特許第5982425号(P5982425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982425
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/32 20060101AFI20160818BHJP
   H01T 13/08 20060101ALI20160818BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   H01T13/32
   H01T13/08
   F02P13/00 301J
【請求項の数】6
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-107101(P2014-107101)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-222682(P2015-222682A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】特許業務法人鳳国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 裕之
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭59−029358(JP,Y1)
【文献】 実開昭61−051483(JP,U)
【文献】 特開2008−258077(JP,A)
【文献】 特開平05−033754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/00−13/60
F02P 13/00
F02P 3/00− 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる中心電極と、
前記軸線方向に延びる軸孔を有し、前記軸孔に前記中心電極が配置される絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
を備えるスパークプラグであって、
前記主体金具は、
前記主体金具と電気的に接続されるとともに、前記中心電極の側面と径方向に対向して第1のギャップを形成する第1の面を有する第1の接地電極と、
前記主体金具と電気的に接続されるとともに、前記中心電極の側面と径方向に対向して第2ギャップを形成する第2の面を有する第2の接地電極と、
を、さらに備え、
前記第1の面と前記第2の面とが対向する前記軸線方向の位置において、前記中心電極の外径は、前記第1の面および前記第2の面の幅の最大部より大きく、
前記軸線方向の先端側から後端側に向かって見た場合に、前記軸線と前記第1の面の中心とを結ぶ第1の線分と、前記軸線と前記第2の面の中心とを結ぶ第2の線分と、がなす角のうち小さい方の角度θは、60°≦θ≦150°を満たし、
前記軸線を含む平面であり、全ての接地電極が一方の側に配置されるように前記主体金具を2分する特定平面を有することを特徴とする、スパークプラグ。
【請求項2】
請求項1に記載のスパークプラグであって、
前記軸線方向の先端側から後端側に向かって見た場合に、前記角度θの範囲に、内燃機関の燃焼室内において前記第1のギャップおよび前記第2のギャップを通る混合気の流動経路の上流側が位置するように、前記内燃機関に取り付けられることを特徴とする、スパークプラグ。
【請求項3】
軸線方向に延びる中心電極と、
前記軸線方向に延びる軸孔を有し、前記軸孔に前記中心電極が配置される絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
を備えるスパークプラグであって、
前記主体金具は、
前記主体金具と電気的に接続されるとともに、前記中心電極の側面と径方向に対向して第1のギャップを形成する第1の面を有する第1の接地電極と、
前記主体金具と電気的に接続されるとともに、前記中心電極の側面と径方向に対向して第2ギャップを形成する第2の面を有する第2の接地電極と、
を、さらに備え、
前記軸線方向の先端側から後端側に向かって見た場合に、前記軸線と前記第1の面の中心とを結ぶ第1の線分と、前記軸線と前記第2の面の中心とを結ぶ第2の線分と、がなす角のうち小さい方の角度θは、60°≦θ≦150°を満たし、
前記軸線を含む平面であり、全ての接地電極が一方の側に配置されるように前記主体金具を2分する特定平面を有し、
前記軸線方向の先端側から後端側に向かって見た場合に、前記角度θの範囲に、内燃機関の燃焼室内において前記第1のギャップおよび前記第2のギャップを通る混合気の流動経路の上流側が位置するように、前記内燃機関に取り付けられることを特徴とする、スパークプラグ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスパークプラグであって、
前記第1の接地電極は、前記第1の面を含む第1の接地電極チップと、前記第1の接地電極チップが接合された第1の接地電極本体と、を備え、
前記第2の接地電極は、前記第2の面を含む第2の接地電極チップと、前記第2の接地電極チップが接合された第2の接地電極本体と、を備え、
前記第1の接地電極本体および前記第2の接地電極本体の幅の最大部は、前記中心電極の外径より大きいことを特徴とする、スパークプラグ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のスパークプラグであって、
前記第1の接地電極は、前記第1の面を含む第1の接地電極チップと、前記第1の接地電極チップが接合された第1の接地電極本体と、を備え、
前記第2の接地電極は、前記第2の面を含む第2の接地電極チップと、前記第2の接地電極チップが接合された第2の接地電極本体と、を備え、
前記第1の接地電極本体から前記第1の接地電極チップが前記主体金具の径方向内側に向かって突出している突出長、および、前記第2の接地電極本体から前記第2の接地電極チップが前記主体金具の径方向内側に向かって突出している突出長は、それぞれ0.5mm以上であることを特徴とする、スパークプラグ。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載のスパークプラグであって、
1回の放電時に、前記スパークプラグに25mA以上の電流を0.5ms以上に亘って供給することが可能な電流供給部を用いて駆動されることを特徴とする、スパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等において着火に用いられるスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
スパークプラグは、絶縁体によって互いに絶縁された中心電極と接地電極とに電圧が印加されることによって、中心電極の先端部と接地電極の先端部との間に形成されたギャップに、火花を発生させる。例えば、特許文献1には、中心電極と接地電極とが軸線の方向に対向して、ギャップを形成するスパークプラグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−237365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、内燃機関の燃費向上や排気ガスの浄化のために、混合気の希薄化や再循環されるガス(EGRガス)の増加が図られており、これに伴う火炎伝播速度の低下を補うために、内燃機関の燃焼室内のガス流の流速が速くなる傾向にある。この結果、上記特許文献1のスパークプラグでは、例えば、スパークプラグのギャップに発生した火花が、ガス流に吹き流されて消滅する現象(火花の吹き消え)が発生しやすくなる可能性があった。火花の吹き消えは、火花の放電経路の伸長を妨げて、スパークプラグの着火性を低下させるととともに、多重放電を発生させて、スパークプラグの耐久性を低下させてしまう。このために、燃焼室内のガス流の流速が速い場合であっても、スパークプラグの着火性能と耐久性を確保する技術が求められていた。
【0005】
本発明の目的は、燃焼室内のガス流の流速が速い場合であっても、スパークプラグの着火性能と耐久性を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
[形態1]軸線方向に延びる中心電極と、
前記軸線方向に延びる軸孔を有し、前記軸孔に前記中心電極が配置される絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
を備えるスパークプラグであって、
前記主体金具は、
前記主体金具と電気的に接続されるとともに、前記中心電極の側面と径方向に対向して第1のギャップを形成する第1の面を有する第1の接地電極と、
前記主体金具と電気的に接続されるとともに、前記中心電極の側面と径方向に対向して第2ギャップを形成する第2の面を有する第2の接地電極と、
を、さらに備え、
前記第1の面と前記第2の面とが対向する前記軸線方向の位置において、前記中心電極の外径は、前記第1の面および前記第2の面の幅の最大部より大きく、
前記軸線方向の先端側から後端側に向かって見た場合に、前記軸線と前記第1の面の中心とを結ぶ第1の線分と、前記軸線と前記第2の面の中心とを結ぶ第2の線分と、がなす角のうち小さい方の角度θは、60°≦θ≦150°を満たし、
前記軸線を含む平面であり、全ての接地電極が一方の側に配置されるように前記主体金具を2分する特定平面を有することを特徴とする、スパークプラグ。
[形態2]軸線方向に延びる中心電極と、
前記軸線方向に延びる軸孔を有し、前記軸孔に前記中心電極が配置される絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
を備えるスパークプラグであって、
前記主体金具は、
前記主体金具と電気的に接続されるとともに、前記中心電極の側面と径方向に対向して第1のギャップを形成する第1の面を有する第1の接地電極と、
前記主体金具と電気的に接続されるとともに、前記中心電極の側面と径方向に対向して第2ギャップを形成する第2の面を有する第2の接地電極と、
