(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982476
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
F16K31/06 305Q
F16K31/06 385A
F16K31/06 305Z
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-516240(P2014-516240)
(86)(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公表番号】特表2014-523506(P2014-523506A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】EP2012058447
(87)【国際公開番号】WO2013000612
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2013年12月20日
(31)【優先権主張番号】102011078314.8
(32)【優先日】2011年6月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・カール
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト・フィンク
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・フェルヒ
【審査官】
柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−530511(JP,A)
【文献】
特表2000−517263(JP,A)
【文献】
特開平7−12233(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0081803(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁コンポーネント(26)と、前記弁コンポーネント(26)の一領域をフード状に、かつ少なくとも1つの密閉領域(31)で密閉式に取り囲む弁体(10)とを有する電磁弁(1)であって、前記弁体(10)と前記弁コンポーネント(26)の端面(28)との間には流動室(27)が構成されており、流体の軸方向の通過部(15)を形成するために前記弁コンポーネント(26)は前記端面(28)を貫通して前記流動室(27)に連通する軸方向に延びる通過通路(29)を有するとともに、前記弁体(10)は前記流動室(27)と流動工学的に接続された通過開口部(11)を有しており、前記通過開口部(11)は前記流動室(27)と反対を向いているほうの前記弁体(10)の側に変位可能に配置された閉止部材(6)によって閉止可能である、そのような電磁弁において、前記通過通路(29)は前記弁コンポーネント(26)の通路入口(29‘)から前記弁コンポーネント(26)の前記端面(28)まで一定の断面を有していることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記弁コンポーネント(26)は、前記通過通路(29)に対して半径方向で間隔をおいて配置された、前記密閉領域(31)に対して作用する密閉装置(30)を有していることを特徴とする、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記密閉装置(30)は流体の圧力により変形可能な、前記弁コンポーネント(26)の少なくとも1つの材料ゾーン(33)として構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記弁コンポーネント(26)と前記弁体(10)により構成される前記密閉領域(31)は前記材料ゾーン(33)の外側領域(38)と前記弁体(10)の内側領域(39)とによって形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記材料ゾーン(33)は前記弁コンポーネント(26)の外側のウェブ(34)として構成されていることを特徴とする、請求項3または4項に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記材料ゾーン(33)を区切る、前記流動室(27)に連通する軸方向の凹部(32)が前記弁コンポーネント(26)の前記端面(28)に構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記凹部(32)は前記通過通路(29)の周りでこれに対して半径方向の間隔をおいて延びる環状の凹部(32)として構成されていることを特徴とする、請求項6に記載の電磁弁。
