特許第5982455号(P5982455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982455
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】凍土形成装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/115 20060101AFI20160818BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   E02D3/115
   F28D15/02 Z
   F28D15/02 101N
   F28D15/02 102B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-244301(P2014-244301)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-108739(P2016-108739A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2015年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】望月 正孝
(72)【発明者】
【氏名】松田 将宗
(72)【発明者】
【氏名】益子 耕一
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3193932(JP,U)
【文献】 実開平06−065764(JP,U)
【文献】 特開昭56−039229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00−3/115
E02D 5/00−5/20
E02D 19/14、27/35
E21D 9/06
F28D 15/02
F17C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設した凍結管を介して地盤から熱を奪うことにより前記凍結管の周囲の地盤を凍結させる凍土形成装置において、
コンテナ内に加熱されて蒸発し放熱して凝縮する作動流体が封入されているヒートパイプを備え、
前記ヒートパイプの一端部が、前記凍結管に熱授受可能に連結され、
前記ヒートパイプの他方の端部が、前記凍結管から離れる方向で前記地盤中に埋設されておりかつ前記凍結管に隣接する埋設設備の周囲に延びた状態に配置され、
前記埋設設備の周囲の熱を前記ヒートパイプによって前記凍結管に輸送して前記地盤を凍結させるように構成されていることを特徴とする凍土形成装置。
【請求項2】
複数の前記ヒートパイプが設けられ、
前記ヒートパイプの他方の端部が、前記埋設設備における上側と、前記埋設設備における下側と、前記埋設設備の長さ方向に平行な方向とのいずれかに向かって延びた状態に配置されており、
前記ヒートパイプの一方の端部は、前記ヒートパイプの他方の端部より高い位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の凍土形成装置。
【請求項3】
前記凍結管は、地表側に上端部を突出させて埋設された他のヒートパイプを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の凍土形成装置。
【請求項4】
前記他のヒートパイプは原子炉施設の周囲に埋設されており、
ガスタービン発電機と、前記ガスタービン発電機に燃料として供給される液化ガスを貯留するタンクと、前記液化ガスの気化熱によって前記他のヒートパイプを冷却するように前記他のヒートパイプの上端部に前記液化ガスが有する冷却熱を伝送する冷却熱伝送機構と、前記液化ガスが気化して生じた燃料ガスを貯留するガスタンクとを備え、
前記冷却熱伝送機構は、前記他のヒートパイプの上端部に前記液化ガスを保持する冷却ジャケットと、前記冷却ジャケットに前記液化ガスを供給する給液管路と、前記冷却ジャケットで生じた気相の前記燃料ガスを前記ガスタンクに送るガス管路とを備え、