を、さらに備え、
前記軸線方向の先端側から後端側に向かって見た場合に、前記軸線と前記第1の面の中心とを結ぶ第1の線分と、前記軸線と前記第2の面の中心とを結ぶ第2の線分と、がなす角のうち小さい方の角度θは、60°≦θ≦150°を満たし、
前記軸線を含む平面であり、全ての接地電極が一方の側に配置されるように前記主体金具を2分する特定平面を有し、
前記軸線方向の先端側から後端側に向かって見た場合に、前記角度θの範囲に、内燃機関の燃焼室内において前記第1のギャップおよび前記第2のギャップを通る混合気の流動経路の上流側が位置するように、前記内燃機関に取り付けられることを特徴とする、スパークプラグ。
【0007】
[適用例1] 軸線方向に延びる中心電極と、
前記軸線方向に延びる軸孔を有し、前記軸孔に前記中心電極が配置される絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
を備えるスパークプラグであって、
前記主体金具は、
前記主体金具と電気的に接続されるとともに、前記中心電極の側面と径方向に対向して第1のギャップを形成する第1の面を有する第1の接地電極と、
前記主体金具と電気的に接続されるとともに、前記中心電極の側面と径方向に対向して第2ギャップを形成する第2の面を有する第2の接地電極と、
を、さらに備え、
前記軸線方向の先端側から後端側に向かって見た場合に、前記軸線と前記第1の面の中心とを結ぶ第1の線分と、前記軸線と前記第2の面の中心とを結ぶ第2の線分と、がなす角のうち小さい方の角度θは、60°≦θ≦150°を満たし、
前記軸線を含む平面であり、全ての接地電極が一方の側に配置されるように前記主体金具を2分する特定平面を有することを特徴とする、スパークプラグ。
【0008】
上記構成によれば、2個の接地電極の配置を適正化することによって、火花の吹き消えの抑制や、火花の放電経路の伸長の促進を実現することができる。この結果、燃焼室内のガス流の流速が速い場合であっても、スパークプラグの着火性能と耐久性を確保することができる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載のスパークプラグであって、
前記第1の面と前記第2の面とが対向する前記軸線方向の位置において、前記中心電極の外径は、前記第1の面および前記第2の面の幅の最大部より大きいことを特徴とする、スパークプラグ。
【0010】
上記構成によれば、接地電極のギャップを形成する第1の面および第2の面の幅の最大部に対して中心電極の外径を大きくすることによって、火花の吹き消えをさらに抑制することができる。この結果、さらに、スパークプラグの耐久性を向上することができる。
【0011】
[適用例3]適用例1または2に記載のスパークプラグであって、
前記第1の接地電極は、前記第1の面を含む第1の接地電極チップと、前記第1の接地電極チップが接合された第1の接地電極本体と、を備え、
前記第2の接地電極は、前記第2の面を含む第2の接地電極チップと、前記第2の接地電極チップが接合された第2の接地電極本体と、を備え、
前記第1の接地電極本体および前記第2の接地電極本体の幅の最大部は、前記中心電極の外径より大きいことを特徴とする、スパークプラグ。
【0012】
上記構成によれば、第1の接地電極本体および第2の接地電極本体の幅の最大部を、中心電極の外径より大きくすることによって、2個の接地電極本体の外側(特に下流側)から回り込む混合気の流れ(ガス流)が、ギャップの近傍に到達することを抑制することができる。この結果、ギャップ付近における燃料ガスの流速の低下を抑制して、スパークプラグの着火性を向上することができる。
【0013】
[適用例4]適用例1〜3のいずれか1項に記載のスパークプラグであって、
前記第1の接地電極は、前記第1の面を含む第1の接地電極チップと、前記第1の接地電極チップが接合された第1の接地電極本体と、を備え、
前記第2の接地電極は、前記第2の面を含む第2の接地電極チップと、前記第2の接地電極チップが接合された第2の接地電極本体と、を備え、
前記第1の接地電極本体から前記第1の接地電極チップが前記主体金具の径方向内側に向かって突出している突出長、および、前記第2の接地電極本体から前記第2の接地電極チップが前記主体金具の径方向内側に向かって突出している突出長は、それぞれ0.5mm以上であることを特徴とする、スパークプラグ。
【0014】
上記構成によれば、接地電極本体から接地電極チップが径方向内側に向かって突出している突出長を比較的長くすることによって、2個の接地電極本体の外側から周り込む混合気の流れが、ギャップの近傍に到達することを抑制することができる。この結果、ギャップ付近における燃料ガスの流速の低下を抑制して、スパークプラグの着火性を向上することができる。
【0015】
[適用例5]適用例1〜4のいずれか1項に記載のスパークプラグであって、
1回の放電時に、前記スパークプラグに25mA以上の電流を0.5ms以上に亘って供給することが可能な電流供給部を用いて駆動されることを特徴とする、スパークプラグ。
【0016】
上記構成によれば、比較的長い時間に亘って電流を供給可能な電流供給部を用いる場合に、火花の吹き消えが発生しにくいので、電流供給部による電流の供給能力に応じた着火性能を実現することができる。
【0017】
[適用例6]適用例1〜5のいずれかに1項に記載のスパークプラグであって、
前記軸線方向の先端側から後端側に向かって見た場合に、前記角度θの範囲に、内燃機関の燃焼室内において前記第1のギャップおよび前記第2のギャップを通る混合気の流動経路の上流側が位置するように、前記内燃機関に取り付けられることを特徴とする、スパークプラグ。
【0018】
上記構成によれば、混合気の流動(ガス流)による火花の吹き消えを効果的に抑制して、耐久性と着火性能を向上することができる。
【0019】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、スパークプラグやスパークプラグを用いた点火装置、スパークプラグの取付方法、そのスパークプラグを搭載する内燃機関や、そのスパークプラグを用いた点火装置を搭載する内燃機関等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態のスパークプラグ100が取り付けられる内燃機関の一例を示す図である。
図2】スパークプラグ100と吸気バルブ730と排気バルブ740との配置例を示す投影図である。
図3】スパークプラグ100の断面図である。
図4】スパークプラグ100の先端近傍の構成を示す図である。
図5】実施形態のスパークプラグ100の放電について説明する図である。
図6】第1評価試験のサンプルS1〜S3について説明する図である。
図7】縦放電のサンプルの放電について説明する図である。
図8】比較形態のスパークプラグの説明図である。
図9】実施形態のスパークプラグ100の放電について説明する図である。
図10】第5評価試験のサンプルの一例を示す図である。
図11】第6評価試験の点火装置について説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態のスパークプラグ100が取り付けられる内燃機関の一例を示す図である。図中には、内燃機関700の複数(例えば、4個)の燃焼室(シリンダとも呼ばれる)のうちの1個の燃焼室790の概略断面図が示されている。内燃機関700は、エンジンヘッド710と、シリンダブロック720と、ピストン750と、スパークプラグ100と、を含んでいる。ピストン750は、図示しないコネクティングロッドに連結され、コネクティングロッドは、図示しないクランクシャフトに連結されている。
【0022】
シリンダブロック720は、燃焼室790のうちの一部(略円筒状の空間)を形成するシリンダ壁729を有している。シリンダブロック720の一方向側(図1の上側)には、エンジンヘッド710が固定されている。エンジンヘッド710は、燃焼室790の端部を形成する内壁719と、燃焼室790に連通する吸気ポート712を形成する第1壁711と、吸気ポート712を開閉可能な吸気バルブ730と、燃焼室790に連通する排気ポート714を形成する第2壁713と、排気ポート714を開閉可能な排気バルブ740と、スパークプラグ100を取り付けるための取付孔718と、を有している。ピストン750は、シリンダ壁729によって形成される空間内を、往復動する。ピストン750のエンジンヘッド710側の面759と、シリンダブロック720のシリンダ壁729と、エンジンヘッド710の内壁719と、に囲まれる空間が、燃焼室790に相当する。スパークプラグ100の中心電極20と接地電極30とは、燃焼室790に露出している。図中の中心軸CLは、中心電極20の中心軸CLである(軸線CLとも呼ぶ)。
【0023】
図2は、スパークプラグ100と吸気バルブ730と排気バルブ740との配置例を示す投影図である。この投影図は、スパークプラグ100の中心電極20の軸線CLに垂直な投影面上に要素100、730、740を投影することによって得られる投影図である。図示された要素100、730、740は、1個の燃焼室790(図1)の要素である。図中では、バルブ730、740を表す領域のそれぞれに、ハッチングが付されている。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の内燃機関700の1個の燃焼室790には、1個のスパークプラグ100と、2個の吸気バルブ730と、2個の排気バルブ740と、が設けられている。投影図中のバルブ730、740は、いずれも、閉じた状態のバルブ730、740を示している。また、投影図中のバルブ730、740は、いずれも、燃焼室790内から見える部分を示している。以下、2個の吸気バルブ730を区別する場合には、符号「730」の末尾に識別子(ここでは、「a」または「b」)を付加する。2個の排気バルブ740についても、同様である。
【0025】