【請求項8】
前記弁コンポーネント(26)は前記通過通路(29)と前記凹部(32)の間に構成された内側のウェブ(36)を有していることを特徴とする、請求項6または7項に記載の電磁弁。
【請求項9】
前記弁コンポーネント(26)は(半径方向で内側から外側に向かって見たときに)前記通過通路(29)、前記内側のウェブ(36)、前記凹部(32)、および前記外側のウェブ(34)を相前後して位置するように有していることを特徴とする、請求項8に記載の電磁弁。
【請求項10】
軸方向で見たときに、前記内側のウェブ(36)と前記外側のウェブ(34)の高さは同じ大きさであることを特徴とする、請求項8または9項に記載の電磁弁。
【請求項11】
前記材料ゾーン(33)は前記弁コンポーネント(26)の外側の環状ウェブ(35)として構成されていることを特徴とする、請求項3乃至5項に記載の電磁弁。
【請求項12】
前記材料ゾーン(33)を区切る、前記流動室(27)に連通する軸方向の凹部(32)は溝で、前記弁コンポーネント(26)の前記端面(28)に構成されていることを特徴とする、請求項3乃至6項に記載の電磁弁。
【請求項13】
前記凹部(32)は前記通過通路(29)の周りでこれに対して半径方向の間隔をおいて延びる円環状の凹部(32)として構成されていることを特徴とする、請求項6または7項に記載の電磁弁。
【請求項14】
前記弁コンポーネント(26)は前記通過通路(29)と前記凹部(32)の間に構成された内側の環状ウェブ(37)を有していることを特徴とする、請求項6乃至8項に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁コンポーネントと、弁コンポーネントの一領域をフード状に、かつ少なくとも1つの密閉領域で密閉式に取り囲む弁体とを有する電磁弁に関するものであり、弁体と弁コンポーネントの端面との間には流動室が構成されており、流体の軸方向の通過部を形成するために弁コンポーネントは端面を貫通して流動室に連通する軸方向に延びる通過通路を有するとともに、弁体は流動室と流動工学的に接続された通過開口部を有しており、通過開口部は流動室と反対を向いているほうの弁体の側に変位可能に配置された閉止部材によって閉止可能である。
【背景技術】
【0002】
従来技術より、冒頭に述べた種類の電磁弁が知られており、たとえば自動車のアンチロックブレーキシステム(ABS)および/または電気スタビリティプログラム(ESP)などで利用されている。このような種類の電磁弁は、流体の、特にブレーキ液の容積流量を調整する役目を果たす。電磁弁の通過部は、この目的のために、流体の入口または出口を形成する。通過部は、弁コンポーネントと、弁コンポーネントをフード状に取り囲む弁体とによって構成される。そのために弁コンポーネントは、弁コンポーネントと弁体とによって区切られる流動室に連通する通過通路を有している。通過部の良好な密閉作用、すなわち弁コンポーネントと弁体の間の良好な密閉作用を確保するために、通過通路の断面は、流動室への連通部の領域で段差構成により拡大されており、それにより、弁コンポーネントはこの領域で比較的薄壁の通路壁を形成している。高い圧力のもとで通過部を流れる、特に通過通路を流れる流体は、弁コンポーネントに対して力を及ぼす。通路壁の薄い構成に基づき、弁コンポーネントを通路壁の領域で取り囲む弁体に向かって通路壁が押圧される。それにより、弁コンポーネントと弁体の間の良好な密閉作用が実現され、電磁弁の通過部で生じる可能性がある漏れが防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、通過部の断面ジオメトリーに基づき、流体の望ましくない流動挙動や周期的な失速が生じることがある。このことは、特に電磁弁の流体流量が多い場合に、作動中にしばしば邪魔に感じられる意図されない調性成分を有する騒音を生じさせる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