前記他のヒートパイプを介して前記液化ガスの冷却熱によって前記地盤を凍結させた凍土によって前記原子炉施設に向けた地下水の流通を止める遮水壁を形成することを特徴とする請求項3に記載の凍土形成装置。
【請求項5】
前記他のヒートパイプは原子炉施設の周囲に埋設されており、
ガスタービン発電機と、前記ガスタービン発電機に燃料として供給される液化ガスを貯留するタンクと、前記液化ガスの気化熱によって前記他のヒートパイプを冷却するように前記他のヒートパイプの上端部に前記液化ガスが有する冷却熱を伝送する冷却熱伝送機構とを備え、
前記冷却熱伝送機構は、前記液化ガスの冷却熱を冷媒に伝達する熱交換器と、前記他のヒートパイプの上端部に前記熱交換器によって温度が低下させられた前記冷媒を保持する冷却ジャケットと、前記熱交換器と前記冷却ジャケットとの間で前記冷媒を循環させる循環管路とを備え、
前記他のヒートパイプを介して前記液化ガスの冷却熱によって前記地盤を凍結させた凍土によって前記原子炉施設に向けた地下水の流通を止める遮水壁を形成することを特徴とする請求項3に記載の凍土形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、埋設した凍結管を介して地盤から熱を奪うことにより前記凍結管の周囲の地盤を凍結させる凍土形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、一定の間隔をあけて地盤に埋設した複数の凍結管に冷媒を循環させるとともに、凍結管の配列方向で凍結管から離間した位置に設置した揚水設備によって地下水を汲み上げる工法が記載されている。こうすることにより凍結管の配列方向に沿った地下水の流れを強制的に生じさせて、凍結管から地下水の流れ方向にずれた位置に凍土を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−41356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された工法は、上述したように、地下水の流れを強制的に生じさせることによって地下水の流れ方向に凍土を形成する。そのため、凍土を形成したい地盤中に埋設物があることにより、埋設物の周囲で地下水の流れが変化してしまうと、前記埋設物の周囲に凍土を形成することが困難になる可能性がある。このような不都合を解消するために、凍結管によって埋設物を挟み込んだり、埋設物を迂回するように凍結管を配置したりして上記の埋設物の周囲に凍土を形成することが考えられる。しかしながら、凍結管によって埋設物を挟み込んだり、埋設物を迂回するように凍結管を配置したりするとすれば、隣接する凍結管同士の間隔が広くなってしまい、埋設物の周囲に凍土を形成しにくくなったり、凍土を形成できたとしても強度に不足が生じたりしてしまう可能性がある。
【0005】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、地盤中に埋設物がある場合であっても、前記地盤に隙間なく凍土を形成することができる凍土形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、埋設した凍結管を介して地盤から熱を奪うことにより前記凍結管の周囲の地盤を凍結させる凍土形成装置において、コンテナ内に加熱されて蒸発し放熱して凝縮する作動流体が封入されているヒートパイプを備え、前記ヒートパイプの一端部が、前記凍結管に熱授受可能に連結され、前記ヒートパイプの他方の端部が、前記凍結管から離れる方向で前記地盤中に埋設されておりかつ前記凍結管に隣接する埋設設備の周囲に延びた状態に配置され、前記埋設設備の周囲の熱を前記ヒートパイプによって前記凍結管に輸送して前記地盤を凍結させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明は、複数の前記ヒートパイプが設けられ、前記ヒートパイプの他方の端部が、前記埋設設備における上側と、前記埋設設備における下側と、前記埋設設備の長さ方向に平行な方向とのいずれかに向かって延びた状態に配置されており、前記ヒートパイプの一方の端部は、前記ヒートパイプの他方の端部より高い位置に配置されている構成とすることができる。