図中には、バルブ730a、730b、740a、740bのそれぞれの中心位置C3a、C3b、C4a、C4bが、示されている。これらの中心位置C3a、C3b、C4a、C4bは、それぞれ、図2に示す投影面上におけるバルブ730a、730b、740a、740bを表す領域の重心位置を示している。例えば、第1中心位置C3aは、第1吸気バルブ730aを表す領域の重心位置である。なお、領域の重心は、領域内に質量が均等に分布していると仮定した場合の重心の位置である。
【0026】
図中には、2個の重心位置C3、C4が示されている。吸気重心位置C3は、2個の吸気バルブ730a、730bのそれぞれの中心位置C3a、C3bの重心位置である。排気重心位置C4は、2個の排気バルブ740a、740bのそれぞれの中心位置C4a、C4bの重心位置である。なお、複数の中心位置の重心位置は、各中心位置に同じ質量が配置されていると仮定した場合の重心の位置である。
【0027】
図2の矢印で示す流動方向Dgは、軸線CLと略垂直な方向であり、吸気重心位置C3から排気重心位置C4からに向かう方向である(バルブ配置方向とも呼ぶ。)。スパークプラグ100の点火時には、燃焼室790内におけるスパークプラグ100の先端近傍を流動方向Dgに燃料ガス(空気と燃料の混合気)が流動する。図2の流動方向Dgを示す矢印は、スパークプラグ100の先端近傍における混合気の流動経路を示していると、言うこともできる。
【0028】
次に、スパークプラグ100の構成について、説明する。図3は、スパークプラグの一例の断面図である。図中には、中心電極20の中心軸CLが示されている。本実施形態では、中心電極20の中心軸CLは、スパークプラグ100の中心軸と同じである。図示された断面は、中心軸CLを含む断面である。以下、中心軸CLと平行な方向を「軸線方向」とも呼ぶ。中心軸CLを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、中心軸CLを中心とする円の周方向を、単に「周方向」とも呼ぶ。中心軸CLと平行な方向のうち、図3における上方向を先端方向Dfと呼び、下方向を後端方向Drとも呼ぶ。また、図3における先端方向Df側をスパークプラグ100の先端側と呼び、図3における後端方向Dr側をスパークプラグ100の後端側と呼ぶ。
【0029】
スパークプラグ100は、絶縁体10(以下「絶縁碍子10」とも呼ぶ)と、中心電極20と、2個の接地電極と、端子金具40と、主体金具50と、導電性の第1シール部60と、抵抗体70と、導電性の第2シール部80と、先端側パッキン8と、タルク9と、第1後端側パッキン6と、第2後端側パッキン7と、を備えている。2個の接地電極は、第1の接地電極30Aと、図3では図示されていない第2の接地電極30Bである。
【0030】
絶縁体10は、中心軸CLに沿って延びて絶縁体10を貫通する貫通孔12(以下「軸孔12」とも呼ぶ)を有する略円筒状の部材である。絶縁体10は、アルミナを焼成して形成されている(他の絶縁材料も採用可能である)。絶縁体10は、先端側から後端方向Drに向かって順番に並ぶ、脚部13と、第1縮外径部15と、先端側胴部17と、鍔部19と、第2縮外径部11と、後端側胴部18と、を有している。第1縮外径部15の外径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。絶縁体10の第1縮外径部15の近傍(図3の例では、先端側胴部17)には、後端側から先端側に向かって内径が徐々に小さくなる縮内径部16が形成されている。第2縮外径部11の外径は、先端側から後端側に向かって、徐々に小さくなる。
【0031】
絶縁体10の軸孔12の先端側には、中心軸CLに沿って延びる棒状の中心電極20が挿入されている。中心電極20は、軸部27と、中心軸CLを中心として中心軸CLに沿って延びる略円柱状の中心電極チップ28と、を備えている。軸部27は、先端側から後端方向Drに向かって順番に並ぶ、脚部25と、鍔部24と、頭部23と、を有している。脚部25の先端(すなわち、軸部27の先端)には、中心電極チップ28が接合されている(例えば、レーザ溶接)。中心電極チップ28の全体は、絶縁体10の先端側で、軸孔12の外に露出している。鍔部24の先端方向Df側の面は、絶縁体10の縮内径部16によって、支持されている。また、軸部27は、外層21と芯部22とを有している。外層21は、導電性を有し、芯部22よりも耐酸化性に優れる材料、すなわち、内燃機関の燃焼室内で燃焼ガスに曝された場合の消耗が少ない材料(例えば、純ニッケル、ニッケルとクロムとを含む合金、等)で形成されている。芯部22は、導電性を有し、外層21よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅、銅合金、等)で形成されている。芯部22の後端部は、外層21から露出し、中心電極20の後端部を形成する。芯部22の他の部分は、外層21によって被覆されている。ただし、芯部22の全体が、外層21によって覆われていても良い。また、中心電極チップ28は、軸部27よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属、タングステン(W)、それらの金属から選択された少なくとも1種を含む合金)を用いて形成されている。
【0032】
絶縁体10の軸孔12の後端側には、端子金具40の一部が挿入されている。端子金具40は、導電性材料(例えば、低炭素鋼等の金属)を用いて形成されている。
【0033】
絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40と中心電極20との間には、電気的なノイズを抑制するための、略円柱形状の抵抗体70が配置されている。抵抗体70は、例えば、導電性材料(例えば、炭素粒子)と、セラミック粒子(例えば、ZrO)と、ガラス粒子(例えば、SiO2−B23−LiO−BaO系のガラス粒子)と、を含む材料を用いて形成されている。抵抗体70と中心電極20との間には、導電性の第1シール部60が配置され、抵抗体70と端子金具40との間には、導電性の第2シール部80が配置されている。シール部60、80は、例えば、抵抗体70の材料に含まれるものと同じガラス粒子と、金属粒子(例えば、Cu)と、を含む材料を用いて、形成されている。中心電極20と端子金具40とは、抵抗体70とシール部60、80とを介して、電気的に接続される。
【0034】
主体金具50は、中心軸CLに沿って延びて主体金具50を貫通する貫通孔59を有する略円筒状の部材である。主体金具50は、低炭素鋼材を用いて形成されている(他の導電性材料(例えば、金属材料)も採用可能である)。主体金具50の貫通孔59には、絶縁体10が挿入されている。主体金具50は、絶縁体10の外周に配置されている。主体金具50の先端側では、絶縁体10の先端(本実施形態では、脚部13の先端側の部分)が、貫通孔59の外に露出している。主体金具50の後端側では、絶縁体10の後端(本実施形態では、後端側胴部18の後端側の部分)が、貫通孔59の外に露出している。
【0035】
主体金具50は、先端側から後端側に向かって順番に並ぶ、胴部55と、座部54と、変形部58と、工具係合部51と、加締部53と、を有している。座部54は、鍔状の部分である。胴部55の外周面には、内燃機関(例えば、ガソリンエンジン)の取付孔に螺合するためのネジ部52が形成されている。ネジ部52の呼び径は、例えば、M12(12mm(ミリメートル))とされている。ネジ部52の呼び径は、M8、M10、M14、M18のいずれかであっても良い。座部54とネジ部52との間には、金属板を折り曲げて形成された環状のガスケット5が嵌め込まれている。
【0036】
主体金具50は、変形部58よりも先端方向Df側に配置された縮内径部56を有している。縮内径部56の内径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。主体金具50の縮内径部56と、絶縁体10の第1縮外径部15と、の間には、先端側パッキン8が挟まれている。先端側パッキン8は、鉄製でO字形状のリングである(他の材料(例えば、銅等の金属材料)も採用可能である)。
【0037】
工具係合部51の形状は、スパークプラグレンチが係合する形状(例えば、六角柱)である。また、加締部53は、絶縁体10の第2縮外径部11よりも後端側に配置され、主体金具50の後端(すなわち、後端方向Dr側の端)を形成する。加締部53は、径方向の内側に向かって屈曲されている。加締部53の先端方向Df側では、主体金具50の内周面と、絶縁体10の外周面と、の間に、第1後端側パッキン6と、タルク9と、第2後端側パッキン7とが、先端方向Dfに向かってこの順番に、配置されている。本実施形態では、これらの後端側パッキン6、7は、鉄製でC字形状のリングである(他の材料も採用可能である)。
【0038】
スパークプラグ100の製造時には、加締部53が内側に折り曲がるように加締められる。そして、加締部53が先端方向Df側に押圧される。これにより、変形部58が変形し、後端側パッキン6、7とタルク9とを介して、絶縁体10が、主体金具50内で、先端側に向けて押圧される。先端側パッキン8は、第1縮外径部15と縮内径部56との間で押圧され、そして、主体金具50と絶縁体10との間をシールする。以上により、主体金具50が、絶縁体10に、固定される。
【0039】
図4は、スパークプラグ100の先端近傍の構成を示す図である。図4(A)には、スパークプラグ100の先端近傍を軸線CLと垂直な方向から見た図が示されている。図4(B)には、スパークプラグ100の先端近傍を軸線CLに沿って先端側から後端側に向かって見た図が示されている。図4(B)では、図の煩雑を避けるために、絶縁体10や、中心電極チップ28を除く中心電極20の構成については、図示を省略している。第1の接地電極30Aは、第1の接地電極本体35Aと、第1の接地電極チップ38Aと、を備えている。
【0040】
