特許第5982410号(P5982410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982410
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20160818BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   G03G15/20 555
   G03G21/14
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-16182(P2014-16182)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-141408(P2015-141408A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】柴原 雅美
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−331770(JP,A)
【文献】 特開2012−053156(JP,A)
【文献】 特開平09−101719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーターが内装された薄肉タイプの加熱ローラーと、
前記加熱ローラーに圧接され、前記加熱ローラーとともにトナー像が転写された用紙を挟持する加圧ローラーと、
前記加熱ローラーに非接触で前記加熱ローラーの表面温度を検出するための温度検出部と、
前記温度検出部を用いて得た検出温度に基づいて、前記加熱ローラーの表面温度を一定にする維持するために前記ヒーターへの通電制御を行うヒーター制御部と、
前記ヒーターへの通電開始時の初期検出温度と、前記温度検出部を用いた検出温度が定着温度よりも低い予め定められた値に達した時点からの前記ヒーターへの通電残り時間との対応関係を表すテーブルを保持する記憶部と、
計時を行う計時部とを備え、
前記ヒーター制御部は、前記温度検出部を用いて前記初期検出温度を取得し、前記テーブルを参照して当該取得した初期検出温度に対応する通電残り時間を取得し、前記ヒーターへの通電開始後に前記温度検出部を用いて得た検出温度が前記予め定められた値に達した時点から、当該読み出した通電残り時間が経過したことが前記計時部によって計時された時点で前記ヒーターへの通電を停止する画像形成装置。
【請求項2】
前記計時部は、前記初期検出温度から前記予め定められた温度に達するまでの到達時間を計時し、
前記ヒーター制御部は、前記計時部によって計時される到達時間に応じて、前記記憶部に記憶されている前記テーブルの前記通電残り時間を補正する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ヒーター制御部は、前記テーブルを用いた前記ヒーターへの通電制御を前記加熱ローラー及び前記加圧ローラーを備える定着装置のウォーミングアップ時に行う請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記温度検出部がサーミスターである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に転写されたトナー像を熱圧着によって用紙に定着させる定着装置を備えた画像形成装置に関し、特に、定着装置のウォーミングアップの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に搭載されている一般的な定着装置には、省エネやウォームアップ時間短縮の目的で、ローラー厚さを薄くした薄肉タイプの加熱ローラーが採用されている。また、加熱ローラーの摩耗を避けて耐久性を維持するために、加熱ローラーの温度検出手段として例えば非接触型のサーミスターが採用されている。このように非接触型のサーミスターを用いた場合、空気層を介して加熱ローラーの表面温度が検出されるため、サーミスターによる温度検出は、実際の加熱ローラーの表面温度に対して遅れが生じる。薄肉タイプの加熱ローラーの場合、時間経過に伴う表面温度の変化量が大きいため、この遅れは、加熱ローラーの定着温度制御の正確性に影響する。また、ヒーター電力の製造公差(±5%〜10%)や、製品本体が置かれる環境(周囲温度0℃〜50℃)によっても、加熱ローラーの昇温時間は大きく左右されてしまい、薄肉タイプの加熱ローラーの定着温度制御をより困難なものにしている。
【0003】
かかる問題に対して、下記特許文献1では、基準となる昇温時間と、ヒーター通電開始から所定温度までの昇温時間とを比較し、その差に基づき、サーミスターによる実測の検出温度を補正する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−47411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された温度補正は、加熱ローラーの温度が定着温度付近に達した状況で行われる。しかし、薄肉タイプの加熱ローラーの昇温スピードは速いため、当該温度補正を行う時点では加熱ローラーの表面温度が既に過昇状態となっているおそれがある。この場合、ローラー溶着などによる破損のおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、薄肉タイプの加熱ローラーと非接触型の温度検出部を備えた定着装置において、定着ヒーターへの通電開始時から、加熱ローラーを早くかつ安全に定着温度にまで立ち上げ可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、ヒーターが内装された薄肉タイプの加熱ローラーと、