【0008】
さらに、本発明における前記凍結管は、地表側に上端部を突出させて埋設された他のヒートパイプとすることができる。
【0009】
また、本発明における前記他のヒートパイプは原子炉施設の周囲に埋設されており、ガスタービン発電機と、前記ガスタービン発電機に燃料として供給される液化ガスを貯留するタンクと、前記液化ガスの気化熱によって前記他のヒートパイプを冷却するように前記他のヒートパイプの上端部に前記液化ガスが有する冷却熱を伝送する冷却熱伝送機構と、前記液化ガスが気化して生じた燃料ガスを貯留するガスタンクとを備え、前記冷却熱伝送機構は、前記他のヒートパイプの上端部に前記液化ガスを保持する冷却ジャケットと、前記冷却ジャケットに前記液化ガスを供給する給液管路と、前記冷却ジャケットで生じた気相の前記燃料ガスを前記ガスタンクに送るガス管路とを備え、前記他のヒートパイプを介して前記液化ガスの冷却熱によって前記地盤を凍結させた凍土によって前記原子炉施設に向けた地下水の流通を止める遮水壁を形成する構成であってよい。
【0010】
さらに、本発明における前記他のヒートパイプは原子炉施設の周囲に埋設されており、ガスタービン発電機と、前記ガスタービン発電機に燃料として供給される液化ガスを貯留するタンクと、前記液化ガスの気化熱によって前記他のヒートパイプを冷却するように前記他のヒートパイプの上端部に前記液化ガスが有する冷却熱を伝送する冷却熱伝送機構とを備え、前記冷却熱伝送機構は、前記液化ガスの冷却熱を冷媒に伝達する熱交換器と、前記他のヒートパイプの上端部に前記熱交換器によって温度が低下させられた前記冷媒を保持する冷却ジャケットと、前記熱交換器と前記冷却ジャケットとの間で前記冷媒を循環させる循環管路とを備え、前記他のヒートパイプを介して前記液化ガスの冷却熱によって前記地盤を凍結させた凍土によって前記原子炉施設に向けた地下水の流通を止める遮水壁を形成する構成であってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヒートパイプの一方の端部が凍結管に熱授受可能に接続され、ヒートパイプの他方の端部が前記凍結管に隣接する埋設設備の周囲に配置されている。そのため、ヒートパイプを介して埋設設備の周囲の熱を効果的に凍結管に熱輸送して埋設設備の周囲の地盤を凍結させて凍土を形成することができる。つまり、凍土を形成したい地盤中に埋設設備があったとしても、前記地盤中に凍土を隙間なく形成できる。また、このような構成であれば、1本の凍結管で凍結させることのできる範囲を拡大することができるため、凍結管の必要本数を少なくすることができる。
【0012】
また本発明によれば、ガスタービン発電で発生するいわゆる冷熱によって原子炉施設の周囲の地盤を凍結させて凍土からなる遮水壁を形成できる。そして、遮水壁によって原子炉施設に向けた地下水の流通を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る凍土形成装置の一例を説明するための模式図である。
図2図1に示す矢視Aの断面図である。
図3】液化天然ガス(LNG)の有する冷却熱を第1ヒートパイプに送るように構成した冷却熱伝送機構の一例についての模式図である。
図4】冷却ジャケットにガス抜き管を接続した例を説明するための部分的な模式図である。
図5】液化天然ガス(LNG)の有する冷却熱を第1ヒートパイプに送るように構成した冷却熱伝送機構の他の例についての模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る凍土形成装置を具体的に説明する。本発明に係る凍土形成装置の一例を図1および図2に模式的に示してある。凍結管としてヒートパイプもしくは、サーモサイホン式ヒートパイプを利用することができる。図1および図2に示す例は、凍結管としてヒートパイプ1を使用した例である。多数のヒートパイプ1が、原子炉施設の周囲であって地表2から適当な深さの不透水層(もしくは岩盤)3に到る範囲に埋設されている。図1には、原子炉施設として核反応容器4を収容してある原子炉建屋5および蒸気タービン発電機6を収容してある発電建屋7を記載してあり、これらは海岸8の近くに設置されている。