侵襲性的に測定するためには、以下の条件が満たされなければならない。水分濃度と比べて低いグルコース濃度を特定することが、分光手段によって可能でなければならない。組織を深く浸透(典型的には3mmより深く)することが必要である。他の物質に対する交差感度を除外できなければならない。血液からの値と組織からの値とを区別できなければならない(拍動チェック)。器具は費用効果があり、小型であり、携帯可能でなければならない。光源は指が火傷しないよう強過ぎてはならない。光源は好ましくはLEDに基づくものである。
【0021】
現時点では、糖尿病患者に対して非侵襲性の正規の安全かつ確実な血糖値測定を可能にする大量生産できる器具の開発はできなかった。前記の方法および装置の多くは、これらの問題を解決するまたは上記の条件を満足させることには適さない。
【0022】
血糖値を測定するための非侵襲性センサは、たとえば米国特許第5,070,874号および米国特許第5,360,004号に開示されている。
【0023】
さらに、反射性測定技術も周知である。これらを血糖値測定に適用するには制限がある。第1に、放射の主要部は表面から来る。第2に、皮膚は人によって異なる構造を有し、さらに体上の場所毎にも異なる。さらに、散乱特性を確実に規定することはできない。したがって、必要な低い物質濃度での定量的測定は、反射分光法を用いて上記の問題のためには適切ではない。
【0024】
分光法は有機物質の濃度を決定するために用いられており、基本的技術として、医療研究に用いられることが多い。従来では、少量の採血を行ない、測光または分光手段によってin vitroで採取した血液を検査する。器具およびこれを行なう観点での複雑性は、この侵襲性技術において著しい。さらに、時間的遅れがある。in vitroでの判定では、患者のモニタリングに対してはその使用が非常に制限されている。
【0025】
分光計量法では、光は分光計を用いて広いスペクトル範囲に分けられ、今日では回折格子構造が主に用いられ、光は一列に並んだ多くのフォトレシーバ(ピクセル)を有するセンサでスペクトルの態様で記録および分析される。さらなるオプションとして、フーリエ変換法(FTIR分光測光)があり、これは好ましくは近赤外範囲で用いられる。
【0026】
この方法も、血糖値の測定には理想的ではない。第1に、この方法はより長い波長放射に適する。第2に、フーリエの原理により狭い帯域のピークに適するが、これは血液の水分およびグルコースの定量的分析には800nmから1200nmの範囲において必要である広帯域吸収の場合には相対的に不正確であり、誤差を伴う測定方法である。
【0027】
発明者たちは、血糖値測定の場合には、650nmから約1200nmの範囲のスペクトル範囲での方法を用いるべきであることを認識した。なぜなら、他の範囲では、組織での可能な経路の長さは短過ぎることになり、さらに皮膚および外側の層の影響が大き過ぎるからである。このスペクトル範囲は、医療工学において診断ウインドウとして知られている。この範囲は、皮膚表面下の物質の分析も可能にする。さらに、光の有効光路長は、組織の強い散乱特性の結果、直接経路長さから大きくずれることが知られている。推定のための典型的な変動は、直接経路長さに対して、有効経路長さについては2倍から8倍である。
【0028】
しかし、血糖値測定のための既知の方法の多くは、吸収帯域で起こるより強い信号により、1300nmを超える波長で測定するので、血糖値を定めるための既知の方法のうちわずかしか残らない。
【0029】
血糖値を定めるためのさらなる技術は、Fischbacher他(Ch. Fischbacher, K.-U. Jagemann, K. Danzer, U. A. Mueller, L. Papenkordt, J. Schueler;非侵襲性近赤外分光法による血液グルコース判定のためのキャリブレーションモデルの拡張;Fresenius J Anal Chem (1997年) 359: 78-82 Springer-Verlag 1997年)およびMeuer他(人の眼による非侵襲性グルコース判定;Wolfgang Schrader, Petra Meuer, Juergen Popp, Wolfgang Kiefer, Johannes-Ulrich Menzebach およびBernhard Schrader; Journal of Molecular Structure, 第735-736巻、2005年2月14日、頁299から306およびDissertation Petra Meuer, University of Wuerzburg 2002年)によって提案されている。
【0030】
Fischbacher他は、近いリンクが確立できることを示している。しかし、従来の分光法器具の信号対雑音比は不十分であることがわかった。さらに、測定は反射モードで行なわれ、これは上記のように、組織では生産的ではない。
【0031】
Meuer他は眼球で行なわれた測定でも優れた結果を示している。透明で非分散的な媒体のおかげで、提案されている方法は反射モードでも用いることができる。しかし、商業的に利用できる分光測光技術では、低い濃度を確実に判断するための必要な信号対雑音比を満たさないことがはっきりと示されている。
【0032】
測定媒体の成分が時間分解態様で確定されなければならない用途の分野は、血液中の乳酸塩や、血液値が同様に(しかし任意に、in vitroで)確定される、人工心肺装置における血液透析または血液中の測定、またはたとえばプロセス流体が監視される非医療用途に関連する。一例として、典型的な非医療用途は、生産処理において液体の色測定を含む。同様に、燃料処理におけるガスの測定も考えられる。一例として、続けて与えられる成分を加える場合の食品技術においても、さらなる用途の選択肢が出てきている。
【0033】
in vivoで血液および組織成分を検査するために室内分光計を用いることが既に開示されている。先行技術に従い、現在の室内分光計はラインセンサを用いて操作される。室内分光計は一般にガラスファイバコネクタを用いて動くので、光を照射および収集するための複雑な光学的導波路の方法も、(組織上のセンサの)測定点から分光計を有する器具ユニットまで経路付けられなければならない。しかし、時間分解測定は、同時に、著しい光損失(特に、光結合の場合)により、低い信号対雑音比でしか実現できない。
【0034】
したがって、このような室内分光計の適用は、血液値をモニタまたは測定、たとえば、酸素飽和度または血糖値の判定といったものには適さない。
【0035】
モノクロメータシステムおよびFTIR分光計は、組合せられたスペクトル分析およびパルスモニタ用の時間的要件を満たさない。
【0036】
ガラスファイバは、有効光の少量しか獲得できない。したがって、そのユニットは測定の際、一般に長い統合時間を必要とする。EP 522674 A2は、胎児の血液酸素飽和度を決定するためのオキシメータを開示している。ここでは、分光計が使用され、測定点からの測定光はガラスファイバによって、分光計に送られる。
【0037】
US 2006/0167348は、従来のFTIR分光計を用いて、in vivoで赤外スペクトルを生成する実施を開示している。ここでは、測定光をガラスファイバによって送ることが提案されている。
【0038】
WO 2009/043554は、生体組織から分光測定信号を集めるための方法および測定装置を開示している。しかし、測定光がどのようにセンサ配置に結合されるのかが示されていない。
【0039】
分光計は光を必ず分割させ、体の皮膚面が受けることができる光の強度が制限されていることにより、これらの測定は今まで時間分解、すなわちパルス分解態様で行なうことはできなかった。しかし、これは測定値のパルス性成分と組織成分とを区別するためには必要である。
【0040】
さらに、センサは、または少なくとも体に取付けられた部分は、長期のモニタの場合に患者にとって煩わしくないよう、特定の寸法を超えてはならない。
【0041】
時間分解態様で測定値を記録するスペクトル測光測定用のシステムは、WO 03/071939 A1に提案されている。ここでは、広帯域光源が異なるスペクトルフィルタを用いて順次測定される。このシステムは非常に大規模かつ複雑である。さらに、時間分解情報は1つの波長でのみ記録され、波長は順に連続して記録される。したがって、異なるスペクトル範囲および血糖値をモニタするためにも用いられるべきこのようなシステムは、パルスおよび血液パラメータを長期に監視するためには適さない。
【0042】
米国特許第5,879,294号では、組織の発色団の分光計測が行なわれるシステムが提案されている。ここでは、スペクトルの二次導関数が評価のために用いられ、評価はノード(典型的には物質当たり2つ)で行なわれる。これにより、組織における酸素飽和度を定めるのが可能となる。この方法は、発色団の静的な、すなわち、パルス性または時間分解的ではない、定量判断を行なうことができる。組織酸素濃度(StO2濃度)をモニタするためのそれに係わる方法は、WO 2007/048989 A1に示されている。
【0043】
さらに、患者をモニタリングする(たとえば、酸素飽和度を確定する)ためには、血液の成分(ヘモグロビン)と組織の成分(ミオグロビン)との間を区別する必要がある。ヘモグロビンおよびミオグロビンの変質のスペクトル特性は非常に似ているが、スペクトル的に高い分解検査の場合には異なる。区別を可能にする方法は、米国特許第5,931,779号に記載されている。
【0044】