前記加熱ローラーに圧接され、前記加熱ローラーとともにトナー像が転写された用紙を挟持する加圧ローラーと、
前記加熱ローラーに非接触で前記加熱ローラーの表面温度を検出するための温度検出部と、
前記温度検出部を用いて得た検出温度に基づいて、前記加熱ローラーの表面温度を一定にする維持するために前記ヒーターへの通電制御を行うヒーター制御部と、
前記ヒーターへの通電開始時の初期検出温度と、前記温度検出部を用いた検出温度が定着温度よりも低い予め定められた値に達した時点からの前記ヒーターへの通電残り時間との対応関係を表すテーブルを保持する記憶部と、
計時を行う計時部とを備え、
前記ヒーター制御部は、前記温度検出部を用いて前記初期検出温度を取得し、前記テーブルを参照して当該取得した初期検出温度に対応する通電残り時間を取得し、前記ヒーターへの通電開始後に前記温度検出部を用いて得た検出温度が前記予め定められた値に達した時点から、当該読み出した通電残り時間が経過したことが前記計時部によって計時された時点で前記ヒーターへの通電を停止するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄肉タイプの加熱ローラーと非接触型の温度検出部を備えた定着装置において、定着ヒーターへの通電開始時から、加熱ローラーを早くかつ安全に定着温度にまで立ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構造を示す左側面断面図である。
図2】画像成形装置の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図3】低温、標準、高温の各温度環境下におけるウォーミングアップ時の加熱ローラーの温度変化例を示すグラフである。
図4】加熱ローラーの初期温度とヒーターへの通電時間の補正時間との関係の一例を示すグラフである。
図5】定着装置のウォーミングアップ時における制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る定着装置及びこれを備えた画像形成装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構造を示す左側面断面図である。
【0011】
本発明の一実施形態に係る画像形成装置1は、例えば、プリンターである。本実施形態において、後述する手差しトレイ65が配置された側(図1における右側)を画像形成装置1の前側として説明する。
【0012】
画像形成装置1は、筐体Mと、所定の画像情報に基づいて用紙Tに所定の画像を形成する画像形成部と、用紙Tを画像形成部に給紙すると共に画像が形成された用紙Tを排紙する給排紙部とを有する。
【0013】
図1に示すように、画像形成部は、感光体ドラム2と、帯電部10と、レーザースキャナーユニット4と、現像器16と、トナーカートリッジ5と、トナー供給装置6と、転写ローラー8と、定着装置9と、ドラムクリーニング装置11とを備える。また、給排紙部は、給紙カセット52と、手差しトレイ65と、レジストローラー対80と、用紙Tの搬送路Lとを備える。
【0014】
感光体ドラム2は、円筒形状の部材からなり、像担持体として機能する。感光体ドラム2は、図1に対して垂直な回転軸を中心に回転可能な態様で筐体Mに配置される。感光体ドラム2の表面には、静電潜像が形成される。
【0015】
帯電部10は、感光体ドラム2の上方に配置される。帯電部10は、感光体ドラム2の表面を一様に正(プラス極性)帯電させる。
【0016】
レーザースキャナーユニット4は、PC(パーソナルコンピューター)等の外部機器から出力された画像情報に基づいて、感光体ドラム2の表面を走査露光する。レーザースキャナーユニット4により走査露光されることによって、感光体ドラム2の表面の帯電した電荷が除去される。これにより、感光体ドラム2の表面に静電潜像が形成される。
【0017】
現像器16は、感光体ドラム2の前方(図1における右側)に配置される。現像器16は、感光体ドラム2に形成された静電潜像を単色(通常はブラック)のトナー画像として現像する。現像器16は、感光体ドラム2に対向配置可能な現像ローラー17とトナー攪拌用の攪拌ローラー18とを有して構成される。
【0018】
トナー供給装置6は、トナーカートリッジ5に収容されたトナーを、現像器16に供給する。
【0019】
ドラムクリーニング装置11は、感光体ドラム2の後方(図1における左側)に配置される。ドラムクリーニング装置11は、感光体ドラム2の表面に残留したトナーや付着物を除去する。トラムクリーニング装置11によって除去されたトナーを蓄積する廃トナー部12が定着装置9に関して用紙Tの搬送方向上流側に隣接配置されている。