冒頭に述べた種類の電磁弁において、本発明によると、通過通路が一定の断面を有していることが意図される。通過部は、弁コンポーネントに構成された通過通路と、軸方向でこれに後続する、弁コンポーネントおよび弁体で取り囲まれた流動室と、通過開口部とによって形成される。流体は流動方向で通過通路、流動室、および流動開口部を通るように順次案内される。長さ全体にわたって一定の通過通路の断面に基づき、通過通路で均等な流動挙動が生じる。すなわち、公知の電磁弁では段部を有する通過通路に基づいて発生する、望ましくない有害騒音につながる前述した失速が生じることがない。通過通路の一定の断面に基づき、相違する断面を有する可能性がある通過部の領域は流動室だけに限定され、すなわち、流動室への通過通路の連通部と、特に通過通路の軸方向延長部に構成される通過開口部との間に位置する通過部の領域だけに限定される。それにより、および特に本発明に基づいて可能となる連通部と通過開口部との間の短い間隔により、生じる可能性がある騒音の調性成分は、通過部での流動挙動に基づき、人間の聴覚にとって邪魔ではない12kHzを超える領域へとシフトする。連通部と通過開口部との間の間隔は、断面における最大の寸法ないし通過通路の直径よりも短いのが好ましい。通過通路の断面は円形に構成されているのが好ましい。通過通路の「一定の」断面とは、たとえば製造公差が原因で生じる、一定の断面寸法に対するわずかな誤差を有している断面寸法を意味している。
【0005】
流動方向で見て通過通路の手前には、実質的に任意の断面を備える通路入口が設けられていてよい。この断面は流動方向で変化していてよい。たとえば通路入口は、断面が流動方向で減少していくディフューザとして存在する。流動方向で見て、通路入口の長手方向の長さは通過通路よりも短くなっており、それにより、上述した均等な流動挙動が実現される。特に通路入口の長手方向の長さは、通過通路の長手方向の長さの最大20%、好ましくは10%であり、または最大で、通過通路の断面における最大の寸法ないし直径である。通過通路の連通部は、流動方向で見てもっとも離れた下流側に位置する、弁コンポーネントの位置に存在している。
【0006】
本発明の1つの発展例では、弁コンポーネントは、通過通路に対して半径方向で間隔をおいて配置された、密閉領域に対して作用する密閉装置を有していることが意図される。密閉装置は、弁コンポーネントと弁体の間の密閉領域で良好な密閉作用を具体化し、そのようにして、漏れが生じないように構成された通過部を保証する。長さ全体にわたって一定の通過通路の断面に基づき、密閉装置はこれに対して半径方向で間隔をおいて構成されている。すなわち、通過通路と密閉装置は空間的に離れている。密閉装置は、弁コンポーネントと一体的に構成されているのが好ましい。
【0007】
本発明の1つの発展例は、密閉装置が、流体の圧力により変形可能な、弁コンポーネントの少なくとも1つの材料ゾーンとして構成されることを意図している。材料ゾーンの変形可能性により、いっそう高い密閉作用が密閉領域で実現される。高い圧力のもとで通過部を通って流れる流体に基づき、流体は材料ゾーンに対して力を及ぼし、この力がその変形を惹起し、特に可塑的または弾性的な変形を惹起する。そのために材料ゾーンは、この領域で材料の剛性が低下するように薄く構成されているのが好ましい。弁コンポーネントおよびこの意味において材料ゾーンは、プラスチックで構成されているのが好ましい。材料ゾーンは流動室を部分領域で区切っているのが好ましく、それにより、流動室の中にある流体の圧力によって材料ゾーンが変形する。
【0008】
弁コンポーネントと弁体により構成される密閉領域は、材料ゾーンの外側領域と弁体の内側領域とによって形成されることが意図されるのが好ましい。弁体が弁コンポーネントを部分領域で取り囲むので、材料ゾーンの外側領域と弁体の内側領域が互いに当接し、それによって電磁弁の通過部を漏れが生じないように密閉する。材料ゾーンの好ましい変形可能性に基づき、材料ゾーンは流体の圧力により、弁コンポーネントを取り囲む、特に材料ゾーンを取り囲む弁体に向かって、特にその内側領域に向かって押圧される。このことは、実質的に半径方向で行われるのが好ましい。それにより、密閉領域のいっそう高い密閉作用が実現される。
【0009】
材料ゾーンは弁コンポーネントの外側のウェブとして、特に外側の環状ウェブとして構成されていると好ましい。外側のウェブはその意味において弁コンポーネントの円周に延びている。外側のウェブとして材料ゾーンを構成することで、流体の圧力によって好ましく変形可能である比較的薄壁の材料ゾーンが形成される。外側のウェブの高さは軸方向に延びているのが好ましい。外側のウェブは、連続する環状ウェブとして、特に円形の環状ウェブとして、または複数のウェブ区域を有する中断のある、ないしは連続していないウェブとして構成されていてよい。「ウェブ」とは本件出願においては、長さ寸法が幅寸法よりも大きい、特に高さ寸法よりも大きい、三次元の幾何学的物体を意味している。