ヒートパイプ1を以下の説明では、第1ヒートパイプ1と記す。各第1ヒートパイプ1同士の間隔は、それぞれの第1ヒートパイプ1で土壌を凍結させることのできる範囲に基づいて設定されている。第1ヒートパイプ1は従来知られているとおりの伝熱素子であり、脱気したパイプ(コンテナ)の内部にR―134a(代替フロン)や所定濃度のアンモニア水などの作動流体を封入し、外部からの入熱部(加熱部)で蒸発した作動流体が外部に熱を放散する放熱部(冷却部)に流動することにより、潜熱の形で熱を輸送するように構成されている。なお、加熱部に対する作動流体の還流は、パイプの内部に設けた図示しないウイックの毛管力で行ってもよく、あるいは重力で行ってもよい。第1ヒートパイプ1の上端部1aは、地表側に延び出ており、第1ヒートパイプ1の上端部1aに、上端部1aを冷却するための冷却ジャケット9が設けられている。冷却ジャケット9は後述する冷却熱伝送機構の一部を構成するものである。冷却ジャケット9および冷却熱伝送機構については後述する。
【0015】
第1ヒートパイプ1は、凍土を形成したい地盤に直接埋設してもよいが、凍結して凍土となりやすくするために改質した土壌に埋設してもよい。改質した土壌の一例は、砂を主体とした土壌である。上述した地盤に、不透水層3に到る穴もしくは溝を掘削し、掘削した穴もしくは溝に砂を投入し、さらに必要に応じて所定の含水率になるように水を注入して改質した土壌とし、この土壌に第1ヒートパイプ1を埋設する。その場合、砂を投入する穴あるいは溝の内面に、図示しない不織布やフェルトなどの水の浸透を抑制する膜を設けることが好ましい。こうすることにより前記穴もしくは溝に投入した砂に対する地下水の流入や、前記穴もしくは溝に投入した砂からの水の流出を抑制して前記砂の含水率を所定の含水率にする。なお、掘削した穴もしくは溝に投入した砂に対する水の供給は、例えば、第1ヒートパイプ1と共に図示しない給水管を前記穴もしくは溝に挿入して行ってもよい。給水管は、所定間隔に多数の貫通孔をあけた鋼管であってよく、凍結の進行に応じて穴もしくは溝に投入した砂に水を供給する。
【0016】
また、第1ヒートパイプ1に熱授受可能に、本発明におけるヒートパイプに相当する多数の第2ヒートパイプ10が埋設されている。これらの第2ヒートパイプ10は第1ヒートパイプ1より管径が小さくかつ長さの短いヒートパイプであって、基本的な構成は上記の第1ヒートパイプ1と同様である。第2ヒートパイプ10は、図1および図2に示す例では、L字状に屈曲されて形成されたL型ヒートパイプであって、一方の端部10aが第1ヒートパイプ1の長さ方向に沿って配置されており、かつ、第1ヒートパイプ1に熱授受可能に接続されている。第2ヒートパイプ10の他方の端部10bは、前記一方の端部10aより下方であって、かつ、埋設設備11の周囲に向かって延びている。つまり、第2ヒートパイプ10を介して埋設設備11の周囲の熱を第1ヒートパイプ1に熱輸送するように構成されている。これにより、第2ヒートパイプ10の他方の端部10bが延びている位置にまで、1本の第1ヒートパイプ1で土壌を凍結させることのできる範囲が拡大されている。
【0017】
具体的には、図1および図2に示す例では、1本の第1ヒートパイプ1につき合計8本の第2ヒートパイプ10が埋設されている。以下の説明では、便宜上、各第2ヒートパイプ10を符号1001ないし符号1008で記す。8本の第2ヒートパイプ10のうち4本の第2ヒートパイプ1001,1002,1003,1004は、図1および図2に示すように、埋設設備11および埋設設備11に隣接する他の埋設設備12の上側に配置されている。そのうち2本の第2ヒートパイプ1001,1002は、第1ヒートパイプ1を挟んで互いに反対側に配置されている。第2ヒートパイプ1001,1002の他方の端部1001b,1002bは、埋設設備11および他の埋設設備12の長さ方向と平行な方向に延びている。すなわち、埋設設備11および他の埋設設備12に沿って配置されており、埋設設備11および他の埋設設備12の長さ方向に沿う埋設設備11および他の埋設設備12の周辺の熱を授受するようになっている。