【0020】
転写ローラー8は、感光体ドラム2の表面に形成されたトナー像を用紙Tに転写させる転写装置として機能する。転写ローラー8には、不図示の電圧印加手段により、感光体ドラム2に形成されたトナー像を用紙Tに転写させるための転写バイアスが印加される。
【0021】
用紙Tは、感光体ドラム2と転写ローラー8とによって挟み込まれ、感光体ドラム2の表面(トナー像が形成された側)に押し当てられる。このようにして転写ニップNが形成され、感光体ドラム2に形成されたトナー像は、用紙Tに転写される。
【0022】
定着装置9は、用紙Tに転写されたトナー像を構成するトナーを溶融させて、用紙Tに定着させる。定着装置9は、ヒーター90が内装された薄肉タイプの加熱ローラー9aと、加熱ローラー9aに圧接される加圧ローラー9bと、を備える。薄肉タイプとは、例えば材質がアルミであり、ローラーの層厚さが従前の加熱ローラーの層厚さよりも薄い加熱ローラーをいう。また、加熱ローラー9aに対して適当な位置に、加熱ローラー9aの表面温度を非接触で検出するサーミスター91が配置されている。加熱ローラー9aと加圧ローラー9bとは、トナー像が転写された用紙Tを挟持するようにして搬送する。用紙Tが加熱ローラー9aと加圧ローラー9bとの間に挟持されるように搬送されることによって、用紙Tに転写されたトナーは、溶融し、用紙Tに定着する。
【0023】
給紙カセット52は、筐体Mの下部に配置される。給紙カセット52は、筐体Mの前側(図1における右側)に水平方向に引き出し可能に配置される。給紙カセット52は、用紙Tが載置される載置板60を備えており、カセット給紙部51は、載置板60に載置された用紙Tを取り出す前送りコロ61と、用紙Tを1枚ずつ搬送路Lに送り出すローラー対63とからなる重送防止機構を備える。カセット給紙部51は、給紙カセット52に収容された用紙Tを搬送路Lに送り出す。
【0024】
カセット給紙部51又は手差し給紙部64と排紙部50との間には、用紙Tを搬送するための搬送路Lが形成される。搬送路Lは、カセット給紙部51から第1合流部P1までの第1搬送路L1と、第1合流部P1からレジストローラー対80までの第2搬送路L2と、レジストローラー対80から転写ローラー8までの第3搬送路L3と、転写ローラー8から定着装置9までの第4搬送路L4と、定着装置9から分岐部P3までの第5搬送路L5と、分岐部P3から排紙部50までの第6搬送路L6と、手差しトレイ65から第1合流部P1までの第7搬送路L7と、を有する。
【0025】
第1合流部P1は、カセット給紙部51から用紙Tを搬送する第1搬送路L1と、手差しトレイ65から用紙Tを搬送する第7搬送路L7との合流部である。
【0026】
第2搬送路L2の途中には、第2合流部P2が配置される。さらに、搬送路Lは、分岐部P3から第2合流部P2までの戻し搬送路Lbを有する。第2合流部P2は、第2搬送路L2と戻し搬送路Lbとの合流部である。
【0027】
転写ローラー8における用紙Tの搬送方向の上流側(図1における右側)には、レジストローラー対80が配置される。
【0028】
戻し搬送路Lbは、用紙Tの両面印刷を行う際に、既に印刷されている面とは反対面(非印刷面)を感光体ドラム2に対向させるために設けられる搬送路である。
【0029】
筐体Mの前面側(図1における右側)であって給紙カセット52の上方には、手差し給紙部64が設けられる。手差し給紙部64は、用紙載置部である手差しトレイ65と、給紙ローラーである給紙コロ66とを備える。
【0030】
排紙部50における開口側には、排紙集積部M1が形成される。排紙集積部M1には、排紙部50から排紙された、所定画像が定着された用紙Tが積層して集積される。
【0031】
次に、画像形成装置1の構成を説明する。図2は画像形成装置1の主要内部構成を示す機能ブロック図である。
【0032】
画像形成装置1は、制御ユニット10、画像形成部21、画像メモリー22、操作部23、ネットワークインターフェイス部24、ヒーター90、サーミスター91、及び記憶装置92等を備える。
【0033】
画像形成部21は、ネットワーク接続されたコンピューター300から受信した印刷データ等の画像形成を行う。
【0034】
画像メモリー22は、画像形成部21のプリント対象となるデータを一時的に保存する領域である。
【0035】
操作部23は、画像形成装置1が実行可能な各種動作及び処理について操作者からの指示を受け付ける。
【0036】
ネットワークインターフェイス部24は、LANボード等の通信モジュールから構成され、当該ネットワークインターフェイス部24に接続されたLAN等を介して、ローカルエリア内のコンピューター300等と種々のデータの送受信を行う。
【0037】
ヒーター90は、上述したように、加熱ローラー9aを加熱するための加熱手段であり、加熱ローラー9aに内装されている。ヒーター90は、例えば、ハロゲンヒーター、又は、励磁コイルとコアとを有する誘導加熱部を備えたIHヒーターで構成することができる。
【0038】