これに対して、組織と血液との違いは、血糖値を測定する場合には必須ではない。したがって、血糖値を測定する場合には、パルス分解測定は必須ではない。正確な値は、血液の血糖含有量と組織の血糖含有量との間が平衡であれば、得られる(たとえば皮下脂肪および骨がない、十分に灌流した組織である場合)。しかし、パルス性成分があれば、平衡であるか否かのチェックができる。
【0045】
in vivoでの血液分析の分野におけるさらなる困難な制約は、患者をモニタリングするのに医療上重要である500nmから850nmの間のスペクトル範囲にわたり、当該血液、組織および皮膚成分の吸収またはモル吸光係数が大きく減少することにある。したがって、ヘモグロビンおよび皮膚に含まれるメラニンは、可視範囲において非常に大きな吸収係数を有するが、近赤外範囲(VNIR)においては著しく低い。
【0046】
好ましくは一般に800nmから1200nmの間の波長範囲内で定められる血糖値を測定する場合、組織においてはより低い吸収となるので、この問題は血糖値を測定する場合には重要性がより低い。
【0047】
しかし、in vitroで血液の値を測定する場合、たとえば糖尿病患者の場合、またはたとえばパイプの中といったアクセスが難しい機械部分でのプロセスパラメータを非医療的に測定およびモニタする場合には、匹敵する問題が起こり得る。このような用途では、時間分解測定が必要となり、大型の室内分光計では、測定点に容易に持ってくることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0048】
すべての既知の解決策は、こうした欠点により損なわれる。特に、パルス測定の点において、パルス性成分(動脈血)および静的成分(静脈血および組織、ミオグロビン)との間の区別を有したin vivo血液分析であって、患者に対して連続的に使用できるためのセンサユニットの小型化の点において、非侵襲性血糖値測定の点において、または制限された空間での測定地点での測定媒体の成分を測定する点において、すべての要件をまとめて満たす分光法システムはない。
【0049】
上記の制約により、in vivoでおよび時間分解した態様で検査を行なうこと、および/または空間的要件が小さくかつ安定している装置で行なうこと、は不可能であった。
【0050】
したがって、本発明の目的は、知られている欠点を回避し、特に上記の制限がない装置および方法を開発し、特にin vivoで、さらに時間分解した態様で所望の分析を行なうことができる、すなわち動脈血パラメータと組織依存パラメータとの生理学的区別を有して行なうことができる、装置および方法を開発することである。さらに、in vivoで血糖値の時間分解測定を、およびin vitroで血液測定を、または非医療用途の分野において時間分解測定を、確実な態様で、さらにアクセスするのが難しい測定地点で、行なうことが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0051】
本発明に従い、この目的およびさらなる目的は、独立請求項の特徴部の特徴を有する装置および方法によって達成される。
【0052】
分光計測または測光法による検査の理論的基礎は、ビール−ランバートの法則によって与えられる。光が通過した場合の、溶液における分子を吸収する濃度ciを決定するために用いることができる。
【0053】
【数1】
【0054】
ここでIλは、被検査物質を通過した後の光強度、I0,λは放射された光の強度、μα,λは波長依存(λ)全体吸収係数であり、lは物質を通る経路長である。組織の散乱特性の結果、有効経路長がこの場合予期され、これは一般に波長にも依存するが、これは本スペクトル範囲および用途例では捨て去ることができる。
【0055】
代数的操作により以下となる:
【0056】
【数2】
【0057】
この一般法則は、さらに分けなければならない。なぜなら、人間の血液といった物質は、多くの化学成分物質(分子化合物)からなり、これらの吸収係数は波長に依存した態様で異なるからである。n個の物質の場合以下となる:
【0058】
【数3】
【0059】
経路長はすべての波長に対して同じままであるという仮定に基づき、m個の波長に対して次のように書き換えることができる:
【0060】
【数4】
【0061】
この関係は、以下の形に書き直すことができる:
【0062】
【数5】
【0063】
これから、直接物質の濃度を決定することができる。
さらなる根底は、光と分子との間の量子化学相互作用にある。したがって、個々のおよび分子に特有の回転−振動遷移または電子的遷移は、光量子の波長依存吸収によって励起される。ここで、調波の回転−振動励起および分子の結合した振動の結果として、または発色団の複合電子遷移の結果として、励起は観測スペクトル範囲で起こる。これらの遷移は波長に特有および物質に特有のものである。したがって、異なる物質は異なる波長で分析することができる。しかし、たとえば人体は非常に多くの異なる物質からなり、そこからの情報は重畳したものであるので、量子化学相互作用を考慮するためには、ノードに基づくマルチスペクトル測光または測光分析ではなく、分光法を用いる必要がある。
【0064】
800nmから1200nmの間のスペクトル範囲において水およびグルコースという2つの物質の調波分光をより詳細に観察する場合、さらなる詳細を考慮する必要がある。ここで、水分は非常に特殊な分子である。第1に、原子のさらなる角度の付いた配置を伴う水分の強い極性の結果である。さらに、液体状態では、水素結合はスペクトルに影響を及ぼす。反対に、液体の水の分光法は、温度に強く依存する。しかし、これは本件の場合排除することができる。なぜなら、体の測定地点での温度は、35℃から40℃の狭い温度範囲内に固定されているからである。さらなる影響は、水における分子の分解からもたらされる。こうして、濃度が変わると、分子間の力も変わり、その結果スペクトルも変わる。これらの変化は相対的に小さいが、検出可能であるので、計量化学評価においては考慮しなければならない。
【0065】
本発明の装置は、測定媒体の成分を特定およびモニタするために、特に生理的血液値を特定およびモニタするためにある。装置は広帯域光を発生させるために少なくとも1つの光源を有する。ここで、広帯域とは、光が血液もしくは組織内の、または他の測定媒体内の、対応する成分を分析するのに適する波長で発生することを意味する。一般に、患者をモニタリングする(たとえば酸素飽和度を測定)するためには500nmから850nmの間の周波数範囲の光を、ならびに血糖値を定めるためには800nmから1200nmの間の周波数範囲の光を、少なくとも生成する光源が用いられる。特に、光源は白色LEDであり、血糖値測定のために、NIR範囲内に十分な量の光が生成される。光源は少なくとも1つの測定領域に広帯域光を照射するためにある。測定領域は典型的には生物の表面のある点、より特定的には、人間の指先または耳たぶといった地点である。しかし、測定領域は、測定するべき媒体が流れる管、たとえば人工透析の際に血液を運ぶラインまたは流体をプロセスに供給し、そこから排出するラインであり得る。
【0066】
装置は波長に従って、測定点から戻ってきた分析光を拡散または分光させるための手段をさらに有する。一方で、分析光は測定領域から直接反射された光、または他方では組織を通った後、別の点から再度発せられた分析光であり得る。本装置は分光を記録するためのセンサアレイをさらに有する。センサアレイは典型的には二次元CMOSの配置である。用途および適する周波数範囲に応じて、他の二次元センサアレイ、たとえばInGaAsセンサアレイを用いることもできる。CMOS画像センサの解像度は高く、典型的には100万ピクセル以上を有する(ここで用いられるセンサは1.6MPまたは5MPほども有する)。
【0067】
センサアレイ、典型的にはCMOSセンサアレイを使用する第1の利点は、その簡単な便利性にある。しかし、特に、二次元センサアレイは、より高い測定速度およびより優れた信号対雑音比を可能にする。測定光の波長依存分散の結果、測定光はセンサの列に結像される。しかし、測定光は特定の幅を有し、拡散された測定光(すなわち、スペクトル)は、互いに隣接して並行である複数のセンサアレイの列によって同時に捉えることができる。センサアレイの複数の列が並行に読出される結果、個々の列の結果、すなわち、個々のスペクトルを加えることができる。典型的には、1000個までもの隣接するアレイ列の信号を統合することにより、スペクトルを生成することができる。このため、本装置は二次元アレイの複数の隣接する列の信号を同時に捉えるための手段を有する。さらに、本装置はこれら隣接する列のスペクトルが加えられるよう設計されている。
【0068】
したがって、本発明に従い、二次元センサは、空間的に分解される測定を行なうためには用いられない。むしろ、隣接する列はより短い時間でより多くのスペクトルを生成するために用いられ、それにより優れた信号を生成する。ここで、並行測定は、仮想的に同時測定を意味するものと理解される。当然、センサの個々のピクセルおよび列は順次読出されることは明らかである。しかし、走査周波数は非常に高いので、これは並列列の仮想的に同時の測定と呼ぶこともできる。
【0069】
これは、部分的画像の読出し、およびそれにより高速を達成する。これによって、より優れた信号対雑音比をスペクトルに生成することができる。
【0070】