第1の接地電極本体35Aは、直方体の形状を有し、耐酸化性に優れる導電性の材料(例えば、ニッケルとクロムとを含む合金)を用いて形成されている。第1の接地電極本体35Aの後端は、主体金具50の先端面57に接合されている(例えば、抵抗溶接)。したがって、第1の接地電極本体35Aは、主体金具50と電気的に接続されている。図4(B)に示すように、第1の接地電極本体35Aを軸線CLと垂直な平面で切断した断面は、長方形である。第1の接地電極本体35Aは、当該長方形の長辺が径方向に沿い、当該長方形の短辺が径方向に沿うように、主体金具50に接合されている。
【0041】
第1の接地電極チップ38Aは、径方向に延びる角柱状を有し、第1の接地電極本体35Aよりも放電に対する耐久性に優れる導電性の材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属、タングステン(W)、それらの金属から選択された少なくとも1種を含む合金)を用いて形成されている。第1の接地電極チップ38Aの径方向外側の端部は、第1の接地電極本体35Aの先端面に接合されている(例えば、抵抗溶接)。接合位置は、第1の接地電極本体35Aの長方形を有する先端面の長辺の中央である。この結果、図4(B)に示すように、軸線CLに沿って見た第1の接地電極30Aの形状は、T字型になっている。また、図4(A)に示すように、軸線CLと垂直な特定方向から見た第1の接地電極30Aの形状は、L字型になっている。
【0042】
第1の接地電極チップ38Aの径方向内側の面39Aは、円柱状の中心電極チップ28の側面29(放電側面とも呼ぶ)と径方向に対向して、第1のギャップGAを形成している。第1の接地電極チップ38Aの径方向内側の面39Aを第1の放電面39Aとも呼ぶ。図4(B)に示すように、軸線CLから、第1の放電面39Aの幅方向(本実施例では、周方向に沿った方向)の中心の点PAに向かう方向であり、かつ、軸線CLと垂直な方向を、第1の接地電極30Aが配置されている方向を示す第1の配置方向D1、と呼ぶ。
【0043】
第2の接地電極30Bの形状、材料、寸法は、第1の接地電極30Aと同じである。すなわち、第2の接地電極30Bは、第1の接地電極本体35Aと同様の第2の接地電極本体35Bと、第1の接地電極チップ38Aと同様の第2の接地電極チップ38Bと、を備えている。
【0044】
第2の接地電極チップ38Bの径方向内側の面39Bは、円柱状の中心電極チップ28の側面29と径方向に対向して、第2のギャップGBを形成している(図4(B))。第2の接地電極チップ38Bの径方向内側の面39Bを第2の放電面39Bとも呼ぶ。図4(B)に示すように、軸線CLから、第2の放電面39Bの幅方向の中心の点PBに向かう方向であり、かつ、軸線CLと垂直な方向を、第2の接地電極30Bが配置されている方向を示す第2の配置方向D2、と呼ぶ。
【0045】
第1の配置方向D1と第2の配置方向D2との間の周方向の角度、すなわち、図4(B)において、軸線CLと点PAとを結ぶ線分と、軸線CLと点PBとを結ぶ線分とがなす劣角(小さい方の角度)を、2個の接地電極30A、30Bの配置角度θとする。配置角度θは、180度より十分に小さい(図4の例では、約100度(°))。
【0046】
なお、スパークプラグ100は、燃焼室790におけるスパークプラグ100の先端近傍での混合気の流動方向Dg(図2)の上流側が、図4(B)の配置角度θの範囲内に位置するように、内燃機関700に取り付けられることが好ましい。こうすれば、詳細は後述するように、混合気の流動方向Dgの流れ(後述するガス流AR1)による火花の吹き消えを効果的に抑制して、耐久性と着火性能を向上することができる。スパークプラグ100の先端近傍での混合気の流動方向Dgは、第1のギャップGAおよび第2のギャップGBを通る混合気の流動経路の流動方向とも言うことができる。図4(B)に示すように、スパークプラグ100は、流動方向Dgと平行で軸線CLを通る線(流動方向線)と第1の配置方向D1との間の周方向の角度のうちの小さい方の角度θ1と、流動方向線と第2の配置方向D2との間の周方向の角度のうちの小さい方の角度θ2とが、ほぼ同じになるように内燃機関700に取り付けられることがより好ましい。
【0047】
また、上述したように、配置角度θは180度より十分に小さく、かつ、スパークプラグ100は、第1の接地電極30Aと第2の接地電極30B以外には、接地電極を備えていない。したがって、スパークプラグ100は、軸線CLを含む平面であり、全ての接地電極(すなわち、第1の接地電極30Aと第2の接地電極30B)が一方の側に配置されるように、主体金具50を2分する特定平面を有する。例えば、図4(B)の例では、破線で示す平面VLから見て一方の側(図4(B)の右下側)に、全ての接地電極が存在し、平面VLから見て他方の側(図4(B)の左上側)には、接地電極は存在しない。
【0048】
なお、中心電極チップ28の外径、すなわち、接地電極30A、30Bの放電面39A、39Bと対向する軸線方向の位置における中心電極20の外径を、R1とする。また、接地電極本体35A、35Bの幅方向(本実施例では周方向に沿った方向)の長さ(すなわち、軸と垂直な断面における長手方向の長さ、最大部の幅とも呼ぶ)をL1とする。接地電極本体35A、35Bの径方向の長さ(すなわち、軸と垂直な断面における短手方向の長さ、最小部の幅とも呼ぶ)をL2とする。また、接地電極チップ38A、38Bの放電面39A、39Bの幅方向の長さ(すなわち、放電面の長手方向の長さ、最大部の幅とも呼ぶ)をL3、放電面39A、39Bの軸線方向の長さをL4、接地電極チップ38A、38Bの径方向の長さをL5とする。また、接地電極本体35A、35Bから接地電極チップ38A、38Bが、径方向内側に向かって突出している突出長を、L6とする。
【0049】
以上説明した実施形態のスパークプラグ100によれば、2個の接地電極30A、30Bを適正に配置することによって、着火性と耐久性とを向上することができる。図5を参照して具体的に説明する。図5は、実施形態のスパークプラグ100の放電について説明する図である。図5には、図4(B)と同様に、スパークプラグ100の先端近傍を軸線CLに沿って先端側から後端側に向かって見た図が示されている。図5では、中心電極チップ28と、第1の接地電極30Aと、第2の接地電極30Bと、を除く構成は、適宜に省略されている。
【0050】
図中の矢印AR1は、第1のギャップGAおよび第2のギャップGBの近傍での混合気の流れ(すなわち、内燃機関700の燃焼室790内の混合気の流れ)を示している(以下、「ガス流AR1」と呼ぶ)。このガス流AR1は、流動方向Dgに沿って、第1のギャップGAおよび第2のギャップGBを通り抜ける流れである。スパークプラグ100の動作時に、第1のギャップGAまたは第2のギャップGBのいずれかで生じる火花放電は、このガス流AR1によって風下へ吹き流され得る。
【0051】
図中の放電経路E1〜E4は、第1のギャップGAにおいて発生する火花の放電経路の例を示している。第1経路E1は、火花の発生直後の経路の例である。第1経路E1は、例えば、火花が発生しやすい第1の放電面39Aの端に位置する点P0と、点P0と最も近い放電側面29上の点P1とを結ぶ経路である。発生した火花はガス流AR1によって流される(火花の吹き流れ)ので、火花の経路は、時間の経過とともに第2経路E2〜第4経路E4へと変化していく。このとき、火花の経路の放電側面29上の端点P2〜P4は、放電側面29に沿ってガス流AR1の下流側に移動する。放電側面29が曲面であるために、このような端点の移動がスムーズに発生するので、吹き流れによって火花が消滅する現象(火花の吹き消え)の発生が抑制される。また、吹き流れによって、火花の放電経路の伸長が発生し、ギャップGA、GBから離れて火炎核が形成されるので、消炎作用を受けにくくなる。この結果、スパークプラグ100の着火性能が向上する。なお、第1経路E1の第1の放電面39A側の端は点P0に限らず、より上流側に位置する点P0'でも発生し得るが、この場合であっても、ガス流AR1によって、点P0まで移動する。
【0052】
また、火花の吹き消えが発生すると、1回の放電が発生すべき期間に、火花が第1経路E1にて再発生する現象(多重放電)が起きる。ギャップ間には、火花の発生時に最大の電圧と電流が発生するので、火花の発生時に電極チップ28、38A、38Bの消耗量が最大となる。このために、多重放電が起きると、電極チップ28、38A、38Bの消耗量が、多重放電が発生しない場合と比較して大きくなる。本実施形態によれば、上述したように、火花の吹き消えの発生が抑制されるので、電極チップ28、38A、38Bの消耗量の増大を抑制することができる。この結果、スパークプラグ100の耐久性が向上する。第2のギャップGBにおいて発生する火花についても同様のことが言える。
【0053】
さらに、2個の接地電極30A、30Bが、平面VLの一方の側、すなわち、ガス流AR1の上流側に偏在していることによって、中心電極チップ28の放電側面29上において、火花の放電経路の端点(例えば、P2〜P4)は、放電側面29の一部に偏ることなく、比較的広い範囲に発生する。この結果、中心電極チップ28は、図5においてハッチングで示すように、過度に偏ることなく比較的均一に消耗していく。この結果、スパークプラグ100の耐久性が向上する。例えば、仮に、θが180度である場合や、180以上である場合、すなわち、2個の接地電極30A、30Bが平面VL上や平面VLよりガス流AR1の下流側にある場合を考える。この場合には、中心電極チップ28の放電側面29のうち、消耗が発生する領域が、平面VLより下流側の部分に偏ると考えられ、耐久性が本実施形態と比較して劣ると考えられる。
【0054】