また他方の端部1001b,1002bは互いに離間するように延びている。残りの2本の第2ヒートパイプ1003,1004は、第2ヒートパイプ1001,1002を第1ヒートパイプ1の円周方向に90度回転させた位置に配置されている。第2ヒートパイプ1003の他方の端部1003bは、図2に示すように、埋設設備11の上側に向かって延びており、埋設設備11における上側の熱を授受するようになっている。第2ヒートパイプ1004は第1ヒートパイプ1を挟んで第2ヒートパイプ1003とは反対側に配置されており、第2ヒートパイプ1004の他方の端部1004bは、図2に示すように、埋設設備11に隣接する他の埋設設備12の上側に向かって延びており、他の埋設設備12における上側の熱を授受するようになっている。
【0018】
一方、4本の第2ヒートパイプ1005,1006,1007,1008は、図1および図2に示すように、埋設設備11および他の埋設設備12の下側に配置されている。そのうちの2本の第2ヒートパイプ1005,1006は、第1ヒートパイプ1を挟んで互いに反対側に配置されている。第2ヒートパイプ1005,1006の他方の端部1005b,1006bは、埋設設備11および他の埋設設備12の長さ方向と平行な方向に延びている。すなわち、埋設設備11および他の埋設設備12に沿って配置されており、埋設設備11および他の埋設設備12の長さ方向に沿う埋設設備11および他の埋設設備12の周辺の熱を授受するようになっている。また他方の端部1005b,1006bは、互いに離間するように延びている。残りの2本の第2ヒートパイプ1007,1008は、第2ヒートパイプ1005,1006を第1ヒートパイプ1の円周方向に90度回転させた位置に配置されている。第2ヒートパイプ1007の他方の端部1007bは、図2に示すように、埋設設備11の下側に向かって延びており、埋設設備11における下側の熱を授受するようになっている。第2ヒートパイプ1008は第1ヒートパイプ1を挟んで第2ヒートパイプ1007とは反対側に配置されており、第2ヒートパイプ1008の他方の端部1008bは、図2に示すように、埋設設備11に隣接する他の埋設設備12の下側に向かって延びており。他の埋設設備12における下側の熱を授受するようになっている。
【0019】
なお、地盤は凍結する際に凍上する。凍上に伴って第1ヒートパイプ1や第2ヒートパイプ10に引っ張り力が作用することがあるので、第1ヒートパイプ1および第2ヒートパイプ10は凍上に伴う延びが可能な構成のものであることが好ましい。例えば、パイプ(コンテナ)をコルゲート管によって構成したヒートパイプである。また他の例としては、ばねのように螺旋状に曲がっているヒートパイプである。これらいずれの構成であっても、埋設状態で地盤の凍上と共に上下方向に延びるので、引っ張りによる破断や亀裂を回避することができる。
【0020】
上述した第2ヒートパイプ10を地盤中に設置する方法について簡単に説明すると、第1ヒートパイプ1を埋設するための穴あるいは溝を掘削し、第2ヒートパイプ10の他方の端部10bを埋設設備11および他の埋設設備12に接近させるように掘削した穴あるいは溝の内面に対して斜めに差し込む。次いで、掘削した穴あるいは溝の内面に第2ヒートパイプ10の一方の端部10aを沿わせるように、第2ヒートパイプ10を屈曲させる。また、第2ヒートパイプ10を予めL字状に屈曲させておき、他方の端部10bを埋設設備11および他の埋設設備12に接近させるように掘削した穴あるいは溝の内面に対して垂直に差し込む。その後、第1ヒートパイプ1を上記の穴あるいは溝に挿入し、第1ヒートパイプ1に第2ヒートパイプ10の一方の端部10aを熱授受可能に接続する。なお、直線状の第2ヒートパイプ10を用意し、第2ヒートパイプ10を埋設設備11および他の埋設設備12に接近させるように前記内面に垂直に差し込む。その直線状の第2ヒートパイプ10を介して第1ヒートパイプ1と埋設設備11および他の埋設設備12の周囲とを熱的に接続してもよい。つまり、第2ヒートパイプ10の一方の端部10aが第1ヒートパイプ1に熱授受可能に接続されていればよく、第2ヒートパイプ10は図1および図2に示すように、L字状に屈曲されて形成されたL型ヒートパイプでなくてもよい。