用途の種類に応じて、信号対雑音比について、異なる要件がある。モニタリングの用途の場合(たとえば、血液飽和度を測定する場合)、対象となるのは多くの場合動脈血だけである。組織成分は対象ではない。このような理由により、モニタリングの用途では、パルス分解測定が必要である。さらに、パルス分解測定では、信号対雑音比は、可能である限り、心臓収縮期の測定値と拡張期の測定値との違いから十分に明確な信号が得られるようなものでなければならない。パルス分解測定は、たとえば血糖値、脂肪またはアルコールといった血液成分を測定する場合には、重要度が下がる。一例として、血糖値の場合、動脈血の成分と組織成分との間の平衡は、相対的に短時間で達成される。これについて、パルス分解測定は必須ではないが、測定結果をチェックするためには絶対有利であり得る。
【0071】
今日、CMOS画像センサは携帯電話、監視カメラおよびデジタルカメラで主流として用いられている。高品質の小型のメガピクセル対物レンズは、最初に言及した2つの適用分野から特に利用可能である。
【0072】
このようなセンサは非常に小さく、3mmのイメージ−エッジサイドを有する。さらに、これらは読出領域用にパラメータ化することができる。こうして、非常に高いフレームレート、たとえば100Hzを超える非常に高いフレームレートが縮小画像領域の場合に可能となり、高いフレームレートはパルス性信号の時間分解評価も可能にする。
【0073】
CMOSセンサの場合、エレクトロニクスは直接センサ内に統合される。光学アレイは、たとえば読出回路、調整可能アンプ、およびアナログ/デジタルコンバータといった回路を有する。これによりデータを迅速に、薄いケーブルによって、転送することができる。分光計、照明、エレクトロニクスおよび画像記録を含む全体の構成は非常に小さく設計できる(好ましくは、20mm×30mm×100mmより小さい、典型的には約10mm×10mm×50mm)。このような装置は薄い電気ケーブルでのみ提供でき、直接患者に取付けることができる。したがって、ガラスファイバなどがなくてもよい。数ミリメートルの寸法のCMOS配置の設計により、小型化されたシステムにおいて十分なスペースが、たとえば指もしくは耳たぶ上、または利用できるスペースが制限されている場所でも、可能となる。
【0074】
非常に向上した画像品質および低い光の要件のおかげで、小さい小型化された照明ユニットを用いることもできる。
【0075】
先行技術で一部用いられているCCDアレイは検出器全体が読出されることを必要とするので、十分に高いフレームレートを達成することは不可能であった。なぜなら、CCDのレートは数Hzだからである。CMOSセンサを「対象領域」(ROI)に制限し、これらを速くすることができる。なぜなら、必要なデータだけを読出せばよいからである。同様にCMOSセンサは画像全体の場合には相対的に低いフレームレートを有するが、ROIに対して制限をかけた場合、典型的には200Hzまでのフレームレートを達成することができる。
【0076】
これにより、パルス分解態様で動くことができるよう、スペクトルを速く記録することが可能となる。最大パルスは典型的に3Hzである。4倍走査の場合、約12Hzが必要となる。
【0077】
血液パラメータのin vivo測定は、信号のパルス性成分をもとに行なうことができる。パルス性成分と静的成分との間で区別する結果、血液の影響と組織の影響との間で区別することができる。この影響およびその可能な評価は、DE 19518511に記載されている。
【0078】
重複隆起の結果、基本周波数が2倍となる。血圧曲線の周波数成分のフーリエ分析は、第8の調波までの成分を含むことができるので、50Hzでの走査は、技術的観点から適切である。
【0079】
さらに、迅速な走査は、高周波数信号成分を生成する移動アーティファクトを減少させる。サンプリング理論が侵されると、このような干渉は信号の有用な範囲内において直接反映される。
【0080】
各画像記録の際に、隣接するセンサの列において約1000個のスペクトルが50Hzで記録され、そのスペクトルは加算または積分の結果十分なデータ深さおよび信号対雑音比を生成するが、血液成分について、組織成分だけでなく、パルス性成分(スペクトルとして、信号の約1%を有する動脈血)をスペクトル的に評価することが可能となる。
【0081】
センサアレイは、異なる波長の光がアレイの異なる点に当たるよう、配置される。さらに、拡散された光は好ましくは、並行に、複数の隣接する列のセンサに案内される。
【0082】
本発明に係る装置の基本的原理およびその利点は、さまざまな用途において同じである。周波数範囲は、測定するべき成分に依存して変えるべきである。したがって、光源、センサ、回折格子および用いられる光学ユニットは、測定状況に適合されるべきである。本発明は患者モニタリングの際の血液値を定めることを基に、さらに血糖値測定を基に、例示的な態様で詳細に説明される。
【0083】
装置は好ましくはハウジングを有し、コンパクトなアセンブリとして設計されている。コンパクトなアセンブリは、少なくとも光源と、分析光を拡散するための手段と、センサアレイとを含む。この配置のおかげで、照明および分光システムを直接測定地点においてセンサに統合することができる。照明および小型化された分光計は直接測定領域に与えることができる。その結果、相対的に剛性でありかつ大きい光ファイバをなくすことができる。より多くの光が大いに利用可能となる。
【0084】
光がガラスファイバを通って測定点に送られると、パワーの大部分は既に失われていることになる。ガラスファイバが組織に結合され、戻ってきた光が再度別のガラスファイバによって取られると、光の大部分は再び失われる。また、スリットだけが切離されて分光計測のためにスペクトル的に広げられると、検出用として少量の光しか残らない。これは技術的に利用可能な最も大きいランプが既知の配置で用いられることをもたらし、同時により長い露光時間での作業が行なわれることとなる。
【0085】
これに対して、ハウジング内の非常に小さい光源(たとえばLED)および分光計は好ましくは直接組織に与えられる。これは光収率を増加させるので、露光時間は非常に短い。
【0086】
光源、測定光を分光するための手段、およびセンサアレイは、測定領域の場所での血液および組織の分光法による分析を可能にする。
【0087】
分光計測の分野において、いくつかの異なる方法がある。ここで、新しい方法としてスペクトル画像化の分野がある。光は有効な回折格子/光学ユニット配置を介して、二次元センサアレイにスペクトル的に分割される。こうして、空間的情報はセンサの一方向において得られ、他方の方向はスペクトル情報を含む。ここで、各個別の画像点は、8、12、14または16ビットのデータ深さを一般に有する強度情報が得られるピクセルである。ここに記載されている発明に対して特に有利な特性を有するCMOS画像センサは、この技術において主要となる。ここで、InGaAsセンサはより長い波長のスペクトル範囲に適するが、これらは必要な回路論理をCMOSパッドに統合する個々のフォトエレメントを有する。
【0088】
本発明に従い、測定光を分光するための手段である回折格子と、分光された光を記録するためのセンサアレイとが好ましくは用いられる。
【0089】
こうして波長分散装置は、カメラまたは画像センサが得られた回折次数において、ならびにSpO2濃度測定のためには500nmから850nmの間の、または血糖値測定のためには800nmから1200nmの間の、適切な波長範囲において、高い光収率を可能にするために、好ましくは分散光学エレメント、一般的には光学回折格子、より特定的にはホログラフィック格子を含み、有利な実施例では、ブレーズド回折格子である。
【0090】
血糖値測定向けには、スペクトル範囲は約800nmから1200nmとして規定される。このスペクトル範囲内において、最も強い信号変動は、960nm+/−50nmおよび1150nm+/−50nmの範囲で検出された。スペクトルは、変動する水分の信号との相関を示す。InGaAsセンサ技術は、同時に両領域を評価することを可能にする。しかし、現在商業的に利用可能なセンサは、このスペクトル範囲内においてCMOSセンサよりも著しく悪いが、後者は1100nmまでの光しか受入れない。こうして、InGaAsセンサは、著しくより少数のピクセル(典型的には100kピクセルから1000kピクセル)を有するので、信号対雑音比も悪くなる。
【0091】
最大回折効率は、使用するセンサが最も低い感度を有する波長範囲内に収まるように選択することができる。一例として、ブレーズ回折格子は、非対称の鋸歯型の格子プロファイルを有する透過型回折格子であり、鋸歯の部分は、所望の回折次数の方向に光を送るよう個々の鏡としてそれぞれ設計される。さらに、ホログラフィック回折格子を用いることもできる。たとえばVPH回折格子(体積相ホログラフィック回折格子)を特定のブレーズまたはホログラフィック回折格子として用いることができる。これらVPH回折格子は透過型回折格子であり、透明な感光性材が2枚のガラスまたはプラスチック板間に囲まれ、変動する屈折率の所望のパターンが、たとえばホログラフィック露光の結果生成され、材料の構造の変化がそれからもたらされる。本発明に従い、このようなブレーズ回折格子の使用は、小さい所定の波長範囲において回折強度の80%を超える高い効率を達成することができる。
【0092】
こうして、回折格子および入射スリットによって非常に小さい分光システムを作成することができ、分光システムは第1にスペクトル範囲全部を網羅し、第2に、パルス依存記録には重要である時間分解を有する。さらに、二次元画像の獲得のおかげで、同時に多くのスペクトルを記録および評価することができ、これは信号対雑音比を著しく向上させる。
【0093】
このような技術の組合せは、より小さい、解像度の高い迅速なセンサユニットを構築可能にし、従来これはパルスオキシメトリ用に体の各点に直接取付けることができる。
【0094】