このような効果は、特にガス流AR1の流速が比較的速い場合に効果的である。具体的には、混合気の希薄化(A/F比の増大)や、排気再循環(EGR(Exhaust Gas Recirculation))の実行、燃焼室内の圧力の増大などに伴って、着火性を確保するために、燃焼室内のガス流AR1の流速が速くなる傾向にある。本実施例のスパークプラグ100は、このようなガス流AR1の流速が比較的速くされた内燃機関用のスパークプラグとして効果が大きい。具体的には、吹き消えの抑制の観点からは、火花の放電経路は短い方が好ましく、上述したように、吹き消えが発生しなければ、着火性の観点からは火花の放電経路は長い方が好ましい。このように互いに相反する要求を両立させることは困難であったが、本実施形態のスパークプラグ100では、接地電極の配置等を適正化することによって、火花の放電経路が長くなっても火花の吹き消えを抑制することができる。この結果、燃焼室内の火花ガス流ARの流速が速い場合であっても、スパークプラグの着火性能と耐久性を確保することができる。
【0055】
B.第1評価試験:
実施形態のスパークプラグ100の性能を評価すべく、サンプルを用いて着火性能の評価を行った。具体的には、第1評価試験では、放電の方向が軸線方向と垂直である(横放電)場合と、放電の方向が軸線方向と平行である(縦放電)場合と、の比較試験を行った。
【0056】
図6は、第1評価試験のサンプルS1〜S3について説明する図である。図6(A)の横放電のサンプルS1は、上記実施形態のスパークプラグ100から第2の接地電極30Bを取り除いたスパークプラグである。すなわち、サンプルS1は、1個の第1の接地電極30Aのみを、接地電極として備えている。他の構成は、上記実施形態のスパークプラグ100と同じである。
【0057】
図6(B)の縦放電のサンプルS2は、1個の縦放電の接地電極30Cのみを、接地電極として備えている。他の構成は、上記実施形態のスパークプラグ100と同じである。接地電極30Cは、L字型の接地電極本体35Cと、接地電極チップ38Cと、を備えている。接地電極本体35Cの軸線方向に延びる部分の後端は、主体金具50に接合されている(例えば、抵抗溶接)。接地電極チップ38Cは、接地電極本体35Cの径方向に延びる部分の径方向内側の端部に接合されている(例えば、抵抗溶接)。接地電極チップ38Cの後端面は、中心電極チップ28の先端面との間にギャップGhを形成している。
【0058】
図6(C)の両方向放電のサンプルS3は、2個の接地電極、すなわち、1個の横放電の第1の接地電極30Aと、1個の縦放電の接地電極30Cと、を備えている。サンプルS3の横放電の第1の接地電極30Aは、サンプルS1の第1の接地電極30Aと同じである。サンプルS3の縦放電の接地電極30Cは、サンプルS2の接地電極30Cと同じである。他の構成は、上記実施形態のスパークプラグ100と同じである。なお、2個の接地電極30A、30Cは、軸線CLを通る一本の直線(図6(C)の方向D1と平行な直線)に沿って、配置されている。すなわち、2個の接地電極30A、30Cは、主体金具50の先端面57における軸線CLを挟んで互いに反対側の位置に、接合されている。
【0059】
なお、サンプルS1〜S3の詳細構成は、以下の通りである。
中心電極チップ28の外径R1 :0.6mm
中心電極チップ28の材料 :イリジウム(Ir)合金
接地電極チップ38A、38Cの放電面の周方向の長さL3 :0.6mm
接地電極チップ38A、38Cの放電面の軸線方向の長さL4 :0.6mm
接地電極チップ38A、38Cの径方向の長さL5 :1.0mm
接地電極チップ38A、38Cの材料 :白金(Pt)合金
【0060】
なお、横放電のサンプルS1として、ギャップGA(図6(A))の長さを0.3mm、0.5mm、1.0mmとした3種類のサンプルS11〜S13を用意した。また、縦放電のサンプルS2として、ギャップGh(図6(B))の長さを0.3mm、0.5mm、1.0mmとした3種類のサンプルS21〜S23を用意した。また、両方向放電のサンプルS3として、ギャップGAおよびGh(図6(C))の長さを0.3mm、0.5mm、1.0mmとした3種類のサンプルS31〜S33を用意した。
【0061】
第1評価試験では、合計9種類のサンプルS11〜S33を用いて、0.8MPaに加圧されたチャンバー内で、1回の試験あたり100回の火花放電を発生させる火花試験を行った。放電時には、所定の点火装置(例えば、フルトランジスタ点火装置)を用いて、1放電あたり50mJの電気エネルギーを供給した。そして、火花試験中のチャンバ−内には、軸線CLから見て接地電極が配置されている方向と垂直な方向(図6(A)〜(C)の方向Ds)に流動する気流を発生させた。
【0062】
そして、100回の火花放電のうち、火花の吹き消えに伴う多重放電が発生した回数をカウントした。そして、1個のサンプルについて、チャンバ−内の気流の流速を1m/sずつ変更しながら、複数回の火花試験を実行することによって、火花の吹き消え(多重放電)が発生した割合が5%以上となる流速の下限値(以下、下限流速とも呼ぶ)を、各サンプルの評価値として特定した。表1は、第1評価試験の評価結果を示している。
【0063】
【表1】
【0064】
下限流速が大きいほど、火花の吹き消えが発生しにくいことを意味しており、耐久性および着火性に優れていることを意味している。
【0065】
表1から解るように、横放電のサンプルS11〜S13は、ギャップの長さに拘わらずに、縦放電のサンプルS21〜S23より下限流速が大きく、火花の吹き消えが発生しにくいことが解った。
【0066】
図7は、縦放電のサンプルの放電について説明する図である。図中の放電経路E5〜E7は、ギャップGhにおいて発生する火花の放電経路の例を示している。経路E5は、火花の発生直後の経路の例である。経路E5は、例えば、火花が発生しやすい中心電極チップ28の放電面(先端面)の端に位置する点P6と、接地電極チップ38Cの放電面(後端面)の端に位置する点P5とを結ぶ経路である。発生した火花はガス流AR1によって流される(火花の吹き流れ)ので、火花の経路は、時間の経過とともに経路E6、E7へと変化していく。このとき、火花の経路の中心電極チップ28の放電側面29上の端点P5は、横放電の場合(図5参照)とは異なり、ガス流AR1の下流側に移動することができない。この結果、縦方向の放電では、横方向の放電より火花の吹き消えが発生しやすいと考えられる。
【0067】
また、表1から解るように、横放電のサンプルS11〜S13は、ギャップの長さに拘わらずに、両方向放電のサンプルS31〜S33より下限流速が大きく、火花の吹き消えが発生しにくいことが解った。また、縦放電のサンプルS21〜S23と、両方向放電のサンプルS31〜S33と、では、下限流速に差がなく、火花の吹き消えの発生しやすさに差がないことが解った。これは、両方向放電のサンプルでは、実際に発生している火花放電のほとんどが縦放電であるためであると考えられる。すなわち、縦放電は、中心電極チップ28の放電面の端(角)と、接地電極チップ38Cの放電面の端(角)と、を結ぶ経路で発生する。このために、縦放電のギャップGhの絶縁破壊電圧は、横放電のギャップGAの絶縁破壊電圧より低いと考えられる。このために、両方向放電のサンプルでは、縦放電が横放電より発生しやすいと考えられる。
【0068】
第1評価試験から、火花の吹き消えの発生を抑制して、スパークプラグの耐久性および着火性を向上するためには、実施形態のスパークプラグ100のように、横放電を採用することが好ましいことが解った。
【0069】
C.第2評価試験:
次に、実施形態のスパークプラグ100の2個の接地電極の配置角度θ(図4)の適正値を決定すべく、サンプルを用いて着火性能の評価を行った。第2評価試験では、実施形態のスパークプラグ100(図4参照)の6種類のサンプルS41〜S46と、比較形態のスパークプラグの3種類のサンプル(比較サンプルと呼ぶ)S51〜S53と、を用いて、評価を行った。
【0070】
図8は、比較形態のスパークプラグの説明図である。比較形態のスパークプラグは、スパークプラグ100の構成に加えて、第3の接地電極30Dを備えている。第3の接地電極30Dの形状、材料、寸法は、他の2個の接地電極30A、30Bと同じである。すなわち、第3の接地電極30Dは、第1の接地電極本体35Aと同様の第3の接地電極本体35Dと、第1の接地電極チップ38Aと同様の第3の接地電極チップ38Dと、を備えている。
【0071】
そして、第3の接地電極チップ38Dの径方向内側の面39D(第3の放電面39Dとも呼ぶ)は、円柱状の中心電極チップ28の側面29と径方向に対向して、第3のギャップGDを形成している(図8)。図8に示すように、軸線CLから、第3の放電面39Dの幅方向の中心の点PDに向かう方向であり、かつ、軸線CLと垂直な方向を、第3の接地電極30Dが配置されている方向を示す第3の配置方向D3、と呼ぶ。
【0072】
比較形態のスパークプラグにおいて、第3の配置方向D3は、第1の配置方向D1と第3の配置方向D3との間の周方向の角度θ13と、第1の配置方向D1と第3の配置方向D3との間の周方向の角度θ23とが、θ13=θ23>90度を満たす方向である。第3の配置方向D3に配置される第3の接地電極30Dは、第3の配置方向D3と垂直であり、かつ、軸線CLを含む平面VLから見て、第1の接地電極30Aおよび第2の接地電極30Bとは反対側に位置する。換言すれば、第3の接地電極30Dは、比較形態のスパークプラグが内燃機関に取り付けられた場合における混合気の流動方向Dgの下流(ガス流AR1の下流)に位置している。
【0073】
なお、実施形態の6種類のサンプルS41〜S46、および、3種類の比較サンプルS51〜S53の共通の構成は、以下の通りである。
中心電極チップ28の外径R1 :0.6mm
中心電極チップ28の材料 :イリジウム(Ir)合金
接地電極本体35A、35Bの周方向の長さL1 :1.0mm
接地電極チップ38A、38Bの放電面の周方向の長さL3 :0.6mm
接地電極チップ38A、38Bの放電面の軸線方向の長さL4 :0.6mm
接地電極チップ38A、38Bの径方向の長さL5 :1.0mm
接地電極チップ38A、38Bの突出長L6 :0.3mm
接地電極チップ38A、38Bの材料 :白金(Pt)合金
ギャップGA、GBの長さ :0.3mm
【0074】
また、3種類の比較サンプルS51〜S53の第3の接地電極30Dの寸法や材料は、他の2個の接地電極30A、30Bと同じであり、第3のギャップGDの長さは、他の2個のギャップGA、GBと同じである(0.3mm)。