サーミスター91は、温度検出部の一例であり、加熱ローラー9aの表面に対向する位置であって、例えば、加熱ローラー9aの長手方向の略中央部分に対向して配置されており、加熱ローラー9aの表面温度を非接触で検出する。サーミスター91は、検出した温度に応じた電気信号をヒーター制御部201に出力する。
【0039】
記憶装置(記憶部)92は、ヒーター90への通電開始時のサーミスター961による初期検出温度としての各初期検出温度と、サーミスター91の検出温度が予め定められた定着温度(例えば、180℃)よりも低い予め定められた値(例えば、170℃)に達した時点からヒーター90に通電を継続する通電残り時間との対応関係を表すテーブルを記憶する。記憶装置92は、フラッシュメモリEEPROM等の不揮発性メモリーやハードディスク装置等で構成することができる。
【0040】
制御ユニット20は、CPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM及び専用のハードウェア回路等から構成される。制御ユニット20は、制御部200と、ヒーター制御部201とを備える。
【0041】
制御部200は、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る。制御部200は、画像形成部21、画像メモリー22、操作部23、ネットワークインターフェイス部24等と接続され、これら各部の駆動制御、用紙の搬送制御及び画像形成制御を行う。
【0042】
ヒーター制御部201は、画像形成時の定着動作実行時に、サーミスター91を用いて検出した温度に基づいて、加熱ローラー9aの表面温度を一定温度に維持するためのヒーター90への通電制御を行う。
【0043】
また、ヒーター制御部201は、ウォーミングアップ時におけるヒーター90への通電開始時にサーミスター91を用いてその初期検出温度を取得し、記憶装置92に保持されたテーブルを参照して、当該取得した初期検出温度に対応する通電残り時間を取得する。そして、ヒーター制御部201は、ヒーター90への通電開始後にサーミスター91を用いた検出温度が上記予め定められた値に達した時点から当該読み出した通電残り時間が経過する時点までヒーター90に対する通電を続け、通電残り時間の経過時点でヒーター90に対する通電を停止する。
【0044】
なお、ヒーター制御部201又は制御部200は、計時部としてのタイマーを内蔵することが好ましい。当該タイマーは、加熱ローラー9aが、上記初期検出温度から上記予め定められた温度に達するまでの到達時間を計時する。
【0045】
図3は、低温、標準、高温の各温度環境下におけるウォーミングアップ時の加熱ローラーの温度変化例を示すグラフである。なお、加熱ローラー9aの温度はサーミスター91を用いて検出された温度である。例えば、標準環境下では、ヒーター制御部201がヒーター90への通電を開始してから時刻t2で加熱ローラー9aの温度が設定値T_defに達し、それからさらにヒーター制御部201が時間T2だけヒーター90への通電を継続することで加熱ローラー9aの温度が見込み温度T_expectに達する。そして、時刻t2から時間T2だけ経過した後に、ヒーター制御部201は、定着必要温度を維持する制御を行う通常制御モードに移行させる。通常制御モードでは、ヒーター制御部201は、加熱ローラー9aの表面温度が目標温度T_targetで一定となるようにヒーター90への通電制御を行う。
【0046】
図3のグラフに示すように、ウォーミングアップ開始時の加熱ローラー9aの温度が同じでも、画像形成装置1が置かれた温度環境の違いによって、加熱ローラー9aの温度上昇スピードが異なる。例えば、高温環境下(あるいはヒーター90の電力公差がプラスの場合)では、ヒーター制御部201がヒーター90への通電を開始してから標準環境下のときよりも早い時刻t1で加熱ローラー9aの温度が設定値T_defに達し、それからさらにヒーター制御部201が標準環境下のときよりも短い時間T1だけヒーター90への通電を継続することで加熱ローラー9aの温度が見込み温度T_expectに達する。高温環境下において、もし、加熱ローラー9aの温度が設定値T_defに達してからさらに標準環境下のときと同じ時間T2だけヒーター90への通電を継続すると、加熱ローラー9aの温度が見込み温度T_expectを大きく超えてしまい、加熱ローラー9aの表面が溶着するおそれがある。
【0047】
一方、低温環境下(あるいはヒーター90の電力公差がマイナスの場合)では、ヒーター制御部201がヒーター90への通電を開始してから標準環境下のときよりも遅い時刻t3で加熱ローラー9aの温度が設定値T_defに達し、それからさらにヒーター制御部201が標準環境下のときよりも長い時間T3だけヒーター90への通電を継続することで加熱ローラー9aの温度が見込み温度T_expectに達する。低温環境下において、もし、加熱ローラー9aの温度が設定値T_defに達してからさらに標準環境下のときと同じ時間T2しかヒーター90への通電を継続しないとすると、加熱ローラー9aの温度が見込み温度T_expectに達しない。
【0048】