これにより、センサは指先、母指球、耳たぶ、または皮膚表面といった好ましい測定点に取付けることができる。ハウジングは、患者の人体、特に指または耳たぶの部分に固定できるよう好ましくは設計される。
【0095】
体内での測定品質は、選択される測定点に著しく依存する。特に、血糖値の測定では、その場所は十分灌流し、脂肪組織は少なく、測定するのに容易にアクセス可能でなければならない。したがって、上記のシーケンスでの測定点は血糖値の測定の場合、特に指、母指球、または耳たぶを通る。指の場合、測定は可能であるのなら骨または爪を含まずに行なうよう注意しなければならない。したがって、光を横方向に指に照射し、指先上の中央線で得る選択肢がある。
【0096】
この技術の提案された組合せは以下の非常に重要なセンサ特性を可能にする:センサは約5nm未満の必要なスペクトル分解能において、全部のスペクトルが記録可能となるピクセル解像度を有する。
【0097】
センサの一部を読出し、それにより高い読出速度で記録および読出し(典型的には100Hzより高く)、スペクトルの組織および血液特性をパルスに依存する態様で評価できるオプションがある。
【0098】
さらに、装置は特に好ましくはスリットアパーチャを有する。このスリットアパーチャは分析光用の入力領域と、分析光を分光するための手段との間に配置されている。スリットアパーチャにより、正確に測定領域を規定することが可能となる。特に、分光するための手段について、スリットアパーチャは、細長い画像が画像の長手に対して異なる方向、好ましくは垂直な方向に広げられるよう、配置される。これにより、二次元センサアレイ上に、一方方向において波長に従って分解された表示と、他方方向において測定領域からの空間的に分解された表示とを得ることができる。さらに、本装置は好ましくはアナログ/デジタルコンバータが直接設けられる。現行のCMOS画像センサは典型的にこのようなアナログ/デジタルコンバータを既に含んでいる。しかし、本発明に従い、空間的に分解された表示は、空間的に分解された分析には用いられない。むしろ、隣接する列による複数のスペクトルの並行な測定は、信号を向上させる働きがある。
【0099】
本件の場合、アパーチャは、第1の結像光学ユニット(対物レンズ)を介して結像された領域の細長い帯状の領域を切出す光学手段を意味すると理解される。ここで、帯状の領域は必ずしも連続するものではなく、たとえば個々の画像エレメントのシーケンスからなり得る。
【0100】
本装置はさらに信号用の増幅器を好ましくは有し、外部からパラメータ化できる。CMOS画像センサの多くは外部からパラメータ化できるこのような統合された増幅器を既に有する。
【0101】
回路での信号のデジタル変換の結果、デジタル信号は容易に、失われることなく、相対的に長い距離にわたって電気的に評価ユニットに送られる。
【0102】
光源は好ましくはLEDである。LEDは非常に速くスイッチングできる光源である(典型的には10〜1000μs)。これらは高い光パワーを有するが、組織にとって危険である熱的問題がなく動作される。
【0103】
患者のモニタリング(たとえば、血液における酸素飽和度)に使用する際、可視(VIS)および近赤外(NIR)スペクトル範囲、特に極近赤外範囲、たとえば、500nmから850nmの間のVNIR範囲の光が好ましくは用いられる。この光は好ましくは一個のLEDまたはLEDの組合せによって生成される。一例として、従来の白色光LEDがこれに適する。白色光LEDはさらなる重畳蛍光色素の結果、広帯域の発光を有する。たとえばイッテルビウムもしくはYAGにおいて他の希土類を有する、または同様のホスト回折格子を有する無機蛍光色素などを、色素として用いることができる。
【0104】
異なる色素を組合せることにより、用途に応じて必要なスペクトル範囲全体に光を発生させることができる。こうして、たとえば血糖値測定用としては、800nmから1200nmの間の範囲にある。しかし、異なるLEDから光を組合せることも可能である。しかし、この場合、エミッタは温度的に安定化していなければならず、照射は局所的に十分均一でなければならない。
【0105】
本装置はさらに電気ケーブル用のコネクタを好ましくは有する。特に、装置は光を向けるまたは離れるよう案内するための、光ライン用のコネクタを好ましくは有さない。本発明に係る装置を動作させるには、数本の電気的束を有する細いケーブルで十分である。なぜなら、本発明に係る光源およびセンサには高電流および高電圧は不要であり、特にケーブルをアナログ信号用に選抜する必要がない場合、不要である。
【0106】
スペクトル全部が記録できるので、複数の異なる生理的血液値を確定およびモニタすることが可能となる。特に、以下のパラメータを評価することができる:
パルス周波数
パルス形状および構造
酸素飽和度Hb(SHbO2
総Hb(ctHb)
HbCO濃度
MetHb濃度
脱酸素化Hbの濃度
PI(灌流指標)
PVI(脈波変動指数)
組織酸素飽和度StO2
血糖濃度
乳酸塩
本明細書の範囲内において、生理的血液値は、診断目的のために、または上記の値をモニタするために患者で確定されたすべての値を含む。
【0107】
さらに、非医療分野においてさまざまな用途も可能である。たとえば(プロセスガスを測定することにより)燃焼プロセスのモニタリング、またはたとえば食品の製造もしくは成分を添加した場合の医薬品プロダクトにも用いられる。
【0108】
本装置は特に透過測定および反射測定の場合に適用されるよう好ましくは設計されている。そのため、血液成分は、500nmから850nmの間の強い吸収を相殺するために、反射モードでは可視スペクトル範囲において測定でき、透過モードではVNIR範囲において測定できる。
【0109】
十分な量の光を照射する(または測定波長に依存して可能)であるのなら、透過モードでのみ測定するのが容易である。500nmから850nmの範囲内における強い吸収の問題は、特に800nmを超えるグルコース測定の場合にそれほど顕著ではない。しかし、十分に大量の光が照射されると、透過測定はモニタリングの際、たとえば酸素飽和度を測定する場合に、容易である。
【0110】
反射モードおよび透過モードで組合せた記録を実施するために、さまざまなオプションがある。
【0111】
患者をモニタリングするための第1の実施例において、反射での記録および透過での記録は時間的に順次配置される。ここで、光は皮膚の2つの領域上に交互に照射される。まず、光が線形の記録点の領域に照射され、反射画像が読出される。次のステップにおいて、光は記録線の外の1つ以上の点に照射され、記録線に送られる光は記録および読出される。2つの情報項目は評価ユニットにおいて互いに結合される。特に、本装置はこのためにコンピュータが配置され、これは透過測定および反射測定を交互に行なうよう設計されている。さらに、本装置はこの目的のための光源を有し、光源は光が2つの異なる測定点に照射されることを可能にする。これは、複数の光源を用いることにより、または適切な偏向手段を用いることによって達成される。
【0112】
患者をモニタリングするための第2の実施例において、反射領域および透過領域の空間的分離がもたらされる。このため、装置および特にハウジング自体には、分析光を反射領域および伝送領域から分ける手段がある。入射光はセンサの視野にある皮膚の部分に送られる。センサの視野の第2の部分は機械的ストップによって照射された光から分離される。したがって、人間の組織を通った光のみがこの領域に入る。
【0113】
透過の後皮膚から反射および出力された光は、対物レンズによって結像され、細長いアパーチャ(スリット)は実質的に細長いまたは一次元の画像をまず抽出し、これは後で異なる方向、好ましくは垂直な方向に、波長分散した態様で、拡散され、より特定的には回折される。その結果、相対的に簡単な態様で二次元画像を生成するために、相対的に簡単な手段を用いることができ、画像は線形の態様で得られた皮膚および組織の領域について波長分解情報を与える。放射が画像センサまたは画像トランスデューサによって得られることにより、後の分析では、皮膚および組織内に含まれる物質が定量的におよびパルスに依存する態様で確定でき、さらに短時間のうちに、in vivo測定により、組成についての記述、特に血液の化学的組成についての記述を行なうことができる。
【0114】
したがって、本発明に従い、時間分解およびパルス依存センサ記録の機能性を、分光法による検査および分析に組合せることが可能である。設計のおかげで、光はまず反射領域で捉えられ、次に透過領域で捉えられる。
【0115】
血糖含有量は匹敵する態様で定めることができ、ここでは反射測定は必須ではない。
本発明に従い、スリットは皮膚上の記録点の線形方向に実質的に対応できる。回折する方向または波長分散方向は、このスリット方向に対して垂直に走ることができ、それにより画像センサの二次元ピクセルアレイの列および行は、これらの方向に対応することができる。したがって、回折画像および該当するスペクトルを確立するために、たとえば皮膚上の記録線に対応する一次元空間成分を有する、および交差する回折方向を有する、画像が現われる。
【0116】
レンズシステムは、小型化された対物レンズで有利に設計される。このため、監視カメラ技術の分野からのメガピクセル対物レンズや、既に携帯電話のカメラにおいて広く用いられている、小型化された対物レンズ(たとえば、ポリマー系対物レンズ)が用いられる。しかし、他のレンズシステムまたは結像のための色収差補正も代替的に用いることができる。
【0117】
これら対物レンズは、用いられる非常に小さいセンサとうまく組合せることができる。このような非常に小さい対物レンズで見られる歪みは、その静的性質により、ソフトウェアを用いて相殺することができる。