【0075】
実施形態の6種類のサンプルS41〜S46は、2個の接地電極30A、30Bの配置角度θが互いに異なり、それぞれ、40度、50度、60度、100度、150度、180度である。比較サンプルS51〜S43は、2個の接地電極30A、30Bの配置角度θが互いに異なり、それぞれ、60度、100度、150度である。
【0076】
第2評価試験では、各サンプルを混合気の流動方向が図4(B)や図6に示す流動方向Dgと一致するように内燃機関に搭載し、当該内燃機関を1測定あたり1分間に亘って運転する運転試験を行い、失火率を測定した。具体的には、直列4気筒、排気量1.5Lのガソリンエンジンを、1600rpmの回転速度で運転した。なお、このガソリンエンジンの図示平均有効圧力は、340kPaである。運転時には、所定の点火装置を用いて、1放電あたり50mJの電気エネルギーを供給した。
【0077】
そして、1個のサンプルについて、混合気の空燃比(A/F)を段階的に変化させながら1つの空燃比あたり3回ずつ失火率を測定した。空燃比と失火率をプロットした結果から、各サンプルの失火率1%時の空燃比を近似計算によって算出した。表2は、第2評価試験の評価結果を示している。失火率1%時の空燃比が大きいほど、着火性が優れていることを意味している。
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示すように、実施形態のサンプル41〜46はいずれも、配置角度θに拘わらずに、比較形態のサンプルS51〜53と比較して、失火率1%時の空燃比が1以上大きく、着火性能に優れていることが解った。
【0080】
比較形態のサンプル(図8)では、燃焼室内のガス流AR1(図8)が、第3の接地電極30Dによって、物理的に妨げられてしまうために、ギャップGA、GB、GDの近傍におけるガス流AR1の流速が低下する。この結果、ガス流AR1による火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長(図5)が十分に発生しない。この結果、高温領域の拡大がスムーズに発生せず、発生した熱がスパークプラグ100のギャップ近傍に停滞して、例えば、スパークプラグ100を介して外部に放出され得る。また、第3の接地電極30Dによる熱引き(消炎作用)によって、発生した熱が外部に放出されやすい。また、第3のギャップGDに火花が発生することによって、火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長が十分に発せず、消炎作用によって、発生した熱が外部に放出されやすい。このような複数の要因によって、着火性能が十分に向上しないと考えられる。
【0081】
このように、第2評価試験によって、本実施形態のスパークプラグ100のように、図4(B)の破線で示す平面VLから見て一方の側(図4(B)の右下側)に、全ての接地電極が存在し、平面VLから見て他方の側(図4(B)の左上側)には、接地電極は存在しないことが、着火性能の向上の観点から好ましいことが解った。
【0082】
さらに、表2に示すように、配置角度θが60度より小さいサンプルS41、S42および150度より大きいサンプルS46と比較して、配置角度θが60度以上150度以下のサンプルS43〜S45は、失火率1%時の空燃比が1以上大きく、着火性能に優れていることが解った。
【0083】
配置角度θが小さいほど、ギャップGA、GBを通るガス流AR1の流路が狭くなるので、ギャップGA、GBの近傍におけるガス流AR1の量が少なくなる。配置角度θが60度より小さい場合には、第1のギャップGA、GBを通るガス流AR1の減少によって、ガス流AR1による火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長(図5)が十分に発生しない。この結果、高温領域の拡大がスムーズに発生せず、着火性能が十分に向上しないと考えられる。
【0084】
また、配置角度θが大きいほど、ギャップGA、GBに発生する火花放電の発生直後の経路(図5の第1経路E1)の位置がガス流AR1の下流側になる。すなわち、図5の第1経路E1の端点P1の位置が、ガス流AR1の下流側になる。配置角度θが150度より大きい場合には、火花放電の発生直後の経路E1の端点P1の位置が、過度にガス流AR1の下流側になってしまう。この結果、火花の吹き流れによって、火花放電の経路の端点が放電側面29に沿って下流側に移動する余地が小さくなる。この結果、ガス流AR1による火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長(図5)が十分に発生しない。したがって、高温領域の拡大がスムーズに発生せず、着火性能が十分に向上しないと考えられる。
【0085】
このように、第2評価試験によって、2個の接地電極30A、30Bの配置角度θは、60°≦θ≦150°を満たすことが好ましいことが解った。こうすれば、2個の接地電極の配置を適正化することによって、火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長(図5)を促進できる。この結果、スパークプラグの着火性能の向上を実現することができる。
【0086】
なお、表1に示すように、60°≦θ≦150°の範囲内では、配置角度θが100度のサンプルS44が最も着火性能が優れていた。そして、配置角度が100度から離れるほど、少しずつ着火性能が低下した。すなわち、配置角度θは、60度より100度が好ましく、150度より100度が好ましいことが解った。
【0087】
D.第3評価試験:
第3評価試験では、中心電極チップ28の外径R1(中心電極の外径R1)の適正値を決定すべく、評価試験を行った。第3評価試験では、第1評価試験の横放電のサンプルS1と同じタイプの5種類のサンプルS61〜65、すなわち、1個の第1の接地電極30Aのみを接地電極として備えるサンプルS61〜65を用いた。サンプル61〜S65は、中心電極の外径R1が互いに異なり、それぞれ、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mm、1.2mmである。
【0088】
サンプルS61〜65の中心電極の外径R1以外の寸法は、第1評価試験のサンプルS11と同じである。例えば、接地電極チップ38Aの放電面39Aの周方向の長さL3は、0.6mmであり、ギャップGAの長さは、0.3mmである。
【0089】
第3評価試験では、各サンプルについて、0.8MPaに加圧されたチャンバー内で、1回の試験あたり100回の火花放電を発生させる火花試験を行った。放電時には、所定の点火装置(例えば、フルトランジスタ点火装置)を用いて、1放電あたり50mJの電気エネルギーを供給した。そして、火花試験中のチャンバ−内には、軸線CLから見て接地電極が配置されている方向と垂直な方向(図6(A)の方向Ds)に流動する流速10m/sの気流を発生させた。
【0090】
そして、100回の火花放電のうち、火花の吹き消えに伴う多重放電が発生した回数をカウントして、火花の吹き消えの発生率(以下、吹き消え率とも呼ぶ)を各サンプルの評価値として特定した。吹き消え率が小さいほど、火花の吹き消えが発生しにくいことを意味しており、耐久性および着火性に優れていることを意味している。表3は、第3評価試験の評価結果を示している。
【0091】
【表3】
【0092】
表3から解るように、中心電極の外径R1が、接地電極の放電面39Aの幅方向の長さL3(0.6mm)以上であるサンプルS62〜S65は、中心電極の外径R1が、接地電極の放電面39Aの幅方向の長さL3より小さいサンプルS61より、火花の吹き消えが発生しにくいことが解った。
【0093】
さらには、中心電極の外径R1が、接地電極の放電面39Aの幅方向の長さL3(0.6mm)より大きいサンプルS63〜S65は、中心電極の外径R1が、接地電極の放電面39Aの幅方向の長さL3と同じであるサンプルS62より、火花の吹き消えが発生しにくいことが解った。
【0094】
中心電極の外径R1が大きいほど、ギャップGA、GBに発生する火花放電の経路E1〜E4の端点P1〜P4(図5)の位置が、火花の吹き流れによって、放電側面29に沿ってガス流AR1の下流側に移動する余地が大きくなる。このために、中心電極の外径R1が、接地電極の放電面39Aの幅方向の長さL3(本実験では、0.6mm)以上である場合には、外径R1が長さL3より小さい場合と比較して、火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長(図5)が発生しやすくなると考えられる。したがって、高温領域の拡大がスムーズに発生して、着火性能が向上すると考えられる。同じように、中心電極の外径R1が、長さL3より大きい場合には、中心電極の外径R1が長さL3と等しい場合と比較して、火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長(図5)が発生しやすくなると考えられる。したがって、高温領域の拡大がよりスムーズに発生して、より着火性能が向上すると考えられる。
【0095】
このように、第3評価試験によって、中心電極の外径R1が、接地電極の放電面39Aの幅方向の長さL3以上であることがより好ましく、中心電極の外径R1が、接地電極の放電面39Aの幅方向の長さL3より大きいことがさらに好ましいことが解った。こうすれば、火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長(図5)をより効果的に促進して、着火性能をより向上することができる。
【0096】
なお、表3に示すように、中心電極の外径R1が、長さL3より大きいサンプルS63〜S65の中では、中心電極の外径R1が0.8mmのサンプルS63より、中心電極の外径R1が1mmのサンプルS64は、火花の吹き消えが発生しにくかった。中心電極の外径R1が1mmのサンプルS64と中心電極の外径R1が1.2mmのサンプルS65との間では、火花の吹き消え率は同じであった。すなわち、中心電極の外径R1は、長さL3の1.5倍より大きいことがさらに好ましいことが解った。