したがって、ヒーター制御部201は、ヒーター90への通電を開始してから加熱ローラー9aの温度が、上記予め定められた値としての設定値T_defに達してからは、画像形成装置1が置かれた温度環境に応じた通電残り時間に限ってヒーター90への通電を継続する。これにより、どのような温度環境下においても、加熱ローラー9aの異常な過昇温を起こすことなく加熱ローラー9aの温度を見込み温度T_expectまで昇温させることができる。
【0049】
上記の通電残り時間は、さまざまな温度環境下で、図3に示したような定着昇温カーブを測定し、通電残り時間グラフを作成することで得られる。図4は、加熱ローラー9aの初期検出温度と、上記通電残り時間との関係の一例を示すグラフである。なお、加熱ローラー9aの温度はサーミスター91を用いて検出された温度である。例えば、加熱ローラー9aの初期検出温度(ウォーミングアップ開始時の温度)が0℃のときの補正時間は10秒であり、加熱ローラー9aの初期温度が30℃のときの補正時間は4秒であり、加熱ローラー9aの初期温度が60℃のときの補正時間は1秒である。記憶装置92は、図4に示したグラフを数値化したテーブルを保持している。ヒーター制御部201は、記憶装置92に保持されたテーブルを参照して当該取得した温度に対応する補正時間を取得する。
【0050】
なお、ヒーター90の製造公差のばらつきに起因する発熱量のばらつきや、ヒーター90への通電時の電圧ばらつきにより、加熱ローラー9aの昇温時間が早まったり、遅くなったりすることが予想される。したがって、上記補正時間をヒーター90の製造公差に応じて調整しておくことが好ましい。具体的には、ヒーター制御部201は、ヒーター90への通電を開始したときに、加熱ローラー9aの温度が初期温度から設定値T_defに達するまでの到達時間を上記タイマーにより計時することで昇温スピードとして測定し、その昇温スピードに応じて図4に示したグラフを上下方向にオフセットさせることで、ヒーター90の製造公差に応じた補正時間を取得することができる。例えば、図4に示すグラフが予め定められた標準到達時間についてのものである場合、上記計時された到達時間がこれよりもn秒長い場合は、n×m(m=予め定められた係数)秒だけグラフを上方向にオフセットさせる。
【0051】
次に、画像形成装置1における定着装置のウォーミングアップ時の動作について説明する。図5は、定着装置のウォーミングアップのフローチャートである。
【0052】
ウォーミングアップを開始してすぐに、ヒーター制御部201は、サーミスター91を用いて得た加熱ローラー9a表面の温度を検出温度として取得する(S1)。そして、ヒーター制御部201は、記憶装置92に保持されたテーブルを参照して、ステップS1で取得した検出温度に対応する通電残り時間を取得する(S2)。その後、ヒーター制御部201は、ヒーター90への通電を開始する(S3)
ヒーター90への通電を開始してから、ヒーター制御部201は、サーミスター91の検出温度が上記予め定められた値(図4に示した設定値T_def)に達するまで(S4でNO)、サーミスター91の検出温度の監視を続ける。そして、サーミスター91の検出温度が上記予め定められた値に達したとき(S4でYES)、ヒーター制御部201は、ヒーター90への通電残り時間の計時を開始する(S5)。ヒーター制御部201は、ステップS5で計時を開始してから、ステップS2で取得した通電残り時間が経過するまで(S6でNO)、ヒーター90に対して連続的に通電する。そして、ステップS5で計時を開始してから、ステップS2で取得した補正時間が経過したとき(S6でYES)、ヒーター制御部201は、ヒーター90への通電を一旦停止する(S7)。その後、ヒーター制御部201は、通常制御モードへ移行し(S8)、定着装置のウォーミングアップが終了する。
【0053】
上記のように、本実施形態によれば、薄肉タイプの加熱ローラー9aと非接触型のサーミスター91を備えた定着装置に対して、加熱ローラー9aの温度を早くかつ安全に定着温度にまで到達させることができる。これにより、薄肉タイプの加熱ローラー9aの溶着等を防止することができる。また、画像形成装置1に既設のサーミスター91を用いるため、追加の温度検出手段の設置が不要でありコストアップは発生しない。さらに、ヒーター制御部201が記憶装置92に保持されたテーブルを参照して通電残り時間を取得するため、複雑な計算処理が不要であり、制御が簡単である。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明に係る画像形成装置の一実施形態としてプリンターを用いて説明しているが、これは一例に過ぎず、他の電子機器、例えば、コピー機、ファクシミリ装置、複合機等の他の画像形成装置でもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、図1乃至図5を用いて上記実施形態により示した構成は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0056】
1 画像形成装置
2 感光体ドラム(像担持体)
8 転写ローラー(転写装置)
9 定着装置
9a 加熱ローラー
9b 加圧ローラー
90 ヒーター
91 サーミスター
92 記憶装置
201 ヒーター制御部
図1
図2
図3
図4
図5