【0118】
一例として、本発明に係る装置は3つの結像光学ユニットまたは対物レンズを有することができる。これらのうち、第1の結像光学ユニットは、好ましくは第1の結像光学ユニットの画像面に配置される、細長いまたはスリット形のアパーチャ上に、照射領域の二次元画像を生成する。第2の結像光学ユニットは、スリット形アパーチャをたとえば無限大に結像し、ギャップを通った光の筋をコリメートする。この第2の結像光学ユニットの後ろには、好ましくは光学格子を有する波長分散装置があり、第2の方向に光を分散的に分けることができる。
【0119】
第3の対物レンズは、波長分散態様で既に分割されているアパーチャ画像の逆変換を生成する。こうして、皮膚上に記録された線の波長拡散画像が得られる。
【0120】
本発明に従い、画像センサはそれぞれの用途向けに最適化された波長範囲内において位置付けることができ、そこでたとえば相対的に小さい立体角範囲のみを網羅する。
【0121】
第1の結像光学ユニットは、分析するべき領域をアパーチャのスリット上に結像することができ、アパーチャは記録線の外の領域を有効にマスキングする。原理的に、アパーチャを用いることにより、この配置のおかげで、アパーチャによって制限される分光手段によって後で検査される領域よりも少し大きい領域を照射することができる。
【0122】
LED光源は好ましくはパルス状の態様で制御される。その結果、外部光の影響を減らすことができる。
【0123】
さらに、内部黒レベルバランスがあり得る。新世代のCMOSセンサは内部黒バランスを有する。エッジのピクセルは黒で覆われている。これらは内部的に読出され、内部的に黒値正規化のために用いられる。これは外部光の問題を解決するものではないが、温度が変動する場合または供給エレクトロニクスが変動する場合に、一般的なセンサのずれる問題を是正する。その結果、非常に短い露光時間および高い光強度で画像を記録することができる。この理由により、外部光の影響は一般的に小さい。外部光の影響が起こるのなら、各々の場合、LED照明なしでかつROI(対象領域:検査される周波数範囲)を大幅に減らして背景画像を付加的に記録し、これを用いて画像を訂正することができる。照射された固定白色光画像は、センサが用いられる前に評価ユニットに格納される。式(1)では、これはI0(λ)に対応する。
【0124】
各記録の後、約500から1000個の隣接する空間的に分解されたスペクトルすべては、大きいデータ深さでスペクトルに加えられ、値I(λ)は上記の式5に従い作成される。さらに、加えられたスペクトルのaの二次導関数が生成される。これは、必要な濃度を直接定めるために用いることができる。時間に依存する値を評価する場合、パルス濃度計において従来のように、パルス性成分から動脈血の成分についての値を決定することができる。パルス分解態様で分光計測データを確定するオプションがあるのなら、血糖値を定めるために、心臓収縮期および拡張期のスペクトルを別個に統合し、単に違いを形成することにより動脈血のきれいなスペクトルを得て、組織での血糖含有量を定めるのではなく、体の中の動脈血における血糖含有量を定めることができる。
【0125】
記録されたスペクトルは、指(または他の測定点)がセンサに押さえ付けられる圧力に応じて変わる。この圧力の依存性は、スペクトルの二次導関数が分析されるのなら、避けられる。さらに、二次導関数は、動脈血に対してのみ吸収を測定することができる。周りの組織に分散する光の影響は避けられる。特定の状況において、スペクトルへの接触圧力の影響は、動脈血による吸収よりも大きい。したがって、接触圧力によって影響されない測定値を取り得ることは重要である。これは、二次導関数を分析する場合可能である。
【0126】
さらに、異なる領域を加えたり、異なる評価用に場所を変えたりして照射および分析することができる。
【0127】
パルス情報が波長分割情報の相対的に大きい領域、特に520nmから570nm間の範囲において、結合および評価することは有利である。パルスはスペクトル範囲全部にあるので、評価のためにすべてのピクセルを加算することは代替的に可能である。したがって、たとえば50Hzの走査周波数の場合、画像当たり12ビットデータ深さで500,000個のピクセルを統合することが典型的に可能であり、非常に大きいデータ深さとなり、パルス化の結果、強度について非常に弱い変動でも検出することが可能となる。
【0128】
灌流指数PIは、組織および静脈血により、固定した、時間によって変わらない吸収に対するパルス振幅の比として、パルス情報から、以下の式に基づき、記録することができる:
【0129】
【数6】
【0130】
ここでACはパルス依存信号の振幅であり、DCは最大吸収信号である。このPI値は波長に依存するが、文献「パルス酸素濃度についての波長依存」(Damianou, D.; Crowe, J.A.; Pulse Oximetry: A Critical Appraisal, IEEE Colloquium; volume 1996, issue 124, 1996年5月29日、頁7/1-7/3)に従い、スケーリングすることができる。
【0131】
変化した場合、この変数は患者の状態の異なる臨床的に該当する変化を早期に示すものである。
【0132】
他に重要な測定変数は「脈波変動指数」(PVI)であり、これは呼吸と脈拍との相関を成立させる。PVIは以下の式:
【0133】
【数7】
【0134】
により、呼吸サイクルの倍数によって定められる。
%SpO2濃度および総ヘモグロビン値の計算は、「パルス酸素濃度の光-組織相互作用」(Mannheimer Ph.D.; Anesth. Analg. 2007年12月; 105(6 Suppl): S10-7. Review)または「ヒト血液のヘモグロビン濃度の非侵襲性測定のためのLEDの基づくセンサシステム」(U. Timm, E. Lewis, D. McGrath, J. KraitlおよびH. Ewald;生物医工学第13回国際会議; volume 23, Springer Berlin Heidelberg, 2009)に記載されているように、計算を行なうことができる。
【0135】
評価の際、従来のオキシメトリと匹敵して、2つのスペクトル領域を比較することができる。一例として、640nmから680nm間のスペクトルチャネルを統合して、660nmで通常の信号を生成することができる。これを行なう際、一般的には、スペクトル測定点を生成するために、たとえば50,000ピクセルを有効に統合することができる。
【0136】
しかし、好ましい評価は、パルス性スペクトルの計量化学評価である。
異なるヘモグロビン誘導体の濃度は、直接定量的分光計測分析から得られる。
【0137】
二次導関数における吸収極大値または極小値:
【0138】
【表1】
【0139】
評価装置において、連続して迅速に生成されたスペクトル情報を確立することが可能であり、得られたスペクトルからスペクトル特性反射または吸収成分を定めるために、分光計測では一般的であるように、多変量統計解析を行なうことが可能である。ここでは、たとえば、相関、回帰、変異分析、判別分析および主成分分析(PCA)といった異なる多変量統計解析を用いることができる。
【0140】
演算による評価は、本装置と別個の評価装置で行なうことができる。測定値が本発明に係わる装置でデジタル化され、電気的接続を介して中央評価ユニットに伝送されるのなら、伝送ケーブルを薄いままにすることができる。同時に、本発明に係わるセンサまたは装置を、必要なコンピュータ、入力装置または出力装置によって、測定場所に接続できなくなるほど大きく設計する必要はなくなる。外部評価装置を用いることにより、一時的にデータを保管したり、より複雑な数学的手法によりデータを評価したりする可能性が出てくる。
【0141】
時間に依存する評価の結果、組織からの情報と動脈血からの情報とを区別することができる。一方では、この血液情報は既知のモル吸光係数により理論的観点から正確に捉えることができる。他方では、分析するスペクトル範囲において非常に弱い水分帯を約730nmで評価することができる。血液中の水分の濃度は正確に80から85体積%の範囲においてあるので、評価に基づき各測定信号の測定について第2の独立した較正を行なうことができる。装置、またはより特定的には評価装置は、水分信号により、濃度の絶対値を定めるよう設計することができる。
【0142】
反射および透過の組合せられた、スペクトル的に分解された方法のさらなる利点は、パルス信号がより安定して得られることである。可視スペクトル範囲において、パルスの最大値およびパルスの最小値間の信号の平均差は、基本信号に対して、VNIRスペクトル範囲よりも570nmの領域において著しく大きい。この差は5倍まで大きいこともある。さらに、パルス評価の際に対象のスペクトル範囲を統合することができ、それにより個々の記録の場合において非常に高い信号深さを達成することができ、これは個々のセンサを用いた場合には、技術的な困難を持ってしか実現できない。
【0143】
血糖値を測定するための、本発明の用途において、二次元分光計測により、向上した信号対雑音比の結果、非常に低いグルコース濃度を得ることができる。典型的には100万スペクトルまでが統合される。皮膚については問題がない。なぜなら、選択されたスペクトル範囲は、組織内に十分な浸透深さを達成するからである。測定は時間分解態様で行なわれる。高解像度の、分光捕捉は、吸収信号および吸収信号の二次導関数により、評価および逆計算に役立つ。二次導関数は、評価の際、組織分散の影響を最小にする。