【0021】
次に、この発明に係る装置の作用について説明する。第1ヒートパイプ1の下端部1bの温度は外気温度もしくは地中温度と同じになっているため、第1ヒートパイプ1の上端部1aを冷却すると、第1ヒートパイプ1の下端部1bが加熱部、上端部1aが冷却部として動作する。すなわち、下端部1bで蒸発した作動流体が上端部1aに流動した後、放熱して凝縮することにより、下端部1bの周囲の地中の熱が上端部1aに運ばれて前記下端部1bの周囲が冷却される。その結果、第1ヒートパイプ1の周囲の地盤が凍結して凍土が形成される。
【0022】
また、第2ヒートパイプ10を介して第1ヒートパイプ1と埋設設備11および他の埋設設備12の周囲とが熱授受可能に接続されているため、上述したように、第1ヒートパイプ1の上端部1aを冷却すると、第2ヒートパイプ10の一方の端部10aが冷却部、他方の端部10bが加熱部として動作する。すなわち、他方の端部10bで蒸発した作動流体が一方の端部10aに流動した後、放熱して凝縮することにより、埋設設備11および他の埋設設備12の周囲の熱が一方の端部10aに運ばれて埋設設備11および他の埋設設備12の周囲が冷却される。第2ヒートパイプ10の他方の端部10bは、図1および図2に示す例では、埋設設備11および他の埋設設備12の上下および埋設設備11および他の埋設設備12の長さ方向に沿って配置されている。その結果、埋設設備11および他の埋設設備12の周囲の地盤が凍結して凍土が隙間なく形成される。
【0023】
このように、この発明に係る装置は、凍土を形成したい地盤中に埋設設備11および他の埋設設備12があったとしても、第2ヒートパイプ10を介して埋設設備11および他の埋設設備12の周囲の地盤の熱を奪って冷却するため、前記地盤中に凍土を隙間なく形成できる。図1および図2に示す例では、原子炉施設を囲うように原子炉施設の周囲の地盤中に凍土を隙間なく形成することができ、隙間なく形成された凍土によって遮水壁13を形成することができる。この遮水壁13は、土壌をその内部に含有している水分と共に凍結したものであって、上述した地表2から不透水層3に到る範囲に垂直に形成されている。したがって、遮水壁13は地下水14の流通層を上下に横切って形成され、地下水層を遮断している。そのため、遮水壁13の外側の地下水14は、原子炉施設に向けて流れないように遮断される。
【0024】
上述した冷却熱伝送機構について説明する。図3は、液化天然ガス(LNG)の有する冷却熱を第1ヒートパイプ1に送るように構成した冷却熱伝送機構の一例についての模式図である。第1ヒートパイプ1の上端部1aは、上述したように、地表側に延び出ており、第1ヒートパイプ1の上端部1aに冷却ジャケット9が設けられている。冷却ジャケット9は、冷熱源であるLNGを第1ヒートパイプ1の上端部1aに対して接触させるためのものであって、第1ヒートパイプ1の上端部1aを気密状態に覆う密閉容器として構成されている。なお、冷却ジャケット9は、複数本の第1ヒートパイプ1の上端部1aを一括して覆うように構成されていてもよい。隣接する冷却ジャケット9同士は、この発明における給液管路に相当する連通管15によって接続されていて、多数の冷却ジャケット9は所定数の一群が直列に接続され、また各群が互いに並列の関係になるように連通されている。
【0025】
なお、LNGは冷却ジャケット9の内部で第1ヒートパイプ1から熱を奪って一部が気化する。気化して生じた天然ガス(燃料ガス)によって冷却ジャケット9の内圧が増大することを抑制するために、気化して生じた天然ガス(燃料ガス)を、冷却ジャケット9を流れるLNGから分離するように構成することが好ましい。図4はその一例を示しており、各冷却ジャケット9の上端部にガス抜き管16が接続され、ガス抜き管16がこの発明におけるガス管路に相当する集合管17に連通されている。この集合管17は後述するガスタンクに連通されている。
【0026】