【0097】
E.第4評価試験:
第4評価試験では、接地電極本体35A、35Bの最大部の幅(周方向の長さL1)の適正値を決定すべく、評価試験を行った。第4評価試験では、実施形態のスパークプラグ100(図4)の6種類のサンプルS71〜76を用いた。サンプル71〜S76は、接地電極本体35A、35Bの周方向の長さL1が互いに異なり、それぞれ、0.6mm、1.0mm、1.2mm、2.0mm、2.5mm、3.0mmである。
【0098】
なお、実施形態の6種類のサンプルS71〜S76の共通の構成は、以下の通りである。
中心電極チップ28の外径R1 :1.0mm
中心電極チップ28の材料 :イリジウム(Ir)合金
接地電極チップ38A、38Bの放電面の周方向の長さL3 :0.6mm
接地電極チップ38A、38Bの放電面の軸線方向の長さL4 :0.6mm
接地電極チップ38A、38Bの径方向の長さL5 :1.0mm
接地電極チップ38A、38Bの突出長L6 :0.3mm
接地電極チップ38A、38Bの材料 :白金(Pt)合金
ギャップGA、GBの長さ :0.3mm
【0099】
第4評価試験では、第2評価試験と同一の試験を行って、各サンプルについて、各サンプルの失火率1%時の空燃比を特定した。表4は、第4評価試験の評価結果を示している。
【0100】
【表4】
【0101】
表4から解るように、接地電極本体35A、35Bの長さL1が中心電極の外径R1(1.0mm)以上であるサンプルS72〜S75は、長さL1が中心電極の外径R1より小さいサンプルS71と比較して、失火率1%時の空燃比が大きく、着火性能に優れていることが解った。さらには、接地電極本体35A、35Bの長さL1が中心電極の外径R1より大きいサンプルS73〜S75は、長さL1が中心電極の外径R1と同じサンプルS72と比較して、失火率1%時の空燃比が大きく、着火性能に優れていることが解った。ただし、例外的に、接地電極本体35A、35Bの長さL1が中心電極の外径R1に対して過度に大きいサンプルS76は、サンプルS72〜S75と比較して、失火率1%時の空燃比が小さく、着火性能が劣ることが解った。
【0102】
図9は、実施形態のスパークプラグ100の放電について説明する図である。図9(A)に示すように、燃焼室内では、2個の第1の接地電極30A、30Bの間を通過して、ギャップGA、GBの近傍に至るガス流AR1に加えて、2個の第1の接地電極30A、30Bの外側から回り込んで、ギャップGA、GBの近傍に至るガス流AR2が存在する。ガス流AR1とガス流AR2とは、ギャップGA、GBの近傍において、互いに逆方向になる。この結果、ガス流AR2の影響が大きくなると、ガス流AR1による火花の吹き流れが阻害される。この結果、ギャップGA、GBの近傍での混合気の流速が低下して、高温領域の拡大がスムーズに発生せずに、着火性能が低下すると考えられる。
【0103】
接地電極本体35A、35Bの長さL1が長いほど、ガス流AR2がギャップGA、GBの近傍に到達し難くなるので、ガス流AR2の影響が小さくなる。このために、接地電極本体35A、35Bの長さL1が、中心電極の外径R1(本実験では、1.0mm)以上である場合には、長さL1が中心電極の外径R1より小さい場合と比較して、ガス流AR2の影響が抑制される。この結果、ギャップGA、GBの近傍での混合気の流速の低下が抑制されて、火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長(図5)が発生しやすくなると考えられる。したがって、高温領域の拡大がスムーズに発生して、着火性能が向上すると考えられる。同じように、長さL1が中心電極の外径R1より大きい場合には、長さL1が中心電極の外径R1と等しい場合と比較して、火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長(図5)が発生しやすくなると考えられる。したがって、高温領域の拡大がよりスムーズに発生して、より着火性能が向上すると考えられる。
【0104】
ただし、接地電極本体35A、35Bの長さL1が中心電極の外径R1に対して過度に大きくなると、ガス流AR1の流量が減少してしまう。このために、サンプルS76のように、接地電極本体35A、35Bの長さL1が中心電極の外径R1の3倍以上になると、ガス流AR1の流量が減少して、火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長(図5)が発生しにくくなると考えられる。したがって、長さL1が中心電極の外径R1の3倍以上になると、着火性能が低下すると考えられる。
【0105】
このように、第4評価試験によって、接地電極本体35A、35Bの周方向の長さL1が、中心電極の外径R1以上であることがより好ましく、接地電極本体35A、35Bの周方向の長さL1が、中心電極の外径R1より大きいことがさらに好ましいことが解った。こうすれば、接地電極本体35A、35Bの外側から回り込むガス流AR2の影響を抑制して、火花の吹き流れによる火花の放電経路の伸長(図5)をより効果的に促進することによって、着火性能をより向上することができる。
【0106】
また、接地電極本体35A、35Bの周方向の長さL1を、中心電極の外径R1の3倍より小さくすることによって、ガス流AR1の流量を確保して、着火性能の低下を抑制することができることが解った。
また、
【0107】
なお、表3に示すように、長さL1が、中心電極の外径R1より大きいサンプルS73〜S75の中では、長さL1が中心電極の外径R1の2倍であるサンプルS74が、最も失火率1%時の空燃比が大きく、長さL1が中心電極の外径R1の1.2倍であるサンプルS73や長さL1が中心電極の外径R1の2.5倍であるサンプルS75より着火性能が高かった。すなわち、長さL1は、中心電極の外径R1の1.2倍以上2.5倍以下であることがより好ましく、長さL1は、中心電極の外径R1の2倍程度であることが最も好ましいことが解った。
【0108】
F.第5評価試験:
第5評価試験では、接地電極チップ38A、38Bの突出長L6(図4)の適正値を決定すべく、評価試験を行った。第5評価試験では、実施形態のスパークプラグ100(図4)の4種類のサンプルS81〜84を用いた。サンプル81〜S84は、接地電極チップ38A、38Bの突出長L6が互いに異なり、それぞれ、0.1mm、0.3mm、0.5mm、0.7mmである。
【0109】
図10は、第5評価試験のサンプルの一例を示す図である。図10に示すように、突出長L6を短くする調整は、接地電極本体35A、35Bの先端方向Dfの端をL字形状に折り曲げることによって行われた。すなわち、接地電極本体35A、35Bの先端方向Dfの端を径方向内側に突出させることによって、ギャップGA、GBの長さを変えることなく、突出長L6の調整が行われた。
【0110】
なお、実施形態の4種類のサンプルS81〜S84の接地電極チップ38A、38Bの突出長L6を除いた構成は、第4評価試験のサンプルS74と同じである。
【0111】
第5評価試験では、第2評価試験および第4評価試験と同一の試験を行って、各サンプルについて、各サンプルの失火率1%時の空燃比を特定した。表5は、第5評価試験の評価結果を示している。
【0112】
【表5】
【0113】
表5から解るように、接地電極チップ38A、38Bの突出長L6が長くなるほど、失火率1%時の空燃比が大きくなり、着火性能が向上することが解った。さらには、接地電極チップ38A、38Bの突出長L6が、0.5mm以上のサンプルS83、S84は、突出長L6が、0.5mm未満のサンプルS81、S82と比較して、失火率1%時の空燃比が0.8以上大きくなり、着火性能が顕著に優れていることが解った。突出長L6が、0.5mmのサンプルS83と、0.7mmのサンプルS84との間では、失火率1%時の空燃比に大きな差はなかった。
【0114】
この理由について説明する。図9(A)には、突出長L6が比較的大きな実施形態のスパークプラグ100の例が図示されている。図9(B)には、突出長L6が比較的小さな実施形態のスパークプラグ100の例が図示されている。図9(A)に示すように、突出長L6が比較的大きい場合には、接地電極本体35A、35Bの外側を回り込んだガス流AR2が、ギャップGA、GBの近傍にまで到達しにくい。この結果、突出長L6が比較的大きい場合にはガス流AR2の影響が比較的小さくなり、ガス流AR2の影響による着火性能の低下を抑制することができる。一方、図9(B)に示すように、突出長L6が比較的小さい場合には、突出長L6が比較的大きい場合よりも、接地電極本体35A、35Bの外側を回り込んだガス流AR2が、ギャップGA、GBの近傍にまで到達しやすい。この結果、突出長L6が比較的小さい場合には、突出長L6が比較的大きい場合と比較して、ガス流AR2の影響が大きくなり、ガス流AR2の影響による着火性能の低下が大きくなる。
【0115】
このように、第5評価試験によって、接地電極チップ38A、38Bの突出長L6が長くなるほど、失火率1%時の空燃比が大きくなり、着火性能が向上することが解った。特に、接地電極チップ38A、38Bの突出長L6は、0.5mm以上であることが好ましいことが解った。こうすれば、接地電極本体35A、35Bの外側から回り込むガス流AR2の影響を抑制して、着火性能をより向上することができる。
【0116】
G.第6評価試験:
第6評価試験では、点火装置(電流供給装置とも呼ぶ)による電流の供給の条件を変更した場合における実施形態のスパークプラグ100と、縦放電のスパークプラグと、の着火性能の比較を行った。第5評価試験では、実施形態のスパークプラグ100のサンプルとして、第5評価試験のサンプルS83を用いた。また、縦放電のスパークプラグのサンプル(図6)として、第1評価試験のサンプルS21を用いた。
【0117】