【0144】
800nmから1200nmの典型的なスペクトル範囲全部が記録されて、水分およびグルコースの濃度を評価する。この評価は生のスペクトルを用いて、または二次導関数を用いて行なうことができる。
【0145】
二次導関数を用いると、組織で分散された測定光からの測定値と血液からの測定値との間を区別することができる。
【0146】
より正確な定量的評価のためには、PCAやPLS2といった計量化学方法を用いることができる。ここでも、設定されたROI、アナログ/デジタル変換に対してCMOS画像センサを統合することができる。
【0147】
画像センサは半導体コンポーネントにおいて好ましくは評価装置と、ならびに任意に制御装置と、および任意に参照データ用の記憶装置と、既にモノリシックに集積されることができ、小型かつ費用効果の高い設計が可能であり、複雑で余分な配線がなくても、または低いレベルで維持できる。
【0148】
照明装置によって出力された光または放射は、測定されるべき波長範囲に対してスペクトル的に均一な分散を好ましくは有する。ここでは、照明装置は好ましくはコリメートされた光を出す。照明装置として、異なる広帯域LEDを用いることができる。さらに、他の波長を有するLEDとともにさらなる重畳蛍光色素を有する光源を用いることができ、これは患者のモニタリングには500nmから850nmのスペクトル範囲で、または血糖測定には800nmから120nmの範囲で、広帯域放出を生成する。
【0149】
照明装置または光源は連続するものであってもよいが、有利には時間的にパルス化された態様で操作されるべきである。パルス化された操作は、第1に記録装置が変化する外部光の影響から独立しており、第2に非常に短い時間しか記録されない点で有利である。
【0150】
本発明に従い、スペクトルは分析の際、より特定的にはその白色正規化された生スペクトルの形で、さらにその二次導関数の形で評価できる。これは、方法が照明の変動といった器具に依存する影響、または皮膚もしくは組織構造における異なるメラニン濃度の結果、重畳され得る広帯域寄生吸収と切離されて実行可能である。
【0151】
本発明のさらなる局面は、測定媒体の成分または特性を特定およびモニタするための、たとえば患者をモニタリングするための、またはより一般的な形として、好ましくは非侵襲性のin vivo測定の際、およびさらにはin vitro測定で、生物の生理的血液値を特定およびモニタするための、または非医療用途における、上記の装置の使用に関する。
【0152】
本発明のさらに他の局面は、測定媒体の成分または特性を、特に生物の生理的血糖値を特定およびモニタするための方法、ならびにこの方法を行なうためのコンピュータプログラムプロダクトに関する。ここでは、第1のステップにおいて、ハウジングを有するセンサは測定領域に与えられる。医療的用途では、測定領域は典型的には指または耳たぶである。
【0153】
これは体の中央において、体のある点を測定するために用いることもできる。なぜなら、特定の状況(コア領域への機能を体が制限する場合)、極端な場所でのパルス識別はこのような点でしかできないからである。
【0154】
ハウジングに配置される広帯域光源からの光は、測定領域に与えられる。
測定点から戻ってきた分析光は、後で反射モードおよび/または透過モードで得られる。得られた分析光は次に波長依存態様で広げられ、捉えられた光の個々の波長依存成分は、ハウジングに配置される二次元センサアレイに結像される。特に、本件ではこれは二次元CMOSアレイである。より好ましくは、光がアレイの複数の並行な列に結像される。つぎに、並行な列から生成されたスペクトルは加えられる。
【0155】
こうして生成されたスペクトルは、測定媒体の成分または特性(典型的には生理的血液値)を定めるために、後で評価される。
【0156】
戻ってきた分析光は好ましくは特に回折格子で分光される。これにより、特に小型の装置を提供することができる。
【0157】
戻ってきた分析光は反射モードおよび透過モードの両方で得られることが特に好ましい。これは、異なる測定点の照明を交互にすることにより、または異なる測定領域からの戻ってきた光を並列に得ることにより、時間において連続的に行なうことができる。
【0158】
得られた光が時間分解態様で評価されることが特に好ましい。その結果、複数のさらなる値を展開して考慮することができる。評価のために、得られたスペクトルの二次導関数を定めることが特に好ましい。さらに、評価の際に同時に血液の水分含有量を確定するのが好ましく、濃度の絶対値は、確定した水成分をもとに、定められる。
【0159】
本発明は添付図面を参照して、いくつかの実施例を用いて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0160】
図1a】本発明に係わる装置を概略に示す側面図である。
図1b】本発明に係わる装置を概略に示す平面図である。
図2】センサユニットの概略図である。
図3a】時間弁別の場合の、反射および透過特性の組合せられた記録のための、本発明に係わる配置を示す図である。
図3b】空間弁別の場合の、反射および透過特性の組合せられた記録のための、本発明に係わる配置を示す図である。
図4】本発明に係わる装置のブロック図である。
図5】吸収信号のその由来に従う分割を示す図である。
図6a】白色光LED照明のスペクトル分布を示す図である。
図6b】600nmから850nm間のスペクトル範囲およびその二次導関数における水分の吸収スペクトルを示す図である。
図7】吸収を示し、かつその一次および二次導関数に関して、異なる血液成分のスペクトルを示す図である。
図8(1)】さまざまな統合を有するさまざまなスペクトルおよび2種類のセンサ(左38dB/右64dB)についての図である。
図8(2)】さまざまな統合を有するさまざまなスペクトルおよび2種類のセンサ(左38dB/右64dB)についての図である。
図9】好ましいセンサを概略的に示す図である。
図10】典型的なスペクトルを示す図である。
図11】典型的なスペクトルの二次導関数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0161】
図1aは、本発明に係わる装置1の側面を示す。装置1は測定光2を生成する1つ以上の照明装置20(図4参照)を有する。ここでは、照明装置20は典型的には皮膚および組織の領域である、検査するべき測定領域3を照らすためにあり、実質的には二次元領域またはY方向において相対的に狭い延長を有する領域である。さまざまな実施例において、線形測定領域3は照明装置によって、反射的または透過的な態様でそれぞれ照らされ、その透過または反射態様に従い、分析光4を出す。分析光4は、偏向ミラー5を介して分光計ユニット22に結合される。血液における酸素飽和度およびさらなる血液値を定めるために、ここでは分析光4は可視(VIS)および近赤外(NIR)範囲、たとえば500nmから850nm間の波長範囲にあり、以下で図5を参照して説明されるように、物質組成に従うスペクトル分布を有する。したがって、分析光4は測定領域3の定量的物質組成を、典型的には動脈血および組織の物質組成を、特定するための当該波長範囲におけるスペクトルを含む。波長範囲が典型的には800nmから1200nmに変更されたなら、同じ装置を用いて血糖濃度を定めることができる。
【0162】
分析光4は偏向ミラー5および結像光学ユニット6を介してアパーチャ7に達する。結像光学ユニット6は分光計ユニット22に対する入力対物レンズとして働く。アパーチャ7は細長い設計、たとえば一般に10μmから30μmの幅を有する、好ましくはスリットまたはスロットとして、水平方向に、またはz方向(図1aの紙面に対して垂直な方向)に延在する。たとえばフィルタのようなさらなる光学素子やさらなるミラーが光路に挿入されるのなら、これも本発明に従い考慮しなければならない。関係があるのは、測定領域3のz方向における延長がスリット方向に対応するよう、測定領域3がアパーチャ7のスリット上で結像されることである。
【0163】
アパーチャ7を通ることができる測定領域3の画像の帯は、第2の結像光学ユニット8を介して光として回折格子9に与えられる。モニタする範囲内の血液値を測定するために、この回折格子は700nmの領域においてブレーズ波長を有し、約300から600 l/mmを有する、典型的には透過性「体積相ホログラフィック」回折格子である。血糖値を測定するために、回折格子はたとえば900nの領域において600 l/mmを有する「体積相ホログラフィック透過性格子」(生産者:Wasatch Photonics)である。回折格子9は、アパーチャ7のスリットの方向に対して垂直に、すなわち横断する方向またはy方向に、分析光4の波長分散が広がるよう、設計および配置される。実施例の変形も可能である。回折した光は、第3の結像光学ユニット10を介して、画像センサ12のセンサ面11上に、回折画像として結像される。したがって、アパーチャ7またはそのスリットの回折画像は、センサ面11上で結像され、スリットの長手方向の延長(z方向)は一方向であり、回折画像の波長分散広がりは他方方向にある。モニタする範囲内の血液値測定では、画像センサは典型的にAptina MT9m032型(1.6MP)またはMT9P031型(5MP)のCMOSカメラセンサである。
【0164】
一例として、Photonfocus(A1312型,60dB)による、またはCypress(IBIS5型、1.3メガピクセル、64dB)によるセンサが用いられる。
【0165】
図1bは本配置の平面図である。