【0010】
本発明の好ましい発展例では、材料ゾーンを区切る、流動室に連通する軸方向の凹部が、特に溝が、弁コンポーネントの端面に構成されていることが意図される。通過部が流体により貫流されるとき、流体は凹部の中にも存在する。流体の圧力によって凹部が半径方向外側に向かって拡張され、材料ゾーンが相応に変形し、特に半径方向に変形する。その帰結として、密閉領域の前述した良好な密閉作用が得られる。軸方向の凹部により、材料ゾーンが外側のウェブの形態で構成されるのが好ましい。1つの好ましい実施形態では、凹部は互いに円周方向で間隔をおく複数の凹部区域によって構成されていてよい。
【0011】
本発明の好ましい発展例では、凹部は通過通路の周りでこれに対して半径方向の間隔をおいて延びる環状の、特に円環状の凹部として構成されることが意図される。環状の凹部は、通過通路を円周側で完全に取り囲むように連続して構成されており、凹部は常に通過通路から間隔をおいている。さらに、1つの好ましい実施形態では、環状の凹部によって比較的薄壁の材料ゾーンが弁コンポーネントの円周全体に沿って創出されることが意図される。密閉領域に対する凹部の半径方向の間隔は、密閉領域のどの個所でも同じ大きさの密閉作用を具体化するために、弁コンポーネントの円周全体にわたって一定であるのが好ましい。
【0012】
さらに、弁コンポーネントが通過通路と凹部の間に構成された内側のウェブを有していると、特に内側の環状ウェブを有していると好ましい。内側のウェブは中断されながら、すなわち複数のウェブ区域を有するように構成されていてよく、その意味において通過通路をその円周に沿って流動室への連通部の領域で区域的に区切っている。内側の環状ウェブは連続して構成されており、上記の領域を完全に区切る。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態では、弁コンポーネントは(半径方向で内側から外側に向かって見たときに)通過通路、内側のウェブ、凹部、および外側のウェブを相前後して位置するように有していることが意図される。
【0014】
内側のウェブと外側のウェブの高さは(軸方向で見たときに)同じ大きさであることが意図されるのが好ましい。弁コンポーネントの1つの好ましい実施形態では、内側および外側のウェブの端面は軸方向に対して垂直に延びる1つの平面に位置している。それにより、内側および外側のウェブは同じ高さを有しており、すなわち、特に流動方向で見て同じ長さを有している。製造上、これらの高さが互いにわずかに相違していてもよい。
【0015】
さらに、弁コンポーネントが弁体に部分領域で押し込まれて配置されていると好ましい。このような押し込まれた配置により、すでにある程度の密閉が弁体と弁コンポーネントの間で実現される。さらに、それによって簡単な機械式の組立が可能となる。
【0016】
さらに、弁体が深絞りまたは旋削された鋼材でできていると好ましい。
【0017】
図面はさまざまな実施例を用いて本発明を図示しており、次のものを示している:
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施例に基づく電磁弁を示す模式的な縦断面図である。
【
図2】
図1の電磁弁の一領域を示す模式的な縦断面図である。
【
図3】第2の実施例に基づく電磁弁の一領域を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、第1の実施例に基づく電磁弁1の模式的な縦断面図を示している。電磁弁1はスリーブ2を有しており、その中でピストン状の磁気アーマチュア3が電磁弁1の長軸4に沿って可動に配置されている。プランジャ5として構成された閉止部材6が、その一方の端部7で磁気アーマチュア3と作用接続されている。磁気アーマチュア3と向かい合う閉止部材6の自由端8は、球冠状に成形された密閉ジオメトリー9として構成されている。密閉ジオメトリー9は、電磁弁1が閉止位置にあるとき、弁体10に構成されて通過開口部11を有する漏斗形の弁座12と協働作用する。さらに電磁弁1は、スリーブ2により部分領域で取り囲まれた実質的に中空円筒状の弁インサート13を有している。スリーブ2、弁インサート13、およびたとえば弁インサート13の中に配置される弁体10により、流体のための弁室14が区切られる。弁室14は、流体の入口16として構成され、弁体10の通過開口部11によって一緒に構成される通過部15と流動工学的に接続されている。通過部15は、電磁弁1の長軸4に沿って軸方向に延びている。この通過部15についてはあとで詳しく説明する。