LNGは液体タンク18に収容されており、例えば−160℃程度になっている。この液体タンク18にポンプ19が接続され、このポンプ19によって所定の流量でLNGが取り出されるようになっている。このポンプ19の吐出側には三方切替弁20が接続され、この三方切替弁20によって冷却ジャケット9側とバイパス管21側とに切り替えてLNGを供給するようになっている。バイパス管21は、冷却ジャケット9を経由せずに気化装置22にLNGを供給するためのものである。したがって、冷却ジャケット9にはガス化されるLNGの一部が供給されるようになっており、LNGの気化熱(蒸発熱)の一部を利用して地盤を凍結させて遮水壁13を形成するように構成されている。
【0027】
冷却ジャケット9を通過したLNGはバイパス管21を流れるLNGに合流させられて気化装置22に供給される。気化装置22はLNGに熱を与えて気化させるための熱交換器であり、ポンプ23で汲み上げた例えば海水によってLNGを加熱するように構成されている。気化して生じた天然ガス(燃料ガス)はガスタンク24に送られて貯留される。この天然ガスはガスタービン発電機のエネルギー源となっている。すなわち、ガスタービン発電機は、ガスタービンエンジン25によって発電機26を回転させて発電するように構成され、ガスタービンエンジンは従来知られているように、燃焼室27で天然ガスを燃焼させて高温・高圧のガスを生成し、天然ガスを燃焼させて生成した高温・高圧のガスをタービン28に送ってタービン28を回転させ、タービン28で発生した動力で発電機26およびコンプレッサ29を回転させるように構成されている。コンプレッサ29は外気を吸入して圧縮し、圧縮した外気(圧縮空気)を燃焼室27に供給するように構成されている。したがって、この発明に係る装置は、凍土および凍土からなる遮水壁13を形成したい地盤中に埋設設備11および他の埋設設備12が埋設されているとしても、ガス発電の際に生じるLNGの気化熱(蒸発熱)を利用して、上述したように、第1ヒートパイプ1および第2ヒートパイプ10を介して埋設設備11および他の埋設設備12の周囲が冷却される。その結果、第1ヒートパイプ1および第2ヒートパイプ10の周囲の地盤を凍結させて凍土および凍土からなる遮水壁13を隙間なく形成できる。
【0028】
上記のようにして地盤を凍結させて凍土および遮水壁13が一旦形成された後は、凍土および遮水壁13に外部から伝達される熱量と同程度の熱量で凍土および遮水壁13を冷却することにより凍結状態を維持することができるから、冷却ジャケット9に供給するべきLNGの量は、凍土および遮水壁13を形成する際の量より少なくてよい。したがって凍土および遮水壁13の凍結状態を維持する場合は、前述した三方切替弁20によってLNGを冷却ジャケット9側よりもバイパス管21側に流す。そして上述と同様に、冷却ジャケット9を経由したLNGあるいはバイパス管21を経由したLNGは気化装置22によって海水により加熱され、気化する。天然ガスは一旦ガスタンク24に貯留され、その後、ガスタービン発電機に送られて発電の用に供される。したがって、この発明によれば、常用されるガスタービン発電で生じかつ多くが廃棄されているLNGの気化熱(蒸発熱)を冷熱として凍土および遮水壁13を形成するから、凍土および遮水壁13の凍結状態を維持するための冷却エネルギーにコストが殆ど掛からず、むしろエネルギーの有効利用を図ることができる。
【0029】
上述した第1ヒートパイプ1および第2ヒートパイプ10は地盤および埋設設備11および他の埋設設備12の周囲から熱を奪って地盤を凍結させるためのものであるから、第1ヒートパイプ1および第2ヒートパイプ10は周囲の土壌に可及的に直接接触していることが好ましい。そのため、腐食や土圧などによる劣化が避けられない。しかしながら、上述した装置では、冷却ジャケット9や連通管15などのLNGを流す管路は地表側に配置されているから、地中の第1ヒートパイプ1および第2ヒートパイプ10に損傷が生じても可燃性のガスが周囲の環境に漏洩する危険がない。また、第1ヒートパイプ1および第2ヒートパイプ10が損傷した場合には、第1ヒートパイプ1および第2ヒートパイプ10を交換すればよく、ガス配管の再構築などの工事を必要としないので、メインテナンスが容易になって低コスト化することができる。
【0030】