図2は本発明に係わる装置を概略的に示す。さまざまなコンポーネント、特に2つの光源20a/20b、上述のミラー5、光学ユニット6、8および10、アパーチャ7ならびに回折格子9は、ハウジング16内に配置される。
【0166】
さらに、ハウジング16内にはエレクトロニクスユニット13があり、これは高速直列データ変換(たとえばUSB2/USB3)を有するマイクロコントローラ(CypressによるFX2コンポーネント)を含む。LED定電流レギュレータもこの中に収納されてもよい。USBケーブルコネクタ14は、直列データの伝送およびセンサヘッドの電源供給を可能にする。
【0167】
ハウジング16は、典型的にはポリマー材からなる、射出成形部である。約12mmの直径のハウジングで既知の小型対物レンズのうちのいずれかのレンズが用いられる場合、センサのハウジング寸法は約10×15×50mmとなり得る。代替的に、8mmのハウジング径で対物レンズを直接用いることができる。ハウジング16の形状により、測定点、たとえば耳たぶまたは指の上、または人工透析の用途または非医療分野の場合、測定物体を運ぶライン上に、ハウジングを取付けることができる。さらに、ハウジングには取り付け手段が設けられてもよく、これらは当業者にとって周知なものである。光が出るまたは入る領域では、ハウジング16は耐反射ガラス窓で封止されている。
【0168】
ここで、分離壁17は、反射測定(照射領域3′)と透過測定(照射領域3″)との区別を付けるために、2つの異なる照射領域3′および3″を分離する。これについては図3b参照。
【0169】
スペクトル範囲においてモル吸光係数が大きく変わることにより、記録を反射モードおよび透過モードの両方で行なうことが重要である。図3aおよび図3bは、センサシステムを用いてこれがどのように達成できるかについて2つのオプションを示す。
【0170】
図3aは空間−時間分離に対応する。ここでは、第1に、反射測定用に領域3′(図2参照)の短いパルス性の照明がある。この場合、入力対物レンズを有する分光計ユニット22は、結像線15に向けられる。画像が読出された後、第2のパルス化された光源が起動し、これは皮膚上の領域3″を照らす。ここで、光は分離壁17を直接通って記録線15に達することができない。光は半透過的態様で組織を移動し、この処理において一部が記録線15において部分的に再出力され、これが信号の透過性評価のために用いられる。
【0171】
図3bで示されるオプションでは、光は領域3′にしか照射されない。しかし、二次元分光計ユニットは線15上の全領域3′および3″上に向けられる。アレイの空間的分解の結果、2つの領域3′および3″からの光を区別することができる。分離壁17により、3″で記録されるのは透過信号のみである。センサで予期される領域3′および3″からの強度の違いは、入力アパーチャ7の下流またはセンサ面11の上流に配置される、光路にある固定的に挿入された減光フィルタによって相殺することができる。
【0172】
図4はセンサシステムの有利な実施例のブロック図である。照明ユニット20は光2を測定領域3上に放射する。上記のように、この光は反射モードまたは半透過モードにおいて、分析光として、変形した形で分光計ユニット22に結合される。分光計ユニット22でのスペクトル的分割の後、広げられた光23は画像センサ11に送られる。画像センサ11は、行列状に配置される個々のフォトエレメント24からなる。画像センサ11は二次元CMOSデジタルカメラセンサである。図4のブロック図で示されるように、個々のピクセルからなるピクセルアレイを有し、VISおよびVNIRスペクトル範囲において感度を有し、行列状に配置されている。一方向(たとえば、X方向)では、異なる波長で光の成分が、光が広げられた結果として、個々のピクセルに結像される。分析光のスペクトルは、X方向において1列のセンサで捉えられる。複数の測定列のセンサは、Y方向において互いに隣接して並行である。分析光のスペクトルはこれらの列の各々で測定される。複数の並行な隣接する列、典型的には1000列(または4MPまたは5MPセンサの場合、一般に2000列)が読出されて加えられる結果、本発明に従い信号対雑音比が向上した信号を生成することができる。
【0173】
光電信号は既にセンサにおいて増幅され、デジタル化されている。これらの信号は並列にまたは直列に、接続線25を介してマイクロプロセッサ26に送られる。マイクロプロセッサ26は第1に、信号を変換させ、第2に、制御線を介してLED照明ユニット20の制御と、パラメータ化線27を介して画像センサ11のパラメータ化とをなす。
【0174】
このようなCMOS画像センサ11は、1つの画像記録から、たとえば12ビットのデータ深さで、1000スペクトルまで、すなわち同時に1列当たり1つのスペクトルの、記録を可能にする。これらのスペクトルの各々は、アパーチャの1つの画像エレメントのスペクトルに対応する。すなわち、Y方向に互いに隣接して配置されるセンサのピクセルの数毎に、スロット状のアパーチャ7のさらなる分割に対応する(図1a参照)。
【0175】
画像センサ11は画像の記録を繰返すことができ、たとえば1秒当たり50もの記録の画像反復レートを有する。本発明に従い、たとえばモニタの用途には500nmから850nm間の範囲の小さいスペクトル範囲しか関係がない、または血糖値測定には800nmから1200nm間の範囲の小さなスペクトル範囲しか関係がない、または限定された空間領域しか読出す必要がないことにより、このような画像センサ11で可能である部分画像記録を行なうことができ、部分画像は「対象領域」(ROI)として設定され、画像センサ12の設定された対象画像領域(所望の周波数範囲に対応)のみを読出しながら、同時に基本データ速度(ピクセルレート)を維持することができる。これにより、伝送するフレームの数、すなわち1秒当たりの全体画像または部分画像を増やす。
【0176】
マイクロプロセッサ26はさらに、通信線29を介して、システムのメインプロセッサ30と通信をなす。ここで、画像データはメインプロセッサ30に送られ、メインプロセッサはセンサシステム33にパラメータ化データを与える。センサシステム33の電源は、通信線29を介して供給される。この接続の有利な実施例はUSB接続であり、同時に高いデータ転送速度および5ボルトの電源供給を可能にする。メインプロセッサ30には表示および入力ユニット31が設けられ、それによりユーザはシステムに関連するパラメータを設定することができ、現在確定されたデータを示すことができる。プロセッサ、メモリおよびユーザターミナルは、ユニット32内に収納することができ、これは患者から離れて設定され得る。メインプロセッサは典型的にはデュアルコアコンピュータであり、画像処理は第1のコアで行なわれ、組織および血液値を定めるためのデータの評価は、第2のコアで行なわれる。
【0177】
図5はin vivoでの血液測定の際の信号の典型的な時間プロファイルを概略的に示す。ここで、光信号は一定成分およびパルス性の成分を有する。この一定成分、またはより正確には長期の変動しかない成分は、第1に静脈血から、第2に組織から来る。ここで、組織からの信号はさらに2つの領域に分けられるべきである。一方の成分は組織の成分に依存し、他方の成分は実際の光路に影響する、組織の分散特性に依存する。パルス性成分は、動脈血を押出す心臓によって生成される。動脈血での吸収は、収縮期と拡張期とでは同じではない。これは区別を可能にする。ここでは、高い酸素飽和度の血液は測定される体の部分に送られる。健康な人間のヘモグロビンの酸素飽和度は95%から99%の領域にある。パルス状の信号成分は波長に依存し、さらに測定点および測定の種類(反射性/透過性)に依存する。さらに、測定点が熱せられているか否かによっても違いがある。健康な人間の指での測定の場合、パルス性成分は(透過性測定の場合)、3%から20%の間にある。反射性測定、たとえば耳たぶの場合、値は0.5%から1.5%であり得る。このパルス性成分は、灌流が低い患者または危篤状態の患者の場合、さらに低い。
【0178】
パルスおよび酸素含有量または血糖含有量は、この小さな成分から定められなければならない。本発明に従い、スペクトルは非常に迅速(約50−100Hz)に記録することができ、約1000もの個々のスペクトルが加えられて、各記録においてあるスペクトルを形成することができる。これを用いることにより、分光法においてスペクトルでの一定成分およびパルス性成分を分けることができる。
【0179】
図6aはモニタの用途向けの典型的なLED照明ユニットのスペクトルを示す。このシステムでは、500nmから850nmの間のスペクトル範囲で光を与える照明ユニットが必要である。
【0180】
ここで示されるのは、白色光LEDのような適する広帯域LEDのスペクトルであり、これは色素を励起するための青色エミッタ(450nm)を有する。このLEDは、特に500nmから650nm間のスペクトル範囲において、優れた強度分布を有する。用途の分野に応じて、実質的に低い色素温度を有する白色光LEDを用いることができ、異なる色素複合物を用いることができ、またはさらなるモノクロームLEDを照明に加えることができる。
【0181】
図6bは水分の吸収曲線およびその二次導関数を示す。水は730nmおよび830nmにおいて弱い吸収帯を有する(結合振動av1+bv3であって;a+b=4)。しかし、これはここに提示されている技術を用いて十分に評価することができる。ヒトの血液の水分は非常に一定しており、80から85間の体積パーセントにあることが文献に開示されているので、パルス性成分において、同様に水分信号を介して濃度を絶対値的に定めることができる。これは同様にモニタリングの際に、およびたとえば血糖値測定の際に、適用することができる。