【0020】
さらに弁室14は、少なくとも1つの、ただし通常は複数の半径方向通路17と流動工学的に接続されており、
図1の断面図ではこのような種類の2つの半径方向通路17を見ることができる。半径方向通路17は流体の出口18を形成し、長軸4に対して垂直方向で弁インサート13に構成されている。さらに弁室14の中には、弁インサート13に押し込まれ、閉止部材6を少なくとも部分領域で環状に取り囲むばね受け部19が配置されている。ばね部材20が一方の側でこのばね受け部19に支持されるとともに、他方の側では閉止部材6の肩部21に支持されている。さらに電磁弁1は、弁室14と通過部15を流体工学的に接続するバイパス通路22を有している。バイパス通路22には、ボール状の逆止め弁閉止体24と逆止め弁座25とを含む逆止め弁23が設けられている。
【0021】
電磁弁1の作動時に、スリーブ2を磁気アーマチュア3の領域で取り囲む(
図1には示さない)磁気コイルが通電されると、磁気アーマチュア3と閉止部材6はばね部材20の復帰力に抗して、長軸4に沿って弁座12の方向へと動く。それにより密閉ジオメトリー9が弁座12の中へ押圧され、通過部15と弁室14の間の接続が閉じられる。このときバイパス通路22は、逆止め弁23により閉じられる。逆止め弁閉止体24が、これに対して作用する通過部15の流体の圧力により、逆止め弁座25の中へ押圧されるからである。通過部15にある流体はその限りにおいて、電磁弁1の弁室14に流入することができない。すなわち電磁弁1は閉止位置にある。磁気コイルが通電されていないとき、密閉ジオメトリー9は弁座12から持ち上げられた位置にある。ばね受け部19で支持されるばね部材20が、閉止部材6ならびに磁気アーマチュア3を長軸4に沿って上方へと押しやるからである。すなわち流体は通過部15を通って弁室14に流れ込み、半径方向通路17を通ってそこを出ていく。その意味において、電磁弁1は開放位置にある。特に電磁弁1は無通電開型の電磁弁1である。磁気コイルへの通電の強さによっては、通過部15の部分的な開放も可能である。上に説明した流動方向と反対向きに流体が流動すると、逆止め弁23が弁室14の流体の圧力によって開き、すなわち、逆止め弁閉止体24が逆止め弁座25から持ち上げられ、その結果、流体は弁室14からバイパス通路22を通って通過部15に流れ込む。
【0022】
図2には、
図1に印をつけて示した電磁弁1の領域が拡大して図示されている。同じ符号は電磁弁1の同じコンポーネントを表しているので、その限りにおいては対応する説明の文章を参照されたい。
図2には、特に深絞りされた鋼材から構成され、および/またはスリーブ状に構成された弁体10を見ることができる。弁座12は、弁室14のほうを向いている弁体10の側に構成されている。弁体10は、特にプラスチックで構成される弁コンポーネント26を少なくとも部分領域で取り囲む。弁コンポーネント26は部分領域で弁体10に押し込まれているのが好ましい。弁コンポーネント26と弁体10によって流動室27が区切られ、特に、流動室は弁コンポーネント26の端面28と弁体10の間に存在している。このとき端面28は平坦であり、長軸4に対して垂直に構成されるのが好ましい。弁コンポーネント26は、長さ全体にわたって一定に保たれた特に円形の断面を備える、長軸4に沿って延びる通過通路29を有している。通過通路29は端面28を貫いて流動室27に連通する。さらに弁コンポーネント26には、通路入口29’が構成されている。通路入口29’は、流動室27と反対を向くほうの通過通路29の端部に軸方向で後続している。通路入口29’は、同じく円形の断面を有しているのが好ましい。断面がそれぞれ同一となる、通過通路29から通路入口29’への移行部を起点として、通路入口29’の断面は連続的に広がっていく。通路入口29’はその意味でディフューザを形成する。通路入口29’は通過通路29よりも軸方向で短く構成されており、好ましくは何倍も短く構成されている。(軸方向で上方に向かって見たときに)実質的に相前後して位置する通路入口29’、通過通路29、流動室27、および通過開口部11は、弁室14に連通する、電磁弁1の通過部15を形成する。このとき、通過通路29よりも狭い断面を有する通過開口部11は、通過通路29と同軸に存在している。バイパス通路22と逆止め弁座25は、弁コンポーネント26に構成されている。
【0023】