図5は、液化天然ガス(LNG)の有する冷却熱を第1ヒートパイプ1に送るように構成した冷却熱伝送機構の他の例についての模式図である。図5において、符号30は可燃性ガスの配置を忌避するように予め定められた領域を示し、前述した第1ヒートパイプ1や第2ヒートパイプ10などは、この領域30の内側に設けられる。これに対して前述した液体タンク18やポンプ19、気化装置22、ガスタービンエンジン25などのガスタービン発電設備、ガスタンク24などのLNGおよび燃料ガスを使用する設備は、上記の領域30の外側に配置される。ポンプ19によってLNGを気化装置22に供給する管路31には、三方弁32を介して熱交換器33が接続されている。この熱交換器33は、LNGと冷媒との間で熱交換して冷媒を冷却するためのものであり、従来知られている熱交換器を採用することができる。
【0031】
この熱交換器33は、この発明における冷却熱伝送機構の一部を構成しており、この熱交換器33と第1ヒートパイプ1との間に塩化カルシウム水溶液やエチレングリコール水溶液、プロピレングリコール、アルコールなどの冷媒を循環させる循環管路34が設けられている。冷媒は、前述した凍土および凍土からなる遮水壁13を形成するのに十分な低温に冷却されても流動状態を維持できる物質が採用されており、この冷媒を第1ヒートパイプ1の上端部1aに設けられている冷却ジャケット9に供給する供給管35が、熱交換器33と冷却ジャケット9との間に設けられている。前述したようにLNGを使用する設備である熱交換器33は、領域30の外側に配置され、熱交換器33と第1ヒートパイプ1との距離は数百mないし数kmになり、供給管35はその距離に亘って冷媒を輸送する。したがって、断熱のための十分な被覆が施される。
【0032】
各冷却ジャケット9は前述したように連通管15によって相互に連通されていて、冷媒を上流側の冷却ジャケット9から下流側の冷却ジャケット9に順に流すように構成されている。そして、所定の一群における最下流もしくは全体としての最下流の冷却ジャケット9と熱交換器33とが戻り管36によって連通されている。戻り管36の途中に冷媒タンク37および冷媒ポンプ38が設けられている。なお、図5における他の構成は、前述した図3に示す構成と同様であるから、図5図3と同様の符号を付して説明を省略する。
【0033】
図5に示す構成においては、LNGの有する冷却熱が熱交換器33によって冷媒に伝達され、冷媒の温度が低下する。温度が低下した冷媒は、供給管35を経由して各第1ヒートパイプ1の冷却ジャケット9に送られる。温度が低下した冷媒は、前述した図3に示す例におけるLNGに替わるものであるから、温度が低下した冷媒を冷熱源として利用して、第1ヒートパイプ1の周囲の土壌から熱が奪われて凍結し、凍土が形成される。また、第2ヒートパイプ10を介して埋設設備11および他の埋設設備12の周囲の地盤から熱が奪われて凍結し、凍土が形成される。こうすることにより、原子炉施設を囲うように原子炉施設の周囲の地盤中に凍土からなる遮水壁13が隙間なく形成される。そして、図5に示す構成では、領域30の外側で、LNGと冷媒との熱交換が行われるため、領域30の内側にLNGが入り、あるいは配置されることが回避される。
【0034】
なお、冷熱源は上記のLNGに替えて液化石油ガス(LPG)であってもよい。また、上述した冷熱源としてLNGを使用し、凍結管としてヒートパイプを使用する構成の装置に替えて、従来知られている冷媒方式の凍土形成装置を使用してもよい。その場合には、従来知られている二重管を凍結管として使用し、凍結管に冷凍機で冷却した冷媒を循環させる。そして、埋設設備11および他の埋設設備12の周囲の熱を第2ヒートパイプ10を介して凍結管に熱輸送することによって埋設設備11および他の埋設設備12の周囲を凍結させる。こうすることによっても凍結管の周囲の地盤に凍土および凍土からなる遮水壁13を隙間なく形成できる。
【符号の説明】
【0035】
1…第1ヒートパイプ(凍結管)、 10…第2ヒートパイプ、 10a…第2ヒートパイプの一方の端部、 10b…第2ヒートパイプの他方の端部、 11,12…埋設設備。
図1
図2
図3
図4
図5