【0182】
これに反して、血糖値測定は、800nmから1200nm間のスペクトル範囲において光を提供する照明ユニット(図示されていない)を必要とする。
【0183】
図7は、酸素化ヘモグロビン(HbO2)およびさらなるヘモグロビン誘導体の該当するスペクトルを、吸収スペクトルとして、さらに一次および二次の導関数として示し、500nm−800nmの波長λが横軸に示される。この非常に精度の高い既知のデータにより、上記の多変量回帰を用いて物質の成分を計算することができる。
【0184】
ここで重要なのは、提示された技術が吸収信号を評価するために用いるだけでなく、二次導関数を用いることにより、他の物質からの非常に精度の高い分割を可能にすることである。この評価のために、多変量統計解析法が任意に用いられる。関係がありかつ特定するべき物質すべての個々のスペクトルが有利に測定され、予め記憶される。
【0185】
図8(1)から図11は、センサの特定の設計およびそれによってなされた測定を示す。
【0186】
図8(1)および図8(2)は異なるスペクトルのシミュレーションを示す。左側の列のスペクトルは、第1の種類のセンサ(38.10dBを有する)に基づいて生成された。右側の列のスペクトルは、第2の種類のセンサ(64dBを有する)に基づいて生成された。一例として、このようなセンサは、Cypressによる1.3メガピクセルのCMOS画像センサIBIS5−B−1300であり、ピクセル寸法が6.7μm×6.7μmの1280×1024個のピクセルを有する。シミュレーションのために、5つの十分に測定されたスペクトルが初期点として取られた。これらから、それぞれ30個の別個のスペクトルが生成され、これに人工のセンサノイズが重ねられた。その結果はグラフ化された。個々の測定の場合にどのような分散が予期されるかを示す。
【0187】
上から下へ、さまざまな図はスペクトル統合の数の影響を示す。図では、890から920nm間の波長範囲において、ヒトの指で生成されたスペクトルの二次導関数が示される。上から下へ、個々の図は同じ数の(シミュレーションされた)スペクトルを示し、これはいくつかの個別のスペクトルを加えることにより生成され、スペクトルの数は下にいくにつれ増加する。ここでは、既に1000個の列が1つの「フレーム」に統合されている。一番上の図は1フレームを示す。一番下の図は、3000フレームを示す。
【0188】
図9は本発明に従う装置1の好ましい実施例を示す。この図では、同じ参照符号は前の図と同じコンポーネントを示す。装置1はハウジングを有し、中にさまざまな光学および電子コンポーネントが配置される。測定は指で行なわれる。指は測定領域3に案内される。このセンサは血糖値を測定するのに特に適する。広帯域LED20は、典型的には測定領域3の方向において、800から1200nm間のスペクトル範囲で光を出す。ハウジング16は、光を出力するための開口を有する。開口は、出される光に対して透明であるカバー19によって覆われてもよい。指を通って再度出力される光は、ハウジング16の第2の開口を通ってハウジング16内に経路付けられ、第2の開口も光に対して透明であるカバー19が同様に設けられてもよい。光は、ミラー配置5、スリットアパーチャ7および第1の結像光学ユニット8を介して、回折格子9に偏向される。回折格子9は光を波長依存態様で広げ、第2の結像光学ユニット10を介して画像センサ12のセンサ面11に経路付ける。画像センサ12およびLED20は、ハウジング19内の共通の印刷回路基板18上に配置される。印刷回路基板18にはさらに、LED20および画像センサ12を制御するための電子コンポーネントが設けられている。特に、印刷回路基板18は、USBコントローラ36およびUSBコネクタ(より詳細には示されていない)を有する。USBインターフェイスはまず装置1へのエネルギ供給を可能にする。第2に、外部コンピュータまたは表示装置とのデータ交換を可能にする。典型的に、4×4ピクセルがセンサに結合される(ビニング)。こうして結合されたデータは、USBインターフェイスを介してコンピュータに送られる。そこで、スペクトルはセンサの静的光学歪みが取除かれた後、加えられる。
【0189】
高出力LEDがLEDとして用いられる。適切なアクロマートがレンズとして用いられる。回折格子はスペクトル範囲に従い最適化された、典型的には300 l/mmまたは600 l/mmを有する回折格子である。
【0190】
図10は、図9のセンサによって得られたスペクトルの時間プロファイルを示す。スペクトルは半透過モード(ある点で組織に結合され、同じ側の別の点で分離される)で、500から850nm間のスペクトル範囲において指で測定された。図10は二つの異なる接触圧力(低い接触圧力であって、0から約10sの間、および20s以降/より高い接触圧力であって、約10から20sの間)を有するスペクトルの時間的プロフィールを示す。パルスは酸素化Hbの強い吸収により、520から580nmの間のスペクトル範囲で容易に識別することができる。パルスは同様に650から850nmの間の範囲においても明確に識別することができる。なぜなら、光はより深く指の中に入り、より多くの動脈血がそこでの信号に寄与するからである。これら2つの領域は、図10において数字1によって示される。それに比べて、10から20s間のより強い接触圧の場合、パルスは著しく減少する。したがって、特にパルス分解測定でのモニタリングが重要である場合、接触圧が大き過ぎないよう、注意しなければならない。
【0191】
数字2では、酸素化ヘモグロビン(HbO2−動脈血)の特徴的な帯の形を識別することができる。540/578nmにおいて2つのピークがある。660から680nmの間の範囲の吸収は非常に低い。
【0192】
図10の数字3は、760nmでの脱酸素化ヘモグロビンの吸収帯域を示す。
より短い波長では、吸収は相対的に高い接触圧において大きく低下する(図10における数字4)。吸収が減少するのは、比較的低い血液が利用可能だからである(血液は指から押出される)。
【0193】
吸収についての2つの帯の変位(数字5によって示される)は、血液中のHbCOの含有量についての情報を与える。
【0194】
数字6によって示される650nmでの領域は、メトヘモグロビン含有量(MetHb)の識別に役立つ。
【0195】
図11は、図10に示されるスペクトルの二次導関数を示す。それ自体がスペクトルの第2の導関数と連動することが知られている(微分分光法)。これを用いて、スペクトルからすべての一定成分を取除くことができる。その結果、照明の変動によってもたらされるアーティファクト、および組織の分散による異なる光レベルからもたらされるものを取除くことができる。さらに、重要な情報は増幅される。導関数を用いることは、複数の物質の混合物において、成分の吸収極大値が小さい差異しかない場合または重ねられた場合に、特に有用である。二次導関数は多くの付加的情報を与える。パルスは二次導関数においてなお識別することができる。しかし、これは動脈血(HbO2)と組織/静脈血との間の吸収に大きな違いがある場合のみ識別できる。特に600から630nmの間(数字1によって示される)のスペクトル範囲の場合にあてはまる。吸収は、より長い長波のスペクトル範囲において違いは小さくなる。二次導関数のパルス振幅はしたがって著しく低い(図11の中央領域の数字2参照)。
【0196】
パルスは、強い接触圧の場合、二次導関数での識別可能性が低くなる。数字3において、パルス振幅が変化するだけでなく、圧力が増加すると吸収帯の形および位置も変わる。これは、特に動脈血が、圧力が増加した場合に指から押出されることを示す。
【0197】
酸素化ヘモグロビンの2つのピーク(数字4によって示される)は、二次導関数においてはっきりと識別できる。
【0198】
脱酸素化Hb(HHb)の成分は、組織および静脈血においてより大きい。この場合著しい吸収帯は760nmにある。これは接触圧が変わってもほとんど変化しない。なぜなら、動脈血はほぼ完全に酸素化しているからである。この帯の強度と酸素化ヘモグロビンとの比(領域4における2つのピークにより識別可能)から、組織の酸素飽和度(StiO2)を定めることができる。
【0199】
二次導関数から、特にその曲線プロフィールおよび個々の吸収ピークの位置から、HbCOの濃度を定めることができる。濃度は、HbO2、HHb、HbCOおよびHbMetの既知の波長依存吸収係数から、定めることができる。
【0200】
血液成分またはその変化を分析するために、データを時間分解(およびそれゆえパルス分解)態様で得ることが適切である。これにより、狙いを定めた態様で、データを収縮期からおよび拡張期から別個に得ることができ、さらにこれらを別個に分析することができる(図4の表示参照;ここで高い吸収は動脈血の収縮期を示し、相対的に低い吸収は拡張期を示す)。特に、動脈血成分の純粋なスペクトルは、拡張期のスペクトルと収縮期のスペクトルとの違いから出てくる。しかし、図5に示されるように、収縮期と拡張期との間の吸収の違いは、全体の吸収に比べて比較的小さい。全体的な大きい吸収の結果、センサには低い光信号のみが存在することになる。本発明に従い、二次元センサの複数の隣接する列のスペクトルが同時に記録されて加えられることにより、十分に高い品質の信号が得られる。したがって、収縮期と拡張期との間のスペクトルの小さい差を評価することができる。
図1.a)】
図1.b)】
図2
図3.a)】
図3b)】
図4
図6a
図9
図5
図6b
図7
図8(1)】
図8(2)】
図10
図11