弁コンポーネント26は密閉装置30を有している。密閉装置は弁コンポーネント26と一体的に構成されており、すなわち、弁コンポーネント26の材料で構成されている。密閉装置30は、電磁弁1の通過部15を漏れの生じないように封止する、弁コンポーネント26と弁体10とによって構成された密閉領域31に対して、密閉をするように作用する。密閉装置30は、弁コンポーネント26の端面28に存在する、流動室27に連通する軸方向の凹部32によって構成されている。凹部32は通過通路29を環状に取り囲み、その際に半径方向でこれから間隔をおいている。凹部32の半径方向外側に位置している弁コンポーネント26の領域は、弁コンポーネント26の外側のウェブ34として、特に外側の環状ウェブ35として構成された材料ゾーン33を形成する。通過通路29と凹部32との間に位置している弁コンポーネント26の領域は、弁コンポーネント26の内側のウェブ36、特に内側の環状ウェブ37を形成する。外側の環状ウェブ35と内側の環状ウェブ37は軸方向で同じ高さを有しており、したがって、それぞれの端面は半径方向で互いに一直線上に並ぶ。内側の環状ウェブ37は、縦断面で見て、実質的に長方形を有している。外側の環状ウェブ35は実質的に台形の縦断面を有しており、その半径方向の幅は通過開口部11の方向に減少していく。それが意味するのは、外側の環状ウェブ35が弁コンポーネント26の端面28の領域でもっとも薄く構成されており、すなわち、最小の幅を有していることである。外側の環状ウェブ35が密閉装置30をなす。弁コンポーネント26と弁体10の間に構成される密閉領域31は、材料ゾーン33の外側領域38と弁体10の内側領域39との間に構成されている。
【0024】
図3には、第2の実施例に基づく電磁弁1の一領域が示されている。同じ符号は同じコンポーネントを表しているので、その限りにおいては前述の実施形態を参照されたい。
図3を用いて示す電磁弁1は
図2に示すものに対応しているが、密閉装置30およびその意味において凹部32が、弁コンポーネント26に設けられていない。
【0025】
電磁弁1の次のような機能がもたらされる:電磁弁1が開いた状態のときに通過部15を通って弁室14に流れ込む流体は、通過通路29での均等な流動挙動によって特徴づけられる。その理由は、その軸方向の長さ全体にわたって一定の断面に帰することができ、それにより、通過通路29の連通部に到達するまで、少なくとも部分的に構成される流動プロフィルが生じる。それにより、望ましくない騒音現象を生成することがある不都合な流動現象や失速が起こることがない。流動方向で狭まっていく断面を有する、軸方向で通過通路29の手前に構成された通路入口29’を設けることで、通過通路29へ流体が入るときすでに、望ましくない流動現象が最低限に抑えられる。流動室27への通過通路29の連通部と、これと向かい合う通過開口部11との間で、すなわち流動室27の中で、通過部15は比較的大きい変化する断面を有している。たとえば流動室27の中にある流体と、通過通路29から流動室27に入る流体との異なる速度に基づき、通過部15のこの領域で均等な流動挙動からの逸脱が生じたとしても、人間の聴覚にとっては障害にならない高周波の騒音が生起されるにすぎない。この領域すなわち流動室27の軸方向の長さが短く、特に、断面に関して最大の通過通路29の寸法または直径よりも短いからである。
【0026】
さらに、
図1と
図2の第1の実施例では、良好に密封された通過部15が具体化される。通過部15を通って流れる流体は、流動室27に連通する凹部32の中へも入り、その意味で、特に半径方向の成分を含む力をウェブ34に対して及ぼす。ウェブは半径方向外側に向かって、弁コンポーネント26を取り囲む弁体10に対して押圧され、それにより、通過部15を通る流体の漏れの生じない案内が保証される。ウェブ34の台形状の縦断面により、ウェブは弁コンポーネント26の端面28の領域でもっとも薄く構成されており、その結果、この領域で最善の密閉作用が生じることになる。ウェブ34の材料が、流体により引き起こされる半径方向外側に向かって作用する力に対し、相応に低い弾性力で対抗するからである。さらに凹部32の構成により、およびそれに伴う密閉装置30の構成により、密閉作用に関わる製造公差に対して構造が影響を受けにくくなる。
図3の実施例に示すように凹部32がない場合、所与の製造公差で、弁体10に弁コンポーネント26を押し込むときに高い組付力が必要となる。凹部32が存在しているものよりも弁コンポーネント26の剛性が高くなるからである。
【符号の説明】
【0027】
1 電磁弁
6 閉止部材
10 弁体
11 通過開口部
15 通過部
26 弁コンポーネント
27 流動室
28 端面
29 通過通路
31 密閉領域