図11は、第6評価試験の点火装置について説明するグラフである。図11のグラフの横軸は、時間(単位は、ms(ミリ秒))を示し、縦軸軸は、スパークプラグ(サンプル)に供給される電流(単位は、mA(ミリアンペア))を示す。図11では、点火装置によって、スパークプラグに高電圧が印加されて、火花放電が発生した時刻をt0で示している。図11の実線C1は、特定の条件で動作する点火装置によってスパークプラグを駆動した場合の電流の変化を示している。実線C1に示すように、火花放電が発生した時刻t0、すなわち、ギャップの絶縁破壊が発生した時刻から極めて短い時間(例えば、数十μs)に、瞬間的に電流のピークPKが現れる(図11)、その後、実線C1の斜めの直線部分で示されるように、電流は、1ms〜数msの時間をかけて緩やかに低下して、最終的にはゼロになる。実線C1の例では、時刻teにおいて、電流がゼロになっている。このような実線C1は、火花の吹き消えによる多重放電が発生しない場合に観察される。
【0118】
ここで、実線C1の例において、電流が25mAに低下した時刻をt1とする。時刻t0から時刻t1までの時間T1は、スパークプラグに25mA以上の電流が供給される時間である。この時間T1を電流持続時間と定義する。電流持続時間は、点火装置の仕様(例えば、用いられるコンデンサやコイルの仕様)や制御(例えば、トランジスタのスイッチング制御)などの条件によって変更することができる。例えば、実線C1に示すような特性で点火装置を動作させることができるとともに、破線C2に示すような特性で点火装置を動作させることができる。図11の例では、実線C1に示す特性では、電流持続時間は、上述したように時刻t0から時刻t1までの時間T1であり、破線C2に示す特性では、電流持続時間は、時刻t0から時刻t2までの時間T2である。電流持続時間が長い点火装置ほど、高いエネルギーをスパークプラグに供給することができる。
【0119】
ここで、第6評価試験では、火花の吹き消えが発生しない場合における電流持続時間がそれぞれ、0.1ms、0.3ms、0.5ms、0.7ms、1msの5種類の点火装置を用いた。なお、第1評価試験〜第5評価試験の点火装置の電流供給能力は、第6評価試験の電流持続時間が0.3msの点火装置とほぼ等しい。
【0120】
第6評価試験では、上述した2種類のサンプルS83、S21をそれぞれ6種類の点火装置を用いて駆動して、第2、第4、第5評価試験と同一の試験を行って、各サンプルと各点火装置との組み合わせについて、失火率1%時の空燃比を特定した。本評価試験では、電流持続時間が0.1msの点火装置を用いた場合における各サンプルの失火率1%時の空燃比を、各サンプルの空燃比の基準値とした。そして、電流持続時間が0.3ms、0.5ms、0.7ms、1msの4種類の点火装置を用いた場合における失火率1%時の空燃比と基準値との差を評価値として算出した。なお、電流持続時間が0.1msの点火装置を用いた場合におけるサンプルS21の失火率1%時の空燃比、すなわち、サンプルS21の基準値は、22であった。また、電流持続時間が0.1msの点火装置を用いた場合におけるサンプルS83の失火率1%時の空燃比、すなわち、サンプルS83の基準値は、25であった。図6は、第6評価試験の評価結果を示している。
【0121】
【表6】
【0122】
表6から解るように、縦放電のスパークプラグのサンプルS21では、電流持続時間が0.3msの点火装置を用いた場合には、電流持続時間が0.1msの点火装置を用いた場合と比較して、失火率1%時の空燃比の向上が見られた。しかし、サンプルS21では、電流持続時間が0.5ms、0.7ms、1msの点火装置を用いた場合には、電流持続時間が0.3msの点火装置を用いた場合と比較して、失火率1%時の空燃比の向上が見られなかった。すなわち、電流持続時間が0.5ms以上である点火装置のような比較的高いエネルギー供給能力を有する点火装置を用いても、サンプルS21の着火能力の向上は見られなかった。
【0123】
電流持続時間が0.5ms以上の点火装置を用いても、縦放電のスパークプラグでは、火花の吹き消えが発生してしまうために、実際には、長時間に亘ってスパークプラグに電流を供給できない。このために、電流持続時間が0.5ms以上の点火装置のような高いエネルギー供給能力を有する点火装置を用いても、縦放電のスパークプラグの火花放電のエネルギー放出量は大きくならないと考えられる。
【0124】
一方、本実施形態のスパークプラグ100のサンプルS83では、電流持続時間が0.1msから1msまでの範囲では、電流持続時間が長い点火装置を用いるほど、失火率1%時の空燃比が高くなった。すなわち、サンプルS83では、電流持続時間が長く、高いエネルギー供給能力を有する点火装置を用いるほど、着火性能が向上した。すなわち、縦放電のスパークプラグのサンプルS21とは異なり、本実施形態のスパークプラグ100のサンプルS83では、電流持続時間が0.5ms以上である点火装置で駆動された場合にも、点火装置のエネルギー供給能力に応じて着火性能が向上することが解った。
【0125】
上述したように、本実施形態のスパークプラグ100では、縦放電のスパークプラグと比較して、火花の吹き消えが発生しにくい。このために、点火装置から長時間に亘って電流をスパークプラグ100に供給できる。したがって、電流持続時間が長い点火装置を用いるほど、スパークプラグ100の火花放電のエネルギー放出量が大きくなる。その結果、電流持続時間が長い点火装置を用いるほど、スパークプラグ100の着火性能が向上すると考えられる。
【0126】
このように、第6評価試験によって、以下のことが解った。本実施形態のスパークプラグ100によれば、比較的長い時間に亘って電流を供給可能な点火装置、具体的には、25mA以上の電流を0.5ms以上に亘って供給することが可能な点火装置を用いて駆動される場合に、点火装置による電流の供給能力(すなわち、電気エネルギーの供給能力)に応じた着火性能を実現することができる。
【0127】
H.変形例:
(1)接地電極30A、30Bの構成としては、上述の構成に限らず、他の構成を採用してもよい。上記実施形態では、接地電極本体35A、35Bは、主体金具50とは別体で作成され、主体金具50に溶接されている。これに代えて、削りだし成形によって、1個の金属材料から主体金具50と接地電極本体35A、35Bとを備える1個の部材が成形されてもよい。また、接地電極本体35A、35Bは、銅などで形成された芯部を備える2層構造を有していても良い。
【0128】
また、上記実施形態では、接地電極チップ38A、38Aの径方向内側の面の全体が、電極チップ28の側面29と対向している。すなわち、接地電極チップ38A、38Aの径方向内側の面の全体が放電面39A、39Bとなっている。これに代えて、接地電極チップ38A、38Aの径方向内側の面の一部が、電極チップ28の側面29と対向していても良い。すなわち、電極チップ28の側面29の少なくとも一部の軸線方向の位置と、接地電極チップ38A、38Aの径方向内側の面の少なくとも一部の軸線方向の位置と、同じであれば良い。
【0129】
また、接地電極は、接地電極本体と、接地電極チップと、の2つの部材から構成されているが、接地電極は、例えば、ニッケルやニッケル合金、あるいは、タングステン合金などで形成された1個の部材で構成されていても良い。
【0130】
(2)スパークプラグ100の構成としては、上記の構成に限らず、他の種々の構成を採用可能である。例えば、中心電極20は、中心電極チップ28と、軸部27と、の2個の部材から構成されていなくても良く、1個の部材で構成されていても良い。
【0131】
(3)上記実施形態のスパークプラグ100の着火性と耐久性の向上は、上述したように、接地電極30A、30Bと、中心電極20と、の構成によって達成されると考えられる。したがって、主体金具50の材質や細部の寸法、絶縁体10の材質や細部の寸法などの他の構成要素の構成は、様々に変更可能である。例えば、主体金具50の材質は、亜鉛めっきまたはニッケルめっきされた低炭素鋼でも良いし、めっきがなされていない低炭素鋼 でも良い。また、絶縁体10の材質は、アルミナ以外の様々な絶縁性セラミックスでもよい。
【0132】
(4)内燃機関700の構成としては、上記の構成に限らず、他の種々の構成を採用可能である。例えば、1個の燃焼室790の吸気バルブ730の総数は、1個、または、3個以上であってもよい。また、1個の燃焼室790の排気バルブ740の総数は、1個、または、3個以上であってもよい。
【0133】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0134】
5...ガスケット、6...後端側パッキン、7...第2後端側パッキン、8...先端側パッキン、9...タルク、10...絶縁体、11...第2縮外径部、12...軸孔、13...脚部、15...第1縮外径部、16...縮内径部、17...先端側胴部、18...後端側胴部、19...鍔部、20...中心電極、21...外層、22...芯部、23...頭部、24...鍔部、25...脚部、27...軸部、28...中心電極チップ、29...放電側面、30A...第1の接地電極、30B...第2の接地電極、35A...第1の接地電極本体、35B...第2の接地電極本体、38A...第1の接地電極チップ、38B...第2の接地電極チップ、40...端子金具、50...主体金具、51...工具係合部、52...ネジ部、53...加締部、54...座部、55...胴部、56...縮内径部、57...先端面、58...変形部、59...貫通孔、60...第1シール部、70...抵抗体、80...第2シール部、100...スパークプラグ、700...内燃機関、710...エンジンヘッド、711...第1壁、712...吸気ポート、713...第2壁、714...排気ポート、718...取付孔、719...内壁、720...シリンダブロック、729...シリンダ壁、730a...第1吸気バルブ、740a...排気バルブ、750...ピストン、790...燃焼室
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